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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成27年11月6日読売国際経済懇話会(YIES) 講演会2015 安倍総理スピーチ

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 皆様、こんにちは。安倍晋三でございます。
 このところ、内政に、外交に、かなり慌ただしい日々を送っております。戦後最長の通常国会が終わって、直ちにニューヨークで国連総会。帰国後、直ちに第三次安倍改造内閣を発足させました。先々週はモンゴルと中央アジア5か国を訪問いたしました。先週末は、3年半ぶりの日中韓首脳会談、そして、初めての日韓首脳会談を行いました。その合間に、新政権の挑戦課題「一億総活躍」の国民会議をキックオフいたしました。
 そうした中で、今日は、皆さんの前で1時間もの講演でございまして、日本の総理大臣には、全く休息はないということではないかと思います。
 この懇話会は、先ほど御紹介をいただきましたように3年ぶりでございまして、前回は、3年前の11月15日の木曜日であります。
 なぜ覚えているかは、先ほど御紹介がございましたように、正に前日の14日に、党首討論があり、その場で、当時の野田総理から「解散する」との発言がございました。そして、講演の翌日、16日に、衆議院は解散されたわけであります。あの政権交代選挙へと突入していった、政局が一気に動いた最中でありましたから、正に鮮明に記憶をしております。
 あれから、ほぼ3年。今回の講演も、私にとっては、絶妙なタイミングであります。と言いますのも、3年前、この場所で申し上げたことが、今、次々と実現をしています。その成果報告をさせていただくことができるからであります。

 3年前、どなたかが私に質問されました。
 「安倍さんが総理大臣になったら、日中関係はもっと悪くなるんじゃないですか」
 相当ストレートな質問でありました。
 当時、野田政権の下で、尖閣国有化が行われ、日中関係は冷え込んでいました。そうした中で、私が総理になれば「日中関係はもっと悪化するのではないか」と考える方は、残念ながら当時、相当たくさんおられたのであります。
 ただ、私はその時「私は、民主党政権の人たちよりは、タフだ」。「政治は現実なので、日本の国益を最大化すべく、考えていく」と、3年前、この場で、お約束をいたしました。
 結果は、どうだったか。習近平国家主席とは、既に二度の首脳会談を行い、戦略的互恵関係の原則を確認いたしました。先週末も、ソウルで、李克強総理と会談し、関係改善の流れを一層強化することができました。
 日本と中国は、切っても切れない関係です。世界第3位と第2位の経済大国として、地域、更には世界の平和と繁栄に、大きな責任を共有しています。
 昨今、中国経済の減速懸念が高まっていますが、中国政府には透明性をしっかりと確保しながら構造改革を着実に進めてもらいたい。中国の平和的な発展は、日本にとって大きなチャンスであるだけでなく、世界経済の成長にも欠かせません。日本として、そのための協力は惜しみません。
 隣国ゆえに難しい課題もありますが、今後とも、あらゆる機会を活かして、対話を続けていきたいと考えています。
 韓国の朴槿恵大統領とも、月曜日、初めての首脳会談を行いました。隣国同士、様々な懸案がありますが、だからこそ、前提条件を付けることなく話し合いを行うべきだと、私はかねがね繰り返し申し上げてまいりました。そして、今般、日韓首脳会談が実現しました。リーダー同士、胸襟を開いた率直な意見交換を行うことができたと考えております。
 同じく隣国のロシアとは、戦後70年を経た現在でも、平和条約を締結できていないという異常な状態が続いています。
 これまで11回にわたって首脳会談を重ねてまいりました。プーチン大統領の訪日をベストなタイミングで実現したい。個人的な信頼関係の下に、経済・文化など重層的な協力関係を深めながら平和条約の締結を目指してまいります。
 総理就任以来、訪問した国は、既に60か国を超えました。経済界の皆さんにも御同行いただくことも多く、トップセールスによる経済外交も、大きな成果を挙げつつあります。
 来年は、いよいよ伊勢志摩サミットがあります。日中韓3か国の首脳会談も日本がホストする。日本とアフリカ諸国が一堂に会するTICADも開催される予定であります。
 来年は、日本が国際社会を力強くリードする1年としていく。今後も、地球儀を俯瞰する観点を持って積極的な外交を展開してまいりたいと思っています。

