インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ
(第2回)

 
平成22年年2月22日(月)
10:03〜12:08
於:知的財産戦略推進事務局内会議室
議 事 次 第

 
1.関係者ヒアリング(プロバイダの責任の在り方について)
 (1)日本レコード協会
 (2)日本インターネットプロバイダ協会
2.プロバイダの責任の在り方について
午前10時03分 開会
○土肥座長
 ただいまからインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループの第2回の会合を開催させていただきます。本日はご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 開催に先立ちまして、知的財産戦略担当の津村啓介内閣府大臣政務官からご挨拶をちょうだいできるということでございます。よろしくお願いいたします。

○津村大臣政務官
 皆さん、おはようございます。ご紹介をいただきました内閣府で大臣政務官をしております津村啓介と申します。
 今、内閣府は、8人ほどの大臣に3人の副大臣、3人の政務官でお仕えをしておりまして、私も幾つか兼務させていただいているんですけれども、国家戦略の担当や経済財政、科学技術、そういったものと合わせまして、こちら知財の担当をさせていただいております。
 実は、国家戦略室の方で、昨年の12月30日ですが、鳩山政権としての成長戦略を描こうということで、基本方針を出しまして、6月を目途に肉づけをしていこうということで、全体としてはそういう作業の中にありまして、例年この時期の知財計画と言えば、翌年の予算編成を横目に見ながら、ということが単年度の取組みというものも大変重要であるわけですけれども、今年はそうした政権交代後の大きな戦略を書く時期にも当たっているものですから、3年、5年、10年というスパンで、同時に議論させていただくこともできるのかなと思います。
 それと同時に、やはりこういう委員会をいろいろなところでさせていただいて、必ず出てくるご意見、というか率直なご感想は、そうは言っても自民党時代はこういう議論はしていたんですよということを必ず言われます。私たちが自民党時代と何が違うのかというのはまだまだこれから結果を出して評価していただくことでございますけれども、1つ、2つ、念頭にあるのはやはり政治主導とこれだけ言っているわけですから、これまで省庁間の意見の食い違いで実現できなかったものを場合によっては、今日も事務方の皆さんに大勢来ていただいていますが、政務三役同士の折衝等も含めて飛び越えていく工夫をしていかなければいけないなということが1つと、もう一つは、PDCAサイクルという言い方を私たちはよくしているんですけれども、事後的に検証可能な目標設定をして、なんとでもとれるような昔の選挙公約みたいな結論を出すのではなくて、今で言うマニフェストと同じように、いつまでに何をやります。それは言い逃れができないというような目標設定をすることで、事後的なチェックに縛られるというやり方なのかなということを直感的に考えておりますが、しかしながら非常にデリケートな世界ですので、そういう杓子定規な目標設定が合うのかどうかということも含めて、皆さんのご見識をいただければというふうに思っております。ほぼ同時にコンテンツ強化、競争力強化といったさまざまなチームを立ち上げながら、守るべきところ、攻めるべきところ、国という視点、あるいは民間の切り口、いろいろなことを多面的に議論していただければと思っておりますが、スピーディな審議ということで3月、4月、そして6月の成長戦略全体の取りまとめに向けて、少しタイトな日程になりますけれども、これからもどうぞよろしくご指導ください。ありがとうございました。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、本日は前半にプロバイダの責任のあり方に関する関係者のヒアリングを行いまして、後半にヒアリングの内容等を踏まえ、プロバイダの責任のあり方についての議論を進めてまいりたいと思っております。
 まず、プロバイダの責任のあり方につきまして、関係者からのご意見をちょうだいしたいと存じます。恐縮でございますけれども、時間のこともございますので、10分という時間でお願いをしたいと存じます。
 まずは、日本レコード協会理事・事務局長高杉様、それから情報技術部長兼法務部担当部長畑様をお呼びしております。それでは説明をお願いいたします。

○参考人(高杉)
 日本レコード協会の高杉でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは座って進めさせていただきます。
 お手元の資料1号で説明させていただきます。本日は、プロバイダの責任のあり方につきまして、意見表明の機会をいただきましてありがとうございます。早速、説明させていただきます。
 まず、1ページをごらんいただきたいと思います。
 私どもが行いました違法音楽配信の利用実態調査をまとめたものでございます。
 本日は時間が限られておりますので、詳細な説明は割愛いたしますけれども、正規の音楽配信を上回る違法な音楽配信の実態があるということをご理解いただきたいと思っております。
 次に、2ページでございます。
 違法音楽配信の対策として、私どもが取り組んでいる内容でございます。
 まず、左側のほうでございますけれども、携帯電話を利用した違法な音楽ファイルのアップロードに対しまして、現在までプロバイダに26万件以上の削除要請を行ったほか、悪質な違法サイト運営者等の告訴や違法なアップローダーに対する損害賠償責任の追及等の権利行使を行っております。
 また、携帯キャリア様のご協力を得まして、違法な音楽配信根絶のための技術的な対策の検討も進めているところでございます。
 さらに、右側でございますけれども、啓発の面でございますが、正規の配信サイトへのエルマークの導入並びに本年1月から改正著作権法が施行されておりますけれども、これにあわせまして広報、啓発活動などさまざまな角度から取り組みを進めているところでございます。
 1ページにございますとおり依然として違法な音楽配信の実態は非常に深刻であって、この状況を改善するためには違法行為者と被害者との間に介在するプロバイダの役割が極めて重要であるというふうに私どもは考えております。
 3ページをごらんいただきたいと思います。
 まず、プロバイダによる一層の侵害コンテンツの防止措置を促す仕組みのあり方として2点の意見を申し上げます。
 1点目でございますけれども、蔵置プロバイダに対して権利侵害行為の防止措置を講じることを義務づけるべきであると私どもは考えております。
 膨大な量の違法なファイルの流通に対して、権利者は人、それからお金も相当かけて削除要請を行っておりますが、それにもやはり限界がございます。また、事後的に、違法ファイルを削除するだけでは侵害量の減少にはつながらず、権利保護の実効性を欠くものと考えております。
 プロバイダに対して求める具体的な義務の内容としましては、悪質な掲示板等や違法ファイルの自主的な監視と削除。それから、違法アップロードを防止するフィルタリング等の技術的対策を講じることなどいろいろ考えられるのではないかと考えております。
 それから、2点目でございますけれども、接続プロバイダに対して、権利侵害行為を繰り返す悪質行為者には、遮断措置等を講じることを義務づけるべきではないかと考えております。特に、ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害におきましては、蔵置プロバイダが存在しておりませんので権利者が違法ファイルの削除要請を行うことは不可能でございます。
 接続プロバイダが違法行為を行う利用者に対して、利用規約等に基づくアカウント等停止等を示唆しながら警告を行うということが最も効果的な実効性の高い侵害防止措置になり得るというふうに私どもは考えております。
 次に4ページございますけれども、発信者情報の開示に関して、3点、意見を申し上げたいと思います。
 まず1点目でございますけれども、発信者情報開示請求に対するプロバイダの回答期限を法定すべきであると私どもは考えております。
 最終ページに、参考資料として添付させていただいたものをごらんいただきたいと思います。私どもで行いました3回の発信者情報開示請求の結果をまとめたものでございます。私どもの開示請求から実際に開示されるまでの期間でございますけれども、任意に開示を受けているケースでは、2カ月から6カ月、それから非開示の場合で開示請求訴訟を行った場合には、当初の開示請求から期間を通算しますと、9カ月から11カ月という結果でございます。
 このように権利行使のための準備手続に相当の時間がかかっているというのが現状でございます。
 実際にその違法行為が発生してから、損害賠償請求等の権利行使までにこのような長い時間があきますと、具体的な発信者への権利行使にも支障が生じる恐れがあると私どもは考えております。
 私どもとしては、発信者への意見照会の期間を含めまして、6週間程度で十分ではないかというふうに考えております。
 それから、2点目ですが、プロバイダが発信者情報を開示しなかったことにより開示請求をした者に損害を与えた場合について、現行法では「故意・重過失」ということになっておりますけれども、これにつきましては不法行為の原則どおり「故意・過失」で十分ではないかと私どもは考えております。
 そして、3点目が、ログの保存期間の法定化でございます。権利者が違法行為に関する証拠を収集して、その証拠に基づきまして、発信者情報の開示請求を行うわけでございますけれども、ログがプロバイダ側に保存されておりませんと、実際にこの権利行使を行うことが不可能となります。したがいまして、これにつきましては、期間の法定化が必要ではないかと考えております。
 そして、最後でございますが、5ページをごらんいただきたいと思います。
 まず、1点目がリーチサイトでございますけれども、蔵置先のサイトが国外にあって、権利行為が困難な場合が多いことから、著作権侵害コンテンツを蔵置するサイトのURLを掲示しているリーチサイトを運営するプロバイダは、権利者からの削除要請があった場合、それに応じる義務があることを明確にしていただきたいと思っております。
 また、損害賠償請求等の件でございますけれども、インターネットを利用した自動公衆送信及び送信可能化による著作権及び著作隣接権侵害事件におきましては、送信が自動的に行われて、送信回数を侵害者自身が把握してないことも多く、その立証が非常に困難であり、権利者の損害をカバーするだけの損害賠償請求ができない結果になっていると考えております。
 訴訟を提起しますと、著作権法の114条の5の規定がございまして、裁判所が証拠等に基づいて、損害額を認定することができるわけでございますけれども、小規模な侵害事件では訴訟提起することはコスト倒れになることから、この規定の適用を受けられず、結果的には侵害のし得の状況があるのではないかと考えております。
 私どものほうとしては、権利の実効性を担保するためにも、被害者が権利侵害の事実を立証した場合には、被害金額を立証しなくても一定の法定額を損害賠償額として立証できる制度を導入すべきであるというふうに考えております。
 以上、インターネット上の侵害行為を減少させるためには、当然、被害者である権利者が相当のコストをかけてやるというのは当然のことでございますし、これからも私ども、引き続きその意向でございますけれども、それに加えて、被害者と加害者の間に介在するプロバイダに一定の責任を負担いただいて、社会全体として侵害の量を減らすという方向性に法制度をつくっていただきたいというのが私どもの希望でございます。
 以上で、ご説明を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本インターネットプロバイダ協会の会長、渡辺様、行政法律部会長木村様、同副部会長野口様においでいただいております。
 それでは、同じように説明をちょうだいしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○参考人(渡辺)
 インターネットプロバイダ協会の渡辺と申します。よろしくお願いします。本日は機会を与えていただきましてありがとうございます。
 私たち協会は、180社ぐらいで、日本のISPというのは非常にたくさんの会社がありまして、世界でも特異なものであります。ただ、それが地方に活性化を与えているということがあります。
 その中でプロバイダという一言で、表現されて、プロバイダといってもいろいろなものがありますので、例えば2月10日の夕刊に、プロバイダに海賊版自動検出装置の導入を義務づけることを検討、というような記事がありまして、ちょっとこの記事を見て、私は実はびっくりしまして、もしこのようなことを検討されるとしたら、現実的ではない と思います。
 ISPというのは、基本的にはインターネットを利用したい人をインターネットの世界につなぐということが基本の仕事でございまして、それを透明につなぐということが前提にあります。
 今まで私たちはこのような場に参加する機会がなかったので、今日は、呼んでいただいたことは大変うれしく、よかったなと思っております。今後ともこのような会議がありましたら、ぜひ参加させていただきたく、機会がありましたらいただきたいと思います。
 今日は、行政法律部会長の木村から詳細を述べさせていただきます。

