次世代知財システム検討委員会(第4回)
議 事 録
日 時:平成28年1月27日(水)16:00~18:20
場 所:中央合同庁舎4号館 1208特別会議室
出席者:
- 【委 員】
-
中村委員長、赤松委員、上野委員、亀井委員、喜連川委員、川上委員、
瀬尾委員、福井委員、水越委員、山口委員、稲田参考人
- 【事務局】
- 横尾局長、増田次長、田川参事官、永山参事官、中野参事官補佐
- 開会
- 技術革新により新たに生じる情報の取扱い
(1)3Dプリンティングによるものづくり革新と知財制度
(2)AIによって生み出される創作物の取扱い - その他
- 閉会
○中村委員長 それでは、皆様おそろいですので、今から「次世代知財システム検討委員会」の第4回会合を開催いたします。
御多忙のところお集まりをいただきまして、ありがとうございます。
本日御出席いただいている委員は座席表に配られているとおりでして、本日は喜連川委員、田村委員、宮島委員、柳川委員は御欠席とのことです。
それから、本日は「3Dプリンティングによるものづくり革新と知財制度について」の議論に関しまして、株式会社カブクの稲田様に御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
では、議事に先立ちまして、知財事務局長から御挨拶をいただきたいと思います。横尾局長、お願いいたします。
○横尾局長 遅くなりましたが、皆様、明けましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いしたいと思います。年末の最終回は、大変いいディスカッションができたなと思っております。今年もどうぞよろしくお願いしたいと思います。 今週「産業競争力会議」で成長戦略の進化のための今後の検討方針が決定され、その中で「第4次産業革命推進/IoT時代の新たな制度環境整備」が最初に出ていまして、イノベーション、ベンチャー創出の強化、そのために第4次産業革命に勝ち抜くIoT、ビッグデータ、AI等の社会実施が進むにつれて顕在化する知的財産上の問題点を分析する。それから、制度・ルールの整備ということが成長戦略の検討方針にも盛り込まれておりますので、そういう意味では、ぜひ今回の議論をさらに深めていければなと思っております。
また、国際的にはWIPOの年報で昨年11月に出た、本日のテーマですけれども3DプリンティングとAIの話も少し触れています。特に、AIはロボットと書いてありますけれども、まだ将来の議論だということで、そういう意味では我々の議論がかなり先を行っているかなという気はしておりますので、ぜひ積極的な御議論をいただければと思います。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
○中村委員長 ありがとうございました。
では、議事に移りましょう。
まず、事務局から配付資料の確認をお願いします。
○中野参事官補佐 それでは、本日の資料ですが、資料として5点御用意しております。
資料1ということで、3Dプリンティングに関する横置きのスライド資料。
資料2としまして、AIに関する同じく横置きのスライド資料。
資料3として、赤松委員から御提出いただいていますスライド資料でございます。
また、資料4として、縦置きのスケジュールに関する資料。
参考資料1として、本日取り扱うテーマに関するこれまで出た意見を整理したものをおつけしております。
資料については以上でございます。
○中村委員長 よろしいでしょうか。
では、議題に入ります。今回から各論の2番目、技術革新によって新たに生じる情報の取り扱いについての議論ということで、本日は先ほど局長からお話がありましたようにテーマが2つです。3DプリンティングとAI。その論点の1つ目、「3Dプリンティングによるものづくり革新と知財制度」について。これは事務局から論点について説明をお願いできますか。
○中野参事官補佐 それでは御説明させていただきます。お手元資料1をご覧いただければと思います。
資料1の構成ですが、前半で、3Dプリンティングでものづくりあるいは社会がどう変わるかという概要を整理してございます。また、後半で、それが知財システム上どのような影響を与えるかという論点を提示するというつくりになってございます。
それでは、前半からかいつまんで御説明させていただきます。
まず前半として、ものづくり革新ということでございますが、3ページをご覧ください。3Dプリンティングでものづくりがどのように変わるかということについては、大きく2つの方向性で変わると言われております。1つは、より複雑、高付加価値のものづくりができるようになるということ。もう一つは、個人を含めた幅広い主体にものづくりが拡大すると言われているものでございます。
次のページから事例を幾つか御紹介しております。
4ページ、5ページということで複雑なものづくりということで、よく報道などにも出ますエンジンの内部部品の一体成形ですとか、あるいはイラストもありますが心臓シミュレーターということで、複雑な内部構造を持つものを3Dプリンティングでつくれるようになるというのが1つの方向性でございます。
6ページ、もう一つの方向性、ものづくりの裾野の拡大ということでございます。こちらについては、データがあれば、そこからものをつくることが従来より容易にできるようになるということでございまして、個人を含めてアイデアを持っている人たちがものづくりに参加しやすくなる、インディーズメーカーが出てくるだろうというような見込み。
あと、3Dデータを共有して、アイデアを共有してものづくりをするとか、個々人のニーズに対応したものづくりをするといったような新しいものづくりの動きも期待されております。
7ページにいきまして、このようにいろいろな人がものづくりに参加することになってきますと、それをつなぐ場というものが重要であり、発展してくるということも言われております。実際にプラットフォームづくりというのは、国内外においてアメリカの企業もございますし、日本の企業も取り組んでいるところでございますが、そういったプラットフォームづくりということが動き出している状況でございます。
8ページですが、ここで3Dプリンティング全体についてどういう課題があるかを、知財だけでなくて全体を簡単に整理したものでございます。
まず、技術的にも期待はされるのですけれども、今の段階でそんなに何でもつくれるわけではないということで、技術的にまだまだ課題があるよねというところ。あと、それを使いこなす人もまだまだ必要だよねというような、基盤としての課題はあるわけですが、それがいずれ達成されていく中で、3Dの技術を社会として使っていく時の基盤、制度の一つとして知的財産をどうするのかということは、しばしば問題提起されるものでございます。本委員会では、この環境整備の中の知的財産について御議論をいただきたいと考えております。
ここまでが3Dプリンティングに関する動きの概要でございまして、11ページからが本日の論点になっております。
論点も幾つか中で分かれておりますので、11ページには総論ということで全体を整理してございます。まず、どういう変化が予想されるかということで、正規品を3Dデータを介して流通・生産することも容易になる一方で、当然それを悪用する、模倣品を流通したり生産するということにも使われる可能性がある。
もう一点として、新しい形のものづくり、アイデアを共有する、個人のニーズに合わせたものづくりといったこともできるようになる。こういった2つの大きな変化があるのかなと考えております。
この変化を知財としてどのように対応していくか考える時に、ちょっと頭の整理として2つに分けて考えるのがよろしいかなと思って記載しております。
まず、もともと知的財産が今あるものについての3Dデータの利活用あるいは保護に関する議論と、もともと保護されていないようなものについても、これをいろいろな人が自由に使いたいですとか、あるいはまがいものもたくさんつくりやすくなるといった形で3Dの技術が影響してくる部分もあるであろうということについて、では、保護・利活用というのはどういうことになるのかという頭の整理をして論点を提示させていただいております。
12ページからは、それぞれの各論についての御説明になります。
まず、知的財産権で保護されている場合について、3Dデータの法的位置づけをどう考えるかということでございます。
上の四角囲いですが、まず、今の制度の御説明として、知財権で保護されているものが許諾なく生産された場合に、その生産行為やそれを売るという行為は権利侵害行為に該当するということで、下のイラストの右側の赤字で書いてある部分でございます。
ただ、赤字で書いてある部分の前段階のところ、データの形での流通・生産がやりやすくなることを予測すると、前段階、中間段階の黄色で書いてあるところについて権利が及ぶことが必要かどうか、そういったことを今後考えていく必要があるかどうかというところが、1つ目の論点と整理させていただいております。
その下のア)、イ)と書いてあるのは、現行法制に基づく理解ですが、いずれも解釈でいける可能性はあるけれども確定はしていないというのが、意匠、特許あるいは著作権で保護されているもの、いずれの場合も現行そのようになっておりますが、保護を及ぼすという積極的な方向に持っていくのがよいのか、そうではないのかといったところが1つ目の議論のポイントとさせていただいております。
14ページは、前のページで中間的な3Dデータを複製したり頒布する行為に知財権が及ぶという仮定を置いた場合という議論でございます。保護が及ぶとした場合に、その保護をある程度実効的なものにするという観点で、流通に関係するいろいろなプレーヤー、どういう役割を果たすべきか、全体としてどういう仕組みを講じておく必要があるかということで、データを制作する側での取り組み、例えば、データを流通する際に複製等防止措置を講ずるというようなことも考えられるのではないか。
あと、中間の事業者、プラットフォーマーですとか、プリンターを提供する人などが想定されると思いますが、そういった方が侵害に関する責任を制限されたり、あるいは防止義務を果たすというようなこともどのように考えるか。
最後に、末端の利用者、ユーザーの立場ということで、違法行為を抑制するという観点から、何らかの対策、例えば著作権でやっているダウンロードは違法かみたいなことも考えられるのかどうかといったような選択肢をお示ししております。
15ページが、保護と利活用のバランスということで、保護してしっかりそれを守るということは当然重要なことではあるのですが、それと裏腹でしっかり使えるようにするということも大事になってくる。その仕組みをどのように考えるかという視点でございます。
繰り返しになりますが、3Dデータを共有・加工することでいろいろなものづくりが出てくるというところ、あるいはメーカーがつくらなくなった過去の商品を第三者が再生産するといったようなことも、3Dによってやりやすくなるということも言われております。こういったニーズがあるので自動的に社会が進むというところはありますが、それを円滑に進めるという観点から、知財としてどのような仕組みを講じておくことが考えられるかというのが論点でございます。
幾つかアイデアとして、ライセンス表示ですとか、現行の法律の「業として」要件でいけるのかどうかといったことを書かせていただいております。
16ページ、17ページがまだ一つの別の固まりということで、今までは権利があるものがデータに変わった時にその扱いをどうするかという議論だったのですが、16ページ、17ページは、もともと権利がないようなものについての3Dデータの取り扱いをどうするかという視点でございます。
最初の枠ですが、保護されていないものをもとに3Dデータをつくったのだから、それは自由に利活用できると考えてよいのかどうか。後の工程というのは完全に自由でいいのか、あるいはもう少し別の何かが必要なのかといった視点でございます。
また、もともとのモデルに何ら権利がないからといって、3Dデータにした時に、その3Dデータにも何ら権利がないのか、あるいは何か保護が必要なのかどうかといったところが2つ目の視点でございます。この3Dデータ制作に当たっては高度な技術的処理や工夫を伴う場合もあると言われておりまして、こういった行為を知財制度上どのように評価するかということでございます。
最初の視点、自由な利用がいいかどうかに関して下の部分で、現行法制に関する保護可能性を書いておりますが、まず、利用については不正競争防止法でイラストの一番端のところ、同じようなものをつくって売るというところについては保護が及ぶ、これも極めて期間が限られるという限定的な規制ではありますが、こういった可能性がある。中間段階のところはどうするかということがあろうかと思います。
また、2つ目の論点、モデルから3Dデータをつくるというところについては、17ページでございますが、著作権法の考え方というのが参考になるのではないかということで書いてございます。これは、3Dデータが設計図であると考えれば、それに著作権が認められるのかどうかという議論と対比で考えることができるのではないかということでございます。
今、設計図に権利が及ぶかどうかというのは、判例によって判断が分かれるところはあるのですが、1つの判例としては、普通に書いただけでは創作性は認められないけれども、簡略化したり、詳細に書くあるいは存在しない部分を書くなど、何か創作的な工夫が認められている時には著作権が生じる可能性があるといった考え方を示した判例もございます。こういった考え方を積極的に採用して、3Dデータのところについても何か新しい仕組み・保護を考えていく必要があるのか、あるいは現行のままでよいのかどうかといったところが議論のポイントとして御用意させていただいているものでございます。
事務局からの説明は以上になります。
○中村委員長 ありがとうございました。
