首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 カテゴリーなし

知的財産戦略本部会合(第22回)

日時: 平成21年4月6日(月)16:10〜16:55
場所: 官邸大会議室



○野田内閣府特命担当大臣 ただいまから、知的財産戦略本部の第22回会合を開催いたします。
 本日はお忙しい中、ご参集いただき、誠にありがとうございます。
 まず初めに、有識者本部員の任命についてご報告いたします。
 去る3月18日、有識者本部員の任期が満了となり、翌日付で麻生総理大臣から10名の方々が任命されました。留任が8名、新任が2名です。
 新任の方をご紹介いたします。
 産業技術総合研究所理事長、日本経団連知的財産委員会委員長、野間口有さんです。
 京都大学総長、松本紘さんです。
 以上のお二方です。これからどうぞよろしくお願いいたします。
 また、本日はアカデミー賞受賞作「つみきのいえ」を制作されたロボット社の阿部社長と加藤監督をお迎えし、後ほどプレゼンをしていただくことになっております。
 それでは、早速議題に入らせていただきます。
 前回の本部会合で進捗状況について報告のありました「日本ブランド戦略」が取りまとめられましたので、コンテンツ・日本ブランド専門調査会久保利英明会長からご報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○久保利コンテンツ・日本ブランド専門調査会会長 久保利でございます。このたび「日本ブランド戦略」を取りまとめましたので、ご報告いたします。
 副題を「ソフトパワー産業を成長の原動力に」といたしました。その思いは日本らしいコンテンツ、食、ファッション、デザインといった産業をソフトパワー産業と位置づけまして、経済成長の原動力とするよう国家戦略として打ち出すというものでございます。
 資料1の1ページをお願いします。
 先日「おくりびと」、「つみきのいえ」がアカデミー賞を同時受賞いたしました。日本の映画、アニメ、漫画といったコンテンツやファッションなどは世界中で高く評価されています。日本人自身が再認識するとともに、日本のソフトパワーに対する高い評価を産業につなげていかなければなりません。
 現状をご説明いたします。
 1つ目に、国内のソフトパワー産業、これは中小・零細企業が多いために事業展開のノウハウや資金力、ネットワークに乏しく、創造基盤が脆弱であります。例えば、映像プロダクションのうち、従業員50人未満の企業が8割以上に上っているわけであります。
 2つ目に、海外での売り上げにつながっていません。特にアジア地域では海賊版の氾濫、輸入規制といった障壁もありまして、ビジネスモデルの確立が進んでおりません。例えば、コンテンツ産業の海外依存度でございますが、米国は17.8%、これに対して日本は1.9%で約10分の1しか海外の依存度がありません。世界中で高く評価されているのに産業が潤っていない、このギャップを埋めない限り、ソフトパワーを生かせぬまま、産業としては立ち枯れるおそれがございます。今こそソフトパワー産業を戦略産業の1つとして位置づけ、成長の原動力とすべく、創造・発信の両面から施策を展開すべきであります。
 2ページ目に入ります。
 戦略の構成は1、2が「創造」の強化でございます。
 戦略1ですが、ソフトパワーにおける中小企業支援として、地域に眠るソフト資源の活用や中小企業支援策の積極的な活用を促進します。また、メディアの多様化に対応して、コンテンツ取引支援システムを構築します。
 戦略2でございます。映画、放送番組、ファッションなどの文化資源、これのアーカイブ化を進めます。特に散逸したり劣化の危機にある日本映画などを集中的に保存、修復し、デジタル化するとともに著作権処理を行い、利活用することを促進します。このほか、若手クリエーターを育成する取り組み、ブランド力向上に向けた知財制度の検討なども行います。
 3ページをご覧ください。
 戦略3、4が「発信」の強化、そして5がそれを支える推進体制となっています。
 戦略3としては、コンテンツ海外展開ファンドを設立し、国際展開を念頭に置いたコンテンツの国際共同制作、販路開拓を支援します。市場拡大が期待されるアジア地域で重点地域を5カ所程度定め、イベントの集中実施、海賊版取り締まりや輸入規制緩和の働きかけなどを行います。また、在外公館に日本ブランド支援センターを新たに設置し、現地での情報発信機能を強化します。
 戦略4としては、外国人旅行者や留学生の受け入れ拡大などをさらに進めます。
 そして、最後に戦略5としては、クリエーターなどを中心とした懇談会を設置し、意見を施策に反映していくほか、官民のメンバーからなる日本ブランド戦略推進委員会を設置し、日本ブランドを戦略的かつ継続的に創造・発信していくための推進体制を構築します。
 お手元に「日本力」とデザインされた表紙があると思います。こういうものです。今後はこの表紙を使って戦略をプロモーションしていきたいと思います。この日本力という言葉は、国民の皆様から寄せられた意見をもとにしたキャッチフレーズでございます。このデザインは本専門調査会委員である東京藝術大学宮田学長がみずから筆をとってつくられたものでございます。
 関係省庁におかれましては、戦略の推進に引き続き積極的にご協力いただきますようお願いいたします。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣 お取りまとめいただきまして、誠にありがとうございました。
 次に、第3期知的財産戦略の基本方針です。
 基本方針については前回の本部会合で議論を行いましたが、その後2つの専門調査会で検討を行ってきたところです。こちらも報告書が取りまとめられたので、2つの調査会を代表していただき、知的財産による競争力強化専門調査会会長、相澤本部員からご説明をいただきます。お願いします。

