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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成25年6月5日安倍総理 「成長戦略第3弾スピーチ」(内外情勢調査会)

1.健全な成長サイクルへ

(新たな朝を迎えつつある日本経済)

 皆さま、こんにちは。安倍晋三でございます。
 本日は、このような機会をいただき、本当にありがとうございます。
 久しぶりにこれほどたくさんの皆さまの前で、お話をさせていただくこと。大変ある意味では緊張しておるわけでございますが、いよいよ都議会議員選挙、そして参議院選挙を控えておりますので、本当にいい機会を迎えたと改めて感謝を申し上げたいと思います。
 昨今の株価の動きに対しまして、「株価が下がったら、アベノミクスは終わりだ」という方までいらっしゃいます。
 かくのごとく、日本は、20年間にわたるデフレによって、深い自信喪失という「谷」に落ち込んでしまったのではないかと思います。
 大胆な金融政策と機動的な財政政策。私の最初の二本の矢は、すみずみまでこびりついてしまった「デフレ」という怪物を退治し、日本の自信を取り戻すための取組みでありました。
 しかし、私の経済政策の本丸は、三本目の矢である成長戦略です。その要諦は、民間のあらゆる創造的な活動を鼓舞し、国籍を超えたあらゆるイノベーションを日本中で起こすことです。
 高品質のものづくり、きめ細かなサービス、統合されたシステム、繊細なオペレーション。日本企業の持つ様々な「可能性」を解き放ち、世界に展開することにより、世界の発展に貢献する。
 これが、私の目指す成長の姿です。
 振り返れば、世界では、90年代後半から、IT革命と金融資本が世界の成長をリードし、経済のサービス化が進みました。しかし、富の分配までを金融が支配する、「行き過ぎた金融資本主義」は、2008年、リーマンショックで挫折しました。
 この苦境から立ち直るために、国家が経済運営に全面的に関与せざるを得なくなった。財政出動を強化し、国家が自ら投資ファンドを運営する。新興国の台頭とも相まって、世界の経済システムは、いわば「国家資本主義」ともいうべき潮流が生まれた。
 しかし、これは仮の姿だと私は考えています。民間の産業資本が成長をけん引する成長のサイクルへと、再び舵を切らねばなりません。日本が、今、放つ「三本目の矢」の意義は、世界経済の健全なサイクルを再び作り出すことにあると自覚しています。
 デフレという怪物に取りつかれた日本は、これまで、こうした世界経済の大きなうねりに自ら立ち向かうことなく、ただただ身をすくめていたのではないでしょうか。
 4月の有効求人倍率は、0.89倍まで回復。これは、4年9か月ぶりの水準。リーマンショック前の水準に戻りました。
 消費、企業業績、GDP成長率。実体経済の動きを示す様々な指標が、私たちに、ようやく「成長への新たな朝」を迎えつつあることを示してくれている、と私は考えています。
 今こそ、日本が、世界経済復活のエンジンとなる時です。
 世界も動き始めています。オバマ大統領は、「製造業の復活」を唱えている。ヨーロッパでも、成長戦略へと舵を切り、再び製造業が注目を集めています。
 「産業資本主義」を復興させようとしている世界を、日本が力強くけん引すべき時です。

 
(資本主義の原点へ)

