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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成26年9月19日内外情勢調査会講演

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 皆様、こんにちは。安倍晋三でございます。
 内外情勢調査会、創設60周年、誠におめでとうございます。かつ、その記念すべきタイミングにお招きいただき、大変光栄であります。
 私も今年、60歳を迎えるわけでありますから、まさに、内外情勢調査会とともに、年を重ねているということになるのではないかと思います。
 今御紹介いただきましたように、第1回には、私の祖父・岸信介が出席させていただき、また、私の父・安倍晋太郎も、かつて、この場に立たせていただきました。
 まさに、3代にわたって、内外情勢調査会に貢献させていただいているわけでございます。先ほど、パネルをいただきました。私のパネルはカラーでありましたが、その上の写真は、祖父の代になると、白黒なんですね。白黒とカラーが混ざっているということでありますが、ひたすら、まさに、歴史を目撃し続けてきた内外情勢調査会の歴史を、改めてその重みを実感したところでございます。
 60年と言えば「還暦」であります。暦が改まり、新たなスタートでもあります。今後の内外情勢調査会の、益々の御発展を期待しております。
 さて、今月は、久しぶりに、日本全国が胸を躍らせる出来事がありました。全米オープンテニスで、錦織選手が、日本人として初の決勝進出を果たしてくれたことです。
 ちょうど私は外遊中だったのですが、スリランカの方々が、「圭が、アジア人で初めて決勝に進出してくれた。同じアジア人として誇りに思う。」そう言ってくれました。日本だけでなく、アジアの人たちが、錦織選手に注目しています。
 13歳からアメリカにテニス留学。ずっと世界の舞台で、経験を積んできました。そして今、世界の中心で活躍してくれています。私も、同じ日本人として、本当に誇りに思います。
 まだ24歳だそうですが、「若いのにすごいな」と、私が感じたのは、決勝で残念ながら敗北した後の言葉なんですね。
 「来年、またここに戻ってきます。そして、必ず優勝します。」
 一気に優勝して頂点に登り詰める、というのは、かっこいいことでありますが、負けても、むしろ、そのことを糧に、ガッツを出して、「次こそは優勝する」と宣言する。とてもかっこいいなと思いました。
 一度や二度の失敗にへこたれることなく、更なる高みを目指して、何度でもチャレンジしていく。その姿は、日本中の子供たちにも、大きな勇気を与えてくれたのではないでしょうか。
 さて、私がこの内外情勢調査会にやってきたのは1年ぶりです。昨年は、決定直前の成長戦略についてスピーチさせていただきました。
 錦織選手の言葉ではありませんが、私も、「またここに戻ってきました。」それも、今年は、格段にパワーアップした成長戦略を携えて、やってきました。
 コーポレートガバナンスの強化、岩盤のように固い規制・制度の改革、女性の活躍、経済連携の推進、そして、法人実効税率の引下げ。
 イギリスの経済誌・エコノミストによれば、「Breathtaking」、すなわち「息をのむように素晴らしい」と評価されるような、野心的な成長戦略を、取りまとめることができました。
 あれから一年間、三本目の矢に、ひたすらに磨きをかけてきた結果です。

 他方、今年の成長戦略は、「中身はいいが、本当に実現できるのか?」と言われています。
 一つは、「安倍内閣は、本当は、経済ではなく、安全保障がやりたいのだ」という指摘です。
 安全保障と経済とは、別次元の話ではありません。むしろ現実には、極めて密接な関係があります。海の安全保障は、自由貿易の大前提です。ここまで深化したグローバル経済が、海や空の安全保障政策抜きに、はたして、語れるでしょうか。
 地域の平和と安定、海や空の安全保障なくして、繁栄を享受することはできません。だからこそ、私は、「積極的平和主義」の旗を掲げて、これまで以上に世界の平和に貢献していく姿勢を明確にしてきました。

