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小泉総理の演説・記者会見等
 

小泉総理大臣記者会見

[イラク問題に関する対応について]

平成15年3月20日

小泉総理の写真


【小泉総理冒頭発言】

 1時間ほど前、アメリカ、イギリス始め、同盟国がイラクヘの武力行使を開始したという報告を受けまして、この際私は日本政府の立場を明らかにして、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと思っております。
 そもそも今回のイラク問題の発端は、13年前のイラクがクウェートに侵攻した、この湾岸戦争に端を発していると思います。
 この湾岸戦争に際してイラクは、停戦協議を受け入れました。アメリカ始め当時、多国籍軍がクウェートを解放し、そして、イラクに対して停戦するための条件、いわゆる大量破壊兵器を廃棄すること、これを条件として停戦になったんです。その後12年間にわたってイラクはこの停戦決議を守ってこなかった。十分に協力してこなかったんです。そういうことから、再度昨年11月、国際社会は一致結束して、大量破壊兵器、あるいは化学兵器、生物兵器、即時無条件、無制限に査察に協力して誠意を示すべきだという最後の機会を与える決議を国連は採択いたしました。
 日本政府はこれまでもイラクに対しても、また、アメリカ、イギリス、フランス等に対しましても、平和的解決が最も望ましい、そういう努力を最後まで続けるべきだと訴えてまいりました。しかしながら、事ここに至って、残念ながらイラクはこの間、国連の決議を無視というか、軽視というか、愚弄してきました。十分な誠意ある対応をしてこなかったと思います。私はこの際、そういう思いから米国の武力行使開始を理解し、支持いたします。
 昨年の国連での1441決議を始め、一昨年の9月11日のニューヨークでのテロ事件等によりまして、私は大量破壊兵器に対する脅威、これが大きく日本国民のみならず、米国民のみならず、世界の多くの人々が大量破壊兵器に対する脅威を強く認識し出したと思います。言わば戦争に対する観念も変わってきたと思います。こういう大量破壊兵器に対する脅威をどのように取り除くかということが、今までも国際社会の大きな課題だったと思います。私はこれからもそうだと思います。
 ニューヨークやアメリカ国防省、ペンタゴンでのテロ事件は大量破壊兵器ではなかったんです。民間航空機を武器にするという、今まで予想し得ないテロが発生した。それによって、何ら関係ない、罪のない多くの数千人にわたる市民が犠牲になりました。アメリカ国民だけではありません。日本国民も含まれております。世界各国、多くの国民がなぜ自分たちがこのような非道な行為によって命を落としたり、多くの損害を受けなければならないのか、憤慨したと思います。
 もしも、今後、危険な大量破壊兵器が、危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危険な目に遭うか、それはアメリカ国民だけではありません。日本も人ごとではありません。危険な兵器を危険な独裁者に渡したら、我々は大きな危険に直面するということをすべての人々が今感じていると思います。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事であります。
 私はそういうことから、今回、最後まで平和的努力を続けなければならないと思いつつも、現在、残念ながらそれに至らなかった。武力の圧力をかけないとイラクは協力してこなかった。しかも、かけ続けても十分な協力をしなかった。
 今回ブッシュ大統領いわく、これはイラクの武装解除を求めるものであり、イラク国民に対する攻撃ではないと。イラク国民に自由を与える、将来豊かな生活を築き上げるような作戦だと言っております。私もそうだと思います。日本としても、この米国ブッシュ大統領の方針を支持してまいります。
 日本が今日まで戦後発展してきた基本方針の最も重要なことは、日米同盟関係と国際協調体制、これを堅持していくということだと思います。日本は、あの第二次世界大戦の敗戦を大きく反省して、二度と国際社会から孤立してはならない。そういうことから、国際協調体制を図りながら、日本の発展を図っていくと。同時に日本の安全を確保するためには、アメリカと同盟を結んで、日本一国だけでは日本の防衛は不十分であると。日本の安全確保はできないということから、アメリカと安保条約を締結して、日米同盟関係を堅持することによって日本の安全を確保してまいりました。今後も日本国民の安全と、そして日本の繁栄・発展を図る上で、国際協調体制を堅持していくことに変わりありません。
 今回、残念ながら武力を行使せざるを得ない状況に立ち至りましたが、この武力行使が速やかに終結して、できる限りの犠牲を少なくするような努力をしつつ、今後日本としてもこのイラク問題に対応していきたい。
 特に、今回アメリカやイギリスが武力行使を開始しました。日本は米国の立場を支持しておりますが、日本は一切武力行使いたしません。戦闘行為にも参加いたしません。しかしながら、戦争が速やかに終結されることを希望しながら、今後イラク国民のために何ができるか、イラクの復興のために何が必要か、そしてイラク周辺諸国、アラブ諸国との友好増進をどのように図っていくか、イスラム諸国との理解と協力をどのように深めていくか、そういう点については国際社会と協調しながら、日本は国際社会の一員として責任を果たしていかなければならないと思っております。
 日本に対してもいつ脅威が降りかかってくるかわかりません。私は、日本自身の対応で不十分な場合は、日米安保条約、日米同盟関係、この強い信頼のきずなを基盤としながら、日本国民の安全確保に十分な努力をしていかなければならないと思っております。
 アメリカは、日本への攻撃はアメリカへの攻撃とはっきり明言しています。日本への攻撃はアメリカへの攻撃とみなすということをはっきり言っているただ一つの国であります。いかなる日本への攻撃も、アメリカへの攻撃とみなすということ自体、日本を攻撃しようと思ういかなる国に対しても、大きな抑止力になっているということを日本国民は忘れてはならないと思っております。
 日米同盟関係の強固な信頼の下に、日本はこれまで日本国民の安全を図り経済の発展を図ってまいりました。これからも一時的に全世界のイラクの問題に対する協調体制が取れなかったとしても、将来私は必ず多くの国が世界の平和と安定と繁栄のために国際協調の必要性を痛感すると思います。日本はそのために日米同盟の重要性と国際協調の重要性、この両立を図っていくという方針に今後も変わりありません。
 どうか国民の皆さんにおかれましては、この日本政府の立場に対しまして、御理解と御協力を心からお願いしたいと思います。