 日本は、「瑞穂の国」です。
 自立自助を基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば、村の人たちみんなで助け合う伝統文化。「頑張った人が報われる」真っ当な社会が、そこには育まれてきました。
 春に種をまき、秋に収穫をする。短期的な「投機」に走るのではなく、四季のサイクルにあわせながら、長期的な「投資」を重んじる経済です。
 資本主義の「原点」に立ち戻るべきです。
 目先の利益だけで動くマネーゲームではなく、しっかりと実体経済を成長させて、その果実を、広く頑張った人たちに行き渡らせる。これが、アベノミクスの狙いです。
 ここで、一つの言葉をご紹介したいと思います。
 「彼らは皆よく肥え、身なりもよく、幸福そうである。一見したところ、富める者も貧しき者もない。―これが恐らく人民の本当の幸福の姿というものだろう。」
 これは、幕末の江戸の人々の生活を、初代の駐日米国公使タウンゼント・ハリスが、その日記で描写した一節です。
 当時の江戸は、人口100万人を超える世界の一大都市でありました。1800年時点では、ロンドンも北京もパリも、100万人に満たなかったと言われています。
 外国から食糧を輸入していなかった日本が、なぜこれだけの都市人口を抱えることができたのか。
 日本研究の大家であるトマス・C・スミス博士は、農業生産性の大幅な向上を指摘しています。さらに、時代が進むほど、生産性の向上により、農民の収入が増えていったと分析しています。
 つまり、生産性の向上が、収入を増やし、それが次なる生産性の向上につながっていった。「産業資本」の見事な「好循環」が、そこにはありました。


2.改革に終わりはない

 成長の主役。それは、活力あふれる民間の皆さんです。
 一昨日まで、アフリカ開発会議に出席しました。アフリカは確かに変わった。新興国が果敢に投資する中で、日本は明らかに出遅れています。
 「アフリカは遠い存在だ」という頭の中の地図を完全にリセットして、今、飛び込まなければ、ビジネスチャンスをつかむことはできません。
 企業経営者の皆さん。求められているのは、スピード感。そして、リスクを恐れず、決断し、行動する力です。
 私も、皆さんが思う存分チャレンジできるよう、チャンスをつくる。リスクを恐れず、「改革」を果断に進めていきます。
 規制改革こそ、成長戦略の「一丁目一番地」。
 時には、国論を二分するようなこともあるでしょう。TPP交渉への参加を決定した時も、そうでした。しかし、私は、成長のために必要であれば、どのような「岩盤」にも、ひるむことなく立ち向かっていく覚悟です。


(国際先端テスト)

 そのために導入したものが、「国際先端テスト」です。
 我が国には、時代に合わない規制がまだまだ存在します。世界と比較すれば、歴然となります。企業活動の障害を、徹底的に取り除きます。
 本日、規制改革会議から答申をいただきました。委員の皆さんのご尽力には、心より感謝します。その主な成果を紹介しましょう。
 インターネットによる、一般医薬品の販売を解禁します。
 ネットでの取引がこれだけ定着した現代で、対面でもネットでも、とにかく消費者の安全性と利便性を高める、というアプローチが筋です。
 消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で、すべての一般医薬品の販売を解禁いたします。
 次の参議院選挙からは、ネット選挙が解禁となります。これも、「ようやく」という感は否めませんが、IT時代に対応した大きな改革の一つです。まだまだ、日本はITの潜在的な能力を活かし切れていません。
 社会のイノベーション、革新的なビジネス、生産性の大幅な上昇。ITが持つ「可能性」を存分に引き出さなければなりません。今後も、IT戦略は、私の成長戦略の大きな柱であると考えています。
 健康食品の機能性表示を、解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには、適確な情報が提供されなければならない。当然のことです。
 現在は、国から「トクホ」の認定を受けなければ、「強い骨をつくる」といった効果を商品に記載できません。お金も、時間も、かかります。とりわけ中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされていると言ってもよいでしょう。
 アメリカでは、国の認定を受けていないことをしっかりと明記すれば、商品に機能性表示を行うことができます。国へは事後に届出をするだけでよいのです。
 今回の解禁は、単に、世界と制度をそろえるだけにとどまりません。農産物の海外展開も視野に、諸外国よりも消費者にわかりやすい機能表示を促すような仕組みも検討したいと思います。
 目指すのは、「世界並み」ではありません。むしろ、「世界最先端」です。世界で一番企業が活躍しやすい国の実現。それが安倍内閣の基本方針です。


(終わりなき規制改革) 

