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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成25年5月17日安倍総理「成長戦略第2弾スピーチ」(日本アカデメイア)

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1.はじめに

 皆さん、こんばんは。安倍晋三です。

 政権発足から5か月が経過しました。

 今週、無事、25年度予算が成立いたしました。年末からの予算編成で、年度をまたぎましたが、国民への影響を最小限におさえながら、結果を出す政治を、また一歩前に進めることができたと考えています。

 「アベノミクス」という言葉も、最初は「禁じ手」の代名詞のように言われていました。「次元の違う」金融緩和も、多くの批判を浴びました。

 しかし、いざ実行に移した後は、国際的にも理解を得られましたし、今年1-3月期のGDPは年率3.5%のプラス成長になるなど、実際に世の中も動きつつあるのかなと感じております。

 長いデフレ不況を振り返れば、まだまだ反転の「兆し」というレベルに過ぎませんが、この動きを、力強い成長軌道に乗せていくべく、今後とも、全力で取り組んでまいります。

 ゴールデンウィークは、本格的な経済外交をスタートさせました。ロシアと中東です。

 大企業のみならず、中堅・中小企業の皆様も含めて、総勢100名を超える、経済ミッションにも同行していただき、官民一体で、日本の「強み」を売り込んでまいりました。

 1週間で2万8千kmを移動する強行軍ではありましたが、ここにご出席の多くの方にもお付き合いいただいたわけでございますが、ロシアも、中東も、伸び盛りの成長センター。医療システム、食文化、エネルギー、インフラなど幅広い分野にわたり、日本企業がかかわるプロジェクトが動き出しました。手ごたえは、十分です。

 チャレンジ、オープン、そしてイノベーション。そして、その3つの要(かなめ)とも呼ぶべきものが、「行動:アクション」であると考えます。どんなに素晴らしい成長戦略でも、作文では意味がありません。

 「行動」なくして、「成長」なし。今後とも、時間の許す限り、世界中のどこへでも出かけ、トップセールスを進めていきたいと思います。

 近く、ミャンマーを訪問します。

 ミャンマーは、古くからの友人であり、親日国です。昨年訪れた際、沿道に町中の子どもたちが集まり、日の丸をふって出迎えてくれたことを、今でも覚えております。

 幾多の困難を乗り越えてきたミャンマーの発展のために、持てる力で、あらゆる協力を惜しみません。官民一体で進めていきたいと考えています。


2.民間投資を喚起する成長戦略

 オープン戦略と積極的な経済外交は、私の専売特許ではありません。半世紀前にも、開放経済へと大きく舵を切り、海外で日本を売り込んだ総理大臣がいました。池田勇人総理であります。

 池田総理が、昭和37年のヨーロッパ訪問の際に、当時のド・ゴール大統領から、「トランジスタ・ラジオのセールスマン」と評されたという伝説は、あまりにも有名であります。

 このトランジスタ・ラジオの登場を機に、「日本の電機産業」は「世界のエレクトロニクス産業」へと飛躍しました。

 エレクトロニクスと自動車に代表される、日本の「ものづくり」は、世界を席巻し、日本を高度成長へと導きました。昭和43年には、当時の西ドイツを抜き、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国へと登り詰めました。

 その原動力は、製造業における、旺盛な投資意欲でありました。

 60年代以降、製造業の設備投資は、減価償却を大きく上回る水準で推移し、次々と工場が建設されました。

 生産性が飛躍的に向上しました。その結果、給与が上がっていった。まさに「所得倍増」の時代です。

 しかし、バブル崩壊を機に、長引くデフレの中で、企業活動は萎縮し、投資は、「減価償却の範囲内」。これが、経営の常識となってしまいました。

 国際競争でも連戦連敗。「メイド・イン・ジャパン」の誇りは、まったく色あせてしまいました。

 長引くデフレと自信喪失。この呪縛から日本を解き放つのが、私の仕事です。


(日本から世界に展開する)
 その実現の鍵は、日本が生み出した優れたシステム、技術を、世界に展開していくことであります。

 医療、食文化、宇宙、防災、エコシティ。今や、従来のインフラだけにはとどまりません。

 私たち日本人が築き上げてきた、誇るべき様々なシステム。これを、世界が求めています。大きな商機です。

 トップセールス、戦略的な経済協力、そして、国際標準の獲得。新しい「インフラシステム輸出戦略」を打ち立て、現在10兆円のセールスを、2020年までに3倍の30兆円まで拡大してまいります。