○参考人(木村)
 それでは、私、木村のほうから資料2に基づきまして、インターネット上の著作権侵害につきまして、私どもの考えていることを説明させていただきます。
 まず、1枚めくっていただきますと当協会の概要が書いてあります。今、会長の渡辺のほうからも説明ありましたが、当協会は、プロバイダの中でも主に接続プロバイダを中心としております。あとホスティング事業者も加わっております。必ずしも世の中のインターネットのプロバイダが全てではないんですけれども、接続プロバイダ中心に会員数は約180社でございます。日本には届出をしているISPというのは1万以上あるんですけれども、そのうち我々が把握しているところでは、実際に運営しているところは1,300ぐらいです。我々の会員はそのうちの180ぐらいなんですが、大きいところが中心にして、一部地方、中小も入っていますが、大体、日本のインターネットの利用者のカバー率でいきますと9割は超しているということです。
 1枚めくっていただきまして、当協会の活動なんですが、当協会は、公益社団法人の業界団体としてインターネットの安全、安心への取り組みですとか、トラフィック問題、セキュリティ問題ということ、利用者保護、いろいろな諸問題にかかわっております。当然、この委員会のテーマでありますプロバイダ責任制限法のガイドラインの協議会にも深くかかわっておりますし、そのほか帯域制御ですとかいろいろ、通信の秘密にかかわるような協議会、ガイドラインにもかかわっています。
 1枚めくっていただきまして、ここから私どもの本日の主張をさせていただくわけなんですけれども、プロバイダというのは、いろいろ種類がございまして、一概に定義することが難しいというふうに考えております。
 左側で言いますと、個人がインターネットにつなぐ、いわゆるアクセス(接続)プロバイダ、それから右のほうで言いますと、掲示板ですとか、あるいはホスティング等のプロバイダ。
 多分、著作権侵害で大きくかかわってくるのは、ちょっとここには書いてないんですが、動画共有サービス、そっちのほうのプロバイダになるのではないかなと思いますが、それらをみんな一言でプロバイダと言われてしまいますと、私どもも入ってしまいます。それはちょっと避けていただければと思います。
 1枚めくっていただきまして、5ページでございます。
 今のことと関連するわけですが、プロバイダはいろいろ種類がありますが、それぞれ異なるサービスを提供しております。左側ですと、アクセスプロバイダ、接続サービスプロバイダですと個人ですとか、企業ですとか、そういうところにインターネットへの接続を提供しております。
 一方、右側のほうは、データセンタ、サーバになるわけですが、動画共有サービスもこちらになりますが、こちらのプロバイダは動画をサーバで流したり、そういう役割を果たしています。その間にありますのが、サーバを置いているホスティング事業者、データセンタ事業者、そういったところがあります。
 あと個人で言いますと、掲示板を持っている方もおられます。それも法律ではプロバイダというふうに今はなっております。サービスによっては、P2Pのように、プロバイダというものが存在しない、サービスに関してはプロバイダが存在しないこともございます。
 下のほうに書きましたが、技術的対策についてはいろいろなプロバイダによって、サービスも技術も違いますので、それぞれにおいて現実的、効果的な対策を考えていただかなくてはいけないかなというふうに思っております。
 次の6ページにいかせていただきますと、ここでは私どもの中心である接続プロバイダによる利用停止の危険性について書いております。
 今、インターネットは国民に不可欠なインフラとしていろいろなサービスが使われております。今ですと確定申告が行われていまして、e−Taxという方法で、税金の電子申告が家庭から行われています。そのほか、地域の防災情報、安全に関する情報の送信、銀行取引に使われたり、さまざま皆さんご存じのように使われております。将来的には選挙にも使われるようになるというふうな可能性もあります。
 著作権侵害は、非常に重い罪ですが、それによってもし利用停止された場合は、単に著作権関係のものだけではなく、こういった一切の国民のインターネットを利用する権利が失われてしまうということに我々は懸念を抱いております。
 次に、7ページです。
 今の話を書いてみたのが、この利用停止、チーム全員失格という書き方ですが、インターネットの接続契約は、どこの家でもそうですが、大体世帯単位です。家族で1本を引いていまして供用しております。ですから、家族の中でよくある話としては、ティーンエイジャーのお兄さんが違法な著作権侵害のコンテンツを使ってしまったがゆえに、利用を停止されてしまうと家族全員が迷惑を被る。家族の問題と言えば問題なんですけれども、そこまでやってしまっていいのだろうかというのが我々の立場からの疑問でございます。
 次の8ページです。
 接続プロバイダによる監視の義務化は無理となっております。今、レコード協会さんのプレゼンテーションを聞きましても、実は、そういうことは接続プロバイダには求めていらっしゃらないということを感じまして、ちょっと安心しているところですけれども、プロバイダ一律にという形で、もし接続プロバイダにその網がかかってしまいますと、非常に大変なことであると思います。
 これはコスト的に、我々も実は計算をしたことはないんですけれども、接続プロバイダでやると、インターネットの電子メールから最近ですとIP電話という音声サービス、全てにコンテンツ侵害の可能性があるかどうかのチェックをしなければいけない。そうなるとその技術というのもほとんどありませんし、あったとしてもコストはおそらく数千億円ぐらい、想像ですけれども、かかってしまう。場合によっては、先ほどのレコード協会さんの資料で、携帯音楽配信で数百億円の数字が出ていましたけれども、それを上回ってしまうという懸念があるのではないかなというふうに考えています。
 世界中にそういう例がないかと言えば、そういうことはなくて、中国ですとか、あるいはイランなんかではそういうことも行われているかのように聞いておりますが、それでも完全ではないというふうに思っています。
 インターネットを一律にもし接続プロバイダにかけてしまいますと、速度も低下しますから、インターネットの利用者にとっては非常に不便を強いることにもなります。ということを懸念しております。もちろん我々法的には通信の秘密の問題ですとか、いろいろそういう問題があることもここでは書かせていただきたいと思います。
 次は、参考ですので、ちょっと省かせていただきます。法的に、我々接続プロバイダに課せられている義務のことについてでございます。
 一方、我々は何もしてないわけではなくて、実は、今日の午後に発表されることですが、ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会というのをやっておりまして、実は、委員の北川先生にもWGの主査をやっていただいておりますが、4月からと書いてありますが、実は3月からP2Pのファイル共有ソフトで著作権侵害を行っている人に対して、ISPが共同で権利者団体と協議会を構成しまして、警告のメールを発するという取り組みを始めました。
 最後の参考で、それについて書かせていただいておりますので、あとでお時間のあるときにごらんいただければと思います。
 長くなりましたが、最後の11ページに私どもの意見が最終的に書かれておりますが、法律の改正よりもまず最初にやれることがあるのではないでしょうか。今、言いましたようなP2Pの対策のように、まずは権利者団体とプロバイダでそういった協力ができないでしょうか。その上で、今、始まったばかりなんですが、それを見て、効果がないといったときには、次の手段としての法律の改正ということも視野に入れてはどうかなと思っておりますが、まずはそういうところを見ていただければというふうに思っております。
 ありがとうございました。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまご意見をちょうだいいたしました日本レコード協会様と日本インターネットプロバイダ協会様のご説明につきまして、ご質問、ご意見ございましたら、お願いをいたします。せっかくの機会でございますので、どうぞご遠慮なく。

○津村政務官
 ご質問なんですけれども、最後のほうに出てきました権利者とプロバイダとで前向きな協議ができる場の構築、調整というお話がありましたが、これは今まではあまりそういうのはないですか。例えば、今日のこういうお話の場というのは珍しいことなんですか。

○参考人(畑)
 日本レコード協会の畑でございます。
 権利者とプロバイダの協議、それからこのような違法対策における協力会議の構築というのは、この数年来、継続的に取り組んできております。
 ご紹介のありました「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会」というのもその1つでございます。
 今、我々、日本レコード協会は不正商品対策協議会の一員としてこの協議会に参加しておりますけれども、レコード協会としても3月からこの取り組みに参加する予定でございます。その他、先ほどこの件話は、P2Pのお話でございますが、それ以外にも、我々レコード協会からプレゼンさせていただきました携帯電話向けの違法音楽配信、いわゆる違法着うたや違法着うたフルにつきましては、これも関係省庁様ご支援の下に、今、「違法音楽配信対策協議会」という組織を設置し、権利者団体、携帯キャリアさん、それから端末メーカーさんも参加して、実効的な対策をどのように進めていくかという協議を進めているところでございます。

○土肥座長
 ご説明はよろしいですか。

○参考人(木村)
 はい。

○土肥座長
 中山委員、どうぞ。

○中山委員
 2つお伺いしたいんですけれども、エルマーク、これはかなり熱心にやられていると思いますが、正規のレコード音源と映像配信の225社でやっているということですけれども、これ全体のカバー率というのはどのくらいなんでしょうかという点とあとエルマーク自体は偽造される、いってみれば偽ブランドみたいな、そういうものは出てないのでしょうかという点をお伺いしたいと思います。

○参考人(高杉)
  お答えいたします。エルマークのカバー率ですが、現在、レコード音源とそれから映像のサイトの95%程度まで普及が進んでいるというふうに思っております。他の分野についてはまだ行っておりません。
 それから、エルマークの偽造でございますけれども、今時点では発生してない、まだそういう実態はございません。

○中山委員
 違法対策として、1つは、安い正規品を普及させるということが重要だと思いますが、CDなどは再販制度維持をしてもいいということになっておりますし、安い正規品を流通させる対策はとっているんでしょうか。

○参考人(高杉)
 パッケージにつきましては、現在、CD単体での商品、これは先生ご指摘のとおり再販制度になっております。ただ、現在、CDと映像の同梱商品、売れ筋の商品はほとんどそういう形で出しておりまして、これにつきましては、当然のことながら再販の対象になっておりませんので、自由な価格設定を行っているところでございますし、いわゆる普及のための値づけの問題につきましては、基本的に各社のほうで当然ながら検討しておると思いますけれども、引き続き努力として価格の問題についても検討していかなければいけないという認識は持っております。

○土肥座長
 先に北川委員、どうぞ。

○北川委員
 委員の北川でございます。
 私は、実は今、お話のありましたCIFF、著作権団体さんとプロバイダ協会さんも入っておられますが、プロバイダ4団体、例えばケーブルテレビなどを含めたところなんですが、そこの協議会というところに2年ほど前からずっと前から参加させていただいて、実際のスキーム設計などを協議させていただいているわけですが、著作権団体さんとプロバイダさんの間のスタンスがかなり違っていて、著作権業界さんというのは、これをやることのメリット、意義というのは明白です。ですから、自分たちの著作物を守りたい、何とか守りたいということに非常に努力されている。
 例えば、今言われた中で言えば、配信サイトにアップされたものを取り下げるために何万件も、各業界さんがやっておられるわけです。26万件とおっしゃいましたけれども。そういうこともほぼ手作業に近いわけです。要するに、これは著作権侵害であることを著作権者が立証しなければならないがゆえに内容をきちんと把握しないと例えば名前がこうついているからということでそれは証明になりませんので、そういうことも日々手間暇かけてやっておられる。何とかしてほしい。
 一方で、プロバイダさん側のほかでは、世のためになるんでしょうが、自分たちのISPとしてのメリットになるかというと、これは難しい局面があるんです。
 そこのところで私はお聞きしたいんですが、CCIFが立ちあがった前段として、セキュリティ総合会議という、これは警察庁の主導でありました。その報告書の中に、私が見つけなければいけないと思っているのは、プロバイダさん側もこのことに対する意義と言いますか、やることに対するインセンティブ、モチベーションがないことにはなかなかこれはバランスがとれなくて前に進まないということがあります。その中でも、実際のスキームはつくっているわけですけれども。
 その中で、ぜひ確認していただきたいのは、そのトラフィックの分析というのがありまして、皆さん想像の中では、トラフィックというのはかなりコンテンツをとらえています。おそらく皆さん、想像の中では、動画配信サイトはすごい。例えばユーチューブみたいなもの、ニコニコ動画みたいなものがあると、世界中にそういうのが100以上あるわけで、ものすごいだろうなと思っておられると思うんですが、実は、それもすごいんですが、我々CCIFで主たるものとしてやっているP2P、ファイル交換ソフトによる帯域優先がものすごいんです。
 実は、帯域の中の半分以上がそういった違法コンテンツをP2Pで流通させることに使われています。
 いわゆる動画配信サイト、今、日本でよく使われているのがユーチューブ、ニコニコ動画になるんですが、それに対するものは約数%でとまっているということか書かれているんです。
 ということは、これ全帯域の中の多いとき、時間帯によりますが8割、9割がこの違法コンテンツの流通によって使われているということになっていますが、このあたりについて、ISPさん側として、これを何とかしなくてはいけないとか、何とかしたいというインセンティブは十分あるのでしょうか。