 私の祖父、岸信介は、60年の日米安保条約改定を行った総理として、多くの方々に記憶されていますが、実際には、商工省の経済官僚です。当然、得意分野は「経済」です。
 ですから、祖父が総理に就任した時、秘書官だった私の父・安倍晋太郎は、「得意な経済で勝負しましょう」と強く進言したそうです。しかし祖父は、「確かに経済政策は重要だ。しかし、同時に安全保障は国の基本であり、やり遂げなければならない。政治家以外には誰もチャレンジできないのだから。」と答えたそうです。
 当然ながら祖父も「安全保障ばかり」やっていたのではありません。たとえば、国民皆年金や皆保険といった、世界に誇るべき日本の社会保障制度を創設したのは、岸政権の大きな成果です。そうした基盤の上に、その後の高度成長が生まれたことは間違いありません。
 ただ、それと同時に、安保条約改定を実現し、日米の絆を確立したことによって、その後の平和と繁栄がもたらされた。このことも、明確な事実であると思います。

 これから安倍内閣が取り組む、新しい安全保障法制の整備もまた、我が国の更なる平和と繁栄の基盤となるものであると確信しています。
 いかなる事態であっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。内閣総理大臣である私には、その大きな責任があります。
 7月に、閣議決定を行いました。いわゆる「グレーゾーン」に関わるものから、集団的自衛権に関わるものまで、切れ目のない安全保障法制の整備に向けて、準備を進めてまいります。
 自衛の措置をとる場合も、それは、他に手段がないときに限られ、かつ、必要最小限度でなければならない。憲法解釈の基本的考え方は、何ら変わりません。自衛隊が、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことも、決してありません。
 このように明確に申し上げてもなお、「日本を戦争する国にしようとしている」といった、いわれなき批判があります。「戦争に巻きこまれる」、果ては「徴兵制につながる」といった、まったく根拠のない、不安を煽るだけの批判は、60年安保改定の時もたくさんありました。
 しかし、4月にオバマ大統領が訪日した際、「尖閣諸島は安保条約5条の対象である」と明確にしたことに対して、マスコミ各社の世論調査で、多くの国民の皆様が評価していただきました。日米同盟が国民的支持を得ていることは明らかです。
 何よりも、日米同盟が、抑止力として、日本とこの地域の平和に大きく寄与してきたことは、歴史が証明してくれています。私は、今回の閣議決定もまた、歴史の評価に十分堪え得るものだと確信しています。
 54年前と同じような不毛なレッテル貼りに、私は、実に違和感を覚えます。実態に即した議論を行いながら、国民の皆さんの更なる理解が得られるよう、これからも努力していきたいと考えています。
 安全保障政策は、国民の暮らしに直結する問題でありながら、専門的で分かりにくい面が、確かにあります。根拠のない批判や、いたずらに扇動的な言説は、国民を混乱させかねません。全ては事実に基づきながら、活発な国民的な議論が行われるよう期待しています。
 日本は、戦後、自由で民主的な国を創り上げてきました。言論の自由や報道の自由が完全に確保されていることは、日本が誇るべきことです。
 事実関係を謙虚に検証しながら、むしろ意見は活発に闘わせる。健全な批判を期待しております。

