岸田内閣総理大臣記者会見

更新日:令和4年12月16日 総理の演説・記者会見など

【岸田総理冒頭発言】

 本日、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画の3つの文書を閣議決定いたしました。
 私は、かねてより、世界は歴史的分岐点にあると申し上げてきました。この30年間、世界はグローバル化が進展し、世界の一体化、連携が進んできました。しかしながら、近年、国際社会におけるパワーバランスの変化などによって、国と国の対立、むき出しの国益の競争も顕著となり、グローバル化の中での分断が激しくなっています。国際社会は、協調と分断、協力と対立が複雑に絡み合う時代に入ってきています。
 その分断が最も激しく現れたのが、ロシアによるウクライナ侵略という暴挙であり、残念ながら、我が国の周辺国、地域においても、核・ミサイル能力の強化、あるいは急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層顕著になっています。
 今年1年間を振り返っても、5年ぶりに弾道ミサイルが我が国上空を通過いたしました。我が国のEEZ(排他的経済水域)内に着弾する弾道ミサイルもありました。さらに、核実験に向けた準備の兆候もあります。そして、有事と平時、軍事と非軍事の境目が曖昧になり、安全保障の範囲は、伝統的な外交・防衛のみならず、経済、技術などにも広がっています。
 この歴史の転換期を前にしても、国家、国民を守り抜くとの総理大臣としての使命を断固として果たしていく、こうした決意をもって、昨年末から18回のNSC(国家安全保障会議)4大臣会合での議論を重ね、新たな国家安全保障戦略の策定と防衛力の抜本的強化を含む、安全保障の諸課題に対する答えを出させていただきました。
 今後5年間で緊急的に防衛力を抜本的に強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施する。令和9年度には、抜本的に強化された防衛力とそれを補完する取組を合わせて、GDP(国内総生産)の2パーセントの予算を確保する。そのための安定した財源を確保する。この結論に至る過程においては、国家安全保障局等におけるヒアリングや有識者会議を通じて様々な御意見を頂きました。自公の与党ワーキングチームにおいても、率直かつ精力的な議論を頂きました。さらに、日本維新の会や国民民主党からも御提言を頂きました。日本と国際社会の平和と安全を願う、全ての皆様の真摯な御協力に感謝を申し上げます。
 もちろん、国民の命、暮らし、事業を守り抜く上で、まず優先されるべきは、我が国にとって望ましい国際環境、安全保障環境をつくるための外交的努力です。今後とも自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視しつつ、日米同盟を基軸とし、多国間協力を推進する、積極的な外交を更に強化していきます。同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要であり、防衛力の強化は外交における説得力にもつながります。
 その上で、今回、防衛力強化を検討する際には、各種事態を想定し、相手の能力や新しい戦い方を踏まえて、現在の自衛隊の能力で我が国に対する脅威を抑止できるか。脅威が現実となったときにこの国を守り抜くことができるのか。極めて現実的なシミュレーションを行いました。率直に申し上げて、現状は十分ではありません。新たにどのような能力が必要なのか、3つ具体例を挙げたいと思います。
 1つ目は、反撃能力の保有です。これまで構築してきたミサイル防衛体制の重要性は変わりません。しかし、極超音速滑空兵器や、変則軌道で飛しょうするミサイルなど、ミサイル技術は急速に進化しています。また、一度に大量のミサイルを発射する飽和攻撃の可能性もあります。こうした厳しい環境において、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、今後不可欠となる能力です。
 2つ目は、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域への対応です。軍事と非軍事、平時と有事の境目が曖昧になり、ハイブリッド戦が展開され、グレーゾーン事態が恒常的に生起している厳しい安全保障環境において、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域でも、我が国の能力を量・質両面で強化していきます。
 3つ目は、南西地域の防衛体制の強化です。安全保障環境の変化に即して、南西地域の陸上自衛隊の中核となる部隊を倍増するとともに、日本全国から部隊を迅速に展開するための輸送機や輸送船舶を増強します。これは、万一有事が発生した場合の国民保護の観点からも重要です。さらに、尖閣(せんかく)諸島を守るための海上保安庁の能力増強や、防衛大臣による海保の統制要領を含む自衛隊との連携強化といった取組も進めていきます。
 こうした取組を始め、弾薬等の充実、十分な整備費の確保、隊員の処遇改善などを含め、今後5年間で43兆円程度の防衛力整備計画を実行します。計画の着実な実行を通じて、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができます。
 また、防衛力だけでなく、総合的な国力を活用し、我が国を全方位でシームレスに守っていきます。このため、海上保安庁の能力強化、経済安全保障政策の促進など、政府横断で早急に取り組みます。そして、これらの取組も踏まえ、防衛力の抜本的強化を補完するものとして、研究開発や公共インフラ整備に取り組むなど、総合的な防衛体制を強化します。
