「共に、次の50年に向けて」
今年は日豪友好協力基本条約(通称NARA条約)署名50周年の記念すべき慶節です。私の地元NARAと同じ通称を持つ条約の歴史的節目に、奈良市と姉妹都市であり、風光明媚(ふうこうめいび)なバーリー・グリフィン湖を擁する首都キャンベラを訪問できることを大変嬉しく思います。
この50年間、日本と豪州はたゆまず友好関係を育み、現下の厳しい国際情勢においても、地域の安定勢力として、地域の平和と繁栄に積極的に貢献してきました。
今回のオーストラリア訪問では、次なる50年を見据え、日豪関係を更なる高みへと引き上げるべく、アルバニージー首相との間で、次の2つの取組を始め、幅広い分野の協力を推進していくことを確認したいと考えています。
「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた戦略的連携
今年、日本が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を提唱してから10年を迎えます。ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化をはじめ、世界では今、地政学的競争が激化し、国際秩序が揺らいでいます。
こうした中、この10年間の変化や新たな課題に対応して、我々はFOIPを戦略的に進化させていきます。厳しい国際情勢の中で、日本を含む域内の各国は複雑に絡み合った相互依存関係にあることを前提としつつも、自らの運命を自らの手で決めるために必要な自律性、強靱(きょうじん)性を高めることが必要です。日豪はFOIP実現のために主導的役割を果たす意思と能力を有する国であり、国際情勢が一層厳しさと複雑さを増す中、重要性がますます高まる同志国連携の中核です。
我々両国も、自律性・強靱性を高めるという課題に直面しており、サプライチェーンの強靱化を含む経済安全保障上の協力を更に強化していく必要があります。
特に、重要鉱物の安定供給確保は、両国が戦略的に推進すべき重要なテーマです。これまでも日豪間では、官民が協力し取組を進めてきており、ライナスプロジェクトでは、重レアアースの日本への輸出が開始され、アルコア・プロジェクトでは日豪米の連携によるガリウム生産事業も進展しています。これらのプロジェクトの経験も踏まえ、米国を始めとするパートナーとも連携しながら、日豪協力を更に加速化させるべく、アルバニージー首相と議論を深めたいと考えています。
また、中東情勢が日豪両国に影響を及ぼす中、エネルギーの安定供給やサプライチェーン強靱化が喫緊の課題になっています。先月、私は、豪州を含む地域の関係国の参加を得てAZECプラス・オンライン首脳会合を主催し、原油・石油製品等のサプライチェーン維持、エネルギー源の多様化などに向けた協力を進めるため、「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ(パワー・アジア)」を発表しました。アルバニージー首相と日豪間のエネルギー安全保障に係る双方向の連携を確認し、共にアジア全体のエネルギーの安定に貢献していく考えです。
深化し続ける日豪の安全保障・防衛協力
かつて戦火を交えた日本と豪州は、戦後、友好と協力の歴史を共に紡ぎ、今や、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する「特別な戦略的パートナー」です。共に米国の同盟国である日豪の安全保障・防衛協力は、深化し続けています。
とりわけ、我が国の「もがみ」型護衛艦の能力向上型をベースとする豪州海軍の汎用フリゲートプログラムは、日豪の安全保障上の連携を一段と高めるものであり、50周年を象徴する画期的な協力となります。こうした取組を通じ、地域や国際社会の平和と安定のために、日豪両国が更なる貢献ができることを確信しています。
更に、今次訪問では、これまでの安全保障・防衛協力とともに、サイバー分野も含めた新たな戦略的な連携について、アルバニージー首相と議論したいと考えています。
結びに
2014年、私が尊敬する安倍晋三元総理は、豪州連邦議会での演説で、日豪が新たな「特別な関係」へ歴史的な脱皮を遂げたことを称えました。あれから、12年。両国の特別な関係は各方面において着実に進展しています。
こうした両国の歩みを踏まえ、今次訪問では、次なる50年を見据え、安全保障、経済安全保障、経済、人的交流、観光、教育研究など、日豪間のあらゆる分野での協力を一層拡大すべく、日豪関係の新たな未来をアルバニージー首相と共に描いていきたいと思います。そして、ロックを愛するリーダーという共通点があるアルバニージー首相と、更なる信頼関係を築き、日豪両国で一つの力強いハーモニーを生み出すように、それぞれの強みを響き合わせていくことを心から楽しみにしています。