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知的財産戦略本部会合(第18回)

日時: 平成19年12月13日(木)17:10〜17:55
場所: 官邸大会議室

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) それでは、ただいまから知的財産戦略本部の第18回会合を開催いたします。
 本日はお忙しい中、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、福田内閣が発足してから最初の本部会合となります。
 総理は現在、記者会見を行われておりまして、終了次第おいでいただくことになっております。また、官房長官も、所用で遅れておられますが、時間の関係上、会合を始めさせていただきたいと存じます。
 また、開始時間が遅れましたので、終了時間を10分遅らせ、17時55分とさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、時間の都合もございますので、早速、議題に入らせていただきます。
 まずは、「知的財産推進計画2007及び専門調査会の進捗状況報告」につきましては、資料1をご参照ください。説明は省略させていただきたいと存じます。
 次に、知的財産による競争力強化専門調査会報告書「知財フロンティアの開拓に向けて」について、専門調査会長として取りまとめいただきました相澤本部員から、概要をご説明いただきたいと存じます。
 相澤本部員、よろしくお願いします。

○相澤本部員 それでは、説明させていただきます。
 お手元に、資料2−1というパワーポイントの資料がございますので、それに基づきまして説明させていただきます。
 1ページ目をお開きいただきたいのですが、本年5月に「知的財産推進計画2007」が策定されまして、その中で、科学技術基本計画上の重点推進4分野を対象に競争力強化の観点から分野別知的財産戦略を策定するようにということでございましたので、その検討を進めたところでございます。
 次のページをご覧いただきたいと思います。
 重点4分野と申しますのは、ライフサイエンス、情報通信、環境、それからナノテクノロジー・材料でございます。それぞれの分野について、知財上の特性を解析いたしますと、かなりの違いがあるということがわかってまいりました。
 ライフサイエンスは、1つの製品に対して非常に少ない特許で保護されている。したがって、基本特許の役割が大きくなってくるわけであります。
 ところが、情報通信分野におきましては、1つの製品に対して非常に多数の特許が集中している。したがって、製品間の相互接続性などの確保が重要な課題になります。
 一方、環境の分野では、ニーズ指向という特徴がございまして、さらに政策の及ぼす影響が極めて大きいという状況であります。
 ナノ・材料においては、反対にシーズ指向型であると。さらに、幅広い産業分野はこれから応用開拓されていく状況であるわけであります。
 このような特徴がございますので、これらを踏まえて、次に進みたいと思いますが、このたび、新しい用語でございますけれども、「知財フロンティア」という基本理念で、日本の知財戦略を策定するというまとめをしたところであります。
 これまでに我が国の知財戦略は、この図の一番下に「知的創造サイクル」という表現をしてございますけれども、発明・創作の段階、それを権利として保護する段階、それから活用し、実用化する段階というサイクルを描くということを、基本として政策を策定してきたところであります。
 これを、さらにグローバルに展開していくに当たって、それぞれに対応するところに「フロンティア」という用語をつけておりますが、「技術フロンティア」、「制度フロンティア」、「市場フロンティア」、このそれぞれのフロンティアが世界に向かって大きく拡大されていかなければいけない。これらのフロンティアを総合して「知財フロンティア」と称したわけでございます。
 このようなコンセプトの下に、知財戦略をこれから展開していくということでございまして、最後のページになりますが、それぞれのフロンティアにおいて、基本戦略は何か、それから当面の具体的な取組は何かということでまとめてあるわけでございます。
 技術フロンティアの拡大といたしましては、まず上流である基本特許を確保すること、それから幅広く下流までの技術を押さえること、これが基本でございます。この中で、当面重要なことは、研究開発の障害の除去であります。特に、実験用動植物のリサーチツールと呼ばれているものでありますが、この特許情報の開示が大変重要なことになっておりますので、これに積極的に取り組んでいくところでございます。
 それから、制度フロンティアの拡大につきましては、この分野で新しいビジネスが次々と開拓されていくように知財制度を整備していかなければなりません。具体的には特許権の存続期間が延長される制度がございますが、この対象としているところが限られております。これをさらに見直して、拡大していく必要があるということが1点。もう一つは、ネットワーク社会における著作権法の在り方が早急に検討されなければいけないということであります。
 それから最後に、市場フロンティアの拡大でございますが、これは優れた技術の共通基盤化、中小企業による知財の積極活用、国際展開の促進、こういったことが基本戦略として挙げられます。
 この中で、特に優れた技術の共通基盤化でございますが、特に情報通信分野において、オープン・イノベーションの傾向がますます広がっておりまして、一つのところで特許等を占有している状況から、これがオープン化されてくる。こういったところに対する国際戦略を策定していかなければいけないということであります。一方で、同時に、標準化が大変大きな問題でありまして、国際標準獲得のための取組の強化をしなければいけない。
 それから、依然として大きな問題は、模倣品・海賊版拡散防止条約の早期実現、グローバルな課題に対して知財の面からも貢献していくということ、特に環境技術等への積極的な技術移転などが課題であります。
 以上でございます。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 相澤先生、ありがとうございました。
 ただいまの相澤本部員からのご提言に関し、関係府省において、可能なものから順次措置すべきものと考えます。
 まず、このリサーチツール特許に関するデータベースについては、全体の調整は内閣府の主催する関係局長等会議において行うこととし、実際のデータベースの構築を特許庁にお願いしたいと存じますが、甘利大臣、よろしいでしょうか。