○参考人(木村)
 ありがとうございます。
 もちろん非常にインセンティブはございます。実際、P2Pにつきましては、帯域制限のガイドラインというのが2年前にできまして、それ以降、ISPが帯域制限を一定の条件下でP2Pについて行うことが認められまして、野放しにしていると先生がおっしゃられるように、8割、9割占められてしまう。それではもう日本のインターネット自体が輻輳状態、目詰まり状態になってしまうということで、実際にはそれを数十%、ある程度の常識レベルに抑えるというところも行われています。
 また、一方、それ以外にISPのインセンティブとしましては、例えばレコード協会さんから発信者情報開示ですとか、裁判を提訴される。そういったことを裁判になると非常に我々としても大変ですから、減らすためにも積極的に協力する姿勢をとっていきたいということで、先生にも委員になっていただいているCCTF、ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会、そういうことをやっているのも1つのインセンティブになります。

○北川委員
 そのことを実際に協力しようと思ったときに、協力する場合に、こういった法律のこの部分はぜひ変更してほしい、強めてほしい、緩めてほしいということがあれば具体的に言っていただければと思うんですけれどもいかがでしょうか。

○参考人(野口)
 プロバイダ協会の野口と申します。
 法改正についての要望のついてのご質問をちょうだいしているんですが、現時点で少なくとも考えられているのが、P2Pのファイルの制御というのは、著作権の侵害だからという理由でつけるようになっておりませんで、P2Pが非常にネットワークに負荷をかけるために、ほかの利用者の迷惑になってしまう、つまりP2Pを使っているごくわずかのユーザーがネットの資源を独り占めしてしまうことを避けるためという形で整理されておりまして、実はこれが違法だからという理由で整理されているわけではないし、なかなかちょっとその定義は今の段階で難しいです。
 と申しますのが、そもそも通信の中身が何が通っているか、違法か違法でないかも含めて、それこそが通信の秘密に該当してしまうものですので、そういったことを避けながらやっている経緯がございます。
 したがいまして、P2Pの帯域規制について、著作権法としては難しいところでありますし、我々としてもネットワークの帯域を食いつぶすものが違法だろうが、適法だろうが、それは確かに特定のごく一部の人が使うのは避けてほしい。そういうことを正当化するということであれば、著作権法としては、今のところ証明しているわけではないので難しいかとは思います。

○土肥座長
 平野委員、どうぞ

○平野委員
 今、資料1と資料2の両方についてのご質問なんですが、特に通信の秘密、資料1でございますとスライド4のところなんですが、資料2のほうも申し訳ないんですが、9ページ、スライド9を開けていただきたいんですが、ここは非常に重要な問題だと認識しております。
 資料1のレコード業界さんの4ページの一番上のご提案、6週間以内に開示すべきだと。ところが、ご承知だと思いますけれども、通信の秘密というのは非常に一旦開示されてしまうともう取り返しがつかない。これは憲法問題、表現の自由とか、検閲を禁止するとか、こういうことにかかわりますから、プロ責法をつくったときには非常に慎重に、なるべく開示しないというふうな抑制的な趣旨でつくられる。その前の研究会に私は入っていましたが、そういう趣旨でつくられたと。
 そのときに、紋切型で、6週間以内と決めてしまいますと、明らかに違法な、今回問題になっているようなユーザーさんの通信と、ちょっともしかしたら、これはフェアユースかもしれないとか、表現の自由とか政治的活動としてこういう表現を使っているのかもしれないという場合とで非常に判断は違うと思います。
 すなわち明らかな場合は早くしなさい。しかしこれは慎重だと言われれば裁判官様にまさに慎重に検討していただく必要がある。
 つまり言い方をもっとかえると、ファースト・トラック[fast track]、早く判断できる場合と、そうでない場合を分けないと、これはちょっとリスクが高いのかなというふうに思っています。
それから、4ページ目の3番目のご提案。ログの保存期間、これはサイバー犯罪条約が出てきましたが、これも私、警察庁の委員をやっていましたけれども、これはアメリカがブッシュ政権でイラク戦争を仕掛けていたようなときに、イラクに反対しないやつはみんな敵だ、テロリストだ、みたいな、そういう勢いで愛国法というのができて、条約をつくろうときたわけです。ところが、通信とか個人情報というのはため込むとこれはリスクが高い、ため込めば漏えいのリスクも高まる、これは大変だということで、なるべく必要以上にはため込まないでねというのが通信の秘密の昔からの考え方が1つあります。
 どんどんため込んで、どんどん開示しろということになると、ビッグ・ブラザーの『1984』、監視社会というもの、これはやめようねといって、敗戦のときに日本は憲法もつくり、電気通信事業法もつくってきた。こういうふうに理解しています。これが資料2の9ページに書いてあるいろいろな憲法であり法律である。
 ですから、言いたいのは、6週間で紋切型で提案なさる前に、プロバイダ協会さんとレコード協会さんがよく話し合って、ここはファースト・トラックにできないかと、それとか判例も出てきているように、レコード業界さんの最後のページ、参考のページには、下のほうに2つ裁判例が出ていますけれども、そこから要件を抽出し、効果を抽出し、こういう場合、ファースト・トラックでいけるんじゃないかと。今のガイドラインはまだ曖昧だったら、もっと詰めて、利害が対立する2つの業界団体が合わさって、こういうことでどうでしょうかと出していくし、対立点はここですよというのを出していく、ここまで詰めて初めて法改正が必要かどうかという話になると思うんですが、その辺、詰めはちゃんと行っているんでしょうか。

○参考人(高杉)
 先生のほうから2点ご質問がありまして、1点目の開示請求に関する回答期限の問題、確かにこれはプロバイダ責任制限法のガイドラインに関する検討会、会議体がありますので、そこでまず詰めなければいけないというのが1つご指摘のとおりかと思います。
 しかし、私ども申し上げているのは、日本の法律上、その発信者に開示していいかどうか照会する期間があるとしましても、6週間あれば回答をいただけるのではないかと、私どもこれでもかなり長い期間と思っております。
 いわゆるユーザーからの返信に2週間おいて、1カ月、プロバイダの判断期間があれば十分ではないか。現実的には、添付でつけさせていただいているとおり、任意の開示でも短くてもやっぱり2カ月かかっているという実態があり、かつ直近の例では、6カ月の例がございました。
 これが我々の証拠が不十分でいろいろな補足資料を出さなければいけないということであれば、私もそこまで申しませんけれども、必ずしもそうではないという実態があるので、これはやはり期限が必要ではないかというふうに考えております。
 それから、ログの保存期間の問題につきましても、先生のご指摘の点ももちろん存じ上げております。しかしながら、私ども被害者側のほうとして、証拠を収集し、それから発信者の情報を開示した後、実際に法的な権利行使、損害賠償等を行うわけでございますけれども、証拠収集でもやはり1カ月ぐらいは最低かかるということでございます。実際、侵害行為を行って、最終的に損害賠償請求するまで数カ月後になりますので、少なくとも一定期間はログが保存されてあるんだということがございませんと、最終的には権利行使までできないわけですので、その部分で、90日、おそらく運用では、多くのプロバイダ、大手のプロバイダは一定期間保存されていると思いますけれども、不必要な長期間保存してほしいと申し上げているのではなくて、一定程度の期間は必ずあるという確証が我々のほうに持たせていただければ、それに基づいて私どもは権利行使するということでございます。そういう趣旨でございます。

○土肥座長
 簡単にひとつお願いします。

○参考人(野口)
 プロバイダ協会でございます。
 まず、プロバイダ的に制限法が非常に抑制的な開示を求めていることについては、先生のおっしゃるとおりでございます。通信の秘密という重要な定義が一度漏れてしまうと、もうそれはできませんので、6週間以内というお話なんですけれども、その6週間以内、6週間後に非開示という可能性も当然あるものと考えておりまして、その結論を早く出してもらって、さっさと訴訟に移行されたいということであれば、もちろんその6週間を待たずに訴訟をいただくことももちろんできるわけですので、そういった意味では、そもそも期間を定めること自体に意味があるのかということは、ちょっと挑戦的な言い方をしてしまったかもしれませんけれども、実際には理論上そういうことになってしまうのではないかと。6週間と(期限を)切ったからといって、その6週間で開示ができるとは限りません。
 ログの保存期間についてなんですけれども、やはりこれも通信の秘密やプライバシーの問題がありまして、やはり通信の秘密が漏れたときがリスクが非常に大きいものでございます。したがいまして、できるかぎり通信の業務、つまり料金の請求であるとかそういったことに必要な範囲を超えたら、それは消しなさいということを総務省からも常々指導を受けているところでありまして、携帯電話や普通の電話の会社でも料金支払い期限後1カ月とか、そういった期間を定めているところかと理解しております。
 ファーストトラックと慎重判断のコースを分けるべきという、まさにそれは言えると思っておりまして、現行のプロバイダ責任制限法のガイドラインによるものというのは、比較的迅速な手続が可能ではないかと。
 ただ、1点問題があるとすれば、やはりファイル交換でございまして、ファイル交換というのは、プロバイダのほうで、ウェブページに乗っかっているものと違って、侵害の事実が直接確認できない。そうなると結局は、権利者側の申立て、権利者側が調査した資料、権利者側の申立てに従って、かつこれでもし利用者が、身に覚えがありませんといって否認されてしまうと、プロバイダとして事実関係を判断することがちょっと・・・となってしまう、できなくなってしまうことが問題だと思います。
 そのような場合、開示が義務づけられるような仕組みになってしまうと、利用者の利益が損なわれる可能性がありますのでその当たりを中立的に判断していただけるような場合があるのか、そういったことであればよろしいのではないかと思うんですが、今の問題点があるとすればそこになるのではないかと思います。
 最終的には、やはり司法判断に時間がかかるということを短縮していただきたい。本来であれば、司法の判断を仰げればこちらとしてもいいでしょうし、権利者さんとして司法の判断を早くやれるとすればいいのではないかと。利用者にとっても司法の判断なら仕方ないと思いますので、そういった点が本来の問題なのかなと思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。津村政務官も公務がございますし、おそらくやがては退出されることになると思います。その前に、北山委員、ご質問、まだもう少し時間がございますので、どうぞ。

○北山委員
 プロバイダ協会の方が見えているので、1点教えていただきたいんですが、プロバイダが削除する場合の免責要件として、2つありますね。1つは他人の権利が侵害されていると信じるに足る相当な理由があった場合。もう1つは、発信者に連絡して7日以内に反応がない場合。
 この前、事務局の説明を聞いていますと、この今言った前者の信じるに足る相当な理由があった場合、こういうきわどい判断が要請されるにもかかわらず、これによる削除の事例が多くて、7日以内という非常に明確な期間が決められているのに、その利用は非常に少ないという説明があったんです。
 私は、実情は全然わからないものですから、私がプロバイダだったら、今、言った7日以内という非常に明確な要件に基づいた削除をまずやるというようになると思うんですが、実際はそうではないということの根拠を、何か理由があればそれを1点教えていただきたい。
 それから、ついでにレコード協会の方に1つ質問したいんですが、今日のペーパーの5ページ目の当協会の意見の3のところの後段部分に関してです。
 法定賠償制度というものをお考えのようなんですけれども、刑事罰としての罰金とは違う民事上の損害の填補を目的とする賠償制度において、一定の法定額という概念を持ち出しているんですが、具体的にどういう額をイメージされているのか。もしおありならば教えていただきたい。その2点でございます。

○土肥座長
 それでは、プロバイダ協会のほうから簡単にお答えいただけますか。

○参考人(野口)
 「信じるに足りる」というのがなぜ引用されているのかというご質問でございました。プロバイダ責任制限法のガイドラインにおいて、このような場合は、「信じるに足りる」と言えるということがかなり明確になっておりまして、特にデッドコピーの場合などは、本当に「信じるに足りる」というのをはるかに上回るようなものでもありますので、事実関係ですとか、あと信頼性確認団体、JASRACさんとか幾つかの団体が指定されていますが、ここから裏打ちをつけて申し出ていただければ、特にISPとしてもそれ以上のことは伺うことはありませんということで、基本的には。ISPとしては、確かにリスクが高い措置ではあるんですけれども、できるだけ協力していこうということで、そのようにさせていただいておりまして、それさえわからない、パロディの可能性があるようなものですとか、信頼性確認団体を経ない申し出があったような場合などは、やはりリスクを回避する観点もあるかと思いますので、1週間ということをしている可能性はあるかと思います。

