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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成25年5月1日共生・共栄・協働がつくる新時代の日本・中東関係

日本国総理大臣・安倍晋三
2013年5月1日 於・キング・アブドルアジーズ大学

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I はじめに

 アッサラーム・アライクム。
 お集まりの皆さま、サウジアラビアにまた、やってくることができました。6年ぶりに訪問できましたことを、心から嬉しく思っています。
 さかのぼりますと、お国の政府要人が、わが国を初めて訪れたのは、サウジアラビア建国からわずかに6年目、1938年のことでした。それから数えまして、本年は、ちょうど3四半世紀に当たります。
 今回の旅をひとつの節目とし、私は、日本とサウジアラビア、日本と中東との、まったく新しい関係、いままでと異なる次元の結びつきを、作りたいと思っています。

II 産業連携に圧倒的広がりを――農業・医療まで

 今回の訪問には、わが国産業界のリーダーたちが、大勢同行してくれました。
 お国のサウジ・アラムコと、住友化学が折半出資したペトロ・ラービクは、押しも押されも、しない、世界有数のエチレン・センターになりました。
 トヨタ自動車は、「日本・サウジアラビア自動車技術高等研修所」を、大いに盛り立ててくれました。研修所は、ゆうに1000人を超す、自動車技術者を送り出しています。
 昨年12月には、いすゞ自動車のトラック組立工場が、サウジアラビアにオープンしました。
 こうした会社や、そこで働く日本人のみなさんは、わが国モノ作りの真髄を、サウジアラビアの若い世代へ伝授しようと、真剣な方ばかりです。
 みずみずしい日本の作物を、中東の食卓に届けるため、懸命な人がいれば、わが国に一日の長がある、画像診断や救急医療の分野で、当地の医療を充実させようと、やる気に燃える人たちもいます。
 もともと頑丈な日本製の太陽光パネルは、砂塵に耐える力を、みなさんとの協働によって、獲得していくでしょう。中東で、日本の力を加えて生まれる電力は、みなさんを、アジアと、欧州をつなぐ、一大グリッドの中心へ押し出すのです。
 中東の水道インフラに対しては、「漏水率」の低さを誇るわが国こそが、貢献できるはずです。
 東京の、漏水率をご存知ですか。実に、3%という低さです。ではこの数字は、半世紀前、どれくらいだったと思われますか。30%もありました。日本にできたことが、皆さんにできないはずはありません。その、お手伝いをしたいのです。
 みなさん、これからの中東と日本は、石油・ガスを超えた、経済・産業全般に及ぶ結びつきを強めていきます。それが両者の関係を、格段の高みへ持ち上げるでしょう。以前なら想像の及ばなかった広がりへと、われわれを導くでしょう。

III キーワードの1・共生と共栄=タアーイシュ

 若い中東、伸び盛りの中東、産業の高度化に向け、向上心のかたまりのような中東と、日本の産業力が結合するとき、そのシナジーたるや、いかばかりでしょうか。
 中東と日本の双方にとって、大いなる成長の機会が現れるのです。
 私はいま、日本経済を力強く復興させるため、三本の矢をいっぺんに放つ政策を実行しています。
 金融、財政、成長戦略という三本の矢です。
 これを強く、速く、間断なく射込むことで、日本を、再び活力に満ちた国にしようとしています。
 経済的に強い日本とは、みなさんが抱える課題を、一緒に考え、解決していく日本です。
 その、もてる経験、知見、技術をみなさんと共有し、中東の地で雇用を生み、付加価値の段階を、一緒に上って行く日本です。
 一方が売り手、他方が買い手という、一方通行の関係は、もはや過去のものになりました。
 資源の分野においてさえ、日本は、再生可能エネルギーや、世界一安全な、原子力発電の技術をご提供できます。
 中東と日本は、利害と、関心を共にするパートナーです。中東と日本の21世紀とは、共に生き、共に栄える、共生と、共栄の世紀なのです。