○相澤本部員 相澤でございます。
 それでは、資料3をご覧いただきたいと思います。
 知的財産による競争力強化専門調査会とコンテンツ・日本ブランド専門調査会で、知財本部の発足からこれまで6年間たっておりますので、その知財政策の実施状況に対するレビューを行い、その上で今年度から始まる第3期における基本方針の在り方について検討してまいりました。このたび、その結果を資料5のとおり取りまとめたところでございます。本日は資料4のとおり基本方針を決定していただければと思います。
 2ページ目をご覧ください。
 これまで第1期、それから第2期では知財高裁の設置、特許審査迅速化のための任期付審査官の採用など、知的財産の保護を重視した施策を中心に進めてまいりました。しかしながら、知的財産を取り巻く環境は激変しております。そこで、第3期においては知的財産を活用することを重視いたしまして、知的創造サイクルの拡大・進化、競争力強化を目指すことを考えております。こうした状況であるからこそ、グローバルな知財競争力の強化が重要な目標になってまいります。また、第3期からは政策評価のためにPDCAサイクルを本格的に導入いたします。
 政策レビューを踏まえまして、我が国の現状と課題を整理いたしました。
 オープン・イノベーションが進展し、グローバルな規模で知財の獲得、活用競争が激化しております。我が国がイノベーションのイニシアチブをとっていくには、大学等の知財を事業化までつなげる総合プロデュース機能、このことがまだ欠けているという状態であり、さらに企業における高度な知財戦略にも遅れがございます。さらに、権利保護と活用のバランスのとれた制度の構築がまだまだ不十分と言わざるを得ません。
 経済のグローバル化への対応には、他国との知財制度の調和・審査協力が不十分であり、我が国企業との関係の深いアジア地域における知財制度の整備も十分ではありません。また、国内における模倣品取り締まりの成果は一定程度見られるところでございますが、海外における模倣品、海賊版により被害は後を絶ちません。知財活動の海外展開や国際標準化活動にも遅れが見られます。
 先ほどご説明のありました日本ブランド戦略におきまして、現下の経済状況に対応するためには、潜在力のある我が国のソフトパワーの推進がかぎであります。そのためには、国内における創造基盤の脆弱性、インターネットなどの海賊版の氾濫、流通経路の複雑化への対応等が課題でございます。特許侵害訴訟において、特許権を無効とする判決が増加傾向にあります。知的財産権の安定性・予見性が十分確保されていないという懸念も高まっております。
 最後に、経済情勢が厳しさを増す中、国内外における権利取得段階から紛争、訴訟段階に至るまで、高コストの構造が問題視されるなど、利用者ニーズへの対応が重要となってまいりました。
 そこで、5つの柱で第3期の知的財産戦略の基本方針をまとめております。
 まず、イノベーション促進のために技術革新や市場変化に的確に対応した知財制度の構築、大学、中小企業等の生み出す知的財産の総合プロデュース機能の強化、オープン・イノベーションの進展に対応した環境整備等を推進してまいります。
 次に、グローバルな知的財産戦略の強化を図るため、世界特許システムの構築に向けた取組の強化、海外市場における模倣品・海賊版対策の強化等を推進してまいります。
 このほか、ソフトパワー産業の成長戦略の推進、知的財産権の安定性・予見性の確保、利用者ニーズに対応した知財システムの構築、こういうことの5本の柱を推進してまいります。
 今後この基本方針に沿って年度計画を策定する段階に入ってまいりまして、さらに個々の施策の具体化を図っていくことが重要と考えております。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 次に、これまでのご報告を踏まえ、今後の知的財産戦略に関してご意見をお願いいたします。まず、有識者本部員からご発言をお願いします。全体の時間が限られておりますので、恐縮ですが、ご発言は簡潔にお願いいたします。
 それでは、角川本部員からご発言をお願いします。