(世界から日本に取り込む)
 もう一つの鍵は、世界の技術、人材、資金を、日本の成長に取り込むことであります。

 日本で、大胆な投資を喚起しなければなりません。

 その主役は、企業です。ここにも経営者の皆さんがたくさんいらっしゃいますが、政府もがんばりますので、皆さんには、ぜひともチャレンジしていただきたいと思います。

 その目指すところは、投資によって労働者の生産性を高め、手取りを増やすことです。意欲を持って働く人たちが、報われなければなりません。

 経済界には、先般、報酬引上げを要請いたしましたが、今年の春闘では、たくさんの企業がよく応えてくださったと思います。報酬が上がることは、消費を拡大し、景気を上昇させて、企業にもメリットがあります。

 政府も、投資しやすい環境づくりをはじめ、成長戦略を骨太に実行します。経営者の皆さんにも、雇用や報酬という形で、働く人たちに、果実を行き渡らせて頂きたいと思います。

 「世界で勝って、家計が潤う」。アベノミクスも、いよいよ本丸です。


3.イノベーションを促す実証先進国
 トランジスタ・ラジオの開発で、世界をリードしたソニーは、その後、資本にまさる大企業に、後塵を拝することとなりました。

 「ソニーはモルモットだ」と揶揄する声に対し、創業者である井深 大(まさる)さんは、こう述べて、社員に奮起を促したと言います。

 「決まった仕事を、決まったようにやるということは、時代遅れと考えなければならない。」

 「常に新しいこと」を「製品に結びつけていく」。そのような「『モルモット精神』を上手に活かしていけば、いくらでも新しい仕事ができてくる」

 新たなイノベーションに挑み続ける「モルモット精神」を持つ企業に、大きなチャンスを創る。これが、安倍内閣の役割です。


(実用化につなげる規制・制度改革)
 ここにいる皆さんは、世界に冠たる企業ばかり。

 しかし、一寸先は闇。これは政治と同じです。私も身をもって経験いたしました。歩みを止めてしまえば、一巻の終わり。世界の競争相手は、すごいスピードです。皆さんを食ってしまうでしょう。

 競争相手よりも一歩先のイノベーションを、常に生み出し続けるほかに道はありません。

 私は、新たなイノベーションに果敢に挑戦する企業を応援します。その突破口は、規制改革です。

 例えば、燃料電池自動車。二酸化炭素を排出しない、環境にやさしい革新的な自動車です。

 しかし、水素タンクには経産省の規制、国交省の規制。燃料を充てんするための水素スタンドには、経産省の規制の他、消防関係の総務省の規制や、街づくり関係の国交省の規制という、がんじがらめの規制の山です。

 一つずつモグラたたきをやっていても、実用化にはたどりつきません。

 これを、今回、一挙に見直します。

 それから、いわゆる「ビッグ・データ」。

 毎日、世界中で「250京(けい)バイト」もの、膨大なデータが生まれています。GPSでとった移動情報、ネット取引の情報など。付加価値の高い新たなサービスやビジネスを生み出しうる「宝の山」です。

 しかし、「プライバシーか、データ利用か」という二項対立が続き、宝の山は、打ち捨てられていました。

 これにも、メスを入れます。

 匿名化してプライバシーを守った上で、積極的にデータを利用できるようにします。「国際先端テスト」の手法で、諸外国の例を参考に、まずは、国がガイドラインをつくることにします。