 以上の防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせて、令和9年度には現在のGDPの2パーセントに達することとなるよう予算措置を講じてまいります。
 NATO(北大西洋条約機構)を始め各国は、安全保障環境を維持するために、経済力に応じた相応の防衛費を支出する姿勢を示しており、こうした同盟国、同志国等との連携も踏まえ、令和9年度に向け、取組を加速してまいります。
 5年間かけて強化する防衛力は、令和9年度以降も将来に向かって維持・強化していかなければなりません。そのためには、裏付けとなる毎年度約4兆円の安定した財源が不可欠です。このため、私はこの春の通常国会から、防衛力強化の内容、予算、財源、この3つを本年末に一体的に決め、国民に明確にお示しするとの方針を一貫して申し上げてまいりました。
 安定的な財源として、財務大臣に対し、まずは歳出削減、剰余金、税外収入の活用など、ありとあらゆる努力、検討を行うよう厳命をいたしました。結果として、必要となる財源の約4分の3は歳出改革等の努力で賄う道筋ができました。残りの約4分の1の1兆円強については様々な議論がありました。
 私は、内閣総理大臣として、国民の命、暮らし、事業を守るために、防衛力を抜本強化していく、そのための裏付けとなる安定財源は、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対応すべきものと考えました。また、防衛力を抜本的に強化するということは、端的に申し上げれば、戦闘機やミサイルを購入するということです。これを借金で賄うということが本当によいのか自問自答を重ね、やはり安定的な財源を確保すべきであると考えました。
 今回、一体的に決めるとの方針の下、与党において熱心な議論が行われ、本日、与党税制改正大綱が決まりました。法人税については、法人税額に対し、税率4~4.5パーセントの新たな付加税をお願いいたします。これは、法人税率に換算すると1パーセント程度です。また、その際、中小企業への配慮を大幅に強化し、所得換算で約2,400万円の控除を設けました。その結果、今回の措置の対象となるのは、全法人の6パーセント弱です。
 所得税については、物価高に賃上げが追い付いていない現下の家計の状況を踏まえ、所得税の負担が増加しないようにしています。具体的には、まず、所得税額に対して2.1パーセントをお願いしている復興特別所得税を1パーセント引き下げるとともに、課税期間を延長し、復興財源の総額を確実に確保いたします。廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、息の長い取組についてもしっかりと支援できるように引き続き責任を持って取り組んでまいります。その上で、減額分に相当する税率1パーセントの新たな付加税をお願いすることとしております。
 さらに、たばこ税については、1本3円相当の引上げを段階的に実施いたします。
 従来から申し上げているとおり、これらの措置は来年から実施するわけではありません。実施時期は、現下の経済状況等を踏まえ、9年度に向けて、複数年かけて段階的に実施することとし、その開始時期等の詳細については、更に与党でも議論を続けて、来年、決定することとなります。そうであれば別に今年決定しなくてもいいのではないかという御意見も頂きました。しかし、将来、国民の皆様に御負担いただくことが明らかであるにもかかわらず、それを今年お示ししないことは、説明責任を果たしたことにはならない。誠実に、率直に、お示ししたい。そのように判断いたしました。引き続き国民の皆様に、今回の措置の目的、内容を丁寧に御説明するよう努めてまいります。私たちの今の平和で豊かな暮らしを守るために、また、我々が未来の世代、未来の日本に責任を果たすために、どうか御協力をお願いいたします。
 安倍政権において成立した平和安全法制によって、いかなる事態においても切れ目なく対応できる体制が既に法律的、あるいは理論的に整っていますが、今回、新たな3文書を取りまとめることで、実践面からも安全保障体制を強化することとなります。正にこの3文書とそれに基づく安全保障政策は、戦後の安全保障政策を大きく転換するものであります。もちろん、これは、日本国憲法、国際法、国内法の範囲内での対応であることは言うまでもありません。非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは、今後とも不変です。こうした点について、透明性を持って国民に説明するのみならず、関係国にもよく説明し、理解をしてもらう努力を続けてまいります。
 以上、日本を守るための防衛力強化等について御説明させていただきましたが、防衛力の強化は国民の皆様の御協力と御理解なくしては達成することはかないません。我々一人一人が主体的に国を守るという意識を持つことの大切さは、ウクライナの粘り強さがよく示しています。我が国の安保政策の大きな転換点に当たって、我々が未来の世代に責任を果たすために、国民の皆様の御協力を改めてお願い申し上げます。
 ありがとうございました。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これから皆様より御質問いただきます。
 指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。
 まず、幹事社から御質問いただきます。
 日本テレビ、平本さん。