 明治初期、新たな国づくりに向け、たくさんの市井の人々が、「建白書」を政府に提出し、その実現に向けて主体的な役割を果たした、と言います。
 「現代の建白書」を、安倍内閣は、大歓迎します。官でも、民でも、新たなアイデアがあれば、どんどん戦略の中に取り込んで、戦線を拡大していきます。
 本日の規制改革会議からの答申も「第一次」に過ぎません。今後も、成長を阻む規制が見つかれば、取り除いていきます。
 医療の分野では、最新の医療技術を利用しようとすると全額自己負担になる、いわゆる「混合診療」の問題について、ご指摘をいただきました。
 私は、この世界を、大きく進化させます。最新の医療技術を、一気に普及するための、新しい仕組みをつくります。
 これまで、保険外併用の対象となる「先進医療」については、技術の有効性や安全性を証明する手間を、申請する医療機関が全面的に負担してきました。
 これを、学会などからの申し出をふまえて、国が全面的にサポートする形へと切り替えます。
 審査についても、外部の評価機関を活用することで、期間を半減します。
 最先端の医療技術が生まれれば、速やかに「先進医療」と認定し、保険外併用の範囲を拡大します。
 農業の分野では、細切れの農地を集約して競争力を高める、いわゆる「農地集積バンク」への取組みをさらに強化します。
 必要な手続の透明化・簡素化を進め、利用可能な農地がどこにあるのか誰でも見ることができるよう「農地利用電子マップ」を早急に整備します。
 株式会社を含め、意欲ある民間の皆さんに、どんどん担い手になってもらいたいと思います。


(国家戦略特区)

 新しく「国家戦略特区」を創設いたします。
 小泉内閣が始めた構造改革特区は、地方自治体から提案を受けて、一つひとつ、古い規制に風穴を開けてきました。たくさんの特例が、その後に全国展開され、まさに、規制改革の「切り込み隊長」となってきました。
 今般、私が提案する「国家戦略特区」は、構造改革特区の考え方を、さらに「面的なもの」へと進化させていくものです。
 ロンドンやニューヨークといった都市に匹敵する、国際的なビジネス環境をつくる。世界中から、技術、人材、資金を集める都市をつくりたい。そう考えています。
 しかし、この目的を達するためには、一つひとつ規制のモグラたたきをやっていても、キリがありません。
 国際的なまちづくりには、外国人でも安心して病院に通える環境が必要です。外国人がコミュニケーション容易な医師から診療が受けられるようにし、トップクラスの外国人医師も日本で医療ができるよう制度を見直します。
 子ども達が通えるインターナショナルスクールも充実しなければなりません。国内での設置を困難にしているルールは、大胆に見直しを進めていきます。
 職住近接の実現もまた、大都市に住む人には課題です。マンハッタンでは、昼間と夜間の人口に、ほとんど差はありません。街の中心部での居住を促進するため、容積率規制も変えます。
 とにかく「国際的なビジネス環境」を整える。このように目的を明確にした上で、国は、地方自治体の提案を審査する立場ではなく、地方と協力する。国自身が目的を明確にし、主体的に、できることは何でもやっていく。
 これが、私の考える「国家戦略特区」です。
 すでにワーキング・グループをつくって、課題の徹底的な洗い出しを始めています。私の国家戦略特区に、「聖域」はありません。


(更なる高みを目指して)

 三浦雄一郎さんの80歳でのエベレスト登頂。素直に感動しました。
「夢を見て、あきらめず実行すれば、夢がかなう。」
 三浦さんは、その言葉どおり、身をもって示してくれたと思います。
 65歳でエベレスト登頂の「夢」を掲げて、70歳で実現。次には、75歳で登頂する「夢」。そして、80歳。大きな夢へと、どんどん広がっていく。
 私の成長戦略も、同じです。
 世界との大競争時代にあって、「これだけやれば十分」などという「安住の地」はありません。
 来週決定する成長戦略は、一つの通過点。更なる高みを目指して、絶えず発展させていく。いわば「成長戦略・シーズン2」に向けた、スタートです。