 ちょっと脱線してしまいました。最初の疑問に戻りましょう。今年の成長戦略は、「本当に実現できるのか?」という疑問です。
 はっきり申し上げましょう。成長戦略は、私が先頭に立って、必ず、全て実行してまいります。
 その決意は、今回の内閣改造人事を見ていただければ、御理解いただけるはずであります。
 今回の人事については、田崎さんも、なかなか鋭い解説をしていただいております。ただ、マスコミ全体としては、ややもすると、女性閣僚が多いことばかり注目されています。
 女性の活躍も、私の成長戦略の中核です。そのため、どんどん進めていくことは間違いありませんが、それだけではありません。成長戦略を有言実行、政策実現していくための「実行実現内閣」である、ということを、今日は御説明したいと思います。
 厚生労働大臣は、塩崎さんにお願いしました。医療や年金、労働制度を所管しており、岩盤のように固い制度を打ち砕いてほしいとの願いからであります。
 今日は、私の目の前に、日本医師会の横倉さんが座っておられますが、これはなにも、医療制度を壊そうということではなくて、患者の皆さんにとっても良い制度に、協力しながら変えていこうということであります。
 特に、GPIFの改革を、私は極めて重視していますが、塩崎さんは、根っからの改革論者です。世界有数の1兆2千億ドルを有するGPIFについて、できる限り早く、ポートフォリオの見直しを行いたいと考えています。
 先週、iPS細胞を使った、世界で初めての移植手術が行われました。山中教授以来、世界の再生医療をリードしてきた日本が、臨床応用でも、世界に先駆けて、大きな一歩を踏み出しました。大変誇らしく感じます。
 難病対策は、私のライフワークでもあります。たくさんの難病患者の皆さんにとって、再生医療の実用化は、まさに「希望の光」であるに違いありません。塩崎大臣には、医療の規制改革も大胆に進めてもらい、再生医療の芽を、大きく育ててもらいたいと思います。
 時間ではなく、成果で評価する働き方改革など、時代に対応した労働法制の見直しも待ったなしです。塩崎大臣には、労働規制の岩盤にも、果敢に挑戦してもらいたい。党でも、国会でも、常に、規制改革の切り込み隊長であったのが、塩崎さんでありました。その大胆な実行力に、大いに期待しています。

 議院内閣制の我が国では、当然ではありますが、政策は政府だけで作られるわけではありません。政府と与党とが一体となって、政策を作っていきます。
 あまり目立たないのですが、長年、党内にあって、政策づくりをリードし、汗をかいてきた議員もたくさんいます。そうした人たちにも光を当て、政府で責任ある要職を経験してもらうことも、人事においては重要であると考えています。
 農林水産大臣をお願いした西川さんは、自民党のTPP対策特命委員長として、TPP交渉への参加を決断し、交渉を進めていくにあたって、党内の取りまとめに大きな役割を果たしてくれました。
 その勢いをそのままに、今度は大臣として、最終局面にあるTPP交渉をまとめてもらう。TPP早期妥結に向けた、私の決意のほどを御理解いただけると思います。
 基幹的農業従事者の平均年齢は、現在、66歳を超えています。20年間で、10歳ほど上がりました。耕作放棄地は、この20年間で倍に増えました。今や、滋賀県全体とほぼ同じ規模です。
 このままではジリ貧です。やはり、農業でしっかりと食べていける。そして、農業の将来に、若者たちが夢や希望を抱くことができる。そうした農業へと改革しなければなりません。
 世界に目を向ければ、340兆円規模の食市場があります。しかし、日本の農産物・食品の輸出は、5000億円ほど。日本のおいしくて、安全な農産物を考えれば、この程度のはずがありません。日本の農林水産業には、大きく成長する余地がまだあると思います。
 輸出を倍増し、農業・農村全体の所得を倍増することは、十分に可能である。全ては、農家の所得を増やすため、西川大臣は、改革に立ち上がってくれました。
 酪農が盛んな、北海道の浜中町は、ここ数年、生乳の生産量を、順調に伸ばしてきました。濃厚で、品質の高い、浜中町産の牛乳は、世界的に有名なハーゲンダッツの原料にも採用されています。
 その背景には、乳質の検査施設を造り、30年以上にわたり、地域の農家と一体となって、乳質向上に取り組んできた、JA浜中町の努力がありました。
 攻めの農業へと改革するために、地域ごとの農協には、もっと大きな役割を果たしてもらわねばなりません。そのためにも、今までの形の全中の在り方は廃止していく。60年ぶりの農協改革を断行します。農家が自由に付加価値の高い作物を選べるよう、40年以上続いた減反政策も廃止します。
 今月、国家戦略特区が本格稼働しました。兵庫県の養父市では、農業委員会の権限が自治体に移る、戦後初の試みが始まります。農地の集積を進めるため、農業委員会や農業法人の制度についても、更なる見直しが必要でしょう。
 こうした国内の構造改革を進め、日本の農業の競争力を高める。同時に、外に向かっては、TPPや日EUEPAによって、広い経済圏に打って出る。内外の改革を一体で進めていくことが、日本の農業の将来のために、欠かすことができないと考えています。
 自民党の農林族と言えば、既得権益の代表のように思われてきました。農協改革なんて、口にすることすら憚られてきました。しかし、日本の農業の未来を考えれば、この道しかありません。困難な課題ばかりですが、農家を第一に考える「真の農林族」である西川大臣の活躍に、大いに期待しております。

