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地球温暖化対策推進大綱

平成14年3月19日
地球温暖化対策推進本部決定



目  次

第1 地球温暖化対策推進大綱の見直しの背景と意義

1.地球温暖化に関する基本的認識
2.国際社会における取組
(1)気候変動枠組条約の採択・発効
(2)京都議定書の2002年発効に向けた取組
3.これまでの取組と京都議定書の6%削減約束の達成への挑戦

第2 地球温暖化対策に関する基本方針

1.地球温暖化対策の目指すべき方向
(1)京都議定書の6%削減約束の達成
(2)温室効果ガスの更なる長期的・継続的な排出削減
2.地球温暖化対策の策定・実施に当たっての基本的な考え方
(1)環境と経済の両立に資する仕組みの整備・構築
(2)ステップ・バイ・ステップのアプローチ
(3)国、地方公共団体、事業者及び国民が一体となった取組の推進
(4)地球温暖化対策の国際的連携の確保

第3 6%削減約束の達成に向けた方針

1.温室効果ガス排出量の現状と今後の排出量の見通し
2.温室効果ガス別その他の区分ごとの目標
3.個々の対策に係る目標

第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進

1.地球温暖化対策の総合的計画的推進
2.エネルギー需給両面の対策を中心とした二酸化炭素排出削減対策の推進
 <エネルギー起源の二酸化炭素に係る排出削減量>
 <エネルギー需要面の二酸化炭素排出削減対策(省エネ対策)の推進>
(1)自主行動計画の着実な実施とフォローアップ
(2)エネルギー管理の徹底
(3)機器の効率改善の強化
(4)住宅・建築物の省エネ性能の向上
(5)自動車交通対策
(6)環境負荷の小さい交通体系の構築
(7)新たな省エネルギー型技術等の開発・普及
 <エネルギー供給面の二酸化炭素削減対策の推進>
(1)新エネルギー対策
(2)燃料転換等
(3)原子力の推進
マトリックス表(別紙参照)
3.非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出抑制対策の推進
4.代替フロン等3ガスの排出抑制対策の推進
(1)これまでの取組
(2)今後の対策・施策
5.革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化
6.国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動の推進
(1)地球温暖化防止活動推進のための基盤整備
(2)地球温暖化防止活動の普及啓発等の推進等
7.温室効果ガス吸収源対策の推進
(1)森林・林業対策の推進
(2)都市緑化等の推進
8.京都メカニズムの活用
(1)基本的な考え方
(2)京都メカニズムの活用に必要となる施策等
9.その他
(1)事業活動に伴う温室効果ガス排出量・原単位の把握・公表の推進
(2)家庭におけるエネルギー消費等に伴う温室効果ガス排出量の把握の促進
(3)ポリシーミックスの活用66

第5 定量的な評価・見直しの仕組み

1.基本的考え方
2.定量的評価・見直し方法の概略

第6 温室効果ガス排出量・吸収量の算定のための国内制度の整備

第7 観測・監視体制の強化及び調査研究の推進

第8 地球温暖化対策の国際的連携の確保

第9 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の工程表


第1 地球温暖化対策推進大綱の見直しの背景と意義

1.地球温暖化に関する基本的認識

 地球温暖化問題は、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすものであり、その予想される影響の大きさや深刻さから見て、まさに人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つである。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告によれば、全球平均地上気温は1861年以降現在まで0.6±0.2℃上昇していること、全球平均海面水位は20世紀中に10pから20p上昇していること等が明らかにされており、氷河の後退、永久凍土の融解等の観測の結果、地域的な気候変化が世界の多くの地域における種々の物理・生物システムに影響を既に与えているとしている。そして、その原因に関して、過去50年間の温暖化の大部分が人間活動に起因しているという、新たな、かつ、より確実な証拠が得られたと述べている。また、将来予測については、21世紀中に全球平均地上気温は1.4℃から5.8℃上昇し、海水の膨張などにより21世紀末には海面が9cmから88cm上昇すると予測している。さらに、その影響としては異常気象の発生のほか、生態系への影響や、マラリアなどの感染症や浸水被害を受ける人口の増大等の人間社会に対する影響があるとしている。さらに、どのような温度上昇でも開発途上国で正味の経済的損失が生じ、先進国でも数℃以上の温度上昇で正味の経済的損失が生じ、これにより南北格差が拡大するとしている。

2.国際社会における取組

(1)気候変動枠組条約の採択・発効
 国際社会においては、この地球温暖化問題に対処するため、「気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「気候変動枠組条約」という。)」が1992年5月に採択され、我が国も同年6月の国際連合環境開発会議において署名、1993年5月に受諾し、気候変動枠組条約は1994年3月に発効した。気候変動枠組条約は、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とし、そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきであるとしている。気候変動枠組条約においては、「共通だが差異のある責任」の考え方に基づき、温室効果ガスの排出量を1990年代の終わりまでに従前の水準に戻すことは、温室効果ガスの排出の長期的な傾向の修正に寄与するものあることが認識されること、また、先進国が温室効果ガスの排出量を1990年の水準に戻すことを目的として、温室効果ガスの排出の抑制並びに吸収源の保護及び強化のためにとった政策及び措置、並びにこれらの政策及び措置をとった結果1990年代の終わりまでに予測される温室効果ガスの排出及び除去に関する詳細な情報を送付することを規定しており、先進国が開発途上国に率先して対策を講じるという考え方が既に明らかにされている。一方、開発途上国に関しては、自国の排出量の把握とその条約事務局への通報など基礎的な責務が示されており、その実現を支援するための先進国の義務が明らかにされている。

(2)京都議定書の2002年発効に向けた取組
 長期的・継続的な排出削減の第一歩として、先進国の温室効果ガスの削減を法的拘束力を持つものとして約束する京都議定書が、1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(The Conference of the Parties:COP3)において採択された。
 京都議定書では、排出の抑制及び削減に関する数量化された約束の対象となる温室効果ガスを二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)とし、これら温室効果ガスの排出量を2008年から2012年までの第1約束期間において先進国全体で1990年レベルと比べて少なくとも5%削減することを目指して、各国ごとに法的拘束力のある数量化された約束が定められた。我が国の数値は6%削減、米国は7%削減、EUは8%削減である。また、京都議定書には、約束達成のための費用対効果の高い対策を進めるための国際的な制度として、いわゆる京都メカニズム(京都議定書第6条に基づく制度(以下「共同実施(JI)」という。)、第12条に基づく低排出型の開発の制度(以下「クリーン開発メカニズム(CDM)」という。)及び第17条に基づく排出量取引)が規定された。
 京都議定書の運用の細則についての国際合意はその後の国際交渉に委ねられ、2001年10月から11月にかけてマラケッシュで開催されたCOP7において、京都議定書の運用細則を定める文書(マラケッシュ合意)が決定された。温室効果ガスの世界最大の排出国である米国は京都議定書に参加しないとの立場をとっている一方、COP7での決定を受けて、EUをはじめとする先進諸国が京都議定書の2002年発効を目指しその締結に向けた準備を開始している。
 京都議定書が採択されたCOP3(京都会議)の議長国である我が国は、平成14年2月13日に地球温暖化対策推進本部を開催し、本年8月末から9月にかけて持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)が開催されることを踏まえ、京都議定書締結の国会承認とこれに必要な国内法の成立に万全を期すとともに、「地球温暖化対策推進大綱」(平成10年6月地球温暖化対策推進本部決定。以下「旧大綱」という。)を見直し新たな大綱を策定することを決定した。また、今後、すべての国が参加する共通のルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けることとしている。

3.これまでの取組と京都議定書の6%削減約束の達成への挑戦

 我が国は、1990年10月に「地球温暖化防止行動計画」を「地球環境保全に関する関係閣僚会議」において策定し、二酸化炭素の排出量を2000年以降1990年レベルで安定化することなどを目標にして、各種の対策を講じてきた。この目標値は、気候変動枠組条約においても言及されているが、2000年においてこれは達成されていないとみられる。
 一方、1997年12月の京都議定書の採択を受けて、1998年6月に、地球温暖化対策推進本部において、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策をとりまとめた「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。
 また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)の制定及びそれに基づき基本方針を策定することなどを通じて、我が国における温暖化防止対策推進の基礎的な枠組みを構築するとともに、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年法律第49号。以下「省エネルギー法」という。)の改正等の各種の国内対策を実施した。
 しかしながら、温室効果ガスの排出量は依然として増加しており、1999年度の我が国の温室効果ガスの排出量は、基準年(二酸化炭素、メタン、一酸化ニ窒素については1990年、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄については1995年。以下同じ。)比で約6.9%の増加となっている。また、現行の対策・施策だけでは、2010年の温室効果ガスの排出量は基準年比約7%程度増加になると予測され、京都議定書の約束を達成するためには、今後一層の対策を進めていくことが必要となっている。
 我が国は、京都議定書締結について国会の承認が得られ次第、京都議定書を締結する方針であるが、エネルギー効率が既に世界最高水準にある我が国にとって、京都議定書における我が国の6%の削減約束(以下「6%削減約束」という。)を達成していくことは、決して容易なことではなく、国、地方公共団体、事業者及び国民が一体となって、約束達成に挑戦していく必要がある。「地球温暖化対策推進大綱」の見直しは、こうした状況を踏まえ、国、地方公共団体、事業者、国民の総力を挙げた取組を強力に推し進めるため、京都議定書締結に先立ち、京都議定書の6%削減約束の達成に向けた具体的裏付けのある対策の全体像を示すとともに、温室効果ガスの種類その他の区分ごとに目標並びに対策及びその実施スケジュールを記述することとし、併せて個々の対策についての我が国全体における導入目標量、排出削減見込み量及び対策を推進するための施策を定めたものである。

第2 地球温暖化対策に関する基本方針

1.地球温暖化対策の目指すべき方向

 今後の地球温暖化対策に当たっては、まず、増加基調にある温室効果ガスの総排出量を早期に減少基調に転換し、その減少基調を京都議定書の6%削減約束の達成、更なる長期的・継続的な排出削減へと導くことを目指す。

(1)京都議定書の6%削減約束の達成
 我が国として温室効果ガスの総排出量を「2008年から2012年の第1約束期間に基準年レベルから6%削減する」ことを内容とする京都議定書の6%削減約束の達成のために必要と考えられる地球温暖化防止のための取組を積極的に推進していく。対策が遅れれば遅れるほど、6%削減約束の達成のために短期間で大幅な削減を達成しなければならなくなることから、今日の段階で実施可能な地球温暖化対策は直ちに実施し、早期に減少基調に転換した上で、京都議定書の6%削減約束の達成を図る。

(2)温室効果ガスの更なる長期的・継続的な排出削減
 京都議定書の6%削減約束の達成を図り、更なる長期的・継続的な排出削減へと導く。このためには、個々の対策を計画的に実施していくと同時に、21世紀の我が国の社会経済動向を踏まえ、各分野の政策全体の整合性を図りつつ、温室効果ガスの排出削減が組み込まれた社会の構築を目指す。

2.地球温暖化対策の策定・実施に当たっての基本的な考え方

(1)環境と経済の両立に資する仕組みの整備・構築
 京都議定書の6%削減約束の達成への取組が、我が国の経済活性化、雇用創出などにもつながるよう、技術革新や経済界の創意工夫を活かし、環境と経済の両立に資するような仕組みの整備・構築を図る。

(2)ステップ・バイ・ステップのアプローチ
 2002年から第1約束期間終了までの間を、2002年から2004年までの「第1ステップ」、2005年から2007年までの「第2ステップ」、第1約束期間(2008年から2012年まで)の「第3ステップ」の3ステップに区分し、第1ステップから講じていく対策・施策によって第1約束期間における京都議定書の6%削減約束を確実に達成することを定量的に明らかにするとともに、第2ステップ及び第3ステップの前に対策・施策の進捗状況・排出状況等を評価し、必要な追加的対策・施策を講じていくステップ・バイ・ステップのアプローチを採用する。この際、客観的要素に基づいて評価・見直しを行うことができるよう、本大綱においては、温室効果ガス別その他の区分ごとの目標、個々の対策についての我が国全体における導入目標量、排出削減見込み量及び対策を推進するための施策を盛り込むこととする。

(3)国、地方公共団体、事業者及び国民が一体となった取組の推進
 地球温暖化対策の推進に当たっては、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠である。また、地方公共団体は、上記の(1)及び(2)の基本的な考え方を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。

(4)地球温暖化対策の国際的連携の確保
 地球温暖化は、その原因と影響が地球規模にわたることから、地球温暖化対策の実効性を確保するためにはすべての国が温室効果ガスの削減に努めることが必須であり、各国の努力のみならず、国際的協調の下での更なる取組が不可欠である。このため、我が国としては、米国や開発途上国を含む全ての国が参加する共通のルールが構築されるよう、引き続き最大限の努力を傾けていく。
 また、二酸化炭素の排出は、今後の世界的な人口増加と経済発展に伴い急激に増加することが予想されることから、我が国は、優れた技術力と環境保全の蓄積された経験を背景に、国際協力を通じて世界の取組の先導的役割を果たしていく。

第3 6%削減約束の達成に向けた方針

1.温室効果ガス排出量の現状と今後の排出量の見通し

 1999年の我が国の温室効果ガスの総排出量は13億1400万t-CO2である。旧大綱策定時においては、特段の対策を講じなければ温室効果ガスの排出量は大幅に増加すると見込まれていたところ、旧大綱に基づき様々な対策の推進を図ってきた結果、これまでの現行対策を前提とした場合の2010年時点での温室効果ガスの総排出量の見通しは、約13億2000万t-CO2となり、基準年比で約7%の増加に抑制することができると見込まれる。一方、我が国の温室効果ガス全体の基準年排出量(以下「基準年総排出量」という。)は12億2900万t-CO2であり、京都議定書における我が国の6%削減約束を達成するためには、その値の6%減である11億5500万t-CO2に削減することが必要である。したがって、京都議定書における我が国の6%の削減約束を達成するため、現行対策に加えて、さらに約13%(約1億6500万t-CO2)相当分の追加的排出削減の達成を図ることとする。