(記者)
 総理、日本テレビの平本です。
 今回の増税を決定したプロセスについて伺います。党内からは、今回のプロセスについて、唐突感があるとか、若しくは進め方が拙速だという声を取材していてもよく聞きました。総理、今、正に会見で、総理自身はこの通常国会から議論を始めて年末に決めるということは一貫して言っていたと、今、おっしゃいました。ただ、その総理の方針と与党内と、若しくはその先にある国民との意識の間にギャップがあるのではないかと感じます。総理自身は今回の決定プロセスに問題はなかったと思われるでしょうか。

(岸田総理)
 プロセスについて問題があったとは思っておりません。3文書や防衛力の抜本的強化については、通常国会ではなく、昨年の末からこの議論を始めています。昨年の末から議論を始め、先ほども申し上げましたが、18回にわたりまして、NSC4大臣会合で議論を重ねてきました。また、国家安全保障局においてもヒアリングを行う、また、有識者会議を開かせていただきまして、様々な意見を伺ってきました。その上で、先ほど申し上げたように、防衛力強化の内容、予算、財源、この3つを本年末に一体的に決め、国民に明確にお示しするという方針、これは、春の通常国会のときから、国会においても、また、度々会見の場においても、一貫して申し上げてきたところです。この3文書や防衛力の強化については、政府における議論、また、有識者からの御意見等を踏まえ、政府としての考え方を整理した上で、与党にお示しし、それを基に、自公の与党ワーキングチームにおいて、率直かつ精力的な議論が行われてきました。
 財源につきましても、そもそも予算につきましても、こうした内容の議論と並行して、どれほどの規模が必要なのか、こうしたことを政府として議論を行い、整理をした上で、与党に対してお示しさせていただきました。そして、財源についても考え方をお示しした上で、与党の税制調査会において議論をお願いしたということであります。大変大きな議論が行われたと聞いておりますが、その議論を経て、与党税制調査会として結論を出していただき、大綱をまとめていただいた。それに基づいて、政府としても、与党のプロセスをしっかり経た上で閣議決定を行った。こうしたことであります。
 このように、3文書、あるいは防衛力の抜本強化に向けては、1年以上にわたる丁寧なプロセスを行ってきたと考えております。問題があったとは思っておりませんが、しかし、国民の皆様から様々な意見や指摘がある、このことは政府としても引き続きしっかり受け止めなければならないと思います。引き続き丁寧な説明については、政府として心掛けて、実行していかなければいけない。説明を続けていきたい、このように思っております。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、続きまして、幹事社の読売新聞、仲川さん。

(記者)
 読売新聞の仲川です。
 今回の3文書決定により、政府は防衛力の抜本強化を打ち出し、防衛政策を大きく転換されました。防衛費は、来年度から5年間の防衛力整備計画における総額が約43兆円と、現行計画の約27兆円から約1.6倍に増えます。また、反撃能力の保有も盛り込まれました。これほどの防衛力強化、防衛政策の転換、こうしたことを行う理由、背景を改めて御説明ください。
 また、新たな国家安保戦略では、中国の軍事動向に関して、これまでにない最大の戦略的な挑戦と位置付けました。このように位置付けた理由も併せてお伺いします。