○土肥座長
 レコード協会、お願いします。

○参考人(高杉)
 私どものほうでは、法定賠償について、過去、著作権分科会法制問題小委員会の司法救済チームに出した意見書の内容でお話をいたしますと、1件当たり私どもとしては10万円という額を考えております。
 あくまで損害の推定規定として私どものほうは考えておるんですけれども、侵害回数が不明で、本来の損害額がわからないと。それで少なくとも権利の行使のために最低限必要な費用ということで、調査費用、弁護士費用等の訴訟費用が補てんされる額であることが理由の1つと、もう1つは過去の知財関係の判例における損害賠償認容額の下限値を参考に10万ということで出させていただいておりまして、ただし発信者のほうからそこまでの損害が生じてないという反証も許す形の条文案を私どもは考えております。以上でございます。

○土肥座長
 ありがとうございました。それでは先ほど挙手をされた津村政務官、何か、ご質問ございましたら、お願いします。

○津村政務官
 もう一回、プロバイダ協会さんにお尋ねをするんですけれども、11ページです。法改正よりもすべきことがあるということで、国に求められるのは法改正ではなく民間だけでは限界がある問題の取り組みで、例えばということで、3点挙がっておりまして、そのうちの1つは前向きな協議ということでしたが、先ほどお尋ねしてみますと、これは数年来やっているというお話で、ちょっと私の頭がコンフュージングになっているんですが、国は何をやればいいというふうに、もう少し具体的に、技術の開発支援というのもちょっと私にはピンとこなくて、何のことをおっしゃっているのか、国民への周知、啓発というのも今はやってないのか、何をこれからやればいいのか。国が今何かをしなければいけないと思うので、こういう会議をやっているんですけれども、もう少し具体的に何をすればいいのか、ご教授いただきたいと思います。

○土肥座長
 それでは、お願いします。

○参考人(野口)
 プロバイダ協会でございます。まず、基本的には確かに発信者情報の問題については非常に重要な問題でもありますので、司法手続という問題が出ましたけれども、それ以外の、例えば削除要請であるとか、任意開示できそうな場合、例えば発信者情報開示であるとか、啓発メールの問題ですとか、そういった点においていろいろ総務省さんですとか、経済産業省、文化庁さんにお骨折りいただいて、今回のようなCCIFのような、プロバイダ責任制限法ガイドラインのような形で、いろいろな協議を設けていただいているところでございます。
 そういったことを引き続き強化する形で、できればガイドラインのスキームで、双方の合意でうまくいくのであれば、それはもう国の手間をとらせることも当然ありませんし、合意できる範囲であれば、スムーズに迅速にいくはずですので、そういった場を引き続きやっていって、ガイドラインなどの運用ができる限りはやっていくほうがいいということで、あと周知、啓発に関しては、著作権というのがいかに重要な定義なのかといったことですとか、そういったことを学校教育の場とかそういうところからどんどんやっていく、これはすごく大局的な話だと思いますけれども、そういったことを……。

○土肥座長
 ありがとうございました。おそらく政務官におかれましては、公務がおありになるんではないかと思いますけれども、今、ご回答をお聴きになって何かお話があれば。

○北川委員
 政務官のご質問に対する回答補足をさせてほしいんです。

○津村政務官
 どうぞ。まだ大丈夫です。

○北川委員
 この事案で危機になっているのは、1つは、コンテンツクリエーターたちが丸ごとつぶれるというリスクが明らかにあります。これは著作権侵害が今横行しておりますので、結局、投資を回収できない状態になっています。そうしますとクリエーターたちにきちんとした対価が支払われないような状況が広がってきます。特に、ゲームとかアニメとかひどいことになっています。
 国のコンテンツのクリエーターたちのモチベーションが非常に落ちてしまっている。いい人たちも全部外国に行っちゃうんです。ハリウッドに行っちゃうんです。それが1つです。
 それから、国に対して非常に大きな侵害が起こっているのが、実は帯域の半分以上がこういった違法コンテンツの流通に実際に使われているということです。これが2つでありまして、それで法的改正はもちろんありますけれども、ちょっと出ているところがありますが、技術に関しては、今、行われているのは、侵害の自動認識です。今、おっしゃったのは、26万件は手作業でやっているわけです。侵害しているかどうか。これはきりがないので、今、一般の人が、アップロードは違法なんですけれども。
 例えば、ユーチューブにテレビで放映されたものをあげたり、いくらでもしているわけです。そのことを手作業で著作権者たちはやっているんです。それを自動的に、ここにも資料があるんですが、自動的にそれを侵害しているかどうか認識する技術というのが求められていて、これは実は経産省あたりでやっておりまして、私はその評価委員もやっているんですが、そういった侵害を証明するための技術というのが今求められています。まず、これがないと、手作業でやっていたのでは、とても割が合わないということで、産業自体がつぶれてしまう状況です。これはリターンが返ってこないことと、侵害を証明できないこと、この人たちは非常にコスト高い。
 それから、教育なんですが、これ著作権侵害はさっきの情報漏えいと一緒ですから、一回アップロードされたらもうあと広がってしまうので大変なんです。1つ1つつぶしていくのが。
 それで一番教育が必要なのは、アップロードは非常に大きな犯罪であるということをほとんどの人が理解してないということです。我々の学生の中でもウィニーでどんどんあげて、JASRACさんあたりから取り締まりを厳しく受けているんですけれども、こういった先生方が10年前につくられたんです。公衆配信権とか、送信可能、ネットワークの上で広がってしまったらもう1発で終わりなんです。そのことを厳しく取り締まることが必要であって、そのことを教育しなければいけない。ウィニーで捕まっている人たちはダウンロードしたら同時にアップロードするのが、このファイル交換ソフトの特色なんです。ですから、そういう人たちはダウンロードではなくて、公衆配信可能にしていることが罪になっているんです。
 そのことをほとんどの人が知らずにやっているんです。このことは何とかしていち早く教育と言いますか、周知しなければいけない状況です。ここのところが改善されるとかなり状況は改善されてくると思います。以上です。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 何かお聞きになって、ご感想はございますか。

○津村政務官
 ありがとうございました。北川委員のご説明も含めて大変わかりやすかったです。
 すみません、焦りだけが先に立って失礼な言い方をしたかもしれませんけれども、この種の議論を時間をかけていること自体が非常に罪深いことなんだろうという思いもするものですから、やはり逆に言えば、今まで時間がかかってきたことも理由があることで、それはお聞きすればするほどよくわかりはするんですけれども、やはり何か結論を出していかなければいけない中で、これまでも十分関係者の議論をしていましたということや、民間でできますということでは解決しないから私たちもこうしているんだろうと。
 すみません、同じことの繰り返しになりますけれども、またもう少し議論をさせていただく機会があるようですので、私自身ももうちょっとキャッチアップしまして、また意見がありましたら次回以降申し上げさせていただきます。またお答えをください。ありがとうございました。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、本日予定しておりますのはヒアリングのみではございませんので、これに基づいて、議論をしてまいりたいと思っておるところでございます。
 それでは、事務局から説明をいただきたいんですけれども、資料3を中心に本日の検討のテーマについて、簡単にお願いできればと思います。