 ここにいる皆さんもご存じのように、燃料電池自動車も、ビッグ・データも、果たして、何年議論されてきたでしょうか。

 もう議論は十分です。とにかく「実行」に移します。

 新しいイノベーションを芽吹かせるため、安倍内閣は、これからも、必要な規制改革をどんどん進めてまいります。


(先端実証「規制ゼロ」)
 車が自動で走る時代が来る。夢のような壮大な実験が、今、アメリカで進んでいます。一企業であるグーグルが、特別な申請を行い、走行実験が認められています。

 アメリカでできて、日本にできないことはないはずです。日本においても、公道における自動走行の実証実験を進めていきます。

 世界で初めての製品の実験をやりたいが、規制が邪魔をして、できない。しかし、やらなければ、世界に負けてしまう。そういう企業には、代替措置を講ずるとの条件で、規制の特例を認める制度を、新たに創設したいと思います。

 万人に対して規制が変わるのを待つのではなく、自分が実験台になるから、とにかくやらせてほしい。そんな「モルモット精神」にあふれる企業に、大きなチャンスをつくりたいと思います。

 日本の企業だけではありません。イノベーションに貪欲な「将来の成長企業」を、世界中から日本に集めたいと思います。

 「そうだ、京都、行こう」というJR東海のキャッチフレーズがあります。何か新しい試みをしたければ、「そうだ、日本、行こう」と思ってもらえるような、世界に誇る「実証先進国」を目指してまいります。


4.世界に勝てる大学改革
 人材も、資金も、すべてが世界中から集まってくるような日本にしなければ、「世界で勝つ」ことはできません。

 今、世界で活躍しようと考えて、日本の大学を選ぶ若者が、世界にどれだけいるでしょうか?

 「世界大学ランキング100」というものがあります。日本の大学は、残念ながら、2校しかランクインしていません。

 「日本の大学」ではなく、「世界の大学」へ。

 日本の大学は、もっともっと世界を目指すべきです。「日本の大学は、日本人を育てるためのものだ」などという狭量な発想を捨てることが、私の考える「大学改革」です。

(真の意味での産学連携)
 トップ1・2は、カリフォルニア工科大学、スタンフォード大学です。ピンときた方もおられるでしょう。そう、シリコンバレーです。

 大学自身が、ビジネスに深くコミットしています。卒業生がベンチャーを立ち上げるときには、自ら出資するような仕組みもあります。

 卒業生の、研究レベルだけではなく、リスクを恐れない「起業精神」の高さが、世界的に評価されているのです。

 「象牙の塔」などという言葉は、すでに通用しません。日本の大学も、まずは、自分でビジネスをやるところから始めなければなりません。そこから、真の意味での「産学連携」が生まれるものと確信しています。

 大学のガバナンス改革と、自らビジネスに出資することを可能とするよう、規制改革を進めます。


(世界の大学へ)
 明日、大分県にある立命館アジア太平洋大学に伺います。ここは、教授陣も、学生も、約半分が外国籍です。東南アジアの国々だけではありません。中東の国々や、ボツワナ、ウズベキスタンなど。世界中から集まっています。

 学生生活を通して、世界中の文化にふれることができます。さらには、卒業後の人的ネットワークは、世界に広がっていきます。

 まず隗より始めよ。国立の8大学で、今後3年間の内に、1500人程度を、世界中の優秀な研究者に置き換えます。これにより、外国人教員を倍増させます。

 大学の経営の在り方も、世界のグローバル・スタンダードにあわせなければなりません。年俸制の導入や、教員の家族が英語で生活できる環境の整備など、経営改革も進めてまいります。

 国の運営費交付金などの分配についても、「グローバル」に見直しを行い、大学の改革努力を後押ししていきます。

 外国人教員の積極採用や、優秀な留学生の獲得、海外大学との連携、そして、英語による授業のみで卒業が可能な学位課程の充実、TOEFLの卒業要件化など、グローバル化を断行しようとする大学を、質・量ともに充実させます。制度面でも、予算面でも、重点的に支援します。

