岸田内閣総理大臣記者会見

更新日:令和6年3月28日 総理の演説・記者会見など

【岸田総理冒頭発言】

 本日、令和6年度予算及び税制法案が成立いたしました。関係者の御協力に御礼を申し上げます。
 震災対応を始め、重要施策を全速力で実行してまいります。令和6年度予算の1兆円の予備費の機動的な使用決定に向けて、被災地のニーズの酌み取りを始めるとともに、被害状況を踏まえ、被災地への復興基金設置の取組を進めます。
 今回の予算や税法には、物価高を乗り越える所得増に向けた政策が数多く盛り込まれています。本日は、その実現のための道筋をより大きな視点から御説明をさせていただきます。
 なお、今後、政治資金規正法の改正等に本格的に取り組んでまいります。政治とカネをめぐる諸問題については、質疑の中で丁寧に説明をさせていただきます。
 私が衆議院議員に初当選してから約30年、デフレ経済をずっとこの目で見てきました。その間に主流だった議論は、企業の生産性が上がれば賃金が上がるというものでした。しかし、実際には企業収益が最も伸びたときですら、労働者の賃金は上がりませんでした。
 2021年10月に私が政権を預かることとなった際、「新しい資本主義」を提唱し、成長と分配の好循環、賃金と物価の好循環を実現することこそが、私の使命だと思い定めました。
 すなわち、まず賃金が上がる。その結果、消費が活発化し、企業収益が伸びる。それを元手に企業が成長のための投資を行うことで、生産性が上がってくる。そして、それにより、賃金が持続的に上がるという好循環が実現する。これによって、コストカット型の経済から成長型の新たな経済ステージへと移行していくことができる。
 そのためには、長年にわたり染み付いたデフレ心理を払拭し、賃金が上がることは当たり前との方向に、社会全体の意識を一気呵成(いっきかせい)に変えなければならない。この強い確信の下、所得と成長の好循環に向けて、賃上げ、設備投資、スタートアップ、イノベーションを同時に拡大する思い切った手を打ってきました。時代に沿った新たな官民の連携を粘り強く呼び掛けてきました。
 今、我々は、デフレから完全に脱却する千載一遇の歴史的チャンスを手にしています。昨年を大きく上回る春闘での力強い賃上げの流れ、労使の賃上げへの取組が大きく変わりつつあります。史上最高水準の設備投資、攻めの姿勢の企業が増え、海外からも大型戦略投資が相次ぎます。史上最高値圏の株価、変革を高く評価する市場と新NISA(少額投資非課税制度)に乗り出す個人投資家が主役です。こうした変革の勢いを見て、いよいよデフレ脱却宣言かと言われる方もおられます。
 しかしながら、我が国のデフレ脱却への道は、いまだ道半ばです。抜け出すチャンスをつかみ取れるか、後戻りしてしまうか、これからの対応次第です。豊かな日本を次世代に引き継げるか否か。我々は数十年に一度の正念場にあります。これが経済の現状についての私の基本認識です。
 だからこそ、春からの賃上げに加えて、6月からは一人4万円の所得税・住民税減税を行い、可処分所得を下支えすることとしました。官民が連携して、物価高を上回って可処分所得が増えるという状況を確実につくり、国民の実感を積み重ねていきます。
 賃金が上がることが当たり前という前向きな意識を、社会全体に定着させていきます。物価と賃金の好循環を回し、新たな経済ステージに移行する上で最大の鍵は、全従業員の7割の方が働く中小企業の賃上げと稼ぐ力の強化です。総合的・多面的な対策を全力で講じてまいります。
 第1に、適切な価格転嫁です。サプライチェーンの中で、大企業のみならず、中小企業にも適切に利益等が分配されなければなりません。このため、労務費の適切な転嫁が行われるよう、あらゆる手を尽くしていきます。
 まず、賃上げを阻害する下請法違反行為について厳正に対処します。下請法違反行為については、1月以降だけで8社に勧告を実施しました。下請法の運用基準の強化を含めて、執行を強化します。
 独禁法については、3月には公正取引委員会が、取組が不十分な事業者10社の企業名を公表する異例の対応をしました。引き続き労務費転嫁のための指針が徹底されているかを調べ、取引の改善を図るとの報告を受けています。
 第2に、きめ細かい賃上げ支援です。賃上げ促進税制については、赤字企業も対象とし、中小企業全体の8割をカバーする、前例のない繰越控除措置が、4月から動き出します。
 全就労者の14パーセントを占める医療や福祉の現場で働く方々に対しても、賃上げ実現が確実に届くように新たな仕組みを導入しました。建設業や物流業での賃上げのため、各種労務単価を大幅に引き上げます。また、個々の工事の下請契約等に反映させるための法案や、トラックドライバーの大幅賃上げのための法案を提出しました。
 第3に、中小企業の人手不足対応の強化です。中小企業向けに省力化投資、自動化投資の支援を集中的に実施いたします。また、リ・スキリングを通じた労働生産性の向上、シニア世代の技術や知見を無理なくいかす仕組みづくりなどに取り組みます。
 第4に、働く方への支援です。最低賃金についても、2030年代半ばまでに1,500円となることを目指すとした目標について、より早く達成できるよう全力を挙げています。パートや非正規で働く方の「年収の壁」対策については、既に20万人を超える方が、新たな支援制度の活用を予定しています。より多くの方に「壁」を乗り越えていただけるよう、引き続き予算面での制約を受けることなく、支援を拡大してまいります。
 若い子育て世代への支援に向けては、児童手当の抜本的拡充、高等教育の負担軽減、児童扶養手当の拡充、育児休業給付の充実など、長年指摘されながら実現できなかった施策が動き出します。
 中小企業を含め、日本の稼ぐ力を復活させる上で今後重要なのは、低廉で強靱(きょうじん)なエネルギーです。エネルギーの輸入によって海外に数十兆円が流出している現状は変えなければなりません。エネルギー安全保障が確保され、脱炭素につながり、国内で稼ぐ力を強くするエネルギー構造に転換していくための国家戦略の実行が不可避です。今後、2024年度中をめどとするエネルギー基本計画改定に向けて、議論を集中的に行います。
 さらに、同計画の裏打ちとなるGX(グリーン・トランスフォーメーション)国家戦略を、昨年のGX推進戦略を更に発展する内容として展開します。
 先週、日銀が、17年ぶりの金融政策の変更をしました。10年以上にわたって続いてきた異次元の金融緩和政策について、新たな段階へ踏み出すと同時に、前向きな経済の動きを更に確実なものにするとの観点から、緩和的な金融環境が維持されることは適切であると考えています。デフレ完全脱却のための最大の正念場に当たって、政府と日銀は、緊密な連携を堅持してまいります。
 最後に、国民の皆様に物価高を乗り越える二つの約束を明確に申し上げます。まず、今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現します。そして、来年以降に、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させます。
 私からは以上です。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これからプレスの皆様より御質問いただきます。質問をされる方は、挙手の上、指名を受けてから、お近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、一人1問、御質問をお願いいたします。
 まず、幹事社から御質問いただきます。
 では、NHKの相澤さん。