○奈良参事官
 それでは、主な論点につきましてご説明申し上げます。資料3をご覧いただきたいと思います。
 これもアクセスコントロールと同様でございますけれども、委員の先生方と事前の意見交換を踏まえまして事務局の方で整理をしたものでございます。
 3点ございます。プロバイダによる侵害対策措置を進めるべきではないかという点。2点目、確実に迅速な削除を行うという点。3点目が発信者情報開示の観点でございます。
 まず、プロバイダによる侵害対策措置ということでございます。その前に資料4をご覧いただきたいと思います。先ほどもプロバイダ協会の方からご説明がございましたが、プロバイダの方、多種多様のものがあって、なかなか分類が難しいというお話がございました。事務局の方では今後の検討に資するということで、便宜上、以下のようにプロバイダを分類してみてはどうかと考えたところでございます。
 分類といたしましては、インターネットに接続をする機会を提供する接続プロバイダ、それからコンテンツを公開する場を提供する蔵置サーバ等、右側の方は主に場を提供する者というものでございます。
 公開されておりますコンテンツとの関係で申しますと、右にいくほど関係が高くなっていくというものでございます。これらに対しましてどのような侵害対策措置が考えられるかという対応の可能性でございます。いずれのプロバイダにおきましても、少なくともあらかじめ注意喚起を行うことはできるのではないかと考えられます。
 また、いずれのプロバイダにおきましても何らかの形で侵害が反復あるいは非常に悪質なケースであるということを知り得た場合について、あらかじめ規約を整備し、そのような者に対してサービスを停止することができることを規定するということはできるのではないかと考えております。
 また、それ以上のことでございますが、例えばレンタル掲示板の提供者でございますと、著作権侵害が発生しやすい掲示板というのが少なくとも認識できるわけでございますので、それについてチェックをすることでありますとか、あるいは掲示板、それから動画共有サイトの事業者につきましては自らそれを開いているわけでございますので、より高いものが求められていくのではないかということで意識的にチェックして、言われなくても自主的に削除するということは考えられるのではないか。
 さらに動画共有サイトのような多数のコンテンツが集まるところについては、フィルタリング等の技術的な手段によって削除するという可能性が考えられるのではないかとなっております。
 いずれにしましても、これはあくまで便宜上の分類でございます。またそれぞれの、例えば動画共有サイトのところにおきましても大規模にやっているものから小規模でやっているもの、いろいろあると思いますので、それはそのプロバイダの能力に応じて求められるものは変わってくると思いますが、少なくとも最低限求められているものがあるのではないかと考えています。
 2ページをご覧いただきたいと思います。先ほどもお話がございましたが、検出技術の例ということで、フィンガープリントの例を挙げてございます。音楽あるいは映像にも人間の指紋と同様に特徴的な情報があるということでございます。従来は人の監視により対応してきたところでございますが、精度が高いフィンガープリント技術を用いますと効率的に自動的に侵害コンテンツを検出するということが可能になってございまして、データを抽出し、フィンガープリント化いたしまして、それをサーバに格納し、ネット上の流通コンテンツと照らし合わせることによって違法コンテンツを特定できるというものでございます。
 これにつきましては字幕とか圧縮と多少の変更があっても検知可能ということでございまして、現段階では月額十数万程度ということでございますけれとも、初期投資は不要ということでございますし、普及が進めばさらに安くなるということも考えられるのではないかと考えてございます。
 大変恐縮ですが、資料の論点の方に戻っていただきまして、資料3でございます。まず1点目がプロバイダによる侵害対策措置という観点でございます。ここでのポイントといたしましては、プロバイダ責任制限法制定時と比較しまして、大きな環境の変化があるということで、各プロバイダには最低限、一定の行為が求められるのではないかというふうにした上で、プロバイダの性格や能力に応じて必要なことを行っていないという場合には、責任、過失責任が生じるということを明確にできないのかという論点でございます。
 @)の現行制度でございます。関連する法律としては以下の3点がございますが、いずれも著作権に対する侵害対策ということについて具体的に規定されているわけではございません。
 2ページ目でございます。問題点といたしまして、膨大な著作権侵害コンテンツが流通しているということで、従来の権利者側の要請に応じた個別削除ということだけでは現実的に対応に限界が来ているということで、効率的・効果的な廃除方法が何か必要ではないかという点でございます。
 また、同一犯によって繰り返されている事例も少なくないということで、現実的にはその対応というものが極めて悪質なものに絞らざるを得ないという状況があるわけでございますけれども、悪質なものを減らすという観点で申しますと、警告メールを送付する。あるいは繰り返し行われている著作権侵害行為を回避するための努力というものが認められているのではないかと考えられます。
 さらにプロバイダ別に問題を整理いたしますと、アの接続プロバイダ、それからイの方は場を提供して動画共有サイト等でございますが、特にP2Pの場合でございますけれども、管理者がいないということで削除措置ができないということがございますけれども、現実的には警告メールの発出が有効な手段となるのではないか。
 さらに繰り返す行為が後を絶たない現状ということから考えますと、使用停止に関する規定を整備して、必要な場合には自主的に停止するという措置も有効な手段となると考えられます。
 3ページにまいりまして、動画共有サイトの方のプロバイダでございます。ここについては管理していくわけでございますので削除することはできるわけでございますが、そもそも膨大であるということで、際限がない状況でございます。したがいましてアと同様に警告メールを発出する、あるいは繰り返し行うものに対する停止措置ということが有効な手段と考えられます。さらに技術的な手段を用いた措置ということも有効な手段となると考えられます。
 いずれにしましても一部のサイトにおいては既に自主的に措置を講じている例もございますので、こうした取り組みをさらに広げていく仕組みが重要ではないかと考えております。
 それから、不法行為責任が変化しているのではないかという観点から見てみますと、デジタル化、ネットワーク化の進展によりまして膨大な新コンテンツがあります。あるいはいろいろなサービスが出てきている。技術的な措置も可能になっているということで大きく状況は変化しています。プロバイダが被害発生、あるいはその防止に果たす役割は変化していると言えないだろうかという点でございます。
 従来は有人監視に頼らざるを得ないということがあったわけでございます。近年では技術的にも対応が効率的・効果的に行うことが可能となっているという点でございます。
 4ページにまいりまして、こうした中、実際一部取り組んでいるプロバイダがあるわけでございます。このような状況の変化から見ますとプロバイダ側の一定の結果回避責任が生じると言えるのではないかという点でございます。加えましてコンテンツ共有ビジネスにはおのずと侵害コンテンツが含まれやすいという点から考えますと、結果回避責任が高まっているというふうに言えるのではないかと思っております。
 こうしたことからプロバイダによります現在の責任制限法におきましては善意無過失という概念が整理されているわけでございますが、その中で侵害対策措置ということで整理いたしまして、必要な一定の侵害対策措置を講じていない場合には過失になり得るというふうに構成できないかという点でございます。
 この点については、一部プロバイダが自主的に取り組んでいるにもかかわらず、何ら措置を行っていないプロバイダの関係で公平性を欠くのではないかというような指摘もあるところでございます。
 Bの国際的動向につきましては、アメリカの著作権法におきましては通知した際、迅速に削除すれば完全に責任を負わないというふうになっているわけでございます。この免責を受ける際の要件といたしまして、侵害者に対する契約解除方針を採用または合理的に実施していること。それから標準的な技術手段の導入が規定されているところでございます。
 留意点といたしましては、プロバイダの規模・資力によって現実的には果たすレベルが異なり得るのだということについては十分留意しなければいけないというふうに考えております。
 2点目、侵害対策措置の範囲でございます。そもそもどういったプロバイダを対象にしているのかということでございます。先ほど資料の中で説明いたしましたとおり、いずれにしましても一般的にプロバイダによる結果回避責任というものは高まっているのではないかと考えます。すなわち第一に、@といたしましてプロバイダ一般に共通で求められるというものといたしまして、侵害行為を繰り返すものに対するルールの整備が求められ、さらにプロバイダの性格に応じまして、例えばコンテンツを共有するような仕組みのプロバイダについては技術的手段等によりまして侵害を防止するということで、2段階で整理するということが考えられないかということでございます。
 6ページにまいりまして、具体的に先ほどの図を切り出したものでございます。イメージといたしまして概ね以下のように整理できないかということでございます。どのような法的枠組みとするかということについては別といたしましても、侵害対策措置という概念についてはプロバイダ一般に対して共通的に課せられるものとしながら、それぞれ求められる内容につきましてはその性格、能力等に応じて具体的に考えられるというような柔軟なアプローチが考えられるのではないかと思います。
 したがいまして、そのプロバイダの中にも大規模なもの、小規模なもの、個人、事業者といろいろあるわけでございまして、あえて個人、事業者ということで区別しなくても、求められる侵害措置というものはおのずと変わり得るのではないかと考えております。
 それから、3点目の実効性という観点でございます。対象とするのは大手なのか、アウトローまで及ぼすことを考えているのかという点でございます。現状認識といたしまして、まず第1に法律の遵守意識が高い大手、中堅、このあたりの取り組みを促進していくことが非常に効果的ではないかと考えられます。一般にはこうした事業者というのは従来のプロ責法、それからそれに基づくガイドラインに基づきまして実際に判断することが多いということでございますが、同様のアプローチで対応が可能ではないかと考えます。
 また、一般的には動画共有サイト等は規模のメリットが働くということで大手・中堅に集中するという傾向がございます。この点を押さえればかなりの大勢を押さえるということが可能ではないと思います。
 それからアウトロー的なプロバイダでございますが、そもそもここについては法による規律が困難であるわけでございます。実態上、規制を強化したところで海外に逃避する可能性も高く、実効性が確保できないという点はあると思いますけれども、こうしたプロバイダにつきましては確信犯的に実施している場合が多いということもございますので、権利侵害を直接行っている発信者であるというふうに構成し、著作権侵害であるというような構成が考えられないかということでございます。
 それから、7ページのCでございます。法的枠組みとしてはどういうふうに考えられるかということでございます。考えられるオプションといたしまして、実体法上の義務を課すということがあろうかと思いますが、これは先ほどからご説明しておりますとおり、あらかじめどういった義務内容とするのかということがプロバイダごとによって違うということで難しい面があるわけでございます。
 8ページ目にまいりまして、次のオプションといたしまして民事上の要件にできないかということでございます。例えばプロバイダ責任制限法、権利者との関係で過失責任を生じる得る要件ということで定められないかということでございます。すなわちその性格に応じた可能な範囲で有効な一定の著作権侵害対策措置を策定あるいは実施していない場合にはついては、必要な結果回避義務を果たしていないということで、過失があるというふうに理論構成できないかということでございます。
 具体的な対策措置の内容につきましては、権利者、それからプロバイダ側でガイドラインを策定し、プロバイダの形態に応じて定めるということが可能ではないかと考えております。
 それから考えられるオプションのBといたしましては、間接侵害の範囲ということで、著作権法の間接侵害の範囲として明確化することが考えられないかという点でございますけれども、この点につきましてはプロバイダのみを切り出すということは難しい面があるのではないかと考えているところでございます。
 大変早口で恐縮でございますけれども、9ページにまいりまして論点の2点目ということで、迅速な削除についてという観点でございます。著作権侵害コンテンツを確実に迅速に削除するためにどのような仕組みが必要かという観点でございます。現行制度におきましては、プロバイダ責任制限法におきましては権利者との関係において善意無過失の場合であれば損害賠償責任は発生しないということでございます。
 また2項では発信者の関係において削除しても損害賠償責任を生じない場合を定めているということでございます。
 問題点でございます。3条1項、すなわち権利者との関係でございますが、一部の大手以外では例えば明白なデッドコピーについても、現実的に数日後に削除されることがあるということで、この間に生じる被害の蓋然性は否定できないということがあるわけでございます。この点、迅速に削除すべきということは必ずしも法令上明確になっていない点も背景となっているのではないかと考えられます。
 こうした観点から、現行上、読み込むことができるといたしましても、例えば権利者との関係では通知を受けてから削除するまでの間の賠償責任が免ぜられないということの確認規定を置いて明確化するようなことが考えられないかということでございます。
 10ページにまいりまして、発信者との関係でございます。この点につきましてはプロバイダが迅速に削除した場合にも発信との関係で法律上、完全に損害賠償責任が発生していないということではないということでございまして、発生者の関係では責任追及されるリスクがないとは言えないということでございます。
 こうした観点から,デッドコピーなど明らかに客観的に容易に明白に認められる場合には3条2項第1号に規定いたします相当の理由があったということでみなす旨の規定を置いて明確化することで迅速な削除を促すということが考えられないかということでございます。
 またさらに、ガイドラインの外にいる方が、例えば外国企業から見れば必ずしも透明性が高いとは言えないということがございますので、こうした国際的な調和の観点から現行の仕組みは変えずに、規定において明確化した方が望ましいとは言えないのだという点でございます。
 それから、国際的動向につきましてはアメリカの著作権法で通知があった際に迅速に削除した場合に完全に免責されるというふうになっているところでございます。
 EUにつきましても損害をした場合にただちに除去するということを条件に責任を免れるとされているところでございます。
 11ページにまいりまして、留意点のところでございます。アメリカのセーフハーバー条項の観点につきましては、そもそも日本とアメリカでは法制度が異なる。特に著作権侵害についてはアメリカは無過失責任となっているという点をどう考えるかなどがあろうかと思っております。
 13ページでございます。論点の3点目といたまして、発信者情報の開示という点でございます。ポイントといたしましては、権利者による警告、損害賠償請求等の権利執行を迅速に行う必要があります。現行の発信者情報の開示は裁判での開示を前提としております。一方で侵害対策には警告メール等が非常に有効であります。その必要な情報を得るために裁判外で一定の情報について弾力的に取り扱うことができないのかどうかという視点がございます。
 まず1番の現行制度でございます。プロバイダ責任制限法等によりまして権利者に発信者情報開示請求が認められております。これは原則として裁判所による判断が行われるように要件が厳格になっているというふうにされているところでございます。
 2点目の問題点でございます。現実的にはただちに訴訟を行うというそわけではなくて、一定の手続きをへた上で、繰り返す場合に訴訟を提起するということが通常でございます。また裁判に至る前の手続きというものが非常に重要になってくるということがあるわけでございます。
 一方で現行のプロ責法は基本的には裁判による提起を前提としているということがございます。そういった現実とプロ責法の間にギャップが生じているのではないかという点でございます。
 14ページにまいりまして、プロバイダとの関係で発信者情報が必要となる場合を場合分けいたしますと、まずP2P型の場合でございますが、これは管理者がいないわけでございまして、そもそも本人特定は困難であるわけでございますが、仮にその情報が入手できれば警告メール等の連絡先あるいは本人の氏名・住所等の情報提供を求めるということになります。
 一方、動画系サイトの方について言えば、まず管理サイト事業者の方にIPアドレス、タイムスタンプを求めまして、それをもって必要な情報を得るということでいわば2段階の作業が必要になってくるということがございます。
 裁判外における開示ということでございます。基本的には裁判外では不開示となることが多いということ。わざわざ裁判で行うということになると、多くの費用、時間がかかるということでございます。またプロバイダによっては回答する時間が大きく異なるという点もあるというふうに指摘されているところでございます。
 こうした点を踏まえて、少なくとも例えば警告メールを発信するための情報提供等については、住所・氏名等の情報と比較いたしまして、その要件を緩和する。あるいは警告メールを転送するような仕組みが考えられるのかどうか。また、標準処理期間を定めるということができないのかどうかということについてご議論をいただきたいと思っております。
 それから、裁判における開示の方でございますけれども、当然、裁判には多くの時間と費用を要するわけでございます。また、本来の当事者ではないプロバイダが訴訟に巻き込まれるという問題点があろうと考えているところでございます。
 最後15ページでございます。具体的動向ということでございますが、アメリカにおいては裁判所の書記官の判断で容易にできるということや匿名訴訟が提起できるということがございます。ただ、法文化、法制度が異なるという点に留意する必要があると思います。
 台湾では電子メールで利用者に転送したときには侵害対策措置を実施しているということと見なすというような規定があるところでございます。留意点につきましては、権利者が裁判を受ける権利、権利執行との観点。それから判断をするさきに第三者機関の設置ということについては、以前の議論されているわけでございますけれども、こういったことについてどう考えるかといった点などについてご留意いただければと考えているところでございます。
 いずれにいたしましても現行上、まず1点目が削除ということで、権利者との間で比較的うまくいっているわけでございますけれども、現実にはそれを上回るコンテンツが氾濫しているということに対して何らかの措置を講ずるべきではないかという点が大きな点ではないかと考えているところでございます。
 大変駆け足でございましたけれども、説明は以上です。