 今後10年で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインを目指します。同時に、グローバルリーダーを育成できる高等学校も、作ってまいります。


(すべての若者に留学機会を)
 そして、日本の若者たちには、広い世界を、自分の目で見て、足で歩いてほしい。

 私は、意欲と能力のある「すべて」の日本の若者に、留学機会を実現させたい。そのために、官民が協力し、留学生の経済的負担を軽減するための新しい仕組みを創ります。

 ビジネスの世界では、今や、「国境は消滅している」と言っても過言ではないでしょう。そんな国際的な大競争の時代にあって、「世界に勝てる」人材を育成していきたいと思います。


5.民間投資の拡大
(集中投資促進期間における施策総動員)
 長期にわたるデフレ、行き過ぎた円高、遅れる経済連携、高いエネルギーコスト。ここ数年、日本は、率直に申し上げて、そもそも投資に値するような国ではありませんでした。

 昨年度も、民間投資は63兆円にとどまっており、リーマンショック前の水準よりも、1割ほど少ない状況です。

 だから、まず、私は、大胆な金融政策と機動的な財政政策で、空気を一変させるところから、始めました。デフレ脱却への期待は、今、大きく高まっています。

 さらに、TPPをはじめ、経済連携に向けた動きも、大きく加速しつつあります。電力システム改革を進め、エネルギー分野におけるイノベーションを鼓舞します。さらに、シェールガスなど燃料調達の多様化は、エネルギーコストの低減を可能とします。

 国内投資をとりまく空気は、少しずつ変わり始めたのではないでしょうか。

 ある製薬関連企業は、シンガポールと中国から工場誘致を受けて悩んでいましたが、今般、補正予算の設備投資補助金を活用して、日本に投資する決断をしました。

 韓国から熱烈なお誘いを受けていた金型製造企業も、同じく、日本で投資する道を選んでくれました。

 いよいよ、企業の投資マインドを刺激する「三本目の矢」を放つ時です。

ただ、20年近くかかって萎縮しきったマインドを、一朝一夕に解き放つことはできません。

 そのため、今後3年間を「集中投資促進期間」と位置づけ、国内投資を促進するため、税制・予算・金融・規制改革・制度整備といったあらゆる施策を総動員してまいります。

 国内投資を阻害する要因は、なんであろうが、一掃します。

 そのことによって、まずは、リーマンショック前の民間投資の水準である年間70兆円規模の設備投資を回復したいと考えています。


(大胆な投資を後押し)
 生み出すべきは、国際的な大競争に「勝てる」投資です。

 日の丸半導体は、しばしば敗北の代表例のように語られがちです。

 たしかに、80年代から日本のお家芸であった半導体シェアは、2002年に、サムスンに抜かれました。その理由は、投資です。99年からの3年間をみると、サムスンは、日本企業の3倍以上の投資を行い、一気に抜き切ったのです。