(記者)
 NHKの相澤と申します。
 総理は先ほど、今の経済状況を「デフレ完全脱却のための最大の正念場」と表現されました。このデフレからの完全脱却について、具体的にいつを目指して政策を推進していくのか伺います。例えば、所得減税などを行う6月以降の夏なのか、あるいは遅くとも年内など、目指す時期が念頭にあれば伺いたいと思います。
 また、脱却宣言に向けては、経済指標を総合的に見るとされていますが、最後は総理の政治判断となるのか、それとも専門家が客観的に確認する仕組みのようなものを設けるのか、この判断プロセスをどう考えているかについても併せて伺います。

(岸田総理)
 まず、マクロ経済分析の観点からは、デフレ脱却の判断は経済財政政策や経済分析を担当する官民の専門家が、種々の経済指標を十分に検討して行っていくものであると考えています。
 ただ、政治的に申し上げるとするならば、バブル崩壊以降30年にわたり、低物価・低賃金・低成長が続き、物価が上がらないというデフレ心理が、日本に定着してしまいました。その結果、企業は投資、あるいは労働コスト、こうしたコストカットを優先する、こういった経済に陥りました。過小投資は、イノベーションの基盤を弱めます。生産性の低下をもたらします。そして、労働コストのカットは、人的資本の蓄積を遅らせます。新たなスキルや、あるいはビジネスモデル、こうした導入を阻害することになります。
 こうした状況を脱却し、分配と成長の好循環をしっかり回し、デフレ心理を一掃し、そして新たな経済成長のステージに移行する。これが政治の立場から申し上げるデフレからの完全脱却であると思います。
 前向きな兆しが随所に出てきています。完全脱却へ30年ぶりのチャンスを迎えています。そのチャンスをつかみ取り、後戻りさせない。私の政権の存在意義はそこにあるという強い覚悟を持って取り組んでいきたいと思います。このようにマクロ経済分析からの判断と政治的な判断、それぞれ、私自身は今申し上げたように考えております。

