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米国・中東諸国訪問における内外記者会見


平成19年5月2日

米国・中東諸国訪問に関する内外記者会見を行う安倍総理の写真

【安倍総理冒頭発言】

 今回、私は、総理就任後、初めて米国、そして中東諸国を訪問した。訪米での最大の成果は、ブッシュ大統領との間で、日米同盟はかけがえのないものであり、この同盟を揺るぎない同盟として深め、かつ幅広くしていくことで合意したことである。
 このような日米同盟に立脚して拉致や核などの北朝鮮問題、また気候変動や省エネルギーを含む幅広い国際的な課題について連携して対処していくことで一致した。ブッシュ大統領ご夫妻とも個人的な親交を深めることもできた。
 米国に続き、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、エジプトの中東5か国を訪問した。中東の平和と安定は、国際社会の安定のために不可欠であり、我が国の国益にも直結している。私は、我が国が中東地域に積極的に関与し、相互理解を深め、そして、石油を越えた重層的な関係を築き、「日本・中東新時代」を築いていくことを一貫して述べてきた。
 今回の中東訪問には、御手洗日本経団連会長をはじめとする我が国の経済界のトップを含む180名の方々に同行して頂いた。これは官民を挙げての我が国の中東に対する強い関心の表れでもあり、また、エネルギー分野に加え、中東諸国の更なる発展や日本との経済関係での多様化と深化に向けた起爆剤になるものと確信している。
 中東諸国においては、日本に対し経済のパートナーとしてだけでなく、文化や教育の交流に強い関心と期待を有していることを実感した。人づくりは国づくりの礎であり、「人づくり」の面でも我が国ならではの協力を行っていきたい。
 中東の抱える課題のうち、中東和平については、私から、我が国の進める「平和と繁栄の回廊」構想等を通じた取組を説明し、中東和平の進展に向け連携を深めていくことで各国の首脳と意見が一致した。イラクの復興支援については、自衛隊による人道復興支援、そして、50億ドルのODAの供与、60億ドルの債務救済措置、そして国民融和促進などの我が国のこうした取組・貢献について説明した。いずれについても各首脳より、中東地域の安定のために日本の貢献に対する高い評価が与えられた。今後も、中東の平和と安定、イラクの復興に向け積極的に取り組んでいく考えである。
 今回の訪問では、日本から遠く離れ、そして、環境も厳しいこの中東の地で、海上自衛隊と航空自衛隊の隊員諸君と会う機会も得ることができた。高い士気と能力で現地の人々から高い評価と信頼を得ていることを改めて確認した。彼らに敬意と感謝を表したい。
 最後に、ここエジプトをはじめ、各国の皆様から大変暖かいおもてなしと歓迎を頂き、この場を借りて改めてお礼を申し上げたい。

【質疑応答】
(質問)
 まず北朝鮮政策についてお伺いしたい。今回の6カ国訪問の最大の目的の一つは、北朝鮮問題について、国際社会とスクラムを組んで強いメッセージを北朝鮮側に送れるかどうかという点にあったと思う。特に、足並みの乱れが見え始めているという指摘もあるアメリカとの関係の中で、認識の一致を完全に見るかどうかが注目されていた。そこで伺いたいのは、計6時間に上るブッシュ大統領との会談等のなかで、その初期の目的は達成できたのかどうか。特に今、北朝鮮に対して追加的制裁が行われるのでは、との指摘もあるなかで、それについて具体的な議論はなされたのか。またブッシュ大統領との会談とは別に追加的制裁について総理ご自身の今の考えをお聞かせ願いたい。

(安倍総理)
 北朝鮮問題についてはブッシュ大統領との間で相当長い時間をかけてつっこんだ議論した。大統領も自分も率直な意見を述べ、考え方について互いに理解し合えたと思っている。私とブッシュ大統領とは、日本人の拉致問題、核問題、ミサイル問題に関し、現在の北朝鮮の姿勢は許し難いものである、受け入れがたいものであるという点で一致している。そして、この問題に対処するためにさらに連携を強化していかなければいけないという点において日米は完全に一致していると言っても良いと思う。
 北朝鮮が約束を守らなければ、彼らが置かれている今の経済、食糧といった状況を改善させることはできず、むしろ悪化していくということを北朝鮮は理解しなければならない。
 日本も、米国も、北朝鮮の交渉の仕方については既に色々と経験を積んでいる。我々はこれまでの北朝鮮のこうした外交姿勢から対応すべき姿勢というものを学んできた。北朝鮮との関係、対応、交渉においては対話のみならず圧力も重要であるということで大統領とも完全に意見は一致したということは申し上げておきたい。追加的制裁については、現在初期の段階にすべきことを北朝鮮は行っていないということを念頭に、我々は場合によっては更なる措置についても考えていかなければならないと考えている。もちろん、拉致についてもこのまま進展がなければ、我々も色々と考えていかなければいけないと思う。