○角川本部員 2点ほど申し上げたいと思います。
 アップルやグーグル・YouTubeが日本コンテンツの世界マーケットのシェアを10%と見ておりますけれども、その割には日本のソフト産業の海外売り上げが非常に脆弱じゃないかと、今ご指摘のあったとおりであります。力不足の感も否めません。何故メイクマネーに失敗してきたかということでもあります。
 そこで一言述べさせていただきます。
 映画業界を例にいたしますと、リアルな販売ルートの整備がまだまだ遅れているという状況です。角川映画の例では、1997年の「失楽園」のときには、日本のセラーの力ではまだアジアに販売することはできませんでした。まだ太平洋戦争の影響で、文化というものが非常に政治的に見られていました。日本人の手で「失楽園」を売る力というのは障害が多く、フランスのカナル・プラスという放送局の力で販売したという実績がございます。その後に出てまいりましたジャパンホラーの代表作「リング」については、これは初めて日本人の手で売ることに成功いたしました。
 そういう点で考えますと、まだ日本コンテンツの海外への販売展開は10年ほどの歴史しかないというのが事実だと思います。そういう中で、ノウハウも人材も不足しているということであります。
 したがいまして、そこでぜひアジアの進出、世界の進出は、外務省や経産省の応援が必要であります。来年の上海万博は日本のソフトパワーの存在感の大きさを海外の人々に知っていただく良い機会です。コンテンツ産業の海外進出の場として上海万博を活用させてほしいと思います。
 それから、今経産省が進めておりますコンテンツ海外展開ファンドの組成によって、日本の市場のみならず、海外マーケットの販売も広がっていくと思います。そのときに、この海外展開ファンドの組成によって、相手国の映画との合作協定の締結も可能になります。合作が可能になれば、また外務省が進めている模倣品・海賊版拡散防止条約の締結に向けて、交渉に弾みがつくと思います。ぜひこの2点について考えていただきたいと思います。ありがとうございました。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次に佐藤本部員、よろしくお願いします。

○佐藤本部員 知財の現場から一言申し上げたいと思います。
 先ほど相澤本部員からご報告がありましたように、グローバルな知財競争力の強化というのが第3期の基本でございますが、それを支えるのはやはり特許制度だというふうに考えております。今年このたび特許庁は研究会を立ち上げて、50年たった特許法をもう一度見直すということを始めました。イノベーションに特許制度が寄与するためには、やはり努力した発明者がしっかり保護されるということ、その保護されることによって第三者の権利が制限されるということになりますので、この保護と制限というもののバランスを適切にとっていくということがイノベーションの促進のために重要だろうと思っております。そういう意味で、今回特許法を見直す際には、この在り方をしっかりと踏まえた上での制度構築が必要ではないかと思っております。
 もう1点は、やはり日本が知財のワールドセンターになるべきだと思っております。世界の知財制度を日本がリードし、さらに世界中の知財の成果が日本で適切に保護されて、その成果が日本から世界に発信され、活用されていくというような形にしていくことが、日本の国際競争力強化のためには必要であろうと思っております。
 この2点について、ぜひ官民とも力を注いで実現していくべきだと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次に里中本部員、お願いします。

○里中本部員 先ほどコンテンツ・日本ブランド専門調査会の久保利会長のほうからもお話がありましたが、文化資源のアーカイブ化の推進というのがあります。これは映画、放送番組、ファッション等のアーカイブ化を強力に推進するということと同時に、将来的に今後ネットを通じて日本の情報を世界に配信し、そこから経済効果を上げるということにつながっていくと思います。
 漫画につきましても、かねてよりお願いし、また少しずつ進めておりますが、映画とか放送番組の成功があれば、漫画やアニメについてももっともっと勇気を出して進めるのではないかなと思っております。
 その際に、やはり我が国にサーバーを置くということが非常に重要でして、こちらで著作権をコントロールして配信するという、その体制が整わない限り、ネット上の海賊版はなかなか減らないと。
 海外の人に言わせますと、「日本が配信が遅いから、我々は早く見たくて仕方なく海賊版を見ているのだ」という、そういう言い訳をされているところでありますが、そういうのも若い人たちにとっては一理あるかなと思います、早くみたいというのは。それを防ぐためにも、速やかにアーカイブ化と新刊のデジタル化、そしてそれの配信ということを進めていけたらいいのではないかと希望しております。よろしくお願いします。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次に中山本部員からのご発言をお願いします。