(内閣広報官)
 それでは、続きまして、幹事社の西日本、黒石さん、どうぞ。

(記者)
 西日本新聞の黒石です。よろしくお願いします。
 4月の補欠選挙についてお伺いします。自民党は、現時点で三つの選挙区のうち、長崎3区と東京15区については候補者を擁立しておりません。ただ、地元を取材しますと、政治改革だったり、経済政策だったり、政権与党としての旗をしっかりと掲げて戦うべきではないかという主戦論も根強くあります。このまま不戦敗になるのか、それとも自民党として独自の候補を擁立するのか、総裁としてのお考えを教えてください。
 また、自民党内では、この補選を3連敗というふうになると、いわゆる「岸田降ろし」が始まるという見方も広がっています。総理・総裁として、この補選の重要性をどのように位置付けて、どのような訴えをもって、この補選に臨まれるお考えでしょうか。あわせて、この三つの選挙区はいずれも、自民党が議席を持っていました。3連勝を目指すのか、勝ち越しを狙うのか、勝敗ラインについてはどのようにお考えでしょうか。
 最後に、補選を前に総理が衆議院を解散するのではないかという臆測も依然としてあります。補選の前に、補選を戦わずに、一気に解散総選挙に打って出るという選択肢は、総理の中にあるのでしょうか。そこも併せてお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 随分たくさん聞かれましたが、まず、勝敗ラインについて御質問がありました。勝敗ラインについては、今正に指摘されたように、二つの選挙区においては候補者、対応を検討中の状況です。まずはこの二つの選挙区について、どういった準備をして、選挙を戦うのか、これを至急、今、詰めさせているところです。検討中ですから、この段階で勝敗ラインまで申し上げることは難しいと思います。まず体制を整えた上で、全体の体制の中で、勝敗ラインも考えていくことになると思います。
 それから、何を訴えていくかという点について御質問がありましたが、もちろんこの補欠選挙、三つとも、政治状況ですとか、経緯ですとか、それから地元の事情、これは様々です。それぞれ、そうした政治状況等に影響を受けるわけではありますが、やはり自民党、与党として選挙に臨むわけでありますから、自民党としての訴えを行う大変重要な、大切な機会であるということをしっかりと思い定めて、今の現状、国民の皆様の大変厳しい声の中での選挙、厳しい御意見を受けながらの選挙になるとは思いますが、訴えをしっかり行っていきたいと思います。例えば、政治への信頼回復、自民党改革、これもしっかり示していかなければなりませんし、何よりも先ほど申し上げました経済再生、この実感を国民の皆様に届ける、こういったことも訴えていかなければならないと思いますし、さらには、災害ですとか厳しい国際環境の中で、国民の命や暮らしを守る、この実行力を持っているのはどの政党なのか、自民党・公明党、与党であるというようなこと、これらを強く訴えていかなければならないと思います。
 そして、解散についてお尋ねがありました。これについては、繰り返し申し上げていますが、今、政治への信頼回復、そして経済の再生、賃上げ、これは先送りできない課題、こうした課題に一意専心取り組んでいく。これに尽きると申し上げています。それ以外のことを今は考えておりません。この思いは変わっておりません。

(内閣広報官)
 ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。質問は1問ずつ簡潔にお願いいたします。
 それでは、読売の森藤さん。