 エネルギー分野では、小渕大臣に電力システム改革を引き続き進めてもらいます。戦後60年続いてきた電力の地域独占を終わらせる。そして、自由で、ダイナミックなエネルギー市場を創り上げていきます。
 先日、テスラ・モーターズのイーロン・マスクさんと会いましたが、電気で自動車が走る時代が現実になろうとしている。日本メーカーは、いよいよ水素エネルギーを使う燃料電池自動車の販売を始めます。化石燃料が当然だった自動車の世界が、一変する日も近いのではないでしょうか。
 前提となるエネルギー構造も、確実に変わっていくでしょう。多様な再生エネルギーがどんどん現れ、徹底した省エネルギーが社会全体に広がっていく。そうした中で、原発依存度を下げていくことが可能となると考えています。
 鹿児島県にある川内原子力発電所について、原子力規制委員会によって、再稼働に求められる安全性が確認されました。
 3年前の3月11日のあの痛ましい原発事故によって、福島を始め多くの方々が、今もなお、不自由な生活を強いられています。再稼働への不安の声が大きいのも、当然のことだと思います。
 しかし、原発が全て止まった結果、海外への燃料依存度は、石油ショックの頃よりも高くなっています。年間3兆6千億円もの国富が海外に流出してしまっています。エネルギー価格の高騰は、中小企業・小規模事業者の皆さんを始め、国民生活に深刻な影響を与えており、看過できません。
 福島の事故の反省に立って設立された原子力規制委員会は、田中委員長を始め、この2年間、粛々と、全く妥協することなく、科学的・技術的に、世界で最も厳しいレベルの規制基準を作り、そして、その基準に基づいて審査を進めてこられました。
 私は、こうした原子力規制委員会を信頼しています。その判断を尊重し、川内原発の再稼働を進めてまいります。
 今後、立地自治体など関係者の理解を得るため、国として、丁寧に説明してまいります。また、避難計画を始め緊急時対応の充実についても、支援を行っていく考えであります。

 さて、私は、明日で、1次政権の時代とあわせて、総理大臣の通算在職日数が、1000日となります。
 「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とする。」
 五輪書にある、宮本武蔵の言葉です。とにかく修行あるべし、ということです。確かに1000日と言えば、長いようですが、まだまだ、日々、反省の連続でもあります。これからも、常に緊張感を持ちながら、政権運営にあたっていく覚悟です。
 第2次安倍内閣の発足後だけでも、600日余り。改造前の内閣は、戦後最長の617日間にわたって、一人の閣僚も代わることなく、安定的に、政策を前に進めることができました。特に、経済再生を最優先に、三本の矢の政策を、次々と射込んでまいりました。
 その結果、有効求人倍率は、1.10倍で、バブル崩壊以来、22年ぶりの高水準になっています。
 今週から、来年卒業を予定する高校生たちの、就職活動がスタートしましたが、高校新卒者への求人は、昨年より、なんと38%も増えています。求人倍率は、1.28倍。大変な売り手市場になっています。企業は優秀な人材の確保に必死です。
 今年の春は、連合の調査で、平均2%を超える賃上げが実現しました。過去15年間で最高の賃金アップです。
 更に、この夏のボーナスは、平均7%以上伸びました。これだけ伸びたのは、24年ぶりの出来事であります。
 この道しかありません。
 引き続き、デフレからの脱却を目指し、経済最優先で取り組んでまいります。