 先日、体操の世界選手権で、日本男子チームが見事金メダルを獲ってくれました。団体での金メダルは、なんと37年ぶりだそうであります。
 体操ニッポンと言えば「鬼に金棒、小野に鉄棒」と言われました。その時代から完成度の高い、美しい演技で世界を魅了してきました。
 しかし、10年前、ルールが変わった。難易度の高い技をたくさん詰め込んだ方が高い得点を取ることができるよう、ルールが変更されました。そのことで、しばらく苦戦を強いられることになりました。
 やはりルールというものは、人から与えられるのではなく、自らの手で創り上げていくものであります。
 先般、大筋合意したTPPは、正に21世紀の世界の経済ルールを日本とアメリカで主導して創ろうとする営みでありました。
 これまで、グローバルな競争と言えば、行き過ぎた価格競争。「安かろう、悪かろう」が、ややもすると幅を利かせてきました。恣意的で、不透明な政府の介入も、しばしば行われてきました。
 しかし、TPPの下では、サービスから知的財産に至るまで、幅広い分野で品質の高さが正しく評価される、透明で公正なルールが共有されます。
 消費者は「良いものを、より安く」手に入れることができるようになります。おいしくて安全な農作物をこしらえる、農家の皆さんの手間暇も真っ当に評価される。中小・小規模企業の皆さんには、自ら培った高い技術力で世界へと飛躍する大きなチャンスが生まれます。
 TPPは、正に「国家百年の計」。人口8億人、世界経済の4割近くを占める広大な経済圏に、自由でフェアなマーケットが生まれます。
 大筋合意の後、韓国やインドネシアといった国々からTPPへの参加に高い関心が示されました。当然、私たちが作った新たなルールを受け入れてもらうことが前提となります。しかし、我々は大いに歓迎したいと考えています。
 3年前、この場で「経済交渉は、結果が全てだ。」と、きっぱりと申し上げました。ようやく御理解をいただけたのではないかと思います。

 そして3年前の講演で私が最も強調した点は、デフレ脱却、経済再生であります。
 15年続いたデフレ。給料も上がらず、税収も減少を続けていました。社会保障の基盤も危うくなる。漠然とした不安が日本を覆っていました。
 日本人も自信を失っていた。デフレマインドが日本の隅々にまでこびりつき「日本はもう二度とデフレから脱却することはできない」、「日本は黄昏を迎えている」といった無力感すら漂っていました。
 しかし、アベノミクスの3年間によって日本を覆っていた、あの暗く重い空気は一変しました。
 1ドル80円を切るような、行き過ぎた円高は是正されました。日経平均株価も、8千円台から2倍以上、上昇しました。
 仕事が国内へと戻り始め、雇用は100万人以上増えました。正社員に限った有効求人倍率も、2004年の統計開始以来、最高の水準になっています。足元では、一年前と比べて、正規雇用は21万人増加しています。
 賃金も増加を続けており、今年の春は17年ぶりの高い伸び率となりました。先週発表された経団連の集計では、大手企業の冬のボーナスは平均で91万円を超え過去最高を更新しました。
 日本経済は、デフレ脱却に「あと一息」のところまでやってきました。そして、日本は、もう一度成長することができる。その確かな自信を、私たち日本人は取り戻しつつあります。

 今こそ、新たなスタートを切る時であります。
 従来の「三本の矢」の経済政策を一層強化する。同時に、その果実を活かして長年手つかずであった日本の構造的な課題、少子高齢化の問題に果敢にチャレンジする。そう決意いたしました。
 総理就任以来、私はロンドン・シティ、ダボス会議、そして毎年のニューヨーク訪問の際、海外の投資家に直接「バイ・マイ・アベノミクス」と日本への投資を訴えてきました。
 コーポレートガバナンス改革、法人税改革、農業・医療・エネルギーなどの岩盤規制の改革。TPPを始めとする経済統合。成長戦略は海外でも高い評価を得てきました。
 しかし、海外投資家からは、常に同じ質問が投げかけられてきました。
 「少子高齢化の中にある日本は、たとえどんな改革を進めても、今後必ず人口が減っていく。持続的な成長は見込まれず、投資リターンが期待できない。」「この構造的な問題を、アベノミクスはどう解決するのか」と。
 日本が、少子高齢化に死にもの狂いで取り組まない限り、日本への持続的な投資は期待できない。これが、アベノミクス第一ステージで得られた結論でありました。
 つまり、少子高齢化に歯止めをかけることは、単なる社会政策ではありません。むしろ、究極の成長戦略であります。アベノミクス第二ステージでは、この少子高齢化の課題に、真正面から立ち向かうことといたしました。

