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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成27年4月10日第49回 国家公務員合同初任研修閉講式 安倍内閣総理大臣訓示

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 国家公務員として、国家・国民のために身を尽くす。その気高い決断をした皆さんを、行政のトップである内閣総理大臣として、まず、心から歓迎したいと思います。
 今年は、戦後70年の節目の年にあたります。経済再生、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍、さらには外交・安全保障の立て直し。私たちは、今、「戦後以来の大改革」に、果敢に挑戦しています。
 皆さんには、是非とも、そのエンジンとなって、新たな国づくりをリードしてもらいたい。そう思っています。

 昔、ある親子が、馬を引いて、家に帰ろうとしていました。
 それを見た人が、「馬の背が空いていて、もったいない。」と言いました。そこで、息子は、父親を、馬の背中に乗せました。
 すると、別の人がやってきて、「子どもも疲れているだろうに、歩かせるとは、ひどい親だ。」と言います。そこで、父親は馬から降りて、代わりに、息子が馬にまたがりました。
 今度は、また別の人が、「父を歩かせるとは、親不孝者だ。」と言います。そこで、次は、親子二人で、仲良く、馬に乗りました。
 そうしたところ、「大人二人が乗るなんて、馬がかわいそう。残酷だ。」という声が聞こえてきました。困り果てた親子は、とうとう、二人で馬をかついで、家に帰ったそうであります。
 その光景を見て、村の人々は、大きな声で笑い転げた。こんな話があります。
 様々な声に、謙虚に、耳を傾ける姿勢は、重要です。しかし、この親子のように、右顧左眄を繰り返し、「馬をかつぐ」が如き行政になってしまっては、国民の期待に応えることはできません。
 改革には、批判が伴います。しかし、皆さんには、すべては国家・国民のため、最後の最後まで、改革への「志」を貫く公務員であってほしいと願います。

 だからこそ、「現場に足を運べ」。そのことを、強く申し上げたいと思います。
 霞が関の机にしがみついているような役人は、もはや要りません。国民のための行政を進めるため、現場に足を運び、現場に根差した国民の声に耳を傾ける。それこそが、「行政のプロ」たる者のあるべき姿であると考えます。
 江戸時代を代表する画家、圓山応挙(まるやま・おうきょ)は、一枚の鶏の絵を描くために、一年間、毎日、神社に通い、鶏の観察を行ったと言います。
 また、その絵を見た一人の老人が、「鶏のそばに、草が描かれていないのが、大層良い」と評したことを耳にすると、圓山応挙は、その真意を問うため、その老人の家まで、わざわざ足を運びました。
 そして、その老人から「描かれていた鶏の羽根の色は、冬のもの。だから、そばに草がないのが良いと思った。」と教えられ、大変に納得したそうであります。
 こうした熱心な努力の積み重ねによって、応挙の鶏の絵は、「誰も及ばない」と言われるほどのものとなりました。
 「本物」を描きたい。
 その高いプロ意識が、圓山応挙を、常に、「現場」へと駆り立てたのだと思います。
 皆さんもまた、「行政のプロ」としての誇りを持って、一にも、二にも、「現場」を大切にしてください。現場感覚に裏打ちされてこそ、皆さんの熱い「志」は、真の「確信」へと変えていくことができる。私は、そう考えます。

 そうした「確信」を持って、140年ほど前、世界と渡り合った、一人の公務員がいました。神奈川県権令(ごんれい)に任ぜられた大江卓(おおえ・たく)であります。
 明治5年、マカオからペルーに向かっていた、マリア・ルース号が、嵐に巻き込まれ、修理のため横浜港に入ります。同時に、この船の中にいる231人の中国人たちが、奴隷の如き、ひどい扱いを受けている、との情報が寄せられました。
 当時の日本は、国際社会にデビューしたばかりであります。明治政府の中では、「事なかれ」主義の主張も強くありました。更に、いまだ不平等条約が残っていた時代です。審理の過程では、当然、欧米諸国からの干渉にさらされました。
 しかし、大江は、国際ルールに対する深い見識を武器に、堂々と正義を貫きました。慎重な審理を経て、「自然の正道(せいどう)に反する」。こう述べて、中国人全員の解放を決定しました。
 大江は、200人を超える中国人たちを、人身売買の瀬戸際から救い出し、無事、母国・清国へと帰れるよう、取り計らったそうであります。
 この快挙を、当時日本にいたアメリカ人学者グリフィスは、こう評価しています。日本は、「ペルーの甲鉄艦隊も、また時代遅れの連中も恐れず、人間の自由のために一撃を加え」た、と。
 その後、日本政府は、ペルー政府から賠償を請求されますが、初めての国際仲裁裁判に臨み、完全に勝利します。大江の判断が、国際ルールに合致していたことが、証明された瞬間でありました。
 この「マリア・ルース号事件」が起きた時、大江は、弱冠25歳。ここにいる皆さんと、ほとんど変わりません。
 若い、一人の公務員が、いまだ開国したばかりの日本を背負って、世界を相手に堂々と渡り合った。その心意気を、現代の私たちも、大いに学ぶべきであります。
 グローバル化が進む現代で、もはや、いかなる行政も、世界を視野に入れることなく、また世界と交渉することなく、進めることはできません。
 どうか、「世界」という大きな舞台で、皆さんの能力を発揮してほしい。
 「世界に目を向けろ」。皆さんにはこう申し上げたいと思います。

 さて、会場を見渡しますと、昨年よりも、女性の姿が目立ちます。今年は、女性公務員の割合が、初めて3割を超えました。「女性が輝く社会」を実現する。これは、日本社会にとって、大きなチャレンジであります。
 世界の舞台にチャレンジし、大活躍している女子高生たちがいます。全米チアダンス選手権で3連覇。通算5度目の全米制覇を成し遂げたのは、福井商業高校チアリーダー部の皆さんです。
 元々あったバトン部から衣替えしたのは、わずか9年前。顧問の先生自身が「自分たちは素人」と語るように、文字通り、ゼロからのスタートでありました。しかし、「フロリダに行こう」を合言葉に、休日返上で厳しい練習を続け、その3年後、見事に全米を制覇しました。
 「夢は、願い続ければ、叶う。」
 初優勝の後、チームリーダーは、涙ながらに、こう語ったそうであります。
 日本では、「もう成長できない」、「黄昏を迎えている」といった悲観論があります。
 しかし、国家公務員の道を選んだ皆さんには、どうか、強い意志の下に、楽観主義を貫いてほしい。「やれば、できる。」その思いで、いかに困難な改革にも、果敢にチャレンジしてください。
 そして、その成功の秘訣は、「成功するまで諦めないこと」であります。諦めることなく、努力を続ければ、いつか、思いは通ずる。その強い信念と使命感を持って、日々の仕事に、全力を尽くしてほしいと思います。

 最後に、一つ、言葉を紹介して、私の話を締めくくりたいと思います。
 「鑊湯無冷処(かくとう に れいしょ なし)」という言葉であります。
 「鑊湯」とは、ぐらぐらと煮えたぎった熱湯のこと。沸騰しているお湯は、どの部分をとっても、煮えたぎっている。冷たい水は、一滴たりともない、という意味であります。
 どうか、仕事に燃えてください。煮えたぎるような情熱で、この国の未来を切り拓いてください。そうすれば、日本は、再び、力強く成長できる。世界の真ん中で輝く国になることができる。私は、そう信じています。
 皆さんに、大いに期待しています。頑張ってください。

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