 しかし、実は、現在、メモリーカードなどに入っているタイプの半導体は、東芝が生産量ナンバー・ワンなんです。三重の四日市から、世界中に半導体を売っています。

 「日本ではもうだめだ」なんて、評論家特有の「自虐的発想」に、呑み込まれてはいけません。

 なぜ勝てたのか。その答えも、大胆な投資にありました。2000年代の10年間で2兆円余りを、四日市工場に投資しました。

 最新鋭の設備と、規模のメリットで、サムスンを抜き去ったのです。

 どんな分野も、「大胆に投資」した企業は勝ち、「中途半端」な企業は負ける。それだけです。「日本」だから負けたのではなく、「萎縮」と「自信喪失」で負けました。

 世界一でなければ、激しい競争に生き残れない時代です。競争相手をぶっちぎる、時には4ケタ億円にものぼる、大胆な規模の投資が必要です。

 製造業だけではありません。健康長寿やエネルギーなど、新たな成長分野においても、先端医療機器など、最先端の設備への投資を思い切って進めていくことが必要です。

 しかし、現実には、稼働率が確保できるか、投資が回収できるか、その見極めが、極めて難しい。

 この状況を打破して、企業のチャレンジを後押しする仕組みが必要です。

 このため、例えば、設備の稼働状況に応じてリース費用を可変的なものにするなど、リース手法を活用した新しい仕組みを導入します。

 こうした金融手法の活用をはじめとして、国として、大胆な設備投資を後押ししてまいります。


(ベンチャー起業支援)
 一つひとつの規模は小さいながらも、経済の活力の源である、ベンチャー企業への投資も極めて重要です。

 日本のベンチャー精神を阻んでいるものとは、何か?

 それは、「個人保証」の慣行です。

 個人保証に関する調査によれば、借り入れを行っている中小企業・小規模事業者では、およそ9割に個人保証がついています。規模の小さい事業者であれば、ほぼ必ずついているといってもいいでしょう。

 そして、このうちの7割は、個人資産と同じか、それを上回る金額の保証をさせられているのです。

 一度失敗すると、すべてを失う、ということになります。

 これでは、再チャレンジなどできません。経営の経験やノウハウが、一度の失敗でうずもれてしまうのは、国家全体の損失と言ってもいいでしょう。

 ベンチャーがどんどん生まれ、投資であふれるような日本をつくるためには、「個人保証」偏重の慣行から、脱却しなければなりません。

 モラルハザードは防止しなければなりませんが、個人の資産と会社の資産を区分してしっかり管理しているような真面目な経営者であれば、個人保証がなくとも融資が受けられるような、中小企業・小規模事業者向け金融の新たな枠組みをつくりたいと考えています。

 一度や二度の失敗にへこたれることなく、むしろその経験を活かして積極的に起業していただき、新たな分野を切り拓いてもらいたいと考えています。


(新陳代謝)
 生産性を抜本的に向上させるためには、古い設備を廃棄し、思い切った「新陳代謝」を進めていくことが必要です。

 今ここにいらっしゃる、坂根相談役のコマツは、建設から40年以上経つ国内工場の建て替えを進めていらっしゃいます。

 古い設備のままで省エネしようとすると大変です。ところが、新しい設備にとりかえれば、使用電力を半減でき、生産性を3割も向上できるそうであります。

 こうした「新陳代謝」を進めれば、「日本でのものづくりはまだいける」と語る坂根相談役の言葉には、本当に勇気づけられます。

 企業の中でも、成熟した事業分野から、新しい事業分野への新陳代謝が必要です。構造的に過剰供給構造や、国内消耗戦に陥っている産業分野では、収益性を高めるため、再編を進めることも必要です。

 設備の新陳代謝への支援に加えて、収益力の向上に向けて、大胆な経営改革や事業再編を後押しする施策を用意したいと思います。

 「民間投資の拡大」、「新市場の開拓」、「事業再編の促進」の3つを柱に、政策を総動員してまいります。


6.攻めの農林水産業
 さて、モスクワの日本食フェアは大盛況でした。

 それにしても、「久兵衛」のお寿司には、最後の最後まで、ロシアの方々で長蛇の列。やっぱり「本物」は、国境を越えて、伝わるんですね。

 「本物」の寿司のシャリは、日本のコメでなければなりません。寿司にぴったりなのは、日本酒です。すべてがつながっていくんです。「日本食」は、日本が生み出した「システム」なんですね。