(岸田総理)
 まず、1つ目の防衛政策に関する背景、理由という部分につきましては、冒頭の発言でも申し上げたように、我が国を取り巻く安全保障環境は極めて急速に厳しさを増していると感じています。我が国周辺の国・地域においても、核・ミサイル能力の強化、急速な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなど、こうした動きが一層顕著になっています。
 先ほど申し上げましたが、この1年間を振り返っただけでも、5年ぶりに弾道ミサイルが我が国の上空を通過する。また、我が国のEEZ内に着弾する弾道ミサイルもありました。また、極超音速滑空兵器ですとか、変則軌道のミサイルですとか、こうしたミサイルをめぐる技術、これも急速に進化しています。その中にあっても国民の命や暮らしを守る、政治にとって最も大切な責任をしっかり果たすことができるのかどうか、これは今一度真剣に考えなければいけない大変重要な課題であると考えました。
 これも先ほど申し上げましたが、平和安全法制によって法律的、理論的には我が国として事態に対応できる、こうしたものは整っておりますが、その裏付けとなる防衛体制、これが質・量ともに十分なのか、国民の命や暮らしを守るために十分なのか、これを政治としてしっかり考えていかなければいけない、これがこの1年間にわたる議論の背景にあったのだと思っています。こうした国際情勢や考え方に基づいて防衛力の強化について考えてきた。我が国に対する脅威を本当に抑制できるのか、あるいは脅威が現実となった場合に国民の命を守り抜くことができるのか、現実的なシミュレーションを行った、こうしたことであります。
 先ほど3つの例を挙げましたが、それ以外にもいわゆる継戦能力ということについても、これまで防衛力整備では新しい艦船や航空機などを中心に投資をしてきましたが、十分なミサイルや弾薬がそろっていなければ具体的な対応を行うことができない。また、そうしたものについても何をどれぐらい持てば十分なのかシミュレーションを行い、必要な装備、数量、こういったものを1年間の議論の中で積み上げてきました。また、部品が不足して動かせない戦闘機や輸送機が数多く存在する、こうした現実の中で十分な整備費、これも投入しなければいけない、こうした議論も積み重ねてきたわけです。さらには、今後ゲームチェンジャーになり得ると言われている無人アセット防衛能力、こうしたものについてもこれまで十分な投資をしてこなかった。こうした分野についても防衛力整備計画の内容、この国を守り抜くために緊急的に整備することが不可欠であるという議論を行い、この文書をまとめた、こうしたことであります。厳しい安全保障環境の中で、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を積み重ねてきたということです。
 そして、御質問の後半の中国についてですが、現在の中国の対外的な姿勢、あるいは軍事動向等については、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上での挑戦と認識しております。そして、戦略的な挑戦としているのは、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定の確保のみならず、国際秩序を強化する上での挑戦が多岐にわたる分野においてのものである、こういった認識に基づいてこうした文書の記述とさせていただいております。
 同時に、国家安全保障戦略においては、日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有していること、そして、建設的かつ安定的な関係を構築していくことは、インド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定にとっても不可欠であるということ、さらには経済、人的交流等の分野において日中双方の利益となる形で協力は可能である、こうしたことについても国家安全保障戦略において明確に記述をしている、こうしたことであります。中国との関係、中国の記述ということについては、こういった内容となっております。
 以上です。

(内閣広報官)
 ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
 では、産経新聞の田村さん。

(記者)
 産経新聞の田村です。よろしくお願いします。
 今回3文書には防衛装備移転三原則と運用指針の見直し検討が盛り込まれました。ウクライナにも自衛隊の装備品を支援しましたが、同志国との協力や国内の防衛産業維持のためにも重要だというふうに考えます。総理はその必要性についてどのようにお考えになって、スケジュール感を含めいかに見直しを進めていこうとお考えかというのを教えてください。
 あわせて、反撃能力、敵基地攻撃能力については、おととしに安倍元首相が提起されて、総理も就任前に昨年の春にツイッターなどで議論の必要性を主張されました。今回3文書改定に至ったということなのですが、率直な今の思いもお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず、防衛装備移転に関する質問ですが、インド太平洋地域の平和と安定を確保し、そして、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するとともに、ウクライナのような国際法に違反する侵略を受けている国を支援する、こうした観点から防衛装備移転は重要な政策ツールであると考えます。そして、加えて防衛力そのものと言える防衛産業の基盤の維持・強化にも効果的である、こうした側面もあると認識しています。
 今後のスケジュールという御質問もありましたが、装備移転三原則、それから運用指針を始めとする制度の見直しについては、与党と調整を丁寧に進めながら結論を出していかなければならない課題であると認識しています。この課題の重要性はしっかり指摘をした上で、具体的な対応については引き続き与党と調整を行っていきたいと思っています。
 また、反撃能力についてでありますが、御指摘のように、反撃能力については私の考え方も申し上げてきたところでありますが、そうしたものも含めて、政府として今回3文書を取りまとめるに当たって、国民の命や暮らしを守るためにあらゆる選択肢を排除せず議論をする、こういった姿勢で議論を行ってきました。その中にあって、反撃能力、現在のミサイル防衛システム、これはもちろん大事であり、より強化していかなければなりませんが、反撃能力ということについても我々は考えていかなければいけないのではないか、文書の中でそうした内容を盛り込むに至りました。
 こうした考え方をどのように具体化していくのか、これから引き続き問われます。是非こうした考え方について、今回3文書の策定によって整理をしたわけでありますから、それに基づいて国民の命を守るために必要な措置、具体的にどうするかしっかり考えていきたいと思っています。

(内閣広報官)
 それでは、その次、共同通信の鈴木さん。

(記者)
 共同通信の鈴木です。
 日米関係と沖縄について伺います。今回の3文書では自衛隊と米軍による抑止力強化が盛り込まれました。今後日米間でガイドラインの改定を進めていくお考えはありますでしょうか。
 また、沖縄での陸上自衛隊の部隊増強が盛り込まれたことに、沖縄の玉城知事からは自衛隊を増強するなら米軍の負担を減らすべきだとの声が出ています。南西諸島地域の住民の理解をどのように得ていくのか、総理のお考えをお聞かせください。

