| 1. | 平成15年度の経済財政運営と我が国経済 |
| (平成15年度の経済財政運営) |
| 平成15年度には、それまでの構造改革の進展を点検・評価した上で、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月27日閣議決定)を策定した。この基本方針も踏まえつつ、平成16年度には不良債権問題を終結させることを目指し、「金融再生プログラム」(平成14年10月30日)を着実に実施した。これにより、主要行の不良債権比率は低下してきている。 |
| このほか、4月には、構造改革特別区域法を施行し、これまで236件の認定を行った。6月には、「530万人雇用創出プログラム」及び「若者自立・挑戦プラン」(いずれも平成15年6月10日)をとりまとめ、これらに基づく施策を推進した。また、「対日投資促進プログラム」(同年3月27日)に基づく施策を推進した。 |
| 5月には、金融経済情勢に応じ、「証券市場の構造改革と活性化に関する対応について」(同年5月14日)をとりまとめた。同月に業務を開始した産業再生機構により、これまで9件の支援決定が行われた。また、金融危機を未然に防ぐため、6月には、りそな銀行に対する資本増強を決定し(同年6月10日)、11月には、足利銀行の特別危機管理の開始を決定した(同年11月29日)。 |
| (平成15年度の我が国経済) |
| 平成15年度については、年度当初には踊り場的な状況が見られた後、米国を始め世界経済が回復する中で、輸出や生産が再び緩やかに増加していくとともに、企業収益の改善が続き、設備投資も増加するなど、企業部門が回復していく。これにより、我が国経済は、民需中心に緩やかに回復していくものと見込まれる。デフレについては、物価の下落幅は縮小していくものの、デフレ傾向はなお継続する。 |
| こうした結果、平成15年度経済全体として見れば、国内総生産の実質成長率は、2.0%程度(名目成長率は0.1%程度)になると見込まれる。 |
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| 2. | 平成16年度の経済財政運営の基本的態度 |
| 改革は途半ばであり、緩やかなデフレは継続しているものの、企業収益の改善が続き、設備投資が増加するなど、経済には明るい兆しも見られる。不良債権処理の着実な進展、動き出した構造改革特区、最低資本金特例を利用した起業の活発化など、改革の芽は現れつつある。こうした改革の芽を「再生日本」という大きな木に育てていくためには、これまでの改革の成果を更に浸透させつつ、構造改革の取組を加速・拡大していくことが必要である。 |
| 政府は、「改革なくして成長なし」、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」という理念の下、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」に基づき、デフレ克服を目指しながら、規制、金融、税制及び歳出の各分野にわたる構造改革を一体的かつ整合的に推進し、創造的な企業活動の促進や地方経済の活性化等を通じた民間需要主導の持続的な経済成長を目指す。また、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びできる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向け、引き続き、強力かつ総合的な取組を実施する。なお、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う。 |
| (1) | 構造改革の加速・拡大 |
| 規制分野においては、構造改革特区を突破口としながら、国民生活に直結した分野やビジネスニーズの高い分野等での改革を徹底し、消費者の選択肢や雇用の拡大を図る。 |
| 総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第3次答申」(平成15年12月22日)に示された具体的施策を最大限に尊重し、所要の施策に速やかに取り組むとともに、平成16年度を初年度とする新たな規制改革推進のための3か年計画を平成15年度末までに策定する。総合規制改革会議は平成15年度末をもって終了となるが、平成16年4月以降も、民間人を主体とする新たな審議機関を設置する。 |
| 構造改革特区については、認定案件の更なる拡大に努めるほか、構造改革特区において実施されている特例措置について、「評価委員会」において特段の問題が生じていないと判断されたものについては、速やかに全国規模の規制改革につなげる。 |
| 金融分野においては、平成16年度における不良債権問題の終結を目指し、「金融再生プログラム」に基づく諸施策を着実に実施することにより、金融仲介機能の回復を図り、資源の新たな成長分野への円滑な移行を可能にする。また、今後とも、金融システム不安を起こさせない。 |
| 金融機能強化のための新たな公的資金制度を設け、経済の活性化や金融システムの安定・強化に資する。 |
| 金融機関の自己資本強化のための施策について、更に引き続き検討を行う。 |
| また、民間金融機関に対し、リスクを見極めそれに見合った金利を設定することを含め、収益力のあるビジネスモデルの構築を促す。中小・地域金融機関については、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(平成15年3月28日)に沿って、健全性の確保・収益性向上に向けた取組を促しながら、中小企業の再生と地域経済の活性化を図る。 |