○甘利経済産業大臣 はい。本データベースは、リサーチツール特許の利用拡大を図るものでありまして、イノベーション促進の観点から重要な取組であります。特許に関するリサーチツールのデータベース構築を早急に進めるように、特許庁に指示いたします。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございます。
 また、データベース構築には、大学、研究機関、企業等からのデータ提供が必要です。文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省等関係府省から、関係者への協力の働きかけをお願いいたします。各大臣のご協力を、よろしくお願い申し上げます。
(「異議なし」と声あり)

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) そしてまた、昨日、私は日本経団連の知的財産関係幹部の皆様とお会いさせていただきまして、分野別知的財産戦略について意見交換を行わせていただきました。その際、国際貢献の観点から、我が国の環境技術を世界にもっと使ってもらい、環境問題の解決に資するような知財戦略に取り組んでいただくことにつき、私からお願いを申し上げさせていただきました。
 これに対しまして、産業界の側から、国際競争力の維持、正当な対価などを前提としつつ、世界に広くライセンスを行っていくことで我が国の環境技術を普及させ、世界の環境問題の解決に貢献していくことに賛同する旨の意見表明がありました。このことにつきまして、ご報告を申し上げさせていただきたいと存じます。
 次に、先ほど説明のあった報告書の関連も含め、知的財産戦略に関して、有識者本部員の方々からご意見をお願いいたします。
 それではまず、岡村本部員からご発言をお願いいたします。