(記者)
 読売新聞の森藤と申します。
 自民党の派閥の政治資金規正法違反の問題についてお伺いします。総理は自ら、安倍派の元幹部の方から二日間にわたって聞き取り調査を行われました。安倍元総理は還流の取りやめを命じたにもかかわらず、安倍元総理の死去後に取りやめるための対応を採らなかった幹部の方々の政治的・道義的責任について、どのようにお感じになったのか。また、還流や中抜きの不記載があった議員の処分を含めて、処分の対象とする範囲や派閥の中での立場による責任の差、また、党紀委員会を開催する時期などについて、どのようにお考えかについてお聞かせください。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず、現在、自民党の執行部において、追加の関係者の聞き取りを行っています。そして、必要があれば更に聴取を行うことを考えておりますし、また、できれば来週中にも処分が行えるよう、プロセスを進めていきたい、こうしたことを考えています。
 その中で、還流の経緯についてどう思うかという御質問もありましたが、これは今、関係者の聞き取り調査を行っているさなかでありますので、内容について、聞き取り調査を行っている私の立場から、今の時点で何か申し上げるのは、これは控えなければならないと思います。
 そして、その上で、政治責任の果たし方ということで御質問いただきましたが、検察の捜査によって、刑事責任については一定の結論が得られているところでありますが、関係者は政治家でありますので、政治責任、道義的責任、こうしたものを判断しなければならない。そして、その判断に当たっては、これまでも申し上げてきておりますが、不記載の金額や程度ですとか、それぞれの政治家としての役職や議員歴、さらには説明責任の果たし方を含む信頼回復に向けた努力の状況、こういったことを総合的に判断していくことになります。こうしたものを判断した上で、党紀委員会等の手続を経て、厳しく対応していきたいと思っています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 共同、中久木さん。

(記者)
 共同通信の中久木です。よろしくお願いします。
 日本人の拉致問題についてお伺いします。総理は、拉致問題解決に向けて、金正恩(キム・ジョンウン)氏との首脳会談を目指すとしていますが、北朝鮮側は、拉致問題は解決済みだとして主張しています。首脳会談が仮に実現したとしても、早期の拉致問題解決は難しいとの見方があります。総理が目指す日朝首脳会談についてですが、拉致被害者の帰国を一気に実現させるという狙いなのか、あるいはまずは交渉の窓口を開くという位置付けなのか、総理の狙いについてお伺いします。

(岸田総理)
 御指摘の北朝鮮側のコメントについて、一つ一つ申し上げることはいたしませんが、日朝間で実りある関係を実現することは、日朝双方の利益にも合致する、また、地域の平和と安定にも大きく寄与する、このような私の考え方、これは変わってはおりません。是非、日朝間の諸懸案解決に向けて努力していきたいと思っております。
 そして、今、御質問の中で、拉致被害者の方々、一気に帰国を実現するのか、まずは交渉の窓口を開くのか、具体的な手法についての御質問がありましたが、これは相手のあることであります。従来の日本の諸懸案解決に向けた基本方針を実現するために、引き続き私直轄のハイレベルでの対話を行っていきたいと思います。その中で、是非こうした拉致問題を始めとする諸懸案解決を動かしていきたいと強く願っています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次、ロイター、杉山さん。

(記者)
 ロイター通信の杉山です。よろしくお願いします。
 為替と金融政策に関する質問です。日銀がマイナス金利政策を解除した後、円安が進行し、ドル円が2022年10月に円買い介入が実施された水準まで来てしまいました。円安は一般的に輸出企業の業績を支えるとされ、株主還元や賃上げの余力を生み出すことなども見込まれますが、円安阻止のための介入の必要性を感じますでしょうか。
 また、総理は日銀の金融政策について、緩和的な金融環境が維持されることは適切という認識を示されました。具体的な金融政策の手法は日銀に委ねられているというふうに理解しておりますが、賃金と物価の好循環やデフレに後戻りしない状況をつくり出すためには、日銀が追加利上げを慎重に判断するということを期待されているのでしょうか。御見解をお願いいたします。

(岸田総理)
 まず、為替介入については、当然のことながら、私の立場で具体的に申し上げることは、市場に影響を与えることになります。これは控えなければなりませんが、いずれにせよ、為替相場はファンダメンタルズを反映し、そして安定的に推移する、これが重要であると思います。少なくとも過度な変動は望ましくない。これは確かであると考えます。政府として、高い緊張感を持って為替動向についても注視していきたいと思いますが、行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せず適切な対応を採りたい、これが政府の基本的な考え方です。
 そして、日銀との関係ですが、日銀総裁と面談いたしました。その際に、10年以上続いた異次元の金融緩和政策について、新たな段階に踏み出すということ。そして第2に、この前向きな経済の動きを更に確実なものとする観点から、緩和的な金融環境が維持されること、この二つを同時に日銀が表明した、このことは適切であると申し上げました。
 そして、追加利上げを期待しているのかというお話もありましたが、これについても申し上げるのは控えなければならないと思いますが、いずれにせよ、日銀と政府は、密接に連携していかなければなりません。先ほど来申し上げておりますように、デフレからの完全脱却、新たな成長型経済への移行、こうした方向に向けて、今、正念場にあるわけでありますから、政府としても、あらゆる政策を総動員していきたいと思いますし、それに対して日銀も是非、密接に連携しながら対応していただくことを期待いたします。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、TBSの川西さん。