IV キーワードの2・協働=タアーウヌ

 経済・産業で、従来の枠を超越していく日本と中東は、もうひとつの超越を果たします。
 政治、安全保障の関係を、これからの日本と中東は、日に日に強くしていくのです。これが、英語で言うなら2つ目の「beyond」です。
 日本は昨年の11月、パレスチナにオブザーバー国家の資格を与える国連決議に対し、賛成の票を投じました。
 我が国は従来から、独立国家樹立に向けたパレスチナ人の悲願を理解し、その民族自決権を支持しています。
 イスラエルと、将来の独立したパレスチナ国家が、平和で、安全に共存する、いわゆる「二国家解決」をサポートしてきました。その立場から、賛成票を投じたのです。
 みなさん、ここからが、本当の難関です。
 パレスチナとイスラエルの両当事者には、一刻も早く直接交渉を始め、和平へ向けた努力を倍加する責任があります。
 中東各国にも、二国家解決に向け、知恵と、力を振り絞る責務が生じました。
 また、シリアで進む惨劇や、イランの核問題にも、目をつぶることはできません。
 中東から北アフリカにかけての一円に、いまや、歴史的転機が訪れています。
 だからこそ、当面する不安定の要素を取り除かなければなりません。
 安定と繁栄を享受する、希望の地、揺るぎない、成長の舞台を、当地にもたらさなくてはならないからです。
 その努力を、日本は一緒に担います。
 日本とサウジアラビアで、日本とアラブ首長国連邦(UAE)で、あるいは日本とトルコで、力を合わせ、地域一円の安定へ向け、袖をまくって、一緒に働こうではありませんか。
 わが国はみなさんと、協働、タアーウヌを進めるのです。

V 22億ドルを中東・北アフリカへ

 そのひとつとして、今度私は、訪問先のサウジアラビア、UAE、トルコのそれぞれで、安全保障に関わる対話を進めるよう提案します。
 私自身、できれば何度でも当地を訪れたいと思っていますが、わが国は中東各国との間で、首脳同士、あるいは、安全保障を担うハイレベルの当局者同士の間で、不断の協働を図ります。
 そればかりではありません。このたびわが政府は、中東から北アフリカにまたがる広い地域で、それぞれの国との協働を進め、安定と、平和を当地に根付かせる一助とするために、今後、22億ドル規模の支援を行うことにしました。
 私達のタアーウヌ、協働に、内実を与えるためにほかなりません。
 一緒に叡智を集めましょう。想像力をはばたかせましょう。みなさんの夢を、日本の、私たちの夢にさせてください。
 日本にはそのため進めた、パイロット事業があります。
 ヨルダン、イスラエル、パレスチナ。この、どれひとつが欠けても成就しない、「平和と繁栄の回廊」プロジェクトです。
 ヨルダン渓谷を、緑したたる沃野(よくや)とし、西岸地区の若者に、勤労の汗が、喜びの汗であることを知ってもらうための事業です。
 私は、中東の、躍進しつつある企業にも、この事業へぜひ参加してほしいと思っています。

VI キーワードの3・和と寛容=タサームフ

 そして、勤労の汗こそは、なにより尊いものであり、その汗を共に流し、達成の喜びを共にするところにこそ、和と、寛容の精神が生まれるということを、日本人はよく知っています。
 古来日本人は、水を分かち、乏しきを補い、力を出し合って、その年、その年の、みのりを喜ぶ伝統をはぐくんできました。
 ここに生まれたのが、和を重んじ、寛容をむねとする生き方です。
 現代の喧騒や、働き方の変化は、これを、衰えさせたと思っていました。
 そうではなかったと教えてくれたのは、東日本を襲った悲劇です。
 言語を絶する被害にあいながら、それでも助け合い、いたわりあって、乏しい救援物資を譲り合おうとする被災地の人々の態度こそは、寛容の心の崇高さにおいて、私たちを深く打ったのです。
 別の例を挙げましょう。
 日本のモノ作りの現場には、欧米企業の工場では当たり前の、分業がありません。
 例えば不良品の検出を、ラインの作業者が実施します。
 一方は、欠陥品を見つけたい。他方は、見つけられたくない。本来利益が相反する職種なのに、これが日本の工場現場で初めて、一人の作業者のうちに融合したのです。
 良いモノを作るという高次の目的に奉仕するため、互いに協力しあうことを喜びとする文化は、近代的工場の現場において生き続けました。和と、寛容の精神は、現代日本人に受け継がれて今に至るのです。
 だからこそ、私は、サウジアラビアやUAEの皆さんが、費用の負担などなんでもない、技術指導者を送ってくれと、日本に言っておられるのを聞いたとき、深い喜びを覚えました。
 これから日本は、サウジアラビア、UAEを手始めに、「コストシェア技術協力」という新機軸を始めます。
 経験豊かなJICAの専門家を、みなさんがたにコストを負担してもらったうえ、受け入れていただく方式です。
 彼ら日本の技術者は、モノづくりの「匠」としてのノウハウとともに、協力の精神、和と、寛容の心を、みなさんに伝える伝道師になるに違いありません。
 逆に、みなさんと深くつきあう日本の技術者たちは、イスラームがその根っこのところで、他者を愛し、受け入れる、深い寛容の泉を満々とたたえた教えだということを、肌身で学ぶことでしょう。みなさんがいつも大事にしてきた、共生、共栄、協働、そして寛容の精神に、日本の技術者は、多くを教わるだろうと思います。そして、今度はそれを、日本へ伝える伝道師になってくれるに違いありません。