○中山本部員 知財推進計画の在り方について一言申し上げたいと思います。
 この知財推進計画の個々の問題点については別に異論はない、賛成でありますけれども、この推進計画は総花的でありまして、また各関係官庁が現に行いつつあるものも並行して記載されております。この計画は各方面の要望を網羅的に取り入れられておりまして、項目数は極めて多いものの、中心点が見えにくくなっています。
 戦略本部というものは、官庁横断的であって本部がやらなければできないもの、あるいは関係官庁に任せておいたのでは推進しないもの、そういうものを集中して扱うべきではないかと考えております。戦略本部が扱う具体例の1つとして、例えばコンテンツを挙げることができようかと思います。我が国のコンテンツ産業の成長率は世界平均をはるかに下回っております。したがって、戦略本部が総力を挙げて取り組むべき課題の1つであると考えております。
 この戦略本部が設立されたころはもっと挑戦的でありまして、各官庁と激しくやりやったものでありますけれども、最近では非常に友好的になっておりまして、調整機能を果たしているということは言えるわけでありますけれども、新しい産業を引っ張っていくという爆発力には欠けているというように思えるわけであります。戦略本部といたしましては、持てる力を集中して行うべきではないかと考えております。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次は野間口本部員からご発言をお願いします。

○野間口本部員 私は知財戦略を経営の場で使っている立場、あるいはこれから大いに先端的な知財を目指そうという立場で3点申し上げたいと思います。
 1つは、相澤本部員のほうから報告がありました今年度の基本方針の中で、総合プロデュース機能ということを強化するというものがありましたが、大学とか中小企業、こういったところの知財の取り組みが徐々に強化されておりまして、これをいかに有効に活用するかという点で、この総合プロデュース機能を知財の得意な特許庁を初め、経済産業省の各部門が支援すると、大変いいことではないかと思いまして、人材育成も含めてしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。
 それから、2番目、世界特許システムの構築でございます。これは実は私どもから見まして、日本が一番リーダーシップをとってやっていると思っております。これへの参加国が徐々に増えておりまして、特許審査のハイウェイシステムを初めとして、非常に世界的なハーモナイゼーションが進みつつある。道はまだまだ遠いわけでございますけれども、そういった方向に向いているということは大変結構なことだと思っておりまして、これをさらに強化していただきたいと思います。
 それから3点目、模倣品・海賊版対策の強化ということで挙げられておりますが、模倣品・海賊版拡散防止条約、これも日本が提案したものでございますが、しっかりと成立に向けての国際的な議論の醸成、リーダーシップの発揮をよろしくお願いしたいと思います。
 こういったことをしっかり取り組んでいきますと、先ほど久保利会長のほうから報告のありましたコンテンツビジネスの推進、こういったものに大いに効果を発揮するのではないかと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 次に、長谷川本部員からお願いします。

○長谷川本部員 お手元に配付させていただいております資料6をご覧いただいて、簡単にご説明いたしたいと思います。その前に先ほど来ちょっと出ておりましたiPS細胞につきましての知財の保護は、オールジャパン体制をつくっていただくということで、その方向で進みつつありますが、まだ実態は必ずしもそういう体制が完全に整っておりませんので、ぜひ政府の側もその点についてウォッチを続けていただきたいと思います。
 それでは、資料6は、私どもが所属しております医薬品産業において、1つの主戦場でありますアメリカでどういうことが起こっているかという1つの例であります。特許が切れますとジェネリックに数カ月で置きかわるというのはご承知のとおりでありますけれども、むしろ医薬食品局はジェネリックの挑戦を促進するような法律がございまして、挑戦をしてそれに勝ちますと、ジェネリックになった場合に6カ月間、180日間はほかのジェネリックが入ってこれないという、そういう法律がアメリカにあるわけでありまして、それはジェネリックが挑戦することをある意味では奨励をしているわけであります。
 私どもの糖尿病の薬にこういう挑戦をされまして、結果として地裁でも控訴審でも裁判そのものは勝ったんでありますが、その過程においてそこに記載しておりますように、あらゆる姑息な手、汚い手を使ってやってまいりましたので、例外的にこの下の3分の1のところに書いてあるような不適切な後発会社の訴訟遂行には毅然たる態度で臨んで、米国訴訟法制度では、こういうことをやれば弁護士費用の償還すらも可能であるということで、我々が挑戦をいたしました。結果として我々に挑戦したジェネリックの2社から訴訟費用16.8ミリオン、17億円ぐらいですか、100円換算でそのぐらい、プラス金利で200万ドル、2億円ぐらいを勝ち取っております。一番下に記載しておりますように最高裁の上告期限が今月末だそうで、まだそれをやるかやらないかわからないということで、ちょっと社内担当が注意をして書いておいてくれということでありますが、こういうことをやらないとなかなかアメリカでも特許は守れないということを1つの例としてご披露しておきます。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、松本本部員からご発言をお願いします。

