令和3年7月8日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答

(質問)
 総理は会見で新型コロナウイルスの感染拡大防止に関し「東京から全国に飛び火しないように」「東京が起点になるのを防ぐ」と訴えました。これを踏まえお尋ねするのは、IOC(国際オリンピック委員会)幹部の被爆地訪問です。16日、バッハ会長が広島、コーツ調整委員長が長崎を訪問する方向で調整しています。国連で採択された「五輪休戦決議」が始まる日で、スポーツを通じた平和の取組を訴えると見られます。両氏は東京滞在後に被爆地へ足を伸ばす形となり、随行員などを含めると大勢の人流を生むことが予想されます。これを総理はどう捉えますか。IOC側にどのような感染防止策を求めますか。その広島、長崎では8月、「原爆の日」を迎えます。両被爆地の式典には歴代総理が参列してきました。菅総理にとっては就任後初の機会となりますが、参列されますか。その場合はどのような思いを胸に参列されるか、お聞かせください。【中国新聞】

(回答)
 IOCバッハ会長、コーツ副会長は、国連におけるオリンピック休戦決議の対象期間のスタートに合わせて、広島、長崎の地を訪問する予定と承知しています。
 IOC役員を含めた大会関係者については、IOCと大会組織委員会が定めたプレイブックに基づく感染対策が求められており、今回の訪問に当たっても、飛行機においては一般の方と十分に座席を離し、それ以外は専用車両を使用するなど行動管理をしっかり行うものと承知しています。
 また、広島と長崎で起きた惨禍、それによってもたらされた人々の苦しみは、二度と繰り返してはならず、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の努力を一歩一歩、着実に前に進めていくことは、我が国の変わらぬ使命であると考えております。
 このような決意を胸に、原爆の日の式典については、日程が許す限り参加したいと考えております。

(質問)
 総理は会見で、緊急事態宣言下で五輪を開催して、感染者が増加した場合の責任をどう考えるのかとの質問に答えませんでした。事は国民の生命に関わる問題で、五輪開催に対する国民の不安や懸念も大きいので、改めて伺います。五輪を開催して、感染者が増加した場合の政治責任について総理はどうお考えでしょうか。明確にお答えください。【西日本新聞】

(回答)
 国民の命と健康を守ることは私の責務です。
 再び東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならないという思いで、今般、緊急事態宣言を発出したところであり、飲食店での酒類提供の禁止をお願いするなど感染防止対策を徹底することとし、併せて、感染対策の決め手となるワクチン接種を進めてまいります。
 こうした中で東京大会については、水際での対策を徹底し、入国する選手や大会関係者によって国内の感染状況に影響が及ぶことのないよう、選手や大会関係者の徹底した検査や行動管理を行ってまいります。
 観客については、国民の安心・安全を最優先に、緊急事態宣言の場合には無観客も辞さないと申し上げてきました。今回、緊急事態宣言となり、5者協議などにおいて、1都3県、北海道、福島県については無観客となることが決まりました。
 対策を徹底し、安心・安全な大会を実現できるよう、取り組んでまいります。

(質問)
 東京五輪・パラリンピックについて伺います。1都3県の会場は無観客が決定し、自国開催であるにもかかわらず世界のトップアスリートの姿やこの平和の祭典をじかに見る機会が失われることになります。全国各地のホストタウンでは事前合宿を取りやめるなど交流が制限され、聖火リレーは公道でのリレーが中止になった都道府県が少なからずあります。「オールジャパン」で取り組むとしてきた五輪の機運は地方でも盛り上がっていません。こうした現状を考えると、リスクや犠牲を払ってまで自国で開催するメリットは薄れているように感じます。このまま五輪を推し進めた先に、私たち国民が得られるものは何なのでしょうか。開催されるのならば、五輪憲章にもある「友情と連帯」、そして日本人が古来大切にしてきた「利他の精神」「無私の精神」を今こそ、国のリーダーが国内外に訴えかけるべきではないでしょうか。以上の点について総理の思いを聞かせてください。【京都新聞】

(回答)
 新型コロナの中でも、安心・安全な大会を実現することで、

(1)人類の努力と英知により、人々が力を合わせて、この難局を乗り越えていけることを、日本から発信していく機会としていきたいと考えています。

(2)パラリンピックによって、障害のある方もない方も、お年寄りも若者も、みんなが助け合って共に生きるという共生社会の実現に向けた心のバリアフリーの精神を、しっかりと伝えていきたいと考えています。

(3)世界の頂点を目指すアスリートの姿を通じて、次の時代を生きる子供たちにも、夢や感動を味わってほしいと考えています。

 今回の大会は、世界で40億人がテレビなどを通じて観戦すると言われており、これらのことを発信していきたいと考えています。

(質問)
 「五輪リスク」について改めて伺います。3回目の緊急事態宣言の解除を表明した3週間前の会見で、総理は「リバウンドを防ぐために感染防止対策を徹底していく」と強調しましたが、結局、リバウンドは防げず、4回目の緊急事態宣言発令に至りました。東京五輪に関して、総理はこの場で「安全安心な大会を実現する」と繰り返してきましたが、緊急事態宣言下の五輪となります。緊急事態宣言は、感染状況が国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある危機的な状況だと判断し、発令するもので、「安全安心」とは矛盾します。本日の国会では「『安心安全な五輪』は説得力がない」との指摘もありました。国民の命と健康を危険にさらすリスクを冒してまで、五輪を開催する意義はどこにあるのでしょうか。五輪リスクはこれまでも伺ってきましたが、総理はリスクの認識、リスクの評価について、国民が納得できるような説明をしていません。なぜ、リスクについて、説明しないのでしょうか。今回は正面からお答えください。【東京新聞】

