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日本発祥の「置き薬」でアフリカ奥地の医療改善を目指す(2017年夏号)

町井恵理

AfriMedico代表理事、薬剤師。製薬会社を退社後、2008年から2010年の2年間、青年海外協力隊としてアフリカのニジェール共和国で感染症対策のボランティア活動を行う。グロービス経営大学院へ進学し、「置き薬」のビジネスモデルを構築する。2014年、NPO「AfriMedico」を立ち上げる。2017年のForbes Japan「世界で戦う日本の女性55人」に選出された。

 家庭や職場に薬箱を設置し、使用した分の薬の料金を回収する仕組み「置き薬」は、富山県で生まれ、320年以上の歴史をもつ日本の伝統的な薬の販売方式だ。この置き薬の仕組みをアフリカに導入し、十分な医療体制が整っていないタンザニアの奥地の村へ薬を届けているのが、AfriMedico(アフリメディコ)だ。同社は日本人で薬剤師の町井恵理さんが設立したNPO法人である。

AfriMedicoの置き薬は約10種類。鎮痛剤や胃腸薬のほか、マラリア対策として虫よけスプレーやマラリア検査キットなどを備えている。

村に設置した置き薬。薬の料金回収には、携帯電話を使った送金システム「M-PESA」を利用している。将来的には、日本の医薬品も置き薬にできるよう検討している。

 町井さんは、学生時代に海外でボランティア活動をする中で、途上国の医療問題に関心を持った。その後、製薬会社に就職したが、本格的にアフリカで医療支援を行うため退職し、青年海外協力隊としてニジェールに赴く。ニジェールの診療所で、患者に必要な薬が届いていない状況を目の当たりにした。「アフリカでは交通費や輸送費が高いため、奥地の人々は病院へ行くこと自体が困難な上、住んでいる村に薬が供給されていません。その結果、初期の段階で治療を受けられず、ひどくなってからようやく対処する状態でした。そういう状況の中で、薬を必要な人に届けるにはどうしたらいいかを、ずっと考えていました」

 ニジェールの人々に医療の知識は伝えられても、現地の経済的な理由などもあり医療の改善にはつなげられなかった。自身の力不足を感じた町井さんは、帰国後にアフリカの人々が自走できる持続的可能な仕組みを学ぶため、経営大学院へ進む。そこで、地域医療を改善できる「置き薬」のビジネスモデルを思いつく。町井さんによると、かつて日本で置き薬が普及した背景には、インフラが十分に整備されていなかったこと、国民のための健康保険がなかったこと、そして大家族が一緒に暮らしていたこと、という3つの要因があったという。ニジェールやタンザニアといった国々を調査してみると、同じ条件が当てはまる地域が多く、大きなニーズがあることがわかり、置き薬を導入する候補地と考えるようになった。町井さんは、高額な輸送費については、大量の薬をまとめて輸送して各地に届けることで、コストを抑えることができると考えた。さらに、置き薬の需要量が多い都市部で得た収益によって、奥地の村にも都市部と同様の金額で薬を安定的に提供することができると考えた。2014年、アフリカの医療改善に貢献したいという20人ほどのメンバーとともにAfriMedicoを設立。薬剤師のネットワークがあるタンザニアで現地の薬剤師にアドバイスをもらい、活動をスタートした。

2016年9月にケニアのナイロビで開催された「TICAD VI(第6回アフリカ開発会議)」のジャパンフェアでの出展風景。AfriMedicoはさまざまなイベントに出展し、活動PRや寄付金集めを行っている。

タンザニアの村では村長の意志がとても大きな意味を持つ。置き薬の導入時には、最初に村長の元へ赴き、話し合いを重ねた。

 「AfriMedicoには、タンザニアの薬剤師や看護師などで構成された現地チームが10人ほどいて、現地で手に入る薬剤の選定や置き薬を置いた家庭への訪問などを行っています。一方、私たち日本チームは日本の製薬会社と協力し、アフリカでの聞き取り調査や、イベントなどでの周知活動を行っています」

 現在はタンザニアの2つの州の村に計50軒ほど置き薬を設置し、「置き薬のおかげで、いつでも安全な薬を使って手当てができる」と、現地の人々にも好評だ。ようやく軌道に乗りつつあるが、さらに活動を拡大させるためには、人材と資金の確保が課題だ。「体制を強化するためには、まずはもっと多くの人にこの活動に協力してもらい、賛同者を増やしていきたい」と話す。

 「今後は勉強会やイベントなどを通じて、マラリア対策や衛生管理といった啓発活動を行い、最終的には現地の人々でセルフメディケーションができるようにする、というゴールを目指したい」

 AfriMedicoの活動で、置き薬はアフリカと日本をつなぐ文化現象となった。町井さんたちの挑戦は、始まったばかりだ。

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