2.温室効果ガス別その他の区分ごとの目標

 京都議定書の6%削減約束については、当面、次の目標により達成していくこととする。
 その際、@〜Dの目標のうち、第1約束期間において、目標の達成が十分に見込まれる場合については、こうした見込みに甘んじることなく、引き続き着実に対策を推進するとともに、今後一層の排出削減を進めるものとする。
 なお、国としての京都議定書上の約束達成義務及び京都メカニズムが国内対策に対して補足的であるとする原則を踏まえ、国際的動向を考慮しつつ、京都メカニズムの活用について検討するものとする。
  1. エネルギー起源の二酸化炭素の排出量については、第1約束期間において、1990年度と同水準に抑制することを目標とする。
  2. 非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出量については、1990年度の水準から基準年総排出量比で0.5%分の削減を第1約束期間において達成することを目標とする。
  3. 革新的技術開発及び国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進により1990年度の水準から基準年総排出量比で2%分の削減を第1約束期間において達成することを目標とする。
  4. 代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出量については、第1約束期間において、1995年に対して基準年総排出量比プラス2%程度の影響に止めることを目標とする。
  5. 京都議定書第3条3及び4の対象森林全体で、我が国の森林経営による吸収量としてCOP7で合意された1,300万t-C(4,767万t-CO2、基準年総排出量比約3.9%)程度の吸収量の確保を目標とする。

3.個々の対策に係る目標

 京都議定書の6%削減約束の達成に向けた具体的裏付けのある対策の全体像を示すため、本大綱においては、前述の温室効果ガス別その他の区分ごとの目標を達成するための個々の対策についての我が国全体における導入目標量、排出削減見込み量及び対策を推進するための施策を規定することとし、以下の「第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進」において、各分野ごとに表形式で示すこととする(表1〜11を参照)。また、導入目標量又は排出削減見込み量を設定することが困難な対策についても、一層の排出削減に向け、その着実な実施に遺漏無きを期すものとする。
 個々の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量については、温室効果ガス別その他の区分ごとの目標を達成するため、技術的・経済的に導入・実施が期待される水準として定めるものとする。

第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進

1.地球温暖化対策の総合的計画的推進

 京都議定書目標達成計画の策定、地球温暖化対策推進本部の法定化、国民の取組の強化等を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(地球温暖化対策推進法改正法案)」の成立に全力を尽くすとともに、京都議定書の発効後、本大綱を基礎として同法に基づく京都議定書目標達成計画を速やかに策定し、京都議定書の6%削減約束の達成に向けた総合的かつ計画的な取組を推進する。また、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」(平成9年8月22日内閣総理大臣決裁により開催)において、委員の意見を聴取するものとする。
 なお、本大綱については、これまでの関係審議会等におけるパブリック・コメントや審議の結果等を踏まえつつ、その策定作業を行ったところであるが、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、本大綱を基礎としつつ、さらに国民各界各層の意見を幅広く聴くものとする。

2.エネルギー需給両面の対策を中心とした二酸化炭素排出削減対策の推進

 我が国の温室効果ガス排出量は、石油、石炭、天然ガス等のエネルギーを起源とするものが約9割である。過去2回の石油危機を経て、国民各層の努力、各種エネルギー政策の下、需要面においては省エネルギーが進展し、供給面においては石油代替エネルギーである原子力・天然ガスの比重が着実に高まりつつある。この結果、GDP当たりのエネルギー消費量、二酸化炭素排出量は、欧米諸国に比し概して低い水準にあり、既に世界でも有数の温暖化対策・省エネルギー先進国となっている。
 他方、エネルギーは、国民生活、経済活動にとって必要不可欠のものである。経済的に厳しい状況に直面した90年代においても、エネルギー消費は増大し、その結果、2000年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、90年度比約10%増(速報値)となっている。京都議定書の6%削減約束を達成するため、エネルギー起源の二酸化炭素について2010年度においては、これを1990年度水準まで削減することを我が国は目標として掲げているところである。

<エネルギー起源の二酸化炭素に係る排出削減量>

 1998年の「地球温暖化対策推進大綱」(旧大綱)では旧大綱で提示された対策を講じなければ、2010年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、1990年度に比べて20%以上もの増加になると見込んでいた。1998年以降、旧大綱に基づき、エネルギー需給両面の対策を強力に推進しているところであるが、現在の政策の枠組みを維持した場合でも、2010年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は約1126百万t-CO2となり、約1053百万t-CO2であった1990年度に比べ約73百万t-CO2増加すると見込まれる。これは、需要面においては、民生、運輸乗用車部門を中心としたエネルギー需要が1990年度に比べると大幅に伸び、供給面においては、発電用の燃料を中心として、旧大綱策定時に想定したとおりには原子力等の非化石エネルギーの導入が進まず、むしろ安価な石炭が大幅に増加することが見込まれることによる。
 このため、2010年度におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量を1990年度レベルに抑制するため、旧大綱に盛り込まれた措置を着実に実施するとともに、更なる省エネルギー対策、新エネルギー対策及び新たに燃料転換等の対策を実施する。また、安全性の確保を大前提として、原子力を引き続き着実に推進していくこととする。これらの追加対策による2010年度の排出削減量は、需要面での排出抑制対策(省エネルギー対策)で約22百万t-CO2、新エネルギー対策で約34百万t-CO2、燃料転換等で約18百万t-CO2となる。また、これらの対策が実施された際の各部門における2010年度における排出量は、産業部門は約462百万t-CO2(▲7%)、民生部門は約260百万t-CO2(▲2%)、運輸部門は約250百万t-CO2(+17%)となる((  )内は1990年度の各部門別の排出量からの削減割合)。各追加対策による削減量及び各部門毎の排出削減量は本大綱において京都議定書の約束を果たすための目標として位置づけられるが、部門ごとの排出削減目標量については、我が国が潜在成長率どおりの経済成長をとげつつ、エネルギーの供給側における安全性を前提とした原子力の推進、新エネルギー導入対策、燃料転換対策等の対策が所期の効果をあげ、かつ、エネルギー需要側の各部門における対策が所期の効果をあげた場合に達成することができると試算される目安として設定するものである。
 地球温暖化問題はエネルギー問題と密接な関係があり、今後、環境と経済を両立させつつ、京都議定書の6%削減約束を達成するため、エネルギー需給両面において各般にわたる対策をより一層強化し、環境調和型のエネルギー需給構造の構築を行う。また、事業者による京都メカニズムの活用についてはエネルギー起源の二酸化炭素排出抑制をより確実なものとするための有効な対策である。なお、エネルギー需給面における二酸化炭素排出量削減については、各対策による排出の削減が当該対策のみで達成されるのではなく、本大綱に盛り込まれた需給両面の全ての対策の効果をあわせた結果、当該対策の効果として算出される試算値である。このような観点から、対策の評価を行う際には、削減量や導入目標量を用いつつ、エネルギー需給構造全体の観点に立って一定の幅をもって行うことが適当である。

<エネルギー需要面の二酸化炭素排出削減対策(省エネ対策)の推進>

 国民経済上できる限り効用を変えない範囲での最大限の省エネルギーを図ることは、最も優れた温暖化対策の一つである。また、エネルギーの需要主体は極めて多岐に亘り、個々の需要者の創意工夫等の主体的対応なくして、二酸化炭素排出量削減への実効性ある効率的対応は難しい。かかる認識の下、エネルギー需要面の対策は、産業部門における自主的対応と民生・運輸部門における省エネ機器・システムの技術開発・導入促進、これに必要な環境整備を中心とする。こうした対応により、国民生活における現状の経済的厚生水準を確保しつつ、先進的省エネルギー機器開発、省エネルギー設備等への投資を通じ新たな経済成長がもたらされることが期待され、環境と経済の両立を目指すことが可能と考える。
 特に、90年代の経済的低迷の中で、エネルギー消費が1990年度比で見ると大きく増加している民生、運輸乗用車部門については、その増加の抑制が喫緊の課題である。
 民生部門については、石油危機以降も一貫してエネルギー需要が増加してきている。このうち家庭部門においては、新たな機器の普及やより快適な生活を求める国民のニーズにより、機器の保有台数の増加や使用時間、使用条件が変わることが需要の増加要因となっている。業務部門においては、産業構造の変化等によるオフィスビルや商業施設等の床面積の増大が需要の主たる増加要因となっている。このため、民生部門においては、各種機器の効率改善の強化、エネルギー管理の徹底、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上等により対策を強化する。
 また、運輸部門については、1990年度から1995年度まではエネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量が1990年度比17%増と大きく伸びているが、1995年度以降は自家用乗用車からの排出量が1999年度に1995年度比11%増となっている他は横ばいとなっており、運輸部門全体として1999年度の排出量は1995年度比で5.6%増となっている。しかしながら、運輸部門からの二酸化炭素排出量は依然として1990年度に比して高い水準にあることから、自動車交通対策、モーダルシフト・物流の効率化、公共交通機関の利用促進等の対策を引き続き充実させ実施していく。
 こうした需要面での対策により、2010年度の効果として、原油換算で、現行対策として約5000万KL、更なる追加対策として700万KLの削減が見込まれる。更なる追加対策による二酸化炭素削減量は約22百万t-CO2と見込まれる。

(1)自主行動計画の着実な実施とフォローアップ
 産業界では地球温暖化問題への主体的取組として、経済団体連合会環境自主行動計画を策定し、それに基づき取組を行い、これまでに大きな成果をあげて来ているところである。自主行動計画は、各主体の自主的かつ幅広い参画による自らの創意工夫を通じた最適な方法の選択が可能、状況の変化への柔軟かつ迅速な対応が可能等の観点から、環境と経済の両立を目指す本大綱の中核の一つを成すものである。特に、自主行動計画等により期待される省エネルギー量は本大綱における省エネルギー対策のおよそ3分の1の量を占め、今後の省エネルギー対策においても中心的役割を成すものとなっている。今後、エネルギー消費の大幅な増加が続くことが見込まれる民生部門、運輸部門における更なる自主行動計画の策定の拡充とその着実な実施が期待されるとともに、それらのフォローアップを行うための対策の充実を図る。

〔現行対策〕
 経済団体連合会環境自主行動計画は、1997年6月に策定され、2010年の二酸化炭素排出量を1990年比±0%以下に抑制することを目標として掲げている。また、経済団体連合会環境自主行動計画の他にも、様々な業種で自主的な行動計画が策定されている。このように産業界等において策定された省エネルギー・二酸化炭素排出削減のための、行動計画について、関係審議会等によりその進捗状況の点検を行い、その実効性を確保する。また、このような行動計画を策定していない業種に対し、数値目標などの具体的な行動計画の早期の策定とその公表を促す。

〔追加対策〕
 現在、経団連において第三者機関による認証・登録制度の導入を検討しているところであり、今後、経団連等において策定している自主行動計画の透明性・信頼性の更なる向上を図るため、政府としても必要な支援を講じ、円滑な導入を後押ししていく。
 また、省エネルギー法に基づき毎年国に提出される定期報告や中長期計画に基づき、自主行動計画による省エネルギー対策の進捗状況をフォローするとともに、今年度から実施されている業種別の総点検の実施に当たり、自主行動計画未策定業種や策定業種であっても自主行動計画における目標に比べ大幅に省エネルギー対策の進捗状況が乖離している業種に対して、省エネルギー法に基づいた点検を重点的に行うこと等により、自主的取組のメリットを活かしつつ、引き続きその実効性を高めていく。
 さらに、事業者の省エネルギー設備導入に対する補助制度について、事業者や業界毎の自主行動計画等に沿った取組に対して重点的な支援を実施する。

(2)エネルギー管理の徹底
 省エネルギーの推進に当たっては、エネルギー需要場所における適切なマネジメントが図られることが重要である。このため、省エネルギー法に基づく措置を中心として、工場・事業場におけるエネルギー管理の仕組みを構築していくとともに、IT技術の活用等による家庭・業務ビル等における適切なエネルギー管理を推進していくなど、現場におけるエネルギー管理の徹底を図る。

〔現行対策〕

  1. 省エネルギー法に基づく工場・事業場対策
     工場・事業場の省エネルギーについては、省エネルギー法に基づき、エネルギー消費量の大きな工場・事業場において、エネルギー管理者制度・エネルギー管理員制度や省エネルギー計画の策定等事業者の自主的取組を前提としたエネルギー管理の仕組みの構築が図られるよう、措置を講ずる。

〔追加対策〕

  1. 工場総点検の実施
     エネルギー消費量の大きな工場について、2001年度より省エネルギー法に基づく基準の遵守状況について新たな総点検のスキームを実施しているところであり、その結果、エネルギー使用合理化の取組が著しく不十分な工場については、合理化計画の作成指示、指示に従わなかった場合の公表等の省エネルギー法に基づく措置の発動を行う。
     また、今後の総点検に当たっては、省エネルギー法に基づき毎年国に提出される定期報告や中長期計画に基づき、自主行動計画による省エネルギー対策の進捗状況をフォローし、自主行動計画における目標に比べ大幅に省エネルギー対策の進捗状況が乖離している業種や自主行動計画未策定業種に対して、重点的に工場総点検を行うことにより、自主行動計画の実効性の向上を図る。
  2. 業務用需要におけるエネルギーマネジメントの推進
     エネルギー消費量の大きな業務用事業場におけるエネルギー需要マネジメント対策の強化を図るため、省エネルギー法の改正を提案し、エネルギー消費量の大きな大規模オフィスビルや大規模商業施設等について、業務用需要の実態を踏まえつつ、既に大規模工場に導入されているエネルギー管理のための措置に準じた仕組みの導入を図る。
     また、近年のIT技術の活用により、業務ビル等においてエネルギーを無理なく適切に管理することができるよう、業務用ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)に対する補助制度等の支援措置等を講じることにより、普及促進を図る。
     さらに、設備の設置者に代わってビジネスとして省エネルギーを包括的に進めるESCO(Energy Service Company)事業の積極的活用が図られる環境の整備を図る。
  3. 家庭用ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の開発・普及
     家庭におけるエネルギーを無理なく適切に管理するため、IT技術の活用によりエネルギーの使用量をコストとして表示し、リアルタイムで視覚化することにより、国民のエネルギーに対するコスト意識を高めたり、家庭内の主要機器を最適制御することができる、家庭用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)の開発・普及を図る。

(3)機器の効率改善の強化
 機器の効率改善対策は、不特定多数の消費者に対し、できる限り効用を変えることなく省エネルギーを進める上で確実性の高い対策である。
 このような考え方に基づき、1998年の省エネルギー法改正において導入されたトップランナー方式の考え方に基づき、省エネルギー基準が定められている自動車、家電・OA機器等について、ラベリング制度等を活用しつつ、当該基準を達成した製品の市場への導入促進を図るとともに、トップランナー方式の考え方に基づく省エネルギー基準の対象を、今後も拡大する。
 また、従来エネルギー効率の改善が進んでいなかった給湯分野について、高効率給湯器の市場への円滑な導入に向けた支援を実施する。
 さらに、輸送機器に関しては、自動車に加えて、鉄道車両、船舶、航空機についても、エネルギー消費効率の向上を図る。

