G8ドーヴィル・サミット首脳宣言
自由及び民主主義のための新たなコミットメント
【骨子】


G8サミット
2011年5月26日~27日
ドーヴィル、フランス
仮訳英語

前文

    1. この変革期において,G8は自由と民主主義に深くコミット。
    2. 中東・北アフリカにおいて民主的プロセスに関わる国とのパートナーシップを立ち上げ。アフリカとのパートナーシップを再確認。インターネット,グリーン成長等の新たな課題に取り組む。日本に対する連帯を表明し,また,最高水準の原子力安全促進の必要性を含む,原発事故からあらゆる教訓を得ることを決意。原子力安全条約,早期通報条約の強化を検討する必要性に留意。
    3. リビア及びシリアの指導層に対し,市民に対する武力行使を直ちに中止するよう要請。核不拡散の脅威,特にイランと北朝鮮の問題への対応にコミット。
    4. 来年のサミットは,米国の議長の下で開催。
日本との連帯
    1. 日本の総理大臣は,G8及び国際社会すべてにより示された寛大な支援と友情への深甚なる感謝の念を表明し,原子力事故を含む試練を必ず乗り越えるとともに,世界に深く関与し,貢献し続けるとの強い決意を表明。
    2. 我々はまた,日本経済の強靭さを確信しており,支援と協力を提供し続ける準備があることを表明。日本の総理大臣は,原子力事故による影響を含め,世界経済に対して今回の災害が与えうる不確実性を最小化するためにあらゆる努力を行うと説明。特に,原子力に関する非常事態について,必要なすべての関連する情報を適時提供することを約束し,日本からの輸出品が安全であることを確保するとした。我々は,物品と渡航に対する措置が科学的根拠に基づくべきであることを強調。
    3. 我々は,この危機から迅速に立ち直り,より強くなる日本の能力を深く確信しており,また,最高水準の原子力安全性を世界的に推進する必要性を含む,必要なすべての教訓をこの災難から得ることを決意。

インターネット

    1. インターネットは市民,企業,政府それぞれにとって不可欠。開放性と自由が発展の鍵。人権及び民主的参加を促進する手段として,インターネットの利用奨励にコミット。
    2. 成長の推進力として,イノベーションを促すクラウドなどを促進。知的財産の侵害に対して効果的な行動を確保。また,個人データ及びプライバシーの保護は不可欠であり,個人データ保護の共通アプローチの発展を奨励。
    3. インターネット上の犯罪・テロの防止のため協調が必要。また,子供が安全にインターネットを利用できる環境を構築。
    4. 様々な利害関係者を含むインターネットのガバナンスを支持し,各フォーラム間の協力を要請。5月24-25日のe-G8フォーラムを歓迎。

世界経済

    1. 世界経済の回復は自律的になりつつあるが,対外不均衡,一次産品の価格変動に懸念。引き続き,財政健全化,経済回復,雇用促進及び持続的成長への行動に焦点。
    2. G20において現在進行中のプロセス,特に,相互評価プロセス(MAP)における強固で持続可能かつ均衡ある成長のための諸政策へのコミットメントを表明。

貿易

    1. WTOは保護主義防止に重要な役割を果たしており,多国間制度の基礎となる。ドーハ・ラウンド交渉の進展が不十分であることへの大きな懸念に留意。多国間制度強化のため,貿易自由化とルール作りのプロセス促進にコミットし,ドーハのマンデートに沿った形で,後発開発途上国の優先事項を含め,ドーハ・ラウンドを妥結に持ち込むためのすべての交渉の選択肢を探求。
    2. WTO加盟の完了に向けたロシアの進展を歓迎し,ロシアが2011年中にプロセスを終了させるとの考えの下,緊密に協働するとのコミットメントを再確認。

グリーン成長

    1. OECDのグリーン成長戦略の作業に期待。長期的な投資を促進する政策を展開し,研究開発を促進。国際機関と共に,グリーン成長の測定のための指標の特定に取り組む。グリーンな雇用の創出のための措置を支持。再生可能エネルギーを含む効率的かつ持続可能な資源の利用を奨励するための措置は極めて重要。

イノベーション及び知識経済

    1. イノベーションは経済成長を促進。包括的なアプローチを重視しつつ,OECDによるグッド・プラクティスの収集を歓迎。中小企業の役割に関するOECD他の作業を奨励。
    2. 知的財産制度を含む共通の公平な競争条件は重要。特許の質の向上,特許情報の普及,権利取引市場の向上のため,世界知的所有権機関(WIPO)他の取組の強化を奨励。