 消費税率の引上げによって、4月5月6月の成長率が、年率でマイナス7.1%となったことは、事実です。
 ただ、これは、消費税率引上げ前に駆け込み需要があり、大きな山ができたために、4月以降の谷が深くならざるを得なかった。全体をならして見れば、この半年間の成長率は、昨年に比べプラス1.3%であり、全体的には経済成長が続いている、と考えます。
 ただ、この夏は、天候不順が続きました。消費への悪影響も懸念されます。燃料価格の高騰も続いています。こうした景気の下振れ要因にも、しっかりと目配りをしながら、今後も経済運営に万全を期してまいります。
 年内に、消費税率引上げについて判断をいたします。今回の人事で、谷垣さんに幹事長をお願いしたことを、消費税増税シフトだといった指摘もありましたが、これは誤りです。
 消費税を10%まで引き上げるのは、伸びる社会保障費を賄っていく、そして次の世代へとしっかりと引き渡していく、更には子育てを充実していくために必要です。ですから、私たちは、当時野党ではありましたが、谷垣総裁の下、法案に賛成をいたしました。
 他方、この法律には、経済状況を見て判断する、ということも書き込まれています。増税をするのは税収を確保するためであり、増税によって景気が悪化して税収もままならないようなことでは、元も子もありません。せっかくつかみかけたデフレ脱却のチャンスを逃すわけにはいきません。
 ですから、7月8月9月、どの程度経済が回復してくるか、景気回復軌道が確かなものであると判断できるかどうかを、注意深く見ていく必要があると思います。
 こうした私の考え方は、谷垣さんに幹事長就任を打診するにあたって、率直に申し上げ、全く一致しております。
 11月中旬には7月から9月のQEが発表されますが、それを待つことなく、少し早めに、昨年同様にマクロ経済分析の専門家、有識者の方々から意見を集中的に伺う場を設け、徹底的な議論を行います。その上で、年内に判断したいと考えております。