(記者)
 TBS、川西です。
 政治資金の問題で、追加でお伺いさせてください。端的に、まず、これまでに行った聴取の中で、森元総理の扱いがちょっとまだ私ども、分からないところがあるので、そこについてのお考えを一つというのと、追加聴取の中で、二階元幹事長ですとか、もちろん総理御自身の聴取というのはされていないと思うのですが、これはお二人の評価は固まっている、若しくは処分について方針がある程度見えてきたからやっていないという理解でよろしいのでしょうかという点。
 最後に、政治の信頼回復が最優先ということで、解散も考えていらっしゃらないということでした。国会の中でも、処分を行うまでは解散しないという発言もあったと思うのですが、政治資金規正法改正が今後、メインイシューとなる中で、それが終わるまではやはり解散もされないという、そういう理解でもよろしいのでしょうか。

(岸田総理)
 まず、最初の質問、今、自民党として追加の聞き取り調査を行っているわけですが、これは政治責任を判断する上で、今一度、国民の皆様の様々な疑問の声ですとか、それから、これまで国会においても様々な政倫審の弁明など取組が進められてきました。その中で疑念として残っていることについて、政治責任を判断する前に今一度、関係者の話を聞かせていただこう、こういった趣旨で行っています。誰を対象にするのか、それから、これから誰を呼ぶのかとか、そういったことについては明らかにしない中で、聞き取りを行ってきました。政治責任を判断する上において必要な聞き取りを行う、必要があるならば、そういった聞き取りを行うことを考えている、こういったことであります。対象はどうするのかということについては、そういった考え方であります。
 それから、処分とか判断、もう決まっている人間がいるのではないか、そういった質問がありました。これはまだ何も決まっておりません。今、政治責任を判断するために聞き取り調査を行っています。それを行った上で政治責任を判断するわけでありますから、判断や処分についてはこれからということであります。
 さらには、解散についてですが、政治資金規正法についてはこの国会中にやる、このことについては再三申し上げています。強い決意を申し上げているところであります。一方、解散については今、何も考えていないということ、これは申し上げたとおりであります。信頼回復を始め、先送りできない課題に集中してまいりたいと思っています。

(内閣広報官)
 信濃毎日、牛山さん。

(記者)
 信濃毎日新聞の牛山と申します。
 総務省が2023年、昨年まとめた人口動態報告を見ても、東京一極集中が、コロナが落ち着いて再び加速しています。地方から大都市へ若者、それから女性、外国人労働者までも流出しているという状況です。地方あっての日本だと私は思います。政府におかれては、今一度、強力で総合的な地方重視の政策を講じることについてお考えがないかどうかお伺いします。

(岸田総理)
 私の政権においても、デジタル田園都市国家構想等の取組を通じて、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指す、こういったことを申し上げているわけですが、こうした社会の実現をする上で、東京圏への過度の集中の是正を図っていく、これは重要な取組であると考えます。このために、地方から成長を目指すデジタル田園都市国家構想の下、地方移住ですとか企業の地方移転、また、デジ田交付金を活用した地方創生に資するリモートワークや転職なき移住の推進、地方交通の維持、さらには確保、そしてインバウンドを含めた観光振興、こうしたことを通じて地方への人の流れを太くする、こういった施策を進めてきました。
 また、半導体を始めとした国内外の企業による地方への投資促進のための支援策、また、若年層を対象とした移住支援策、進学を機に地方から東京圏に流入した若者たちを、地方への就職活動にかかる交通費を支援するという形で、地方に向けて流れをつくっていく、さらに、就職に際して移転費を支援する、こうした2段階での施策強化も考えているわけですが、こうした取組等を通じて、全体として地方への流れ、地方創生を実現していく、こういった取組を今の政権においても行っている次第であります。

