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「故鈴木善幸」内閣・自由民主党合同葬儀における追悼の辞


 本日ここに、正二位 大勲位菊花大綬章、元内閣総理大臣、元自由民主党総裁、故鈴木善幸先生の内閣・自由民主党合同葬儀が行われるに当たり、謹んで追悼の辞を捧げます。

 鈴木先生。まことに長い間、日本のため、世界のためにお尽くしいただき、本当にお疲れさまでございました。

 国民から「善幸さん」と親しみを込めて呼ばれた先生が亡くなられたのは先月19日、「海の日」でした。岩手県の網元の家にお生まれになり、若い頃には漁業組合運動に身を投じ、地元の主要産業である漁業の発展を政治の原点とされていた先生の「海」との深いご縁を感じます。

 先生は、「和の政治」を掲げ、昭和55年7月から2年4か月にわたり、内閣総理大臣の重責を担われました。民主主義の原点である話し合いを重視し、社会的公正の実現のために「等しからざるを憂える」という先生の政治理念は、意思の強さを秘めた穏やかで温かい先生のお人柄を映すものでありました。

 ご就任当時は、国内では、人口の高齢化が進むとともに、高度経済成長から安定成長に移行する時期にあたり、国際的にもソ連のアフガニスタンへの軍事介入、イラン・イラク紛争、ポーランド情勢など、世界各地に緊張の高まりが見られました。また、二度にわたる石油危機を経てエネルギー情勢は安定せず、世界的な経済発展の鈍化と通商摩擦の増大などが懸念されていました。こうした困難な状況の中で、先生は21世紀への足固めに身を挺して取り組まれました。

 当時我が国の財政は、石油危機後に生じた経済の混乱に対応すべく積極的な役割を果たしてきた結果、財政収支の不均衡が恒常化していました。そうした中、民間主導の息の長い成長をめざし、財政運営を思い切って見直すこととし、公債発行額を減額するとともに昭和57年度予算の概算要求ではゼロ・シーリングを導入するなど20数年ぶりの緊縮予算を編成して財政再建を強力に推し進められました。

 財政再建と表裏一体である行政の改革については、既に行政需要が少なくなった仕事を縮小・廃止し、また、政府が直接関与する必要がなくなった仕事を民間部門の手に委ねるとの観点から、簡素で効率的な行政の実現に取り組まれました。土光敏夫氏を長とする第二次臨時行政調査会、いわゆる「土光臨調」を発足させるとともに、行政改革推進本部を設置して自ら長としてリーダーシップを発揮されました。後に民営化された国鉄、電電公社及び専売公社の改革も先生のこのような取り組みが実を結んだものです。

 また、国民の政治に対する信頼を確保するため、それまで10年以上にわたって各界各層で議論されてきた参議院議員選挙制度について、個人本位の選挙となっている全国区制の問題点を解消して、政党本位の拘束名簿式比例代表制の導入という形で実現されました。

 国際社会においては、世界が直面する諸問題の解決に積極的に貢献することにより、世界の平和と安定に寄与しつつ、自らの平和と安全を求めるとの立場から、外交、防衛、資源・食糧の確保など内政・外交の両面にわたる総合的な安全保障政策を推進されました。先生ご自身も、国連やサミット、南北サミットなどの国際的な場でご活躍され、昭和57年の第2回国連軍縮特別総会においては、被爆国として、「我々の知る限り宇宙で唯一生命の宿っているかけがえのない地球を愚かな選択によって破滅に追いやることは許されない」と核軍縮を世界に訴えられました。

 先生はまた、現職の内閣総理大臣として初めて北方領土と、復帰後の沖縄をそれぞれ視察されるなど、現場の実態をご自分の目で確かめながら、日ソ関係や日米関係の発展に取り組まれました。

 さらに、保護貿易主義を排し、市場の一層の開放と製品輸入の促進により、自由貿易の維持・強化を図るとともに、開発途上国の経済社会開発及び民生と福祉の向上をめざし、援助を拡充するなど世界の平和と繁栄のため、積極的な役割を果たされました。

 このような先生のご活躍の陰に、さち夫人とご家族のご尽力があったことを忘れることはできません。総裁ご就任が内定したとき、奥様は「しばらくは遠洋漁業に送り出す気持ちで家庭を守る」とおっしゃったとうかがいました。奥様の内助の功がしのばれる言葉だと思います。長年にわたり先生を支えてこられた奥様とご家族の深い悲しみに対し、心からお悔やみ申し上げる次第です。

 鈴木先生。先生が国の将来を思い、心血を注がれた政策の理念は、現在、進めている「官から民へ」の改革や、国際社会の中で我が国にふさわしい責任を果たす外交に脈々として息づいています。

 我々も内外の困難な諸課題に屈することなく取り組み、国政に全力を傾注することをお誓い申し上げて、お別れの言葉といたします。

 どうか安らかにお眠りください。

 平成16年8月26日

「故鈴木善幸」内閣・自由民主党合同葬儀委員長      
内閣総理大臣    小泉 純一郎