第65回国連総会内外記者会見


平成22年9月24日
ニューヨーク
  政府インターネットテレビ

【菅総理冒頭発言】

 先ほど、国連総会で一般討論演説を終えました。今回の国連への参加は、民主党代表選が終わって1週間あまりという中でありましたが、その間に内閣改造を行い、また、党の体制も一新して、大変しっかりした体制ができた中でのこちらへの訪問でした。

 このNY訪問では、我が国の基本的な姿勢、特に現在一番国連で課題となっておりますMDGsについて,我が国の姿勢を国連において明確にして、国際社会にそのことを訴えたいということが第一の目的でした。

 そしてもう一つの目的は、オバマ大統領との会談です。直接お会いするのは2度目でしたけれど、この会談を行い、1度目の会談で信頼関係を一定程度築くことができたと思っていますが、今回の会談でより深まり、より幅広い意見交換をしていきたいということでやって参りました。

 今回、私は、先ほど申し上げたMDGs首脳会議、安保理首脳会議、さらに小島嶼国開発ハイレベル会議に出席するとともに、先ほどの一般討論演説を行い、その中で私が国内でも申し上げている「最小不幸社会」の理念とこのMDGsを含めた国際的に我が国が取り組もうとしている理念とは共通のものであるという観点から、いろいろな課題について具体的な取り組みを申し上げました。

 特に、本年は、2015年までに世界から極度の貧困や飢餓の撲滅などを目指すミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた節目の年に当たります。8つの開発目標のうち、保健と教育の遅れが深刻な状況にあります。私は、かつて厚生大臣を務めた経験からも、また、先ほど申し上げた「最小不幸社会」を作るという基本的な考え方からも、国際社会でのこういう状態を見過ごすわけにはいかない、そう考えましてこのミレニアム開発目標に関する首脳会合で、両分野における支援モデルを提示すると共に、母子保健や三大感染症対策など保健分野において、2011年から2015年の5年間で50億ドル、そして教育分野でも、質の高い教育環境の提供などのために、同じく5年間で35億ドルの支援を行うことを「菅コミットメント」という形で表明しました。これに対し、多くの国や関係者から、日本の支援に対して、歓迎する、あるいは感謝するという声がよせられて、日本への期待の高さを感じたところであります。保健や教育の充実は、人類の未来に向けた真に価値ある投資だと考えます。人間の安全保障を重視するわが国としては、こうした支援を積極的に進めて参りたいと思います。

 また、島嶼国への支援については、ハイレベル会合において自然災害や気候変動の影響を受けやすいこれらの国々を力強く支援していくことを表明しました。

 さらに、生物多様性の保全のための取り組みについて、私は一般討論演説の中で、生物多様性の急速な損失をくい止めるために、新たな行動の開始に合意する必要があることを訴えました。わが国は、来月名古屋で「自然との共生」をテーマに生物多様性条約締約国会議COP10を主催し、ここにもいらっしゃる松本環境大臣を中心として取り組んでまいります。新たな行動のためのリーダーシップを発揮していかなければならないと考えます。

 また、安全保障、さらには国連改革についても、一般討論演説の中で、特に大きな考え方を申し上げました。まずは「核兵器のない世界」の実現に向けた努力の先頭に立つ決意を国連総会で表明しました。一昨日に、前原外務大臣がオーストラリアのラッド外相と共催した非核保有国の外相会合は、このような決意の表れであると思っています。

 安保理首脳会合では、真の平和の達成という観点から、「最小不幸社会」の実現の考え方をこの場でも説明し、紛争地域における平和維持活動の初期の段階から並行して平和構築に取り組むことが重要であること、我が国がカンボジアなどの支援を通じて得た経験に基づいて申し上げたところであります。

 安保理が世界の平和と安全の維持のために役割を果たすために、安保理自身が21世紀の国際社会の現状を反映し、十分な正統性を持つ場でなくてはなりません。私は、核兵器を持たず、国際社会の平和に貢献している日本こそが常任理事国として相応しい国ということを訴えるとともに、安保理改革の早期実現に向け、他の国々と協力して取り組んでいくことを主張しました。

 今回、いくつかの国との二国間会談を行いましたが、特に、米国のオバマ大統領とは、6月以来の再会となりました。オバマ大統領より、日米関係は二国間のみならず、アジア太平洋の安定、世界の平和と繁栄にとって重要であり、21世紀にふさわしい日米同盟に向けて深化させていきたいという意見が述べられました。私からも、日米同盟はアジア太平洋のみならず、世界の平和と安定のためのインフラストラクチャーであるということを申し上げ、私の内閣では,日米同盟が外交の基軸であるということを改めて申し上げました。日米同盟について、私の方から3本の柱、一つは安全保障、一つは経済、一つは文化/人材交流、この3本の柱で深化・発展させていきたいということを申し上げ、オバマ大統領からもそれに対して自分も同じ考えであるという趣旨の話もいただきました。地域やグローバルな課題について緊密な連携の下で日米が一緒に役割を果たしていくことで一致しました。より信頼関係が深まったという感じを持つことができました。

 また、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長及びダイス第65回国連総会議長、並びに、モンゴルおよびタジキスタンの首脳ともお会いし、有意義な意見交換を行うことができました。