3.「官業」を大胆に開放する

 三浦さんがエベレストに出かけたのは、実は、70歳が最初ではありません。
 エベレストの高度8000mからのスキー滑降。ギネスブックに燦然と輝くこの記録を三浦さんが打ち立てたのは、1970年でありました。
 日本では、まさに大阪万博が開かれ、多くの人でごったがえしていた時です。
 動く歩道、コンピュータ制御の自動車、人間洗濯機。民間企業の展示館では、世界初の「夢のような製品」が提案され、多くの日本人が、心を躍らせたものでありました。
 「世界一」を目指すこともできる。日本が自信と誇りを取り戻しつつあった時代でありました。その原動力は、日本人や日本企業の「民間の力」でありました。
 80年代の土光臨調が、国鉄、電電公社、専売公社という三公社について、「民営化」の方針を掲げたのは、まさしく歴史の必然であったと思います。
 そして、少子高齢化の時代に、新たな道を切り拓くことができるのも、「民間の力」である。そう確信しています。
 エネルギー、医療、インフラ整備。がんじがらめの規制を背景に、公的な制度や機関が、民間の役割を制約している、いわば「官業」とも言える世界は、今でも、広い分野で残されています。
 いずれも、将来の成長が見込まれる産業ばかりです。
 この「官業」の世界を、大胆に開放していくこと。そして、日本人や日本企業が持つ、創造力や突破力を信じ、その活力を自由に解き放つこと。
 これが、安倍内閣の仕事です。「民間の活力」こそが、アベノミクスの「エンジン」です。


(1)多様なエネルギービジネス

《電力システム改革》

 そのための「電力システム改革」です。
 戦後60年にわたって、地域に1社の巨大電力会社が、発電から送電、小売までを独占してきました。
 しかし、数々のイノベーションが融合することで、時代は大きく変わりつつあります。
 大分で見た、湯けむり発電。「さすが、小規模事業者」というアイデア。温泉町ならではの発想でもあります。エネルギーも、地産地消です。
 燃料電池や蓄電池の登場により、消費者が自ら電気をつくり、賢く使う時代です。
 さらには、エコ料金メニューによる再生可能エネルギーの拡大、ガスや通信サービスとセットで販売することで電力を安く販売するビジネスの登場。
 小売の全面自由化と、発送電の分離によって、こうしたイノベーションの「可能性」を存分に引き出します。
 他方で、供給源が多様化すればするほど、安定した電力の供給は難しくなる。電力の安定供給を確保する仕事は、並大抵なことではありません。
 だからこそ、もっとイノベーションを起こさねばならないと考えます。経験豊かな電力会社の皆さんに、真の「プロ」として活躍いただき、さらなるイノベーションの創造者となっていただきたい。そう願います。
 コスト高、供給不安、環境制約。電力システムを取り巻く課題は、山積です。これらを同時に解決する、ダイナミックで、壮大な、エネルギー市場の創造に向けて、誰もがチャレンジできる環境をつくりあげます。
 その恩恵は、国民生活や国内の産業活動だけには、とどまりません。16兆円もの国内市場から生み出される、多様な電力ビジネスは、世界を席巻することもできる。そう確信しています。
 現在、電力システム改革に向けた法案を、国会に提出しています。安倍内閣として、この法案は、是が非でも成立させていただきたい。そう考えています。