○岡村本部員 本日は、知的財産を活用しました事業展開の成功事例として、東芝の製品でございますが、CTスキャナーの例をご紹介いたしまして、若干のお願いを申し上げたいと思います。
 本件は、今、相澤先生からご報告がございました分野別知財戦略のライフサイエンス分野に関連しておりまして、臨床応用における国際的な産学連携、これが1つ、ポイントでございます。そして、外国特許の取得を推進して、世界をリードする製品になったという事例でございます。
 CTスキャナーは、もう既にご承知のとおりでございますが、体の断層写真を高速に、かつ、大量に撮影して、画像を編集して診断に役立てるというものでございます。がん、心臓病、脳血管疾患などの診断に使われます。一番右側の画像が、最新機器で得られた頸椎部、心臓、それから肺の3つでございます。
 事業そのものは、世界のテクノロジーリーダーと任じておりますので、次々と新製品開発を行いまして、年々成長しております。日本におきましても、アメリカにおきましても、シェアを拡大しております。
 左側の写真がCTスキャナーの外観でございまして、ご承知のとおり、患者が寝台の上に横たわりまして円筒部分に入ります。そして、この円筒部分の内部が高速に回転しつつ、映像情報を撮るということでございます。
 これは、従来までの最新鋭機の64列のマルチスライスCTスキャナーでございますが、円筒部分の内部にはX線発生器と64列の検出器がおさめられておりまして、1回転で64断面を同時に撮影いたします。1回転が0.35秒で、0.5ミリピッチで撮影いたしますので、1回転いたしますと3.2センチの映像が撮れるということでございます。必ずしも臓器によっては、この3.2センチという撮影幅は十分ではないということが問題ではございましたが、この装置につきましては、特許にて権利化されました各種技術を組み合わせて、世界で初めて真の立体イメージングを実現いたしました。
 このCTスキャナーは、心臓のような動く臓器への適用は難しいと言われておりましたが、弊社は心電波形を利用して心臓の動きをとらえ、鮮明な立体イメージングが実現いたしました。
 そして、2004年11月に、64列CTによる心臓冠動脈イメージングをいかに臨床へ適用するかということを研究する国際連携のトランスレーショナルリサーチ・プロジェクトを立ち上げました。トランスレーショナルリサーチと申しますのは、先端研究にて得られた技術を速やかに臨床へ応用する研究でございます。右上の地図にございますように、米国のナンバーワンと言われておりますジョーンズ・ホプキンス大学、あるいは日本の岩手医科大学など、世界7カ国の9病院が参加いたしました。先月、アメリカ心臓協会の定期総会で、従来のX線による心臓カテーテル検査と同等に病気を検出できるという報告がございました。米国のNHI―National Institutes of Healthでございますが、基礎研究からトランスレーショナルリサーチ、臨床研究までシナリオを描いて推進しているということでございま。ここで1つ、お願いでございますが、やはり各省が連携して、基礎研究から臨床研究まで効果的・効率的な研究促進が図られることを期待いたしております。
 1990年に開発されました螺旋回転するヘリカルCTは、256列CTまで研究開発は進んでまいりましたが、256列の臨床研究から得た知見により、本年10月、320列CTを市場投入いたしました。0.5ミリの厚さで切ってまいりますので、それを320倍いたしますと16センチということになりまして、1回転で心臓全体、さらに脳、肝臓全体を撮影することができます。0.35秒で心臓全体を撮影できますので、連続にスキャンすることで、心臓の動きの立体動画イメージングが実現いたします。
 CT事業につきましては、ここに記述している戦略でグローバルな成長を推進しておりまして、先ほど来お願いしておりますとおり、基礎研究から臨床研究までが効率的に行われるように各省の連携をお願いしたいということと、併せて、欧米に比べて狭い日本の医療分野における特許の対象範囲の拡大という面での国際調和への努力をいただきたい。この2点をお願いしてご報告といたします。
 ありがとうございました。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 岡村本部員、ありがとうございました。
 それでは次に、角川本部員からご発言をお願いいたします。

○角川本部員 資料4をご覧ください。
 1枚めくっていただきまして、東京国際映画祭のクロージングの写真を皆さんにご覧になっていただきたいと思います。10月20日から28日まで、第20回東京国際映画祭が開催されました。上映作品数は、9日間で304本、総動員数も、各種イベントを含めて35万人を動員するところまでまいりました。映画祭のみならず観光立国日本をも、また演出できたのではないかと思います。非常に華やかな最後のクロージングパーティーもすることができました。
 今日、私がお話し申し上げたいのは、その次のページでございます。
 今、米国発Web 2.0の企業が、日本のみならず世界を席巻していると言ってよいと思います。皆さんもお聞き及びのGoogle、YouTube、Amazonという会社が、非常に大きな力を持つに至って、昨今では学界でも、このままGoogleは大きくなってよいのだろうか、Googleのサービス自身は非常に便利なものだけれども、アメリカの一企業がこんなに力を持ってよいのだろうかという危惧や脅威も、最近はささやかれるようになりました。
 私は、日本には日本ならではの「和製グーグル」を育成することが、今、必要になってきているのではないかと思います。
 このことにつきましては、左の方に、20世紀は情報産業のビッグバンがありました。それからまた、20世紀の最後には金融のビッグバンがありましたけれども、「21世紀は情報コンテンツのビッグバンが起こっている」と言ってよいと思います。驚異的なコンテンツ、情報が、今、つくり出されております。
 そういう中で、経産省が「情報大航海プロジェクト」というものを立ち上げております。これも非常に重要なことでして、日本発の情報検索の技術を開発と普及していこうということですけれども、現実には、今、日本の書籍が79万点、それから学界の学術文献情報、また総理もご関心をお持ちの公文書館資料の国民への開放、また各省庁のホームページの利用、それから、そこには書いてありませんけれども、国会図書館には880万冊の蔵書があります。これらの情報をデジタル化して、その利用を図っていただきたいと思います。
 そのためには、今、相澤先生からもお話がありましたように、制度障害、壁となっています著作権法を改定して、サーバーを日本に置けるようにしていただきたいと思います。今、日本は、サーバーが国内に置けないという形になっておりまして、それについて、日本にもそういうサーバーを置いて、日本に検索技術会社をつくっていかなければいけないという問題意識を持っていただきたいと思います。
 このサーバーは、非常に電力と土地を必要としますので、このサーバーの工場は、地域振興にもきっと役に立つのではないかと考えております。
 以上であります。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 それでは次に、佐藤本部員からご発言をお願いいたします。