○松本本部員 私のほうからは大学から見た知財戦略の問題点を3点ほど申し上げたいと思います。
 iPS細胞のことでは国を挙げてご支援をしていただきました。改めてお礼を申し上げたいと思います。その経験を踏まえて、私どもが考えている点を資料7に基づきまして、横長の資料7でございますけれども、それについてご説明をさせていただきたいと思います。
 まず知財は、先ほど相澤本部員からございましたように、知財の確保、活用ということが重要でございますが、確保の点で、iPSの細胞のときもそうでございましたが、1点目は国際競争力強化に向けた特許出願制度をぜひ我が国として考えていただきたいという点でございます。これは米国と競争をしてきたわけでございますけれども、まず、仮出願制度による特許確保のスピード化、これは随分特許庁にいろいろご協力をいただいておりますが、まだまだやる必要はあろうかと思っております。
 2番は大学に固有の問題でございますが、研究をして論文発表をしなければ研究者として上に行けないということがございますので、論文発表後に出願を可能とするような申請期間の確保をぜひこれは考えないと、いい研究が知財を逃してしまうということがございます。アメリカでは結構こういう期間を長くとらえてございます。
 3番目は出願をした後でもデータの追加補強ということがアメリカでは随分大幅なフレームワークの中につきましても許可されている。日本は半年と短い上に、かなり制限的でございますので、ここはやはりそういった新しい制度を考えて、特許出願における国際競争力の強化が必要ではないかと思っております。
 第2点目はいわゆるコンセプト特許の権利化の問題でございます。iPS山中細胞のように、活気的な発明そのものを権利化することが可能なために、包括的な権利範囲を権利化することをお願いしたい。
 3点目は活用でございますが、共有特許の活用につきましては大学と企業が自由に第三者への実施許諾が可能な制度、これは一部現行でもできるようでございますが、大学の先ほどお話のございました死蔵を防ぐということで、活用促進をぜひお考えを強化していただきたいと思っております。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次に三尾本部員からお願いします。

○三尾本部員 私からは知的財産権の安定性・予見性の確保の観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
 本日特に申し上げたいのは、特許の有効性の判断につきまして、現行制度では裁判所と特許庁の双方が審理が可能であるという制度になっておりまして、いわゆるダブルトラック状態になっております。したがいまして、原告は裁判所のほうに侵害訴訟を申し立てまして、裁判所で特許の有効性を前提にして勝訴したとしても、被告が特許庁のほうに別途無効審判という無効の判断を仰ぐことによって逆に無効となってしまって、せっかく勝訴した判決がひっくり返ってしまうということがあるんです。実際の判決でもそのような事件がございまして、実に10年かけて最初に勝った侵害訴訟、最後まで確定した事件だったんですけれども、最終的には10年後に特許が無効になってしまって、勝訴判決が取り消されてしまったというようなことがございます。
 そういうこともございまして、権利者にとっては非常に厳しい状況になっておりますものですから、この現行制度を今回の特許法制度の改正の際に見直していただいて、例えば無効審判の申し立てを一定期間に制限をするとか、侵害訴訟で勝訴が確定した当事者については無効審決のほうの効果は制限する等の制度がとらえることが望ましいというふうに考えます。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次に山本本部員からご発言をお願いします。

○山本本部員 私は資料8で、90秒ですので項目しか挙げておりませんが、特許制度の一番の問題は日本とアメリカとヨーロッパが違う制度で競争していると、産業界はかなり外国出願には莫大なコストをかけているというのが問題でございます。ご案内のとおり、オバマ大統領も特許制度は変えるというふうに公言しておられますので、ぜひとも総理の一番得意とされる外交交渉で、日本とアメリカとヨーロッパが同じルールで戦えるようにしていただければ、これが一番大きなものではないかというふうに思っております。
 あとは、裁判も国際化が求められますので、優秀な技術者がロースクールを経て判事になれるように促進をしていただくような、そういう制度の確立もお考えいただければと。
 あとは、昨年からコンテンツを重要視しておりますので、特許庁と文化庁を統合して知財庁あるいは知財省をつくっていくというようなこともご検討いただければと。イギリスは2年ほど前からそういうふうに変わっておりますので、ぜひともご検討いただければと。
 あとは書いてあるとおりでございます。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 続いて、塩谷文部科学大臣、二階経済産業大臣、石崎総務副大臣からご発言をいただきます。
 よろしくお願いします。