 50年後も、「人口一億人」を維持する。これを、明確な国家目標として掲げます。
 現在の出生率は、1.4程度に低迷しています。この傾向が続けば、50年後には日本の人口は8千万人余りになってしまう。なおかつ、人口の4割が65歳以上という、超高齢社会が出現します。
 さらに100年後には、人口は4千万人となる。現在の人口の3分の1であり、国力衰退に直結します。
 明治初年の日本の人口は、3千5百万人ほど。終戦直後には、ちょうど2倍の7千万人余りとなりました。そこから20年間で高度成長と歩調を合わせて人口は増加の一途を辿り、昭和42年に戦後初めて人口が「一億人」を突破しました。
 2年後、国際政治学者の高坂正堯先生が、全26巻に及ぶ「大世界史」シリーズの最終巻を出版します。そのタイトルは「一億の日本人」でありました。
 当時の昂揚感が伝わってくるようであります。その最終章の書き出しは「昭和44年の日本人は、豊かなひとびととなった。」でありました。昭和48年の世論調査では、自分の生活程度は上・中・下の「中」だという回答が、初めて9割を超えました。
 今から50年ほど前。昭和40年代は、国民生活も豊かになり「一億総中流」という言葉が流行した時代。正に「人口一億人」は、日本の豊かさの象徴的な数字であります。
 50年後も、この「一億人」を維持していく。そうすれば、その時点の人口構成比も65歳未満が3分の2となり、年齢階層別の不均衡も解消される計算となります。

 無論、ただ「人口一億人」を維持すればよい、というわけではありません。
 最も大切なことは、「一億人」の一人ひとりが、家庭で、地域で、職場で、もう一歩前に踏み出すことができる。それぞれの希望が叶い、それぞれの能力を発揮でき、それぞれが生き甲斐を感じることができる社会を創ることです。
 私の故郷、山口県長門市の歌人、金子みすずの有名な歌に「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい」というものがあります。
 世の中には、家庭に専念して子育てに頑張りたい人もいれば、子育てや介護と両立しながら仕事を続けたい人もいる。リタイア後の第2の人生は地域に貢献したいという高齢者の皆さんもいます。
 まさに、人生は、十人十色。
 若者もお年寄りも、女性も男性も、難病や障害のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが活躍できる社会を創る。そのために、一人ひとりの「希望」を阻む、あらゆる制約を取り除いていく。
 こうした思いから生まれたのが「一億総活躍」という言葉であります。
 この言葉については「戦前のスローガンのようだ」とか、「国家による押しつけだ」といった批判があります。これは私の不徳の致すところでありますが、私がしゃべるとどうしてもそういうレッテルを貼りたくてしょうがない方々が、いらっしゃるようですが、まったくの的外れであります。
 そうした全てを画一的な価値観にはめ込むような発想とは、むしろ対極にある考え方であります。一人ひとり、それぞれの人生を大切にする考え方が「一億総活躍」であるということを、どうか御理解いただきたいと思います。