(内閣広報官)
 フジテレビ、瀬島さん。

(記者)
 フジテレビ、瀬島です。よろしくお願いします。
 総理の国賓訪米についてお伺いします。訪米中には首脳会談のほかに、安倍(元)総理以来となる議会演説も行われる予定ですが、どういったことに力点を置いて、どのように岸田カラーを打ち出すのか教えてください。また、フィリピンも交えての会談が行われますけれども、特に対中国での連携強化をどのように進めるお考えでしょうか。
 一方で、トランプ前大統領の再選の可能性として、「もしトラ」ということが指摘される中での訪米となりますが、その「もしトラ」の影響とか、今後の日本の対応をどのようにお考えでしょうか。

(岸田総理)
 訪米については、御指摘のように、議会演説ですとか、日米比3か国の首脳会談ですとか、こうした予定に向けて鋭意準備を進めているところですが、まず、米国の選挙についてもお話がありましたが、米国国内の選挙にかかわらず、国際社会がこうした複雑な、多様な課題を抱える中にあって、日米の固い結束、日米同盟の重要性、これはますます高まっていると認識しています。まず、今回の米国への公式訪問を通じて、日米両国の緊密な連携、強固な日米同盟を世界に示す、こうしたことは大変重要であると考えます。国際社会が歴史的な転換点を迎える中にあって、法の支配に基づく国際秩序を維持・強化する、自由で開かれたインド太平洋を実現するために、日米比3か国の連携を今回の訪米において力強く打ち出す、これは大変重要な取組であると思います。
 そして、選挙に絡めて申し上げるならば、米国の国内の政治情勢、これは党派を超えて、今の国際情勢の中で日米同盟が重要であると、日本と米国の関係、経済も含めて、日米関係は重要であるということ、これは共通認識として存在する、そして強まっていく、このように確信しています。「もしトラ」というお話もありましたが、選挙情勢にかかわらず、日米同盟の重要性を改めて世界に示すということは重要なことであると考えます。
 以上です。

(内閣広報官)
 毎日新聞の田辺さん。

(記者)
 毎日新聞の田辺です。よろしくお願いします。
 皇位継承についてお尋ねします。皇位継承の在り方については、国会で議論されているところだと思うのですけれども、ただ、なかなか今、進展が見えていない状況です。一刻の猶予もないという中で、こうした現状についてどのようにお考えでしょうか。
 また、総理は以前、皇位継承の在り方について、女系天皇以外ということをおっしゃっていました。そのお考えは今も変わりないのでしょうか。また、その理由をお聞かせください。お願いします。

(岸田総理)
 まず、皇室典範特例法の附帯決議に示された課題については、現在、政府から衆参の両議長に報告をさせていただき、検討が行われているところであります。そういったことですので、内閣総理大臣の立場から今、御質問の、私のこの問題における考え方を申し上げることは、今は適切ではないと考えておりますが、自民党総裁として申し上げれば、我が党においても総裁直属の会議体を設けて、今年に入ってからも議論をスタートさせている。この問題について是非、自民党も議論をリードしていくべく努力を続けている、こうしたことであります。先日、党大会を開きました。その際の令和6年度の運動方針にも明記しておりますが、責任ある政権与党として、国会の議論にも資することができるように、安定的な皇位継承等について、自民党としてしっかり議論を深めていきたいと思っています。
 取りあえず以上です。

(内閣広報官)
 それでは、大変恐縮ですが、都合により、あと2問とさせていただきます。
 日経の秋山さん。

(記者)
 日経新聞の秋山です。
 財政運営についてお伺いします。プライマリーバランス(PB)は成長実現ケースで2025年度に1.3兆円赤字と今、試算しています。総理は、2025年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化が視野に入ると発言されていますが、(20)25年度のPB黒字の目標は今も達成可能だと考えていますか。現時点の試算から足りない部分の赤字を解消するためには、今後どのように取り組みますか。また、仮にこの目標が達成できるという場合に、2026年度以降の財政目標はどのように考えますか。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず、今年1月に示された中長期試算では、民需主導の高い経済成長、そして歳出改革を継続した場合、2025年度の国と地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化が視野に入る、こうしたことが示されていると承知しており、私の発言は、それに基づいたものであります。民需主導の高い経済成長を実現して、歳出改革をこれからも努力していかなければならないわけですから、政府としては、人への投資、三位一体の労働市場改革、あるいは非正規労働者の正規への転換、そして研究開発投資を推進する、こういった生産性の向上に取り組んでいかなければならないと思いますし、また、歳出改革の取組は継続し、歳出構造の平時化を進めていくことも重要であると思います。こうした取組を進めていく。まずは先ほど申し上げました経済を立て直し、その上で、財政健全化に向けても努力していく、こうしたことでありますが、御質問の2026年(度)以降の目標についてどうするかということにつきましては、正直、今現在はまだ決まっていないと思っています。先ほど申し上げました2025年(度)黒字化が視野に入る、こういったことを念頭に努力を続けていきながら、2026年(度)以降についても政府として目標等を考えていきたいと思います。
 以上です。