(岸田総理)
 まず最初の日米ガイドラインの扱いについては、現時点で何ら決まっていることはありません。まずは今回策定した3文書を踏まえ、日米間のあらゆるレベルで緊密な協議を行ってまいります。いずれにせよ、国家安全保障戦略においても、日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸であり続ける、このように記しているように、引き続き様々な分野における日米防衛協力を更に推進し、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していきたいと思っています。
 そして、御指摘があった沖縄を始め、地域の皆様方に対する説明ということでありますが、先ほども申し上げたように、安全保障環境、これは急速に厳しさを増している中、自衛隊の部隊増強により南西地域の防衛体制を強化していく、こうした考え方を文書の中でも示しております。これは万一有事が発生した場合の国民保護の観点からも重要な考え方であると思っています。
 同時に、安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に米軍が駐留するということは、日米同盟の抑止力、対処力を構成する重要な要素であり、現下の安全保障環境では、その重要性は更に増しているのではないかと考えます。その上で沖縄の負担軽減を図ること、これは政府の責任であります。普天間飛行場の返還を始めとする嘉手納(かでな)以南の土地の返還、あるいは米海兵隊のグアム移転などについて、可能な限り早期の実現に取り組んでいきます。厳しい安全保障環境、あるいは沖縄の戦略的な意味、こうしたことについて、3文書の考え方について地元の皆様方に丁寧に説明していく努力はこれからもしっかり進めていかなければいけない、汗をかかなければいけない、このように思っております。

(内閣広報官)
 それでは、その次に、ジャパンタイムズ、高原さん。

(記者)
 ジャパンタイムズの高原と申します。
 安保関連3文書には、反撃能力の保有の記載があり、国内外にこれが専守防衛政策の転換点になるのではないかとの懸念があります。今後、状況によってはそれがなし崩しになる可能性もあるのではないかと思いますが、総理の考えをお聞かせください。

(岸田総理)
 昨年末から国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、反撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討してきたということを先ほども申し上げたとおりですが、この検討は憲法及び国際法の範囲内で、そして、日本の国内法の範囲内で、さらには日米の基本的な役割分担もしっかり維持しながら進めてきた、こうした議論であります。この範囲内で日本が対応していくということ、これは言うまでもないことであります。
 その結果、保有を決定した反撃能力については、その定義や、どのような場合に行使し得るかを含め、国家安全保障戦略に詳細に書かせていただいているところですが、その上で申し上げれば、この専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その対応も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、これは憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢というものであり、我が国の防衛の基本的な指針であり、これは今後も変わらないと考えています。
 反撃能力についても、この考え方にのっとっており、今後とも専守防衛、これは堅持してまいります。御指摘のような懸念については、今後とも丁寧にお答えをしていきたいと考えています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方、NHKの清水さん。

(記者)
 NHKの清水です。お願いします。
 冒頭にも少しお話がありましたが、総理自らGDP2パーセントの予算措置を指示されました。一部で数字ありきとの声もありますが、この2パーセントという目標を設定したのはなぜか、また、国内外でどのような意味を持つと考えるかお聞きします。
 一方で、財源の議論では、個人の所得税負担が増加する措置は採らないとしていましたが、与党税制改正大綱には、復興特別所得税の期間延長が明記され、すぐに負担は増えないものの、長期で見れば負担が増えるとの声もあります。この点に関する総理の認識と、どのように国民の理解を求めていくかを伺います。

(岸田総理)
 まず前半の質問ですが、2パーセントということ、数字ありきの議論をしてきたということはないということはまず申し上げておきたいと思います。まず行ったのは、防衛力の抜本強化の内容の積み上げです。その結果として、5年間で緊急的に整備すべき防衛力整備計画の規模と5年後の2027年度に達成すべき防衛費の規模を導き出したということであります。あわせて、こうした防衛力の抜本的強化を補完する取組として、海上保安能力やPKO(国連平和維持活動)に関する経費のほか、研究開発、公共インフラ整備など総合的な防衛体制を強化するための経費、これを積み上げました。こうした積み上げの考え方が大前提であるということ、これをまず申し上げたいと思います。
 そして一方で、NATOを始め各国は、安全保障環境を維持するために経済力に応じた相応の国防費を支出する、こういった姿勢を今示しています。我が国としましても、国際社会の中で防衛力を強化していく、平和と安定を守る上で国際社会の協力が重要であるということをこの3文書の中でも強調しています。こうした国際社会の協力が重要だという日本の姿勢を示す上で、GDP比で見ることは、指標の一つとして意味があると考えているところです。
 このため、2027年度において防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せて、そのための予算水準が現在のGDPの2パーセントに達するよう所要の措置を講ずることとした、こうしたことであります。
 そして、後半の所得税の負担の問題ですが、先ほども申し上げましたが、まず復興特別所得税については、復興財源の総額を確実に確保する、これは言うまでもないことでありますが、その上で減税分に相当する税率1パーセントの新たな付加税をお願いすることといたしました。そして、そのことが御質問のように課税期間をトータルで見れば負担総額が増えるのではないかという御指摘がありました。これはこの間の記者会見でもそうですが、今回も説明の中で申し上げましたが、現下の厳しい経済環境の中で所得税の負担、これが増えることはないようにしなければならない。こういったことを申し上げました。今回の措置によって、当面、15年後の2037年までは所得税の負担は増加いたしません。しかし、その後、課税期間が延びることで、2038年以降も付加税が続く、そうしますと負担が出てくるのではないか、こういった議論でありますが、これについては15年先まで経済成長と賃上げの好循環の実現、経済政策として従来からこうした好循環を実現し、持続可能性をしっかりと回復しなければいけない、こういったことを申し上げてきました。こうした経済全体の中で負担感を払拭できるように政府として努力をしていく、こうしたことを併せて進めることによって、国民の皆様の理解を得ていく努力をしていかなければならない、このように思っております。