 「一億総活躍」の実現に向けて、私は新しい「三本の矢」を放ちます。今回の新たな矢には、それぞれ明確な「的」があります。
 第一の的は「戦後最大のGDP600兆円」。これに向かって、これまでの「三本の矢」を束ね、より強固な「希望を生み出す強い経済」という第一の矢を放ちます。
 これまでの最大の名目GDPは、バブル崩壊直前の平成9年に記録した523兆円です。それが、リーマンショック後471兆円まで落ち込みました。アベノミクスによって成長率がマイナスからプラスへと転じた結果、足元で500兆円まで回復しています。
 ここから、毎年、名目3%以上の成長が実現すれば、2020年頃にはGDP600兆円は十分達成することができます。
 「名目3%成長なんて、ここ20年、一度も実現していないじゃないか。」
 そういう批判が、皆さんからも聞こえてきそうであります。
 しかし、そもそもこの20年間デフレだったんですから、名目で成長するわけはないんです。デフレを当然の前提として、デフレ発想で推し量ること自体が既に間違っています。
 今年、日本を訪れる外国人観光客はおそらく2千万人近くまで増える見込みです。しかし、たった3年前は8百万人ほどでした。総理就任以来、ビザの緩和などを戦略的に進め、1年目で1千万人を突破、2年目で1千3百万人余り、そして今年、いよいよ2千万人に近づいていきます。
 これだけの急速な伸びを、誰が予測したでしょうか。
 足元の7-9月期では、外国人旅行客の国内での消費は、初めて1兆円を超しました。昨年の同じ時期と比べてほぼ2倍です。私自身も正直申し上げて、ここまで伸びるとは思いませんでした。
 安倍政権が発足してから、海外から日本への投資は10倍以上増加しました。
 少し前までは、外国企業の方々に「アジアのどこに投資しますか」と聞けば「中国」という答えが一番多かった。しかし、直近の調査では、R&D拠点を置くならば「日本だ」という回答がトップになりました。
 日本のアジアにおける存在価値は、確実に高まりつつあります。例えば、来年の春には、アップル社がアジアで初めての研究開発拠点を横浜でオープンする。こんな心強い朗報もあります。
 このような事態を、3年前誰が予想したでしょうか。
 これまでの想定を超える大胆な政策を実施すれば、予想を超える成果が生まれてくる。それは当然のことであります。ですから私はこれからも、皆さんの期待を上回るような改革を、次々と断行していきます。
 法人実効税率を数年で20%台にまで引き下げ、国際的に遜色のない水準へと法人税を改革する。この目標の下に、今年4月から2.5%引き下げました。更に来年は、0.8%引き下げることを既に決めています。
 来月決定する税制大綱では、これに確実に上乗せを行い、来年4月から更なる引き下げを実現します。今後の道筋をつけていきたいと考えています。
 そのことによって、国内外からの日本への投資を促し、生産性革命を進め、イノベーションを起こしていきたいと考えています。経済界の皆さんにも、積極果敢に、設備や人材への投資を行っていただきたいと思います。
 加えて、TPPにとどまることなく日本と欧州のEPA、RCEPなど、自由な経済圏を更に広げていく。先般の日中韓首脳会談での最も大きな成果の一つは、日中韓FTA交渉の加速化であります。中韓両国からの強い期待感を感じました。これはTPPという強い礎ができたからこそであります。
 さらに、経済の好循環を回し続け、内需を拡大する。地方に眠る「可能性」を更に開花させる。働き方改革を進め、女性や高齢者の皆さんのチャンスを広げる。既存の規制・制度の改革を断行する。
 あらゆる政策を総動員していけば、日本の潜在成長率は確実に押し上げることができる。そして「GDP600兆円」を実現できる。私は、極めて現実的な目標であると確信しています。