〔現行対策〕

  1. 省エネ法に基づくトップランナー基準方式の導入
     1998年の省エネルギー法改正により、自動車の燃費基準や家電・OA機器等の省エネルギー基準について、商品化されている製品のうち、最高の省エネルギー性能以上の水準を目指すトップランナー方式の考え方を導入したところであり、政府一般公用車の低公害化を契機とした低公害車開発・普及の加速とも併せて、当該基準を達成した製品の市場への円滑な導入の促進等を図る。
  2. ハイブリッド自動車、天然ガス自動車等の普及促進
     省エネルギー性能の高いハイブリッド自動車や天然ガストラック、バス等について、コスト差に着目し、補助制度、税制上の優遇措置等の支援措置により、市場への円滑な導入を促進する。
  3. 鉄道・船舶・航空のエネルギー消費効率向上
     エネルギー消費効率の良い鉄道車両・船舶・航空機材の導入を促進する。

〔追加対策〕

  1. トップランナー基準適用機器の拡大
     従来省エネルギー法の規制対象になっていなかったガス・石油燃料に係る消費機器、物品自動販売機、変圧器等について、省エネルギー法のトップランナー方式の考え方に基づく省エネルギー基準の対象とする。
  2. トップランナー基準適合車の加速的導入
     省エネルギー法によるトップランナー方式の考え方に基づき、2010年度に達成すべき燃費基準が定められている自動車について、自動車税のグリーン化や自動車取得税の軽減措置の活用等により、業界の自主的な取組によるトップランナー基準の前倒し達成、車種の充実等を促す。
  3. 次世代内航船(スーパーエコシップ)の開発・普及
     高効率推進システムと船型改良による輸送効率の向上を実現し、環境への負荷を低減する次世代内航船(スーパーエコシップ)の開発・普及を図る。
  4. 高効率給湯器の普及促進
     民生部門のエネルギー需要の大きな割合を占める給湯分野における省エネルギーの推進を図るため、CO2冷媒ヒートポンプ給湯器、潜熱回収型給湯器等、従来方式に比べ省エネルギー性能が特に優れた機器について、補助制度等の支援措置を講ずる。
  5. 待機時消費電力の削減
     家電機器等の不使用時において無駄に消費される待機時消費電力の削減を図る。このため、主要な家電機器本体について、タイマー機能等待機時消費電力が必要なものは1W以下、それ以外のものについては可能な限りゼロにするとの努力目標達成に向けて、関連業界による自主的な取組による削減が図られるよう、環境作りを行う。
  6. ハイブリッド自動車等の車種の多様化の推進
     ハイブリッド自動車等の導入・普及に向け、補助制度等の支援措置を講ずる。
  7. 高性能工業炉導入促進
     技術開発の終了後に実施されたフィールドテストの結果、高い省エネ実績が上がっており、高い省エネ効果が期待できる高性能工業炉の導入促進に向け、事業者の省エネ設備導入に対する補助制度等の支援措置を講ずる。

(4)住宅・建築物の省エネ性能の向上
 住宅・建築物の省エネルギー性能は、民生部門のエネルギー消費に長期にわたり大きな影響を与えるものであり、確実な対策の実施が求められる。
 このため、省エネルギー法に基づき、建築主の判断の基準を示し、助成措置、建築時の指導、消費者に対する情報提供等の措置を通じ省エネルギー対策の確実な実施を行っていく。
 また、公共住宅・建築物においても率先した省エネルギー措置の実施を図る。

〔現行対策〕

  1. 省エネルギー性能の優れた住宅・建築物の普及促進
     住宅金融公庫融資等の誘導措置、省エネルギー法に基づく指導、省エネルギーに係る性能表示制度の活用、技術者の育成、関係業界における自主的取組の促進等による省エネルギー性能の優れた住宅・建築物の普及の促進を図る。
  2. 公共住宅・建築物における対策
     公共住宅における省エネルギー措置の実施や、環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)の整備を推進する。

〔追加対策〕

  1. 住宅の誘導措置の強化
     住宅金融公庫融資における省エネルギー性能に関する基準を強化し省エネルギーに配慮した住宅の誘導を図る。
  2. 建築物の省エネルギー対策の強化
     省エネルギー法の改正を提案し、オフィスビル、商業施設等の新築・増改築時の省エネルギー措置の届出を義務付ける。また、既存官庁施設のグリーン診断・改修の推進を図る。

(5)自動車交通対策
 運輸部門のうち、対策の柱となる自動車交通対策においては、上述のとおり効率改善等単体に着目したクリーンエネルギー自動車を含む低公害車、低燃費車の開発・普及に加え、営業用自動車等の走行形態の環境配慮化を進めることが必要である。また、交通流の円滑化、交通需要の調整のための交通流対策を引き続き着実に実施していく。
 なお、交通流の円滑化を図るため、環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点の立体化、踏切道改良等を着実に行っていく。

〔現行対策〕
 自動車交通需要の調整、高度道路交通システム(ITS)の推進、路上駐停車対策、路上工事の縮減、交通安全施設の整備といった対策を着実に推進するとともに、テレワーク等情報通信を活用した交通代替の推進を図る。

〔追加対策〕
 バス、トラックへのアイドリングストップ装置等搭載車両の普及によるエコドライブの促進や、速度抑制装置の装備の義務付けによる大型トラックの最高速度の抑制により、営業用自動車等の走行形態の環境配慮化を推進する。
 また、都市圏交通円滑化総合計画の策定に関し、交通需要マネジメント(TDM)実証実験の活用、環境データに基づく信号制御と情報提供を行う環境対応型交通管理プロジェクトの推進、道路交通情報提供事業の促進を図る。さらに、踏切道及びその周辺の交通規制のあり方について、引き続き検討する。

(6)環境負荷の小さい交通体系の構築
 運輸部門では、自動車交通対策に加え、物流・人流のそれぞれについて、二酸化炭素排出量が少なく環境負荷の小さい交通体系を実現するための施策を進めることが必要である。
 このためには、モーダルシフト等によるエネルギー消費原単位の良い輸送機関への代替化や物流の効率化等が重要な対策であり、計画的かつ着実な実施を進めることが必要である。
 また、公共交通機関の整備やサービス・利便性の向上を引き続き図っていくことにより、旅客交通において自家用乗用車から公共交通機関への利用転換を促進する。

〔現行対策〕
 内航・鉄道貨物輸送の推進及び物流の効率化についての対策を促進し、二酸化炭素の排出の抑制を図る。
 また、都市部における鉄道新線及び中量軌道システムの整備並びにサービス・利便性向上を通じた公共交通機関の利用促進等について着実に推進する。

〔追加対策〕
 海上輸送へのモーダルシフトの推進やそのための基盤となる内航海運の競争力強化について、船舶のエネルギー消費効率を向上させるスーパーエコシップの開発をはじめとする新技術の導入、規制の見直し、海上ハイウェイネットワークの構築等を図ることにより実現するとともに、輸送力増強等の鉄道の利便性向上を図ることにより、鉄道輸送へのモーダルシフトを推進する。さらに、物流効率化の一層の推進のため、規制の見直し、利便性向上、多目的国際ターミナル等交通基盤の整備を通じて対策の強化を図る。また、公共交通機関の利用促進についても、対策の強化及び充実を図り推進する。

(7)新たな省エネルギー型技術等の開発・普及
 新たな省エネルギー型技術等の開発・普及は、それによるブレークスルーによって大幅なエネルギー効率の改善が図られる可能性の高い対策であることから、引き続き推進していくことが重要である。このため、現段階で2010年における効果を見込むことができる高性能ボイラーや高性能レーザー、発光ダイオードを用いた高効率照明の導入を促進する。運輸部門については、次世代のクリーンエネルギー自動車を含む低公害車について、技術の開発・普及の推進に加え、省エネルギー型次世代交通機関の研究開発等新技術の開発を促進する。

表 1 産業部門の需要面での対策
現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
(現行○、追加◎)
○自主行動計画の着実な実施とフォローアップ(経団連自主行動計画は2010年の二酸化炭素排出量を1990年比±0%以下に抑制することを目標)

○省エネ法に基づく工場対策
<導入目標量>
省エネ効果:
 約2,010万kl
 約6,050万t-CO2

  ○2001年度から、省エネ法に基づく基準の遵守状況について新たな総点検スキームを実施。今後必要に応じ、省エネ法に基づく法的措置を発動。また、省エネ法に基づき国に提出された報告等により自主行動計画による省エネルギー対策の進捗状況をフォローしていき、自主行動計画未策定業種や目標に比べ大幅に省エネルギー対策の進捗状況が乖離している業種に対し省エネルギー法に基づいた点検を重点的に実施。
○高性能工業炉の導入促進
<導入目標量>
省エネ効果:
 約40万kl
 約110万t-CO2
◎事業者の省エネ設備導入に対する補助制度について、事業者や業界等の自主行動計画等に沿った取組に対して重点的に支援。
○技術開発及びその成果の普及
  • 高性能ボイラー
  • 高性能レーザー
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約50万kl
     約150万t-CO2
  • ◎2001年度まで、高性能レーザー等の技術開発に対して支援を実施。
    • 追加対策とは、今回の大綱の見直しに際して追加的に講ずることとした対策又は抜本的に内容を見直し強化した対策をいい、現行対策とはそれ以外の現行の対策をいう。
    • 削減量とは、当該対策を講じた場合、近似的に推計される2010年時点における排出削減への寄与量をいう。
    • 以下、すべての表についても同じ。

    表2 民生部門の需要面での対策
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    ●機器の効率改善対策
    ○機器の効率改善の強化措置
    <導入目標量>
    省エネ効果:約540万kl
    (機器ごとの目標年度において対象となる全製造事業者等の基準値達成を想定)

    ■エアコン

  • 目標年度2007冷凍年度
    (一部2004冷凍年度)
  • 省エネ効果* 約63%
     (冷暖房兼用)
  • 省エネ効果* 約14%
     (冷房専用)

    ■TV

  • 目標年度 2003年度
  • 省エネ効果* 約16%

    ■VTR

  • 目標年度  2003年度
  • 省エネ効果* 約59%

    ■蛍光灯器具

  • 目標年度  2005年度
  • 省エネ効果* 約17%

    ■複写機

  • 目標年度  2006年度
  • 省エネ効果* 約30%

    ■電子計算機

  • 目標年度  2005年度
  • 省エネ効果* 約83%

    ■磁気ディスク装置

  • 目標年度  2005年度
  • 省エネ効果* 約78%

    ■電気冷蔵庫/電気冷凍庫

  • 目標年度  2004年度
  • 省エネ効果* 約30%
    (*旧大綱策定後に設定されたトップランナー基準により当初想定していたよりも全体として約2割の省エネ効果増)
     約3,040万t-CO2
  •   ○1998年省エネ法改正により、家電・OA機器に対して、トップランナー基準方式を導入(エアコン、TV、VTR、蛍光灯器具、複写機、電子計算機、磁気ディスク装置、電気冷蔵庫、電気冷凍庫)。
    ○トップランナー適用機器の拡大
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約120万kl
     約290万t-CO2
    ◎従来対象となっていなかったガス・石油機器、業務用機器等をトップランナー機器として拡大・追加。
    ○高効率給湯器の普及促進
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約50万kl
    (2010年度に約400万台の普及を想定)
     約110万t-CO2
    ◎普及促進のための補助制度を創設。
    ○待機時消費電力の削減
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約40万kl
     約110万t-CO2
    ◎消費者が待機時消費電力の小さい商品を判別できるような仕組み作りを今後行う。
    ○技術開発及びその成果の普及
  • 高効率照明
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約50万kl
     約180万t-CO2
  • ◎高効率照明等の技術開発に対して支援を実施。
    ●住宅・建築物の省エネルギー性能の向上
    ○住宅・建築物の省エネ性能の向上
    <導入目標量>
    省エネ効果:約860万kl

    ■新築住宅

  • 目標年度2008年度
     :現行基準を5割が達成

    ■新築建築物(非住宅、2000u以上)

  • 目標年度2006年度
     :現行基準を8割が達成
     約3,560万t-CO2
  •   【住宅の省エネ性能の向上】
    ○省エネ法に基づき建築主に対し努力義務。建築主の判断の基準及び具体的な仕様を「設計及び施工の指針」として定め公表(平成11年3月に改正・強化)

    ◎住宅金融公庫融資による省エネルギーに配慮した住宅の誘導措置における基準の強化

    ○公共住宅における省エネルギー措置の実施や省エネルギー基準に適合した市街地住宅等に対する補助

    ○省エネルギー性能を含む住宅の性能について分かりやすく表示する制度(住宅性能表示制度)の普及推進

    【建築物(非住宅)の省エネ性能の向上】

    ○省エネ法に基づき建築主に対して努力義務。建築主の判断の基準を定め公表(平成11年3月に改正・強化)

    ◎特定建築物の新築・増改築時の省エネルギー措置の届出の義務づけ(省エネ法の改正)

    ○日本政策投資銀行の融資、税制等による誘導

    ○環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)の整備を推進

    ◎既存官庁施設のグリーン診断・改修の推進を図る

    【住宅・建築物(共通)の省エネ性能の向上】

    ○講習会等を通じた設計・施工に係る技術者の育成

    ○住宅・建築物に係る関係業界における自主的な取組の促進

    ●エネルギー需要マネジメントの強化
      ○家庭用ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の普及促進
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約90万kl
    (2010年度に全世帯の約30%への普及を想定)
     約290万t-CO2
    ◎フィールドテストに対する支援を実施。
    ○業務用需要におけるエネルギーマネジメントの推進
    <導入目標量>
    【BEMS】
    省エネ効果:
     約160万kl
    (2010年度に業務床面積の約30%への普及を想定)
     約770万t-CO2
    ◎省エネ法の改正により、大規模オフィスビル等についても、大規模工場に準ずるエネルギー管理の仕組みを導入。

    ◎業務用エネルギーマネジメントシステム(BEMS)の普及促進のための補助制度を創設。

    ◎ESCO(Energy Service Company)の一層の活用に向けて、補助制度・低利融資制度等の支援策を講じていく。

    表3 運輸部門の需要面での対策
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    ■自動車交通対策
    ●クリーンエネルギー自動車を含む低公害車、低燃費車の開発・普及及び営業用自動車等の走行形態の環境配慮化
    ・クリーンエネルギー自動車を含む低公害車、低燃費車の開発・普及
    ○自動車の燃費の改善の強化措置
    (排出削減見込み量)
    約1,390万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約540万kl
    (ガソリン自動車及びディーゼル自動車ごとの目標年度において対象となる全製造事業者等の基準値達成を想定)