(内閣広報官)
 それでは、ロイターの杉山さん。

(記者)
 ロイター通信の杉山です。
 安全保障と経済成長に関する質問です。国家安全保障戦略には、安全保障を支えるために経済財政基盤の強化が重要との指摘があります。総理は昨日、Appleのティム・クックCEO(最高経営責任者)と面談し、雇用や投資について意見交換をされました。政府も今後、民間の国内投資拡大に向けた取組を後押ししていくと承知していますが、製造業の国内回帰や海外からの投資呼び込みに向けてどのような方策を採っていくお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず過去、日本の企業の多くは、円高等によって海外に製造拠点を移転してきました。一方で今、足元では円安基調であり、状況が変わってきているということです。また、経済安全保障の重要性が認識され、サプライチェーンの安定性が投資判断に大きな影響を持つようになる中で、安定的な投資先として日本の魅力、これはますます高まっていると思います。こうした投資環境をいかして、投資を引き出すための呼び水として、先日成立をした補正予算において、7兆円規模かつ複数年にわたる戦略的な投資支援を盛り込みました。半導体、蓄電池、ワクチン、食料などの戦略的な物資の国内の製造拠点整備、これにつなげていきたいと思います。さらに、海外からの投資を積極的に呼び込むために、対日直接投資の促進に向けた新たなアクションプランを春に取りまとめるとしております。
 先般、国内投資拡大のための官民フォーラムを開催いたしましたが、その際に経団連の十倉会長から、5年後にはバブル期に匹敵する過去最高水準である毎年100兆円の投資という見通しが示されたように、日本経済に変革の兆しが見えていると感じています。既に日本企業においても製造拠点を日本に戻す動きが見られています。この機を逃さず、日本企業での国内での立地拡大、企業の国内回帰、そして海外企業においても海外企業の投資拡大に政府として全力で取り組んでいきたいと考えています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、テレビ東京、篠原さん。

(記者)
 テレビ東京、篠原です。
 今週の岸田総理の自民党役員会での発言についてお伺いいたします。防衛増税について、当初、自民党は、総理が、国民が自らの責任としてしっかりその重みを背負って対応すべきものと発言したと紹介しまして、国民の中からはこの発言について、増税について上から目線だという批判も起こりました。その後、自民党側は、岸田総理は正しくは、今を生きる我々が自らの責任として、と発言していたと訂正いたしました。
 ここから質問なのですが、そもそもの総理の発言の真意はどこにあったのかということと、ニュアンスは実際とは違ったようですけれども、上から目線という批判が起こったことについてどうお答えになるのか、総理のお言葉でお聞かせください。また、実際の総理の発言と党側の発表に齟齬(そご)が生じた経緯についてもお聞かせいただければと思います。

(岸田総理)
 これはかねて申し上げているように、私は自民党役員会において、国民の皆様の平和で豊かな暮らしを守るために、今を生きる我々が未来の世代に責任を果たすために御協力をお願いしたい、このように申し上げました。これが事実であります。しかし、その後、それがマスコミの皆様に伝えられる中で、批判を浴びるような文言に変わってしまっていた、こういったことであります。
 この発言の紹介の齟齬(そご)については、事務的なミスが原因であると思っています。今後はこのようなことがないよう、徹底していきたいと思っています。是非、私が実際発言した発言はどういう発言だったのか、これについてはしっかりと紹介させていただくとともに、その意味は正にその文章そのものであります。是非、私たちの世代が責任を果たしていくことの大切さを訴えた私のこの思いを国民の皆様にも御理解いただき、御協力いただきたいと思っております。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次、河北新報の吉江さん。