原子力安全

    1. 日本による情報共有と事故の説明を歓迎。原子力を引き続き利用する国々は原子力安全に適切な注意を払っていること,また,エネルギー・ミックスにおける原子力の役割は,段階的導入・廃止を含め,国毎に異なったアプローチがあることを認識。
    2. 事故から教訓を得ることは重要。既存の原子力施設の安全性評価の取組を歓迎し,また,安全評価の定期的な見直し及び原子力施設の存続期間のすべての局面における安全評価の実施を要請。新たな原子炉の立地・設計における安全性等は優先すべき事項であることを再確認。
    3. 原子力安全に関する国際的な協力及び国際原子力機関(IAEA)の重要性を認識。IAEA関連の国際条約を批准していない国に対し,批准を要請。2012年8月の原子力安全条約の締約国による臨時会合を歓迎。
    4. IAEA基準の検討及び原発の建設・運転のための追加的な基準要件の策定・改善を要請。原子力事故早期通報条約は効率性と内容を向上すべき。
    5. 原子力の安全に関する条約の諸原則と整合した形での世界的に最高水準の安全性の促進にコミット。本年6月のIAEA閣僚会議を歓迎し,IAEAの枠組みで有意義な成果を期待。G8原子力安全セキュリティ・グループに対し,今後これらの点をその将来の取組に含めるよう要請。
    6. チェルノブイリを安全な状態にするための国際的努力に対する,国際社会の団結に満足。

気候変動及び生物多様性

    1. 年末のCOP17は,すべての国を含む公平で実効的な拘束力ある合意に向けた重要な前進。カンクン合意を実施可能なものとすることが必要。コペンハーゲンとカンクンにおける排出量削減コミットメントの実現を決意し,また,すべての国にコミットメントを実現するよう求める。
    2. 名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議の成果は大きな前進。

      開発に対する説明責任

        1. 援助国・被援助国双方が説明責任を果たすことを支持し,アフリカによる説明責任プロセスを歓迎。保健と食料安全保障に関するドーヴィル説明責任報告書を承認。
        2. MDGs達成に向けた取組を支持し,人間の安全保障向上のため,個人とコミュニティの保護と能力強化に焦点。6月に日本が開催するMDGsフォローアップ会合を歓迎。
        3. G8は保健と食料安全保障に関する支援にコミットしており,母子保健に関するムスコカ・イニシアティブを実施し,食料安全保障の強化のための包括的な取組を奨励。
        4. 援助効果につき,釜山での第4回ハイレベル・フォーラムにおいて,開発成果と効果に関するより幅広い問題を踏まえるよう見直しを要請。また,援助の透明性を改善。採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を支持し,透明性向上のための取組にコミット。

      平和及び安全

        1. リビア当局による市民に対する実力行使の即時停止を要求。カダフィはすべての正統性を失っており,退陣が必要。
        2. シリアの指導者に対し,人々に対する実力行使の即時停止と,表現の自由や普遍的権利に関する正統な要求に応えることを求める。シリアがこの呼びかけに応えなければ更なる措置を検討。
        3. 中東地域全体における歴史的変革は,イスラエルとパレスチナ間の紛争の,交渉を通じた解決の重要性を高めると確信。当事者に対し,最終的地位交渉の合意を得るため対話に復帰するよう要請。5月19日にオバマ米国大統領により示された和平へのビジョンを強く支持。また,当事者に対し,交渉を阻害する一方的措置を控えるよう要請。
        4. イラン当局に対し,国民に対する抑圧を止めるよう求める。イランはこの地域で建設的で責任ある役割を果たすべき。イランが国連安保理決議やIAEA理事会決議を遵守していないことは,最大の懸念要因。我々は,デュアル・トラック・アプローチに従い,イランの行動によって,追加的措置の必要性を判断することとなる。イエメンの情勢を懸念。
        5. 北朝鮮に関し,休戦協定と多数の南北間合意に関わる北朝鮮の挑発的な行動,国連安保理決議第1718号及び同第1874号に違反する核及びミサイル開発計画の継続並びにウラン濃縮計画及び軽水炉建設活動を非難。国連安保理決議を完全に履行するとの我々のコミットメントを改めて表明し,すべての国連加盟国に同様の行動を求める。北朝鮮に対し,すべてすべての核計画及び弾道ミサイル計画の完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な放棄を含む国際的義務に従い,また,拉致問題といった国際社会の人道上の懸念に速やかに対応するよう要請。六者会合を通じた問題解決への関係者の意向に留意しつつ,六者会合の再開に資する環境を醸成するための具体的行動をとるよう北朝鮮に要請し,韓国による現在の努力に支持を表明。
        6. NPTの3本柱(核軍縮,不拡散,原子力の平和利用)に基づいた核不拡散体制の維持・強化を約束。国連安保理とIAEAが果たす役割を支持。2002年のカナナスキス・サミット以来の「グローバル・パートナーシップ」の成果を歓迎し,昨年のムスコカ・サミットで表明された重点分野に従い,2012年以降も延長。
        7. ウサマ・ビン・ラーディンの死は国際テロとの戦いにおける大きな前進。イエメン,ソマリア及びサヘル一帯におけるテロ集団の脅威の増大を引き続き憂慮。G8ローマ・リヨン・グループの報告に留意。新設される国際テロ対策フォーラム(GCTF)を通じた協力に期待。5月の薬物不正取引対策に関する閣僚会合の成果を歓迎。
        8. アフガニスタンが,治安,統治及び開発について完全なるオーナーシップを有し,安定し平和な国となることへのコミットメントを再確認し,権限移譲,及び和解・再統合の政治プロセスを支援。パキスタンが政治,経済及び社会的変革に取り組むことを支持。
        9. 平和維持・平和構築に取り組む要員の能力を強化していくことで一致。