    ■乗用自動車(ガソリン)

  • 目標年度  2010年度
  • 省エネ効果* 約23%

    ■乗用自動車(ディーゼル)

  • 目標年度  2005年度
  • 省エネ効果* 約15%

    ■貨物自動車(ガソリン)

  • 目標年度  2010年度
  • 省エネ効果* 約13%

    ■貨物自動車(ディーゼル)

  • 目標年度  2005年度
  • 省エネ効果*  約7% (*旧大綱策定後に設定されたトップランナー基準により当初想定していたよりも全体として約2割の省エネ効果増)

    ○クリーンエネルギー自動車の普及促進
    (排出削減見込み量)約220万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約80万kl

  • ○トップランナー基準適合車の加速的導入、自動車税のグリーン化や自動車取得税の軽減措置による低公害車普及の急速な進展、政府一般公用車の低公害化を契機とする低公害車開発・普及の加速
    (排出削減見込み量)
    約260万t−CO2(注)
    <導入目標量>
    省エネ効果:約100万kl

    (注)将来の大綱見直しに当たっては、2001年4月の自動車税のグリーン化や自動車取得税の軽減措置による低公害車普及及び政府の一般公用車の低公害化等の最近の進展状況をさらに反映するよう措置するものとする。

    ○1998年省エネ法改正により、自動車に対して、トップランナー基準方式を導入

    ◎自動車税のグリーン化の導入

    ◎自動車取得税の軽減措置の延長

    ◎車両総重量2.5t超の貨物自動車の燃費基準の検討に向けた燃費測定方法の策定

    ◎2002年度以降3年を目途に政府の一般公用車を低公害車に切り替える等の取組を推進

    ◎燃料電池自動車の世界に先駆けた早期実用化に向けた技術開発、実証試験等の推進

    ◎次世代も視野に入れたクリーンエネルギー自動車を含む低公害車の開発促進

    ◎クリーンエネルギー自動車を含む低公害車普及に向けたITネットワーク形成等

    ◎クリーンエネルギー自動車を含む低公害車に対する補助制度の推進

    ○電気自動車の共同利用システムの実用化支援

    ◎燃料供給インフラ(エコ・ステーション)整備に対する補助の推進

    ◎排出ガス後処理装置を十分に機能させるための自動車燃料品質対策(軽油について、2004年末までに硫黄分を500ppmから50ppmに低減。ガソリンの低硫黄化等、さらに改善を図る。)

    ・営業用自動車等の走行形態の環境配慮化
      ○バス、トラック等のエコドライブの促進のため、既存の対策を見直し、推進

    ○営業用自動車等の走行形態の環境配慮化による環境負荷低減対策の推進

  • アイドリングストップ装置搭載車両の普及
    (排出削減見込み量)
    約110万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約40万kl
    (バス・トラックの更新車両の約30%に搭載を想定)
  • 大型トラックの走行速度の抑制
    (排出削減見込み量)約80万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約30万kl
  • ◎自動車運送事業者におけるグリーン経営の促進を2002年度から実施

    ◎大型トラックに対する速度抑制装置の装備の義務付け(新型生産車:2003年9月、使用過程車:2003年9月以降順次)

    ●交通流対策
    ○自動車交通需要の調整
    (排出削減見込み量)
     約70万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:
     約20万kl
    ○現行の対策を見直し、着実に推進 ○交通需要マネジメント(TDM)施策の推進

    ◎都市圏交通円滑化総合計画の策定に関し、2001年度創設の交通需要マネジメント(TDM)実証実験を活用

    ○自転車道、自転車駐車場の整備による、自転車利用環境整備の推進

    ○自転車利用の促進に資する社会実験の実施

    ○高度道路交通システム(ITS)の推進
    (排出削減見込み量)
     約370万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約140万kl
    ○ノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)を整備し、2002年度末までに全国約900箇所の料金所にサービスを拡充

    ○光ビーコン等の整備による交通情報収集の充実

    ○VICS(道路交通情報通信システム)の推進(2002年度中に全国でサービスを開始)

    ○中央処理装置の高度化、新信号制御方式(MODERATO)の導入等交通管制センターの高度化

    ○交通公害低減システム(EPMS)等の推進

    ○事業用車両に対する車両運行管理システム(MOCS)等の整備

    ◎環境対応型交通管理プロジェクトの推進

    ◎インターネットITS、プローブ情報システムの開発・標準化

    ○ドライバーへの情報提供・危険警告等により安全で快適な走行を支援するシステムを開発

    ○グリーン購入法に基づき国等がETC対応車載器及び3メディア対応型VICS対応車載機を積極的に導入し、普及を促進

    ○信号機の集中制御化<1995年から2010年までに約4万基の整備を想定>

    ○道路交通情報提供事業の促進 ◎2001年道路交通法改正等により、道路交通情報提供事業者の正確かつ適切な道路交通情報の提供を促進

    ◎交通情報検証システムの的確な運用

    ◎交通規制情報のデータベース化の推進

    ○路上駐停車対策 ○適正な駐車規制の実施

    ○違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の整備

    ○違法駐停車の取締りの推進

    ○路上工事の縮減(排出削減見込み量)
     約40万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約10万kl
    ○共同溝の整備、集中工事・共同施行の促進、道路使用許可の適切な運用
    ○交通安全施設の整備(排出削減見込み量)
     約70万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:20万kl
    ○信号機の設置及び系統化、感応化等
    <1995年度から2010年度までに約2万基の高度化を想定>
    ○交通管制の高度化
    ○交通情報板を活用した交通誘導、踏切信号機の整備等によるボトルネック対策の推進
    ○信号灯器のLED化の推進
    ○テレワーク等情報通信を活用した交通代替の推進
    (排出削減見込み量)
     約340万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約130万kl(2010年のテレワーク総人口:就業者数の25%程度(1630万人程度)を想定)
    ○企業における情報通信環境の高度化、テレワークの導入、SOHO支援等に資する税制措置や金融支援

    ◎テレワーク・SOHOの促進に向けた情報提供、普及啓発等

    ■環境負荷の小さい交通体系の構築
    ●モーダルシフト・物流の効率化等
    ○内航・鉄道貨物輸送の推進
    (排出削減見込み量)
     約150万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約50万kl
    ○現行の対策を見直し、着実に推進 
    ○環境負荷低減型物流システム促進のための制度の検討 ◎幹線物流の効率化を支援するための法的措置を含む制度の検討

    ◎都市内物流の効率化に資する交通需要マネジメント(TDM)実証実験を推進

    ◎2002年度から、幹線の環境負荷低減のための実証実験を推進

    ◎参入規制・料金規制の緩和のため、貨物運送取扱事業法の改定案を2002年通常国会に提出

    ○規制の見直し、新技術の導入等を通じた競争力強化による海運へのモーダルシフトの推進や輸送効率の向上
    (排出削減見込み量)
     約260万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約100万kl(内航海運の輸送分担率が44%に向上すると想定)
    ◎内航海運の競争力を強化することにより輸送分担率を44%台に向上
  • 2001年度中を目途に次世代内航海運ビジョンを策定
  • 参入規制の緩和等の事業規制の見直し
  • 船員の乗り組み体制の見直し等の社会的規制の見直し
  • スーパーエコシップについて、2005年度までに実証実験等を終了し、2006年度より実用化等

    ◎複合一貫輸送に対応した内貿ターミナル等の拠点的整備、湾内ノンストップ航行の実現等による湾内航行時間の短縮等、海上ハイウェイネットワークの構築

  • 2007年に東京湾口航路整備事業完成予定
  • 2006年度までに東京湾においてAIS(自動船舶識別装置)の活用等海上交通センターを中心とした航行管制・支援機能強化を整備予定
  • ○輸送力増強等の鉄道の利便性向上
    (排出削減見込み量)
     約30万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約10万kl
    (鉄道コンテナの輸送分担率が3.6%に向上すると想定)
    ○鉄道貨物輸送力の強化

    ◎参入規制・運賃料金規制の緩和のため、鉄道事業法の改正案を2002年通常国会に提出

    ◎鉄道等を活用した食品等のコールドチェーンシステムの整備

    ○物流の効率化(排出削減見込み量)
     約470万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約180万kl
    ○現行の対策及び効果を以下のとおり見直し、推進
  • トラックの輸送の効率化
     (排出削減目標量)
     約290万t−CO2 
    <導入目標量>
    省エネ効果:約110万kl
    (1996年度から2010年度にかけて、トレーラーの保有台数が約1.5万台増加、25t車の保有台数が約7万台増加すると想定)
  • 国際貨物の陸上輸送距離の削減
    (排出削減目標量)
    約180万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約70万kl
    (陸上輸送量約9,300百万トンキロ削減を想定)
  • ◎規制の緩和による営業用貨物輸送の活性化のため、貨物自動車運送事業法の改正案を2002年通常国会に提出

    ○車両の大型化、トレーラー化

    ○車両の大型化に対応した橋梁の補強

    ○中枢・中核国際港湾における国際海上コンテナターミナルの整備

    ◎多目的国際ターミナルの拠点的整備

    ◎生鮮品等の共同配送施設等の整備

    ○信号機の設置、改良及び集中制御化

    ●公共交通機関の利用促進
    ○公共交通機関の利用促進
    (排出削減目標量)
     約520万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約200万kl
    (乗用車利用約8,000万台キロ削減を想定)
    ○現行の対策を見直し、着実に推進

    ○都市部における鉄道新線及び中量軌道システムの整備を着実に推進

    ○サービス・利便性向上を一層推進することにより公共交通機関の利用を促進

    ○都市部における鉄道新線整備に対する助成(1995年から2010年までに約310km供用開始予定)

    ○都市部における新交通システム等中量軌道システム整備を推進(1995年から2010年までに約100km供用開始予定)

    ○整備新幹線の整備

    ○ICカードの導入、乗り継ぎ改善等のサービス・利便性向上を通じた公共交通機関の利用の促進

    ◎都市圏交通円滑化総合計画の策定に関し、2001年度創設の交通需要マネジメント(TDM)実証実験を活用

    ◎国民運動による公共交通機関の利用促進

    ○駅前広場等交通結節点の整備

    ○公共交通機関利用促進に資する社会実験の実施

    ○バス専用・優先レーンの設定、バス優先信号制御による公共車両優先システム(PTPS)等の整備の推進

    ●その他輸送機関のエネルギー消費効率向上
    *「船舶のエネルギー消費効率の向上」による効果を除く
    ○鉄道のエネルギー消費効率の向上(排出削減見込み量)
     約40万t−CO2
    <導入目標量>省エネ効果:約10万kl
    (エネルギー消費原単位約7%改善を想定)

    ○航空のエネルギー消費効率の向上
    (排出削減見込み量)
     約110万t−CO2
    <導入目標量>
    省エネ効果:約40万kl
    (エネルギー消費原単位約7%改善を想定)

    ○新技術の開発の推進 ○鉄道車両・航空機材の新規導入促進
  • 事業者による省エネ型車両・機材導入についての取組
  • 新規車両・機材の導入に対する支援措置による車両・機材の更新

    ◎スーパーエコシップ等新技術の開発への支援

    ◎省エネルギー型次世代交通機関の研究開発

  • <エネルギー供給面の二酸化炭素削減対策の推進>

     エネルギー供給面においては、二度の石油危機を経て、石油代替エネルギー政策の下、原子力、天然ガス等の比重が高まり、エネルギー供給の多様化が進展した。他方、近年、エネルギー分野での自由化の進展、より一層の効率化要請の中、安価な石炭燃料への依存が高まりつつあり、二酸化炭素排出量の増加の一因となっていることも否定できない。
     エネルギー起源の二酸化炭素排出量が全体の約9割を占める状況下、今後、 地球温暖化対策との調和と安定供給確保を実現するためには、原子力、新エネルギー等の非化石エネルギーの一層の導入促進が必要である。また、引き続きエネルギー供給の太宗を占める化石エネルギー間における燃料転換を促進し、効率化への要請も満たしつつ、環境調和型のエネルギー供給構造の実現を目指す。

    (1)新エネルギー対策
     新エネルギーは、エネルギーの安定供給の確保に向けた対策であるほか、エネルギー発生の過程において追加的な二酸化炭素の排出がなく、又は環境負荷を低減しつつ化石エネルギーの使用の合理化が可能となるものであり、結果として二酸化炭素の排出量が削減されることにより地球温暖化対策にも資することを踏まえ、積極的な導入を進める必要がある。
     現在、例えば、一次エネルギー総供給に占める供給サイドの新エネルギーの割合は1%台にとどまっているが、今後の技術進歩の可能性、経済性向上の期待等を踏まえれば、長期的には新エネルギーが我が国のエネルギー源の一翼を担うことを目指して意欲的に取り組む必要がある。また、新エネルギーは、新技術の開発や新市場の創出を通じて、経済の活性化や雇用創出に資すること等の意義も併せて有している。
     今後の新エネルギー対策については、@導入段階における支援、A技術開発・実証段階における支援、B環境整備・普及啓発等、C電力分野における新市場拡大措置の導入(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法制定の提案)等の諸政策を一層積極的に推進する。
     なお、新エネルギーは、その利用形態が分散型となることから、風力発電、廃棄物発電、バイオマスエネルギー等の導入においては地方公共団体や事業者レベルの取組、太陽光発電、太陽熱利用等の導入においては、住宅用等個人レベルの取組が重要になることを踏まえつつ、施策の実施に当たることとする。また、廃棄物発電は、燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効に活用するものであることから、「循環型社会形成推進基本法」の理念及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の「廃棄物の減量化目標」との整合性を図りつつ、推進するものとする。
     これらの施策を強力に実施することにより、供給サイドの新エネルギー対策では、2010年度までに1910万klの新エネルギー導入を図る。これにより、追加対策分として約3,400万t-CO2の削減が見込まれる。また、需要サイドの新エネルギー対策では、2010年度までに、クリーンエネルギー自動車348万台、天然ガスコージェネレーション464万kW、燃料電池220万kWの新エネルギー導入が見込まれる*)。

    *)これらの省エネルギー効果については、エネルギーの需要面での取扱いとなっている。

    (現行対策)
    1. 導入段階における支援
      • 地方公共団体、事業者等に対する導入補助の推進
      • 太陽光発電等の導入補助の推進
      • 税制・金融面での支援
    2. 技術開発・実証段階における支援
      • 燃料電池、太陽光発電等に関する技術開発・実証試験の推進
    3. 環境整備・普及啓発等
      • 規制・制度面の環境整備
      • 普及啓発等の推進

