ベトナム及びインドネシア訪問についての内外記者会見

令和2年10月21日
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【菅総理冒頭発言】
 まず、ここインドネシアの皆様の心温まるおもてなしに感謝します。私は初めての外国訪問として、本年のASEAN(東南アジア諸国連合)議長国のベトナム、そして、人口、GDP(国内総生産)、面積共にASEAN域内最大を誇る、ここインドネシアを訪れました。
 我が国とASEANは、長年の友人として、また、対等なパートナーとして、発展の道を歩んできました。
 この4月、日本で新型コロナ感染が拡大し、大変厳しい状況にある中、ベトナムから、120万枚の医療用マスクが届けられました。インドネシアでは、新型コロナと戦う厳しい状況にある中で、医療物資の輸出を控えていたにもかかわらず、我が国に対して、医療用ガウンの輸出を再開してくれました。
 我が国からは、両国を含むASEANに対し、医療機材を提供し、それを使いこなす人材の育成も行っております。また、ASEAN感染症対策センターへの支援を通じ、ASEANの保健・医療の基盤強化に全面的に協力しております。
 2011年3月の東日本大震災により、我が国が困難に直面する中、ASEANの友人たちが、支援の手を差し延べてくれたことを、我々は、忘れておりません。
 インドネシアでは感染拡大が続く中で、地震や津波のリスクにも晒(さら)されています。人命に直結する防災対策が更に充実するよう、新たに500億円の円借款を供与することを、ジョコ大統領にお伝えいたしました。
 また、ベトナムでは、先週の台風で甚大な被害が生じました。緊急援助物資を迅速にお届けしました。
 このように、我々が、助け合い、そして、絆(きずな)を強めていけるのは、ASEANと我が国が、このインド太平洋という地域において、法の支配、開放性、透明性といった基本原則の実現を共に目指しているからだと思います。
 この点、ASEANが昨年発出した「インド太平洋に関する(ASEAN)アウトルック」と、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」は多くの本質的な共通点を有し、日本はこの「アウトルック」を全面的に支持いたします。
 今回、両国の首脳会談において、ASEANと日本で、インド太平洋地域の平和で繁栄した未来を共に創り上げていきたい、そうした思いをお伝えし、そのために具体的な協力を進めていくことで一致しました。
 日本とASEANが互いの連結性を高めていくことは、この地域の経済的繁栄、ひいては「自由で開かれたインド太平洋」の礎となります。
 今回、ベトナムと、双方向の定期旅客便の再開に合意しました。さらに、ビジネス目的の出張者などの往来を活性化させる「ビジネストラック」について合意しました。
 インドネシアとも、検査を前提に、入国後すぐにビジネス活動が可能となる往来の早期再開に向けて、調整を開始いたします。
 今回の感染症の拡大によって、我が国のサプライチェーンの脆弱性(ぜいじゃくせい)が明らかになりました。この夏から、日本企業の生産拠点の多元化を後押ししており、その第一弾として、ASEAN諸国で30件の生産設備の新設や増強を支援いたします。
 一昨日はベトナムで、日本企業の方々から、コロナ禍の課題など、現場の率直な声を伺いました。この会見の後、インドネシアの日本企業の方からもお話を伺う予定です。そうした声をしっかりいかしながら、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化を図りたいと思います。
 インド太平洋全体、そして日本とをつなぐ、インフラの強化も進めてまいります。
 ここインドネシアでは、日本企業の多くが立地する工業団地の新たな物流拠点として、円滑な物流ルートを築くために、パティンバン港の建設を支援します。首都ジャカルタ市内の都市鉄道網の導入支援などにより、インドネシア国内の交通アクセスの改善に貢献したいと思います。
 ベトナムでは、ホーチミン市内で初となる都市鉄道について、先週、日本製の車両が到着し、来年の開通を目指します。
 地域の連結性を一層高めていくため、来年の日メコン首脳会議でも、フック首相を始めメコン諸国の首脳たちを日本に迎え、そのための施策についてしっかりと議論したいと考えております。
 我が国とASEANを結ぶ海上交通の舞台となるインド太平洋では、自由で、誰にでも開かれ、法の支配が貫徹されて、初めて、地域の平和と繁栄が実現すると思います。
 しかし、南シナ海においては、逆行する動きが起きており、懸念を持って注視しております。日本は、南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも反対します。南シナ海を巡る問題の全ての当事者が、力や威圧によるのではなく、国際法に基づき、紛争の平和的解決に向けて努力することの重要性を、改めて強調いたします。
 日本は、そのために、今回訪問した2か国を含む、ASEAN諸国に対し、取締船の供与などを通じて、違法漁業の監視や取締活動の支援を引き続き行っていきます。海上保安庁の豊富な経験と実績を活用し、人材育成に大きな役割を果たします。
 我が国及び地域の平和と安定を確保するため、ベトナムとは、適正な管理の下で、我が国の防衛装備品や技術を移転するための協定に実質合意しました。
 インドネシアとも、協議を加速化していくことで一致いたしました。
 インドネシアとは、東南アジア唯一の外務・防衛閣僚級会合、いわゆるツー・プラス・ツーの早期開催に合意いたしました。
 今回は、総理就任後ほどなくしての訪問であり、準備の時間が限られた中で、両国からは最大限の歓待をお受けし、友人であり、戦略的パートナーであるASEANとの信頼関係を一層深めることができたと思っております。
 今後とも、私自ら、首脳外交を展開し、ベトナム、インドネシアを始めASEAN各国と緊密に連携しながら、「自由で開かれたインド太平洋」を着実に実現していくとの決意を新たにいたしました。
 私からは、以上です。

