全国戦没者追悼式
内閣総理大臣式辞


 本日ここに、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、戦没者の御遺族並びに各界代表多数の御列席を得て、全国戦没者追悼式を挙行するに当たり、政府を代表し、式辞を申し述べます。

 終戦から六十五年が過ぎ去りました。祖国を思い、家族を案じつつ、心ならずも戦場に倒れ、戦禍に遭われ、あるいは戦後、異郷の地に亡くなられた三百万余の方々の無念を思うとき、悲痛の思いが尽きることなく込み上げてきます。改めて、心から御冥福をお祈りいたします。

 また、最愛の肉親を失われ、決して癒されることのない悲しみを抱えながら、苦難を乗り越えてこられた御遺族の皆様のご労苦に、深く敬意を表します。

 先の大戦では、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対し、多大の損害と苦痛を与えました。深く反省するとともに、犠牲となられた方々とそのご遺族に対し、謹んで哀悼の意を表します。

 戦後、私達国民一人一人が努力し、また、各国・各地域との友好関係に支えられ、幾多の困難を乗り越えながら、平和国家としての途を進んできました。これからも、過去を謙虚に振り返り、悲惨な戦争の教訓を語り継いでいかなければなりません。

 世界では、今なお武力による紛争が後を絶ちません。本日この式典に当たり、不戦の誓いを新たにし、戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、世界の恒久平和の確立に全力を尽くすことを改めて誓います。

 戦没者の御霊の安らかならんことを、そして御遺族の皆様の御健勝をお祈りして、式辞といたします。

 平成二十二年八月十五日
内閣総理大臣 菅直人