○佐藤本部員 我が国の知的財産による国際競争力強化という観点で、3つほど申し上げたいと思っております。
 このたび、我が国の国際競争力の強化ということで、技術フロンティア、制度フロンティア、さらに市場フロンティアという知財フロンティアの新しい基本理念を明確にされたということに、強く賛同したいと思っております。これからは、この中でも特に市場フロンティアという方向性が、すごく重要ではないかと思います。
 新しく開発された技術が知的財産制度で保護されても、それが市場において強い競争力を持たない限り、力にはならないと考えております。その点で、産業界並びに国が、これらの新しい市場を開拓するということに注力していくべきではなかろうかと思っております。
 2点目としては、国際競争力を持つためには、我が国が開発した画期的な技術を国際的に保護することが必要でございます。そのためには、多くの国で特許を取る必要がございます。
 しかし、現在、特許制度は各国ごとに違い、また各国別に出願しなければならないということで、国際的な知財を保護していくという観点からは、非常に負担が大きくなっております。この点においては、政府として、今まで日米欧3極の折衝なり、また特許審査ハイウェイのようないろいろな施策を進められてきておりますけれども、さらに一層、特許制度の世界統一に向けた施策を推進する必要があるのではないかと思っております。
 3点目としては、地域、中小企業の国際競争力強化という観点でございます。国際競争という意味では、大企業も中小企業も全く同じ土俵でございます。その意味では、中小企業、地域は、人的にも経済的にも資源が少なく、そういう意味では国際的に知的財産を保護していくということは、またこれも大きな負担になっております。そういう意味では、強い地域、また中小企業をつくるという意味では、国がしっかりこれらを支援していくという施策が必要ではなかろうかと思っております。
 最近、農林水産省と経済産業省が連携して、地域の知財の創造、保護、活用ということを進められると伺っております。これは、今までなかった省をまたがった横串の画期的な施策ではなかろうかと思っております。そういう意味で、大変期待しておりますので、ぜひこれからも連携を密にして推進していただければと思っております。
 以上でございます。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 それでは次に、里中本部員からご発言をお願いいたします。

○里中本部員 海外での海賊版等の実態と取組ということで、よろしくお願いします。
 1枚めくっていただきますと、海外における海賊版アニメDVDと、見本がここにありますが、これまでは海賊版をつくっている当該国がその国内で売るだけだったのですけれども、現在ではその国が海賊版を輸出しております。海賊版Aは、製造が中国で行われておりまして、ヨーロッパ全土に正規品だという名目で売っております。海賊版Bは、台湾で製作されて、世界中に通販で売られております。本来、日本が得るべき経済的効果が損なわれていると思います。
 次をめくっていただきまして、「クレヨンしんちゃん」という作品ですけれども、商標登録を先に中国でされておりまして、結局、正当に使えない。この商標登録は、漫画だけではなくて、ほかに食品とか日本の様々な品物に関して、外国で違法行為が行われておりますので、ゆゆしきことだと思っております。そして、裁判で争っても対応に限界があって、本当に苦労しておりますが、泣き寝入りというのが実態です。
 日本政府は、在外公館に知財担当官を配置したり、JETRO等でも現地民間企業への支援を積極的に行ってくださっているとは思います。また、日本のコンテンツであることを示す「CJマーク」の取組も推進されていることは承知しております。その他、権利者情報の発信という意味においては、コンテンツポータルサイトについて、多言語化の検討が進められているとも聞いております。
 ただ、このような実態を改めてご認識いただき、その上で、「知的財産推進計画2007」にも盛り込まれているように、在外公館の相談機能強化、模倣品・海賊版拡散防止条約の早期実現などといった取組について、引き続き、強力に推進していただきたいと思います。
 1枚めくっていただいて、一応、自衛策といたしまして、勝手にいろいろやられるよりは、こちらから積極的に打って出ようという取組も始まっております。世界中から読める日本の漫画作品、つまり、こういうところで読んでいただくことによって、海賊版を少なくしていこうという取組です。今、この漫画は、eBook Japanというところで月間ダウンロード数が約15万となっておりますが、これは今年度前半期までの数字でございますので、こういう取組がどんどん出てくればよいと思います。
 1枚めくっていただきまして、シンガポールを拠点に、中国語圏、英語圏に出していこうという取組です。
 今後とも、皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 それでは次に、中山本部員からご発言をお願いいたします。