 第二の的は「希望出生率1.8」の実現です。そこに向かって「夢を紡ぐ子育て支援」という第二の矢を放ちます。
 「結婚したい」。「子どもが欲しい」。一人ひとりのこうした願いがすべて叶えられれば、それだけで出生率は1.8へと上昇します。これが「希望出生率1.8」の目標であり、2020年代半ばまでに実現しなければならないと考えています。
 私が、出生率を目標にするなどと申し上げると、すぐに、「産めよ、増やせよ」じゃないかという批判が出てまいります。これは平和安全法制の時もそうだったのですが、分かっていながら、あえて根拠のない不安を煽ろうと、レッテル貼りをする人たちがいます。
 しかし、あくまで「希望」出生率であって、結婚したくない人、産みたくない人にまで、国家が推奨しようというわけでは断じてありません。
 例えば、経済的な事情で、結婚や出産を躊躇している若者たちがいます。たしかに、結婚・出産で家族が増えれば、衣食住のコストが上がります。とりわけ、広い住まいに引っ越すことになれば、家賃はこれまでよりも高くなってしまう。
 ですから、新婚夫婦や、子育て世帯の皆さんには、公的賃貸住宅に優先的に入居できるようにすると同時に、家賃負担を大胆に軽減する取組を始めたいと考えています。
 妊娠・出産に要する負担の更なる軽減策も検討したい。子宝を願って、不妊治療を受ける皆さんへの支援も、一層拡充していく考えであります。
 子育てにやさしい社会を創らなければなりません。
 安倍政権になって、「待機児童ゼロ」という目標を掲げ、保育所の整備スピードは、これまでの2倍に加速しています。
 しかし、今年、待機児童は、前年より増えてしまった。安倍政権発足以来、女性の就業者が90万人以上増えたから、無理もないことであります。その意味で、うれしい悲鳴ではあるのですが、「待機児童ゼロ」は必ず成し遂げなければなりません。
 そのため、平成29年末までの5年間で40万人分の保育の受け皿を整備する、としている現在のプランについて、更なる上積みを目指します。
 各自治体の本気度も高まっていて、既に計画を上回る見込みです。この勢いに、更に弾みをつけて、合計で少なくとも50万人分の保育の受け皿を整備したい。そのことによって「待機児童ゼロ」の達成を、確実なものとしたいと考えています。
 併せて、幼児教育の無償化、ひとり親家庭への支援も、更に拡大していきます。子どもたちには、無限の可能性が眠っています。それが、家庭の経済事情によって、左右されてはならない。フリースクールなどの多様な学びの場を可能とし、個性を伸ばす教育再生も進めてまいります。
 さらに、大家族で支え合う生き方も、選択肢として提案していきたいと考えています。三世代の「同居」や、徒歩圏内で暮らす「近居」を、促すような仕組みも創っていきたいと考えています。
 例えば、住宅を建てる際に、三世代同居のため、玄関やキッチンを増設する場合には、そうした費用を補助することも検討したいと思います。
 現在、URの賃貸住宅では、三世代が近居する場合、5%程度の「近居割」を行っていますが、この家賃減額幅を大幅に拡充することで、近居の魅力を高めていく工夫もしたいと考えています。
 いずれにせよ、出生率は、これまでずっと低迷を続けてきました。つまり、これまでの政策を続けていても、状況は何も変わりません。これまでの発想にとらわれない、大胆な政策を、どんどん実施していきたいと考えています。

 最後の、第三の的は「介護離職ゼロ」の実現です。そのための第三の矢は、「安心につながる社会保障」であります。
 総務省の調査では、足元で、介護を原因とした離職が年間十万人を超えています。介護離職を機に、高齢者と現役世代が、共倒れする現実もあります。
 「安心につながる社会保障」とは、高齢者の安心だけではなく、現役世代の安心にも資するものでなければなりません。
 東京五輪が開催される2020年には、いわゆる「団塊の世代」が70歳を超えます。働き盛りで、あらゆる職業で大黒柱となっているのが「団塊ジュニア世代」です。彼らが介護のため大量に離職することになれば、日本経済は成り立ちません。
 危機は、もう目の前に迫っています。今から、在宅介護の負担軽減、介護施設の整備を加速することによって、2020年代初頭までに、介護離職ゼロを実現したいと考えています。
 特養への入所を希望しながら、自宅で待機している方がたくさんいらっしゃいます。しかし、特に地価の高い都心では、なかなか新規に特養を建てられない。その解消のため、首都圏の国有地90カ所ほどを対象に、早ければ今年度中にも、介護施設事業者に安く貸し出すことを始めます。首都圏以外でも、同様の取組を検討しています。
 施設整備だけでなく、介護に携わる人材を増やしていかなければなりません。今年の介護サービス料金改定で、介護職員の処遇改善については、一人当たり月一万二千円アップとなりましたが、引き続き介護人材の育成などを進めていきます。
 介護休業制度も充実します。誰もが安心して介護休暇が取得できるよう、制度改革を進めることと併せ、現在4割にとどまる介護休業給付の水準を、育児休業の給付水準を念頭に、引き上げに取り組んでいく。仕事と介護がしっかりと両立できる社会づくりを進めてまいります。
 介護の問題は、対処療法だけでは対応しきれません。健康寿命を引き上げ、介護なしで豊かな老後を送れるよう、予防に重点化した医療改革も同時に行い、企業による健康投資も促していきます。
 高齢者がずっと元気で「生涯現役」を貫ける社会を構築する。意欲ある高齢者に多様な就労機会を提供し、生きがいを持って社会と関わり合いを持ち続けてほしい、と思います。高齢者世帯の自立を、健康面でも経済面でも、力強く支援してまいります。