○塩谷文部科学大臣 それでは、本日報告があった日本ブランド戦略に関しましては、先ほどお話がありましたようにアカデミー賞において滝田洋二郎監督の「おくりびと」が外国語映画賞を、また今日お見えの加藤久仁生監督の「つみきのいえ」が短編アニメーション賞を受賞されたわけで、このような国際的にも高い評価を得ている映画やアニメなどのメディア芸術等の文化芸術を日本ブランドとして振興するために、1つは日本映画のナショナルアーカイブ化の推進をしたいと考えております。現在国立近代美術館に設置された映画フィルムの収集、保存、上映等を行うフィルムセンターについてアーカイブ機能の充実を図る。それから、2つ目に若手クリエーターに対する表彰、奨励の仕組みをつくる。「つみきのいえ」もメディア芸術大賞を今年受賞して、それがアカデミー賞につながったと思っております。それから、メディア芸術を国際的に発信するための拠点形成。これは現在の補正予算で今予定しているところでございまして、場所等も検討しているところでございます。
 それから、第3期の知的財産戦略の基本方針について、今国会において著作権法の改正を行います。1つは違法な著作権の流通を抑止するための措置、そして2つ目、インターネット等を活用した著作権利用の円滑化を図るための措置について改正を行います。さらには、大学等の戦略的な知的財産の創造、保護、活用体制の整備、それから模倣品・海賊版拡散防止条約の早期の実現、そして権利制限の一般規定の導入等に関する文化審議会における検討等、これからも知的財産立国の実現に向けて必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 次に、二階大臣、お願いします。

○二階経済産業大臣 第3期知的財産戦略の基本方針に関連してでありますが、先ほど佐藤さんからもお話がございましたが、特許法が公布されて50年目の節目を迎えるわけでありますから、イノベーションをより促進する特許制度、また先ほど三尾さんからもお話がありましたとおり、裁判でもしっかり守られるような強い特許権を目指して、検討を加えていきたいと思っております。
 また、世界の特許出願が急増する中で、企業が複数国へ出願をする場合が大変顕著になってまいりました。世界中で迅速に特許取得ができるように、各国が審査結果を活用し合う国際協力の枠組みを日本がリードをしなければならないと考えております。
 さらに、地域、中小企業や大学にとって知財の活用がそれぞれの収益源となるように、きめ細かい支援を行ってまいりたいと思います。
 次に、ジャパンブランド戦略に一言申し上げます。
 本日加藤監督にもお越しいただいておりますが、今年のアカデミー賞では日本映画がダブル受賞をしました。日本のソフトパワーは海外から既に高く評価されているわけでありますから、これを契機にさらに映画産業の発展に尽くしてまいりたいと思っております。
 経済産業省としては、コンテンツの海外展開について、角川さんからもお話がありましたが、ファンドの創設や特許権取引システムの構築、地域産品等の海外販路開拓や地域映像制作への支援などを重点的に進めてまいりたいと思います。こうした取り組みを通じて、ようやくコンテンツ産業という言葉そのものが人口に膾炙されるようになってまいりましたが、今度は20兆円産業を目指してソフトパワー分野の一大産業としてまいりたいと思っております。
 20兆円産業は思いつきで言っているのではなくて、ちゃんと20兆になるようになっているんです。もう今13兆5,000億から14兆ぐらいいっていますから、このままずっと延ばしていけば19兆5,000億まではちゃんと積算の基礎があるんですけれども、だけど19兆5,000億というのは計画で言うのにはパンチがないから、やっぱり麻生内閣としてやる以上は20兆円産業と、心して予算をつけることです。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣 どうもありがとうございました。
 次に、石崎副大臣からお願いします。

○石崎総務副大臣 総務副大臣でございます。
 コンテンツ産業の成長は今後の景気回復のかぎでありますが、特に放送コンテンツは全国民が毎日のように接する影響力の大きいコンテンツであり、映像コンテンツの売り上げの7割が放送番組でございます。この分野の成長がコンテンツ産業全体を牽引するものと思っております。
 放送のコンテンツ政策を全国で支えているのは番組制作会社、プロダクションでありますが、先ほど久保利先生もご指摘あったように、こうしたプロダクションはほとんどが中小・零細企業でございます。昨今の不況がさらに追い打ちをかけている状態にございます。例えば、年末年始のテレビの特番、一番の稼ぎ時でありますが、調査では昨年末の11月、12月の売り上げは前年比15%の落ち込みという状況でございます。また、調査対象の半数のプロダクションが11月、12月とも赤字ということで、キー局を初め放送局も制作費のカットが続いておりまして、放送コンテンツの制作現場は危機的な状況にございます。
 総務省としては、まずはこうした状況の放送コンテンツ制作を支援し、各地域のコンテンツ創造力の回復・強化を図りたいと考えております。あわせて、多数の権利者がかかわる映像についての権利処理の円滑化や、海外の放送局の時間枠の確保による海外の視聴者に日本の放送コンテンツを知ってもらう機会の拡大、ジャパンチャンネルと言っておりますけれども、こうした支援を総合的に行っていきたいということで、次の経済対策にこうした施策を盛り込むべく今最終調整中でございます。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 ほかに特にご発言がございましたら。どうぞ。