【質疑応答】

(フジテレビ 千田記者)
 外交について伺います。総理から冒頭御発言がありましたように、ベトナム、インドネシアそれぞれの首脳会談で、総理は、日本が提唱するインド太平洋構想の推進を繰り返し訴えられました。一方で、中国の王毅(おう・き)外相はこの構想についてインド太平洋版の新たなNATO(北大西洋条約機構)を企てていると強く非難しています。こうした中国の反発もある中、同時に、中国の海洋進出への懸念もある中で、この構想をどう進めていくお考えでしょうか。
 また、年内に開催が予定されている日中韓サミットについて、議長国の韓国が、いわゆる元徴用工訴訟で適切な対応を取らなければ日本の参加は難しいとの立場を、韓国側に伝えているのでしょうか。参加についての日本の考え方をお聞かせください。

(菅総理)
 まず、インド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界全体の平和と繁栄を確保していく。このことが重要だと思います。
 我が国としては、「自由で開かれたインド太平洋」は特定の国を対象としたものではなく、考え方を共有するいずれの国とも協力することができると考えています。インド太平洋版のNATOを作るというような考えは、全くありません。
 また、日韓関係についての御質問であります。日韓間の外交上のやり取りについて、一つ一つコメントすることは差し控えさせていただきますが、日中韓サミットの日程などについては、何ら決まっているということを承知はしていません。
 いずれにせよ、日本企業の差押資産が現金化される、こうした事態になれば、日韓関係にとっては、極めて深刻な状況を招くので、絶対に避けなければならないと考えています。このことは、これまでも繰り返し申し上げてきているとおりであります。

(アンタラ通信 ゲンタ・テンリ・マワンギ記者)
 今回の菅総理による初めてのインドネシア、ベトナム訪問の目的は、安倍前総理の流れを継承するものでしょうか。あるいは、総理御自身の掲げる日本の外交方針に基づくものでしょうか。また、総理の外交方針は、特に南シナ海における中国の強い影響力及び「自由で開かれたインド太平洋」構想に関する日本の立場を踏まえたものでしょうか。

(菅総理)
 ASEANはインド太平洋地域の中心に位置し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた、その取組の要であると思っています。日本は、このような考え方から、ASEAN諸国を始めとするインド太平洋地域への積極的な関与を明確にしてきました。ASEANが昨年策定した「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を全面的に支持しております。私の政権においても、この方針は全く変わりありません。
 今回、私の最初の外遊地として、今年のASEAN議長国であるベトナムと、ASEAN域内の最大の人口、GDP、面積を誇るインドネシアを訪問し、インド太平洋国家である日本として、地域の平和と繁栄に引き続き貢献していくとの意志を明確にさせていただきました。
 今回の外遊で構築した両首脳との信頼関係を基本として、地域・国際社会の課題解決に向けて、今後とも積極的なリーダーシップを発揮していきたい、このように思います。

(朝日新聞 伊澤記者)
 内政についてお願いします。総理は帰国後、週明けから臨時国会に臨まれることになると思います。臨時国会では日本学術会議の問題が論戦の大きなテーマの一つになるかと思います。野党側が求めている6人の推薦をしなかったという点について今後どのように御説明をされていくのか、お考えを聞かせていただければと思います。
 また、国会に臨む決意、あと第3次補正予算と経済対策についてのお考えもお聞かせください。
 また、福島第一原発の敷地内にたまっている処理済みの汚染水の話ですけれども、加藤官房長官や梶山経済産業大臣らは、方針を先送りできないという発言をされていますけれども、この処理水の扱いについてどのような方針で臨まれるのか、またいつ頃決定されるのか、お考えをお聞かせ頂ければと思います。

