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硫黄島戦没者遺骨引渡式あいさつ


 硫黄島戦没者遺骨引渡式を挙行するに当たり、本日御遺骨をお迎えする戦没者を始め、祖国の安寧と家族の安全を祈りつつ、硫黄島の激戦で尊い命を失われた皆様の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます。

 今年度は八百二十二柱の御遺骨をお迎えいたします。この度の収容作業に当たっては、米国側の資料を精査し、集団埋葬地と考えられる地域に対象を広げました。また、御遺族や民間団体の御協力をいただき、官民一体となった取組を進めました。私が収容作業に参加をした十二月半ばでも汗ばむ程の気候の下、不便な地域における作業は大変な御苦労であったことと拝察いたします。かくも多くの御遺骨の帰還が実現したのは、関係者の方々の献身的な御尽力の賜物であります。ここに厚く御礼を申し上げます。

 本日御帰還をいただいた戦没者の皆様、永い年月お待たせし、誠に申し訳ございません。政府を代表し深くお詫びを申し上げます。皆様が命を賭して守ろうとされた祖国を受け継ぎ、私たち日本国民は、戦争の惨禍を繰り返さないとの固い決意の下、平和と繁栄の実現に邁進してまいりました。御家族の待つその祖国に帰られた今、どうか安らかにお眠りください。

 硫黄島では、今もなお多くの戦没者が御帰還を待っておられます。こうした方々の御遺骨を一刻も早くお迎えするため、引き続き国の責務として収容作業を徹底してまいります。そして、恒久平和の確立に向け、硫黄島で生じた悲痛な歴史を風化させることなく、若い世代に伝えていくことをお誓い申し上げます。

 御霊の安らかならんことをお祈りし、御遺族の今後の御平安を切に祈念をいたしますとともに、御遺骨の帰還に御尽力をいただきました関係者の皆様に改めて御礼を申し上げ、挨拶といたします。


 平成二十三年二月十五日

内閣総理大臣 菅直人