○土肥座長
 ありがとうございました。各論に入りたいとは思いますけれども、その前に山本委員から資料を提出していただいておりますので、その説明をいただきます。よろしくお願いします。

○山本委員
 資料5をご覧ください。このプロバイダの責任の問題については、フィルタリング等の問題がありますが、それとは別にして、いろいろな問題の大前提としてプロバイダがアップロードされたものを違法かどうかを判断しないといけないというところに一番大きな問題があるように思いますので、その点について私の意見をまとめさせていただきました。
 まず、1と書いてありますが、著作物を巡る利害関係です。著作権者としては著作権侵害に対する救済を求めるという利害関係がありますが、今のところはこの点が疎かになっている結果になっているという問題があると思います。発信者に関しては、表現の自由であるとか、個人情報の保護という利害関係がございます。これについては手厚く保護されています。プロバイダに関しては著作権侵害責任については過失責任が定められておりまして、この点については問題がありません。サービス契約責任というのはこれは発信者との関係での責任ですが、これも過失責任ですので問題がありません。
 問題があると思いますのは、判断リスクト訴訟当事者リスクと書かせていただいた点です。が、プロバイダはアップロードされているコンテンツに対して本来的に固有の利害関係は持っておりません。したがいまして、それが違法であろうとどうであろうと、それについて判断して、どうこうしたいという利害関係は本来的にはありません。にもかかわらず間に入ってしまっているということだけで、それを違法かどうか判断しないといけないという手間隙がかかります。このために法務要員を定めて、それを判断するというような費用と時間等がかかるという結果を発生させております。
 さらに訴訟当事者リスクがあります。その判断が誤っていれば当然権利者から訴えら、あるいは発信者から訴えられるということが発生します。また、発信者情報の開示について現行のやり方から言うとプロバイダを権利者としては訴えざるを得ない。必ず当事者にならざるを得ない。当事者になりますと、弁護費用がかかります。これは私のような弁護士にとっては収入源にはなるのでしょうけれども、社会的には決していい話ではなくて、全く無駄な、本来的には発生する必要のない費用がここで発生するわけです。この判断リストと訴訟当事者リストというのが問題で、これをどういうふうに解消することができるのかということを考えてまとめましたものが2番目と3番目です。
 まず、プロバイダの判断リスクの回避の方法です。これは3つぐらい考えられるのではないか。1つは削除しないと決めてしまうことです。つまり権利侵害の通知が来ようと何をしようと削除しない。ですからあとは権利者と発信者との間だけでやってくださいという、一切判断を負わないという形にすると、少なくともプロバイダは判断ミスは負いません。そのかわり、今申し上げましたように権利者のために発信者と直接対決するような、そういう制度的保障が必要になります。
 もう1つの方法は削除義務を課すことです。権利者から通知が来たら必ず削除してしまうという、アメリカのようなやり方です。この場合にもプロバイダは判断する必要がありませんので、プロバイダは判断リスクは負わない。この場合には発信者の側が多大なリスクを負うことが考えられます。例えば私自身が当事者になった場合を考えると、ストーカー的な人が私の発信したものが自分の著作権侵害だと言って通知をしただけで自動的に削除されてしまうということは想像しただけで極めて不愉快な事柄です。ですから、それぞれメリット、デメリットはあります。それで折衷案というものが1つ考えられるだろうというので書いております。
 発信者が自分がだれで、少なくとも権利者と直接対決できるような情報を提供しているような、そういう発信者に対しては削除禁止とする。逆に直接対決が権利者としてできないような匿名の発信に関しては削除義務とするというような形にしてやる。
 例えば私は先ほど不愉快だと申し上げましたが、その例の場合には堂々と自分の名前を出して、あるいは住所も出して、少なくとも連絡先が分かるような形で堂々と出しているわけですから、そういうものについては削除しない。多く違法にアップロードされているというのは匿名でやりたいだけやれるというようなところに問題が発生しておりますので、そういう姑息なやり方をする人に対しては侵害通知があったら自動的に削除するという形はとり得るのではないか。そこでバランスをとり得るのではないかというのがこの折衷案です。いずれもプロバイダの判断のリスク回避のために考えられる方法です。
 つぎは、プロバイダの訴訟リスクの回避のためにどんな方法があり得るのか。つまりこれは直接対決、権利者と発信者と直接対決を可能にする制度としてどういうものがあり得るのかというのを考えてみました。
 2つ考えられます。これはアメリカで行われております匿名訴訟制度です。ジョン・ドウとかジェーン・ドウとかリチャード・ドウというそういう名前で訴えて、住所も名前も分からない人に対してさえ訴訟は可能になる。匿名発信の場合にはこういう形があってもいいのではないか。訴訟を提起しましたよ、という通知は必要ですが、裁判所の掲示板に挙げるというのはあまり、もちろんそれもやればいいのでしょうが、そんなことは実効性がありません。少なくともアップロードしているサイトがあるわけですから、そこを通じて発信する。プロバイダの側にそういう掲示板でも設けていただいて、こういう訴訟が提起されていますよ、と告知する。あるいはプロバイダが発信者の連絡先を、メールアドレスとか知っているのであれば、そこに通知していただくとか、そういう形で利害の調節はできるのではないかと思います。
 もう1つのアイデアは、2ページ目ですが、送達受領代理人という制度です。これも申し訳ないですがアメリカにあります制度です。私はニューヨークの弁護士資格を持っているのですが、弁護士登録するときに、弁護士登録の機関を私に対する訴訟の送達受領代理人に指名することを求められます。ですから私に対する訴訟はニューヨークに提出すれば、それでもって訴訟が係属するという形になっています。まさにそういうような制度が考えられます。
 つまり原告が訴えを起こしたいのであれば、必ずしも発信者の住所・氏名まで分からなくても、送達受領代理人が定められていて、その者に訴状を提出できればいいという形にすれば、直接対決は可能になります。
 1つのアイデアとしては、プロバイダを送達受領代理人に指定することができるというような形にすると、本人は匿名でありながら堂々と、必要があれば自分がアップしたコンテンツが適法かどうかを権利者として争うことができるという制度にできると思います。
 というような形で、私は今のプロバイダの責任の問題の本質は判断リスクと訴訟当事者リスクの解消にあるように思います。それによって権利者の迅速な救済も可能になるのだと思います。以上です。

○土肥座長
 ありがとうございました。山本委員の興味深いお話を拝聴したわけですが、ある種のリスクの解消を狙って、そういう仕組みを考えるということだと思います。委員もご承知のように私どもはインターネット上の著作権侵害のコンテンツ対策に関する、その辺のスコープで現在検討をやっておりますので、広がってしまうと難しいのではないかというふうにも思っておりまして、今後の検討とさせてください。
 あと、本日のところかなり皆さんの質疑と、それから政務官もいろいろご関心を持たれてご質問なさったということがあって、予定されている時間が残りが少なくなってきております。それで、事務局から検討事項として3点いただいているわけですけれども、例えば本日初めて紹介いただいたところのCCIFのファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会、そういったものがこの3月から発足するということがございますが、これはこの図で言うとこちら側だけの、P2Pのところだけの仕組みということですね。こちらではないということですか。こちらの方についてお考えはまだないということですね。つまりIPアドレス、要するに実際の侵害者に対して対応するために、例えばタイムスタンプとかIPアドレス等を問い合わせをする。その後で知った後で法律上の救済措置をとるという、そういうところの前段階にあたるところはまだお考えになっていないということですか。

○木村参考人
 回答申し上げます。前段階とIPアドレスとタイムスタンプを割り出すところは共通でございまして、これは権利者団体側の方でなされております。

○土肥座長
 そうでしょうけれども、格別の制度は今のところはお考えになっていないということですか、格別の仕組みは。

○木村参考人
 今、仕組みはありまして、その仕組みを常に利用しているというところですが。今の仕組みでIPアドレスを割り出して、それを権利者側が割り出して、ISPに通知しまして、ISP側でIPアドレスとタイムスタンプからログでユーザーを特定、警告メールを送るという内容です。

○土肥座長
 あともう1点ですが、先ほど北山委員からのご質問にもあったところですが、現実にはレコード協会さんに今日おいでいただいて、幾つかご意見をちょうだいしたところですが、基本的にはレコード協会さんとすればいわゆるデットコピーというか、真っ黒な著作権侵害のようなものについては、先ほどの質問にもございましたけれども、ほとんど信頼性確認団体を通じて即時に削除されている、そういう前提で我々は理解してよろしいのでしょうか。

○高杉参考人
 削除についてはおっしゃるとおりでございます。

○土肥座長
 そこでの問題はないということですね。

○畑参考人
 削除についてはおっしゃるとおりでございます。先ほどの1点目に質問に関することと併せてご回答させていただきたいと思います。6ページのこの図でございます。今、まさにCCIFさんの方で始めるのはこの注意喚起メールを送信するというスキームが3月から始まるというところでございますが、例えばレンタル掲示板事業者、掲示板開設者の悪質な掲示板が無いか否かのチェック、自主的パトロールによる削除という対応は一部のレンタル掲示板事業者、掲示板開設者では取り組みがなされているところもございます。我々が今日説明させていただいた資料1号のページ3のところに、「蔵置プロバイダに対して防止措置を講じることを義務付けるべきである」という意見の下の矢印が書いてございますが、2009年7月、当協会がレンタル掲示板事業者8社に対して、文書で自主的取り組みを要請をいたしました。ただ、あくまでも自主的な取り組みの要請でございますので、実際、取り組みの結果、今のところ違法ファイルの減少効果が確認されたのはまだ3社にとどまるということでございます。したがいまして自主的取り組みもどこまで効果を持ってなされるのかと論点もございます。

○土肥座長
 ありがとうございました。今、論点の1ですけれども、侵害対策防止措置、この点について残された時間の多くを使いたいと思っております。この点でご質問、ご意見、特にご意見をいただきたいのですが。
 森田委員どうぞ。

○森田委員
 問題の土俵について確認したいと思います。資料3のペーパーのタイトルにある「プロバイダの責任の在り方」という場合の「責任」というのは、プロバイダ責任制限法でいう「責任」は民事責任を意味するのに対し、このペーパーでは「役割」とか「責務」とかいろいろな言葉が多義的に使われていますが、ここでいう「責任」というのは「民事責任」の意味には限らないという趣旨なのでしょうか。これまで何回か準備会合がございましたが、今日のペーパーでは「接続プロバイダ」というのが唐突に出てきています。ファイル交換を視野に入れると接続プロバイダの問題を取り上げる必要が出てくるというのはそうだと思いますが、接続プロバイダがファイル交換について民事責任を負うということがありうるのでしょうか。このペーパーでは5ページのAのところで「プロバイダ責任制限法は、対象として接続プロバイダから動画共有サイト等を広く含んでもいる」と書いてありますが、プロ責法は接続プロバイダを責任制限の対象には含んでおりません。プロ責法で民事責任について規定しているのはあくまでもホスティングサービスを提供しているプロバイダであって、接続プロバイダの責任については何ら言及していないわけでありますから、プロ責法が接続プロバイダを対象に含んでいるという記載は、誤記だと思います。
 民事責任の枠内で考えていきますと、接続プロバイダに民事責任を負わせるということは、責任の根拠からみて、これは理屈として考えにくいと思います。そうしますと、接続プロバイダの責任というのは、電気通信事業法的な枠組みで公法上の義務づけを考えるということを言っておられるのか。そのあたりがよく分からなくなってしまっていますので、このペーパーいう「責任」というのはどういう意味で使われているのか、まず確認させていただきたいと思います。

○奈良参事官
 基本的には接続プロバイダを含んだ形で民事責任という観点で考えておりまして、接続プロバイダであっても注意喚起ということは最低限できるでありましょうし、何らかの形で侵害をした場合には、それをした場合であって、なおかつそれが悪質、甚大である場合についてはまずサービスを停止する旨の規約を整備していただくということで、それがかなり抑止的な効果を発するのではないかというふうに考えております。

