岸田総理によるアラブ・ニュース紙への寄稿文

更新日:令和4年8月26日 総理の指示・談話など

TICAD8の開催に向けて

 日本は、8月27日から28日までチュニスで開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)を開催します。

 冷戦終結後、アフリカ支援に対する先進国の関心が低下する中で1993年、日本が改めてアフリカ開発の重要性を訴え、立ち上げたのがTICADでした。その特徴は、あくまで対等な立場に立ってアフリカの自律的な発展を支援し、協力していくという精神にあります。これは、戦後、国際社会からの支援を受けつつ、自助努力によって復興を成し遂げてきた日本独自の経験に基づきます。若年層を中心とした人口増が期待されるアフリカは、今や「可能性の宝庫」です。私は今「新しい資本主義」を掲げていますが、日本はこれからも、「共に成長するパートナー」として、アフリカ自らが主導する持続可能な開発のために全力で取り組んでいく考えです。

 こうした日本とアフリカが共に歩む精神を反映し、当初日本で開催されていたTICADも途中から3年ごとの日・アフリカ交互開催となり、2016年の第6回目のケニア・ナイロビでの会合は、初のアフリカ開催のTICADとなりました。2019年に横浜で開催されたTICAD7では、ビジネス促進が議論の中心となり、TICAD史上初めて、民間企業を公式なパートナーと位置づけました。こうした投資やビジネスを重視する流れを、TICAD8でも一層加速していきたいと考えています。

 TICAD8に臨むに当たり、我々が対処しなければならない国際社会共通の課題(チャレンジ)が二つあります。第一に、新型コロナウイルス感染拡大に見られるような感染症対策です。これは、経済成長の鈍化、雇用・教育機会の喪失をもたらし、特に脆弱(ぜいじゃく)な立場にある女性、若者、貧困層に多大なダメージを与え、格差の拡大が懸念されています。「より良い回復」をいかに実現するかは今後のアフリカ開発の大きなテーマとなるでしょう。

 第二に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する挑戦です。現在世界は、20世紀末の冷戦終結以来の転換期を迎えています。今般のロシアによるウクライナ侵略は、この時代の転換を誰の目にも明らかなものとしました。ウクライナ侵略は、世界のエネルギー・食糧供給にも混乱をもたらし、アフリカの経済・社会に甚大な影響を及ぼし始めています。また、不公正・不透明な開発金融は、脆弱な国々の持続可能な発展を妨げます。

 これらの課題を克服するべく、TICADを通じて、日本は貢献していきます。格差拡大、地球温暖化、テロ・紛争等、現代社会の様々な課題を抱えながらも「可能性の宝庫」であるアフリカにおいて、TICAD8では、日本らしい「人への投資」や「成長の質」を重視するアプローチで、強靱(きょうじん)な社会を共に創るべく、具体的な成果を目指します。

 TICAD8は、パンデミック発生後初めて、日本とアフリカ諸国のハイレベルが議論する大規模国際会議であり、極めて貴重な外交機会となります。

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