    (追加対策)

    1. 導入段階における支援
      • バイオマス、雪氷の新エネ法への位置づけ
      • 地方公共団体、事業者等に対する導入補助の推進
      • 太陽光発電、太陽熱利用等の導入補助の推進
      • グリーン購入・調達の推進
    2. 技術開発・実証段階における支援
      • 燃料電池、太陽光発電、バイオマスエネルギー等に関する技術開発・実証試験等の強化
    3. 環境整備・普及啓発等
      • 電力系統連系対策の検討等
      • 普及啓発等の強化
    4. 電力分野の新市場拡大措置
      • 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法制定の提案

    表4 新エネルギー対策
    現行対策とその評価追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    ○現行新エネルギー対策 新エネルギーの2010年度1,910万kl導入を目指し、1998年に取りまとめられた新エネルギー対策
    <2010年度導入見込み量:878万kl>
      【導入段階における支援】
    ○地方公共団体、事業者等に対する 導入補助の推進
    ○太陽光発電等の導入補助の推進
    ○税制・金融面での支援

    【技術開発・実証段階における支援】
    ○燃料電池、太陽光発電等に関する技術開発・実証試験の推進

    【環境整備、普及啓発等】
    ○規制・制度面の環境整備
    ○普及啓発等の推進

      ○追加新エネルギー対策
    新エネルギーの2010年度1910万kl導入を目指し、2001年に取りまとめられた追加的な新エネルギー対策
    (排出削減見込み量)
    約3,400万t-CO2

    <2010年度導入目標量:1,910万kl>
    (内訳は以下のとおり。)
    太陽光発電 482万kW
    (うち、住宅用太陽光発電:約100万台想定)
    風力発電 300万kW
    廃棄物発電 417万kW
    バイオマス発電 33万kW
    太陽熱利用 439万kl
    (うち、住宅用太陽熱利用:約900万台想定)
    未利用エネルギー 58万kl
    廃棄物熱利用 14万kl
    バイオマス熱利用 67万kl
    黒液・廃材等 494万kl
    【導入段階における支援等】
    ◎バイオマス、雪氷の新エネ法への位置づけ
    ◎地方公共団体、事業者等に対する導入補助の推進
    ◎太陽光発電、太陽熱利用等の導入補助の推進
    ◎グリーン購入・調達の推進

    【技術開発・実証段階における支援】
    ◎燃料電池、太陽光発電、バイオマスエネルギー等に関する技術開発・実証試験等の強化
    ◎地域特性も踏まえた技術開発等の推進

    【環境整備・普及啓発】
    ◎電力系統連系対策の検討等
    ◎燃料電池実用化に向けたソフトインフラ整備の推進
    ◎普及啓発等の強化

    【電力分野の新市場拡大措置】
    ◎電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法制定の提案

    (2)燃料転換等
     現在一次エネルギー供給の約83%を占める化石燃料は、2010年以降においても引き続きエネルギー供給の太宗を占めることが見込まれている。従って、化石燃料の供給構造を、安定供給確保を念頭に置きつつ、より二酸化炭素の排出の少ない環境調和型へ転換することが、地球温暖化問題へのより長期的対応の観点からも、極めて重要な課題である。また、2010年度までの上記省エネルギー、新エネルギー対策を行っても、エネルギー起源の二酸化炭素を1990年度と同じ水準に抑制するためには、さらに約18百万t-CO2の排出量削減が必要である。
     このため、石炭燃料等の使用増加が見込まれる発電分野等を中心に燃料転換等を実現していくことが必要である。具体的には、運転開始からの経過年数の長い老朽石炭火力発電所において高効率の天然ガスコンバインドサイクル発電への転換を推進するとともに、石炭等を燃料とする産業用ボイラー等において天然ガスへの燃料転換を促進していくほか、低利融資制度等によりパイプライン等のインフラ整備を推進し天然ガスの導入拡大を図っていくこととする。以上の施策等を総合的に講ずることにより、約18百万t-CO2削減が見込まれる。
     なお、二酸化炭素排出抑制につながる電力負荷平準化対策を蓄熱システムの普及促進等により、引き続き推進する。

    (追加対策)
    1. 転換の促進支援
      • 老朽石炭火力発電天然ガス化転換費用の補助、エネルギー多消費型設備天然ガス転換費用の補助
    2. 環境整備
      • 天然ガスパイプラインにかかる安全基準の整備
      • 国内天然ガス開発事業(開発井、及び連絡パイプライン等)への低利融資
    表5 燃料転換等
    現行対策とその評価追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
      ○電力等の燃料転換等に向けた追加対策

    排出削減見込み量
     約1800万t-CO2
    ◎老朽石炭火力発電の天然ガス火力発電への転換費用の一部を補助

    ◎一定規模以上のCO2排出削減効果が見込まれる産業用ボイラー等の燃料転換費用の一部を補助

    ◎天然ガスパイプラインにかかる安全基準の整備

    ○国内天然ガス開発事業(開発井、連絡パイプライン等)への低利融資

    (3)原子力の推進
     我が国のエネルギー安定供給確保等の観点から導入が図られてきた原子力発電は、発電過程で二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策の観点からも重要な電源である。135万kW級の原子力発電所一基当たりの二酸化炭素削減効果は、石炭火力を代替した場合、1990年度のエネルギー起源の二酸化炭素排出量の約0.7%に相当するほど大きなものであり、引き続き増加するエネルギー需要を満たしつつ、我が国の削減目標を達成するためには、原子力発電所の新増設が不可欠である。このため、安全性の確保を大前提として、原子力発電を推進することをエネルギー政策の観点のみならず、地球温暖化対策の観点からも重要な課題と位置付け、今後、2010年度までの間に原子力発電電力量を2000年度と比較して約3割増加することを目指した原子力発電所の新増設が必要である。

     原子力の推進に当たっては、安全性の確保を大前提として、立地地域はもとより電力消費地を含めて国民的な合意形成に向けた取組を行うことが必要である。また、国民の一人一人が原子力を含むエネルギー問題について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けるための教育を推進するための環境整備を図る必要がある。原子力発電施設等の立地地域については、これまで、いわゆる「電源三法」及び「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」に基づき、防災面にも配慮しつつ、各種の地域振興策が講じられてきたところであるが、今後ともその着実かつ一層の推進を図り、原子力立地の推進に向け、関係省庁が十分連携し、政府一体となって取組を行う。

     また、限りあるウラン資源の有効利用を図るとともに、原子力発電所の長期安定的な運転継続を確保するため、核燃料サイクルについて、その研究開発も含め、国内における確立を着実に進めていく。さらに、原子力発電を利用する上での重要課題である高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の立地に向けて引き続き努力をしていく。

    (現行対策)
    1. 安全性の確保を大前提として、立地地域はもとより、電力消費地も含めて国民的な合意形成に向けた取組の実施
    2. 電源三法及び原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法に基づく施策の着実な推進
    3. 核燃料サイクルの研究開発、その成果の適切な技術移転、プルサーマルの着実な推進など核燃料サイクルの国内における確立への取組
    (追加対策)
    1. 核燃料サイクル施設等の立地に係る電源立地地域振興策の推進(MOX燃料加工施設、高レベル放射性廃棄物最終処分施設等を電源立地等初期対策交付金の対象に追加等)
    2. 原子力政策に関する国民的合意形成に向けた「広聴・広報活動」の抜本的強化
    3. エネルギーや原子力に関する教育の推進のための環境の整備

    エネルギー起源のCO2排出抑制対策[マトリックス表(別紙参照)]

    3.非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出抑制対策の推進

     非エネルギー起源二酸化炭素排出抑制対策として、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による廃棄物焼却量の抑制、原材料やバイオマスエネルギー源として化石燃料の使用量を抑制でき、再生産可能な木材の有効利用等を実施してきた。また、メタンの排出抑制対策として、ごみ直接埋立の縮減、ほ場の管理の改善、家畜の飼養管理に関する技術研究等を実施してきた。一酸化二窒素の排出削減対策についても、工業過程での排出抑制対策、廃棄物・下水汚泥等の焼却施設における燃焼温度の高度化等を進めてきた。
     石灰石の消費、アンモニアの製造等に伴い排出される二酸化炭素を計上している工業過程からの1999年度の排出量(5,400万t-CO2)は、同分野の1990年度の排出量に対して12.8%減少している。これは1999年度のセメント生産量が1990年度に対して12.4%減少したことなどが要因として挙げられる。また、化石燃料由来の廃棄物(廃油、廃プラスチック類)の燃焼等による二酸化炭素の排出は、二酸化炭素総排出量の約2%を占めるに過ぎないが、1999年度の排出量(2,300万t-CO2)を同分野の1990年度の排出量と比較すると、約1.5倍に増加している。
     一方、メタンと一酸化二窒素の1999年度排出量(それぞれ2,500万t-CO2、1,800万t-CO2)は、1990年度と比較してそれぞれ12.4%、21.1%減少している。メタンについては水田面積の減少に伴う農業部門での減少、一酸化二窒素については、化学繊維原料の製造を行っている事業場において、製造工程に分解装置を導入したことが大きく寄与している。
     現行の対策・施策により、非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の排出量は2010年にこれらの分野の1990年比で2.8%(基準年総排出量比0.29%)減少するものと見込まれ、追加的な対策を実施することにより、1990年比で4.8%(基準年総排出量比0.5%)減少するものと見込まれる。

    表6 非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出抑制対策の推進
     現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    非エネルギー起源の二酸化炭素 ○工業過程からの二酸化炭素排出抑制対策
  • 生産工程で二酸化炭素排出のより少ない混合セメントの利用拡大
  •    ○国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律に基づく率先利用の推進
    ○廃棄物の焼却に由来する二酸化炭素排出抑制対策の推進(約300万t-CO2)
  • 廃棄物等の分別の徹底、分別回収・再使用の実施、関連施設の整備等による廃棄物の排出量の削減発生抑制及び再生利用率の向上<一般廃棄物約24%、産業廃棄物約47%>。
  • グリーン購入の推進による再生資源・商品の利用促進
  • ○ダイオキシン対策推進基本指針に基づく減量化の目標量の設定(平成11年9月)、循環型社会形成推進基本法の制定、廃棄物処理法の改正及びリサイクルの推進に係る諸法の制定(平成12年6月)並びに廃棄物処理法に基づく廃棄物減量化目標の設定(平成13年5月)により、約300万t-CO2削減を着実に実施する。 ○廃棄物処理法に基づく廃棄物減量化目標の設定、容器包装廃棄物、建設廃棄物等の個別リサイクル法に基づく措置の実施
      ○化石燃料由来製品の代替
  • バイオマス利用技術の開発・導入の促進
  • ○生分解性素材等バイオマス利用技術の開発、事業者等に対する導入支援
    ○木材資源の有効利用の推進
  • 森林・林業基本計画における林産物の供給及び利用の現状
    <木材供給・利用量>
     20百万m3
  • ○木材・木質材料の利用拡大
  • 森林・林業基本計画における林産物の供給及び利用に関する目標
    <木材供給・利用量>
     25百万m3
  • ○木材・木質材料の利用・加工技術等の向上、木材の需要拡大、長期利用に関する普及啓発等

    ○木材需要の大宗を占める住宅での木材の需要拡大及びその長期利用を促進

    ○国民への普及啓発、公共施設等をはじめとする様々な用途での木材の需要拡大及びその長期利用、多段階利用を促進

       ○農地(草地を含む)土壌からの二酸化炭素排出抑制対策の推進
  • 農地での緑肥栽培及びたい肥還元等による有機物の適切な供給等による農地土壌からの二酸化炭素排出削減<14万ha(新たに有機物の適切な供給が行われる農地の見込み面積)>
    (約42万t-CO2)
  • ◎農地における緑肥栽培、たい肥還元等の促進

    ○草地の保全管理、整備等の推進

    メタン (メタンの排出削減対策)

    ○廃棄物の排出抑制及び再生利用を推進するとともに、これらの措置を行ってもなお燃やさざるを得ない可燃性廃棄物を焼却処理して最終処分量を半減
    <一般廃棄物6.4百万t、産業廃棄物30百万t>
     (約120万t-CO2)

       ○食品リサイクル法に基づく製造過程、調理過程での工夫方策の普及、物流の効率化等による食品廃棄物等の発生抑制の推進

    ○たい肥化、飼料化等リサイクル施設の整備

    ○ほ場の管理の改善 ○農業部門からの温室効果ガス排出削減技術の開発 ○ほ場の管理の改善

    ○農業部門からの温室効果ガス排出削減技術の開発

    ○家畜の飼養管理技術等排出削減技術等の確立
    一酸化二窒素 (一酸化二窒素の排出削減対策)
    ○アジピン酸製造過程における一酸化二窒素分解装置の設置
     (約874万t-CO2)
       ○事業者の自主的取組により既に対策済み。
    ○下水汚泥焼却施設における燃焼の高度化(約140万t-CO2)

    ○一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化(約5万t-CO2)

       ○「下水道における地球温暖化防止実行計画策定の手引き」の周知徹底

    ◎ 「下水道施設計画・設計指針」において適正な燃焼温度管理として明記することにより、全ての高分子流動炉において高温化燃焼を導入

    ○廃棄物焼却施設に係る維持管理基準・構造基準の設定

    ○下水道、合併処理浄化槽等の普及に伴う汚水処理の高度化(約70万t-CO2)    ○下水道、合併処理浄化槽等の整備促進
       ○農業部門からの温室効果ガス排出削減技術の開発 ○適正施肥の推進

    ○農業部門からの温室効果ガス排出削減技術の開発

       現行対策による排出削減量:
    計約1,509万t-CO2
    (対基準年総排出量比▲約1.23%)
    追加対策等による排出削減量:
     計約302万t-CO2
    (対基準年総排出量比▲約0.25%)
      

    注1)混合セメントの利用拡大等削減量を明記していない対策により、合計で約260万t-CO2以上の削減を達成することとする。

    注2)農地からの二酸化炭素の排出については、マラケシュ合意を受け、今後排出・吸収目録に算入することとし、排出削減を図ることとしている。

    2010年における排出量見通し
     約122百万t-CO2
     (対基準年総排出量比▲約0.5%)