○森田委員
 この論点ペーパーの7ページから8ページでは「法律的にはどのような枠組みが考えられるか」として、オプションの@ABとありますが、このうちAの民事上の責任というのは、いま申し上げた観点からいきますと、プロ責法は接続プロバイダを対象としていないわけですから、接続プロバイダにプロ責法上の要件を満たすことによって責任を負わせるということ自体がそもそも考えにくいところであって、オプションAというのは無理だということになります。
 それから、「間接侵害の範囲として明確化する」というオプションBについては、間接侵害として民事責任を負うというのは、法律で「間接侵害としての責任を負う」と書けば何でも書けるわけではなくて、間接侵害として責任を負うだけの法的な理由ないし根拠があって、所定の要件を満たした場合にのみ民事責任を負うことになるわけです。そうしますと、注意喚起をしないと間接侵害として著作権侵害の責任を負うというのは、これは理屈としては成り立たない議論だと思いますので、オプションBも考えにくいところです。
 そうすると、オプションとしては@しか残らないのですが、@でいきますと、対象となるのは電気通信事業法の対象となるプロバイダだけでありますから、すべてのプロバイダは含まれてこないということになります。
 このように考えてきますと、どの選択肢も、その前に書いてあることとは対応しないのですが、このことはどう理解したらよろしいのでしょうか。

○奈良参事官
 法的な枠組みというところについては、おっしゃるとおりなかなか何法でどういうふうにやるのがいいかというところは難しいわけでございますけれども、少なくとも何をやりたいかということについて言いますと、プロ責法ができた当時と比べますと状況は大きく変化しているということが1点あるわけでございます。そうしますと今まではやらなくてよかったことについても、一定の事柄についてプロバイダについていろいろな形がありますが、それぞれについて責任というものが重くなってきているのではないか。
 したがいまして全く何もやっていない、あるいは一定の限度以上のものをやっていないものについて、義務を課すということは多種多様のものがあるので難しいとは思いますが、それぞれの性格に応じて柔軟な対応ができないのかなということで、今のプロ責法の仕組み、すなわちプロ責法とそれに基づくガイドラインの運用というそことでやっているというようなスキームが考えられないかということで提示をしたわけでございまして、個々具体にどういうような形が望ましいか。少なくともどういうことをやりたいのかということについてはご理解いただければと思っています。

○土肥座長
 今、森田委員のご質問なりご意見のところは非常に重要なところですけれども、この点について他の委員のご意見はございますか。
 前田委員お願いいたします。

○前田委員
 今の森田先生のお話で、接続プロバイダはそもそもプロ責法と関係ないということでは、つまり接続プロバイダは特定電気通信役務提供者には該当すると思うんです。接続プロバイダが3条の問題にならないのはなぜかというと、3条1項柱書きのところで、不特定の者に対する送信を防止する措置を講じることが技術的に可能な場合であってという要件があります。接続プロバイダはこの要件の関係で3条の対象から外れるといいますか、責任を負わない範疇に入るということになろうかと思います。
 ですから、先ほど森田先生からはBのオプションはちょっと考えられないのではないかというお話があったのですが、今は技術的に可能な場合であってというところを、例えば一定の、ここの提案で言うと侵害を繰り返す者に対しては何らかの契約解除措置等をとることをしている場合であってというような変更を加えることによって、考えられるオプション、Bも必ずしも不可能ではないのではないかというふうに思います。

○土肥座長
 ほかにご意見はございますか。
 北山委員。

○北山委員
 今、前田委員がおっしゃったのと同じ意見になると思うのですが、接続プロバイダがプロ責法上の民事責任を負わないとしても、プロ責法はあくまでも民法上の過失責任を決めているだけですから、接続プロバイダだって過失があれば民事上の責任を負うことは当然です。もっと広く一般的に民事上の責任という観点から、プロ責法だけではなくて、民法上の一般論として考えれば接続プロバイダも含めて検討するということは方法論としてはいいのではないかと私は思います。

○土肥座長
 ありがとうございます。この点についてまだありますか。

○北川委員
 範疇の話の整理をしたいのですが、先ほど座長が申されましたいわゆる動画共有サイト系に対する侵害を摘発して防いでいくという話と、接続プロバイダを経由してP2Pソフトを悪用したり、コンテンツ侵害を裁いていくところには非常に大きな違いがあります。最大の違いは何かといいますと、発信者特定というところがものすごく違う。現状においてはかなり違います。それで先ほどIPアドレスとタイムスタンプと言われたのはP2Pの方で、ファイル交換ソフトの方で、技術的に特定できる限界値がそこだという意味。そこからいわゆるプロバイダさんにその情報がいって、発信者を特定して、初めてだれかをどうしようという話はそこで初めて始められる。
 ところが動画配信サイト系ですと、アップロードした人の情報がとりあえずプロバイダは持っていると分かっている。だれがどこから来たというのが分かっているので、削除を要請すればすぐ削除できるわけです。
 ところがP2Pの方はそうではありません。IPアドレス、タイムスタンプがあっても個人を特定できるということは非常に難しいです。実際、ここに例えば繰り返し犯罪というか、著作権侵害をしている人を摘発するなんていうことが気楽に書いてありますが、そのこと自体が極めて難しいです。IPアドレス、タイムスタンプをつかまえたとしても、それはだれがやっているかを特定するのは非常に難しい。その事例は枚挙のいとまがありませんので、あまり言いませんけれども、例えばそういうのをどういうふうに回避されているか。JASRACさんなんかは大学とかいろいろな団体に対しておたくの範囲の中で、管理下のコンピュータでそういうことが起こっているということを言います。それでP2Pのファインダーというのがありまして、それを利用しまして、どこから発信しているかは分かるんですが、結局だれがやっているかまで分からない。これは我々の大学も摘発されていますけれども、実は分からないです。
 それは訴訟しようといったとき、どういうアクションをとったらいいのかというでは、それぐらいの差異があるというふうにお考えいただければというふうに思います。議論の整理だけ。

○土肥座長
 ありがとうございます。問題になっている前のところの過失の問題ですが、過失の結果回避義務の内容としてというそういうこと、つまりプロバイダにもいろいろな種類があって、このペーパーにも前提として書いてあるわけですけれども、要するに接続プロバイダのようなところから動画の配信サービスをやっているようなそういうところまでいろいろあるけれども、それに応じて過失の中身を見ていく、結果回避義務を見ていくということはできないのでしょうか。
 平野委員。

○平野委員
 細かい方針という言葉を使ってはいけないのかもしれません。が、しかし、法技術の話よりもまずどうするべきかという、奈良さんがおっしゃったように今回、資料4というのは非常にいいなと個人的に思っています。プロバイダと言ってもいろいろありますね。低、中、高と書いてあるのが重要です。内容、コンテンツに対して接触の多い、管理可能性が高いところは当然義務も高くなるのではないか。これは不法行為の原則というか、結果回避義務はどういう人が重いの。それは回避可能性というのは当然あって、可能性の高い人は当然責任が出てくるのですよ、社会の構成員として、こういうのがあるべき姿だと思います。この表で言うところの高、高いというところは当然高い責務を負ってくださいね。可能なんだから。可能というのは技術が進化していて、こういうのは可能なんだからやってくださいよ。これは当然な話であります。
 ただ、表の左側に行くと接続プロバイダと言われる人たちはそもそもコンテンツに触ってはいけないし、ここに書いてありませんが、実は検閲を禁止されているしという話もずっとあって、それ[=そこで流れる情報の量]はすごい量です。それに触れというのはちょっと無体な話で、要するに管理不可能なところに義務を課しても、これは不条理な話でカフカの世界になってしまう。これはだめだ。こういう整理だと思います。
 では、こういう少しずつ濃淡がある中で、どれだけの義務を課していきましょうか。そのときに法技術でどれを使いましょう、こういう話になるべきだと思います。というのが1点。
 それから8ページ目、資料3ですが、重要だと思います。
 結果回避義務はどこまで課すべきなのか。標準的な技術というものが非常に一般化してきたら、当然、今の細かい法律は別にして、社会構成員としては、それは採用すべきではないかという考え方は私はそうだと思うんです。そのときに法律が、例えばプロ責法が邪魔になるのか。プロ責法は「相当な理由があるとき」と書いてあります。相当な理由とは何かというのは、これは法条文では書けないから相当となっています。では相当の理由に何があるか。それは社会の変化、技術の変化、それがまさにガイドラインとか、そういうもので詰めて、それを裁判所が尊重するというのがやはりやるべき姿ではないのか。もし法律でやるとしても、政省令ぐらいにして、フレキシブルな対応ができるようにしないと条文ではなかなか書き込めないのではないか。例えば「迅速な削除」を明文化してくれというご要望がありますが、迅速がいい場合と悪い場合があると思います。デットコピーと言われる明々白々な場合は迅速でないと相当理由というのは当然該当するではないか。これは分かります。ただ、例えば北京五輪反対という動画サイト、その表示だけ見ると、これはIOCが削除しろと要求したんだけれども、中身を見るとチベット弾圧反対のビデオだった。だから北京五輪反対だった。これはまさに表現の自由なので、いきなり迅速な削除をしないとだめよとなると、これはおかしな話になる。だから、その辺が相当な理由という言葉で条文におそらく書き込まれていて、個々具体的に裁判官が判断できるようになっていて、それを行為規範としては曖昧なのでガイドラインの方法で行為規範として分かりやすく事例にしておきましょう。こういう立て付けなのではないかと思います。
 それを我々は今のガイドラインが、先ほど政務官さんの前で詰められませんでしたが、もっと事業者同士で、企業さん、団体同士で話し合っていいものを作っていくというのが必要ではないかと個人的には思います。

○土肥座長
 大谷委員。

○大谷委員
 ありがとうございます。今、平野先生がおっしゃっていたように結果回避可能性に応じて判断をしていくということは非常に現実的なアプローチかと思うのですが、実際に見たときのその結果回避可能性というのがファクトとしてどのような形になっているのかをここで確認をさせていただきたいと思います。事務局で用意していただいた資料4、本当に頭の整理にとても有用でした。その2ページの部分で侵害のコンテンツのフィンガープリントを調査するといったもので、現在、探知するための技術的な措置としては、最も小規模で月額十数万程度ということなので、その小規模というのはどの程度のことを想定されているものなのかという、調査の結果をもう少し詳しく教えていただきたい。
 それから、私自身が調べたコンテンツ監視ソリューションのさまざまな技術がある中で、やはり初期投資を必要とするものが幾つかあると思います。初期投資が要らない特別な何か技術があるのかということと、それを実際に導入したときのネットワークに与える負荷ですとか、あとは権利者とプロバイダと言われている中でも特に蔵置サーバ提供者と言われている部分の人に対して与える影響というか、その負荷の分散というのはどういった形になるのかということを教えていただければなと思っております。
 それとの関係で侵害対策措置として警告メールを送るということも重要ではないかとされているところですが、昨年9月に日本レコード協会さんが発表したものによりますと、2004年から1,200万通あまりの警告メールが送られていて、それがかなり有効に機能したということで、どうしても悪質なものについては開示請求をして和解に至ったという報告があったと思います。現在、警告メールを送るという仕組みがかなり有効に機能しているのであれば、さらにそれを上回る侵害対策措置というのが具体的に考え得るものなのかどうか、前提事実をよく確認する必要があるのではないかと思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。ここはプロバイダの団体からお答えいただいた方がいいかなと思うのですが。つまりこの資料にある記述ですけれども、いわゆる著作権侵害コンテンツ検出技術というものがこの10年ぐらいで圧倒的に進歩している。つまりさまざまなポンチ絵に書いてあるようなそういう仕組みを非常に低コストで使える。今、大谷委員からもご指摘があったのですが、十数万円程度で使える。そういうのであるので、さほどプロバイダ各社において経済的なロードといいますか、そういうものも極めて少なくなっているのではないか。そういうことを含めて全体としてネットの長所を生かしつつ、そこに伴う弊害というものはできるだけ低くさせようという、そういう文脈で出ているものだと思うのですが。