続いて、この論点に関連しまして、3Dプリンティングを活用したものづくりのネットワーク化に取り組まれている株式カブクの稲田様から、技術やビジネスの実態等についてプレゼンをしていただきたいと思います。稲田様、どうぞよろしくお願いいたします。
○稲田参考人 株式カブクの稲田と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
ちょうど直近で、資料1のまさに15ページ目でしょうか、ユースケースになるような事例がございまして、昨日、テレビ東京さんの「ワールドビジネスサテライト」で取り上げていただいたのですが、ちょうど今トヨタさんがi-ROADという電気自動車を向こう2~3年で事業化、サービス化をするということで動いておりまして、エクステリアのパーツのですとか、中のインテリアのパーツを通常のイーシーサイトですと、ポチポチと押していくと最終的には在庫をピックアップとしてお届けするというモデルを、この場合はポチポチと押していくと、裏側で自動で3Dデータを生成しまして、その人一人一人に合わせたオーダーメードのパーツを製造販売するというようなことを共同事業で開発させていただいております。それは、いわゆるマスカスマイゼーションというところではあるのですけれども、ちょうどあわせてランサーズさんという日本のクラウドソーシング大手のベンチャーさんと組ませていただいて、いわゆるオープンイノベーション型、個人の3Dデザイナーの方を巻き込んで、顧客ニーズに合ったものをオープンにつくるということを今まさに始めているところでございます。なので、こうしたリーガルの論点というのは、我々も走りながら常に論点を出して動いていっているという形になります。
例えば、こういった場合、どういうビジネスモデルでやらせていただいているかというところですが、弊社はRinkakプラットフォームという形でやらせていただいているのですが、左側が今回の場合トヨタさんになると。その時にオープンイノベーション型にものをつくっていくという時に、いわゆる個人のデザイナーさんを巻き込みながらトヨタさんのパーツをつくると。弊社は3Dプリンターメーカーでもなく工場でもありません。いわゆる3Dデザイナーや工場をネットワークさせていただいているプラットフォーマーであるという形で、右下の今は産業の3Dプリンターをお持ちの工場様が中心なのですが、デジタル製造工場様とネットワークさせていただいて、こういう形でビジネスをやらせていただいています。ですので、弊社の事業は、半分がいわゆるITサービス業で、半分がいわゆる製造業という形のハイブリット型のビジネスモデルでやらせていただいているという形になります。
この時に我々が主にやっていることは、基本的には3Dデータを解析したり、最適なデジタル技術選定であったり、最適な工場選定がどのリードタイムで、どの価格で、どの素材でできるのかを解析して、最適な工場を見つけ出すというようなことをやっていまして、これは次の論点になると思いますけれども、いわゆるAI技術を使ってやっているという形で、次のビッグデータ的なこともやらせていただいております。
自分の出自ですが、もともとエレクトロニクスと人工知能のソフトウエアを研究していたエンジニアでございまして、なぜ、ものづくりにいるのかというところですが、自分自身の出自が東大阪でして、クローズドイノベーションでものづくりがずっとうまくいってきたところが、今はなかなかいかなくなっているところで、ここ10年、20年はソフトウエアがうまくいってきたと。それはオープンの仕組みがうまくいったかと思っておりまして、そうした思想をものづくりの世界にうまく持ち込んで、この業界をハッピーにしたいなという思いでやらせていただいていまして、我々のビジョンとしては「ものづくりを民主化へ」というような形でやらせていただいているところでございます。
外部環境的なところに入る前に、先ほどのお話でいうと、ソフトウエアのところがすごく民主化、いわゆるデジタル・デモクラタイゼーションと言われるところが、ここ10年、20年すごくうまくいってきたかなと思っております。
そのほかの理由でいえば、シェアリングエコノミーみたいな話が最近で言うと注目されていると思うのですけれども、AirbnbですとかUBERとか、あと後ほど御紹介させていただければと思いますが、ローカルモーターズというような、いわゆるLINUX型の車メーカーみたいなものがございまして、こういうオープンな仕組みでうまくいってきたというところがすごく今出始めているかなと思っております。
例えば、デジタル広告の世界というのは、物すごく多様なプレーヤーがいるエコシステムができ上がっているという形になっております。自分自身がもともとAI出身なのですけれども、前職は博報堂という広告業界におりまして、なぜ広告業界にいたのかというと、いわゆるビッグデータ解析、AI的な技術がすごく応用された領域でして、特にグーグル、フェイスブックなどがすごく力を入れた領域で、こういったエコシステムが今できつつあると。ただ、自分自身の故郷の東大阪などは今、右肩下がりの状況になっていまして、クローズドイノベーションというのがどんどん効率が悪くなっているかなということを感じております。
今、ものづくりの変化の中で、1つのキーワードとしてあるのが、いわゆるデジタルファブリケーションというところで、デジタルファブリケーションというのは何ぞやということですが、いわゆるコンピューターと接続されたデジタル工作機械によって製造する技術の総称で言われております。ですので、3Dプリンティング問わずレーザーカッターですとか、いわゆるデジタル製作機械といったところも含めて全て入ってきます。いわゆるロボットの領域も入ってきます。数年前に「MAKERS」というような本がすごく流行ったと思うのですが、こういったところが個人まで落ちてくるという流れが、今ちょうど来つつあるというところになります。
最終的に個人もメーカーになっていくというコアなキーワードですけれども、1つは、いわゆるデジタルDIY、家庭に3Dプリンターが普及していくことで、今までですと金型をつくらないといけないとか在庫を持つような話が、家庭で1個からでもものがつくれるというところが、いわゆる個人の民主化につながると言われています。
2つ目がすごく大きいのですけれども、コミュニティーというところで、デジタルのコミュニティーが広がるというところが、いわゆる共創が行われる、ともにつくるというところがすごく重要だなと考えています。
その裏ですごくワークするのが、いわゆる3Dデータでございまして、これが10年前ですと、ネットワークの問題もありまして3Dデータが流通できなかった。それが今はネットワークの問題あるいはツールが無料になっているところがありまして、3Dデータの流動性がすごく高まっているというところで、個人のメーカームーブメントというのが起こるだろうと言われております。
3Dプリンティングに戻らせていただければと思いますが、3Dプリンティング自体は大きく2つございまして、1つは、いわゆる個人用の3Dプリンター、もう一つは産業用の3Dプリンターです。実はこれは、ガートナーのテクノロジーハイプサイクルなのですけれども、個人用の3Dプリンターはいわゆる死の谷に向かっているという状況でして、最終的に家庭に普及するかどうかはわからないという状況になっています。ただ、産業用の3Dプリンターに関しては安定拡大していくという状況でございまして、ここを混在されると3Dプリンティングの技術の状況が若干ぼやけるかなと考えています。
ですので、要は家庭の3Dプリンターというのは左側のものでして、どちらかというと試作が中心のところになりまして、右側の産業用の3Dプリンターというのは、試作ではなく最終製品の領域に組み込まれていくというところで、2つは現状で言うと使い方、目的が若干違うという形になっております。
3Dプリンティングでものをつくるというところなのですが、いわゆる金型ですとか切削機械でものをつくるよりもはるかに簡単にできるというところがすごく利点でして、データをつくり、そのデータを3Dプリンターに入れるとものができるということですが、基本的には3Dデータをつくれば、それを一個一個スライスしていって、一個一個積み上げていく、いわゆる足し算型の技術というのが3Dプリンティングの裏側の技術になっていまして、光だったり、レーザーだったり、溶かしていったりといろいろな手法がございます。
今、3Dプリンターに関しては、家庭用のものに関しては主にプラスチックが中心なのですが、産業用のものに関してはプラスチックだけでなく、いわゆる宇宙船のエンジンみたいなものはチタンでつくられていたりとか、航空宇宙部品に耐えられるプラスチック素材もございますし、あるいは生体に吸収できる素材を使うとインプラントで使えるみたいな話だったり、非常に素材もバリエーションも多く、かつ、いろいろな領域で使われているという状況になります。
この領域がなぜここ数年盛り上がってきたかというところですが、実は2009年に家庭用の3Dプリンターの特許が切れたということで、今、例えば大手の流通さんなどに3~5万円くらいで売っているというところです。実は、産業用の3Dプリンターというのは2014年1月から徐々に特許が切れ始めまして、それこそ今はキヤノンさんですとか、東芝さん、リコーさんなどの日本メーカーも参入してくるという状況になっております。
2014年から産業用の3Dプリンターの特許が切れ始めたところで、ダイレクト・デジタル・マニファクチュアリングということで、データからダイレクトに最終製品をつくるという流れが徐々に起きつつあるという状況でございます。ただ、まだ単価が高いところではあるので、グローバルで見た時に航空宇宙ですとか、軍事、医療が今は大きなところを占めている形になります。
こちらのマーケットですけれども、経産省さんのレポートですが、2020年にデジタルのものづくりによって創出されるマーケットというのが、いわゆる最終製品市場というのが10兆円ぐらい起こるだろうと言われております。その中の1割が、いわゆるメーカーズムーブメントの中の個人が大体1兆円ぐらいを担うのではないかと言われております。
あと、今まではいわゆる試作ですとか、インダストリー4.0という言葉がキーワードになりますけれども、製造効率化というマーケットも10兆円あると言われております。3Dプリンター自体のマーケットは、今は上方修正されて1兆円から2兆円ぐらいになっているのですけれども、これぐらいのインパクトであるという形になります。
事例の御紹介になるのですが、先ほど御紹介させていただきましたローカルモーターズみたいな、こちらは車版のリラックスみたいな形で、オープンに世界中のプロダクトデザイナーですとか機構、エンジニア、電気系のエンジニアというのがデータを共有し合って、皆でコンペをし合ってフラットに車をつくっていくというメーカーでございまして、今こういう流れがあるというところでございます。
あと、いろいろな技術の領域で言うと、特許が切れ始めて非常に速度も上がっているというところで、先日グーグルが買収したベンチャーなのですけれども、今は25倍から100倍にグッと上がるということが起こっていたりですとか、電子回路もプリンティングするというところがイスラエルのベンチャーで出てきたり、ハーバード大学のベンチャーから出てきたり、素材開発もすごく伸びておりまして、MITがガラス素材を開発するということをやっていたり、かつ、家庭用のプリンターも素材開発がすごく進んでおりまして、ちょうど直近でいうと鉄とかブロンズ、陶器といったような素材も家庭用でできるという形で今動きつつあります。
他方で、今インテルですとかグーグルが、いわゆるスマートフォンやタブレットの中のモジュールを3Dスキャン化していくということもやられていまして、これが数年でスマホの中に入っていくということになると、誰しもが3Dスキャナーを持つという形になりまして、そうなるといわゆるウエアラブル、IoTみたいなデバイスが、例えば自分の眼鏡ですとか、自分の服や靴のインソールを自分に合ったものをつくると。よく、ECサイトで服を買うのも面倒くさい、買いにくいというのも、自分でぱっととればそういうものが自動で行われるみたいなことができるようになると考えています。
こうした領域、インダストリー4.0ですとか、インダストリアルインターネットというような形で今動いておりまして、3Dプリンターだけではなく、デジタルの製作機械ですとかロボットなどを組み合わせて、最終的にワンクリックでものがつくられるような世界に持っていこうという流れが今、世界中で起こっておりまして、日本でも日本版インダストリー4.0という形でこういう流れが起こっています。
デジタルのものづくりがもたらす変化というところで幾つかピックアップさせていただければと思うのですが、いわゆる生産の主流が、規格品からテーラーメード品に当たり前のようになっていくということを言われていたり、あと、いわゆる開発の機械がすごく速くなっていく。かつ、在庫もデータだけ抱えていれば適量生産が行われるというところが非常に大きなメリットであると考えていまして、プラスいわゆるオープンにものをつくるという流れで、例えば、それが個人も巻き込んだ形の、ちょうど今やらせていただいている例ですけれども、個人と製造業が共同してものをつくるというような流れが今まさに起本日としていると思います。
ただ、この中にリスクもございまして、デジタルコピーという形で3Dスキャナーと3Dプリンター、特にスマートフォンで3Dデータができるとなれば、本当にものを簡単にコピーできるようになりまして、非常に利用者のモラルが求められるようになると考えています。
かつ、コピーライトの領域もまさにいろいろなデータとものをどう規定するかというところにおいて、著作権の問題が生じるかなと思っています。
ちょうど米国でDIYに関するような法律がございまして、例えば、購入者が自動車の製造工程に50%以上携わることで衝突試験などの規制が免除されるみたいなものがありまして、こういうことをやるとオープンイノベーション型、オープン型にものをつくるということがやりやすくなるのかなと考えています。
