岸田総理によるデイリー・グラフィック紙への寄稿

更新日:令和5年4月30日 総理の指示・談話など

 来週から、私はガーナを訪れます。西アフリカの要であるこの地を訪れることができ、大変嬉(うれ)く思います。日本の総理大臣がガーナを訪問するのは、実に、17年ぶりのことです。新型コロナウイルスの感染拡大を乗り越えて、日本の総理としてようやくガーナに戻ってこられることを、大変嬉(うれ)く思います。

 国際社会は今、歴史的転換期にあります。ロシアによるウクライナ侵略は、食料危機や肥料価格の高騰を含め、アフリカにも大きな影響を及ぼしています。また、気候変動・エネルギー、不透明で不公正な開発金融等の国際社会が直面する様々な課題に効果的に対応していくためには、国際社会の連携が一層重要です。国連安保理の同僚であり、民主主義、法の支配等の価値や原則を共有する重要なパートナーとして、アクフォ=アド大統領と率直に議論したいと思います。

 また、この機会に、日ガーナの強固な経済関係を更に深化させていきたいと考えています。まず、西アフリカ有数の経済拠点であるガーナとの間で、ビジネス・投資を更に進めていきたいと考えています。日本は、質の高いインフラ整備は経済活動の活性化の基盤であるとの考えの下、ガーナの連結性を向上させるべく、道路等のインフラをこれまで支援してきました。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の事務局を抱えるガーナが、域内統合促進や貿易円滑化の旗手として果たす役割に期待しており、今後一層緊密に協力していきます。

 日ガーナ関係の発展は、野口英世博士の功績に触れずして語ることはできません。保健分野は両国にとり重要分野であり、旗艦案件である野口記念医学研究所の設立及び同研究所での技術協力などを通じ、ガーナ及び西アフリカ地域の保健・医療分野に貢献していることは、喜ばしいことです。特に、2006年の小泉総理(当時)のガーナ訪問をきっかけに、野口英世アフリカ賞が設けられ、ガーナを含むアフリカの感染症等の疾病対策のための医学研究や医療活動において顕著な功績を挙げた方々を表彰することで、アフリカ全体の保健と福祉の向上に貢献してきています。引き続き、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成も念頭に、アフリカ、ひいては世界の保健分野の向上に貢献していきます。

 ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序の根幹を揺るがす事態を前にして、我々は今一度、法の支配に基づく国際秩序を堅持し、平和と安定を確保することこそが、成長の礎であることを想起する必要があります。コフィ・アナン国連事務総長が、かつて述べたとおり、国際法を擁護し国際秩序を維持するのは、全ての国にとって、明白な責任であるとともに、明白な利益でもあるのです。

 日本は、人間の安全保障及び平和と安定を阻害する根本原因にアプローチする「アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ」(NAPSA)の下、経済成長・投資や生活向上の前提となる平和と安定の実現に向けたアフリカ自身の取組を後押ししてきました。今回の訪問でも、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)やアクラ・イニシアティブを通じ地域における平和と安定の維持に主導的な役割を果たしているガーナとの緊密な連携を確認したいと思います。

 最後に、日本とガーナの長きにわたる友好的な二国間関係について触れたいと思います。ガーナは、日本が苦しい立場の時に、寄り添ってくれました。昨年、安倍元総理が凶弾に倒れた際、アクフォ=アド大統領を含む歴代大統領3名が弔問記帳してくださったこと、安倍元総理のために議会で追悼行事を実施してくれたことは決して忘れません。

 TICAD8では、日本は、アフリカと「共に成長するパートナー」でありたい、アフリカ自身が目指す強靱(きょうじん)なアフリカの実現に向けて協力したいとの確固たる意思を表明しました。今回のアフリカ訪問は、日本がアフリカと共に歩むとの強い意思表明です。また、G7議長国として、アフリカ各国の声をしっかりと受け止めることをここにお約束します。

 ガーナの皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

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