【質疑応答】

【質問】 総理は先ほどの中で、日米同盟の重要性ということを強調されました。その中には北朝鮮の核開発問題、ミサイル問題に対応するということも念頭にはおありだったんでしょうか。

【小泉総理】 北朝鮮との関係につきましては、昨年9月17日、私は北朝鮮を訪問し、金正日総書記との間に日朝平壌宣言、この政治文書を発表し、今後は現在の不正常な関係を正常化していこうという意思を確認いたしました。この方針に現在も変わりありませんが、私は今、北朝鮮との交渉が停滞しているということは認めます。しかし、この日朝平壌宣言の精神を尊重していかなければならない。お互いがこの日朝平壌宣言を誠実に実行に移すことによって、日朝間の正常化がなされる。現在の北朝鮮と日本との敵対関係が友好関係になり得ると思っております。
 そういうことから私は北朝鮮側もこの日朝平壌宣言の発表は成果であるということを認めております。今後ともそういう気持ちで北朝鮮との交渉を進めて、将来日朝間に正常化、友好関係を持てるような形で今後も交渉を進展させていきたいと思っておりますが、現在、北朝鮮の脅威ということでございますが、確かに拉致とか不審船の問題で北朝鮮に対する脅威を感じている国民も多いと思います。また、最近の一連の核問題に対する挑発的な行動を見ますと、脅威を感ずる多くの国民がいるというのも無理からぬことでありますが、私はこういう問題に対しましても、日米同盟関係が有効に機能していると思っております。
 北朝鮮が暴発しないような努力をアメリカ・韓国と緊密な連携の下に取っていかなくてはならないと思っております。これは私は日本独自の問題でありますが、同時にアメリカ・韓国、地域全体の平和の問題に関わっておりますので、今後も北朝鮮の関係につきましては、日本・アメリカ・韓国、あるいはロシア・中国・EU、国際社会の働きかけも必要だと思いますので、そういう観点からできるだけ脅威を少なくしていく、脅威をなくしていくというような対応を取っていきたいと思います。

【質問】 復興支援等の対応でありますが、総理の先ほどの発言の中にありましたけれども、復興支援等で新たな新法を制定するお考えはおありでしょうか。

【小泉総理】 これは、今後どういう形で復興支援がなされていくか。また、国際社会、国連等がどのような対応を求めてくるか。いろいろ今の時点ではっきりしたことは申し上げられませんが、人道支援、難民支援、復興支援等、日本としては当然していくべきだと思っておりますし、イラクの状態がどのように変わっていくのかというのも、今の時点では想定しにくい面もあります。しかしながら、戦後の復旧、復興支援、あるいは地域の人道的支援について、法律が、新法が必要としない支援もあると思います。新たに法律をつくらないと支援ができない状況が来るかどうか、今の点ではっきり申し上げることはできませんが、それが必要ならまた、国会に諮らなければいかぬ。国民の皆さんに理解を得なければならないと思いますが、現在のところ日本は武力行使をしませんし、戦闘行為にも参加しませんが、イラクに対する復興支援、周辺地域に対する人道支援等につきましては、責任ある対応をしていきたいと思っております。

