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平成27年7月9日CSIS主催シンポジウム「20世紀のグローバル・ヒストリーの省察―21世紀の新しいビジョンに向かって」における安倍内閣総理大臣挨拶

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 ジョン・ハムレCSIS所長、マイケル・グリーンさん、そして野上義二日本国際問題研究所理事長、パネリストの皆様、そして御来場の皆様。
 本日は、このシンポジウムのために、世界各地からはるばるお越しになられた歴史家・政治学者の皆様を心から歓迎したいと思います。
 今年は日本にとって、そして世界にとって、第二次世界大戦後70年という節目の年であります。
 米国の権威あるシンクタンクであるCSISが、日本国際問題研究所と一緒になって、世界の歴史に関してとても有益なシンポジウムを開催されると聞き、エールを送りにやってまいりました。
 このように世界の歴史家や政治学者が一堂に会して、地球的規模でグローバル・ヒストリーを議論するという試みは、おそらく世界でも初めてのものだと伺っています。CSIS、そしてこのプロジェクトに参加された皆様の知的で大胆なチャレンジに心から敬意を表したいと思います。

 会場の皆さんは、20世紀の大きな出来事と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
 本日は御年配の方も大勢いらっしゃいます。直接体験された方々には、先の大戦の辛さは忘れられないものだと思います。
 高度経済成長を謳歌した世代には、きっと子供の頃に見た東京オリンピックでしょう。私にとってはそうですね。
 また外国の方にとってはどうでしょう。それは、ガガーリン飛行士が宇宙に行き、アームストロング船長が月を歩いたことかもしれません。あるいは、ベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが一つに統合したことかもしれません。アジア、アフリカの国々にとっては、他民族による支配を脱し晴れやかに独立を宣言した日ではないでしょうか。
 多くの人々のとても辛い思い出と歓喜の思い出の両方が一杯詰まっているのが20世紀だと思います。
 20世紀の人類の歩んだ歴史には、『光』と『影』があります。
 『影』とは、二度にわたる世界大戦を始めとする幾多の戦争、革命、紛争や暴力、自由・思想の統制などの人権蹂躙、大恐慌とブロック経済化、他民族による支配、そして人種差別でした。また、男女差別、公害と環境破壊等の問題も、大きな『影』の部分でした。
 しかし、20世紀のとりわけ後半には、人類の歴史に『光』が戻り始めます。人類の理性は、自らの過ちを正すことを通じて、人類の社会に道徳的な成熟をもたらしてくれます。
 私たちが汲み取った普遍的な教訓とは、次のようなものだと思います。
 『武力を背景に、他国を恫喝してはいけない。』
 『他国に暴力を振るってはいけない。』
 『他国の同意なく、領土を変更してはいけない。』
 『他民族を支配したり、隷属させてはならない。』
 『人には、皆、天賦の人権がある。』
 『人間、一人一人の尊厳を大切にしなくてはならない。』
 『性別、人種、宗教等により、人を差別してはならない。』
 『男性も、女性も、全く同じ価値を持つ。』
 『自由な商業と貿易を妨げてはいけない。』
 『自然環境を美しいまま、次世代に渡さなければいけない。』
 これらが、20世紀から人類が学んだ普遍的な教訓です。
 戦後、我が国は先の大戦に対する痛切な反省の上に立ち、一貫して平和国家として歩んできました。そして、奇跡と言われた経済発展を成し遂げ、アジアを始めとする世界の国々と共に繁栄してきました。
 日本の歩みは、戦後独立を遂げた多くのアジア諸国のモデルとなりました。また、ODAやPKOなど国力に応じた国際貢献をたゆむことなく積み重ねてきました。
 更に日本の平和主義も90年代から平和を積極的に支える姿勢に転じてきました。私は、政権発足以来『国際協調主義の下での積極的平和主義』を掲げてきました。
 日本の近代史は、明治から開戦までが70年余、そして敗戦から今日までが70年です。これから戦後の方が長くなります。私は、戦後70年の日本の歩みを誇りに思います。

 本年は2015年です。21世紀になってから、はや十数年が経ちました。これから、我々は21世紀をどのような世紀にしていくべきなのでしょうか。我々は、ビジョンを持たなければなりません。
 『私には夢がある。それは、私の4人の幼い子供たちが、いつの日か肌の色ではなく人格によって評価される国に住めるようになる、という夢である。』
 これは、米国の公民権運動に大きな影響を与えたマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの有名なスピーチの一説です。キング牧師が提示したビジョンは、多くの人々の心を突き動かし、今日の米国を作り出しました。
 彼の掲げた普遍的な理想は、インド独立の父マハトマ・ガンディーや南アフリカのネルソン・マンデラ大統領の掲げた理想と同じだと思います。
 優れた政治指導者が掲げた高邁なビジョンに向かって、多くの人々が懸命な努力を重ねていく。そうやって、これまで人類は数多くの偉業を成し遂げました。ある時は自由と平等を、ある時は平和を、またある時は独立を勝ち取ってきました。
 夢半ばに倒れた人もいます。名も残らなかった多くの人々の犠牲の上に今日の21世紀の世界があります。
 自由、民主主義、人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を基盤とする世界。
 多様な国家や民族が話し合いでルールを作り、共生できる世界。
 国境を越えて多種多様なバックグラウンドを持つ人々が、お互いを認め合うことができる世界。
 誰もが自らの幸せを実現し、笑顔でいられる世界。
 それは、私たちが二度と壊してはならない人類の宝です。
 私たち人類が、どのようにしてここに到達したのか。人類として、過去に何を経験し、そこから何を学んだのか。それを、未来にどう生かしていくのか。
 それを知るために、私たちは世界史を観る共通の視点を持たねばなりません。それは、次の世代の人類のためにどのようなビジョンを描くのか、という問いに答えを出すことでもあります。

 21世紀には世界の形がどんどん変わっていくでしょう。新しい世界はルールに基づき形成されなければなりません。
 自由で寛容で開かれたシステムの中で多様な意見がぶつかり合ってこそ、新しい世界のビジョンが生まれてきます。それを可能にするのが『自由主義的な国際秩序』だと思います。日本は、新しい世界のビジョンの創造と実現のために、主導的役割を果たしていきたいと思います。
 このCSISのプロジェクトでは、この冬にもワシントンD.C.で皆さんで再び御議論をされ、その後報告書を本の形に取りまとめると伺っています。皆さんの本ができるのを楽しみにしています。
 御清聴をありがとうございました。

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