    4.代替フロン等3ガスの排出抑制対策の推進

    (1)これまでの取組
     代替フロン等3ガスは、温室効果ガス排出量全体に占める割合は約3%(1999年度CO2換算ベース)に過ぎないが、モントリオール議定書に基づき生産・使用の削減が進められているオゾン層破壊物質の有力な代替先である等のため、その増加をいかに抑制するかが課題となっている。このため、自然体ベースから約3,400万t-CO2を削減することを目標に、現行対策として、以下のものを一体として取り組んできた。
    1. 産業界の計画的な取組の促進
       平成10年2月の「産業界によるHFC等の排出抑制対策に係る指針」(通商産業省告示)を受けて、産業界は、平成10年4月、行動計画を策定。以降毎年、産業構造審議会において産業界の行動計画の進捗状況のフォローアップを行っている(現在10分野19事業者団体が行動計画を策定)。また、事業者の排出抑制取組を支援する措置を講じている。
    2. 代替物質の開発等
       新規代替物質の研究開発、HFCの回収・破壊技術の開発等を実施した。

     これらの取組の結果、2000年の実排出量は、1995年比で26.2%減少し、順調な成果があがっている。

    (2)今後の対策・施策
     今後、オゾン層破壊物質からの転換の本格化に伴い、排出量の増加が見込まれるところ、以下のとおり、現行対策を引き続き推進するとともに、実効性のある具体的施策を伴った追加対策を一体として講ずることで、約3,400万t-CO2削減の確実性を高める。

    1. 産業界の計画的な取組の促進
       産業構造審議会において、引き続き、産業界の行動計画の進捗状況のフォローアップを行うとともに、行動計画の透明性・信頼性の向上及び目標達成の確実性の向上を図る。また、引き続き、行動計画の未策定業種に対し、策定・公表を促すとともに、事業者の排出抑制取組を支援する措置を講ずる。
    2. 代替物質等の開発等
       代替フロン等3ガスの新規代替物質、代替技術及び回収・破壊技術の研究開発を行う。具体的には、冷媒用、洗浄用、発泡用の新規代替物質の開発、電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガス(PFC)の代替ガス・システム及び代替プロセスの開発、SF6等に代わるガスを利用した電子デバイス製造クリーニングプロセスシステムの研究等を、引き続き実施する。また、新たに、省エネルギーフロン代替物質合成技術開発、低コストかつコンパクトなフロン再利用・分解技術の開発、代替フロンを用いない高性能断熱建材技術開発等を行う。
    3. 代替物質を使用した製品等の利用の促進
       安全性、経済性、エネルギー効率等を勘案しつつ、代替物質を使用した製品や、代替フロン等3ガスを使用している製品のうち地球温暖化への影響がより小さいものに関する情報提供及び普及啓発を推進する。
    4. 法律に基づく冷媒として機器に充てんされたHFCの回収等
       HFC等の回収・破壊については、産業界及び地域における自主的取組による回収・破壊システム整備が進められてきたが、平成13年4月より「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」が施行され、平成14年には「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」が業務用冷凍空調機器について4月より、さらにカーエアコンについても順次施行されることとなっている。これらの法律を適切に運用することにより、冷媒分野でのHFCの回収・破壊の徹底を図る。

    表7 代替フロン等3ガスの排出抑制対策の推進
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    ○産業界の計画的な取組の促進
    10分野19事業者団体が、排出抑制に関する行動計画を策定し、着実に実施中。産業構造審議会において、行動計画について毎年フォローアップを実施。
       ○産業構造審議会において、引き続き産業界の行動計画の進捗状況のフォローアップを実施。

    ◎行動計画の透明性・信頼性の向上、目標達成の確実性の向上を図る。また、行動計画の未策定業種に対し策定・公表を促す。

    ○代替物質の開発等
    新規代替物質、代替技術及び回収・破壊技術の開発。
  • 新規代替物質の開発
  • 電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガス(PFC)の代替ガス・システム及び代替プロセスの開発
  • SF6等に代わるガスを利用した電子デバイス製造クリーニングプロセスシステムの研究
  • 工業過程において副生されるHFC23破壊技術の開発
      等
  • ○代替物質の開発等 ○現行の代替物質の技術開発等を引き続き進めていく。

    ◎新たに、以下の技術開発等を行う。

  • 省エネルギーフロン代替物質合成技術開発
  • 低コストかつコンパクトなフロン再利用・分解技術の開発
  • 代替フロンを用いない高性能断熱建材技術開発
      等
  • ○代替物質を使用した製品等の利用の促進

    ○法律に基づく冷媒として機器に充てんされたHFCの回収等

    ◎安全性、経済性、エネルギー効率等を勘案しつつ、代替物質を使用した製品や、代替フロン等3ガスを使用している製品のうち地球温暖化への影響がより小さいものに関する情報提供及び普及啓発を推進

    ◎家電リサイクル法、フロン回収破壊法を適切に運用する。

    約3,400万t-CO2削減 約3,400万t-CO2削減の確実性を高める   

    2010年における排出量見通し
     約73百万t-CO2まで削減(※)
     (対基準年総排出量比+2%に抑制)

    ※対基準年総排出量比約+5%(自然体ベース約107百万t-CO2)からの削減

    5.革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化

     地球温暖化問題は、21世紀を通じて対応が必要な問題であり、この対応のためには、現在の段階で考えられる実施可能な対策の適用などによる取組だけではなく、現在の想定を超えた技術革新を推進していくことによるブレークスルーを図る必要がある。
     革新的技術開発については、第1約束期間までに国民各界各層の努力による更なる地球温暖化防止活動の推進と合わせて基準年総排出量比で2%の排出削減を図ることを目標としている。現在までに、2010年に向け、革新的な環境・エネルギー技術として、超臨界流体利用技術等のエネルギー利用部門における省エネルギー関連技術や超高効率太陽光発電等の現在の技術水準を超えた革新的技術開発を強力に推進してきた。また、地球温暖化問題の究極的な解決に向けた対策を強力に推進するため、地球温暖化防止上の効果を期待した革新的な水素製造技術や二酸化炭素の貯留・固定化技術等の技術開発、エネルギー利用効率を改善する超鉄鋼、超耐熱材料等の研究開発を計画的に実施してきた。
     革新的な環境・エネルギー技術については、将来的に温室効果ガス削減効果が期待されるものの、現時点においては研究開発段階にあるため、早急な技術の確立が必要である。
     このため、2010年に向けて最大限の効果を確保するため、効果が期待される技術について、その早期確立に向け、強力に推進していく。具体的には、革新的なエネルギー転換を図る技術、製品の使用時におけるエネルギー効率を大幅に向上する基盤的技術、製造プロセス等における大幅な省エネルギーを図る革新的なプロセス・システム技術について技術開発の一層の強化を図る。さらに、得られた技術開発成果の積極的な公開などの導入・普及に向けた取組についても総合的に実施する。
     一方、温暖化対策は長期的な視野に立って、短期的な技術開発と長期的な技術開発などを戦略的に組み合わせて対応すべきものであることから、技術開発の成果が現れるまでの期間が長い技術についても、有望な技術であれば技術開発を実施する。
     これら革新的な環境・エネルギー技術開発の推進にあたっては、「科学技術基本計画」(平成13年3月閣議決定)を踏まえて地球温暖化対策技術等に関する研究開発を実施していくとともに、総合科学技術会議における地球温暖化研究イニシャティブのもと総合的な推進を図る。

    表8 革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    ○現在の技術水準を超えた革新的技術開発の推進
  • 超臨界流体利用技術等の省エネルギー関連技術開発
  • 超高効率太陽光発電技術開発
  • 革新的な水素製造技術開発
  • 二酸化炭素の貯留・固定化等技術開発
  • エネルギー利用効率を改善する超鉄鋼、超耐熱材料等技術開発

    ○地球温暖化対策の戦略作りのための研究、資源の循環やエネルギーの消費抑制・効率的利用を促進する仕組みの構築を戦略目標とする基礎研究等の推進。

    ○地球科学技術に関する研究開発基本計画の達成状況の点検と、更なる強化

  • ○現在の技術水準を超えた革新的技術開発の推進強化
     (約744万t-CO2)
  • エネルギー貯蔵や送配電損失低減等の革新的なエネルギー転換技術
  • 電子機器や輸送機器等製品のエネルギー効率を大幅に向上する基盤的技術
  • エネルギー多消費型産業等の大幅な省エネルギーを図る革新的プロセス・システム技術
  • ◎科学技術基本計画における重点化分野として、取組を強化

    ◎総合科学技術会議の地球温暖化研究イニシャティブのもと、総合的に推進

    ◎新たな技術開発に対して支援を実施

    ○成果が現れるまでの期間が長い有望な技術に対する開発への支援措置

    ○更なる研究開発テーマの検討

       対策による排出削減量:
    計約744万t-CO2
    対基準年総排出量比▲約0.6%)
       

    6.国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動の推進

     人々の価値観を含め、現在の社会経済システムやライフスタイル・ワークスタイルの在り方は温室効果ガスの排出に大きく関わっている。地球温暖化対策の実行は、現在の経済社会システムを変革していくことでもあり、国民各界各層の理解と行動及び協同を求めるための普及啓発や情報提供を、各種媒体の活用など既存の仕組みも最大限活用しつつ、国民各界各層一体となって強力に推進する必要がある。
     本大綱においては、主として政府等による情報提供、広報活動、教育等を通じた普及啓発によりその推進を図るべき対策であって、国民各界各層の特段の努力によって実現する取組と言えるものを「国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動」と位置付け、こうした取組の推進により、第1約束期間までに革新的技術開発と合わせて基準年総排出量比で2%の排出削減を図ることを目標とする。国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動として、例えば、別表に掲げられた対策が実施されたとすると、基準年総排出量比で最大で約1.8%の排出削減を図ることが可能である。
     しかしながら、内閣府が行った「地球温暖化防止とライフスタイルに関する世論調査」(2001年7月)によれば、国民の地球温暖化防止のための取組の意欲は高い反面、これまで十分な取組がなされていないのが現状である。
     その要因としては、@国民各界各層に対する地球温暖化防止活動についてのこれまでの普及啓発・情報提供がまだ不十分であること、A単発的な対策が中心であり、継続的に普及啓発・情報提供するための体制整備が不十分であり、特に、地域レベルで、行政、各種事業者、住民等を巻き込んだパートナーシップによる対策を推進するための基盤整備が不十分であること、B各家庭等において、製品の購入時、使用時など、地球温暖化防止のために具体的にどのような取組を行うことができるのかについて必要な情報提供・アドバイスが十分になされていないこと、などが上げられる。
     これまで地球温暖化対策推進法に基づく全国地球温暖化防止活動推進センター、都道府県地球温暖化防止活動推進センター及び地球温暖化防止活動推進員や、省資源・省エネルギー国民運動の展開等により、各種の普及啓発活動を行ってきたところであるが、これまでの各種施策に加え、@「環の国くらし会議」等の開催等を通じた地球環境時代にふさわしいライフスタイルの形成に向けた運動の全国的展開(「環の国くらし会議」の開催等)、A地域レベルでの取組の基盤整備、B経済便益を生ずるような対策が実施されるよう、各家庭等での取組を調査し、指導及び助言を行う「温暖化対策診断」を実施することとする。
     また、国民運動の展開、地域レベルでの取組推進のための基盤整備、家庭における取組の促進・支援の仕組み等を活用しながら、地球温暖化防止活動の普及啓発等を推進していく。

    (1)地球温暖化防止活動推進のための基盤整備

    1. 地球環境時代にふさわしいライフスタイルの形成に向けた運動の全国展開
       国民一人ひとりの生活を見直していく取組の一環として、「環の国くらし会議」を開催し、国民の一人ひとりの自発的な取組を促し、応援するメッセージを発信するとともに、今後更に推進すべき効果的な取組方法について検討を進め、政府及び国民各層が一丸となったライフスタイルの変革(くらしの行動)につなげる。
    2. 地域レベルでの取組推進のための基盤強化
       地域レベルでの取組の体制・基盤整備のため、都道府県地球温暖化防止活動推進センター(以下「都道府県センター」という。)の指定要件を公益法人のみではなく特定非営利活動法人にも拡大し、都道府県センターの全国展開の推進を図るとともに、地方公共団体、都道府県センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等からなる地球温暖化対策地域協議会の設置によるパートナーシップによる地域ぐるみの取組の推進を図る。
    3. 各家庭等における取組の促進
       地球温暖化防止活動推進員等が、建物の断熱性、照明・厨房・冷暖房・給湯機器の性能等を経済性評価を含めて調査し、費用対効果が高く温室効果ガスの排出が少ない方法を指導・助言する温暖化対策診断の推進を図る。
       さらに、ラベリング等の活用により、事業者・国民による温室効果ガスの排出が少ない製品の開発・選択を促すとともに、全国地球温暖化防止活動推進センターを積極的に活用し、製品による温室効果ガスの排出量に関する情報の収集・提供等を行う。併せて、ライフサイクルアセスメントなど地球温暖化対策の効果を評価する手法について検討を進める。

    (2)地球温暖化防止活動の普及啓発等の推進等

    1. 夏時間(サマータイム)の導入について、「地球環境と夏時間を考える国民会議報告書」(1999年5月)も踏まえ、国民的議論の展開を図り、合意形成を図る。
    2. テレワーク等について普及啓発を図る。
    3. 自転車利用の促進に向けた普及啓発を図る。
    4. 環境やエネルギーに関する教育・学習については、学校における各教科等や「総合的な学習の時間」の取組を支援し、その充実を図る。さらに地域における環境学習プログラムの整備、情報の提供などを推進し、多様な場における各主体の取組を支援し、その充実を図る。また、学校の施設整備において、「環境を考慮した学校施設(エコスクール)」の整備を図る。
    5. 幅広い媒体を通じた広報を引き続き行うとともに、国民参加型の普及啓発を図る。
    6. 二酸化炭素の吸収源対策としての緑化の重要性を広く普及啓発するため、みどりの週間、都市緑化月間等における国民的緑化運動の展開、緑の募金や都市緑化基金の活用等による民間の森林づくりや緑化活動の促進などの国民参加型の緑化運動を展開する。
    7. ヒートアイランド対策を総合的に行うための取組について、普及啓発を図る。
    8. 住宅・建築物、民生用機器、自動車等に関し、温室効果ガス排出を含めた環境情報提供の推進を引き続き図る。
    9. 政府が事業者・消費者として、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律に基づく環境物品等の調達を進める等率先して地球温暖化対策に取り組むとともに、社会システム変革に向けたモデル事業も引き続き実施していく。

    表 9 国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進
    I.一般国民による取組
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    民生部門 ○冷房温度の28℃への引き上げ、暖房温度の20℃以下への引き下げ<30%>(約44〜85万t-CO2) ○省エネ法で定められた特定機器以外の機器に関し、よりエネルギー消費量の小さい製品への積極的な買い替え及び利用(354〜412万t-CO2)