| さらに、不良債権問題を企業・産業の過剰債務問題と一体的に解決する観点から、機能強化を行った産業再生機構、産業活力再生特別措置法等を積極的に活用し、企業の事業再構築、産業再編等による産業面の構造改革を促進する。 |
| 税制分野においては、持続的な経済社会の活性化を目指し、将来にわたる国民の安心を確保するための「あるべき税制」の構築に向けた検討を引き続き進める。 |
| こうした観点から広範な税目にわたり包括的かつ抜本的な改革を行った平成15年度税制改革は、着実に経済活性化に向けた効果を発現しつつあり、平成16年度においても、1.5兆円の先行減税が継続する。平成16年度税制改正においては、平成15年度税制改革の効果の浸透を的確に見極めるとともに、財政規律の維持に適切に配慮しつつ、引き続き真に有効な施策を講ずる。 |
| 具体的には、住宅ローン減税の延長等の住宅税制の見直し、不動産取引の活性化に資する土地・建物の譲渡益課税の見直し、固定資産税の条例減額制度の創設、中小企業・ベンチャー支援税制の拡充、「貯蓄から投資」への改革に資する金融・証券税制の軽減・簡素化、金融・産業の構造改革に資する欠損金の繰越期間の延長、連結付加税の廃止等を行う。国際的な投資交流を通じた経済活性化等を実現するため、日米租税条約の全面改正及びこれを契機とした関連諸制度の見直しを行う。また、年金制度改革に資する観点も踏まえつつ、世代間及び世代内の公平を確保するため、年金税制の見直しを行う。併せて、国と地方のいわゆる三位一体の改革の一環として、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施するまでの間の暫定措置として、所得譲与税(仮称)を創設し、所得税の税収の一部を地方へ譲与する。 |
| 歳出分野においては、民間需要創出に力点を置いた大胆な重点化を行うとともに、社会保障制度改革、三位一体の改革等と併せ、持続可能な財政構造を構築することを通じ、国民の将来不安を払拭し消費や投資を喚起する。 |
| 「平成16年度予算編成の基本方針」(平成15年12月5日閣議決定)等を踏まえ、歳出改革を一層推進する。予算手法の改革に取り組み、定量的な政策の達成目標を立て、事後に厳格な評価を行うとともに、政策目標を効率的に達成するため、事業の性格に応じ、複数年度にわたる事業の予算執行の弾力化等を活用する「モデル事業」を試行的に導入するとともに、「政策群」の手法を活用する。 |
| 平成16年度予算は、一般会計歳出及び一般歳出について、実質的に平成15年度の水準以下に抑制する。特別会計については、各特別会計の性格、予算執行の状況等を踏まえ、事務・事業の見直しを行い、歳出の効率化・合理化を図る。予算の配分に当たっては、「政策群」の手法を活用するとともに、活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野(「人間力の向上・発揮−教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」及び「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」)に重点的かつ効率的な配分を行う。また、歳出の見直しに当たっては、政策評価の結果を活用する。 |
| 三位一体の改革については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を踏まえつつ、国庫補助負担金について1兆円の廃止・縮減等の改革を行い、前記のとおり、税源移譲の具体化を図ると同時に、地方交付税改革について、地方財政計画の規模を抑制し、交付税総額の抑制を図る。 |
| 歳入面では、財政赤字の拡大や高水準の債務残高にかんがみ、国債発行額を極力抑制する。国債発行による資金調達に当たっては、中長期的な資金調達コストの最小化や国債市場の安定化等の観点から、公的債務の各種リスクを適切かつ専門的に管理するなど、適切な債務管理政策を実施する。 |
| 地域について見ると、景気改善の状況には地域差が見られる。地域が持つ潜在力を発揮できるよう、構造改革の成果の更なる浸透を図りつつ、地域自らの意欲と行動に立脚した地域経済の活性化と地域雇用の創造を推進する。地域経済の活力を引き出すため、構造改革特区を始めとする規制改革を進めるほか、地域の創意工夫と特性を活かし地域産業の活性化を図るとともに、雇用政策、中小企業政策等を積極的に展開する。行政サービスのアウトソーシングについては、これを積極的に推進する。地域再生本部においては、構造改革特区推進本部等と連携しつつ、「地域再生推進のための基本指針」(平成15年12月19日)に従い、平成16年2月下旬までに「地域再生推進のためのプログラム」(仮称)を決定し、これに基づき、必要な制度改正等を行うとともに、それぞれの地域の再生のための取組に対し、ワンストップでの国の支援を推進する。具体的には、雇用政策、中小企業政策等の関係政策との連携の推進等を図りつつ、構造改革特区の措置のほか、権限移譲やアウトソーシング、施策の連携・集中といった支援策を講じ、技術や人材、観光資源、自然環境等を活用した地域の基幹的な産業の再生・事業転換、新規産業の創出を始めとした地域自らが策定する地域再生計画の実現に向けて全面的に支援する。 |
| 新産業創造戦略の策定、e-Japan戦略Uや知的財産戦略の推進等を通じて、創業・新事業の創出、中小企業の挑戦支援、成長分野の発展・促進、特色ある地域産業集積の形成等を推進する。厳しい雇用情勢の中で、「530万人雇用創出プログラム」等を着実に推進するとともに、「若者自立・挑戦プラン」に基づく施策を民間を積極的に活用しつつ実施する。また、多様な資金の流れの整備や担保・保証に過度に依存しない資金調達の実現など、産業金融の機能強化を図り、やる気と能力のある中小企業等に対する資金供給を円滑化するとともに、中小企業再生支援協議会を一層活用すること等により、中小企業の再生を支援する。これらにより、雇用・中小企業のセーフティ・ネットには万全を期す。 |