あとは、ソフトとハードのオープンな仕組みとしまして、例えば、ソフトウエアの世界ですと、オープンコンテンツですとか、オープンソースソフトウエアみたいなものがありますけれども、ハードウエアの世界に関しては、先ほどの3Dデザイナーを巻き込んでオープンにデザインしていくみたいなことですとか、オープンソースハードウエアみたいなものが出てきます。我々も同様に使っているのですけれども、クリエイティブコモンズという形で、いわゆるコピーライトとパブリックドメインの間をきちんと規定するということは、我々のプラットフォームとしても規定して、データの流通を管理するみたいなことをやっていまして、緩やかなボトムアップの仕組みを今、我々としても導入しております。
ちなみに、弊社のやっていることですが、弊社自身は最終的にデータがあれば何でもものをつくるというところを目指しておりまして、その時に今我々として個人のマーケットプレースですとか、B to Bの法人様の事業ですとか、工場向けの事業をやっています。ただ、我々がやっていることは3Dプリンターメーカーでもなく工場でもないと。我々がやっているのはデータを適切に解析して、最適な技術や最適な生産工場を選び出すというような技術、あるいはデータを構造解析して変換するような技術をメーンに持たせていただいておりまして、そういったところが強いチームでやらせていただいております。
裏側の工場さん自体は、全世界30カ国以上でグローバルな分散製造ネットワークという形でつながせていただいておりまして、彼らの遊休期間を活用させていただくという仕組みでやらせていただいております。
あわせて、工場様の生産効率性を上げるようなクラウドサービスも御提供していまして、工場の支援を一方でやりながら、逆にメーカーさんの支援でマスカスタマイゼーションを簡単にするようなソリューションを提供する。製造サービスとマスカスタマイゼーションが簡単にできる、3Dデータを簡単に改編できるようなエンジンを御提供するというようなことをやらせていただいています。
それが、今は自動車だけではなくて、例えば、ゲームのドラゴンクエストで、自分で主人公のキャラを育てると、それが成長していくのですけれども、それが今は3Dデータ化されているので、ワンクリックでものづくりのデータに変換しまして、自分でフィギュアをつくるみたいなことですとか、あるいは3D記念写真館みたいなことを、ちょうど今ロフトさんの有楽町店と渋谷店と梅田店で展開させていただいていまして、その場所に行くとスキャナーがありまして、100分の1秒撮ると御自身のペットやお子さんが3D記念写真になるというような事業をやらせていただいています。これも裏側のプラットフォーム、製造ネットワークを御提供させていただくというような形でやらせていただいております。
我々のビジネスモデルは、半分がITであり、半分が製造業であるという形でございます。
以上でございます。ありがとうございました。
○中村委員長 スマホに3Dスキャナーが入るとなると、鍵の写真を撮ったら、家でこれがコピーできるということですか。とっても便利ですけれども、いろいろ問題も起きそうだということで、さあ、どうするというわけです。どうもありがとうございました。
今ありました現状なども踏まえつつ、事務局から説明があった論点について議論をいただきたいと思います。この議論には稲田さんにも参加いただければと思いますが、皆さんから質問でもコメントでも何でも結構ですので、あればお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
水越さん、どうぞ。
○水越委員 プレゼンテーションどうもありがとうございました。せっかくですのでお聞きしたいのですけれども、コミュニティーの中で3Dデザイナーという方たちがいて、本日の論点にも非常に関わると思うのですが、その方たちの今の潮流といいますか、いわゆる自分のデータに関する考え方、または、権利の帰属等についての考え方ですけれども、その方たちが一旦デザインをした3Dデータというものは、基本的にはデザイナーに帰属しながら一定の利用を認めるというのが一般的な考え方なのでしょうか。そのあたりを教えていただければと思います。
○稲田参考人 御質問ありがとうございます。基本的には、今いる3Dのクリエイターの方というのは非常に業界が幅広く、大きく分けて3DCGと3DCADというものがありまして、3DCADの場合はいわゆる製造業の方が多い、いわゆるインダストリアルデザイナーの方が多いです。3DCGの方は、いわゆる映画業界ですとか、ゲーム業界ですとか、建築業界のいわゆる3DCGモデラーという方が多いという形で、基本的には皆さんのデータはその方々に帰属するという形が今の通例になっています。
ただ、もう少しすると、いわゆるマッシュアップ、リミックスみたいなことが発生してくるので、先ほども御紹介させていただいた、いわゆるクリエイティブコモンズ的な流れ、例えば、ベースのデータをうまく改編して、8割ベースのデータを使いながら2割を改編するみたいな流れが今後起こってくると考えております。
こちらでお答えになっていますでしょうか。
○水越委員 どうもありがとうございます。
○中村委員長 亀井委員、お願いします。
○亀井委員 御説明ありがとうございました。ちょっと質問させていただきたいのですが、プラットフォーマーとしてビジネスをされるということですが、そのプラットフォームの会員というべきか参加される方の間の3Dデータの流通においては、何か技術的に会員しかアクセスできないような形にされているのか、あるいはもっとオープンな場でデータを流しておられて、クリエイティブコモンズのライセンス条件で使ってもいいよという形でされているのか、データ流通に関してどういう感覚で保護をお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
○稲田参考人 弊社の場合、基本的には例えば、マーケットプレースでこういった名刺ケースがありますと。これが6,000円で買えますとあるのですが、このデータは基本的には我々のデータベースで保持していまして、通常であれば入手できないような環境になっております。このあたりのセキュリティーは盤石でやらせていただいていると。
ただ、この方が、いわゆるリミックスを促進するためにデータを公開してもいいよという場合は、例えば、これはペットボトルのキャップのデータですが、こういうデータをリミックスを持って公開したいという時は、こういうクリエイティブコモンズを表示しまして、商用がOKなのか、そうでないのかみたいなことをその方が意思表示をして、データを公開するというアーキテクチャーを今とっている形になります。
○亀井委員 そこで公開されたデータには、特に制限等はかけられていない状況なのですか。
○稲田参考人 今は、DRMはかけていない形にしています。
○亀井委員 ありがとうございました。
○中村委員長 瀬尾さん、どうぞ。
○瀬尾委員 非常に技術の進歩でどんどん世の中が変わっていくのですけれども、今ここでいろいろ考えているのですが、この場で必要なこと、知財の戦略的に何をここで考えたらいいかというのは、すごいビジネスがどんどんできますねといっても、まだこれはわからないわけですよね。いろいろ試行錯誤されている。ただ、この仕組みの本質は何かとずっと考えていたのですけれども、基本的には今まで平面しかコピーできなかったものが立体がコピーできるようになりました。その時に、今のこれを見ているとワンオフ、今まで高くて、要するに1品製作するような試作品みたいなものは高かったわけですよね。なかなかできなかった。それが非常に気軽にできるようになってきたし、究極的には例えば、肉体の一部分であるとか、個人の本当に1個しか要らないようなものが気軽にと言ってはおかしいですが、非常に簡単にできるようになってきた。つまり、この利用の本質は、人間は全員が違う、1億人がいたら1億人が違うのですけれども、その1人ずつにぴったり適合するものをつくれる技術という方向なのではないかと私は理解したんです。そこに利用の一番の有益性があるのかなと考えました。一応そうだとすると、基本的にもとはスキャンなんですよね。リアルな何らかのスキャン。例えば、体内データのスキャンであるとか、もしくは自分でイメージとしてデザインしてもいいのですけれども、そのデータ自体が非常に重要で、非常に個別的で大量につくれないものがあったとします。実際にある工業製品とかものを複製してコピーするというのは、この技術のニーズの中では比較的サブなのではないかと思ったんです。つまり、もとにあるものをこれを使ってわざわざパコパコつくるというのは、単に型をつくらなくてはいけないものがつくらなくていいとか手法的に簡単になるだけであって、今までと余り変わらないと思いました。
ということは、今我々が考えなければいけないのは、リアルのものをスキャンしたり、自分でつくった3Dデータ自体をどうやって保護すべきか、すべきではないのかということなのではないかと思うのですけれども、私は基本的に、スキャンデータは著作権ではないと思うし、知財の中で例えば特許とか意匠登録といったものの中で、何らかでこのデータを保護するべきか、保護すべきでないのかというところが、ここの部分だし、それを奨励してどういう形で推進していくかということが、多分今後の戦略になるのではないかと思います。
こういう大元の部分を考えていかないと、目の前の技術のすばらしさにとらわれてしまと、何していいかよくわからなくなるし、このコピーはいけないとか、単純に具体的事例を一個ずつ言っていっても、わからないビジネスを考えてもしようがないので、今私が考えているのは、まとめて言うと、個別制作、利用者1人ずつに対応できるような製品をつくっていくというのが、この技術の方向性とすばらしさと利用価値の中心であるとすると、その中で、もととなるデータをどのように整理して守るべきか、守らないべきかということを、まず我々は現在の知財の制度と照らし合わせて考えてみるというのが手順ではないでしょうか。そうしないと、漠として、いきなりこれを見て知財でどうするのと言われても結構困りますよね。なので、そういうふうに議論の方向を絞って考えていくことが、まずこういう時には必要なのではないかと感じました。
○中村委員長 ありがとうございます。
私も、これは事務局と整理したわけではないのですけれども、本日事務局から出していただいているのは、論点を整理してみましたというもので、一体何が本当に我々が議論すべき論点なのかということを整理するというのが、まず求められていることだろうと私も思います。そのあたりは皆さん、いかがでしょうか。
○稲田参考人 ちなみに、プラスαでお話しさせていただいてもよろしいでしょうか。
先ほどのお話ですけれども、いわゆるマスカスタマイゼーション、オーダーメード医療、その人1人に合ったところに対するソリューションとして、こうしたデジタルものづくりがすごく破壊力があるのではないかというところで、今むしろそこが一番の議論のポイントではないかというお話だったと思いますけれども、今、我々は製造業の方々、例えば、金型メーカーさんみたいなところとお付き合いさせていただいておりましてすごく感じるところは、プロダクトライフサイクルというところが非常に短くなってきていることです。というのは、生活者がすごく細分化しているので、今までのプロダクトライフサイクルだと考えられないような短いサイクルになってきていて、それが今までの100万ロット、1,000万ロットみたいなところであれば金型で済んでいたのですけれども、今は小ロット、中ロットといった領域が非常に増えている。それが既存の金型の技術だともう追いつかない。ですので、そういった商品が既につくられなくなっているというような背景がありまして、先進的な金型メーカーさんなどは、こういったデジタル製造技術を活用して、要は小ロット、中ロット量産に対応していくというところが非常に伸びております。
パイとしても、いわゆる既存の製造においてこうしたテール、小ロット、中ロットのところは非常に伸びているところでございまして、こういうところは先ほどオープンイノベーションみたいな話で、個人を巻き込んでいくみたいなこともあったのですけれども、それはどちらかというとオプションの話でして、むしろライフサイクルをすごく短くしていくというところで使われているのが今の流れではあるということを補足させていただきたいと思います。
○中村委員長 いかがでしょうか。水越さん、お願いします。
○水越委員 論点について冒頭に横尾局長からお話がありましたけれども、3DプリンティングとIoTと、ものに関わるということで日本に強みとしても生かされますし、非常に重要なテーマだと考えております。その上で、先ほどのプレゼンテーションの中でオープンイノベーションというお話がありましたが、いかにこれを活性化していくのかというところが1点目の視点になるのではないかと思います。活性化していくに当たって、1つには、作成者がどういう時に侵害行為になるかをはっきりさせる、元に著作物性があるものを単に立体化したのだったら、それは著作権侵害ですと。それ以外には権利は付与しなくていいのではないかと私は思っているのですけれども、とにかく侵害行為をはっきりさせる。
2番目に、プラットフォーマーの責任をはっきりさせる。このレジュメの中に今のプロバイダ責任制限法の考え方で、その中に明らかな侵害物があればもちろん削除したり、そういう対応をする必要があると。プラットフォーマーといっても今のプレゼンの中にありましたように、何か解析をしたり、二次的に利用するというものから、単に流すというものまでいろいろあると思いますけれども、その責任のとり方の外縁をはっきりさせる。
