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小泉総理の演説・記者会見等
イラクに対する武力行使後の事態への対応についての報告
平成15年3月20日
イラク問題についての政府の基本的な考え方を明らかにし、皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
数時間前、米国をはじめとする国々は、イラクが国際社会の平和と安全に与えている脅威を取り除くための最後の手段として、イラクに対する武力行使を開始しました。
イラクは、昨年11月に全会一致で採択された国連安保理決議1441によって、国際社会から、大量破壊兵器を廃棄するための最後の機会を与えられました。私は、イラクへの総理特使の派遣を含め、イラクが直ちに国連査察団に対して無条件かつ積極的に協力することによって平和への道を選ぶよう、繰り返し呼びかけてきました。国際社会も、一致して、イラクの全面的協力を強く求めてきました。平和への鍵はイラクだけが握っているのが明らかだからです。しかし、大変残念なことに、イラクは国際社会の真摯な努力に応えず、自ら平和への道を閉ざしてきました。
サダム・フセインは、これまで、隣国に対しても、また、驚くべきことに、イラク国民自身に対しても、違法で残酷な化学兵器を使用したことがあります。イラクは、今から13年前、突然クウェートを侵略し、併合を宣言しました。国際社会は、イラクの国際法を無視した蛮行を厳しく糾弾し、多数の国々の軍事力によってこれをただしました。停戦に当たって、イラクは、地域の平和と安定を脅かす大量破壊兵器を廃棄することを約束しました。この約束は完全に実行され、イラクが大量破壊兵器を全て廃棄したことが確認されなければなりません。それが出来て初めて、この地域の平和と安全の確保が可能となります。しかし、イラクはこれに応じようとしませんでした。
大量破壊兵器は、大量かつ無差別に市民を殺害し、傷つける恐ろしい兵器です。私達は、このような非人道的な兵器が自国民を圧政の下に置く独裁者の手中にあることを、真剣に考えなければなりません。特に、一昨年9月11日の同時多発テロ以来、国際社会は、テロリストが核物質や、生物兵器、化学兵器を入手した場合の恐怖を強く認識するようになりました。今日の国際社会において、大量破壊兵器の保有の有無は、うやむやに放置しておけるような問題ではないのです。我が国を取り巻くアジア地域も、決して、この問題と無縁ではありません。
イラクは、国際社会に対して、かつて保有し使用した大量破壊兵器を廃棄したのかどうかを十分に説明しませんでした。イラクは、VXガスやマスタード・ガスのような化学兵器、炭疽菌やボツリヌス菌のような生物兵器など、何億人もの人々を殺傷出来る量を保有していたと言われています。しかし、イラクは、このような恐ろしい兵器の行方について必要な説明を行わず、国際社会に対して誠意ある回答を示さなかったのです。
国際社会は、17本にものぼる国連安保理決議を採択し、一致してイラクに対する説得に当たってきました。しかし、イラクは、12年間にもわたって国連安保理決議への違反を続けて来ました。これは、イラクによる国連に対する挑戦であり、国連の権威の侮辱です。このような状況の下で、私は、安保理が一致団結し、国際社会の平和と安全に対して責任を果たすべきことを、ブッシュ米国大統領やシラク・フランス大統領を含む関係国首脳に対して、直接訴えてきました。最終的に安保理での意見の一致が見られず、安保理が一致団結出来なかったことは残念です。しかしながら、何度も何度も平和的解決のための機会を与えられたにもかかわらず、イラクがその機会を一切活かそうとせず、安保理決議違反を繰り返してきたことは、決して見逃されてはなりません。問題の解決をいつまでも先延ばしにすることは許されないのです。イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せない以上、武力行使にいたったことはやむを得ないことだと考えます。
今、米国は、このような大量破壊兵器を廃棄する国際的な動きの先頭に立っています。米国は、我が国のかけがえのない同盟国であり、我が国の平和と安全を守るための貴重な抑止力を提供しています。我が国を取り巻くアジア地域の平和と安全の確保にとっても、米国の役割は不可欠です。そのような米国が、国際社会の大義に従って大きな犠牲を払おうとしている時、我が国が可能な限りの支援を行うことは、我が国の責務であり、当然のことであると考えます。
いかなる場合においても、武力行使を支持することは容易な決断ではありません。戦闘なしに大量破壊兵器が廃棄されることが最善の策であることは、言うまでもありません。しかし、それが不可能な状況の下では、我が国としては、国際社会の責任ある一員として、この度の米国をはじめとする国々による行動を支持することが我が国の国家利益に適うとの結論に達しました。
今般の事態に際し、政府は、直ちに安全保障会議を開催し、緊急性を有する措置に関する対処方針を速やかに決定するとともに、その後の臨時閣議において、事態の推移を見守りつつ検討すべき措置に関する対処方針も併せて決定いたしました。同時に、内閣に「イラク問題対策本部」を設置し、この対処方針に基づき、政府が一体となって総合的かつ効果的な緊急対策を強力に推進することといたしました。
政府は、イラクとその周辺における邦人の安全確保のために万全の措置を講じてまいります。また、国内重要施設、在日米軍施設、各国公館の警戒警備等、国内における警戒態勢の強化・徹底を図ります。更に、我が国関係船舶の航行の安全を確保するため所要の措置を講じてまいります。
政府は、原油の安定供給をはじめ、世界及び我が国の経済システムに混乱が生じないよう、関係国と協調し、状況の変化に対応して適切な措置を講じてまいります。このため、原油等物資の市場動向や供給状態、金融・証券市場の動向を監視します。また、関係諸国等と連携しつつ、必要に応じて、原油の安定供給のための適切な措置を実施します。更に、外国為替市場の安定化、金融システムの安定の確保、国内の流動性の確保に努めます。
我が国は、この度の武力行使によって被災民が発生するのに応じて、国際機関やNGOを通じた支援や、周辺国に対する国際平和協力法に基づく自衛隊機等による人道物資の輸送等の支援を含め、緊急人道支援を行います。
我が国は、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復が我が国にとっても重要であるとの認識に立って、この度の事態に対して積極的な対応を行ってまいります。
我が国は、今後の事態の推移を見守りつつ、次のような措置を検討してまいります。第一に、この度の武力行使によって経済的影響を受けるイラク周辺地域に対して、影響を緩和するための支援を行います。第二に、イラクにおける大量破壊兵器等の処理、海上における遺棄機雷の処理、復旧・復興支援や人道支援等のための所要の措置を講じてまいります。
また、これらの措置とは別に、我が国は、アフガニスタン等におけるテロとの闘いを継続する諸外国の軍隊等に対して、テロ対策特措法に基づく支援を継続・強化します。
私は、戦闘が一刻も早く、しかも、国際社会に対するイラクの脅威を取り除く形で、終結することを心から望んでいます。同時に、イラクが一日も早く再建され、人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラクの復旧・復興のため我が国が出来る限りの支援を行っていく考えであることを、ここで明らかにしておきたいと思います。
中東地域の平和と安定は、我が国自身の平和と繁栄に直結する重大な問題です。我が国は、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復に寄与することに加え、中東和平問題への真剣な取り組みを続けていきます。また、悠久の歴史と文明を有するイスラム世界との対話を継続・強化し、幅広い交流と相互理解を進めていきたいと考えます。
私は、以上のような政府の考え方について、国民の皆様のご理解とご協力を心からお願いいたします。