令和8年6月24日、高市総理は、総理大臣官邸で令和8年第8回経済財政諮問会議・第5回日本成長戦略会議の合同会議を開催しました。
会議では、戦略17分野の「主要な製品・技術等」における官民投資額、日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算及び地域未来戦略の政策パッケージについて議論が行われました。
総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
(高市総理)
皆様、お疲れ様でございます。大変な量の資料が出てまいりました。これまでも活発に御議論いただきまして、心より感謝を申し上げます。そして、委員の皆様のみならず、関係閣僚、そして、各府省庁の皆様の御尽力にも感謝を申し上げます。今日、合同会議ということで、ちょっと取りまとめ、長くなりますけれども、お許しください。
「日本列島を、強く豊かに。」訴えてまいりました。そのために、やはり長きにわたって低迷してきた我が国の潜在成長率を高める必要がございます。日本人の底力、すなわち、技術革新力や労働効率性などを表す数値は他国と遜色はありません。足りないのは、やはり国内投資でございます。
造船、ペロブスカイト太陽電池、次世代革新炉、量子コンピュータ、植物工場など、日本には世界をリードする技術がたくさんあります。
ノングルテン食品などの農水産加工品、観光資源、新しいロケット射場など、大きな潜在能力を持つ地域資源もたくさんございます。しかしながら、緊縮志向と単年度で予見可能性のない補正予算頼みによりまして、こうした技術を社会実装して、強い経済の実現につなげていくための国内投資を十分に引き出せていませんでした。
高市内閣では、行き過ぎた緊縮志向と未来への投資不足の流れを断ち切り、こうした技術を有する方々の社会実装、新たな市場獲得の挑戦を全力で後押ししてまいります。
「日本成長戦略」と「地域未来戦略」で、官民投資を誘発し、供給力を強化し、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収が自然増に向かう、GDP(国内総生産)拡大の下での好循環を実現いたします。
まず、城内大臣から報告がありましたとおり、フィジカルAI、オール光ネットワーク、量子コンピューティング、ロケット・射場、海洋無人機、次世代船舶、バイオ医薬品、ペロブスカイト太陽電池、植物工場、フュージョンエネルギー、ゲームなど、戦略17分野の「危機管理投資」「成長投資」の起爆剤として先行して検討を進めた主要な製品・技術等に関する「官民投資ロードマップ」が固まりました。
とりまとめに向けて、17分野それぞれにワーキンググループを設置し、有識者や投資の主人公たる産業界など、のべ186名の方々に御参加をいただき、合計で54回もの議論を重ね、目指すべき民間投資のあるべき姿を、官民で検討を重ねてきたと聞いております。
その準備に当たって、ある分野では、省庁の担当者たちが、100名近くの民間企業の方々から、具体的な投資計画やアイデアをお聞きするためにヒアリングを重ねて準備してきたとも聞いています。
62の主要な製品・技術等について、詳細に我が国の勝ち筋を明らかにした上で、期待される官民投資の規模が2040年までに総額370兆円を超えるという大変野心的な内容になっています。
例えば、フィジカルAIの官民ロードマップでは、我が国の豊富な現場データとものづくり基盤という強みをいかして、労働力減少を乗り越える形で導入を加速することで、国際競争力を獲得する道筋が示されています。予算編成改革を実施して、工場、物流、介護など幅広い分野でのフィジカルAI開発のベースとなる国産のマルチモーダル基盤を世界に先駆けて構築することで、2040年度までに10.5兆円、さらに、システムの中核を担う半導体と合わせると78.5兆円の官民投資を引き出します。
また、日本がゲーム、アニメ、マンガを中心に高い国際競争力を誇る「コンテンツ産業」につきましては、予算執行の一元化と官民の叡智の結集を実現する支援体制を通じて、2033年までに自動車輸出額に匹敵する年間20兆円の海外売上げを実現します。