3つ目に、応用美術との区別が出ていますけれども、椅子の例が出ていますが、意匠で保護されないものについて著作権法で保護を拡大するのかというところも、リアルとデータ、またリアルというふうに行ったり来たりする時に、現実のものが今の工業所有権で保護されない場合に著作権が拡大して保護をするのかという点は、難しい問題だと思いますけれども、ここが明らかにならないと、これから3Dスキャナーがスマートフォンに入ってくるとか、誰でもできるということになった時に、どこまでのリアルのものをデータ化してつくっていいのかをはっきりさせるというのが、比較的重大なテーマではないかと思って、論点という意味で3つ思いつきましたので挙げさせていただければと思います。
○中村委員長 福井さん、お願いします。
○福井委員 多少、雑感の部分なんですけれども、今、皆さんの話を伺っていて、やはりこの問題も一億総発信者的な社会の変化の視点を抜きには語れないように思いました。
瀬尾さんの発言に対する補足のようになりますが、どのくらいの期間で普及するかはともかく、私が感じたこうした技術による市場の可能性は3点です。1点目は、今おっしゃったカスタマイズの領域です。2点目は、事務局が挙げていただいているデッドストック、生産終了品の領域です。3点目は、現在極めて小ロットで高価に販売されているような商品の領域です。こういうものは、あえて模倣のものをつくって、低価格で自分のために手に入れるという需要がありそうですから、ビジネスチャンスがあるのかなという気がしました。
その意味でどのくらい期間がかかるかはともかく、確実に伸びていく、少なくともその可能性は十分あるなと感じました。そうなった時に、これは恐らくデータにおけるコピー流通の容易性と、ほぼパラレルに同じようなことが起きるのではないか。つまり、皆が発信が容易になると、少なくともデータ部分の価値というのは競争過多が起きますから、どうしても下がっていかざるを得ないのでないかという気がします。つまり、知財が対象とするようなデザインデータの部分というのは、無料でもいいからアップしたい、宣伝・広報のためにアップしたい、あるいは自分の行動の成果をみんなに見てもらいたいからアップしたいというような発信者が世界的に増えていくと、どうしても価格競争にさらされて価格が下がっていきますので、そういう情報、データの部分を仮に権利で今以上に強く守ったとして、それにお金を払って買ってくれる人がどのくらいいるかなという問題が出てくるような気がします。つまり、権利を与えることの実効性、言い方を変えればものづくりのビジネスモデルがどう変わっていくかということ抜きにしては語れないような気がしたのです。
そうすると、これもやはり二次元のコンテンツと同様に、場というものの影響がどうして大きくなってくるのではないか。まさにプラットフォーマーの方に本日来ていただきましたけれども、プラットフォームというデータがやりとりされる場はきっとマネタイズできるだろうなと。そういう場所の影響の議論と一緒に考えていくといいのかなと、雑駁ですが思いました。
以上です。
○中村委員長 ほかにありますでしょうか。亀井さん、お願いします。
○亀井委員 事務局がせっかく整理された論点について、私見を述べたいと思います。
知財で現状保護される意匠権、著作権があるものをオリジナルにしてデータ化するということについては、元の権利がかなりきく部分があるという整理をされていると思うし、そこは権利をきかなくするという議論も余りないという気もします。
一方で、ちょっと足りなさそうなのが、12ページでしょうか、間接侵害で述べられた、「物」に本当にデータが入るのかというのは微妙ですので、書くならば特許法のように確定的に何か書くかということにすれば、3Dデータの頒布行為に対する規律というものは結構できるのではないかと。
一方で、著作権法や特許法、意匠法もありますけれども、著作権法であれば私的領域で行うこと、つまり自分でコピーはしてみたけれども別に販売はしないという行為については、引き続き認める価値はあるだろうと。意匠権、特許権になると、そこは業としてではないから権利が及ばないということになりますので、何か考える余地があるのかもしれないという程度に思います。ただ、試験研究のための実施というものは今でも認められていますが、同様に除外されるような価値観を維持すべき、つまり、今の法体系の中で結構語れる部分が多いのではないかというのが印象です。
一方で、保護されていないものをオリジナルにするものというのは、まだ疑問の域を出ないのですが、なぜ格別に3Dデータだと保護しなければならないのかということが1つ。大体データの状態というのは使ってみないと何だかわからないので、データの状態でどうするのか。そうしたものは現状、これは第1回目の時にも申し上げましたけれども、長い人類の発展の中で基本的にはフリーにしてきたものが多くて、だんだん知財という形で保護すべきものを確定してきたということがあるのですが、今日現在で3Dデータだけ何か保護を厚く与えることが、時が満ちているのかとか、そういう気がしております。
なお、不正競争防止法の話について、ここでは知財で保護されていない場合と書かれているのですが、不競法はむしろ知財の保護の一部だと思いますので、形態模倣だとか、あるいは形態模倣にかからないような、例えば、昔のものをデータ化して再現するというのは、場合によっては商品等表示にかかるとか、ある程度のものは現状でも保護されるものがあるのかなと思います。
以上でございます。
○中村委員長 川上委員どうぞ。
○川上委員 この論点整理の資料はよくまとまっていると思っていて、これで話すことはないのではないかと思っているのですけれども、まず、3Dデータだけを取り立てて保護する必要はないと思います。現状でも3Dプリンターが出てきたので、こういう議論が出てきたのだと思いますけれども、3Dスキャナー自身は完全なデジタル化、実際にあるものをデータとしてコピーする行為ですので、それ自体で何らかの権利が追加して発生するということに関しては、賛同される方は少ないのではないかと思う点がまず1点あります。
データ自体に価値を認めるということに関しては、ここにも書かれていますけれども、現状でも3Dデータというのは3Dスキャナーでとったデータ、3Dプリンター用のデータというのは最終的につくるある静的なデータなんですね。ところが、今は多分重要なデータというものは、こういったスキャンしたデータではなくて、例えばカスタマイズするような場合というのは、CADでつくったようなある程度変形可能なデータだったりとか、例えば、アニメーションをつくる場合などは、多分キャラクターというのは実際の寄り集めたものではなくて、骨が入っている状態で動かして、いろいろな形、ポーズをさせたりとか、そういう加工可能なデータをつくっているんです。そちらのほうが有効性があるものなんです。なので、保護するのであれば、そういったより加工しやすい、変形しやすい3Dデータを保護すべきであって、このようなデジタイズされたデータそのものに権利が発生するという考え方は、私はおかしいなと思います。
以上です。
○中村委員長 上野さん、どうぞ。
○上野委員 私からも、多くの論点がある中で、本日事務局に整理していただきました知的財産権の関係についてお話ししたいと思います。
1つ目は、既に知的財産権の対象になっているものについてですけれども、先ほど家庭用3Dプリンターは落ちているという話がありましたけれども、将来、非常に高度化して何でもダウンロードして買うという時代が来るのかもしれないと思っております。昔はCDを買ったけれども、今はダウンロードでしか買わないという人もいるわけで、これからさまざまな実用品を含めてダウンロードして買うと。そうなりますと、そのデータを無断でアップしてしまう人もいるかもしれませんし、そういうものがなくても、さっきのような3Dスキャンしてアップするという人も出てくるかもしれない。この3Dデータの取り扱いをどうすべきかということかと思いますけれども、著作物と言えれば著作権が及びますから、このデータをつくること、アップロードすること、送信すること全部に権利が及ぶと言えるのですけれども、著作物と言えるかというのがやはり難しい問題で、先ほどからも御指摘があるところかと思います。
フィギュアとかでしたら著作物の対象になるものかと思いますが、時計とかジュエリーといったプロダクトデザインについては応用美術の問題になりますので、今は非常に不透明なところにあると思います。TRIPP TRAPP判決は非常に画期的なのですけれども、ごく最近、加湿器に関する判決も出たりしまして、これは著作物でないという判断でしたので、それを幾らスキャンしてアップしても著作権侵害にならないということになります。そうすると、これは意匠法で保護されているということになるわけですけれども、これも事務局から御紹介がありましたように、間接侵害に当たるためにはものと言えなければいけないということになります。現状では特許法上のものということを準用しまして、プログラム等ということで、プログラムデータでなくても「等」も入るわけですけれども、このプログラム等に当たるためには、処理のように供する情報であって、かつ、プログラムに準ずるものということが必要とされています。このプログラムに準ずるものというのは何なのかということが大きな問題になるわけですけれども、単に処理されるというだけではだめだということになっていますので、現状この3Dデータがプログラム等に当たるとはっきりとは言えないのではないかと私は思っていますし、この点は立法的な対応の検討が少なくとも必要だろうと思っております。
2点目で、知的財産でないものについて3Dデータを貸した作成者の保護ということも確かに問題だろうと思います。これは、3Dデータの促進や活性化ということになりますと、こうしたものを作成した人を保護しなければならないのではないかという議論があって当然だろうと思います。確かに、3Dデータをつくるとかスキャンするというのも素人目にはスキャンするだけかと思いきや、はやりその作成にさまざまな工夫や投資を必要とするものもあるからではないかと思います。そうすると、さきほど御紹介があったように、著作権法上の設計図と言えれば、そこに固有の創作性があって著作権で保護されるということになるのだろうと思いますけれども、過去の議論でも楽譜というのが音楽と別に創作性があるかと考えると、なかなか難しいところがあります。そうだとしますと、やはり固有の権利ということで、これも前回の創作性にならないようなデータベースについて、sui generisという形で新しい権利をつくるのかということが問題になるということは検討されようかと思いますけれども、さっきも亀井さんがおっしゃったことと似ていますが、デジタル化権と昔から言って、デジタル化を促進するためにデジタル化した人に権利を与えるかという議論も昔はあったわけですけれども、やはりそれはやらなくてよかったということかもしれませんので、これはかなり慎重になったほうがいいのかもしれないと思っております。
以上です。
○中村委員長 瀬尾さん、どうぞ。
○瀬尾委員 先ほどのいわゆる金型や何かだとお金がかかってしまうけど、小ロットでできると。これはまさに印刷のDTPと一緒ですよね。版をつくっていっぱいやるのにお金がかかったけれども、今はデジタルの進歩で100部からできるとか、10部でもできると。それによって非常によくなってきた。同じことの立体版なのではないかと思っているのですけれども、これは奨励してこれからビジネスが展開してくればいろいろ問題は起きるかもしれないですけれども、基本的に今の枠組みでそれが進歩してきたということなので、知財面からいくと正直言ってそれほど目新しい部分というのはない。ただし、今、上野先生もおっしゃられましたけれども、唯一あるとすると、立体物をスキャンしたデータというのは、単純に計測、長さ何センチ、重さ何グラムに類するものだと、これは著作権もなければどこまで保護するのという話はあるけれども、創作したデータがあったとしますよね。例えば、さっき川上さんがおっしゃった、いわゆる3Dアニメのもとがワイアードされて表面が張りつけられた、いわゆるそういうデジタルデータ上の人がいたりすると、そういうデータについての保護を、これはプログラムの保護と言って全部著作権で押し込めてしまうというのは、やはり私は違和感があって、それこそこの前話が出た新しい権利なのか、新しい権利をつくると世界的に通用しないかもしれませんけれども、上野先生のおっしゃるように、隣接権の中でそれ自体というよりは、何か最終的な効果を得るための一歩手前なのだけれども、そこに創作性と全ての創作物の根源が加えられているという部分について、何らかの権利をやっていかないと、またデータベースの権利のように全部著作権に入れてきて、最強の著作権という権利で守るとまた阻害することになると、若干それよりも軽い体裁の権利というのは、ここでも必要とされてきているのではないかという気がうっすらとします。そういう形で将来的なものは考えるにしても、今の時点で余り手を入れないほうが市場の形成には有利かなという感じがします。
○中村委員長 川上委員どうぞ。
○川上委員 プログラムの話が出ましたので、プログラミングとこういうデータをつくるということなのですけれども、これはほぼ区別ができなくなってきています。今のプログラミングというのは大体ビジュアル化が進んでいて、もともとプログラムというのはデータの部分とコードの部分が分かれているのですけれども、それが一体となったものがプログラムです。それが独自に進化していて、データをつくるものもプログラムのようなものが書けるようになっているし、プログラム自体もデータ構造と一体化したつくり方ができるようになっていて、多分プログラミングに対して著作権が認められているという現状を考えると、普通に考えるとこれは認められないとおかしいという論理矛盾は起こると思います。なので、それが正しいかどうかというのは別にして、私は、これは著作物になるのが当然の流れだと思います。でも、デジタル化する行為に対してやるというは多分違うと思っていて、実際に3Dプリンターでも本当に有用なものというのは、コンピューター上で何らかのツールをつくって、きっと一からつくったものだと思います。そのツールをつくるという行為は、プログラミングと基本的には区別がつかないようになりますし、現時点でもほぼそうなりつつありますというのが現状です。
