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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成29年9月20日ニューヨーク証券取引所における安倍総理の経済スピーチ

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 私は政治家であってジャッジではありませんが、総立ちで迎えてくださったことを感謝申し上げたいと思います。
 1年前、アーロン・ジャッジ選手の、あそこまでの大活躍を予測した人が、1人でもいたでしょうか。ルーキーながら30本を超える本塁打。80年以上前、あの、ジョー・ディマジオ選手が打ち立てた大記録を、早くも7月に、塗り替えました。
 誰もが困難と感じる巨大な壁も、必ず打ち破ることができる。ジャッジ選手の鮮烈なデビューは、私たちに、大きな勇気を与えてくれます。

 我が国でも今月、同じく20代の若者が、大きな壁を打ち破りました。陸上100メートルで、桐生祥秀選手が、日本人として初めて、10秒の壁を打ち破り、東アジア最速の男となりました。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、期待が高まります。
 2020年に向かって、私も壁に挑戦する。日本経済の前に立ちはだかる、いかなる壁も打ち破り、新たな経済成長軌道を描く。これこそが、アベノミクスの使命であります。
 4年前、この場所で、アクションこそが、私の成長戦略だと申し上げました。その言葉のとおり、私は、この4年間、日本の経済構造を根本から改革するため、ひたすらにアクションを続けてきました。
 まず、日本企業の体質を変えなければならない。コーポレート・ガバナンス改革を、私は、最も重視しています。
 2年前、コーポレートガバナンス・コードを策定しました。その結果、独立社外取締役を2名以上置いている上場企業は、5年前はわずか17%でしたが、今や88%になっています。
 機関投資家によるガバナンスを強化するため、スチュワードシップ・コードも策定しました。既に200を超える機関が受け入れています。本年5月にもコードの改訂を行い、世界最大のファンドであるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も含め、個別の議決権行使の結果を公表する動きが広がっています。
 当然、国も、変わらなければなりません。
 成長志向の法人税改革を進めてきました。この4年間で7%以上税率を引き下げました。本年から、我が国の法人税率は、私が、繰り返しお約束したとおり、20%台となっています。
 それでも、企業がしっかりと成長したおかげで、法人税収は、私の前の政権の頃と比べて、7兆円近く増加しています。
 さらには、内向きなマインドを捨て去り、世界の成長を積極的に取り込んでいく。
 7月、EUとのEPAが大枠合意に至りました。急速な成長を遂げるアジア・太平洋地域でも、11か国によるTPPの早期発効を目指し、交渉を加速しています。
 あらゆる手段を尽くし、自由で、ルールに基づいた公正なマーケットを、世界へと広げていく。日本は、これからも、リーダーシップを発揮していきます。
 農業でも、毎年のように国会に改革法案を提出し、生産から流通まで全面的な改革を進めてきました。農林水産物の輸出は、4年連続で過去最高を更新しています。世界に目を向けることで、若者がどんどん入ってくる産業に生まれ変わりつつあります。
 世界中から優秀な人材を日本に集める。高度外国人材の受入れに、我が国では、数の上限はありません。さらに、私はその審査を10日以内に行うファストトラックをつくり、最短1年でグリーンカードが取得できる制度をつくりました。
 4年前に掲げた、アベノミクスの長い改革リストを、私は一つ一つ確実に実行してきました。そのことを、世界経済を動かすウォール街のど真ん中に、4年ぶりに訪れ、皆さんに御報告できることを大変光栄に思っています。
 ただ、一つ、実現していないことが実はあります。それは、4年前、この場で申し上げた、40丁目と5番街の交差点にあるホットドッグ屋台の隣に、寿司(すし)やてんぷらの屋台を並べることです。さすがにニューヨークの壁は高いと実感しました。
 今、日本経済は、11年ぶりとなる、6四半期連続でのプラス成長。4年連続で高いレベルの賃上げが進んだことで、内需主導の力強い経済成長が実現しています。

 今こそ、日本経済が抱える、もっと大きな構造的な問題、最大の壁に立ち向かうときである。私は、そう確信しています。
 それは、急速に進む少子高齢化、人口減少という課題です。
 人口減少の中でも潜在成長率を高めていくと同時に、人口減少の問題それ自体にもしっかりと手を打っていく。そのために、私は、生産性革命と人づくり革命という、二つの旗を掲げて、これから、全力で取り組む決意をしています。
 一つ目は、生産性革命です。
 一人一人の労働生産性を大きく向上させることができれば、賃金も上がる。人口が減少する中でも、デフレからの脱却スピードを速めることができるはずです。
 先日、ボーイング777の胴体部品を製造する日本国内の工場を訪問しました。高い精度が求められる厳しい現場です。
 これまでは、熟練工をたくさん育成することが必要でした。しかし、ここに、最新のロボット技術を導入したら、10人の熟練工が必要だった工程が、たった1人で対応できるようになりました。
 ロボット、人工知能、IoTなど最先端のイノベーションによって、ものづくりやサービスの現場が劇的に変化する。これが、生産性革命であります。
 日本企業は、今、過去最高の経常利益を計上しています。これを、しっかりと設備や人材への投資につなげていくことが大切です。
 企業が、資本コストを意識して果断に経営判断を行うよう、コーポレート・ガバナンス改革を更に前に進めていきます。
 オリンピック・パラリンピックに向けて、大きな需要が生まれる2020年までの3年間が、サプライサイド改革を進める勝負のときだと考えています。
 税制、予算、規制改革など、あらゆる政策を総動員することで、民間の大胆な投資を後押ししていく。これまでにない、思い切った政策を講じていく考えであります。