《環境アセスメントの運用見直し》

 資源小国・日本の歩み。これは、あらゆるイノベーションを取り込んできた歴史でありました。その日本で生まれた、世界最高水準の発電技術。高効率の石炭火力発電です。
 コストの安い石炭火力へのニーズは、世界で高まっています。世界の安定成長と地球温暖化対策に貢献する鍵は、石炭火力の高効率化にかかっています。
 アメリカ、中国、インドにある石炭火力発電所が、日本の現在の技術に置き換わるだけで、日本一国分を超える二酸化炭素が削減されます。さらに、将来は、二酸化炭素を封じ込める技術へとつながる「可能性」を秘めています。
 まさに、世界の二酸化炭素を削減する近道は、石炭火力発電のイノベーションを促すことなのです。
 日本の石炭火力発電の高効率化をさらに進め、世界に展開をしてまいります。そのために、国内でも、世界最先端の技術を導入する石炭火力発電であれば、新規の建設ができる。環境アセスメントの運用を見直しました。
 もちろん、風力発電や地熱発電などの再生可能エネルギーの発電施設についても、アセスメント期間を大幅に短縮し、さらに投資を加速させます。
 あらゆるエネルギー技術を、国内で投資することで伸ばし、そして世界に展開する。これこそが、資源小国・日本の唯一の生きる道です。
 今後10年間の日本の電力関係投資は、過去10年間の実績の1.5倍である、30兆円規模に拡大できると考えています。


(2)新たな健康長寿産業の創造

《健康・予防サービスの可能性を広げる》

 有名な「タニタ食堂」。計量器メーカーのタニタは、社員食堂で低カロリーメニューを開発するなど、社員の健康管理に取り組みました。
 その結果は、医療費が業界平均よりなんと2割も低くおさえられた。しかもそれだけではありません。社員食堂が、新たなビジネスとなりました。
 「丸の内タニタ食堂」では、健康を求めるサラリーマンが、毎日行列を作っていると言います。
 フィットネスや運動指導、そして食事管理。これまで想像もしなかった、健康長寿ビジネスが、民間主導でどんどん生まれつつあります。
 しかし、ここでも規制が立ちはだかっています。医療行為との線引きが不明確でありどこまでやってよいのかわかりにくいという問題です。
 そこで、民間の健康・予防サービスに新規に参入する皆さんを、法的に認定して、安心して事業ができるようにする新たな仕組みをつくりあげます。
 金融面など、経済的な支援をやるためだけの認定ではありません。事前に確認を受けることで、規制の「グレーゾーン」を取り除き、適法なビジネスだとお墨付きを受けることができます。
 規制をおそれず、どんどんこの分野に飛び込んでもらい、人々の健康ニーズに応えるサービスを提供してほしいと思います。


《保険制度の運用見直し》

 新規参入に拍車をかけ、健康管理や疾病予防を大きく前進させるため、「疾病治療」中心の保険制度の運用を見直します。
 保険を請求するための医療明細書、いわゆる「レセプト」の電子化は、これまで保険業務の効率化を目的としたものでありました。
 これを、新たな産業を生み出すために活用します。
 レセプトにつまっている診療情報。これを分析・評価すれば、健康管理につながります。様々なサービスを生み出しうる宝の山です。
 すべての健保組合や国保などの保険者に対して、加入者の受診データの分析と評価を導入し、加入者の病気予防に取り組むように求めていきます。
 現在の日本の医療費は、40兆円ほど。今、1%でも健康・予防サービスに振り向けられれば、4000億円もの新たな市場が生まれます。民間の多様なサービスを生み出すカネの流れができます。
 そこから得られるものは、誰もが求める「健康長寿社会」。10年後には60兆円近くまで増加が見込まれる医療費も、今、官業を開いてくことで、その抑制にもつなげることができると確信しています。


(3)インフラ分野での民間の力の活用

《最新技術による長寿命化》

 さて、我が国の社会資本整備は、高度成長時代の60年代から80年代にかけてピークを迎えました。これは、今後20年で、建設後50年以上を経過する施設が、加速度的に増えることを意味します。
 笹子トンネル事故は、その現実を改めて思い知らせてくれました。
 これを解決する鍵も、民間の力です。レーザースキャナーを使った非破壊検査や、センサーやロボットとITを組み合わせた新しい維持管理手法など、最新の技術がどんどん生まれてきています。
 最新の技術を活用し、コストを抑えながら、安全性の向上を図る「インフラ長寿命化基本計画」を、本年秋にとりまとめます。
 さらに、基本計画に基づいて、具体的な行動計画を策定し、あらゆるインフラの安全性の向上と、効率的な維持管理を実現します。


