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報告書作成へ ~国連UNSCEAR
「東日本大震災による原発事故」のデータ評価開始を決定

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平成23年7月27日

 以前このコラムにてUNSCEAR(アンスケアーと読みます)(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)とはどんな国際機関でその役割はどんなものであるか、などについて説明させていただきました。(https://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g7.html
 そして、UNSCEARは人工放射線ならびに自然放射線による被ばくのレベルと、ヒトにおける身体的・遺伝的影響と環境影響について全世界から得られたデータを詳細に調査して報告書にまとめ、国連総会に報告し続けてきていることを申し述べました。
 このUNSCEARの定例会合に参加して参りましたので、以下でその内容をお伝えします。

 UNSCEARは年に一度会合を開いています。今年も第58回目になる会合が5月23日(月)から27日(金)までウイーン国際センター(オーストリア)にて開催されました。参加国はわが国を含め21の加盟国と6つのオブザーバー国でした。また、欧州委員会(EC)、国際原子力機関(IAEA)、国際放射線単位測定委員会(ICRU)、国際放射線防護委員会(ICRP)、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)、国際気象機関(WMO)といった7国際機関も参加しました。
 この会合の冒頭では、「東日本大震災による原発事故」についての討議がおこなわれ、わが国から震災の概況、事故を起こした原子炉の状況、放射性物質の放出量の予測、放射線量のモニタリング、さらに事故後にとられた対策等について報告されました。(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8382007/www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan037/ )
 そしてその後の検討で、チェルノブイリ原発事故の際のUNSCEARの対応にならって、今回もできる限り早くデータを集積して評価を開始し、報告書を取りまとめることが委員会決定されました。9月に開催される国連総会にて正式決定されるものと思われます。
 なお報告書で取り扱う内容は、1) 原発事故関連の各種データ、2) 放射性物質の放出と拡散状況、3) ヒトとヒト以外における被ばく線量とリスク評価、4) 作業者の被ばく線量と健康影響、の4分野です。
 今後の作業計画では、それぞれの分野におけるわが国の専門家を含めた専門家グループを立ち上げて検討を開始し、2012年5月の第59回会合までに予備的なレポートを作り上げ、2013年には完成された報告書を発行することになっています。

 ところで、会議の初日にワイス委員長が記者会見を行い、それまでに明らかにされたデータを根拠として「これまでのところ、住民の健康に影響があるとは思えない」と発言したことが報道されました。しかし、彼は同時に、継続的に調査していく必要性も強調し、かつ住民の健康リスク評価などについての答えは一週間とかの短期間では出ないことにも言及しています。
 言うまでもなく、住民への健康リスクのより正確な評価は、先に述べた4分野における信頼の置ける科学データを収集し、それを専門家が分析して初めて可能になります。そして、健康影響の有無を確認するためには、長期間の調査がさらに必要になります。従って、この報告書を作成することは、被ばくされた方々の被ばく線量とその健康リスクなどを評価することに加えて、得られた知見をより効果的な対策実施につなげるためにも、きわめて重要であります。

 この報告書作成にあたっては、わが国の主体的な貢献が期待されております。残念ながら今般の原発事故はまだ収束していませんが、信頼のおける科学データを可能な限り速やかに収集して、世界各国の専門家の英知を集めて、上記の報告書をまとめることが急務と考えています。
この報告書が被ばくされた住民や事故処理作業者の方々の長期健康管理に役立つことを強く願っています。


児玉 和紀
(財)放射線影響研究所 主席研究員
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)国内対応委員会委員長
内閣官房内閣広報室
〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1

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