(輸出倍増戦略)
 世界の食市場は、10年程度で倍増すると見込まれています。大きなチャンスです。

 現在340兆円の世界の食市場の中で、日本の農産物・食品の輸出額は、わずか4500億円程度。こんなもんじゃないはずなんです。

 牛肉や果物は、海外での高い評価を考えれば、まだまだ増えるはずです。

 水産物であれば、ブリやサバ。東南アジアやEUなどで需要を開拓する余地がまだまだあります。

 さらに、コメや、日本酒などのコメ加工品も、世界の比較的裕福な地域に輸出が拡大していくことは間違いありません。

 国別・品目別の戦略を定めていくことで、必ずや、輸出を倍増し、1兆円規模にすることは十分に可能であると考えています。


(付加価値増大)
 次に、おふくろの味です。日曜日、仙台で田植えした後に、おむすびをいただきました。かなり大きかったのですが、本当においしかった。自家製のおコメを使って、今月からおむすび屋さんを始めたそうです。

 惣菜でも何でもいいんですが、農産物をそのまま売るんじゃなくて、一手間かけるだけで付加価値が増すんですね。

 消費者と直接つながってしまえば、流通マージンがなくなるだけではなく、消費者のニーズをくみ上げて、より高く売れる商品を開発することも可能となります。

 さらには、観光業や医療・福祉産業など、さまざまな産業分野とも連携することで、もっと儲けることも可能です。

 日本の農業は、これまで、そうした取組をあまりやってきませんでした。しかし、だからこそ、無限の可能性が広がっています。

 私は、現在1兆円の「六次産業化」市場を、10年間で10兆円に拡大していきたいと思います。

 このため、新たなビジネスモデルを構築しようと取り組む生産者に対して、公的ファンドからの出融資による経営支援を行います。いわば「儲かる農業開拓ファンド」です。


(供給サイドの構造改革)
 供給サイドの構造改革も、避けて通れません。

 農業や農村の現場をとりまく状況は厳しさを増しています。

 この20年間で、農業生産額が、14兆円から10兆円へ減少する中で、生産農業所得は、6兆円から3兆円へと半減しました。

 基幹的農業従事者の平均年齢は、現在、66歳です。20年間で、10歳ほど上がりました。これは、若者たちが、新たに農業に従事しなくなったことを意味します。

 耕作放棄地は、この20年間で2倍に増えました。今や、滋賀県全体と同じ規模になっています。

 高齢化の急速な進展は、一見すれば「ピンチ」ですが、意欲ある若者にバトンタッチできれば、構造改革に一気にドライブできる「チャンス」になると私は思います。

 日曜日に、仙台で、農業に飛び込んだ若者たちと話す機会がありました。本当に頼もしい。こっちが元気をもらったぐらいでありました。

 新規就農に燃える女性もいました。バラバラの耕作放棄地を集約して、逆に発展の土台にしたい、発展の土台にしたいというのは、その地域はまさに被災地でありますから、被災地から復興に向けて、農業において発展の土台にしたい、このように力強く語っていました。

 農業が、産業として、これほど注目された時が果たしてあったでしょうか。

 私は今までで、最も今、農業が日本で注目されていると思います。

 私は、農業の構造改革を、今度こそ確実にやり遂げます。

 何よりも、農地の集積です。農地の集積なくして、生産性の向上はありません。このため、都道府県段階で、農地の中間的な受け皿機関を創設します。「農地集積バンク」とも呼ぶべきものです。

 この公的な機構が、さまざまな農地所有者から、農地を借り受けます。そして、機構が必要な基盤整備なども行った上で、民間企業も含めて農業への意欲あふれる「担い手」に対して、まとまった形で農地を貸し付けるスキームを構築していきます。

 さらに、耕作放棄地についても、意欲あふれる「担い手」による農地利用を促すため、必要な法的手続きを思い切って簡素化していきます。


(農業・農村の所得倍増目標)
 これらを柱に施策を総動員することで、必ずや、農業・農村の所得は倍増できるはずであります。

 今日、私は、ここで正式に、「農業・農村の所得倍増目標」を掲げたいと思います。

 池田総理のもとで策定された、かつての所得倍増計画も、10年計画でありましたが、私は、今後10年間で、六次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移してまいります。