《PPP/PFIの積極活用》

 長寿命化を進めてもなお、更新が必要なインフラもあります。
 例えば、首都高速道路。東京オリンピックの前に開通し、半世紀を経て老朽化が大きな課題です。しかし、大規模更新にかかる費用は、8000億円から9000億円程度とも試算されています。
 ここでも、民間の資金を最大限に活かします。官民のパートナシップでインフラ整備を進める、「PPP」や「PFI」の手法を活用することで、公的な負担をできるだけ軽減していきます。
 例えば、都心環状線の京橋付近は、築地川を干拓して整備されたため、掘割が2kmほど続いています。
 ただ更新するだけでなく、ここにフタをすれば、都心の一等地に、東京ドーム1個分以上、6ヘクタールもの新たな土地が生まれます。都市再開発による積極的な民間投資が期待されます。
 ドイツのデュッセルドルフで、ライン川沿いの2km強の連邦道路を地下化したところ、市街地の再開発によって、1300億円の民間投資が生み出されたと試算されています。
 空中権の売買も組み合わせることで、さらに必要となる公的な負担を大きく軽減できると考えています。
 空港、上下水道、高速道路など、施設ごとの特性に応じた最適なPPP/PFIを推進していきます。このアクションプランを基に、今後10年間で、過去10年間実績の3倍にあたる12兆円規模のPPP/PFI事業を推進してまいります。
 「芸術は爆発だ!」
 大阪万博の『太陽の塔』で世界の度肝を抜いた、岡本太郎さんの有名な言葉です。
 岡本さんは、日本が焼け野原から再び立ち上がろうとしていた昭和29年、著書「今日の芸術」の中で、こう述べました。
 「すべての人が現在、瞬間瞬間の生きがい、自信を持たなければいけない、そのよろこびが芸術であり、表現されたものが芸術作品なのです。」と。
 一人ひとりが、その生き方に誇りを持ち、それぞれの持ち場で、全身全霊をぶつける。岡本さんの、日本人に向けた強烈なメッセージだと思います。
 岡本さんの言葉は、芸術論のように見えて、実は、人生論であり、成長論でもあると、私は思います。
 今こそ、日本人も、日本企業も、あらん限りの力で「爆発」すべき時です。
 「民間活力の爆発」。これが、私の成長戦略の最後のキーワードです。


4.成長戦略が目指すもの

 「女性の活躍」、「世界で勝つ」、そして、「民間活力の爆発」。これで、私の成長戦略の三本柱がそろいます。

(家計が潤う成長戦略)

 その目指すところについて、今回の成長戦略では、「KPI」、すなわち「達成すべき指標」を、年限も定めて、明確にしました。

 3年間で、民間投資70兆円を回復します。
 2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大します。
 2020年に、外国企業の対日直接投資残高を、2倍の35兆円に拡大します。
 2020年に、農林水産物・食品の輸出額を1兆円にします。
 10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインします。

 すべてをここで申し上げる時間がありませんので、お許しいただきたいのですが、個別の政策分野ごとに具体的に掲げます。
 この目標を達成するまで、私たちは、一貫して、政策を打ち続けます。民間の絶え間ないイノベーションを、次々と鼓舞していきます。
 進捗が思わしくなければ、その原因を分析をし、さらに打つべき手を打ちます。常に「行動」あるのみ。そのためにも、具体的なKPIを定め、進捗管理を行うことが必要です。
 中でも、最も重要なKPIとは何か。それは、「一人あたりの国民総所得」であると考えています。
 なぜなら、私の成長戦略の目指すところが、意欲のある人たちに仕事をつくり、頑張って働く人たちの手取りを増やすことに、他ならないからです。
 つまりは、「家計が潤う」こと。その一点です。