○中村委員長 ありがとうございました。
いろいろ御意見をいただきました。3Dデータのみ取り上げて保護をする妥当性はどうか、慎重に扱うべきではないかという意見がありましたが、一方で、ただ、この分野を活性する方向性は必要であろうと。そのために必要な、例えばプラットフォームの責任の明確化などの検討は重要であるという御指摘。とはいえ、こういったものが進んでいくと、二次元のコンテンツと同様にプラットフォームの議論になっていく。そういった将来も見据えてのシステムの設計が必要だという御意見をいただいたということで、また事務局のほうで整理をいただいて、論点のところをブラッシュアップしてもらえればと思いますし、次回の会合でももし積み残しのところがあれば、この分野についても議論をするチャンスはあると思いますので、ひとまずこの件についてはこのあたりにしたいと思います。ありがとうございます。
では、次の議題であります「AIによって生み出される創作物の取り扱い」の議論に移りたいと思います。
ここで、カブクの稲田様には退席をいただくということでございます。どうもありがとうございました。また質問などする機会があろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○稲田参考人 よろしくお願いします。ありがとうございました。
○中村委員長 では、AIについて事務局から論点の説明をお願いできますでしょうか。
○中野参事官補佐 それでは、資料2に沿って御説明をさせていただきたいと思います。
まず、こちらも資料の構成ですが、3部構成になっております。
最初に、人工知能が創作することについての現状の御説明です。次に、AIの創作物が知財制度にどう影響を与えるかということに関する分析。最後に、知財システムとしてAI創作物をどう扱っていくかという論点、これはこちらで思いつくものを幾つか提示したもので、全てについて御議論いただく必要があるというものではなく、一つの視点として考えられるものを整理してございます。
それでは、資料の説明をさせていただきますが、3ページからでございます。まず「人工知能の進化と社会像」ということで、1回目の11月の会合の時に出した資料を加工したものでございます。
今、人工知能は人の作業の補助をするというところに使われてきているわけですが、だんだんそれが賢くなってきていて、今は人間が教えたルールに基づいて情報処理するというところが、自分で特徴を抽出して分析するというような段階、さらには、自分で創作するという段階までいくのではないかということが言われてきております。
4ページ以降も幾つか事例を御紹介してございます。4ページは、音楽の分野での人工知能を使った取り組みの事例ということで、スペインのマラガ大学というところですが、これは楽曲をつくることができると。楽譜の形でアウトプットすることができるということで、実際にアウトプットしたもの、コンピューターが出してきた楽譜をオーケストラが演奏すると。それを収録してCDにして売るみたいなこともやっていると。このCDは売れていないということは言われていますが、そういった試みもなされてきております。
5ページは、ロゴマークのデザインをするという人工知能の例で、これも実際にビジネスとして使われているものでございます。アメリカの会社でございますが、これは無料のお試しでやってみたものを載せていますが、会社名やどんな事業をやっているかとか、どんなイメージのものが近いですかといったような選択肢を選んでいくと、右側にあるような幾つかのパターンをつくってくれると。この過程において人工知能でやっていますということが説明されているものでございます。
6ページは、もう少し複雑な創作の例で、これは有名な事例ですが、AIに小説を書かせようというものでございます。AIが書いた小説がそのまま人が全く関わらずに出てきているところまでは聞こえてきておりませんが、関与したようなものを今、賞の募集にも出しているというようなことが言われてきております。
また、7ページは、デザインの分野に関する研究ということで、例1ですと、椅子のデータを大量に与えることで、椅子とは何かを人工知能が学習して、それをもとに椅子というのは足があり、腕があり、背もたれがあるという組み合わせの中でデザインをつくっていくというような研究もなされているという事例でございます。
ここまでは事例、こんな研究・取り組みがなされているというものでございますが、次からこういった動きを踏まえつつ、AI創作物が知財にどういう影響を与えるのかという分析を記載してございます。
9ページ、生じつつある変化でございますが、人間の創作物と見分けのつかない情報が生成される状況になりつつあるのではないかと。最初に御説明した作曲をする人工知能の場合、それをそのままオーケストラが使っているということが言われておりまして、そのまま使うということも可能。場合によっては人手を加えて使うということも可能という状況になってきているのかなと考えております。
10ページでございます。人工知能がつくったものをそのまま使うということもできるようになっているわけですが、では、それが現行法制度上どういう扱いになるかを整理したもので、人工知能が自立的につくったものについては、今の制度では権利の対象と考えられてはおりません。これは著作権であれ、発明・デザインであれ、そういう行為をするのは人間であるという前提でつくられていますので、AIがポコっと出してきたものについては、権利はないというのが制度上の整理でございます。
その整理は整理で明確ではあるのですが、とはいえ、実態として人による創作物とAI創作物というのは、そんなに線がしっかり引けるかというと、そこは明瞭ではない部分もあるということで、ではどこに境界線があるのかを過去の検討から拾ってきたものが11ページ以降になりますが、著作権の分野で過去検討がされておりまして、人間の創作行為を完全に代替しているわけではなくて、人が道具としてコンピューターを使っているということが実態なので、それは人による創作だろうということが平成5年に整理されております。
12ページ、道具として使っているというのはどういうことなのかを書いてございますが、使用する人の意図、創作の意図と創作的寄与ということが加わっていることによって、道具として使っていると考えられるということが、過去の文化庁の審議会で整理されているものでございます。
この辺は文章が多いので13ページで、結局、人による創作物とAI創作物はどこが境界線なのかということをイラストに落とし込んで整理してみました。こういうことなのかなという整理でございます。上のほうの人による創作は、権利が発生するというのは間違いないだろうと。AIによる創作については権利は特に生まれないというもので、他方でAIを道具として使うという人が意図を持って、かつ、創作的に寄与もしてAIに働きかけをして出てきたものであれば、権利が生まれるというような構造に理屈上はなっていると。
これで何が問題かということを分析したのが14ページです。知財制度上起こり得る懸念ということで、AI創作物の特徴として、見分けがつかない、外見上はわからないと。そうすると、つくったところに関与した人がそうだと言わない限り、人間による創作物と同様に扱われ得るであろうと。かつ、たくさんつくるということがAIは可能だということでございまして、これを前提として考えると、AIで創作物をつくった人が特段そうだということを言うメリットがなければ、言わずに人間がつくったものだという形にして流通利用する状況になるのではないかということで、そうすると、一見権利がある創作物に見えるものが増えることになるのではないかと。それも仮説に仮説を重ねた形にはなりますが、そうやって増えていくと人工知能を利用できる者が大量の権利のある情報を独占すると。個人であるクリエイターが幾つかつくったとしても、既に類似のものは公表なり登録なりされていて、個人のつくったものは使えなくなるというような想像も働くわけでございまして、こういったことが起こる可能性も考えつつ、そうすると、AI創作物の知財制度上の取り扱いというのは、改めて検討が必要ではないかというのが分析・問題提起でございます。
次の3からが、どういうふうに制度上論点があるか、これも分解して少し考え方として御提示させていただいたものでございます。
16ページでございますが、今の人間を前提とした権利保護の仕組みをそのまま適用するとまずそうという予感がするわけですが、それが本当かどうか、もう一回分解して検討してみてはどうかということでございます。分解する過程で著作物に該当する、著作権で保護されない情報と発明・デザインと分けて整理してございます。
まず、上の著作物の場合ですが、著作権と同等の保護を付与すると考えた場合については、権利のある創作物が爆発的に増えることになるのかなというところ。
他方で、下の一切知財権が発生しないとした場合、完全に自由に使いましょうとみんなが合意した時に何が起こるかというのが右側の枠に書いてあるところで、自由に使えてしまうということで、保護が必要だという人ほどAIがつくったとは言わなくなってしまうのではないかということで、そうすると結局、上と同じような、みなし人間創作物みたいなものがたくさん出てくるということで、結局創作物が大量に増えるという、どちらとも同じ結論になるということではないかと。そうすると、もう少し中間的なというか、別の仕組みも考えることが必要ではないかというような説を立てて記載してございます。
17ページは、発明・デザインの場合に何が起こるかということもシミュレーションしてみたものでございます。上の枠は、今の人間の創作物と同じように特許権と似たような権利を与えるといった場合に何が起こるかということで、特許等については審査、登録という仕組みがありますので、それをそのまま適用すると考えると、別にAIがつくった全てのものについて権利が生まれるわけではないと。登録されたものについて生まれるという意味で、情報独占の懸念はそこまで大きくないのではないかというような考え方もできるかと思います。
他方で、登録までAIが自分でやるというところまでいってしまうと、できたものをどんどん要件に合えば登録するということで権利をとっていくということになってしまうと、やはり権利のある情報というのが増えることになるのではないかと。特許の登録・維持に料金の問題があるので、そこは軽減される可能性もあるかなと思いますが、分量の違いだけであって、やはり保護が多くなるのではないかという分析をしてございます。
18ページ、19ページ以降は1つのテーマで、ここまでも仮説に仮説に仮説ぐらいを重ねているので、いろいろ御議論はあろうかと思いますが、突き詰めてどこまでいくか考えてみたものでございます。どうやら既存の制度の当てはめも、保護をしないのも難しいそうだとなった時に、新しい仕組みが必要なのではないかということも発想として出てくるかなということでございます。それがもし必要だとなった場合に、それは何なのかということも幾つかの要因に分解して整理してみたものでございます。
ア)として、主体の何を守ろうとしているのかという保護法益ということで、誰に権利を帰属させるのか、それはなぜなのかというところが最初の論点になろうかと思います。候補としては、プログラムの開発者とAIに学習をさせたデータの提供者、あとは最終的にAIを使って創作の指示をした人というところが考えられると思いますが、それぞれどのように評価するかということがあろうかと思います。
それぞれの立場も違うということで、矢印の下に書いてございますが、①②、プログラムと学習用データというところは創作のためのインプットでございますので、生成物に対しても寄与したというようなことも言えるのではないかと思いますが、主体と考えることが適当かどうかというところでございます。
指示をした人というのは、指示の度合いによっても関与の度合いが違ってくる、あるいは組み合わせになってくるところがございますが、それをどう評価するかということでございます。
創作過程への関与という意味では、指示をしてできたものから選ぶというようなAと書いてあるような場合もあれば、指示はする、ボタンは押すけれども、出てきたものもどれがいいかということもAIが選んでしまって出てくるぐらいの、単に注文しているだけみたいな状態になる場合もあると思います。
また、創作環境に投資ということで、人工知能を自分が利用可能にするために開発したり購入するといったような行為、こういったところをどう評価するかという側面もあろうかと思います。
19ページは、権利の内容ということで、仮に権利を付与する場合に、その利益に照らしてどういう内容にするのかということで、保護期間ですとか差止請求権の有無ですとか、範囲といったことも論点になろうかということで挙げてございます。
最後、20ページでございます。同じくAI創作物を対象とした新しい知財が必要だとなった時に、それはという議論の続きですが、権利の発生要件ということで、どういうふうに権利の対象物を特定するのかということでございます。これも既存の知財の考え方を見ると2つのアプローチがあり得るかなということで、1つは客観的要件ということで、でき上がったものに対しての要件を設ける。特許では新規性、進歩性みたいな要件がございますが、それに似たような要件を設けるというような考え方。あとは、手続のところで登録をもって認めるというような、今はこの組み合わせで知財制度が成り立っているわけでございますが、こういったアプローチをどう考えるかというところでございます。