 最新の再生医療技術が、世界を大きく変えようとしています。
 その中で、今、北米や欧州、アジアなどの海外企業が、日本で治験をしたいと、集まるようになりました。カリフォルニアから東京に拠点を移したベンチャー企業もあります。
 きっかけは、薬事法の改正です。
 世界で最速の承認審査制度。雑誌ネイチャーが、そう評価する大胆な制度改革を、私たちは、4年前に実施しました。
 今月は、iPS細胞の技術を創薬に応用した世界初の治験が、日本でスタートしました。
 医療、創薬といった産業分野で、日本は、正直申し上げて、これまで国際競争力は高くなかった。しかし、新しい再生医療技術が生まれ、それに応じた大胆な規制改革を行ったことで、日本は今、再生医療のトップランナーです。
 考えてみてください。
 4年前、レインボー・ベーグルをインスタグラムに載せるために、ブルックリンのベーグル・ストアの前に、大行列ができることを、誰が予想したでしょうか。
 4年前、ここからブルックリンに出掛けるときに、地下鉄でも、イエローキャブでもなく、ウーバーを使う人がこんなに増えることを、誰が予測したでしょうか。
 変化は、ある日、突然やってきます。その、時代の変化を先取りした改革を行えば、世界の産業地図も一変させることができる。そのことを、この4年間で、実感しました。
 人工知能やビッグデータなど、新しいテクノロジーを利用して、今、世界中で、新しいビジネスがどんどん生まれています。こうしたベンチャー精神あふれる人たちに、日本は、その実験場を提供したい。
 フィンテックによる新しい金融サービスなど、世界初の試みをしようとすると、そもそも、どのような規制に抵触するかも予測できない。そのことが、革新的なアイデアの事業化を阻んできたのではないでしょうか。
 規制のサンド・ボックス制度を創設したいと考えています。参加者限定、期間限定で、既存の規制にとらわれることなく、新しいビジネスを自由に試行錯誤できる砂場をつくる。究極の規制改革です。世界中のベンチャー精神あふれる人たちに、是非、日本に来てもらいたいと思います。

 生産性革命とともに、人口減少へのもう一つの処方箋は、人づくり革命の実現です。
 若宮正子さんという日本女性を御紹介させてください。
 本年、サンノゼで開かれた、アップル社の会議に招かれました。世界最高齢のアイフォーン・アプリの開発者として、であります。
 60歳で会社をリタイアするまで、パソコンに触れたこともありませんでした。その若宮さんが、81歳でアプリ開発に挑戦し、アップル社の審査を見事に通過しました。
 伝統的な日本人形の飾りつけを正しくできるかという、日本のお年寄りには昔懐かしいゲームです。開発に挑んだ動機を、若宮さんは、こう語っています。
 シニアが楽しめるアプリがなかったから。
 高齢化が進めば、当然、マーケットの構成も変わります。そこに新しいチャンスがある。拡大するシニア・マーケットで、そのニーズを的確に捉えられるのは、高齢者の皆さんです。人口の半分は女性です。そのニーズに応えるためには、女性ならではの目線が、大きな力を持つはずです。
 確かに我が国の人口は減り続けていくと予想されています。働き盛りの男性の数も、どんどん減っていく。そうした男性たちに過度に依存していた日本経済は、一見すると、大きなピンチであるように感じます。
 しかし、女性であり、そして高齢者でもある、若宮さんの大活躍は、これは、ピンチではなく、むしろ大きなチャンスであることを、私たちに教えてくれています。
 既に、アベノミクスは、この問題にアプローチしています。ウィメノミクス、生涯現役の旗を高く掲げ、働きやすい環境をつくり上げてきた結果、この4年間で、女性や65歳以上の方々の就業率は、共に3%アップしました。その結果、人口は70万人減りましたが、就業者数は逆に185万人増やすことができました。
 さらに、もし今、現役世代の女性の就業率が、男性並みに上がれば、それだけで、600万人の新しい就業者が誕生します。
 加えて、高齢者の就業率も、同じように引き上げる。そうすれば、2050年に、日本の人口は2000万人減ると予想されていますが、就業者は、逆に、今より1000万人近く増加させることも可能です。
 女性の皆さんや、豊富な経験や知恵を持つ高齢者の皆さんが、もっと活躍できる環境をつくり上げることで、人口が減ろうとも、日本は、まだまだ成長できます。