 もしかすると、今日この場所にも、「自分のところには、まだ景気のいい話は、来てないよ」、「負担ばかりが増えていて厳しい」という方も、たくさんいらっしゃるかもしれません。
 景気回復の実感を、必ずや、全国津々浦々にまで届けていく。私は、これが、次なる安倍内閣の使命であると考えています。
 そして、今度の改造内閣が取り組む、最大の政策課題の一つが、元気で、豊かな地方の創生であります。今回、地方創生大臣という新たなポストを作り、石破さんにお願いしました。
 今回の人事では、私と石破さんとの間で、何か揉めているのか、といった報道がありました。今日はマスコミ主催でありますが、マスコミの皆さんは、こうした話が大好きなんですね。まことに困るわけですが、実態は、違います。8月下旬に直接、石破さんと会って、今後の政策運営の在り方について、じっくりと話し合いました。
 1年9か月前の選挙で、私たち自由民主党は、国民の期待を受けて、政権に戻していただいた。その前の野党生活は、本当に厳しいものでした。その時代の苦しさを共有してきた仲間ですから、とにかく力を合わせて、日本を取り戻す戦いを続けていく、国民の負託に応えていこうということで一致したわけであります。
 石破大臣には、早速、精力的に取り組んでいただいており、今月末から始まる臨時国会では、地方創生に向けた第一弾となる法案を提出する予定です。
 今回は、地方の方々もたくさんいらっしゃっているそうですが、一言申し上げますが、いわゆる地方への「バラマキ」は、全く考えていません。一過性の対策を繰り返すような時間的余裕は、もはやありません。
 先日、島根県で、一人の若者と出会いました。
 メーカーを辞めて、農業の勉強をしていた彼は、山あいにある川本町で、エゴマ栽培が行われていることを知り、県外からやってきました。一緒に農作業を体験する中で、地元のエゴマ農家の皆さんの真摯な態度に、感銘を受けたそうです。
 「定住して、エゴマの農家になりたい」
 収穫したエゴマと、絞った油を、私に誇らしげに見せながら、彼はこう言ってくれました。川本町のエゴマを、自分の手でもっと発展させたいと、奥さんと1歳のお子さんを連れて、Iターンを決意したそうです。
 地方が直面している人口減少や過疎化の問題は深刻です。しかし、都会から人に「来てもらう」といった発想では、問題の解決は難しいでしょう。
 そうではなくて、「地方にこそ、チャンスがある」。若者がそう感じて、自ら飛び込んでいきたいと思うような地方を創り上げることが、私の考える「地方創生」です。
 若者ならではの柔軟な発想と行動力で、新たな「ふるさと名物」の掘り起しや、販路の開拓などを行っていく。そうした面での支援も行っていきたいと考えています。若者のチャレンジを応援するような政策も進めていく考えです。
 都市に住む若者たちに聞くと、20代の人たちの約4割が、地方に定住したい、と考えています。これは、大変勇気づけられる数字です。今の時代、強制的に移住させるなんてことは、当然できません。しかし、この4割の若者たちの「希望を叶える」だけで、地方の景色は一変します。
 若者が、将来に夢や希望を持つことができる、魅力あふれる地方を創っていく。地方を創生する。臨時国会は、その力強いスタートを切る国会、すなわち「地方創生国会」にしたい、と考えています。

 さて、先日のバングラデシュ訪問の際、妻の昭恵が、現地の子供たちから、こんな歌を歌ってもらって歓迎されました。
 「君が傷ついた時は、私がそばにいてあげるから。
 どんなことがあっても支えてあげるから。
 いつまでも手をつなぎ、どこまでも。
 私は、緑にお日様の国。君は、お日様の昇る国。」
 バングラデシュの旗は、緑に赤い丸で、日の丸に似ています。現在のハシナ首相の父親、ラーマン初代大統領が、敗戦から復興を成し遂げた日本を見本にしたいと、このデザインを選んだそうです。
 私の国は、緑にお日様の国。君の国は、お日様の昇る国。
 世界には、親日国がたくさんあります。この1年9か月で、これまでの総理大臣で最多の49カ国を訪問し、ようやく分かるようになりました。
 スリランカでは、沿道にたくさんの子供たちが集まり、熱烈な歓迎をしてくれました。7月に訪れたパプアニューギニアでも、日の丸を持った大勢の方々が沿道を埋め尽くしてくれたことを、今でも覚えています。
 しかし、バングラデシュへの総理訪問は森総理以来14年ぶりでありました。スリランカは24年ぶり、パプアニューギニアは29年ぶりです。南米・コロンビアに至っては、日本の総理として初めての訪問でありました。
 どんな総理でも、まずは、アメリカなど関係の特に深い国から訪問します。どうしても、そうなってしまいます。ただ、総理が代われば、また振り出しに戻ってしまう。毎年総理大臣がコロコロ代わるような状況では、どんなに親日国がたくさんあっても、そうした国々まで残念ながら辿り着かない、ということになってしまったわけであります。
 もともと親日ですから、足を運び、対話をすれば、大きな成果が期待されます。実際、バングラデシュでは、来年の国連安保理の非常任理事国選挙に立候補していたのですが、今回の首脳会談で、立候補を取り下げ、日本への支持を表明してくれました。
 継続こそ力なり。今後も、「地球儀を俯瞰する外交」を、積極的に展開してまいりたいと考えています。
 1月のアフリカや、7月の中南米など、外国訪問の折には、できるだけ、経済界の方々にも同行していただいています。
 積極的な経済外交によって、昨年、日本のインフラ輸出は、これまでの3倍、9兆円へと拡大しました。日本の積極的平和主義についても、多くの国から支持を得て、国際社会における日本の評価も高まっていると確信しています。
 今回の人事では岸田外務大臣に留任していただきましたが、外交の一貫性と継続性こそが、日本の国益につながる、ということを、身を持って実感する日々であります。