(停滞の20年から再生の10年へ)

 長引くデフレは、日本人の自信を失わせ、あらゆる投資を萎縮させてしまいました。しかし、「停滞の20年」を招いた不良債権は、すでに過去の話。民間には、お金があります。
 今こそ、成長のチャンスなのです。
 三本の矢を射込むことにより、この数年間で失われた50兆円に及ばんとする国民総所得を、当面3年間で取り戻せるはずです。
 大量に眠っている資金を動かして、国内外の潜在市場を掘り起こし、民間投資を喚起する。あわせて、人材、技術、資金を、生産性の高い部門へとシフトしていく。
 これによって、一人あたりの売上を伸ばす。その果実を、賃金・所得として家計に還元します。所得の増加は、消費を押し上げて、更なる成長につながります。
 まさに、家計を中心とした「成長の好循環」の完成です。
 海外経済にも恵まれて、この成長シナリオを実現できれば、一人あたりの国民総所得は、足元の縮小傾向を逆転し、最終的には、年3%を上回る伸びとなります。そして、10年後には、現在の水準から150万円以上増やすことができると考えています。
 「停滞の20年」から「再生の10年」へ。
 チャレンジ、オープン、イノベーション。そして、アクション。成長戦略によって、日本経済を、停滞から再生へと、大きく転換してまいります。


5.いよいよ行動の時

 来週、成長戦略を閣議決定します。
 しかし、どんなに素晴らしい成長戦略でも、作文のままで終わらせてはなりません。
 いよいよ、「行動」の時です。
 危機的な状況を突破するためには、「次元の違う」政策が必要。私は、そのように申し上げてきました。
 であるならば、政策のみならず、その進め方においても、「次元の違う」やり方が不可欠である、と考えます。
 6月に決める成長戦略については、「実際に行動に移すのは、来年度からでしょう?」と聞く方もいらっしゃいます。
 しかし、政策の実施が遅れれば、その効果が出るのは、さらに先。現下の経済情勢を考えれば、そんな時間的な余裕はありません。
 国難にあたって、「法律改正は、年明けの通常国会だ」とか、「税制改正が決まるのは年末だ」といった、「従来のスケジュール感」にとらわれる発想を、まずは捨て去るべきです。
 急ぐものは、この秋にも、政府として決めていきます。
 「行動」なくして、「成長」なし。
 政府も、党も、一体となって、成長戦略を実行に移してまいります。


6.おわりに

 政策を力強く実行していくために必要なもの。それは、「政治の安定」です。
 来週には、東京都議選が告示。その後は、参院選へと、暑い「選挙サマー」へと突入します。
 政治の迷走を生み出してきた「ねじれ国会」は、「もう、たくさんだ」というのが、ここにいる皆さんの共通の思いではないでしょうか。
 今回の参院選は、「日本の政治」を取り戻す戦いでもあります。
 いかがでしょうか。半年ほど前と比べて、日本を覆っていたどんよりとした雰囲気は、ガラリと変わったのではないでしょうか。
 「日本はまだまだ成長できる。」「日本は再び世界の真ん中で活躍できる。」
 そんな自信が、ふと芽生えつつある。「期待」にも似た感情です。
 これを「確信」に変えていくのが、私の使命です。「日本を取り戻す」戦いは、まだまだ道半ばです。
 経済だけではありません。復興の加速化も、教育の再生も、外交・安全保障の立て直しも、これからが正念場です。
 皆さん。サッカー日本代表が、ワールドカップ出場に、一番乗りを果たしました。再び、世界の檜舞台に立ちます。日本もまた、世界の中心に、躍り出なければなりません。
 ぜひとも皆さんと共に、日本を「もう一歩前へ」。成長への歩みを着実に、そして力強く進めていきたいと考えております。
 そしてそれを必ずやり抜いていく覚悟であります。
 そのことを申し上げまして、私の講演とさせていただきたいと思います。
 ご清聴ありがとうございました。

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