○甘利内閣府特命大臣 コンテンツをたくさん生んで、それを世界に広めるには、要するにポータルサイト、1カ所にアクセスすればあらゆるコンテンツがすぐ発見できて、内容がわかって、権利者がわかって、だれに幾ら払えば使えるのかがわかって、その処理ができれば簡単なんですね。
 ところが、まず権利者側と流通側との思惑がいろいろ違います。これが一番難しい問題です。だから、せめてデジタルアーカイブ化すると。古い名作のフィルムはいわゆるメルトダウン現象みたいなのを起こしていて、作品自体がもうだめに、残せないような状況になっていますから、これはデジタル化してアーカイブ化するということをまず予算をつけてやることが第1です。
 それから、権利者もJASRACみたいに一律の方式が決まっていればいいんですが、映像に関しては権利者が多いのと、やっぱり権利者側と流通側の思惑がいろいろ違います。だから、それをどういうルールでというのを早く決めてあげることが大事だと思います。
 それから、あらゆるコンテンツの祭典というのはもうあるんですね。コ・フェスタというのがあって、東京ゲームショウに始まって、クロージングは東京国際映画祭というのがあるんです。あれをアジアの祭典に早くしていくことが大事です。ですから、レッドカーペット、昨年はグリーンカーペットでしたけれども、そこにアジアのスターを歩かせると、それが名誉であるというふうにプレイアップしていくことが大事なんですね。予算がありません。予算をちゃんとつけて、それをアジアの祭典にしていくということが一番の近道です。
 以上。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 ほかにご意見ございませんか。
 ありがとうございました。それでは、ただいまの議論を踏まえ、知的財産戦略本部として資料のとおり第3期知的財産戦略の基本方針を決定するとともに、第3期の初年度の計画である「推進計画2009」について、例年同様相澤本部長を座長として有識者本部員の方々に今後草案を取りまとめていただきたいと思いますが、ご異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、次に知的財産をめぐる最近の動きとして、ロボット社の阿部社長、加藤監督からご説明をお願いしますが、その前にプレスが入室しますので、少々お待ちください。

(プレス入室)

○野田内閣府特命担当大臣 それでは、阿部社長、加藤監督、よろしくお願いします。

○阿部社長 今いただいてきましたオスカー回して、痛いところをさすっても治りませんので。
 すみません、今ご紹介いただきましたロボットの阿部でございます。
 私どものロボットいう会社は1986年に創立しまして、今年で23年目になります。23年目にしてこういうものがいただけたというのは、本当によかったかなと思いますけれども、私どもはCMだとかWEBだとか、いわゆる「コンテンツ」と言われているもとをつくって、映画「ALWAYS三丁目の夕日」は私がエクゼクティブプロデューサーを務めました。最近では、「K−20 怪人二十面相・伝」というのもやりましたけれども、そういうコンテンツ制作の具体的にそれを形にする、我々はその集団です。
 その中の1人で今日ここにいる加藤久仁生君という、私どものコンテンツのアニメーターですが、これは彼が8カ月ぐらいこつこつとつくったものが世界的に評価されたというふうなことで、加藤君のほうから一言あれば。

○加藤監督 こういう大変大きなありがたい賞をいただけるというのは非常にうれしいんですけれども、日本でもいろいろな若いクリエーターの人たちが今すごくたくさん出ているんですけれども、そういった人たちのいい作品づくりの環境というのが大事で、それを一緒に考えていけたらなと思っています。
 よろしくお願いします。