 帰国後、10月1日から臨時国会が予定されております。私は、野党の皆さんの理解を得ながら、新成長戦略を前倒す方向で景気対策、経済対策に本格的に取り組んでいきたいと考えております。そのことが私の政権に対する国民皆様の負託に応えると同時に、世界の繁栄にも貢献することにもなると。秋には、COP10、APEC、さらにはオバマ大統領の来日による再度の日米首脳会談等、外交日程が決まっており、今回のこのNYにおける国連を中心とした活動のよい流れをこの秋の一連の外交の活動につなげて、引き続き努力していきたいと考えております。

 冒頭の私からの発言は以上です。


【質疑応答】

(東京中日新聞・高山記者)
 沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件に関して、公務執行妨害の疑いで逮捕されていた中国人船長が、那覇地検により釈放されました。この対応について国内では様々な声が出ていますが、政府としての受け止め、および本件が日中関係にどのように影響を与えるとお考えかお聞かせください。

(菅総理)
 本件の対応については、検察当局が事件の性質等を総合的に考慮した上で,国内法に基づいて,粛々と判断を行った結果であると承知しています。いずれにせよ,日本と中国は国際社会に責任を持つ重要な隣国であり、「戦略的互恵関係」を深めるために,冷静に日中双方が努力していくことが必要だと考えています。

(トムソン・ロイター・エッカート記者)
 10日前の民主党代表選挙での再選おめでとうございます。先週、日本は円高を抑制するために金融市場に介入し、円安を促しました。さらには、昨日、再度市場介入があったとの話も聞いています。輸出を増やし、自国経済を助けるために自国の通貨を弱めたいと望む国々の間で通貨価値の切り下げ競争を招くのではないかとの懸念が示されていますが、こうした懸念に対しどう答えるのでしょうか。また、昨晩再び介入はあったのでしょうか。

(菅総理)
 為替相場についてのご質問ですが、これまで申し上げているとおり、G8やG20においても、為替の過度の変動は経済・金融の安定に悪影響を及ぼすということについては、共通認識であると思っています。先般の我が国の為替介入は、こうした考え方を踏まえ、為替相場の過度の変動を抑制するという観点から実施したものであります。再び介入があったとは聞いていません。

(時事通信・松井記者)
 普天間飛行場移設問題についておたずねします。先程総理からもご発言があったとおり、11月にオバマ米大統領が再来日する予定ですが、それまでに総理としては普天間移設問題をどのように進展させるおつもりなのか、とりわけ沖縄県民の理解を得るためにどのような方策をとるのか、という点についてお伺いします。

(菅総理)
 普天間飛行場の移設問題については,今年の5月の日米合意を踏まえて、しっかりと取り組むという姿勢をこれまでも明らかにしています。同時に沖縄の負担軽減に対しても全力を挙げて取り組んでいくということも申し上げています。
 このような行動をとることによって、沖縄の方々の理解を得られるよう、誠心誠意説明していきたいと思っています。
 11月にAPECの首脳会議が開催され、その際オバマ大統領も来日することが予定されています。すでに申し上げているように、普天間の問題については、今年5月の合意に基づき様々な作業が進んでいますが、沖縄の皆様の理解がなくてはそれを具体的に進めるわけにはいきませんので、いつまでに、ということではなく、理解をしっかりと得られるように誠心誠意努力したいと考えています。
 APEC首脳会議の機会における日米首脳会談においては、2度にわたる首脳会談を踏まえて、さらに日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化・発展させていきたいと思います。先ほど「三本の柱」と申し上げましたが、今回はその三本の柱すべてについて議論するだけの余裕がありませんでしたので、次回は安全保障に加え、経済の問題、さらには文化・人材交流についても具体的な提案を自分の方からも準備し、より関係を深めていきたい、日米同盟を深化していきたいと考えています。

(DPA通信・ニューエン記者)
 国連記者として国連を取材する中で日本に関心を持っています。できるだけ早期に安保理改革を行いたい、ということは15年前から始まったことですが、G4は国連常任理事国入りを求めるという要求を復活させています。しかし、イタリアや中国、多くの途上国がG4の常任理事国入りに反対しています。今後の予定はどうなるのでしょうか。また前回は失敗しましたが、今後そのようなことを防止する上でどうするおつもりなのでしょうか。また、オバマ大統領と数日前に会談した際、常任理事国入りに関して米国のサポートは得られたのでしょうか。

(菅総理)
 国連が誕生してから65年が経ち、その間に世界の情勢は大きく変化しています。そうした中で現在の安保理が現在の国際的な情勢を十分に反映していない、という問題意識は、国連加盟国の間で基本的な考え方は共有されていると思っています。そういった意味で、それではどういう形が取り得るのか、という話に進めることができると考えており、その中でG4といわれる国々の皆さんと協力をして、安保理改革の必要性を粘り強く訴えながら、その実現のために努力をしていきたいと考えています。例えば、同じ常任理事国でも、拒否権を持つ、持たない、といったこともありますので、そうしたことをいろいろと工夫すれば、合意にこぎ着けるのではないかと思っています。昨日のオバマ大統領との会談ではこの点については議論の場に乗せるだけの時間的余裕がありませんでした。