高市内閣では、大小の産業クラスターを戦略的に形成することによって、地域での投資を促進し、働く場所を創り、それを支える人材育成のエコシステムを生み出します。これが「地域未来戦略」です。地域未来戦略は、成長戦略における17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点として産業クラスターを形成する「戦略産業クラスター計画」。また、都道府県が主体となって産業クラスターを形成する「地域産業クラスター計画」。さらに、市町村又は都道府県がその地域に根差す農水産業、食品加工業、観光・スポーツビジネス、伝統工芸品など、地域資源を活用した多様な産業の発展を促す「地場産業成長プラン」の3類型から成ります。黄川田大臣から報告があった地域未来戦略に基づく投資は、新たな投資枠も活用して強力に推進をしていきます。
また、「戦略産業クラスター計画」に関しては、「官民投資ロードマップ」記載の「危機管理投資」「成長投資」を起爆剤に、それを支えるインフラ整備や、産業クラスター形成に必要な鉄道や造船ドック、ロケット射場のような民間クラスター拠点の整備、17の戦略分野を支えるサプライチェーン投資について、各計画地域から具体的に提案されるものについて、既存の予算とは別枠で大胆に進めます。併せて、地域発のアイデアに基づく、地域産業クラスター計画や地場産業成長プランを強力に推進するため、それを支えるインフラ整備を同様に進めるとともに、地域未来交付金を拡充して、地方自治体が主体的に行う投資促進、販路拡大支援、経営力向上のためのソフト支援策などを支援し、自治体と連携して地域発のアイデアを積極的に後押しするため、国の中堅・中小企業向け設備投資補助金や人材育成支援策に地域未来枠を設けるべく検討を進めます。
こうした予算は、当初予算で大胆かつ計画的に措置することを前提に、既に国と地方自治体で連携して計画の策定が進んでいます。来月には、半導体、次世代船舶、ロケット・射場など17戦略分野の「戦略産業クラスター計画」や、地域の特色ある産業分野に着目した食品加工、水素、蓄電池など「地域産業クラスター計画」の第一弾の計画公表が行われます。
その後も、随時、計画の受付、公表を進めてまいります。予見可能性の高い予算措置の下で、国と地方自治体が二人三脚で、日本列島に「産業クラスターの花」を咲かせてまいります。
47都道府県全体で投資がしっかり進んでいるかを確認して、対策を講じていくために、各地域で投資がどの程度進んだかをきめ細かく把握し、国内投資マップを定期的に改訂・公表してお示ししていきます。
日本成長戦略を構成する「新技術立国・競争力強化」、「スタートアップ」、「金融」、「人材育成」、「労働市場改革」、「家事等の負担軽減」、「賃上げ環境整備」、「サイバーセキュリティ」の8つの分野横断的課題の検討では、官民投資ロードマップや地域未来戦略の策定過程において抽出された課題を踏まえて、産業競争力強化に貢献する高い研究力を有する中核大学群への支援、スタートアップ総力創出パッケージ、成長投資金融戦略、基盤的経費と多様な競争的研究費の充実・強化、リスキリング支援の強化、家事支援サービスなどへの税制措置、中堅・中小企業の稼ぐ力強化戦略、サイバーセキュリティ戦略など、課題解決のための具体的な措置が提案されました。これらの措置により、政策支援が当面重点化される62の主要な製品・技術等や3類型の産業クラスター計画の領域を超えて、日本全国で官民投資が拡大していくことが期待されます。
国際経済秩序の変化や不確実性の高まりを背景に、世界が大胆かつ計画的に財政支出を伴う産業政策を展開し、官民が手を取り合って社会課題の解決を目指す。この新たな潮流にある中、我が国でも、国が一歩前に出て国内投資を強力に後押ししてまいります。その際、重要なことは、経済の主体である産業界、各企業と意思疎通、連携を密にして、具体的成果につながる取組を実現していくことです。
経済界においても、投資牽引(けんいん)型経済へのマインドセットの転換、地方自治体・地域を担う多様なステークホルダーの主体性に基づく広域官民連携の推進への機運が醸成されております。官民の連携をこれまでにないレベルまで徹底的に強化し、必要な取組を実行してまいります。
さて、令和9年度予算は、高市内閣として初めて概算要求基準から編成する予算です。そして、官民投資ロードマップや地域未来戦略などの投資促進策を実現するための予算は、年末にかけて具体化されていくことになります。その過程で、従来の政策の延長や制約を乗り越えて、民間を含めた新たな発想や視点に基づく、真に効果のある政策が引き出せるよう、政府の予算の作り方を根本から改めます。補正予算は緊要性の高いものに限定し、恒常的施策については、原則、当初予算で措置し、補正予算依存から脱却し、事業者や地方公共団体の予見可能性を高めます。