最後に、エ)ということで自然人の創作保護との関係についても、この議論を突き詰めていくと思考が及ぶというところで整理してございます。仮にAI創作物について方式主義、登録主義のようなものを採用するとなった場合に著作物については、自然人の創作は無方式で、AIの場合は方式という違いが生まれることになるというところをどのように考えるかということでございます。当然、自然に考えると、善意に任せておくだけでは便利な無方式主義ということになっていくのではないかと。AI創作物の方式主義というのをしっかり機能させたい、社会にインフラとしてやりたいというところまで議論がいくのであれば、それは何らかそこに誘導するようなインセンティブ設計、これは自然人には創作の手を加えるということも含めて、そういったことも考えていく必要があるのではないかという問題提起をさせていただいております。○中村委員長 ありがとうございました。
では、議論に移りたいと思いますが、この論点に関連いたしまして、本日は赤松委員からプレゼンをお願いしたいと思っております。赤松さん、よろしくお願いいたします。
○赤松委員 プレゼンといいますか、この回は少し真面目過ぎませんか。川上さん、3Dプリンターなんかネットで言わせると、エッチな萌えフィギュアをつくる機械ですよね。私はそういう認識でありがとうございましたとさっき申し上げたのですけれども、今回の委員会で私が最も主張したい部分がようやく出てきたと。それは、日本に今、留学生とかいっぱいいらっしゃいますけれども、昔は科学技術とか学びに来たものですけれども、今の留学生は皆さん、日本の漫画・アニメを楽しみにやってくることがすごく多いと。
椅子とかフォントとかロゴとかもいいですけれども、AIによって生み出されるキャラクターの取り扱いこそが、実は日本が最も得意とするもので、世界に先駆けて保護を推進したらどうかという主張をこの場でさせていただきたいと思います。結論を先に言いましたけれども。
まず、AIで人々に好かれる顔、これは私は最初のこの会合で言ったのですけれども、絵柄は目とか鼻とか口とかいろいろ品詞分解みたいなことができるんです。最近は、鼻などは点になってしまっていますけれども、昔はもう少し長かったりします。左は綾波レイです。目などは横が2で、縦が1です。右は、まどかマギカですけれども、大体縦が2で、横1です。こういう形で、はやりの絵柄というのはパラメーターで割と管理していけるんです。まどかマギカの顔の横長度はすごいですけれども、これよく受けたと思いますが、かわいいですよね。こういうような形で、どんどんはやり廃りがあって、私の見たところ、これをグラフ化すると、どうも最近はこんな感じの絵がはやりだみたいなものをAIがいずれわかるようになるのではないかと。もし、そういうことができるようになったら、我々が目指すのは世界的に好かれやすい萌えキャラ、萌え萌えをAIが作製し続けると。それをキャラクター商品として世界に輸出する。萌えを予想して、文化を輸出して、日本のファンをつくっていこうと。そういうことは韓国はドラマとかでガンガンやっているわけですよ。それは国外です。
国内に関しては、好かれやすいゆるキャラ、ゆるキャラもみんな似たようなものですけれども、いかにも好かれるのは決まっています。そういうものをAIでつくって、国民に愛されるシンボルにすると。何でAIがつくるかというと、デザイナーがつくると萌えキャラは結構裁判になったりすることがあるようなので、抽象的なものはAIがつくったらいいのではないかと。
最もマネタイズしやすいのはキャラクターの権利、キャラクターをAIにつくらせるのが一番有利なのではないかと思っています。これをつくる人をプロデューサー、略して「P」と言いますけれども、私は漫画家なのですけれども、元プログラマーなのです。デザインができてプログラムができるクリエイター、私みたいな者が一番儲かる道というものをこれから提案させていただきたいと思います。
その前に、AIとは関係ないのですけれども、作者と創作物の関係性について新情報を。これは、私の作品の「ラブひな」というもので、中学生のすごく人気のあったキャラクター、前原しのぶちゃんです。しのぶちゃんは最初、けなげでかわいかったのですけれども、巻数がたつにつれて右側のように、派手でバタバタするようなキャラになっていったのですが、私が徹夜して結構どうでもよくなった時に、Aのところに結構どうでもいいセリフを入れてしまったんですよ。そうしたら読者から苦情が来まして、ファンレターで「しのぶちゃんはこんな物言いはしません、先生」と言われたんです。私が描いたのだから正解ですよね。それは、しのぶちゃんというのは、その時に既にキャラ立ちしていたと。キャラ立ちするというのは、そのキャラクターの性格や行動、表情といった情報が読者みんなに知れ渡って、1人の独立した人格として認識されることです。このしのぶちゃんがどういうことを言うか、どういう動きをするかというのは、誰もが想像できると。私は、それに反したセリフを入れてしまったということなのです。これはすごく重要なことで、キャラ立ちするというのと、作者に対して文句を言うというのは、覚えておいていただきたいと思います。
ここで、問いなのですけれども、私が適当に書いたセリフと読者が感じるキャラクターの一貫性のどちらが正しいかと。上野先生、これは、どちらが正しいのですか。私ですよね。
○上野委員 はい。
○赤松委員 法的には私が正しいんですよ。ただ、商業ベースに乗ると私の自由よりも読者の幸せとか作品の品質が優先する、キャラクターの一貫性が勝ちます。私が無理やり適当なキャラにしてしまうと、作品は売れなくて死んでしまうということですよね。こういうものというのは、この間のオリンピックのロゴで、あれはどうも著作権的にはいいのではないかということでしたけれども、実際に使うのは国民なので、法律とか関係なしで、国民が憎んだらそれはやっぱりだめになってしまうと。
ここで仮説ですけれども、キャラ立ちした創作キャラクター、これはAIでも何でもそうですけれども、民衆に守られるために作者よりも強いと。ルパン三世は、モンキーパンチ先生でも殺せませんよ。殺したら大変なことになってしまうから。尾田先生がルフィを殺せないのと同じことですけれども、産業になってしまったら殺せないわけですよ。
ここで、ついでの問いなのですけれども、これは福井先生とよく議論しているのですが、明らかに傑作なのだけれども、作者が気に入っていないので封印された作品Aというのがあります。そういうものは結構あるのですが、作品Aの作者というのは福井先生、正しいのですか。
○福井委員 たしか著作権的にはできますね。
○赤松委員 ですよね。この委員会というのが作家の本意至上主義なのか、作品本意なのかというのが、私はまだ結構わかりかねているのですが、私は作者ではあるのだけれども、割と作品本意主義なんですよ。実際に、小坂理絵という先生の傑作があるのですが、私は絵が気に入っていないからと電子化させないんですよ。私はすごくムカついています。全然関係ない話ですみません。
次に、創作キャラクターの容姿です。これは3Dキャラクターのsayaちゃん。私、好き、これ。これといったモデルの人物はいないそうなのですけれども、実際に作者の方々が言っているのですが、このキャラクターをしゃべらせる、動かすと。そうなった場合、さっき私が申し上げた一貫性でキャラ立ちした場合に、もし、変なことを言ったら、TELYUKAさん、石川夫妻は批判される可能性が高いですよね。sayaちゃんはそんな子じゃないと。
AIが容姿を持って声と個性を持ってキャラ立ちすると、アイドルのように国民の支持を得られる立場になり得ると。それは純粋性とか、恋愛禁止とか、我々、特にオタクの理想像を具現化しているわけですよ。日本は特に、初音ミクもそうなのですけれども、CGキャラに求心力がある国です。なおかつ、ポケモンの例などでいくと、ポケモンの絵柄は全世界展開できてしまうと。萌えとか格好いいというものをどんどん世界に認めさせて、どんどん共通のものになりつつあるというのが私の認識なんです。
ここからが本題で、先ほどの椅子、小説、フォント、ロゴもいいですけれども、我々が目指すべきは、最大に有用なのはAIがキャラクターをつくり、それと同一化すると。AI自身が容姿を持って、今iPhoneにSiriがいますけれども、Siriは容姿がないですよね。だから、いまいち感情移入できないです。声と性格を得て、しかも、ずっとしばらく同じような、ルパン三世だったらルパンの声というのは、我々はすぐわかるではないですか。初音ミクのような形で、一貫性を保ち続けてキャラ立ちしたと。その時に、そのAIがここに挙げられたような歌を歌ったり、ショートショートを書いたり、アイドル活動をしたり、モデル活動をしたり、作詞作曲する、そういうことを行っていたとした時に、先ほど申し上げた、誰もが知る癖が一貫性を持ってあった時に、私はそれに著作者人格権めいたものを認められるようにしたらどうかということを提案したわけです。しかも、その創作物の権利自体は赤松Pが持つということで、この時点ではAIは道具の延長と考える。
それで、ここがポイントです。AIが登録した著作物は免税。すると、Pである私が創作するよりも有利なので、どんどんAIのキャラクターの開発に専念すると。先ほど言いましたけれども、客が失望するようなキャラ崩壊しない程度でAIのバージョンアップもしていくと。その中で歌や小説も輸出してしまうのですけれども、このAI自体もミクのようにどんどん輸出して、売り上げ2倍になってしまうのではないかというようなことを考えたわけです。
初音ミクは、シンセサイザーの一種です。ただ、これが画期的だったのは、この容姿がついたことです。これによって我々は結構夢中になってしまうと。これは感情移入しやすい一つのシンボルなんです。AIをつくる時には、容姿、声、性格を入れておくとすごくいいですよ。将来的にPである私がAIの創作活動に全く助力しなくてもよくなった、完全フルオート創作になった時には、彼女に何らかの人権めいたものを認めてはどうかと。その時に道具の延長ではないですよ。特許とか意匠を認めて、著作権も認めると。ただし、先ほど私が言いましたけれども、その場合は私よりもAIの方が強い。強いという場合でも、そのAIが建築津物を設計して事故になった時には、私には責任がないというふうにしてほしいなと。作者より強くなったから、キャラは作者に言われても不公平ですよね。ただし、収益は全てPにしてしまうと。それで贈与して、贈与税が入っちゃうよみたいな形でどうかなと。
今回の結論なのですけれども、この間私はフランスに行ってきました。ジャパンエキスポのゲストに招かれたのですけれども、79年に「ゴルドラック」というアニメをやっていまして、日本では要するに「グレンダイザー」です。視聴率が100%だったんですよ。37年前ですけれども、フランスは日本が好きになった、今、現役で働いている方々はみんな日本が好き。それは「ゴルドラック」のおかげだと私は思っています。
こういうふうにして、日本が好きだというものをどんどんAIの分野でも世界に発信していって、日本を好きになってもらうと。その日本の進む道は、科学の分野はちょっと間に合わないので、ソフトウエア、人工知能などの部分で日本が世界を引っ張っていこうと。そのためにはキャラクター分野ではないかという主張を今回させていただきました。
以上です。
○中村委員長 ありがとうございました。
AIが爆発的に生む知財の扱いをどうするのかという論点と、AI、キャラとか萌えなどを新興していって輸出する戦略をどう考えるか。ほかにもいろいろ論点があろうかと思いますけれども、議論に移りたいと思います。
今、事務局から説明のあった論点ですとか、赤松さんの問題提起について質問、コメント、御意見があれば、お出しいただければと思います。
福井さんから。
○福井委員 では、口火を切ります。赤松さん、ありがとうと言うほどおもしろいプレゼンでした。また、事務局のまとめも大変すばらしくて、恐らくこれについての総括的な芯を食った議論をするには、本日は残り時間が少なそうな気がしますので、若干持ち越しなのかなということは予想しつつ、少し感じたところをお話しします。
今、委員長がおっしゃったとおり、AIというのは理論上はポテンシャルには爆発的にコンテンツを生み出し得る存在です。御紹介いただいたラムスは8分で1曲ということになっていますが、あれはたしか楽譜として人が読める状態に出力するのに妙に時間がかかるシステムで、東大・名大がつくっているオルフェウスは、1曲20秒でつくります。このペースでつくり続けると、1システムで年間157万曲つくります。これはどんな分量かというと、2年間でJASRACが管理している全世界のプロの楽曲数に匹敵します。つまり、かなり爆発的に理論的にはつくり得る。そんなふうに、少なくともゴッホや宮澤賢治クラスの天才には及ばないかもしれないが、マーケティングが妙にうまいものだから、市場性というものは十分見込める1,000万円単位、億単位のコンテンツが生まれるような状況を想定して制度論を展開するのか。あるいは今、赤松さんが展開した、どちらかというとかなり強い着想を持った方が、比較的数の限られたAI創作物をつくる、そういう状況を想定するかで、恐らく制度の議論というのは大きく変わってくると思うんです。
すごくざっくりした言い方をすれば、特定の人にしかつくり出せないようなすばらしいAI創作物であるならば、恐らくその過程にはその人の個性というものが十分反映されており、そういう作品は数が少なく、知的財産権を与えても十分ワークするだろうと思います。
一方で、万人がそのツールを利用すれば、幾らでもつくり出せるようなAI創作物を想定するならば、それは万人がやれるであるがゆえに数は恐らくあふれるだろうと思います。そうすると、ギガコンテンツというようなあふれたものに果たして知的財産権を与えて、それはインセンティブを守る上でワークするのか、あるいは収益を生み出す上でワークするのか。このことを考えてみるべきだろうと思います。