(回答)
 再び東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならないという思いで、今般、緊急事態宣言を発出したところであり、飲食店での酒類提供の禁止をお願いするなど感染防止対策を徹底することとし、併せて、感染対策の決め手となるワクチン接種を進めてまいります。
 こうした中で東京大会については、水際での対策を徹底し、入国する選手や大会関係者によって国内の感染状況に影響が及ぶことのないよう、選手や大会関係者の徹底した検査や行動管理を行ってまいります。
 観客については、国民の安心・安全を最優先に、緊急事態宣言の場合には無観客も辞さないと申し上げてきました。今回、緊急事態宣言となり、5者協議などにおいて、1都3県、北海道、福島県については無観客となることが決まりました。
 対策を徹底し、安心・安全な大会を実現できるよう、取り組んでまいります。

(質問)
 公明党の山口那津男代表が7月5日のBS日テレ番組で、自民党総裁選を行ってから衆院選に臨むことが「望ましい」と発言したが、受け止めは。自民党総裁選と衆院選のどちらを先に行う考えか。衆院を解散せず、衆院議員の任期満了選挙とする可能性はあるのか。【時事通信】

(回答)
 これまでも申し上げているように、当面、新型コロナ対策を最優先に取り組んでいきます。
 いずれにせよ、この秋までのどこかでは衆院選を行う必要があり、よく考えていきたいと思います。

(質問)
 菅首相は先の通常国会で「国民の命と健康を守れなければ、(五輪を)やらないのは当然だ」と明言しています。今月7日の衆院厚労委員会(閉会中審査)で立憲民主党の長妻副代表は「首都圏で1月に起こったように、ベッドがひっ迫し、入院すべき人ができず、自宅やホテルの療養先でどんどん亡くなる。こういう局面が起これば、総理が言う『守れない』ということで、中止と理解していいか」と質問し、田村厚労相は「仮に、五輪によって感染が増え、病床がひっ迫して、国民の命を守れないというようなことを念頭に置きながら、総理はお話をされたのではないかと推察している」と、菅首相の頭の中を推察し、答弁しています。そこで、菅首相本人の認識をお聞きします。東京五輪開催直前あるいは開催中に、東京など首都圏で病床がひっ迫し、病院で治療を受けたくても受けられない事態が発生し、コロナ患者が自宅や宿泊施設で亡くなるような「医療崩壊」が起きた場合、菅首相が言う「国民の命と健康を守れない」状況に該当し、五輪を中止しますか。仮定の質問ではありません。今年1月、現に東京で起きた事態であり、デルタ株の猛威を考えれば、この先、起こり得ます。明確にお答えください。もし、そのような状況でも中止せず、続けるというのなら、一体何のために五輪を続けるのか、教えてください。【日刊現代】

(回答)
 再び東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならないという思いで、今般、緊急事態宣言を発出したところであり、飲食店での酒類提供の禁止をお願いするなど感染防止対策を徹底することとし、併せて、感染対策の決め手となるワクチン接種を進めてまいります。
 こうした中で東京大会については、水際での対策を徹底し、入国する選手や大会関係者によって国内の感染状況に影響が及ぶことのないよう、選手や大会関係者の徹底した検査や行動管理を行ってまいります。
 観客については、国民の安心・安全を最優先に、緊急事態宣言の場合には無観客も辞さないと申し上げてきました。今回、緊急事態宣言となり、5者協議などにおいて、1都3県、北海道、福島県については無観客となることが決まりました。
 対策を徹底し、安心・安全な大会を実現できるよう、取り組んでまいります。

(質問)
 首相は8日の記者会見で、「先行してワクチン接種が進められた国々では、ワクチンを1回接種した方の割合が人口の4割に達した辺りから感染者の減少傾向が明確になったとの指摘もあります」と発言されました。この件についてお伺いします。首相が紹介されたケースに該当する国はどこでしょうか。また、その国のどのような数値を、どのような方が、どのような分析をして「4割」という数字が導き出されているのでしょうか。それが日本にも当てはまると言える科学的根拠を教えてください。【朝日新聞】

(回答)
 今必要なことは、感染を抑えながら、一人でも多くの方にワクチンを接種していただくことであると考えています。
 お尋ねの点については、株式会社野村総合研究所がまとめられた「ワクチン接種先行国における接種率と感染状況から見た今後の日本の見通し」において、新型コロナワクチンの接種が先行して行われたイスラエルやイギリス、アメリカにおけるワクチン接種率(人口比)と新規感染者数の推移を比べた上で、1回目接種率が4割前後に達した辺りから、新規感染者数の減少傾向が明確になり始めたと指摘されています。
 そうした指摘も踏まえ、先日の会見では、現在のペースで進めば、自治体における接種において、一度でもワクチン接種した人の数が7月末には全人口の4割という水準に達すること、また、まずは7月中にはこうした水準を目指していくことを申し上げたものです。

 

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