○大谷委員
 事務局のペーパーですので、事務局が勉強されていらっしゃるのではないかと。事務局の情報ソースというか、具体的なサービス提供者の名前まで出すのは難しいと思いますが。両方からお聞きいただければと思います。

○土肥座長
 そういうことですのでお願いします。

○奈良参事官
 これはある特定の企業から伺ったものでございます。現時点では権利者側の方に売っているということでございます。その段階で小さいもので月額十数万円程度というふうに聞いていまして、具体的にどの程度の小規模、どの程度の規模なのかということについては申し訳ございませんが、現段階では把握しているわけではございません。

○土肥座長
 もし補足することがありましたら、プロバイダ協会からこの点について。

○野口参考人
 この辺の種類も確かに多数あると思いますが、1つ申し上げられることがあるとすれば、動画投稿サイトから接続サービス事業者まで基本的に大手とか基本的に中小ということは全体としてありませんで、どんな業態の事業者も大小がございます。極端な話、You Tubeのようなものでも最初は小さいところから始まっているかと思います。そういった意味で月額十数万円という負担というのは非常に大きくなってしまうプロバイダの方がむしろ多いのではないか。
 さらに言うならば、大きいプロバイダは大きいプロバイダなりに、それなりに十数万ではすまないと思います。そうなったときに結局、その費用というのは著作権の侵害に全く関係がない一般の利用者に広く浅く転嫁される仕組みになってしまいますので、それが政策上といいますか、利用の公平といいますか、利用者への公平の点から妥当かどうかという点についてもご配慮いただきたいと考えます。

○土肥座長
 分かりました。既にこういうものをプロバイダの幾つかは音のデータについてを既に動かしておられるというようなところもあるのですか。

○木村参考人
 私は存じ上げません。多分、これは権利さん側の方がご存じではないでしょうか。いかがでしょうか。

○畑参考人
 では権利側の取り組みとしてお答えいたします。JASRACさん、それから我々レコード協会もこのフィンガープリントの技術を用いて違法ファイルの自動探索ということを一部で行っております。十数万円というのは、どういう企業さんでというのは存じ上げませんが、一般的にはもっと多額の投資になるのが通常かと思います。
 その中で、特に権利側としては、照合の元になるデータを作らなければなりません、例えば今月1万タイトルぐらいのレコードが発売されておりますが、その1万タイトルのデータを継続的にそのデータベースに提供していかないといけませんので、そこも含めると権利者側としてはかなりのコストがかかっている部分でございます。そこは仕組みとして、やり方についてはいろいろ改善検討が必要と考えております。

○北川委員
 難しさのポイントだけ端的にお話しさせていただきたいと思います。これを制度化するのは非常に難しいといいますのは、プロバイダさんというのは世界中にメジャーなものだけで100以上あります。そのプロバイダさんにまずこのソフトを入れてくださいという話をします。もちろんこの話は1つのコンセンサスとしては進んではおりますが、そこで例えば同意を得たとします。そうしますと、まさに言われたように日々発生するコンテンツのすべてのマスターの情報をこのプロバイダに提示しなければいけません。ところが提示する側としては、著作権侵害を犯しているようなプロバイダにマスターの情報を日々提示していくということに対しては非常に現実的ではないようなプロバイダも数あります。例えば100あれば、ちゃんとやっているところは2か3です。50ぐらいが。残りの30、40は無法地帯です。そんなところにこういうのを入れたからと言って、じゃあマスターを提供するかといったら、そんなことはほぼあり得ない話です。
 例えば日本であればニコニコ動画さんと、その協会さんがやられるということはあり得ると思いますが、極めて限定的な会にしかならないというふうに私は考えます。

○土肥座長
 そういうことだとある程度は想像しないでもないですが、実はそこさえやれば、つまり一番ニーズがあって押さえなければならないところを押さえさえすれば、相当程度の救済が可能なのではないかということかなと思ったのですが。今の委員のお話だと100のうち3ぐらいで、残りの90はと言われますと。

○北川委員
 ただしその3が全体のコンテンツの5割以上を、有効性はもちろんあると考えています。ただ制度として決めるときにこれがワークするかというと、極めて限定的になるかなというふうに思います。

○土肥座長
 ほかに。第1のところ、侵害防止措置というようなものを制度的に考えることができるかどうか。非常に重要なところになっています。

○森田委員
 プロバイダ責任制限法で対応できるかという話がありましたが、これは準備会合でもすでに申し上げたことでありますが、この問題についてこれまでの世界各国の共通の枠組みとなっている考え方というのは、インターネットという自由で公的な空間を作り出す担い手としてプロバイダには過度の責任を負わせないというのが基本であります。ホスティングサービスについては、他人の通信の媒介者として当該情報について中立的な立場にある限りにおいては、ホスティングサービスプロバイダは不法行為責任を負わないのであって、プロバイダは一般的な事前監視義務を負わないことを明確にしたのが、プロバイダ責任制限法であります。このような考え方は、アメリカのDMCAもそうでありますし、EU指令が定めた法的枠組みにおいてもそうであって、各国共通の枠組みとしてこのような考え方がとられているということから出発しなければいけません。それから、プロバイダ責任制限法は、接続プロバイダについては規定を置いていないのですが、なぜ置かなかったのかというと、接続プロバイダにも民法709条の適用はありますが、それによって不法行為責任を問われる可能性はほとんど考えにくいので、責任を制限する規定を特に設けるまでもないということで、規定が置かれなかったというだけのことであります。したがって、もちろん不法行為責任を問うことは論理的には可能でありますが、その過失要件を満たすことは通常の接続プロバイダではほぼ考えられないというのが世界共通の考え方だろうと思います。
 そのようなこれまでの枠組みを見直して、プロバイダが積極的な役割を果たすことを期待するというのがこのペーパーの考え方ですが、そうなると、もはや「プロバイダ責任制限法」ではなくて、PL法のような「プロバイダ責任法」という法律に改めることになります。しかし、プロバイダに責任を負わせればインターネットの世界から著作権侵害がなくなってきれいになるというふうに転換することができるかといいますと、そういうことではないのではないかと思います。
 このペーパーには「国際的な動向」とありますが、フィンガープリントも含めてこの種の侵害対策技術についても、プロバイダが自主的に権利者団体と協力して取り組んでいくというボランタリー・アプローチがむしろ世界的な動向ではないかと思います。プロバイダの民事責任としてこのような侵害対策措置を講ずる義務を負わせるというのは立法例としても存在しないと思います。DMCAでもそのような義務が認められているわけではないと思いますし、また、そのほかの国でこの種の措置を民事責任としてプロバイダに義務づけたものはないはずであります。
 P2Pにおける著作権侵害コンテンツの流通については、プロバイダにフィルタリング技術を用いたシステムを導入することを命じた有名なベルギーの判決がありますが、判決で命じられたフィルタリングは、その後、技術的にも費用面でもうまくいかないことが判明して、これを命じた判決の強制執行ができないということで止まっていて、失敗に終わっているということであります。
 したがって、フィルタリング技術の導入を法的に義務づければうまくいくということになっているかというと、そうではないという前提の下に各国で取り組みがなされているというのが現状だと思います。
 それから、このペーパーの5頁では、プロバイダの侵害対策措置の文脈で、「フランスでは、侵害を繰り返す悪質なユーザーに対する強制的な遮断を、プロバイダに対し裁判所が命ずることが可能な制度」が整備されているように書かれています。これは、日本ではスリーストライク法などと呼ばれていますが、フランスでいうHadopi(アドピ)法です。Hadopi法というのはどういう法律なのかといいますと、その性格付けは著作権侵害に対して刑事制裁を科すものであります。Hadopi法には、現行のHadopi2の前に、Hadopi1が議会で可決されたのですが、このHadopi1の方は憲法院によって法律が違憲無効とされたわけであります。無効になったのはなぜかといいますと、インターネットを通じて個人が民主社会に参加していく、個人の意見を表明するというのは憲法上の基本的な権利であって、そういう権利を制約するのは行政手続によるのではだめで、少なくとも司法手続によらなくてはいけないというのがその理由であったわけです。そこで、Hadopi2では刑事手続として裁判所が判断をした上で、一定の刑事罰としてこういった措置を科すことに改められたわけであります。したがって、この法律は、このペーパーがいうように、プロバイダに侵害対策措置を講ずる義務を課すものではなく、著作権侵害罪に対する刑事罰として科すものであります。そして、このような刑事罰を科すことが適当かということについても、EUの中にはむしろそれに対して反対する意見の方が強く、フランス法は孤立しているともいわれており、フランスでもなお議論が続いているところであります。
 このペーパーで検討されているのは、行政手続でもなく、また刑事手続でもなく、およそそのような手続保障なくして、プロバイダが任意に侵害行為を行った者の利用を強制的に遮断するというものであります。そのことがもつ危険性については、日本インターネットプロバイダ協会が本日のプレゼンテーションで指摘されたように多くの問題があるわけであります。
 もちろん、プロバイダと利用者の間には契約関係があって、著作権侵害行為を繰り返す悪質な利用者がいることによってシステムにさまざまな負荷を受けることになるので、プロバイダがそうした不利益を回避するために利用契約を解除するというのは、普通の民事の契約違反に基づく措置として出てくる話でありますが、それを超えて、プロバイダにこうした措置を講ずることを義務づけるというのは、それとはまったく性質の異なる問題であります。これは、フランス法では、法的な性格付けとしては刑事制裁の問題とされたものです。
 最初に申し上げましたように、このペーパーは、この種のものも含めて、プロバイダの「責任」「役割」という議論をしているわけですが、そこで問題になっているのは法的に何なのかということを明確にしたうえで議論を詰めていく必要があります。それを曖昧にしたまま、法的に性質の異なるものを一括りにして、プロバイダにも何らかの「責任」があるでしょうということでは、議論は先に進まないのではないかと私は思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。予定されている時間が来ておりまして、皆様ご多忙と思いますので、これで閉めなければいけないのですが、森田委員のご発言でも、つまり一般的な監視義務は当然、これを認めようという方向で議論しているわけではなくて、要するに過失の中身の問題としてはどこまでいけるかということを考えてみようということだと思うんです。だから、ここはさらに今日議論していくともっともっと時間がかかると思いますので、次に残したいと思いますけれども、非常に狭い隘路をどうにかできないのかという議論ではないかと思っております。
 大変ご迷惑をかけたと思います。ご予定があって。近藤事務局長に最後に本日の議論をお聞きになっていて何かお話がございましたらお願いします。

○近藤局長
 近藤でございます。今日は皆様、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございました。委員の先生方、またレコード協会、それからインターネット協会の皆様、あるいは各省の皆様にも心から感謝を申し上げたいと思います。
 今日は平成22年2月22日という、全部2で非常に偶数ばかりのいい日でありまして、すべての話が丸くおさまるかと思ったらなかなかそうはいかないというので非常に難しいなと改めて思っている次第であります。
 今日は本当にこういう形で議論を真摯にしていただいて、議論の中身は非常に複雑ですが、また立場がいろいろ違うところもありますので、決着をすぐにつけられる問題ばかりではないことは百も承知ですが、何とかこれを3月末までに一歩でも二歩でも進めていく。そして我が国の世界の中でもインターネットの問題を片づけていくために非常に大きなステップを踏み出したい、こんなふうに思っている次第でございます。
 今日は2回目、実質的にはもう4回目の議論でございますので、引き続きまた議論をお願いして、何とか皆様によろしくお願いしたいと思います。
 最後になりますが、先ほど中座をいたしました津村政務官から皆様と終わった後に名刺を交換したいと言われております。私、名刺を預かっておりますので、グルッと後で回りますから、ぜひ皆様と名刺を交換させていただければと思っている次第でございます。
 本当に本日はありがとうございました。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。予定の時間が来たものですから、本日の会合はこれで閉会したいと思います。次回の会合につきまして事務局から連絡をお願いいたします。

○奈良参事官
 次回は3月3日(水曜日)10時から、本日と同じ知財事務局会議室でございます。次回も引き続き関係者からのヒアリングを行いまして、その後議論という形で進めたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それではこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。
午後12時08分 閉会