 「GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、そして「介護離職ゼロ」。
 この3つの「的」については、既に、「大風呂敷だ」とか、「実現できない」といった批判をいただいております。
 これもまた、20年近く続いたデフレによる自信喪失が、日本の中に蔓延している証左であると思います。3年前、私が、大胆な金融緩和を主張した時もそうでした。「デフレはどうやっても脱却できない。金融政策でも脱却できない。」といった批判がありました。しかし、現実はどうでしょうか。私たちは、デフレ脱却に向けて、一歩ずつ確実に前進しています。
 この秋、大村先生、梶田先生が、相次いで、ノーベル賞を受賞しました。ラグビー日本チームが、ワールドカップで、強豪・南アフリカを破るなど、史上初めての予選3勝、大活躍してくれました。
 やれば、できる。私たち日本人に、大きな勇気を与えてくれたと思います。
 アフリカで、何億人もの人たちを感染症から救った、大村先生の大発見。その裏には、出かければ土を集め、毎年2000株以上の微生物を分析してきた、地道な研究作業がありました。
 先日、五郎丸選手に官邸にお越しいただき、有名な、あのポーズを教えていただきました。
 あれは、「ルーティン」と呼ばれている。毎日、毎日、厳しい練習を重ね、練習したキックのイメージを体に覚え込ませる。そして本番で、その練習通りの動きを体に再現させる。そのためのポーズであります。
 二人に共通しているのは、「成功を信じて、努力を続けること」、そして「決して諦めないこと」であります。
 少子高齢化の克服も、同じではないでしょうか。諦めてしまったら、そこでおしまい。私たちの子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すことはできない。責任放棄です。
 確かに最初から設計図があるような簡単な課題ではありません。そんなことは百も承知であります。しかし、必ず克服できると信じて、これまでの発想にとらわれることなく、あらゆる政策手段を尽くしていく。その決意であります。
 先ほどご紹介した、昭和44年の高坂先生の著書「一億の日本人」は、長年、外国へのキャッチアップ型で発展してきた日本人に対する、一つの警句で締めくくられています。
 「肩をならべたあとは、目標を自分で設定しなければならない。」そして、その時こそ、「一億の日本人の真価が問われるときである」と。
 少子高齢化への対応に、正解などありません。放っておけば、他人が解決してくれるわけでもありません。
 これは、私たち自身の問題です。今を生きる私たち一人ひとりが、子や孫の世代のために、自分で考え、自分で行動すべき課題であります。
 そうした思いから、先月、国民会議を立ち上げました。幅広い有識者の皆さんから、豊富な経験とアイデアに基づいた、積極的な提言をいただきたい。そして、一億総活躍の社会をつくるため、国民的な運動を広げていきたいと思います。
 今月中に、緊急に実施すべき対策第一弾を取りまとめる。必要なものは、補正予算による対応を検討してまいります。
 その上で、3つの「的」を射抜くため、具体的にどのような政策を講ずるべきか、その具体的なロードマップを「ニッポン一億総活躍プラン」として、来年の春頃を目途に取りまとめたいと思います。
 そして、次なる3年をかけて、その実現のために、安倍内閣の総力を挙げてまいります。

 本日は、3年前申し上げたことが次々と実現している。その御報告をすることができました。是非、次回のこの場所におきましては、「一億総活躍」の成果を、たっぷりと説明をさせていただきまして、今の時点での批判がいかに間違っていたかということを証明させていただきたいと思います。そのタイミングを選んで、どうか声をかけていただきたいと思います。
 本日は、御清聴ありがとうございました。

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