(菅総理)
 私が日本学術会議において申し上げてきたのは、まず、年間10億円の予算を使って活動している政府の機関であるということです。そして、任命された会員の方は公務員になります。ですから、国民に理解される存在であるべきだということを申し上げています。
 また、会員の人選は、出身やそうしたものにとらわれずに広い視野に立ってバランスのとれた活動を行っていただきたいということ、そういう意味から私自身は「総合的、俯瞰(ふかん)的」と申し上げております。国の予算を投じる機関として国民に理解される、このことが大事だと思います。
 また、会員の人選は、最終的に選考委員会などの仕組みがあるものの、まずは現在の会員の方が後任を推薦することも可能な仕組みになっているということも聞いています。
 今回の件は、こうしたことを考えて、推薦された方々がそのまま任命をされてきた前例踏襲をしてよいのかどうか、考えた結果であります。
 先週梶田新会長とお会いしましたが、各分野の研究者の英知を集めた団体なのだから、国民に理解されるように、日本学術会議をより良いものにしていこうと、こういうことで会長と合意しました。今後、科学技術担当の井上大臣に窓口になっていただき、議論を続けていきたい、このように思っています。
 臨時国会になりますけれども、まずは新型コロナウイルス対策と経済の回復の両立、総裁選でお約束をしましたデジタル庁、不妊治療への保険適用など、こうしたことを始めとした少子化対策、さらにはグリーン社会の実現など、ポストコロナの世界に向けた考え方を所信表明の演説でしっかり行いたいと思っています。
 さらに、新型コロナウイルスのワクチン接種のための法案、災害の被災者支援のための法案などの提出を予定しております。それぞれの法案の趣旨をしっかりと説明をしていきたいと思います。
 経済については、引き続き、感染対策と経済の両立、ここを図ってまいりたいと思いますし、今後も、必要に応じて躊躇(ちゅうちょ)なく対策を講じていきたいと思います。
 またALPS(多核種除去設備)処理水の取り扱いについてであります。いつまでも方針を決めないで先送りをすることはできないと思っています。今後できるだけ早く、政府として責任を持って処分方針を決めたいと考えております。
 なお、現時点で政府としての処分方針や決定時期を決めたという事実はありません。これまでの議論や御意見などを踏まえ、政府内での議論を深めていきたいと考えており、風評被害対策についても、しっかりと取り組んでいきたい、このように思っております。

(ジャカルタ・ポスト紙 ディアン・スプティアリ記者)
 南シナ海やナツナ島の問題を踏まえ、日本はインドネシアとの間で、どのように海洋安全保障に取り組んでいくのでしょうか。日本自身が中国への対処から得た教訓は、何ですか。
 また、インド太平洋地域における日米豪印の枠組みにおいて、インドネシアはどのように位置付けられていますか。
 南シナ海の問題について、来月のASEAN関連首脳会合でどのように扱うお考えでしょうか。

(菅総理)
 まず、日本は東シナ海・南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも強く反対をします。また、日本は、自国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意です。冷静かつ毅然と対処してまいります。
 また、南シナ海をめぐる問題については、日本はこれまで一貫して、海における法の支配の貫徹を支持しており、懸念を持って注視しています。全ての当事国が、力や威圧によらず、国際法に基づく紛争の平和的な解決に向けて努力することが重要と考えています。このような観点から、インドネシアとも緊密に連携をしていきます。
 今回のインドネシア訪問を契機として、日本は、同じインド太平洋の海洋国家であるインドネシアとの海洋安全保障協力の更なる具体化を進める考えです。例えば、外務・防衛閣僚級会合の早期実施、防衛装備品・技術移転に向けた協議の加速化、海上法執行分野を含む人材育成、そうした推進を実現していきたいと思います。
 また、インドネシアが主導して昨年採決をされました「アウトルック」と、日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」は、法の支配、航行の自由、開放性、透明性、こうしたものなど、多くの本質的な共通点を有していると日本は考えており、これを踏まえて、11月のASEAN関連首脳会議において、インドネシアとしっかり連携をしていきたいと思います。

関連リンク

総理の演説・記者会見など