STSフォーラム第16回年次総会における安倍総理スピーチ

令和元年10月6日
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 尾身議長、STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)を、今年も実現なさいましたことをお慶(よろこ)び申し上げます。
 私、ここで何をお話ししようかと、知恵を絞りますこと7年目とあいなりました。実は、今年、お話したい中身はあっさり決まりました。
 科学と技術は社会をよくするという、尾身議長始め皆様が奉じてこられた信念は、徹底的に正しいということ。今こそ、科学と技術が果たせる役割に、私たち皆、自信を新たにすべきだということ。つまり、第一に、皆様は正しい、第二に、皆様はもっとできるという、この2点を強調し、皆様の応援団長を買って出ようというのが、本年の私の意図であります。
 先ごろ日本政府は横浜で、TICAD7(第7回アフリカ開発会議)といって、1993年以来、アフリカ各国指導者をお招きし、成長を論じてきた会議の7回目を催しました。これに先立つ6月には、G20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)を大阪で開きました。
 いずれの場でも、私たちは、科学と、技術の役割を論じました。
 TICAD7では、SDGs(持続可能な開発目標)のためSTI(科学技術イノベーション)が重要だという点を確認しました。これは、STSフォーラムの長年の主張と同じです。STI、つまり科学技術とイノベーションは、SDGs実現に欠かせません。
 人工衛星から地表を見ることで、地域ごとの作付けが分かります。収量が分かれば、農民の収入に予想がつく。農民のキャッシュフローが予測できるなら、ファイナンスが容易になる。例えばそんなことです。
 一方、大阪G20サミットに集った世界のリーダーたちは、2050年までに、海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを誓いました。
 私が一つうれしいのは、プラスチックには、社会に対し果たす重要な役目があることを、首脳宣言が明記したことです。
 私たちは、20世紀が生んだ偉大な発明のいくつかを、誇りに思うべきです。プラスチックはその一つで、これがなければ、生鮮食品を一定の運びやすい形に包装し、スーパーマーケットの棚に並べることなどできませんでした。
 プラスチックは、食物生産者と消費者を結ぶ、偉大なイコライザーでした。この先とも必要なものなのですから、プラスチックを敵視したり、その利用者を排斥したりすべきではありません。
 必要なのは、ごみの適切な管理ですし、イノベーションに解決を求めることです。
 ですからこそ、日本政府はMA、R、IN、そしてE、合わせてMARINEと呼ぶ途上国支援パッケージを始めます。MAは、Management of wastes、つまり廃棄物管理、RはRecovery、海洋ごみ回収、INはInnovation(イノベーション)、最後のEはEmpowermentで、廃棄物管理に携わる人々を社会の英雄にしようとする人材育成策です。
 中でも、イノベーションの意義を強く打ち出したいと思います。
 とある日本の会社では、研究員たちが郊外の山に行っては、微生物集めに余念がありませんでした。
 ところが、なんと自分たちの会社の工場敷地内に、理想的な微生物が見つかるのです。1993年のことでした。
 その微生物こそは、私たちが胴回りに脂肪をためるように、自分の体内にポリマーをためる力を持つもので、さんざん探し求めていたものだったといいます。
 長い話を短くすると、その後、十分な量のポリマーをためこむ微生物をこしらえて、量産ラインで、生分解性プラスチックを作り出すことに成功するのです。
 常温で、海の中ででも分解できるというこのプラスチック。溶ける速度は、紙の中の繊維質セルロースと、同じなのだそうです。石油由来でなく、植物油が基になり、石油で作ったプラスチックと同じ性能を獲得しながら、土の中、水の中でまた微生物に分解されるという生分解性プラスチック。カネカという、日本の会社の功績です。
 生産能力は、もうじき年産5,000トン。たしかに、まだ僅かな量です。しかし、確かに量産されたのです。私たち皆を、勇気付けてくれます。
 世界の風潮に今、様々なことへのアンチが見受けられます。反成長、反資本主義、反グローバリズム、そして反プラスチック。
 それぞれに、背景事情や思いがあることは私も知っています。しかし私は、対立を克服する途(みち)があることも知っています。それは未来へ続く途であり、それこそがイノベーションです。
 STSフォーラムに集う皆様は、問題があると聞くと解決したくなる積極性を共有しておいでです。その積極性に、私たちは多くを期待します。科学と技術に、人類の未来が懸かっています。皆様の役割は、ますます重要になります。御自身のお仕事と、力に、今こそ、一層の自信を持っていただければと願ってやみません。
 ありがとうございました。

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