【質問】 外交の基本方針についてお尋ねしますが、総理は先ほど日米同盟と国際協調主義、両方これを堅持していくのだとおっしゃいましたが、今回のアメリカのイラク攻撃は、少なくとも国連を中心とした国際社会の理解と支持は得られていない面があると思いますが、この段階でアメリカの攻撃を明確に理解し、支持するということは、今後日本は国際協調、国際連合よりも日米同盟を機軸に外交を展開していくという基本戦略の転換ということなのかどうか。そこのところの説明をお願いします。

【小泉総理】 基本政策の転換ではありません。最初に発言しましたように、日米同盟と国際協調、これは両立できるんだと。日本の安全を確保する上において、日米同盟は不可欠であります。同時に、日本の発展を考える際にも国際協調は不可欠であります。
 現在、残念ながら国連安保理で最後の決議を巡って、一致結束した対応が取られませんでしたけれども、将来、国際協調体制、また今、意見の違った安保理理事国の中でも協力できる可能性はたくさんあると思います。また、協力できる分野はたくさんあると思います。イラクの復興についても、やはり国際協調体制を取る方がいいと思っております。でありますので日本の日米同盟重視と国際協調重視というのは変わることはない。これからも追求していく。それが日本の平和と発展にとって不可欠だと私は思っております。

【質問】 総理、イラクの悪質性、それから日米同盟の重要性について、国益の観点からの総理の判断は理解できるのですが、一方でこの攻撃を支持することによって失う日本の国益というものについて、思いをいたすことはありましたか。

【小泉総理】 これは、国民の世論が武力行使に反対だと、圧倒的多数の方々が武力行使に反対だという気持ちはわかります。私も戦争か平和かと言えば、平和がいいと言うに決まっております。戦争は嫌いです。できれば避けたい。戦争ほど残酷なものはないと思っております。しかし、それと同時にこのような国際社会の決議を無視し続けてきたイラクの状況を見ると、一昨年の9月11日のテロ事件、こういう危険な破壊兵器を危険な独裁者が持った場合に対する脅威に対して、我々がどう対処するのかということを考えますと、今回のアメリカの立場も理解できますし、支持するのが日本の国益にかなうと思ってこのような決断をしたわけであります。
 私は、時間が経つにつれて、日本政府の立場も多くの国民は理解していただけるのではないかと、そう思いながら、今後もいろんな機会を通じて現在の日本の政府の立場を御理解・御協力いただけるように、国民に働きかけていきたいと思っております。

【質問】 総理は国会の審議でも、新たな決議が望ましいということを表明してこられました。そしてその上、アメリカの態度を見ておりますと、大量破壊兵器の放棄と同時に、体制の転覆ということも最後の段階では打ち出しになりました。総理はいつ、どの時点で、このアメリカ支持の決定を、何を大きな判断の材料として固められたのか、それをお教え願いたいと思います。

【小泉総理】 これは決議が出されて、更にアメリカ、イギリス、スペインが修正案を出しましたね。これをイラクが受け入れるかどうか。更にフランス、アメリカと見解の相違があってなかなかまとまりませんでした。安保理の理事国の中間派と言われる国々が、何とかアメリカとフランス、お互い譲歩できるような案がないかといって模索した時期がございました。それでも依然としてこの見解の相違、譲らなかった。こういう段階に至って私も平和的解決は非常に難しい状況だなと。
 なおかつ、これはいたずらに査察を引き延ばしても、サダム・フセイン大統領が協力の意思がない限り武装解除はできないなと思いました。武装解除が目的であります。しかし、現在のこの場に至っては、サダム・フセイン大統領が最高指導者である限り、武装解除には応じないということになってきたと思います。
 でありますので、私はこの武装解除、イラク国民に自由を与えなければならないということと、サダム・フセイン大統領の退陣というのは、ほぼ同じ意味を持つものではないかと思っております。そういうことから、私はアメリカの立場を支持しております。