(質問)
 心より、エジプトに総理をご歓迎申し上げるとともに、今回のエジプト訪問に改めて感謝を申し上げる。通常、一国の指導者をお迎えする場合、何らかの新しいイニシアティブの宣言などがある。前回、日本の総理がエジプトを訪問した際には日・アラブ対話を宣言した。今回のイニシアティブとしては如何なるものがあるか。今回エジプトを訪問されたので、そのエジプトにおいてのイニシアティブは、例えば教育分野のものか。E−JUST(イー・ジャスト)を構想されていると伺っている。

(安倍総理)
 今回のエジプト訪問において、私とムバラク大統領は、教育及び技術分野における両国の協力関係を前進させていくということで一致をした。今、質問で触れられた、日本エジプト科学技術大学、いわゆるE−JUST構想の提案にみられるように、科学技術教育を促進するために、我が国に強い期待を寄せて頂いていることについて大変光栄に思う。世界でも最も古くから数々の文明を生み出し、古くて厚みのある学術的なベースを持つエジプトからそうした期待を頂いているということについて、私たちはこれに応えていかなければいけないし、応えていくことは大変光栄なことだと思う。我が国の知見がエジプトの科学技術分野での発展に向けて役に立つことができれば大変喜ばしい。そのために我が国として可能な協力を行っていく。これは、文化・教育・産業など重層的な関係を積み重ね、日本と中東の関係に新しい時代を切り開いていくという私の基本的な考え方に沿うものである。それがまさに、「日本・中東の新時代」に繋がっていく。E−JUSTに関しては、現在、専門家が調査を実施中と聞いているが、この構想の具体化に向けて専門家同士で更に議論が深まっていくことを期待したい。

(質問)
 このたび、総理は中東に派遣されている自衛隊を直接激励した。総理が、集団的自衛権の懇談会を設けた目的には日米同盟の機能強化と並んで、積極的な国際貢献ということもあると思うが、他の国の部隊が攻撃を受けた場合の自衛隊の対応や多国籍軍などの後方支援のあり方についてどのような問題意識を持っているか。

(安倍総理)
 私は、かねてより、時代に合った安全保障のためには法的基盤を再構築する必要があると一貫して述べてきた。我が国の平和と安全が維持されるように日米同盟がより効果的に機能しなければならない。国際社会の平和と安定について日本の貢献が強く求められており、そして貢献することが我が国の責任でもある。その観点からも考えていかなければならないと思う。また、日米同盟に関するいくつかの類型、我が国の国際的な平和活動への貢献に関するいくつかの類型に則して、集団的自衛権の問題も含めた、憲法との関係の整理について研究を行っていく必要があると考えている。有識者懇談会を立ち上げたが、有識者懇談会の方々には、集団的自衛権の問題を含めて、先ほど私が最初に申し上げた問題意識に沿って、憲法との関係の整理について、結論を予断することなく、様々な観点から見識・学識に基づいて議論をして頂きたいと思う。

(質問)
 米国の議会関係者と会談した際、民主党のラントス下院外交委員長が日本の憲法改正について期待感を示した。リベラル派まで含めた米国の政治指導者が憲法改正を支持するということが明らかになったと思う。この成果を踏まえて、特に参院選に向けて、国民に対して憲法の何をどのようにしたいと訴えていくつもりか。また、国民投票法成立後の具体的な改憲への取り組みについてどのようにお考えか。例えば、自民党の新憲法草案第二次案を作られるなどお考えか。

(安倍総理)
 まず、憲法改正については、外国からの支持・不支持ということに関わりなく、日本が独自に改正すべきかどうか自主的に議論し判断すべきものである。しかしそれと同時に、日本の姿勢が誤解されてはならない。そういう意味において、日本の改憲の方向性、その理由及び私の考え等について米国の議会においても支持がなされているということは、憲法を改正していくという環境を作っていくという意味において好ましいことであると思う。今後とも、米国のみならず、近隣諸国・アジア等も含めて、憲法の改正の意味・意義についても説明をしていかなければならないと思う。憲法改正については、まずは、この改正手続法案である国民投票法案がこの国会で議論され、衆議院にて通過・可決した。自分は、この国会において成立されることを強く期待している。そして中身については、幹事長そして幹事長代理として私も関わった自民党の憲法の草案ができている。私は自民党の総裁であるから、これが自由民主党の考え方である。これを基本に、与党そして全党で議論をし、また国民的な議論をしていきたい。まずはそれが始めであり、第2次案などはまだ全く考えていない。 まず、これが私達が今出しているのが案であり、これこそが私達が変えていく方向であり、それが草案であるということを申し上げておきたい。どのようにしようとしているのかと問われるのだが、私は既にそれを示しているということを申し上げておきたい。それを読んで頂きたい。