○阿部社長 私どもは加藤君が代表するクリエーターがたくさんいますけれども、ヒット映画をつくったり、アカデミー賞をとったりというと、割と派手に聞こえるんですけれども、実はわずか年間100億ぐらい、200名程度の小さな会社です。
 先ほど副大臣からもありましたように、この経済状況の中でやはり業績の悪化に伴ってテレビのコマーシャルの本数も減りますし、番組でも予算が減るしという、非常に厳しい状況が今後とも続くのではないかなというふうに思っています。
 ただ、そうは言っても、今までの皆さんの心強いお話もあるんですけれども、私どもはコンテンツをこれからどういうふうに世界に発信していきたいかというふうに考えますと、今の映画の制作の現状を申しますと、マーケットから逆算された制作予算というのが、やっぱりそれが基本になります。これはどう考えても10億ぐらいが、今ちょうど10億ぐらいじゃないかということになるんですけれども、これはハリウッド、最近洋邦逆転していると言いますけれども、ハリウッドの映画は150億とか200億というのを考えると、やはりこれはどう見ても10億、15億程度でつくったものが世界のマーケットに出られるというような、もちろんこれはいろいろなタイプがあります。滝田監督がおつくりになった「おくりびと」は非常に小さな予算で大きな収益を上げましたけれども、それはたまたまのことであるかもしれないし、やはり我々制作者は非常にスキルもあるし、アメリカの映画をつくるぐらいの能力はみんな持っています。ただ、やっぱり制作費が小さいというのが大きなネックになっている。
 かつて日本は自動車産業に政府が力をお貸しになったように、これからはやっぱりコンテンツ産業に力をお貸しいただいて、例えば20億ぐらいの映画がコンスタントに、30億の映画がつくれるような援助を願えれば、我々はその力はあるので、これを挑戦したいなと。今のままだと10とか15億とかというので、頑張ってみてもやっぱりビジネスが成り立たないので、それですら難しいところがあるので、ぜひ皆様方のお力を借りて、コンテンツ制作に具体的な援助を、援助と言うとちょっと情けないことになりますから、お力をお貸し願いたいなというふうに思います。
 本日は本当に大変有意義な場に出席させていただいてありがとうございます。

○野田内閣府特命担当大臣 どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりますけれども、知的財産戦略本部長の麻生総理よりご発言をお願いします。

○麻生内閣総理大臣 今加藤監督のほうから話がありましたし、先ほど「おくりびと」の滝田監督とも話す機会をいただいたんですが、今回のオスカーのブロンズというのは初めて持たれた人がほとんどだと思いますが、意外と重たいね、それね、重たい。
 今年ノーベル賞を4つとか、この間お見えになった原監督のWBCとか、こういったニュースはやっぱり日本にとっては明るいニュースでしたよね。暗い話ばかり多いでしょうが、だれのせいかは別にして、暗い話が多い中で、こういった明るいニュースはいいことだと思いますし、今の加藤さんの話じゃありませんけれども、コンテンツ自体には国際競争力はある、これは皆さんそう認めておられるわけですから。あとはこれをコンテンツ産業としてという話を先ほどしておられましたけれども、これを海外へ売り込んでいく販売力というのか、そういったようなもの、いわゆる稼げる産業というものに発展させていくと、さらにまた新しいコンテンツをやってみようという人が出てくるのであって、そういった話で今日報告のありました日本ブランド戦略に基づいて、政府一体となって取り組んでいく必要がある。
 先ほど甘利大臣からご指摘のありました点、これは確かにいろいろこれまでの長い間のいわく因縁がありまして、なかなか難しいのが事実。各省庁に分かれているところもあるので、その点を本部としてきちんとやっていこうということで、政府一体となった取り組みにしようということでこれをやっているわけですから、そういった意味では売れる知財というのは何もコンテンツ産業ということにくくらなくても、ほかにもいろいろあるんだと思いますが、知財は保護しなければ育たない、これは確かです。すぐとられちゃうんじゃ話になりませんから。しかし、保護した後はそれを今度は使ってなんぼやという話になりますので、やっぱり使えるようにしていくというのが今回の大きな流れなんだと思いますので、本日決定をさせていただきました内容は知的戦略本部の基本方針ということになりますので、知財を活用するということにより重点を置くということにさせていただきたいと思いますので、ぜひこの点に沿って、具体的な案を相澤先生のところでひとつきちんとまとめていただければということをお願いを申し上げておきたいと存じます。
 ありがとうございました。よろしくお願いします。
 加藤さん、おめでとうございました。

○野田内閣府特命担当大臣 ありがとうございました。

(プレス退室)

○野田内閣府特命担当大臣 それでは、時間も参りましたので、本日はここまでとさせていただきます。
 次回の会合につきましては今年の6月を予定しておりますが、詳細につきましては事務局から追ってご連絡をさせます。
 本日の会合の内容につきましては、この後に事務局からブリーフを行うこととしております。
 本日はどうもありがとうございました。