(内閣広報官)
 神保さん。

(記者)
 総理、よろしくお願いします。ビデオニュースの神保です。
 総理、先ほど政治資金規正法の改正に、今国会で全力で取り組むというお話を伺いましたが、政治資金規正法をどれだけ強化しても、現在のような政治資金収支報告書の公開方法を続ける限りは、実際にそれが守られているかどうかというのがきちんと確認することが、もうほぼ不可能になっているという状況だと思うのですね。それはウェブ上で公開はされていますが、何十万ページもある報告書が、実際はデータ化されていなくて、PDF状態で公開されているだけと。今回、神戸学院大学の上脇先生が本当に長い期間をかけて徹底的に調べた結果、ようやくパーティー券を買っている側と実際に売っている側との収支にギャップがあることをつかんで刑事告発したのが、実は今回の全ての発端だったわけです。ただ、それはものすごい時間と労力をかけないとできない。
 そこで総理の御認識を伺いたいのは、まず今の公開方法、これは先進国としては恥ずかしいレベルだと思いますけれども、これで本当に適切なのかどうか。今のようなPDFにしかなっていなくて、データ化もされていない、検索もできないし、ソーティングもできないというような状態で、果たして政治資金規正法が本当に守られるのかどうか、まず今の状態を総理がどう思われるか。
 それから、総務省への提出分に関しては、総理の一存で、総理がデータ化しろというふうに命じればできるわけです。河野大臣はデジタル大臣ですけれども、総務省との調整が必要で、苦労されているわけですよ。総理がデータ化しなさいというふうに命じれば、日本はすぐにデータ化して先進国並みの公開基準ができる。それをしてからではないと、法律を強化しても、誰も守られているかどうかがチェックできない状態のままでは意味がないと思うのですが、その辺のまず1点目は、現状を総理がどう思われているか。2点目は、それを改正するために総理が、改正ではないですね、法律改正は必要ないですから、データ化するためには。総理がそれを命じる、あるいは総務大臣にそれを指示されるおつもりはあるかどうか、その点をお願いします。

(岸田総理)
 まず、前半の方の話、我が国の政治資金の規正の在り様、恥ずかしいのではないかという御指摘がありましたが、我が国は、御案内のとおり、総務省ですとか、選管に対して政治資金収支報告等を行う。そして、総務省や選管は、形式的な管理をする、こういった状況にあります。
 一方、外国の中には、政治活動に対して実質的な監視を行ったり、必要によれば調査を行う、そうした強い権限を持つ組織がある、こういった外国もあります。この二つ、どっちがいいかということですが、やはり民主主義国家において、政党活動、政治活動は大変重要です。その政治活動に国家権力がどれだけ手を突っ込むのか。これのバランスの中で、それぞれの国の制度ができているのだと思います。より政党活動の自由を重視するか、それともこうした国による監督を強化するのか、このバランスの中でそれぞれの制度ができている、このように思います。
 ただ、後半おっしゃったように、デジタル化を通じて透明性を高めていく、こうした形式的なものであっても、管理をより正確に、透明度を持って行うことができる、こういったことは大変重要なことであると思います。
 ですから、政治資金規正法の改正についても、自民党のワーキンググループの議論の中で三つポイントを挙げておりますが、その一つはデジタル化を通じた資金の透明性の向上という部分であります。自民党の政治刷新本部の中間取りまとめの中にあっても、デジタル化等を通じて透明度を高める、これは当然やらなければならない。これは明記しているところであります。その方向で政治資金規正法を考える。さらには政府の取組を考える、こういったことはあるべき方向であると私も思います。
 以上です。

(内閣広報官)
 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
 大変恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。
 御協力ありがとうございました。

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