(記者)
 河北新報の吉江と申します。よろしくお願いします。
 与党は防衛費増額の財源に復興特別所得税を充てる方針を決めました。被災地からは復興に遅れが生じるのではないかという懸念が出ております。特に福島は廃炉への道筋も不透明で、再生は始まったばかりです。なぜ今、復興特別所得税に手を付けようとされているのでしょうか。ほかに選択肢はなかったのでしょうか。総理の認識を伺います。

(岸田総理)
 まず、復興財源については、所得税額に対して2.1パーセントをお願いしている復興特別所得税を1パーセント引き下げるとともに、課税期間を延長し、復興財源の総額、これは確実に確保するということを説明させていただいております。その意味は、廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、これからも福島を始め被災地の復興のためには息の長い取組が必要であると考えます。こうした息の長い取組についてもしっかりと支援できるよう、引き続き責任を持って取り組んでいく、こうしたことから、この期間の延長等も考えたということであります。そして、その上で、この減額分に相当する税率1パーセント、ここに新たな付加税をお願いする、このようにした次第であります。
 重ねて申し上げますが、復興財源については総額、全く変わりはありませんし、また、引き続き息の長い対応をしっかり支援していかなければいけない、こういった姿勢を政府として示していくことも大事であると思います。いずれにせよ、このありようについての説明を含め、被災地の方々に寄り添った政府の姿勢や説明がこれからも重要であると認識しております。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方、日経新聞、秋山さん。

(記者)
 日経新聞の秋山です。お願いします。
 防衛費増額の財源について伺います。今回、法人税についての付加税方式で税制措置をすることが決まりました。法人税を増税するとなった場合に、先ほど総理の説明では対象は6パーセントの法人という御説明もありましたが、日本経済を引っ張る大企業などが対象になるわけで、賃上げや設備投資などに水を差すという指摘もあります。こうした懸念についてどのように応えられるのか、お考えをお願いします。

(岸田総理)
 これも度々申し上げておりますが、経済対策と防衛力の強化に対する考え方、これは整理をして論ずる必要があると思っています。私は一貫して、経済あっての財政という立場を主張させていただいております。だからこそ、つい先日も多額の国債を発行して、39兆円の総合経済対策を講じ、足元の物価高、円安への対策、構造的賃上げに向けた支援、半導体など重点分野への7兆円の投資など、こうしたことを盛り込んだ経済対策をまとめたということであります。来年度の予算編成や税制改正においても、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の先行投資ですとか賃上げ支援、NISA(少額投資非課税制度)の抜本拡充などを進める。また、賃上げや設備投資を進めてまいります。このように、賃上げや設備投資、岸田政権における経済運営政策の最重要課題である、こういった姿勢はこれからもしっかり維持してまいります。
 しかしながら、今、議論しているのは、国民の命、暮らし、事業を守るために、我が国の防衛能力を抜本強化する、こうした話であります。これについては、責任ある財源を考えるべきである。裏付けとなる安定財源は、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が対応すべきものである、このように考えております。
 先ほど申し上げた全体の6パーセントということ、これは決して過小評価しているわけではありません。こうした防衛力強化は、シーレーンの確保あるいはサプライチェーンの維持、抑止力の強化による市場かく乱リスクの低減、これは経済界にとりましても、円滑な経済活動に直接資する、こうした課題でもあるということをしっかり御理解いただき、余力のある方々にはできるだけ御協力いただきたい、こういった姿勢で丁寧に説明させていただいている。こうしたことでして、これからも説明していきたい、このように思っております。

(内閣広報官)
 それでは、次に、朝日新聞の石松さん。

(記者)
 朝日新聞の石松です。よろしくお願いします。
 敵地攻撃能力、反撃能力についてお伺いします。決定した安全保障関連3文書では、反撃能力について、相手からのミサイル攻撃がなされた場合、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に与えられる能力と定義し、相手の領域で有効な反撃を加えることができるとしましたが、従来の政府見解では、相手のミサイル発射前でも、攻撃の着手を確認できれば敵地を攻撃できるとしてきました。今回の反撃能力は、攻撃着手の確認時ではなくて、相手からのミサイル攻撃がなされた場合と定義づけられていますが、すなわち、発射後に限られるということなのか、見解を教えてください。

(岸田総理)
 これは、当然のことながら、具体的な我が国の安全保障の体制、システムをどう構築していくかということですから、今言った御質問に答えることは控えなければならないと思いますが、私も外務大臣時代、随分と国際法について議論を行いました。特に平和安全法制の議論、担当大臣でしたので、この議論を行いましたが、国際法上、先制攻撃は国際法違反であります。よって、この着手というのは、論理上は大変重要でありますが、その着手の見極めというのは、いろいろな説、学説がありますし、国によってもいろいろな扱いがあります。この辺は大変難しい課題であります。しかし、その中にあっても、日本は国際法をしっかり守ってまいりますということを申し上げているわけですから、その範囲内で日本が対応できるような体制を具体的につくっていかなければならない、このように思っています。
 それ以上具体的な対応について申し上げることは、正に安全保障の機微に触れることでありますので、私の立場からは控えなければならないと思っております。