  • 白熱灯を電球形蛍光灯にとりかえる<60%>(74〜141万t-CO2)
  • 電力消費量の小さい電子レンジへの買い換え<30%>(35〜68万t-CO2)
  • 食器洗い機の導入(湯の消費量の節減)<40%> (160〜118万t-CO2)
  • 節水シャワーヘッドの導入<30%>(85万t-CO2)

    ○脱温暖化型のライフスタイルの実践<30%>(約676〜937万t-CO2)

  • 家族が同じ部屋で団らんし、暖房と照明の利用を2割減らす(341〜467万t-CO2)
  • テレビ番組を選び、1日1時間テレビ利用を減らす(19〜35万t-CO2)
  • シャワーを1日1分家族全員が減らす(93万t-CO2)
  • 冷蔵庫の効率的使用(15〜28万t-CO2)
  • 風呂の残り湯を洗濯に使いまわす(24〜46万t-CO2)
  • ジャーの保温を止める(44〜85万t-CO2)
  • 買い物袋を持ち歩き、省包装の野菜などを選ぶ(83万t-CO2)
  • エコクッキングの普及(10万t-CO2)
  • 洗面所の節水(歯磨き、洗顔中に水を出しっぱなしにしない)(9〜17万t-CO2)等
  • ◎「環の国くらし会議」の提案を踏まえた情報の提供、モデル事業等の推進

    ◎「温暖化対策診断」の実施

    ◎全国地球温暖化防止活動推進センター及び都道府県地球温暖化防止活動推進センターによる情報提供等

    ◎「地球温暖化対策地域協議会」を通じた地域での取組の推進

    ◎各種地域組織を通じた広報、情報提供等

    ○教育・啓発及び情報提供体制の整備

    ○環境家計簿、省エネ家計簿の配布

    ○広報の強化

    ○民生用機器に関する情報提供

    ○製品等に関する環境情報の整備・分析、提供

    運輸部門 ○自動車利用の自粛等

    ○駐停車時のアイドリングストップ等の推進20〜40%(14〜28万t-CO2)

    ○エコドライブの実践等<20%〜40%>(約81〜162万t-CO2)
  • カーエアコン設定温度の一度アップ
  • ガソリンを満タンにしない
  • 急発進、急加速をしない運転を心掛ける
  • 自動車に不要な荷物を載せない
  • 計画的なドライブをする
  • タイヤ空気圧の適正な管理
      等

    ○環境負荷の低減に資する物品の導入(約2〜3万t-CO2)

  • 運転視界を妨げない範囲での乗用車への断熱フィルム装着<20〜40%>
  • その他自動車走行時のCO2排出量削減に資する部品・物品の装着・導入
     等
  • ◎「環の国くらし会議」の提案を踏まえた情報の提供、モデル事業等の推進

    ◎「温暖化対策診断」の実施

    ◎全国地球温暖化防止活動推進センター及び都道府県地球温暖化防止活動推進センターによる情報提供等

    ◎「地球温暖化対策地域協議会」を通じた地域での取組の推進

    ◎各種地域組織を通じた広報、情報提供等

    ○教育・啓発・講習及び情報提供体制の整備

    ○広報の強化

    ◎環境物品の性能評価と情報提供による普及を2002年度から実施

    ○自転車利用の普及啓発

    II.事業者による取組
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    民生業務部門 ○冷房温度の28度への引き上げ、暖房温度の20度以下への引き下げ<40%>
    (排出削減見込み量は、前述の一般国民の同種の取組の内数)
    ○省エネ法で定められた特定機器以外の機器及び設備に関し、よりエネルギー消費量の小さい製品への積極的な買い替え及び利用(削減見込み量は、前述の一般国民の同種の取組の内数+約83〜156万t-CO2)
  • 白熱灯を電球形蛍光灯にとりかえる<60%>(64〜122万t-CO2)
  • 光害対策として夜間屋外照明の上方光束を50%削減<50%>(17〜32万t-CO2)
  • エネルギー効率の高い調理器を利用する<20%>(2万t-CO2)

    ○脱温暖化型のワークスタイルの確立<30%>(約23〜41万t-CO2)

  • 事務所の一旦消灯の実施(昼休み等)(18〜31万t-CO2)
  • 無駄なコピーの縮減(1〜3万t-CO2)
  • 昼休み等におけるパソコン類のスイッチ・オフ(4〜7万t-CO2)等
  • ◎「環の国くらし会議」の提案を踏まえた情報の提供、モデル事業等の推進

    ◎全国地球温暖化防止活動推進センター及び都道府県地球温暖化防止活動推進センターによる情報提供等

    ◎「地球温暖化対策地域協議会」を通じた地域での取組の推進

    ◎各種地域組織を通じた広報、情報提供等

    ○教育・啓発・講習及び情報提供体制の整備

    ○広報の強化

    ○情報提供の推進

    ○環境マネジメントシステム等の普及等

    運輸部門 ○社用車等におけるエコドライブの推進<20〜40%>
    (削減見込み量は、前述のエコドライブの実践の内数)

    III.国・地方公共団体による取組
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    民生業務・運輸部門 ○国の事務・事業に関する温室効果ガス排出抑制対策の実施(約〜15万t-CO2)

    ○都道府県の事務・事業に関する温室効果ガス排出抑制対策の実施(約60万t-CO2)

    ○市町村の事務・事業に関する温室効果ガス排出抑制対策の実施(約200万t-CO2)

    ○省エネ型設備の導入(国、都道府県、市町村における現行対策の内数)
  • 上水道施設のモーターのインバータ制御など
  • ○地球温暖化対策推進法に基づく、国・地方公共団体の事務・事業に係る実行計画の策定義務付け

    ○国等の環境物品等の調達の推進等に関する法律に基づく、温室効果ガス排出の少ない環境物品等のグリーン購入の推進

    ○環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進

    部門横断的事項    サマータイムの導入(約25〜123万t-CO2) ○夏時間(サマータイム)の導入についての国民的議論のを展開し、合意形成を図る。
       現行対策による排出削減量:
    計約318〜388万t-CO2(0.3%)
    追加対策による排出削減量:
    計約1,244〜1,834万t-CO2(1.0%〜1.5%)
      

    7.温室効果ガス吸収源対策の推進

    (1)森林・林業対策の推進 
     森林・林業基本法に基づき2001年10月に閣議決定された森林・林業基本計画に示された森林の有する多面的機能の発揮に関する目標と林産物の供給及び利用に関する目標どおりに計画が達成された場合、京都議定書第3条3及び4の対象森林全体で、森林経営による獲得吸収量の上限値(対基準年総排出量比3.9%、4,767万t-CO2)程度の吸収量を確保することが可能と推計される。
     上記は森林・林業基本計画に基づく試算であり、今後、算定方法等について精査、検討が必要である。また、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合は、確保できる吸収量は対基準年排出量比3. 9%を大幅に下回るおそれがある。
     吸収量の確保は、政府はもとより、森林所有者、林業及び木材産業の事業者、更には地方公共団体や森林及び林業に関する団体を含め、関係者全体による多大な努力が必要である国民的課題であり、森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等を着実かつ総合的に実施することが不可欠である。
     わが国に必要な吸収量を確保するため、以下に示す施策を強力に推進するとともに、吸収量の報告・検証体制の強化を図る。
    1. 健全な森林の整備 ア 森林の機能区分に応じた、複層林化、広葉樹の導入等を含む多様な森林整備の展開
      イ 緊急に除間伐等の保育の実施が必要な森林において、必要な施業を推進
      ウ 伐採後の更新(再造林)、下刈等の推進
      エ 無立木地、荒廃地、自然災害を受けた森林、耕作放棄地等において、植林、保育等を推進
    2. 保安林等の適切な管理・保全等の推進 ア 保安林制度等における転用規制や伐採規制による森林の永続性の確保と保安林の計画的指定等による森林の保全の推進
      イ 機能が低下した保安林については、治山事業等による保全対策を適切に実施
      ウ 病害虫等被害の防止
      エ 優れた自然の風景地を構成する森林や自然環境を保全することが特に必要な森林等については、自然公園法や自然環境保全法に基づく制度等を活用
    3. 国民参加の森林づくり等の推進 ア 広範な国民の直接参加による森林の整備・保全活動の推進
      イ 森林環境教育の推進
    4. 木材及び木質バイオマス利用の推進 ア 化石燃料の使用量を抑制し、二酸化炭素の排出抑制にも資するため、再生産可能な木材の有効利用に関する国民への普及啓発、木造住宅・公共施設への木材利用の推進、木材・木質材料の利用・加工技術等の向上等による木材の積極的な活用
      イ 林地残材、製材工場残材等の木質バイオマスエネルギーとしての活用

    表10 森林・林業対策の推進
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
       地球温暖化防止を含む森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標を示すとともに、森林及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(森林・林業基本計画)を策定 ○森林・林業基本法及び森林・林業基本計画に基づく施策の展開
  • 森林の有する多面的機能の発揮に関する現状(2000年)
    <森林面積>
    育成単層林 1,030万ha
    育成複層林  90万ha
    天然生林  1,390万ha
    合計   2,510万ha
     <総蓄積>
       3,930百万m3

  • 林産物の供給及び利用の現状
    <木材供給・利用量>
      20百万m3
  • 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標(2010年)
    <森林面積>
    育成単層林 1,020万ha
    育成複層林 140万ha
    天然生林  1,350万ha
    合計   2,510万ha
     (総蓄積)      4,410百万m3

  • 林産物の供給及び利用に関する目標
    <木材供給・利用量>
      25百万m3
  • ◎2003年から第1約束期間の終了年である2012年までの10年間において、基本計画に基づく森林整備等を計画的に強力に推進。更に吸収量の報告・検証体制の強化(地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策を展開)
    ○健全な森林の整備

    吸収量確保のため、植林、必要な保育、間伐の的確な実施(98〜00年3カ年の実績)

  • 植栽 4万ha/年
  • 下刈 30万ha/年
  • 間伐 31.5万ha/年
  • 複層林への誘導伐 −
  • 天然林改良 2.5万ha/年
  • 路網整備 2.5千km/年
  • ○健全な森林の整備

    森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備の実施

    ◎重視すべき機能区分(水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林)に応じた森林整備の推進

    ○緊急間伐5カ年対策の実施

    ○長期育成循環施業の実施

    ◎公的な森林整備の拡充

    ○間伐対策の推進

    ◎複層林への誘導伐の促進

    ◎「緑の再生」特別対策等の実施

    ○保安林等の適切な管理・保全等の推進 ○保安林指定の計画的な推進

    ○治山対策の推進

    ○病害虫等被害の防止

    ◎機能低下保安林緊急整備対策の推進

    ◎山村等の防災情報を整備し、防災体制を強化

    ○国民参加の森林づくり等の推進 ○国民参加の森林づくり等の推進 ○国民参加による森林の整備・保全活動の推進

    ◎地域住民、NPO等の多様な主体の参加と連携の強化

    ○森林環境教育の推進

    ○木材資源の有効利用の推進

  • 林産物の供給及び利用の現状
    <木材供給・利用量>
      20百万m3
  • ○木材及び木質バイオマス利用の推進

  • 林産物の供給及び利用に関する目標
    <木材供給・利用量>
      25百万m3

  • 未利用木材資源の利用推進
  • ○林産物の新規需要の開拓

    ○建築及び工作物における木材使用の促進

    ○木材利用を促進するための総合的な対策の推進

    ◎学校の内装や学校関連施設など地域材を利用したモデル的な施設の整備

    ○木質バイオマスエネルギー利用対策の促進

    ◎木質バイオマスエネルギー利用施設のモデル的な整備

    現状程度の水準(1998〜2000年実績の平均)で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合の人為活動の行われた森林の吸収量:約3,550万t-CO2 森林・林業基本計画に示された森林の有する多面的機能の発揮の目標と林産物の供給及び利用の目標どおりに計画が達成された場合の人為活動が行われた森林の吸収量:計約4,770万t-CO2   

    (2)都市緑化等の推進
     都市緑化等については、「緑の政策大綱」や市町村が策定する「緑の基本計画」等、国及び地方公共団体における緑の保全、創出に係る総合的な計画に基づき、引き続き、都市公園の整備、道路、河川・砂防等における緑化、既存の民有緑地の保全、建築物の屋上、壁面等の新たな緑化空間の創出等を積極的に推進する。また、引き続き、「エコポート政策」による港湾の緑化等を推進する。
     これらの対策が計画どおり実施された場合、第1約束期間において年平均で対基準年総排出量比0.02%(28万t-CO2)程度の吸収量が確保されると推計される。
     これらは都市緑化等における高木の植樹計画に基づく試算であり、今後、吸収量算入の対象及び算定方法等について精査、検討が必要である。

    表11 都市緑化等の推進
    現行対策とその削減量追加対策とその削減量国等の施策
    (現行○、追加◎)
    ○公共公益施設等における緑化 都市公園、道路、河川等の公共公益施設等において高木を植栽
    <導入目標量:1990年度以降、2010年度までの高木植栽本数の増加量を7千5百万本と想定し、吸収見込量を算定>
    (排出削減(吸収)見込量)
     28万t-CO2
    (対基準年総排出量比0.02%程度)
       ○「緑の政策大綱」等に基づく緑化の推進

    ○「エコポート政策」等に基づく港湾の緑化の推進

    ○市町村における「緑の基本計画」の策定の推進と計画に基づく緑化の推進

    ○緑の創出に関する普及啓発と市民、企業、NPO等の幅広い主体による緑化の推進

    8.京都メカニズムの活用

    (1)基本的な考え方 
     京都議定書においては、国別の約束の達成に係る柔軟措置として、他国における排出削減量、他国の割当量(議定書に従って国ごとに定められる排出枠)の一部を利用できる京都メカニズム(共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)及び排出量取引)の活用が認められている。京都メカニズムの当該機能等にかんがみると、京都議定書の約束を費用効果的に達成するためには、京都メカニズムの利用が国内対策に対して補足的であるとの原則を踏まえつつ、これを適切に活用していくことが重要である。