○中山本部員 簡略に、骨子だけを申し上げます。
 我が国は、情報化、IT化時代に対応した変革を遂げなければいけないわけですけれども、現在、我が国が有している優れたコンテンツとか、あるいは通信インフラを十分生かしていくというためには、コンテンツの利用・流通を妨げないような法的な整備をしていくということが重要であるわけです。
 しかしながら、現状では先進諸国、あるいはお隣の韓国にも遅れをとっている面があるということは否定できないわけであります。知財に関していえば、先ほどから述べられておりますGoogle等の検索エンジンなどは典型例ですけれども、インターネットで何かビジネスを行おうと思うと、知的財産権に抵触し、我が国ではやりにくいという状況があるわけです。
 現在の著作権法は、基本的には19世紀的な構造を有しておりまして、デジタルコンテンツの利用・流通という側面に対する配慮は不十分と言わざるを得ないわけであります。現実には、条約等のいろいろな制約があるということは、私も十分承知しておりますけれども、国際的にも進んだ制度を早急につくり上げるという必要があろうとかと思います。
 このためには、単に著作権法という一つの法律、一つの官庁の問題としてとらえるのではなくて、コンテンツを中心とした官庁横断的な大きな戦略を立案する、それが知的財産戦略本部の役割であると考えております。
 以上でございます。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 それでは次に、長谷川本部員からご発言をお願いいたします。

○長谷川本部員 それでは、資料6を出していただきたいと思います。
 1枚めくっていただきますと、3点ほど申し上げたいと思いましたが、時間の関係もございます。第3のリサーチツールにつきましては、先ほど相澤本部員からご説明がありましたので割愛しますし、下から2番目の「発明に対する適切な保護:広い保護、強い保護」は、後ほど事務局でフォローしていただくとしまして、本日、私は、1番目の先端医療技術の特許保護について少し申し述べさせていただきたいと思いますので、次のページをおめくりいただきたいと思います。
 最近、京大の山中先生が、Embryotic Stem cellと同等の万能細胞を皮膚からつくるという非常にノーベル賞にも値するような発明をされておりますが、この発表はタッチの差で先行できたということでありますし、これを受けまして科学技術会議、あるいは総理も素早く反応していただきまして、万全を期すようにやっていただいております。このようなイノベーションは、日本の将来を担う可能性のあるものでありますので、ハーバードや、あるいはアメリカのほかの大学は、実用化に向けては絶対に日本に負けないということで、大統領、あるいは豊富な資金をもう既に投入しておりますので、京大のTLOがちゃんとやっていただいているだろうとは思うのですけれども、その辺について、やはり国家戦略として、ぜひ万全のサポートをしていただきたいと思うわけであります。
 特に、日本とアメリカでは特許制度が違いまして、日本の場合は物質でありますとか医療材料としての特許でありますけれども、プロセス(メソッド)特許にはいろいろ事情がありまして、まだなかなか難しいわけですが、アメリカの場合はプロセス全体の特許が可能であります。あるいは、ヨーロッパも、今そういうことをやろうとしておりますので、国際戦略としては、やはりアメリカあるいはヨーロッパ、そういうところでプロセスでとれる分はきちっとカバーしておかないと、なかなか後で日本としてよいものを出しても、それはアンブレラでやられてしまうということにもなりかねませんので、その点について、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 それでは次に、三尾本部員からご発言をお願いいたします。

○三尾本部員 私は、資料7をご覧いただきたいと思うのですけれども、一言で申し上げまして、今後の戦略としては、新たな課題への対応と、これまでのいろいろ行ってきました改革に対する検証をする時期が来たのではないかという、この2つでございます。
 まず、新たな課題に関しましては、先ほど長谷川本部員からもお話がありましたように、ES細胞に関しましては国家的な取組をしていただきたいと強く感じております。
 現在は、特許庁の審査基準によりますと、医療材料等を製造するための方法の発明については特許が認められるという扱いになっております。これをさらに広めまして、ES細胞を活用する上で支障のないような形で特許が活用できるように、さらに検討していただきたいと考えます。
 さらに、これまでの改革の検証でございますけれども、資料7の後半部分に書いてありますように、最高裁が発表いたしました特許訴訟の新件数は、この棒グラフを見ていただければわかるのですけれども、いわゆる頭打ち状態になっております。この原因としては、様々なことが考えられるのですけれども、今言われておりますのは、特許法104条の3(無効の抗弁)が認められたことが、大きな原因となっているのではないかということです。といいますのは、無効になることが恐いということで、特許権者が積極的に特許権の侵害訴訟を提起しないという事態があるということでございます。
 このようなことも踏まえまして、これまでの改革を検証して、今、実態としてどうなっているのかということも検証した上で、さらに制度について見直していただきたいと考える次第です。
 以上です。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 それでは次に、山本本部員からご発言をお願いいたします。