VII 和と寛容の担い手をつくる・広範な人的交流を

 ですからこそ、――これをお話して締めくくりにしますが――、私は、日本と、サウジアラビア、UAE、そしてトルコなど中東諸国との間で、人と人、学生と学生の交流を増やしていきたいと思っています。
 私は、日本の公務員は、無私で、潔癖で、よく働く人たちだと思っていますが、そこを学びたいと、公務員を日本に送ろうとする動きも起きています。
 国や、体制がどうあれ、中東の皆さんはどこでも、清廉で、秩序ある社会を望んでおいでです。日本がその一助になれるなら、これくらい、日本人の私たちに誇りとなる話はありません。
 向こう5年、わが政府は、中東諸国と共に、約2万人の研修実施と、専門家派遣を行います。
 留学生も増やします。サウジアラビアから日本へ来る留学生は、この7年で、30人から、500人に増えました。UAEから日本へ来る留学生は、いま、60人程度です。この数も、500人に増やします。女子学生も、きっと数十人にのぼるでしょう。
 みなさん私は、「2つのbeyond」からお話を始めました。
 資源を超えて、経済全般の関係を結び、共生と、共栄を図る、というのが1つ。
 経済だけの関係を超えて、地域の平和、安定、成長をともに図る、協働の関係へというのがもう1つ。
 2つの大きな跳躍です。
 そこに生まれるのは、多面的な関係のシナジーです。"エナジー"が結びつけた関係は、ここに至って、本格的な"シナジー"を獲得するのです。
 それが、日本と中東に、さらなる協働、共生と、共栄を促します。中東を、希望の地にし、力強い成長の舞台とするため、わが国は、今後22億ドル規模の支援、約2万人の研修実施と専門家派遣を含め、みなさんとの共生、共栄、協働に、力を注いでいくのです。

VIII 終わりにあたって

 アブダビでは、地元の強い要望をいれ、日本人学校の門戸を開放することにしました。
 日本と中東の未来を担う幼子たちが、学業と、日本の学校の名物、運動会や、学芸会といった楽しい行事を共にしながら、一緒に笑っている姿を想像しましょう。
 そこに、わたしたちの未来があるのだと、私は信じます。

 スピーチを締めくくるに当たって、私は、国王陛下が、ご自身の発議によって始められた、アブドッラー国王国際宗教・文化間対話センターに対し、その人類史的、世界史的意義の偉大さにかんがみまして、心から、敬意を表したいと思います。
 異なる宗教のあいだに対話を促し、寛容の精神が定着するよう、センターは、たゆみない活動を続けてきました。共生と共栄、協働、寛容の精神を、これほどよく体現した結晶はありません。
 これを私自身の範とし、私は、日本と中東の相互理解を図り、一層深い協力の戦略を模索するため、互いを結ぶ知的対話に力を入れていくつもりです。
 当地中東へ、そう遠くない将来、再度訪れたいと申し上げ、スピーチを終わります。ご清聴、ありがとうございました。

 シュクラン・ジャズィーラン。

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