 その着実な推進のために、新たに、私を本部長とする「農林水産業・地域の活力創造本部」を官邸に設置します。さっそく来週から、稼働します。

 「何でも自分次第。農業も頑張れば、所得は増えると思っている。」

 日曜日に会った若者の一人は、目を輝かせながらこう語ってくれました。

 農業が元気になれば、間違いなく地域の活力も生まれてきます。私は、必ずや、若者たちが、希望を持って働きたいと思えるような「強い農業」を創りあげていきます。


(美しいふるさとを守る)
 農業の素晴らしさは、成長産業というだけにはとどまりません。

 棚田をはじめ中山間地域の農業は、田んぼの水をたたえることで、下流の洪水被害の防止など、多面的な機能を果たしており、単なる生産面での経済性だけで断じることはできない大きな価値を有しています。

 そのため、このような多面的機能も評価した、新たな「直接支払い制度」を創設することが必要と考えています。

 息を飲むほど美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流し田畑を耕し、水を分かち合いながら、五穀豊穣を祈る伝統があります。

 農業を中心とした、こうした日本の「国柄」は、世界に誇るべきものであり、断固として守っていくべきものです。

 製造業が、日本の高度成長の基礎となった産業であるとするならば、農業は、「国の基(もとい)」、すなわち、世界に誇るべき日本の伝統・文化を生み出した基礎であると考えます。


7.クールジャパン戦略
 先般、日本の伝統歌舞伎の十八番、「勧進帳」を鑑賞しました。

 勧進帳と言えば、今から6年前、亡き市川團十郎さんが、牛尾会長の導きで、パリで公演を行い、パリ市民を沸かせたことを覚えています。

 まだ、世界の人々は、日本のことを知らない。どうやって日本に引っ張り、日本の文化を輸出するか。この分野でも、安倍内閣は、攻めまくります。


(観光立国)
 江戸末期から明治初期にかけて日本を訪れた、たくさんの外国人が、一様に、日本の田園風景の美しさ、豊かな国民性に感動したと言います。

 我が国の「観光立国」としての歴史は、とても古いのです。

 明日は、別府温泉に泊まる予定となっていますが、外国人観光客もたくさん集まっていると伺います。

 日本を訪れる外国人旅行者は、年間800万人前後。これに対し、韓国は、この5年間の内に、ほぼ倍増し、年間1100万人。一気に抜き去られました。

 為替レートの差も大きいのですが、より構造的な問題の一つに、ビザ制度の違いがあります。

 タイやマレーシアからの旅行者は、日本ではビザが必要ですが、韓国では90日以内の滞在であればビザが不要です。

 まずは訪日者数1000万人をめざし、さらには2000万人の高みを目指して、観光立国型のビザ発給要件の緩和を進めていきます。

 これまでは中国や韓国からの観光客が目立っていました。日ASEAN友好年40周年にあたる今年は、ASEAN諸国から日本への観光客を増やすために、こうした国々を中心にビザ制度の見直しを行ってまいります。


(放送コンテンツの海外展開)
 北海道を訪れる、台湾からの観光客は、この15年でなんと5倍に増えました。5倍です。そのきっかけは何でしょう。そのきっかけは、台湾で放送された、北海道を紹介する番組です。

 「きゃりー・ぱみゅぱみゅ」。これはもう発音しにくくて、皆さんご存知でしょうか。この人気歌手、もう二度と発音はしませんが、この人の人気と、岡山の桃太郎ジーンズの海外売上の倍増。共に、フランスで放送された日本の番組がきっかけでありました。