もしも、万人がつくり出せるようなAI創作物を想定するならば、今ここで赤松さんがプレゼンしたこの作品は、恐らく既に似たようなキャラクターをAI創作によってつくっている他人から訴えられてしまって、つぶされてしまう可能性が十分にあります。そして、輸出しようとしても、万人が簡単につくり出せてしまうものであるがゆえに、輸出がうまくいかないかもしれません。そういったAI創作の爆発量をどこまで想定するか、こんなことも議論には影響を与えるかなと思いました。
以上です。
○中村委員長 瀬尾委員どうぞ。
○瀬尾委員 写真にすごく似ているんですよ。写真は、もともとフィルムから全部つくっていて、普通の人が使えなかった。自分でフィルムの暗室をつくってやるから高かったのですけれども、今は携帯でみんな撮れますよね。ただ、これが音楽に変わっただけで、進歩によって誰もができるようになる状況というのはほぼ同じなんです。ただ、写真というのは人が撮っているということで、今は著作物ということで著作権がありますけれども、この前のデータからも続きますけれども、人格がないわけです。これは機械がやるわけだから、思想または感情を表現していないわけですよね。オペレートしたプログラムをつくる人にはプログラムの著作権があるだろうけれども。今言った数万曲、数億曲がどんどん浮遊している中で、それに全部著作権というのは、当初、著作権が想定していたものとは違う目的になってしまっているような気がするんです。だから、これについては何らかの軽い保護が要るのか、もしくは基本的にはないけれども、若干何らかの登録か何かによって持たせるのか。保護がなくていいとは言いません。だけれども、著作権と切り分けていかないと人格がない、思想または感情を表現していない創作物について、少なくとも隣接権の可能性はあると思いますけれども、著作権そのものを当てはめることはあり得ないかなと思います。
それともう一つ、例えば、先ほどのロゴの話があるではないですか。これをやったとします。例えば、資料2の5ページ、下の段のFは紅茶のFAUCHONに似ているなとかあるかもしれません。例えば、音楽でも何でも自動生成したものが既存のものとほぼ同じものができてしまった場合に、それは著作権侵害になるのでしょうか。それを調べる義務は誰にあるのでしょうか。そして、もし知らないで、これは自動生成だからということを証明したら免責してくれるのであればいいけれども、使っても著作権侵害で訴えられて、これは自動生成だということが証明できたら無罪。でも、侵害の事実は残りますよね。そういうことは特にシンプルなものほど物すごくあり得るんです。例えば、ロゴなどだったら、まさにどこかの商標と絶対に当たりますよね。そうしたら、それはどうするのですかという問題があります。
ですから、自動生成物を非常に促進するべきなのか、それとも一定の枠をはめるべきなのか、保護すべきなのかというそもそもの中でいくと、著作権以外のシステムによって私は保護もあるべきだと思うけれども、今言ったような責任もあるでしょうし、そこの部分をきちんとしていく、著作権よりもう少し軽いプラマイの制度がない限り、これを著作権の土俵に持っていったら侵害行為も非常に膨大ですし、いろいろなことが起きると思います。ただし、これについては促進していくべきという、技術の進歩を多くの人に享受していくべきという側面がありますから、どうやって生かすかについては、さっきの問題と違って、知財の面からまずよく考えて制度設計をしないと、逆に変なリスクを生んでしまうことになるので、私はこれについてはよく制度を考えて促進できるように考えた方がいいと思います。リスクはかなり高いシステムだと今考えています。
○中村委員長 川上委員どうぞ。
○川上委員 今、瀬尾さんが言われたことはすごくおもしろかったのですけれども、そうすると、もし、AIに著作権が認められた場合、自動生成していた場合、2つのAIがあった場合にどちらが先にこのロゴをつくったのかみたいな、そういうわけのわからない議論になってしまって、基本は機械でつくったものに著作権を認めると大変困った問題が起こるというのは、これは非常によくわかる話だと思いますけれども、問題は、論点整理のところにも書いてありましたけれども、人間がつくったものと区別がつかなくなる可能性が高い。そうした場合、これは自分がつくったものだと言い放った人に対してどう対抗するのかというのは基本的にはできないだろうと。では、その中で何を考えるのかというと、この中で登録制にすべきではないかと言われていましたけれども、結局、人間の区別がないのだったら登録制にしても結果的には同じことで、著作物に勝手に権利が発生してしまうという状態は避けられない。そうすると、現行の著作権自体を登録制に変えないと成り立たないというのが、書いてはいないけれども、この結論だと思うんです。
そうすると、それはどういう状況なのかというと、例えば、何かヒット小説、ヒットアニメ、ヒット映画をつくりましたと。そうすると、どこかのサーバーにアップされている創作物で、これは俺がつくったものだと、サブマリンコンテンツみたいなものが現れて訴えられるみたいなことが起こった時にどうするのかというのが一番わかりやすいと思うのですが、そうすると、著作権というのは今後、商標権に近いようなものになっていくと。つまり、作品そのものよりも今の芸能人などがわかりやすいと思いますが、例えば、SMAPの権利はどこにあるのかというので、いつも移籍の時に問題になりますけれども、大体名前の争いになるんです。なぜかというと、芸能人の名前に対して事務所はすごく投資、マーケティングコストをかけているので、それを勝手に持っていかれるのはずるいという論法なのですけれども、多分、現実問題として、機械の著作権が大量にあふれた世の中の場合は、それをつくったのが誰かというよりも、それを使って世の中に広めて、プロモーションして認知してもらって、そこに価値が生まれるのだと思います。それを保護するというのがきっと現実的な話なのだろうと。そうすると、つくっているかどうかではなくて、著作物が実際に使われていて世の中でどれだけ認知されているのかというところがきっと争点になると、多分、現実ではそういうことが起こるのだと思います。結果的に、無登録主義というのは変わらないのかもしれませんけれども、実際の侵害判断においては、多分商標権と似たような議論で解釈されるようになるのだと思います。
赤松さんが言われているのも多分、そういう世界に近い話だと思っていて、結局つくったものよりも、お客さんが認知しているところに実際の価値が表れるのだということだと思うんです。そこの価値をどうやって保護するのかという議論になっていくのではないかというのが、私の感じたことです。
以上です。
○中村委員長 亀井委員どうぞ。
○亀井委員 ありがとうございます。次回、都合で出られませんので一言だけ申し上げます。
事務局が整理されたように、多分、一見著作物というものが増えるのかもしれないということは、そのとおりだと思います。ただ、現状でも一見著作物というものは世の中に多数あると思います。瀬尾さんがおっしゃったのも同じようなことかと思いますが。結局、事実上それで何が起きているかというと、現実にそれをリスペクトして保護する形で世の中が動いていると。保護がある理由というのは、恐らく究極的というか、それは法律の目的だと思いますけれども、個別に目の前にあるものを利用した時に、裁判所に行って裁判でどう判断されるかという意味で多分、保護があるのだと思いますので、今せっかく皆さん頭が立法論に行っているところにちょっと脱力的なのですけれども、裁判に任せればいいのではないのというのが正直な感想です。結局、著作権法で創作性があるかないかというのは、別にAIに限らず、そういう形で処理されているわけですので、しばらく委ねればいいのではないかと。仮に登録制があるとしても、登録する時に判断できるのかというそもそもの問題があって、本人の言いなりでやるわけなので、余り変わらないかなという気もいたします。したがって、ちょっと世の中の推移に根ざして考えると。
それから、今、川上さんのおっしゃった点、あるいは赤松さんがプレゼンテーションされたような、プロデューサー的な地位にある人がそれで利益を上げている時に、それに対してどう保護するかというのは、何か頭の体操の中であるのかもしれませんけれども、それは一切著作権とは関わりがない、商売をどう守るかという観点になるのではないかと思いました。
以上です。
○中村委員長 水越委員どうぞ。
○水越委員 今の亀井さんの裁判に任せればいいというところで、全てのものが自動化ということにはまだ時間がかかるでしょうから、その過程で創作性というところの取り扱いで、今、創作者という人間がつくったところから話が入っているわけですけれども、高い価値を有するとか、萌えキャラとかも含めて新しい手法で新しい価値を有するとか、創作性というものについてAIが関与もしくは自動生成したとしても、人間がつくったとしても創作性を認める場合というのはどういう価値を持っているのかという検討が一つ必要ではないかと思ったのと、先ほど川上さんのお話で、商標の使用主義的な使用と結びついたような話があったのですけれども、作品について考えてみると、例えば死んでしまってから売れるとか、人間の可能性として後から気づかれる芸術とかそういうものもあるので、これからAI著作物と人間のつくったもので、しかも、すごく新しい価値を持っているものと、すごく簡単なものが混在するところの問題だと思いますので、その中で人間がつくったものであるがゆえに芸術性が後から認められるとかそういうこともあると思うので、著作権法では小さめな論点かもしれませんけれども、補足が必要かなと思います。
3つ目が、いろいろな価値のすごく多い、大量の著作物ができてきた時に、差止を全て認めるのかとか、社会が混乱するほど濫用的な状況というものが見られるようであったら、それについては手当が必要なのではないかと思いましたので、思いついた3つについて述べさせていただきました。
○中村委員長 上野委員どうぞ。
○上野委員 赤松先生から先ほど非常に興味深いお話をお伺いしまして、AIによって生み出された、言ってみたらバーチャルキャラクターみたいなものの人格、物心ともの保護、AIがつくり出したもの、それ自体というよりつくり出したキャラの保護ということで非常に興味深いのですが、まだ私の中でうまく整理できませんので、AIによって作成されたものについての保護に関して少しコメントしたいと思います。
冷めた見方をする人は、AIとか別に20年前、30年前からあったのではないかということで、本当に質的な違いがあるのかということを言われるかもしれないと思うところもありまして、確かに膨大な量が見分けもつかないではないかという指摘があるとしても、例えば、洞窟に入ったら非常に美しい模様が壁にあって、それを持って帰った人がいるわけです。あるいは鍾乳洞に入ったら非常に美しい彫刻のみたいなものがあって、それを持って帰ったらその人がつくったのかもしれないとわからないわけですけれども、そういうものは著作権がないと考えてきたわけです。ただ、そういうものが非常に膨大になってきて、量的なものが質的な違いになってくるとしますと、改めて検討が必要ではないかという事務局のお考えに私は賛成します。
ただ、著作権の世界の従来の考えによりますと、整理されているとおりですけれども、人間がつくったものが保護の対象になっていますので、AIが道具と言える限りにおきましては、人間がつくったものになりますから保護されますけれども、そうではないと知財ということになってきません。確かに、市場的な価値というのはあるわけですが、従来の知財法の趣旨というのは、そうした市場的に価値を持ったデータを保護するということではなく、クリエイターによって人がつくったという行為、あるいは人を保護するということですので、だからこそ猿がつくったものについても保護は与えられないということになるわけです。ただ、そうすると、AIがつくったものについては全然コピーしてもフリーライド、自由でいいのかということには確かになるところで、何らかの保護が必要ではないかというところは私も理解するところです。そこでは選択肢がたくさんありますので、これは先ほど瀬尾委員からもお話がありましたように、さまざまなものがあり得ると思います。
sui generisとか隣接権という時は、別に創作と関係なくても投資があるというだけでも保護の理由になりますので、インセンティブにとって本当に必要だということであれば、そうしたものも選択肢の一つにはなろうかと思います。ただ、差し当たり、その必要性が現在あるのかなというところは、個人的には少し疑問に思っているところがありますし、また、AIが作成したものというのは、例えば自動翻訳されたものとか、さまざま似たようなものがありますので、区別できるのかなとは思っております。
以上の話は、AIによって作成されたものの保護ということなのですけれども、いろいろお話を聞いてちょっと心配になるのは、AIに新たな創作物をつくらせるという時に、既存の例えば小説などを全部入力してそこから予測とか、あるいは既存の漫画を全部入れて、次に流行るものをつくらせるという時に、解析という限りでは現状の著作権法、現行法の話になってしまいますけれども、第47条の7などが許容されるところかと思いますが、でき上がったAI作成物が元のたくさんビッグデータとして入力したものの創作的寄与が残ってしまっていると、断片であっても著作権侵害になりかねないのではないかと思います。完全に消化しているというので消えてしまっていればいいわけですけれども、ちょっと心配が残るところです。
これは、前に亀井委員からも別の委員会で、新しい自動翻訳などで、既存の入力した文章が一部出てきてしまって、それが著作権侵害に当たるとなると問題ではないかという御指摘があったわけですけれども、同じようなことがここでも検討課題にはなり得るかなと思います。
以上です。
○中村委員長 山口委員どうぞ。
