国際の平和と安全の維持における安保理の
効果的役割に関する安保理首脳会合


平成22年9月23日
ニューヨーク


 議長、
 事務総長、
そして御列席の皆様、

  「安保理の効果的な役割」という重要な課題について日本を代表して意見を申し述べる機会を与えられたことについて、まず感謝を申し上げます。

 今日、人類の安全を脅かす脅威は、大量破壊兵器の拡散やテロ、海賊行為など多様化し、脅威が発生する背景は複雑化しています。

 これらの脅威を根本から解消するためには、その要因をよく理解し、どうすれば解決できるか、より適切な対処策を慎重に選択しなければなりません。

 本年4月、日本はこの議場で閣僚レベルの会合を主催し、平和構築における、政治、治安及び開発に包括的・統合的に取り組む戦略が必要であるとの結論を得ました。

 各国首脳がこの場で平和構築をテーマに再び議論を行うことは大変有意義なことであります。それは、まさに、平和構築が国際社会の喫緊の課題であり、共通の目標であることの証左であります。ギュル・トルコ大統領のイニシアティブに感謝申し上げます。

 議長、

 真の平和とは何を意味するのでしょうか。戦争や紛争がなくなる状態だけで、平和と言えるでしょうか。

 そうではありません。戦争や紛争や自然災害によって破壊された平和と市民生活を再生することが、真の平和につながるのです。その再生のプロセスにおいて、社会・経済の復興のために立ち上がり努力をする人々を、日本は全面的に支援をいたします。

 なぜなら、私は、国のリーダーがまず果たすべき役目とは、疾病、貧困、紛争といった不幸の原因をできるだけ小さくすることだと確信しているからです。私は、この考え方を「最小不幸社会」の実現と呼び、昨日のミレニアム開発首脳会議における演説でも基本的な理念として紹介をいたしました。

 日本は、真の平和の実現に向け、積極的かつ具体的な行動をとります。

 こうした考えの下、日本は、平和維持、平和構築、紛争予防、人間の安全保障の4つを柱とする支援を進めてまいります。

 議長、

 まず、第1の柱である平和維持について、日本はPKO作業部会議長として、PKOに貢献する国の間での連携強化、PKO活動に必要なリソースの確保のための議論を牽引していきます。

 また、日本自らもPKO等に積極的に貢献しており、今年天災に見舞われたハイチ、パキスタンには、迅速に自衛隊を派遣しました。また、先日、日本国政府は、国連東ティモール統合ミッションへの軍事連絡要員の派遣を決定いたしました。

 議長、

 次に第2の柱である平和構築について、平和構築は、平和維持の後に開始するものとの認識があります。しかし、真の平和を実現するためには、平和構築を平和維持の初期から並行して取り組んでいくことが重要です。

 日本は、カンボジアの平和構築における、和平会議から支援国会合の主催、和平プロセスの総仕上げであるクメール・ルージュ裁判までのねばり強い支援を経験し、包括的・統合的な平和構築への取組の重要性を身をもって学びました。

 東ティモールの国造りにおいても、このような経験に基づいた貢献が実を結びつつあります。アフガニスタン、イラク、中東和平プロセス、アフリカなどにおいても、このような理念に基づいた取組を重視してまいります。

 特にアフガニスタンは、国際社会にとって平和構築分野における最大の課題であり、日本が最も重点的に支援を行っている国であります。

 我が国は、様々なパートナーと協力しつつ、警察支援などの治安分野、元タリバーン末端兵士の職業訓練や雇用創出のための支援といった再統合支援、そして農業支援などの開発を三本柱として、包括的・統合的にアフガニスタン政府の取組を支援していきます。

 また、日本はトルコと協力し、アフガニスタンの治安改善のためのアフガニスタン警察官訓練を、資金協力及び警察職員等の派遣の両面で支援する考えであります。また、先般、反政府勢力の再統合のために5、000万ドルを拠出いたしました。

 日本は、国際社会と協力して、アフガニスタン国民が状況の改善を実感できる支援を行っていく考え方です。

 議長、

 第3の柱である紛争予防について、脆弱国家や紛争直後の国家においては、人々が安心して暮らせる環境を作るため、信頼醸成措置の整備に引き続き取り組むことが重要です。

 また、テロ集団等が大量破壊兵器を入手することのないよう、安保理は引き続き大量破壊兵器の拡散阻止に全力を尽くす必要があります。

 日本は、NPT運用検討会議の行動計画を履行します。また、日本と豪州は、昨日、志を共有する国々とともに核軍縮・核不拡散に関する外相会合を開催し、新たなグループを立ち上げました。日本は、核軍縮・核不拡散の一層の促進に国際社会と連携して取り組みます。

 議長、

 安保理がこれらの問題に対処していくためには、第4の柱である「人間の安全保障」の考え方が有益であると考えます。

 すなわち、一人ひとりの人間が自由を獲得し、尊厳を保障され、充実した生活を送ることができて、初めて真の平和が持続できます。

 そういった人間の安全保障の理念に基づき、脆弱な国や人々を守り力づける国際的な取組に引き続き貢献してまいります。

 議長、

 最後に、国連が誕生して65年になりました。その間、世界の情勢も大きく変化しました。21世紀においても、安保理が世界の平和と安全の維持のために役割を果たすためには、安保理自身が、21世紀の国際社会の現状を反映し、十分な正統性を持つ場にならなくてはなりません。

 そのため、日本は安保理改革の早期実現に向け、他の国連加盟国と協力して積極的に取り組んでまいります。

 御清聴ありがとうございました。