 この秋は、国際会議が目白押しです。10月には、イタリアでASEM、11月には、中国でAPECが開催されます。イタリアはすでに訪問していますので、事情が許せば、ちょうど中国で50か国目となる予定です。
 8年前、1次政権が発足した直後、北京を訪問しました。そして、当時の胡錦濤国家主席とともに、戦略的互恵関係の考え方に基づいて、日中関係を改善していくことで合意しました。
 日中関係は、切っても切れない関係です。中国の平和的な発展は、間違いなく、日本にとっても大きなチャンスです。さらに、日本と中国は、この地域の平和と安定に大きな責任を共有していると言ってもよいでしょう。
 国境を接する隣国であれば、様々な課題が生じます。しかし、課題があるからこそ対話すべきです。戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、国際会議などの機会も活用しながら、対話に向けて、お互いが静かな努力を続けていくことが重要であると考えています。
 北朝鮮が、拉致被害者に関する包括的、全面的調査を開始しました。大きな権限を持つ組織によって、調査が始められていますが、全ては「結果」であります。
 私は、これまで、一議員として、小泉内閣の官房副長官や官房長官として、さらには総理大臣として、北朝鮮と長年向き合ってきました。北朝鮮がどういう対応をするかは、誰よりも知っているという自負もあります。
 形ばかりの報告には、意味はありません。北朝鮮は、誠意を持って調査し、全てを正直に回答すべきです。
 今後とも、「対話と圧力」、「行動対行動」の原則を貫きながら、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながっていくよう、全力を尽くしてまいります。

 さて、今日9月19日は、日本を代表する俳人・正岡子規の命日であります。子規が「獺祭書屋主人」とも号していたため、「獺祭忌」とも呼ばれています。
 「獺祭」と聞けば、日本酒を思い浮かべる方が多いかもしれません。私の地元、山口が誇る日本酒のブランドであります。この名前は、正岡子規が、伝統の俳句の世界に、新たな革命を起こしたように、日本酒の世界に革新を起こしたいという願いを込めて、名付けたそうであります。
 そもそも「獺祭」、カワウソの祭りと書きますが、「獺祭」とは、カワウソが、捕えた魚を岸に並べる姿が、祭祀をしているかのように見えるところから、生まれた言葉であります。周りにたくさんの書物を並べて、その中から、どんどん革新的な俳句を生み出した子規。「獺祭書屋主人」という名前からは、日本文学の革命児、正岡子規の風景が、いきいきと蘇ります。
 経済の再生、女性の活躍、地方の創生、教育の再生、外交・安全保障の立て直し。重要な政策課題が、私のまわりには山積しています。それは、あたかも「獺祭」のごとくであります。
 私は、それらを、必ずやり遂げてまいります。それが、一昨年の総選挙、昨年の参院選で示された、国民の負託に応える道であると思います。
 今一度申し上げます。この道しかありません。
 この秋には、福島県知事選、そして、沖縄県知事選があります。年が明ければ、いよいよ統一地方選挙となります。
 ただ、やることは、明確です。正岡子規が、自らの信ずる道を突き進み、日本伝統の俳句に大きな革新を成し遂げたように、私も、全力で、この道を進んで行く覚悟です。
 最後に、一言申し上げます。
 「来年も、またここに戻ってきます。」
 錦織選手が、一層、世界の舞台で大活躍することを期待して、私のスピーチを締めくくりたいと思います。御清聴ありがとうございました。

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