 1950年頃を振り返れば、日本人の平均寿命は55歳から60歳ほどでした。しかし、現在は80歳を超えている。10年前に生まれた子供たちの半分は、107歳まで生きるという研究もあります。
 信じられません。私は、明日、63歳の誕生日を、ここニューヨークで迎えますが、あと40年以上人生があるならば、政治家の次に何をやるかを、真剣に心配しなければなりません。
 先日、PGA TOURで来日したトム・ワトソンさんに、個人レッスンをお願いしましたが、もしかしたら、そのうち、シニア・ツアーで皆さんとお目にかかるかもしれません。
 人生100年時代を前提に、経済社会の在り方を根本から改革していきます。アベノミクス最大の勝負であります。
 まず、雇用システムの改革を進めます。
 長い時間、働くことが良い、という長年の価値観は、根本から改めなければなりません。賃金などの待遇について、雇用形態ではなく、能力で評価する仕組みを導入することが必要です。
 次に、社会保障制度の改革です。
 これまでの社会保障は、リタイアした高齢者への給付が中心でした。これを、もっと、現役世代に振り向ける。全世代型の制度に改革していきます。
 保育や介護のサービスを一層充実し、現役世代が仕事と両立しやすい環境を整えます。幼児教育の無償化も進め、子育てしやすい環境を整備します。
 結婚したい。子育てしたい。こうした若者たちの希望を叶(かな)えるだけで、我が国の出生率は、すぐに1.8まで引き上げることができます。この目標の達成を、私は初めて掲げました。全世代型の社会保障は、人口減少の歯止めともなるものです。
 そして、教育制度の改革です。
 所得の低い世帯の子供たちを対象に、真に必要な子供たちの高等教育を無償化します。大学を卒業できるかどうかで、生涯賃金は6000万円規模で違ってくる。貧しい家庭で育った子供たちが、そのチャンスを諦めずに済むよう、しっかりと投資していきます。
 再教育が重要です。
 人生100年時代を見据えて、若宮さんは、こう提言しています。幾つになっても、実践的な職業教育を受けることができ、新しい仕事にチャレンジできる。そうした社会をつくるために、リカレント教育を大幅に充実していきます。
 老いも若きも、女性も男性も、みんなにチャンスをつくる。こうした改革パッケージを、私は、人づくり革命と名付けました。
 その実現には、大きな財源が必要となります。しかし、日本の未来を拓くために、私は、この問題からも逃げることなく答えを出す。そう固く決意しています。

 日本で生まれた絵文字が、昨年、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のコレクションに加えられました。世界の最先端をいく、ここニューヨークで、現代アートとしての価値を認められたことを、誇りに思います。
 僅か18年前に発明された絵文字は、一気に世界に広がり、世界中の人々のコミュニケーションを一変させました。
 しかし、この、人類の共通財産とも呼ぶべき大発明が、着想からたった1か月で完成していることを知っている方は少ないのではないでしょうか。
 携帯電話の黎明(れいめい)期です。煩雑なボタン操作を考えたときに、絵文字があれば、少ない文字数でコミュニケーションできるはずだ。絵文字が絶対に必要だ。その開発者の情熱と責任感が、僅か1か月で偉大な発明をもたらしたのだと思います。
 本日私が申し上げた大改革を、本当に成し遂げることができるのか。疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、私は、必ずやり遂げる。あらんかぎりの政治資源を、日本の未来を拓くためにつぎ込んでいく。その覚悟は、もとよりできています。
 少子高齢化、人口減少という最大の課題から目を背けることなく、日本を改革する。その情熱と責任感においては、誰にも負けない。私は、静かに、そう自負しています。

 アーロン・ジャッジ選手は、オールスターが終わった後、大きなスランプを経験しました。敵も研究してきます。疲れもあったでしょう。
 メジャーリーグにも挑戦したことのある、NBA(National Basketball Association)のレジェンド、マイケル・ジョーダン選手の言葉が、頭をよぎります。
 I can accept failure. Everyone fails at something. But, I can’t accept not trying.
 勝つことは困難だと思われる試合でも、ジョーダン選手は、最後の瞬間まで諦めることなく攻め続けて、幾度となくチームを逆転勝利に導きました。
 私も、前を向いて、攻め続けていく。どんなに困難な課題であっても、前向きに挑戦し、必ずや結果を出していく。強い決意を持って、取り組んでまいります。
 アーロン・ジャッジ選手にも、前を向いて、攻め続けてもらいたい。シーズン終盤になって、少し調子を戻してきています。ヤンキース・ファンの声援を背に、恐らくここにはたくさんのヤンキース・ファンがおられるかもしれませんが、レッドソックスを追撃して、ポスト・シーズンに向けて、大いに活躍してほしい。そのことを祈念して、私のスピーチを終わりたいと思います。

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