ふるさとづくり団体との意見交換・視察 青森県(十和田市、南部裂織保存会)、北海道(北斗市)

 「ふるさとづくりの推進」を担当する秋葉内閣総理大臣補佐官は、「ふるさとづくり」に取り組む現場の声を直接聞くために、青森県十和田市の取組を令和2年8月24日(月)に、北海道北斗市の取組を同月25日(火)に視察しました。
 全国的に新型コロナウイルス感染症の発生が続く中、視察先の皆様と共に、人との間隔の確保、マスクの着用、手指消毒、換気などの感染症対策に努めながらの視察となりました。

1.南部裂織保存会(匠工房)の視察

 「南部裂織」は、寒冷な気候のため綿花などの栽培ができない青森県南部地域において、貴重な布やきれを裂いた糸で織るリサイクルの織物です。布きれ等は要らなくなった着物等を裂いたものを用い、地機(織機)は家の廃材を利用するなど、南部裂織保存会は、地域文化の伝承と共に「モッタイナイの心」を次世代につなげようと活動している団体で、平成29年度ふるさとづくり大賞において総務大臣賞を受賞しています。
 道の駅とわだ敷地内に設置されている拠点施設「匠工房」には、約70台の地機が設置されております。児童・学生等の若い人に電気などのエネルギーを使わずともものづくりができることを伝えるため、また、国内外から訪れる観光客に裂織の素晴らしさを伝えるため、実際に裂織体験ができる施設ですが、この数か月はコロナ禍の影響で閉館を余技なくされ、減収している厳しい現状について、南部裂織保存会の小林会長からお話がありました。
 伝統と文化を伝承していくため、南部裂織の織物でバッグやエプロン、コサージュなどを作り、実際に利用しているほか、若い世代の方々が、海外で裂織体験を通じたPR活動を行うなど、様々な工夫をしていました。
 秋葉内閣総理大臣補佐官から、南部裂織保存会の取組を掲載し、令和2年8月5日にとりまとめた「ふるさとづくり事例集」を小林会長に手交し、こうした優良事例を広く周知していくこと等を説明しました。

裂織について小林会長(左)から説明を聞く様子
裂織について小林会長(左)から説明を聞く様子

実際に裂織している様子
実際に裂織している様子

「ふるさとづくり事例集」を小林会長(右)に手交する様子
「ふるさとづくり事例集」を小林会長(右)に手交する様子

2.十和田市長との意見交換、十和田現代美術館の視察

 秋葉内閣総理大臣補佐官は、十和田市の小山田市長と意見交換をしました。小山田市長から、人口減少が進む現状等とともに、十和田市に住み続けたい、訪れたいと思われるまちづくりのため、十和田市現代美術館を中心に「官庁街通り」全体をひとつの美術館に見立てて、豊かな自然とアートが融合した美しいまち(アーツ・トワダ)を推進し、次世代の子どもたちに自分のふるさとに誇りを持ってほしいと考えている旨の説明がありました。
 十和田現代美術館は、芸術鑑賞のみにとどまらず、人々の様々な活動をサポートすること等で街のにぎわいを取り戻し、官庁街通りを人が集う魅力的な場所とするための施設です。
 常設展では、草間彌生、ロン・ミュエクなど世界で活躍する33組のアーティストによる驚くような作品がいくつも展示されているほか、工夫をこらした企画展を毎年実施することで、市民や観光客が最先端の現代アートに触れる機会をつくっています。
 秋葉内閣総理大臣補佐官からは、南部裂織保存会や十和田現代美術館等の存在により、十和田市を訪れたいという、関係人口創出につながる優良事例である旨の説明がありました。

小山田市長(左)に「ふるさとづくり事例集」を手交し、南部裂織保存会の取組が掲載されている旨を説明している様子
小山田市長(左)に「ふるさとづくり事例集」を手交し、
南部裂織保存会の取組が掲載されている旨を説明している様子