○山口委員 私からはぜひ、赤松先生に御質問申し上げたいのですけれども、その前提として、少し私の考えを述べさせていただければと存じます。本日のセッションにおける3Dプリンティングの話もこのAIの話も、基本的には、そこで創られるものや関連する創作物等については、現行法の枠組みに基づいて――知財ないし著作権のみで対応するかどうかは別にしても――、ある程度は対応できそうだというのが、おそらく法律家としての率直な感覚ではないかと思います。先ほどの、コンピューターが創ったものに関する30年前の議論と何がどう違うのかという論点もありますが、本委員会での議論の趣旨としては、次世代の知財のシステムについて、何か新しい制度づくりができないか、ないしはイノベイティブなことができるのではないかということを目指して、この議論の場が設定されていると思いますので、現行法の枠組みをベースにしつつも、あえて少しその先を目据えて何ができるかという観点から、御質問したいと思います。
赤松先生に御用意いただいた資料3の最後から2ページ分について、御質問の前に、もう少し私の考えを述べます。ちなみに、この議論に関して、本委員会の最初の方のセッションにおいて、ここでターゲットにする議論のタイムスパンをどのように設定するかをめぐって、比較的現在の延長線上で考えるのか、それとも、例えばAIでも今の私たちが思いつかないような先の時代――赤松先生が書いてくださったように、ある意味で人格をもった殆どSFのようなものも含めて大きな話をするのかについて、意見交換をしたところです。そこで、タイムスパンで議論を分けて、まずは比較的現在の話として現行法の基本原則なども適用される設定で考えてみますと、ここに書かれているようにAIが人格をもつ段階になったとしても、この資料では「P」ないし「これを作る人」やプログラミングをした人が常に「美味しい」思いをするという話になっているような気がしますが、それほど「P」がうまく儲かる話にはなかなかならないように思います。といいますのも、例えば、AIの行為によって、ないしはAIがつくり出した創作物の行為によって、何らかの法的な帰結がもたらされた場合に、仮にプラス面としての権利や利益を享受するのが「P」であれば、そのマイナス面としてそれに伴う責任も負うはずということになり、必ず権利主体と責任主体がセットになって論じられるというのが、やはりフェアであるように思います。
そして次に、現時点ではとても考えられない未来の次世代システムの下で、仮の設定での話ですが、人間の機能を一部どころか全部代替するようなAIが登場して、そのAIがそれ相応の「人権」――知財の領域での権利の話のみならず、憲法上の基本的人権さえも――を認められる主体となった場合に、もしそのAIに先ほどの「P」がいたとしても、例えば使用者責任のような何らかの形でマイナス面での帰結も引き受けることになる可能性は否めませんので、常に「P」だけが「美味しい」思いをするというのは、やはり制度論としてはフェアではないと思います。いずれにしても、このような「P」の「美味しい」議論は、法制度としてバックアップするのは難しい気がします。
さて、ここで、先ほどの本委員会での議論の趣旨に立ち戻って考えてみますと、このような現行の法制度論の枠内で諸事を論じていると、技術の進歩とともに、少し先を見据えた制度設計をクリエイティブかつイノベイティブに行おうとしても、議論がなかなか前に進まなくなり、立法論としてのよいアイデアも出てこない、といったことになりかねません。AIの権利ないし責任の主体という論点に関しても、今後、AIの創作物によるマイナス面として、知財関係の他にも、例えば、場合によっては他人の名誉を毀損するかもしれず、個人情報の取扱いで問題があるかもしれず、また、公序良俗に反するようなものができてくるかもしれないという状況において、あえて、先ほどの制度設計において、マイナス面での帰結はさておいて、プラス面を重視して社会にとって望ましいものがつくり出せるインセンティブを与えるような法制度を新たに設計するとなれば、例えばどういうものが考えられるのかという具体的なアイデアが、必要になってくるように思います。
あくまでも例えばということですけれども、知財の領域の話ではありませんが、アメリカにおける1996年通信品位法の230条の下でのいわゆるISPないし中間媒介者の免責のあり方は、関係のステークホルダーの権利利益や責任をどのように規定するかをめぐって、ある意味では他国には見られないような形での制度の設計と運用が行われてきたことによって、もちろん議論があるところですが、今日のプラットフォーマーのビジネスを含むネット上の諸活動に、少なからぬ影響ないしはインプリケーションをもたらしてきたように思います。こうした通信品位法の下でのISP免責は、著作権法に基づく免責とはまた別の措置であって、知財の話と一概にパラレルには論じられませんが、特に今回のAIの話と絡めて、グローバル競争の中での今後の日本の制度設計として何ができるかという先見的なアイデアについて、コンテンツ・クリエーションの中心で革新的な試みをされている赤松先生のお話を、ぜひ、お伺いできればと思いますが、いかがでしょうか。
○赤松委員 私は、この委員会に参加した時に、皆さんがそのアイデアを出し合う会だと思っていたのですが。割と現実的なお話をしていたので。いろいろ考えてはいますけれども、それとは関係なしに、今、小説家になろうとか、DeNAのEエブリスタとかに小説が20万とか30万とか上がっているんですよ。特に小説家になろうというサイトは、我々オタクみたいな男が異世界に転生して活躍するのがほとんどなのですけれども、ただ、アニメ化もするし、読者もそれを望んでいたら別にいいんですよ。そういう中で20万とか30万の小説が実際にある、こういうものはAIがつくるまでもなく駄作も多いわけです。今現在、既に創作物の量産が現実にあると。これを研究してみると対策などもわかるかもしれない。実際問題でいうと対策はしなくていい。というのは、何十万もの小説があっても読まれないので問題にならないようですね。
新しいアイデアは皆さん出してください。私は無税にするのがいいと思っただけです。
○中村委員長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○瀬尾委員 たくさんできても使われたり、ヒットしたり、お金になるとは全然限りません。逆に、たくさんできればできるほどビッグヒットは難しくなってきて、似たものが出てきてしまうので、一定量というのは比例するのですけれども、もっと生活の中で、例えば、自分のホームページをつくるとか、本当に自分の軽微なところでそういうたくさんのいろいろな種類の著作物が使いやすくなる。だから、生活は豊かになりますが、これがいっぱい増えてきからといってビッグヒットでガンというのは、それは赤松さんがよくわかるでしょう。お金をガンと稼げるものをつくるというのは、いろいろなことをやった中で、たまたまあるわけであって、たくさんAIでできたからといってもビッグヒットはない。逆に、さきほどの稲田さんではないけれども、プロデューサーのようにたくさんつくったものの中から何を拾い出して、どう組み合わせて、どう企画するかという人の手によるビジネスのほうがビジネスになると私はすごく思います。
ですので、今回の大量になるというものの中でも、特別に利益を守りたいということがあった場合の方策が必要なのであって、全部著作権で守りましょうという議論にならなければ、これによってかなり皆さんの生活が豊かになるし、その中でいろいろな新しいビジネスチャンスはベンチャーがつくっていくべきだから、それを抑制しないような形にすれば、比較的いいのではないかと。ただ、今言う促進策をどうするかは難しい。逆に言うと、いわゆるアイデアとかビジネススキームをどうやっていくかということなので、赤松さんがあそこまでやっていても一発で儲かるものはないわけだから、それは民間に任せていくしかないのではないかと。ここでやることは変に抑止しないような制度にすることと、あと、きちんと著作権と切り分けていくこととか、もし必要であれば何らかの保護の政策をとるべきとか、あとは戦略的にそれをやったことに対してインセンティブになる、無税でもいいけれども、そういった税制の優遇とか何らかのインセンティブを与えて、どうやって促進するのかという総合的な施策を考えていくのであって、知財制度の面からやることというのは限定的なのではないかと、私はそのように思っています。
ともかくたくさん出て大変なことになってしまうことは当面余りないというのが、私の基本的な考えです。
○中村委員長 どうもありがとうございました。
ビジネスやキャラクターなどをどのように伸ばしていくのか、それを制度による保護あるいは税制も含めていいと思うのですけれども、そういったものでどのように生かしていくのか。それから、爆発的に増えてくるコンテンツによる混乱をどう押さえるのかといったことを同時に解く論点ですとか、方向性をどう設定するのかということが問われているのだと思いますけれども、こういった議論というのはこれまで扱ったことがないので、今ここでこうだという方向性を出すのは非常に難しいと思います。それぞれのテーマがどこまで緊急の課題なのかというスピード感も見据えて考えなければいけないと思うのですが、先ほどおっしゃったように、いろいろなタイムスパンもあると思います。目の前の問題を解決しなければいけないというものもあれば、10年後の状況を見据えるとか、あるいはAIでいうと2045年と言われるシンギュラリティのころを想定して頭をめぐらせて考える等いろいろあると思うのですけれども、ひょっとすると議論の結果、解決法としては裁判に任せるのが一番いいということになるかもしれません。
少なくともそんないろいろな議論をこの場で皆さんに出していただいて、知恵も絞っていただいて、こういう可能性があるとか、こういう論点があるということは我々としては明記していきたいと思っておりますので、今回は、まず1回目としての議論をしていただきましたけれども、もうワンラウンドぐらいチャンスはあると思いますので、もう一段の深掘りを次回ぐらいにしていただければということで、本日お出しいただいたコメントを事務局にもう一度整理していただきたいと思います。
ということで、予定していた時間になりましたので、本日はこのあたりとすることにしたいと思います。
本日もいろいろな議論がありました。横尾局長から一言いただきたいと思います。
○横尾局長 本日もいろいろな議論をありがとうございました。前半の3Dプリンティングの話は、新しいものづくりを日本の強みとして、これを活性化していこうという方向性のもとでどうするかを考えるのだと思います。そのときに、広い意味での知財で考えると、プラットフォーマーの影響力が増すことをどう考えるかというのはあるのですが、3Dプリンティングの出現が取り立てて新しい状況ではないのだろうなと。そういう中で、今の知財の法体系の中でのある種の整合性というかバランスで、本日出た元のものに知財があるとすれば、でき上がったデータが今の産業財産権法上のものに読めるのかどうかとか、元のものがない場合でも、創作性のあるデータをつくった時に、プログラムは著作物だけれども、ほぼ同等のデータが著作物でないとすることのバランスをどう考えるか。割と論点は絞られているかなという気もします。これも整理して次回にもう一度議論したいと思っています。
AIのほうは、そういう意味では今、中村委員長からあったように、より厄介なのですけれども、タイムスパンをどう考えるかというのがあるだろうと思いますけれども、現行の著作権法からすれば多分明らかで、思想・感情の表現は人の表現だから、AIがつくったものは著作物ではないとある意味明確なんです。そういう意味では、亀井委員がおっしゃるように、いいではないかというのが一つの有り様だと思いますけれども、早晩どんどん増えていく時に、大体これはAIの創作物ですと誰もきっと言わないでしょうから、外見上著作権があるものがどんどん増えていく場合にどうするのか。何か別のことを考えておかないと、本来あるべきでない著作権という強い権利が発生してしまうのを裁判任せていいかという、まさに上野委員がおっしゃった量が質に転化するのは早晩来るのではないかというのが問題意識ではあるので、そこはもう一度整理して議論したいと思っています。
ちなみに、実はアメリカでこの議論をもっとすればよかったなと今反省しているのですけれども、どこかであと何やっているのと聞かれたので、AIがつくる創作物の著作物性というか知財の扱いを議論しているんだよと言ったら、「へぇ、おもしろいね」とだけ言って余り反応してくれなかったんです。何でかなと帰ってからいろいろ考えたら、1つは、アメリカの著作権法は日本のように明確に思想・感情の表現みたいにはなっていないので、今のアメリカの著作権法上、まさに本日福井委員のネットのあれを読んでいたのですが、多分アメリカのプラットフォーマーはAI創作物に著作権を主張するのでしょうけれども、それは割とのみやすいのかもしれないと。他方で、それでバランスが崩れたら、ケース・バイ・ケースでフェアユースの考え方もあるしという、ある種のプラクティカルな方法なのかもしれない。日本の著作権法は、そういう意味では著作物の定義も、リバランスするところも、それほどある意味柔軟性がないというか、そこをどう考えるかというのがセットかなという気もしています。そういう意味では、その辺も含めて次回にもう一度この点は議論をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
○中村委員長 では、次回以降の会合について事務局からお願いします。
○中野参事官補佐 資料4ということで、スケジュールをお配りしております。次回については2月8日ということで、本日の議論の続きと、もう一つのテーマ「インターネット上の知財侵害への対応」を議論していきたいと思います。
以上です。
○中村委員長 それでは、本日の会合は閉会いたします。どうもありがとうございました。