 この、「きゃりー・ぱみゅぱみゅ」も、日本で有名になる前にフランスで火が付いたわけであります。

 韓国では、コンテンツ輸出をきっかけに、「コリアン・ビューティー」が海外でも話題となり、化粧品の貿易赤字が解消され、今や輸出国です。

 放送コンテンツの海外展開は、それだけ影響力がある。日本の取組みは、まったく不十分です。輸出は、韓国の半分以下にとどまっています。

 日本の文化産業の実力からして、あり得ない数字です。これから大々的に海外展開していきます。

 放送コンテンツの現地化と売り込みを支援します。「巨人の星」は、インドではクリケットにしなければいけません。

 今年、シンガポールで「Hello JAPAN」という日本専門チャンネルが開局しましたが、海外のチャンネルや放送枠の確保も重要です。500億円規模の官民ファンド、「クールジャパン推進機構」を創り、出資により応援します。

 海外で放送するには、個々の出演者や音楽など、極めて複雑な権利調整が必要です。これも、繰り返し指摘されてきた課題で、長い間放置されてきました。この政権で必ず動かします。複雑な権利処理手続きを一元的に管理する窓口機関を整備します。

 5年後までに、現在の3倍近い海外売上を目指します。

 その波及効果は、4000億円。「クールジャパン」を起爆剤に、製造業も、サービス業も、「オールジャパン」で、海外に展開していきたいと思います。


8.おわりに
 先月、「女性の活躍」を中核に、成長戦略の第一弾をご説明しました。そして、今日、第二弾として、「世界で勝つ」をキーワードに、規制改革などによる投資拡大策や、攻めの農業政策について、お話しました。

 これで終わりではありません。改革の意志を継続しながら、力強く前に進んでいきます。

 最後に、「アカデメイア」の生みの親、プラトンの「洞窟」の比喩で締めくくりたいと思います。

 洞窟の奥深くで、子どもの頃からずっと、壁に向かって縛られている人は、壁に映る「影」を「実体」と思い込んでいる。

 振り向くことが許されて、初めて、自分たちで見ていたものは「影」に過ぎなかったことに気づく。さらに、導かれた洞窟の外で、太陽の光を初めて見て、自分がいた世界は、ほんの一部でしかなかったことを悟る。

 こんなお話だったと思います。

 私が掲げる「次元の違う」政策は、これまで洞窟の壁しか見てこなかった人たちにとっては、驚きのものであったでありましょう。

 しかし、外の世界を見た後で考えれば、当たり前のことだったと気づくのではないでしょうか。

 太陽が光り輝く世界で、力強く成長する日本。私たちは、洞窟の外に、ためらうことなく飛び出していかなければなりません。

 「行動」なくして、「成長」なし。

 すでにプラトンの洞窟から脱出した「日本アカデメイア」の皆様にも御協力いただきながら、成長戦略を共に前に進めてまいりたいと思います。

 いよいよ、来月には東京都議選があり、7月には参議院選挙であります。

 世の中の空気は、少しずつ変わってきたとは言え、私たちの「日本を取り戻す」戦いは、まだまだ道半ばであります。

 強い経済を取り戻してほしい。これは、国民の声です。

 強い経済あっての、外交であり、安全保障であり、社会保障であります。経済政策に軸足を置いて、これからも政策運営にあたっていきます。

 忘れてはならないのが、東日本大震災からの復興です。

 日曜日にも宮城県に伺いましたが、総理就任以来、毎月被災地に足を運んでいます。

 一日でも早く復興を加速させたい。その思いで、現地に足を運び、現場の皆さんの声に耳を傾け、一つひとつ地道に結果を出してきました。

 これからも、毎月被災地に伺って、復興への歩みを着実に進めていきたいと考えています。

 そして、こうした政策をしっかりと前に進め、結果を出していくためにも、政治を安定させなければなりません。

 決められない政治は、日本の未来を危うくします。ねじれ国会は、「もう、たくさんだ」というのが、多くの国民の声ではないでしょうか。今回の参議院選挙は、日本の政治を取り戻す戦いでもあります。

 皆様と共に、この暑い夏を力強く乗り越えていきたい、と思っております。

 ご清聴ありがとうございました。

 

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