予算編成の抜本改革の狙いのひとつは、「新たな投資枠」、すなわち、『「強く豊かな日本」投資枠』の導入でございます。
第一に、『「強く豊かな日本」投資枠』は、今後とりまとめる日本成長戦略や地域未来戦略などを踏まえ、本日、官民ロードマップや分野横断的な課題に対応していく取組の形で示されたような、国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置を対象とします。
第二に、「挑戦しない国に未来はない」という考えの下、従来の政策の延長や制約を乗り越え、民間を含めた新たな発想や視点に基づく、真に効果のある政策を引き出してまいります。『「強く豊かな日本」投資枠』では、真に効果的な投資支援策を取り込めるよう、要求上限、いわゆるシーリングを設けることなく、事項要求も含めて必要額を適切に要求できるようにいたします。重要なのは、財政支出のGDP成長に与える効果であって、財政支出の額ではありません。予算編成プロセスでは、成長への寄与、民間投資の誘発効果などを精査し、真に効果的な施策に重点的に措置することを通じて、我が国の予算を成長力強化に資するものに変革してまいります。
第三に、民間の予見可能性を高めるため、『「強く豊かな日本」投資枠』の予算措置は、複数年度の計画に基づくものを基本とします。併せて、その計画の進捗を定期的に確認し、投資誘発効果の薄い予算は柔軟に見直していきます。「基金」につきましては、成果管理の徹底や、柔軟で効率的な資金管理を前提に、一律・機械的な期間設定に囚われない予算措置が可能となるよう、予算措置は原則3年以内とする現行ルールの不適用を含めて、基金ルールを見直します。
第四に、『「強く豊かな日本」投資枠』に、財政の持続可能性を実現しながら必要十分な規模を確保します。まず、効果が上がっていない施策は大胆に見直すとともに、本日内閣府から示された試算も踏まえて、政府債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規模を精査し、毎年度の予算編成の中で、通年の国債発行額などを具体化していきます。また、経済安全保障上、特に重要な分野などについては、特別会計で別枠管理を行うこととし、複数年度で十分な財源を確保した上で、償還財源の裏付けのあるつなぎ国債の発行により、十分な規模を確保します。
城内大臣は、この基本的考え方に従い、「新たな予算編成の基本方針」及び責任ある積極財政の具体化の方向性を、骨太の方針に反映してください。
片山大臣は、予算編成の抜本改革に向けた必要な対応の具体化を進めてください。まずは、その出発点となる考え方を、明日の経済財政諮問会議で報告してください。日本成長戦略や地域未来戦略など現在検討中の施策についての経済効果の試算も併せて行いました。縮み志向から脱却し、果敢に成長戦略を実行し、大胆に投資を拡大すれば、累計410兆円もの更なる国内投資が実現され、2040年には、国内民間設備投資額は年間230兆円、GDPは1,100兆円に迫る経済成長が実現できることが示されました。
また、予算の上限といった意味ではなく一つの試算として、こうした経済成長に必要な財政支出が、財源を確保した上で別枠管理する予算のほかに、例えば、毎年度10兆円程度、追加的に支出した場合でも、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく財政の持続可能性も併せて実現できるという見通しが示されました。
官民投資を誘発し、供給力を強化し、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収が自然増に向かう、GDP拡大の下での好循環を実現する。先ほども申し上げましたが、同時に、財政の持続可能性と市場の信認確保も実現する。これこそが、私が政権選択選挙と位置づけた本年2月の衆議院選挙において国民の皆様に訴えさせていただいた「責任ある積極財政」でございます。
来月に取りまとめる日本成長戦略や地域未来戦略は、この「責任ある積極財政」実現に向けた羅針盤となります。全閣僚は、この予算編成の抜本改革を骨太の方針に反映させた後、今後、決定・公表される概算要求基準も踏まえ、予算、税制、法案といった、あらゆる政策分野の検討をより一層加速させてください。
私からは以上です。本当にお疲れ様でございました。どうもありがとうございました。