十和田美術館前の広場には、草間彌生氏のアート作品が設置されている。
十和田美術館前の広場には、
草間彌生氏のアート作品が設置されている。

奈良美智氏のアート作品「夜露死苦ガール2012」。右は、学芸員の見留さん(東京都出身)この絵を目当てに美術館を訪れる若い人も多い。
奈良美智氏のアート作品「夜露死苦ガール2012」。
右は、学芸員の見留さん(東京都出身)
この絵を目当てに美術館を訪れる若い人も多い。

オノ・ヨーコ氏のアート作品「念願の木」にメッセージを寄せる様子。
オノ・ヨーコ氏のアート作品「念願の木」に
メッセージを寄せる様子。

3.北斗市長との意見交換

 秋葉内閣総理大臣補佐官は、北斗市の池田市長と意見交換をしました。北斗市は、北海道新幹線のターミナル駅である新函館北斗駅のあるまちで、新幹線開業の効果を各産業に波及させるとともに市内全域の持続的な発展につなげ、魅力あるまちづくりを進めています。また、北斗市は吹奏楽が盛んであり、市内にある上磯中学校吹奏楽部は、平成27年から5年連続で全国大会金賞を取得しています。吹奏楽の定期演奏会には、全国各地から人が集まり、北斗市の関係人口創出に寄与しています。
 秋葉内閣総理大臣補佐官から、池田市長に対し、ふるさとづくり事例集を手交するとともに、吹奏楽によるまちづくりの推進や充実した子育て支援策等の市の取組に至る契機等を伺いました。 池田市長から、若者の減少が続く中で、若い人に地元に帰ってきてもらうため、東京や札幌の大学に通う学生が北斗市やその周辺自治体で勤務する場合に奨学金の償還を減免する制度を創設したこと、子育てがしやすい環境づくりのために所得制限なしで高校生までの医療費の全額助成をしていること、これらの取組は近隣自治体にも波及効果があると考えていることの他、市内小中学校の吹奏楽部の強みを活かし、北斗市を中心に北海道・東北地方の小中高生を対象とした演奏技術を磨く研修会を開催することで、北斗市のみならず地域全体のレベルアップを図り、地域全体の魅力を高めていきたい旨の説明がありました。
 また、北斗市では、まちづくりの基本理念にSDGsを掲げており、子育て、介護、教育等の全ての分野にその理念を取り入れています。池田市長から、全ての職員に対し、持続可能性、弱い立場の人を守るというSDGsの根底にある大きな基本理念を持って欲しいと考えている旨の説明がありました。

北斗市の池田市長との意見交換の様子
北斗市の池田市長との意見交換の様子

4.文月地区ぶどう圃場の視察

 フランスでぶどう栽培とワイン造りを学んだ佐々木夫妻が、北斗市文月地区にぶどう畑を持ち、ワイン製造に用いるシャルドネ種などを栽培しています。
 ぶどう畑では農薬などを極力使用せず、雑草を含めたさまざまな植物やそこに生息する虫などと共存したこだわりをもった栽培を手掛けています。
 北斗市は北海道の南側に位置していることから、比較的降雨量が少なく、夏は暑すぎず、秋が長いこと、冬は寒すぎず、雪も少ないことなど、全国各地で数年をかけ様々な調査をした中から北斗市に決めたそうです。
 このように、佐々木夫妻がこだわりをもって栽培するぶどうから造られるワインは、愛好家から人気があり、即完売となります。収穫の際には、著名人を含む全国各地から多くの人が集まり、収穫の手伝いをしています。
 北斗市は、ぶどう栽培に適した気候を強みに、ぶどう栽培を行う農家を誘致・サポートするなど、文月地区をぶどう栽培の名産地とブランド化する計画を立てています。これらの取組は、地域の魅力向上につながり、関係人口創出にも寄与しています。

ぶどう畑で、佐々木夫妻から説明を聞く様子
ぶどう畑で、佐々木夫妻から説明を聞く様子