| 国民の「安心」と「安全」を確保するため、持続可能な社会保障制度の構築を目指し、年金・医療・介護・生活保護等の社会保障サービスを一体的に捉えた制度改革に引き続き取り組むなど、公平で安心な高齢化社会・少子化対策を推進する。また、「世界一安全な国、日本」の復活を実現するため、住民の安全と治安の確保を図る。 |
| 時代の要請に即応して行政の役割を見直し、行政組織等の減量・効率化や特殊法人等改革など、行政の構造改革を引き続き推進する。 |
| 以上に加え、経済活性化、国民の「安心」の確保及び将来世代に責任が持てる財政の確立を目指す、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の「7つの改革」に係る諸施策を着実に推進するとともに、そのフォローアップを行う。 |
| デフレ克服のためには、構造改革の加速・拡大の政策努力を進める中で、政府の行うより強固な金融システムの構築に向けた取組と、日本銀行による金融政策の波及メカニズムを強化するための取組など金融面での対応が重要であり、こうした対応により、資金供給が増大していくことが期待される。日本銀行においては、できる限り早期のデフレ克服に向け、更に実効性ある金融政策運営を行うよう期待する。 |
| (2) | 世界経済の持続的発展への貢献
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| 経済のグローバリゼイションが進展する中にあって、国内の構造改革と一体的に対外経済政策を展開する。 |
| 我が国経済の活性化を図るため、世界貿易機関(WTO)新ラウンドにおける交渉に引き続き積極的に取り組むとともに、メキシコ、韓国、ASEAN等との自由貿易協定(FTA)を含む経済連携を積極的に推進する。アジア太平洋経済協力(APEC)、ASEAN+3(日中韓)等の地域における取組を進めていく。また、国際金融システムの強化、発展途上国に対する透明性・効率性の高い戦略的な援助等に努めることにより、世界経済の持続的発展に貢献する。 |
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| 3. | 平成16年度の経済見通し |
| 平成16年度においては、これまでの改革の成果を更に浸透させつつ、構造改革の取組を加速・拡大していくことが必要であり、デフレ克服を目指しながら、各分野にわたる構造改革を一体的かつ整合的に推進し、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指す。 |
| 平成16年度は、世界経済の回復が続く中で、生産や設備投資の緩やかな増加が続き、こうした企業部門の動きにより雇用・所得環境も厳しいながらも持ち直しに向かい、家計部門にも徐々に明るさが及んでいくことが期待される。こうしたことから、我が国経済は、引き続き民需中心の緩やかな回復過程を辿るものと見込まれる。デフレ傾向は継続するおそれがあるものの、需要の回復等に加え、政府・日本銀行一体となった取組を進めることにより、デフレ圧力は徐々に低下していくと見込まれる。 |
| その結果、我が国経済は、国内総生産の実質成長率が1.8%程度(名目成長率は0.5%程度)となるなど、別添の主要経済指標のとおりと見通される。 |
| (1) | 実質国内総支出 |
| 1) | 個人消費 |
| 雇用・所得環境が厳しいながらも持ち直しに向かうことから、個人消費は緩やかに持ち直していく(対前年度比1.1%程度の増)。 |
| 2) | 民間住宅投資 |
| 住宅投資は、雇用・所得環境が厳しいながらも持ち直しに向かうことから、下げ幅が縮小する(対前年度比0.1%程度の減)。 |
| 3) | 設備投資 |
| 設備投資は、企業収益の改善が続く中で、引き続き増加する(対前年度比7.2%程度の増)。 |
| 4) | 政府支出 |
| 政府支出は、「改革断行予算」の継続の下で公的固定資本形成が減少することなどから、介護や医療の保険給付等の政府消費の増加はあるものの、減少する(対前年度比1.2%程度の減)。 |
| 5) | 外需 |
| 外需は、世界経済の回復が続く中で、引き続き増加する(実質経済成長率に対する外需の寄与度0.2%程度)。 |
| (2) | 労働・雇用 |
| 雇用・所得環境は、全体的には厳しい状況が続くものの、企業部門の回復に伴い持ち直しに向かうことから、完全失業率は前年度に比べ低下する(5.1%程度)。 |
| (3) | 鉱工業生産 |
| 鉱工業生産は、輸出の増加や国内需要の持ち直しもあり、引き続き緩やかに増加していく(対前年度比4.1%程度の増)。 |
| (4) | 物価 |
| 物価は下落が続く。国内企業物価は、需給の状況の改善等により下落幅が縮小する(対前年度比0.4%程度の下落)。消費者物価の下落幅は前年度並となる(対前年度比0.2%程度の下落)。 |
| (5) | 国際収支 |
| 世界経済の回復と国内需要の持ち直しにより輸出入ともに増加し、経常収支の対GDP比は概ね横ばいとなる(3.2%程度)。 |
| (注) | 我が国経済は民間活動がその主体をなすものであること、また、特に国際環境の変化には予見し難い要素が多いことにかんがみ、主要経済指標の諸計数はある程度幅を持って考えられるべきものである。 |