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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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福島県産の食品の安全性について

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 東電福島第一原発事故の後、規制値を超えるセシウムが福島県産の一部の牛肉や米から、また、規制値は下回っていましたが粉ミルクからもセシウムが検出されたこともあり、福島県産の食品には今でも多量の放射性物質が含まれているのではないか、福島県産の農作物や魚介類を食べると健康に影響するのではないか、と心配になる方も多いと思います(図1)。そういった懸念から、「福島県産」というだけで食材が買い控えられるという動きも起こっています。
 ここでは、福島県産の食品中の放射性物質の現状と、それに対する各方面の取組みを概観し、福島県産の食品の安全性について考える際の材料をご提供できればと思います。

基準値の更なる強化や、生産者の取組み

 原発事故直後の昨年3月17日、国によって食品中の放射性物質に関する暫定規制値が設定され、3月21日から食品の出荷制限が実施されました。 原発事故により大気中に放出された放射性物質のうち主なものは、ヨウ素131(半減期8日)とセシウム134(半減期2年)、セシウム137(半減期30年)で、暫定規制値の対象にはこの放射性ヨウ素と放射性セシウムが含まれています。
 その後1年あまりが経過し、今年4月、新たな規制値が設定されました。半減期が8日と短いヨウ素131はすでに検出されなくなっていますが、引き続き検出があり得る放射性セシウムに関して、新たな規制値では、それまでの1kgあたり500ベクレルからさらに厳しい100ベクレルまで引き下げられました(図2)。
 このように規制値をより厳しくすると、往々にして「では、今までの基準は甘かったのか」という逆の不安の声が出ますが、これについて厚生労働省では、「これまでの暫定規制値に適合している食品は、健康への影響はないと一般的に評価され、安全性は確保されています。(中略) より一層、食品の安全と安心を確保する観点から、長期的な状況に対応する新たな放射性セシウムの基準値を定めることとしたものです」と発表。[1]また「規制値は、食べ続けたときに、その食品に含まれる放射性物質から生涯に受ける影響が、十分小さく安全なレベル(年間1ミリシーベルト以下)になるよう定められています」と説明しています[2]。
 たしかにこの規制値は、国際的に見ても非常に厳しいレベルです。一般食品中の放射性セシウムに関する基準は、米国では1kgあたり1,200ベクレル、EUでは1,250ベクレルという値が採用されており、それと比較すると、「100ベクレル」という今回の新規制値がいかに厳しい設定になっているかがわかります。(その後EUでは、日本からの輸入品については日本の新しい規制値と同じ値が採用されています。)
 さらにその後、今年の8月25日からは、福島県産の米については全袋検査が行われています(図3)。30キログラム入りの米袋あたりの放射能を測定し、規制値である1kgあたり100ベクレルを超えた米については、出荷停止の措置が取られることになっています。
 漁業については、福島県沿岸での操業は原則として自粛されています。事前調査で放射性物質のレベルが低いことが確認されたタコ、イカ、貝など、一部の対象のみ試験的に操業がおこなわれ、サンプリング調査によって規制値をクリアしたもののみが出荷されています。

国、生協、県―食品による内部被ばくの調査結果

 国の災害対策本部は、今年6月、「福島県における日常食の放射線モニタリング調査」を実施。県内から選ばれた78人の方の1日分の食事の中に含まれる放射性物質を調べました。その結果が、今年9月に発表されています。これによると、78人分のうち、セシウム134が検出されたのは13人分、セシウム137は26人分でした。これら放射性セシウムによる内部被ばく線量の最大値は、自然放射性物質(事故とは無関係に食品中に普段から含まれています)による内部被ばく線量の、わずか70分の1でした(図4)[3]。
 福島県の生活協同組合「コープふくしま」でも同様に、実際の食事の中の放射性物質の調査を行っています。「陰膳方式」といって、家庭で実際に食べたものと同じメニューを余分にもうひとつ作ってもらい、食事中に含まれる放射線量を測定する手法です。平成23年度の集計では、放射性セシウムが検出された家庭は100家庭のうち10家庭でした。さらに検出された10家庭についても、そのレベルは、事故とは無関係に含まれている天然の放射性カリウム40(図5と【注釈】をご参照下さい)の変動幅の、4分の1以下というレベルでした(図6)[4]。また今年度に入ってからの検査では、放射性セシウムの濃度が1キログラム当たり1ベクレルを超えたのは、100家庭のうち2家庭だったと公表されています[5]。
 更に、このコーナーでもたびたび御報告(原子力災害専門家グループからのコメント第22回「福島県『県民健康管理調査』の、今とこれから」参照)している通り、福島県では、昨年来「県民健康調査」を実施しています。その一環として、ホールボディカウンターという装置を使って、体内に存在する放射線量の測定、いわゆる内部被ばく調査が行われています。今年7月31日までに63,340人の調査が終了し、そのうち1ミリシーベルトが14人、2ミリシーベルトが10人、3ミリシーベルトが2人で、全体の99.96%にあたる残りの63,314人が、1ミリシーベルト未満という結果が出ています。1ミリシーベルト以上検出された方も含めて全員、健康に影響が及ぶ数値ではないと発表されています[6]。
 以上のように、食事を介した放射性物質の体内への取り込み、内部被ばくのレベルは、非常に低いことが分かります。

正確な情報で、正しく堪能を

 チェルノブイリ原発事故の際には、汚染された牛乳の回収が遅れ、そこに含まれていた放射性ヨウ素が、当時子どもだった方たちに甲状腺がんの増加を引き起こした原因となった、とされています。福島県産の食品については、チェルノブイリの場合とは異なり、原発事故直後から迅速な対応策が講じられたと言えるでしょう(図7)。現在も、生産者、流通業者、国や自治体などがそれぞれ様々に対応しています。このため、子どもの甲状腺被ばく線量は、チェルノブイリの場合に比べて大変低いと評価されています(図8)。
 福島県は、食の宝庫です。生産者から、流通業者、消費者まで、正確な情報を共有した上で、正しい理解のもと、福島県産の農産物、畜産物、水産物を守り、安心してその美味しさを堪能しようではありませんか(図9)。

 【注釈】 カリウムは生命を維持するために必須の元素で、人間を含めて生物の体に多量に含まれています。カリウムのうち約0.01%が放射性のカリウム40(半減期13億年)です。地球が誕生した大昔から存在するとされています。この放射性カリウムは当然ながらすべての家庭の食事から1kgあたり15~58ベクレル検出されました。放射性カリウムは食べ物を通して繰り返し体内に取り込まれ、尿中に排出されることによって、常に体内で約4,000ベクレルという一定の値となっています。この、事故に由来しない放射性カリウムによる内部被ばくが、年間0.165ミリシーベルトあります(原子力災害専門家グループからのコメント 第10回 「内部被ばくとホールボディカウンター」参照)。

(遠藤啓吾 京都医療科学大学 学長)
(酒井一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長)


  1. [1] 厚生労働省 食品中の放射性物質に係る基準値の設定に関するQ&Aについて
  2. [2] 食べものと放射性物質のはなし
  3. [3] 福島県 福島県における日常食の放射線モニタリング調査結果
  4. [4] コープふくしま 2011年度陰膳方式による放射性物質測定調査結果
  5. [5] コープふくしま 2012年度上期の実際の食事に含まれる放射性物質測定調査結果
  6. [6] 福島県 ホールボディカウンタによる内部被ばく検査の実施結果について

【参考】文中の図1から図2については、下記スライドをご参照ください。(クリックすると拡大します)

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