    (2)京都メカニズムの活用に必要となる施策等

    1. 当面必要となる措置等の実施 
     京都メカニズムのうち、共同実施(JI)は、議定書第6条の規定に基づく事業活動であり、先進国又は市場経済移行国(以下「先進国等」という。)における排出削減事業又は吸収源事業によって生じた排出削減量又は吸収量を当該事業に貢献した他の先進国等の事業参加者が「排出削減単位」として獲得できる仕組みである。また、クリーン開発メカニズム(CDM)は、議定書第12条に規定する低排出型の開発の制度であり、途上国における排出削減事業又は植林事業によって生じた排出削減量又は吸収量を当該事業に貢献した先進国等の事業参加者が「認証された排出削減量」として獲得できる仕組みである。さらに、排出量取引は、議定書第17条の規定に基づき、先進国等の間で排出枠等の取引を行う仕組みである。    
     京都メカニズムは、民間事業者等による活用も認められており、民間事業者等が自らの削減をより費用効果的に達成するために活用されることが期待されるが、民間事業者等が共同実施(JI)又はクリーン開発メカニズム(CDM)の事業を行い、「排出削減単位」又は「認証された排出削減量」(クレジット)を取得しようとする場合には、京都議定書第6条1又は第12条5(a)の規定に基づき、関係締約国の承認を受けることが必要とされている。なお、これらクレジットは、事業の開始後に国際的に認定された第三者組織による認証(共同実施(JI)の事業については、当該事業が実施された先進国(ホスト国)による認証も可能)を受けることが必要である。
     また、共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)については、2000年時点で開始されている事業も対象となるほか、特にクリーン開発メカニズム(CDM)については、その事業による2000年以降の排出削減に係る「認証された排出削減量」が認められている。
     このため、この二つの仕組みを活用できるようにするための体制については、これを早期に整備する。
     また、我が国が第一約束期間の初めより京都メカニズムを活用する資格を得るため、我が国における温室効果ガス排出量及び吸収量の算定のための国内制度や、我が国の割当量や共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)の事業によって発生する「排出削減単位」及び「認証された排出削減量」(クレジット)の移動等を追跡し記録するための国別登録簿を整備し、遅くとも2006年夏までには、条約事務局にこれら制度等の概要を報告することとする。
     このため、当面は、主に以下の措置等を講ずるものとする。

    ア 共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)に係る事業承認体制の整備
     事業参加者が、共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)に係る事業を行い、「排出削減単位」又は「認証された排出削減量」(クレジット)を取得しようとする場合には、京都議定書第6条1(a)及び第12条5(a)の規定に基づき、関係締約国の承認を受けることが必要とされている。
     このため、関係省庁合同により、共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)に係る事業の承認申請の受理・確認等を行うための体制を速やかに整備するものとする。

    イ 国別登録簿等の整備
     我が国の割当量や共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)の事業によって発生する「排出削減単位」及び「認証された排出削減量」(クレジット)の移動等を追跡し記録するための国別登録簿について、第8回気候変動枠組条約締約国会議(COP8)の結果も踏まえつつ、速やかに整備するとともに、温室効果ガス排出量及び吸収量の算定のための国内制度を「第6 温室効果ガス排出量・吸収量の算定のための国内制度の整備」(後述)に基づき整備する。

    ウ その他の施策等
     その他京都メカニズムの円滑な実施等を図る観点から、主に以下の施策等を実施する。

    1)民間事業者等による京都メカニズム活用の支援等
    • 共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)の事業に係る案件の発掘及び実現可能性等のための調査等の充実を図るとともに、民間事業者等への情報提供を行う。
    • 共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)への民間事業者等による取組を推進等するため、相手国政府との交渉支援、人材育成を行う。
    • 我が国の民間事業者等が共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)の独立組織及び運営組織に係る指定を受けることができるよう、人材育成、情報提供等の支援を行う。
    • 相談窓口を設ける等により、京都メカニズムに関する民間事業者等の疑問、要望に対応する。
    • 民間事業者等による京都メカニズム活用を円滑化するため、京都メカニズムの利用のための解説書等を整備し、内外のルール策定に応じて逐次改訂する。
    2)相手国政府の理解促進等に向けた取組の実施
    • 政府間協議やプロジェクト実施等を通じ、共同実施(JI)及びクリーン開発メカニズム(CDM)の主要相手国における京都メカニズムに対する理解を深めるとともに、相手国における国内承認手続等に係る透明性の高い制度の構築を求める。
    • 共同実施(JI)や排出量取引の主要相手国が京都メカニズムの参加資格を満たせるよう、モニタリング制度の構築等に係る能力育成支援を行う。
    3)国際的ルールの策定への貢献
     CDM理事会に我が国代表が選任されたことを活かし、環境十全性を確保するとともに、経済合理的なルールが策定されるよう国際ルールの策定に積極的に貢献する。

    2. 2008年以降の本格的な活用に向けた必要な制度の在り方等の検討 
     京都メカニズムについては、排出量取引によるクレジットの移転等その本格的な機能は、原則2008年以降に開始される。また、一部の技術的なルール等については、今後の国際的な議論に委ねられているほか、実態的な経験や知見の蓄積も十分ではない。
     このため、当面は前述の@に掲げる措置を実施するものとするが、2008年以降における京都メカニズムの本格的な機能の開始に備え、京都メカニズムのルールに関する国際的な議論、他国における施策及び取組の状況、実態等について、その知見や経験の蓄積等に努めるものとする。
     また、これを踏まえて、京都メカニズムを活用するために必要となる制度の在り方等について、引き続き検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講じるものとする。

    9.その他

    (1)事業活動に伴う温室効果ガス排出量・原単位の把握・公表の推進
     事業者は製品の製造から使用、廃棄に至るまで多様な事業活動を行っており、その活動の一つ一つが温室効果ガスの排出源となっている。個々の事業者がこうした多様な排出源ごとに技術的経済的に最も効果的な対策を講じていくためには、自らの事業活動に係る排出の状況(排出量・原単位)を把握することが重要である。さらに、事業者は社会的存在であり、単独に又は共同して、自らの排出の状況(排出量・原単位)に関する情報を自主的に公表することが推奨される。

    (2)家庭におけるエネルギー消費等に伴う温室効果ガス排出量の把握の促進
     家庭に対しては、自らの排出量を把握し、具体的な行動につなげていくことを促進するため、環境家計簿等の活動の奨励を行うとともに、エネルギー消費等に伴って温室効果ガスを自らどの程度排出しているかについて把握するための各種の手法について幅広く検討を行い、各家庭における一層の取組を促すものとする。

    (3)ポリシーミックスの活用
     効果的かつ効率的な温室効果ガスの排出削減のためには、自主的手法、規制的手法、経済的手法等、あらゆる政策手法の特徴を活かして、有機的に組み合わせるというポリシーミックスの考え方がある。
     費用対効果の高い削減を実現するため、市場メカニズムを前提とし、経済的インセンティブの付与を介して、各主体の経済合理性に沿った行動を誘導するという、いわゆる経済的手法があるが、税、課徴金等の経済的手法については、他の手法との比較を行いながら、環境保全上の効果、マクロ経済・産業競争力等国民経済に与える影響、諸外国における取組の現状等の論点について、地球環境保全上の効果が適切に確保されるよう国際的な連携に配慮しつつ、様々な場で引き続き総合的に検討する。


    第5 定量的な評価・見直しの仕組み

    1.基本的考え方

     第1約束期間までの社会経済動向の見通しが不透明である中で、本大綱の実効性を確保し、京都議定書の約束を確実に達成していくためには、第2ステップ開始前及び第3ステップ開始前に、温室効果ガスの種類その他の区分ごとの目標の達成状況、個別の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量の達成状況、本大綱に盛り込まれた施策の進捗状況等に加え、各主体による排出削減に向けた取組の積み重ねと今後の課題を適正に評価し、必要な対策の見直し又は追加を行うこと等、柔軟に対策・施策の見直しを行うことが不可欠である。
     この際、この大綱の前提とした各種経済フレームについても必要に応じて評価・見直しを行った上で、当該評価・見直し結果を踏まえて柔軟に対策・施策の見直しを行うことが適当である。
     このため、地球温暖化対策推進本部は、毎年、地球温暖化対策の具体的措置の推進状況を点検するとともに、2004年及び2007年に本大綱の内容の見直しを行う。その際、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」において、地球温暖化対策として講じる個別の措置の進捗状況及び本大綱の評価・見直しについて、委員の意見を聴取する。

    2.定量的評価・見直し方法の概略


     本大綱の評価においては、
    • 各種統計を基に算定される最新の排出・吸収目録の解析による排出量・吸収量の評価(なお、算定方法の変更等により過去の排出量・吸収量についても変更となる可能性がある。)
    • 本大綱の策定時に想定した普及率等の対策導入量の評価時における実績データの分析
    • 社会経済活動量(人口、世帯数、輸送量等)の評価時における実績及び評価時における新たな将来予測

     により排出量・吸収量増減の要因分析を行うとともに、目標達成見込み等を評価する。
     この評価結果に基づき、京都議定書の6%削減約束を確実に達成するため、必要に応じて温室効果ガス別その他の区分ごとの目標、個々の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量及び対策を推進するための施策等を総合的に見直すものとする。

    (1)エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制対策の評価方法
     エネルギー起源二酸化炭素については、産業、民生業務、民生家庭、運輸の各部門において、各種マクロ統計をもとに算定される最終エネルギー消費とこれに対応するエネルギー供給部門の原単位等から排出量を推計する。
     産業部門・民生部門・運輸部門という部門別、省エネルギー対策・新エネルギー対策・燃料転換対策等という対策別の目標や個々の対策についての我が国全体における導入目標量・排出削減見込み量については、本大綱策定時から評価・見直しの時点にいたる我が国の経済情勢の推移やその影響、需要側・供給側における各対策の進捗状況や効果、試算や評価に際し政府が用いた各種の前提の妥当性を勘案した上で、本大綱に定められた目標・見込み量と各部門・各対策における排出量や導入量における実績・見通しを比較しつつ、総合的に評価と検討を行うものとする。

    (2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の排出抑制対策の評価方法
     工業過程部門については、排出区分ごとに、製品製造量、原料消費量、対策導入量等の想定に基づいて、各物質の排出量を推計する。廃棄物部門については、関連施策を踏まえて、廃棄物の種類ごとの将来の埋立量、焼却量等を推計し、これに排出係数を乗じて算定する。
     以上の他、燃料の消費量、家畜頭数、水田面積等を踏まえて、非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素に分けて、将来の排出量を推計する。

    (3)代替フロン等3ガスの排出抑制対策の評価方法
     代替フロン等3ガスは、オゾン層破壊物質の転換先であり、また、多種多様な産業分野で必要不可欠なものとして使用されているところ、その排出抑制対策の評価については、排出量の実績や産業界の自主行動計画の進捗状況を基本に、オゾン層保護対策との調和、産業分野別の使用実態や動向、代替物質や代替技術の開発状況を十分踏まえて行うものとする。

    (4)革新的技術開発の評価方法
     革新的技術開発の実施状況を定量的に評価するため、技術単位当たりの排出削減効果、実施状況等から、その温室効果ガス排出削減効果量を評価する手法を導入する。なお、評価においては、技術同士の競合関係や補完関係に留意することとする。

    (5)国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の評価方法
     国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の実施状況を定量的に評価するため、個々の対策の導入状況・実施状況等に関するサンプル調査、地球温暖化防止活動推進員、環境カウンセラー等を活用したアンケート調査、環境モニター・アンケート、日常生活等に伴う温室効果ガスの排出量の変化等を一定の地区等を対象として定点観測するなどの手法により普及啓発による効果を評価する。

    (6)吸収源の活用の評価方法
     京都議定書において算定の対象となる第一約束期間における吸収量について、評価を行う年までの育成林、天然生林、保安林等の区分ごとの森林面積、各種森林施業の面積、公共公益施設等における高木植栽面積等のトレンドや、吸収量に関する最新の科学的知見を基に推計を行う。


    第6 温室効果ガス排出量・吸収量の算定のための国内制度の整備


     京都議定書においては、第1約束期間の1年前までに温室効果ガスの排出量及び吸収量の算定を行うための国内制度を整備する義務があるとされており、国内制度整備のためのガイドラインについては、議定書の第一回締約国会議で決定される。
     温室効果ガス排出量・吸収量の算定に当たっては、これまで関係各省の協力の下で環境省において取りまとめを行い、温室効果ガスの排出・吸収目録は、外務省を通じて気候変動枠組条約事務局への提出を行ってきたところであるが、引き続き温室効果ガスの排出・吸収目録に関する全体のとりまとめを環境省において行うとともに、これまでの関係各省の協力を基本とし、京都議定書に基づき定められるガイドラインに即して、排出量・吸収量算定のための国内体制を速やかに整備する。
     具体的には、京都議定書の発効に際して、同議定書に基づき温室効果ガスの排出・吸収目録に関する全体的とりまとめを行う機関として環境省を指定し、関係各省が相互に協力して、定められた期限までの温室効果ガスの排出・吸収目録の迅速な提出、データの品質管理、目録の検討・承認プロセス、京都議定書に基づき派遣される専門家検討チームの審査への対応等に関する体制を整える。
     一方、吸収源による吸収(排出の場合もある)量の測定・監視・報告等の手法については、現在IPCCにおいて、その具体的かつ詳細な内容を定める「グッドプラクティスガイダンス」の作成作業が行われており、COP9(平成15年)で決定される予定となっている。我が国としては、IPCCを中心に実施される国際的な検討に積極的に参加するとともに、第1約束期間の1年前までに吸収源による吸収量の測定・監視・報告等の国内制度を整備する。


    第7 観測・監視体制の強化及び調査研究の推進

     温室効果ガス、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化するとともに、気候メカニズムの解明、地球温暖化の現状把握と予測、今後予想される自然や社会・経済への影響評価、温暖化及びその影響を緩和したり適応するための技術や方策について、国際協力を図りつつ、政府一体となって戦略的・集中的に調査研究を進める。また、地球環境に関する情報を整備し、その流通を促進する。
     これら観測・監視体制の強化及び調査研究の推進にあたっては、「科学技術基本計画」(平成13年3月閣議決定)を踏まえて実施していくとともに、総合科学技術会議における地球温暖化研究イニシャティブのもと総合的な推進を図る。


    第8 地球温暖化対策の国際的連携の確保

     地球温暖化対策の実効性を確保するためには、すべての国が温室効果ガスの排出削減に努めることが必須であり、我が国としては、今後、米国や開発途上国を含むすべての国が参加する共通のルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けていくものとする。
     また、我が国が発表した「京都イニシャティブ」の実施など、森林の保全・回復や温室効果ガスの排出削減に係るODA等の活用等を図ることにより、引き続き地球温暖化対策に取り組む開発途上国等の努力を積極的に支援していくものとする。


    第9 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の工程表

    工程表