(内閣広報官)
 それでは、大変恐縮ですが、あと2問とさせていただきます。
 それでは、大川さん。

(記者)
 フリーランスの大川興業の大川豊です。よろしくお願いします。
 連日の公務、お疲れさまでございます。
 国防についてお伺いいたします。かつて、世界恐慌の頃に、高橋是清大蔵大臣は国債を積極財政で発行し、軍備増強と農村を救済いたしました。そのときに、軍備増強をすることによって重化学工業が発展し、日産コンチェルトなどが生まれました。
 今回のこの国防において、例えばウクライナの戦争でも暗号の戦いが行われております。日本でも量子コンピューターの暗号などの、暗号を制するものが世界を制すると言われております。こういった防衛費の増強と科学技術が、今、グレーゾーンになりつつあります。こういった融合も含めて、どのようにお考えか聞かせていただければと思います。

(岸田総理)
 先ほど申し上げたように、軍事、非軍事の境が曖昧になってきているというのが国際社会の現実だと思います。その中にあって、各国は総合的な防衛力を考えなければいけない。伝統的な外交・安全保障だけではなく、御指摘のような技術ですとか、経済も含めた総合的な安全保障を考えていかなければいけない。これが現実であると思います。
 いずれにせよ、先ほど申し上げたように、日本としては、憲法、国際法、国内法、そして専守防衛を始めとする基本的な姿勢、こうしたものはこれからも堅持していきます。その中で、科学、様々な技術をどのように国民の命や暮らしを守るために活用していくのか。これを考えていく。これは政治の大きな責任だと思います。憲法を始めとする様々な枠組みをしっかり守りながら、そうした技術についても考えていくことが国民の皆様の安心や理解にもつながると思います。是非この辺り、政治としてしっかりと説明責任を果たしながら、必要とする技術等についてもありようを考えていきたいと思います。
 それ以上はちょっと、具体的にどうこうは、細かくは申し上げません。基本的な、今言ったような考えた方に基づいて対応していきたい、このように思っています。

(内閣広報官)
 それでは、最後に、中国新聞の樋口さん。

(記者)
 中国新聞の樋口です。よろしくお願いします。
 将来にわたっての防衛費の増額について伺います。今後5年間で今の43兆円を確保するということで、これは類を見ない規模の増額だと思うのですけれども、とりわけ平和を願う被爆地広島からは、今回の増額というのが際限のない軍拡競争につながって、最終的には戦争のリスクが高まってしまうのではないかという懸念が上がっております。
 先ほど総理も会見の中で、今後5年間、それ以降も防衛力を維持・強化すると明言されました。かねて、核兵器のない世界というのを掲げて、非戦の考えを訴えておられる被爆地選出の総理として、こうした被爆地の声にどういうふうに応えるのか、考えをお願いします。

(岸田総理)
 改めて、政府の考え方を丁寧に説明していかなければならないと感じています。これは、新たに取りまとめる3文書と、それに基づく安全保障政策は、戦後の安全保障政策を大きく転換するものですが、先ほど来申し上げているように、平和国家としての日本の歩み、これは全く不変であります。日本国憲法を始めとする法体系をしっかり守り、その範囲内で考えていくものであります。そして、我が国の抑止力、対処力を向上させることで、我が国への現実的な武力攻撃の可能性を低下させる、こうした考え方に基づいて対処力、抑止力を向上していくことが重要であると考えています。
 そして、さらには、我が国にとって好ましい国際環境を実現するためには、何と言ってもまずは外交力であります。そして、外交力にはその裏付けが必要です。やはり我が国が国民を守れる、しっかりとした体制を持っていることが外交力の裏付けとなる。また、外交交渉を行う際においても、外交における説得力にもつながる。こうしたものだと考えて、我が国としてこうした防衛力の整備を行っている。このことを国民の皆様のみならず、国際社会にも丁寧に説明をすることによって、我が国が防衛力を強化するというのはどういう意味なのか、何を目指しているのか、これを丁寧に理解していただく、こういった努力をこれからもしていかなければならないと考えています。
 御指摘のような懸念に対しても、是非丁寧な説明を行うことによって、なぜ今、私たちは防衛政策について考えなければいけないのか、防衛力を強化していかなければいけないのか、こういったことについての理解につなげるよう、政府としても努力をしていきたい、このように思っています。

(内閣広報官)
 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
 御協力ありがとうございました。

関連リンク

これまでの総理の演説・記者会見など