(質問)
 今回、日米首脳会談において環境問題について活発な意見交換が行われたと伺っている。今年のみならず、来年日本で行われるG8サミットにおいても主要議題の一つになると思われる。総理は、ポスト京都の枠組みにおいて何が重要と考えているか。より多い参加を求めるべきか。あるいは、中国、米国等主要国などCO2大量排出国の参加がなくとも、高いレベルのものを目指すべきなのか。また、昨日原子力発電についての議論についてもあったと聞いているが、今後、原子力の平和利用はポスト京都の重要な役割を担うと考えるか。

(安倍総理)
 気候変動問題を含む環境問題については、対応を誤ると人類の生存にも関わる大変重要な問題であると認識しており、これは世界各国が共通の課題として取り組んでいかなければならない問題であり、日本も大いに貢献していきたい。そしてまた、外交においても日本がリーダーシップ及びイニシアティブを発揮していきたいと考えている。
 温室効果ガスの濃度安定のために、全ての主要排出国の参加する、実効性のある国際的な枠組みを構築していく必要がある。ポスト京都の課題としては、全ての排出国が参加し、そして実効性のある枠組みを作っていくという新たな課題に取り組んでいかなければならない。
 先月、来日した温家宝総理との間でも、中国が枠組み構築への過程に参加することで一致した。そしてまた、今回の日米首脳会談においても、ブッシュ大統領との間で気候変動問題の重要性を確認した。そして、日米で共同声明を発出し、今後日米間で対話を一層強化していくことで一致した。そういう意味で、課題について目的に向け一歩一歩着実に前進していると認識している。
 来年日本でサミットがある。そして、気候変動問題を含む環境問題は重要なテーマになる。この来年のサミットに向け、関係国と協力を深めていきたいと考えている。それに向けて、中国や米国という主要排出国との間でそれぞれそれなりの成果を挙げることができた、米国との間で共同声明を発出することができたということは前進であり、大きな一歩を記すことができたと考えている。

(質問)
 総理は、先程、中東和平は日本にとっても世界にとっても非常に大事だと理解している旨発言された。日本は、今後、中東和平問題に関しどのような経済的・政治的役割を果たすことができるか。また、中東和平におけるエジプトの立場をどう評価されるか。

(安倍総理)
 日本語を流暢に話されるエジプトの方が増えていくというのは、日本とエジプトとの関係というのを更に重層的な強い関係にしていくものだと思う。そういう意味での語学教育について、我々としても、協力できるものは協力していきたいと考える。また、更にこの分野での関係を深めていきたいと思う。
 エジプトは、中東地域の平和と安定に大きな責任を有する地域の大国であると思う。また、イスラエルとも外交関係を有している。中東和平プロセスの進展のために、エジプトが果たすべき役割は大変大きいと思っている。
 近く、エジプトのアブルゲイト外相が、「アラブ和平イニシアティブ」を推進するアラブ連盟の特使としてイスラエルを訪問する予定であると聞いている。このようなエジプトならではの役割に大きな期待を寄せている。
 我が国も、国際社会の責任ある一員として、中東和平プロセスの進展に出来る限りの役割を果たしていきたいと考えている。我が国は、歴史的に中東地域に負の遺産を持っていない。アラブ・イスラエル双方から信頼を得ていることから、我が国には、政治対話の促進に果たしうる独自の役割があると認識している。
 特に中東和平問題の解決のためには、パレスチナが、経済的に自立できるようにすることが不可欠である。経済面では、我が国は、これまで約9億ドルの対パレスチナ支援に加えて、ヨルダン渓谷における農業団地の設置と域内の物流促進によりパレスチナの経済開発と関係者の信頼醸成を図っていくという、「平和と繁栄の回廊」構想を積極的に推進していきたいと考えている。この構想も含めて、今回、中東和平問題についても、ムバラク大統領との間で時間をかけて議論をした。両国は中東和平についても互いに協力し、情報交換を行いつつ、連携してこの問題にともに取り組んでいこうということで一致した。