○山本本部員 私は、資料8で1枚だけです。産学連携の実態について、ご説明させていただければと。
 1番目は、紺色の線がアメリカの大学における発明の総数の推移で、ずっと右肩上がりで上がっております。オレンジがそのうち出願されているもので、2003年から日本の大学の発明の統計がとれるようになっておりまして、発明総数と、オレンジ色のしまが出願総数です。産学連携は、米国に20年遅れと言われておりましたが、発明数でいうと、何とか10年遅れぐらいまでキャッチアップしてきた。出願数に至っては、5年遅れぐらいまでにかなりの勢いでキャッチアップしておりまして、実は米国の大学でも、日本の産学連携は非常に高く評価されております。
 結果として、2番目でございますが、2005年トータルで、大学の技術は1,056件が民間企業にライセンスされて、ロイヤリティも10億円。アメリカは1,500億円ございますので、まだまだでございますが、そこまでキャッチアップしておると。
 3番目に、産学連携はベンチャー・中小企業対策になっておるということですが、実は、アメリカの大学の技術は、過去10年間、毎年3分の2はベンチャー・中小企業に移転されております。日本は、調べてみますと半数以上が中小企業、ベンチャーに3.2%で、大学の技術の6割弱はベンチャー・中小企業に行っておりまして、これは非常に中小企業支援ということに結果としてつながっているのではなかろうかということで、私が申し上げたいのは、昔の大学に逆戻りしないように、ぜひこの推進を続けていただきたいということでございます。
 以上でございます。

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) ありがとうございました。
 有識者本部員の方々のご発言は以上でございます。
 通常は、この後、閣僚本部員の方々からご発言いただくところですが、本日は時間の都合上、提出された資料をご参照いただくということで、とどめさせていただきたいと存じます。ご了承いただきたいと存じます。
 それでは最後に、知的財産戦略本部長の福田総理よりご発言をお願いしますが、その前にプレスが入室しますので、しばらくお待ちください。

(プレス入室)

○福田内閣総理大臣 今日は、ちょっと遅くなりましてすみませんでした。もう、何かいろいろと、暮れのどん詰まりに来たような感じでございますけれども、皆様、大変ご苦労さまでございます。毎回、熱心なご議論をいただきまして、大変感謝いたしております。
 私は、実は、前に官房長官をしておりまして、そのとき第1回からこれに参加させていただいておりまして、大変目覚ましい成果を上げていただいておると思っております。特に、知財の保護制度の抜本的な強化とか、それから知財裁判所、これもここでご提案いただいたことでございまして、そういうことを振り返ってみても、大変このしばらくの間、知財関係は前進したと思っております。
 特に、昨今、いろいろと市場も、それから技術のスピードも早まっておりまして、これは何か追いまくられているような感じもしないでもないのですけれども、そういう状況の中で、これからこの知財本部を中心にしまして、そういう情勢に常にキャッチアップしていただくということはとても大事であるし、キャッチアップするだけではなくて、その先を行っていただく。特に、先ほどご説明がございましたように、もうアメリカにも追いつけるような状況になったということでありますので、そういうことを考えると、まさに日本はこの面でも頑張れるかもしれぬと。ここでもって、例えば環境に関する技術開発等が進みますと、本当に私は、世界をリードできるような立場になるのではないかな、こういう欲をかいた希望を持っております。
 そういうことをするためにも、今回示されました「知財フロンティアの開拓」という新機軸の下に、今後とも世界最先端の知財立国を目指して、未開の技術・市場・制度の開拓に果敢に挑戦するということが重要でございますので、引き続き、皆様方のお知恵を拝借したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

(プレス退室)

○岸田内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 総理、ありがとうございました。
 それでは、時間もまいりましたので、本日はここまでとさせていただきます。
 次回の会合につきましては、来年3月頃の開催を予定しておりますが、詳細につきましては事務局から追ってご連絡させていただきます。
 本日の会合の内容につきましては、この後、事務局からブリーフを行うこととしております。
 本日はどうもありがとうございました。