1. | 主な成果
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| 知的財産基本法の施行後3年間に、様々な制度改革が進展し、多岐にわたる成果が得られた。
主な成果としては下記の事項が挙げられる。 |
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| ○ | 大学等や企業における知的財産の創造 |
| ・ | 「大学知的財産本部整備事業」実施機関として43の大学で知的財産本部が設置された(2003年7月から)。 |
| ・ | 41の承認TLO(技術移転機関)が設置された(2006年2月現在)。 |
| ・ | 大学教員の発明に対する権利を大学に帰属させる機関帰属原則が、国立大学等の93%、公私立大学等の25%において採用された(2005年3月末現在)。 |
| ・ | 国立大学等の国内特許出願は7.6倍、特許実施件数は3.8倍、実施料収入は1.7倍に増加した。また、海外出願件数は1.2倍に増加した(2002年からの3年間)。 |
| ・ | 「競争的資金の間接経費の執行にかかる共通指針」を改定し、特許関連経費への充当が可能なことを明確化した(2005年3月)。 |
| ・ | 職務発明規定(特許法35条)を改正した(2005年4月施行)。 |
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| ○ | 知的財産を軸とした産学官連携 |
| ・ | 「大学における営業秘密管理指針作成のためのガイドライン」を策定した(2004年4月)。 |
| ・ | 大学発ベンチャーの数が増加し、2004年度末で設立累計が1,112社となった。 |
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| ○ | 紛争処理機能の強化 |
| ・ | 「知的財産高等裁判所設置法」に基づき、知的財産高等裁判所が発足した(2005年4月施行)。 |
| ・ | 「裁判所法等の一部を改正する法律」に基づき、知的財産事件における裁判所調査官の権限の拡大・明確化など、知的財産関連訴訟の紛争処理機能を強化した(2005年4月施行)。 |
| ・ | 民間紛争解決手続の業務を認証する制度の創設等を盛り込んだ「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」を制定した(2007年4月施行予定)。 |
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| ○ | 特許審査の迅速化 |
| ・ | 「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律」を制定し、先行技術調査機関を拡充する等の措置を講じた(2004年6月以降順次施行)。 |
| ・ | 特許審査迅速化のため経済産業大臣を本部長とする「特許審査迅速化・効率化推進本部」を設置した(2005年12月)。 |
| ・ | 任期付審査官を、2004年度、2005年度にそれぞれ98人ずつ増員した(2006年度も98人の増員を予定)。 |
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| ○ | 知的財産権制度の強化 |
| ・ | 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会の取りまとめを受け、特許・実用新案審査基準を改定した(2005年4月)。 |
| ・ | 著作権法、不正競争防止法、種苗法の改正により、知的財産侵害に係る刑事罰を強化した(2003年~2005年に順次施行)。 |
| ・ | 「営業秘密管理指針」を改訂した(2005年10月) |
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| ○ | 世界特許システムの構築に向けた取組の強化 |
| ・ | 日米欧の三極特許庁間において他国の特許庁のサーチ・審査情報の利用を可能にするドシエ・アクセス・システムの稼動を開始した(2004年10月)。 |
| ・ | 第1庁で特許となった出願について第2庁において簡易な手続きで早期審査が受けられる「特許審査ハイウェイ構想」を日本から提案、検討を開始した(2006年度前半に日米で試行予定)。 |
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| ○ | 模倣品・海賊版対策の取組の加速化 |
| ・ | 海外における模倣品・海賊版対策を中心にこれを加速化する「模倣品・海賊版対策加速化パッケージ」を知的財産戦略本部において決定した(2004年12月)。 |
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| ○ | 模倣品・海賊版の外国市場対策の強化 |
| ・ | 全在外公館に知的財産権侵害対策マニュアルを備えるとともに、知的財産担当官を配置するなど外交当局の体制を整備した(2004年度)。 |
| ・ | コンテンツ海外流通促進機構により、「コンテンツ海外流通マーク(CJマーク)」が制定された(2004年9月)。 |
| ・ | 民間企業・団体等からの申立に基づき日本政府が調査を行い、二国間協議等による解決を図る「知的財産権の海外における侵害状況調査制度」を導入した(2005年4月)。 |
| ・ | G8グレンイーグルズ・サミットにおいて、小泉総理大臣が模倣品・海賊版の拡散を防止するための国際約束の必要性を提唱した(2005年7月)。 |
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| ○ | 模倣品・海賊版の水際での取締りの強化 |
| ・ | 知的財産侵害品の水際での取締りを強化するため関税定率法を改正した。 |
| - | 特許権等の侵害物品を輸入差止申立制度の対象とした。また、育成者権侵害物品を輸入禁制品に追加した(2003年4月施行)。 |
| - | 輸出入者等の情報を当事者に通知する制度を導入した(2004年4月施行)。 |
| - | 権利者による見本検査制度、農林水産大臣への意見照会制度を導入した(2005年4月施行)。 |
| - | 形態模倣品等を輸入禁制品に追加した(2006年3月施行予定)。 |
| ○ | 模倣品・海賊版の国内での取締りの強化 |
| ・ | 大手オークション事業者によりインターネット・オークション上の模倣品・海賊版の排除を目的とした自主ガイドラインが策定された(2005年7月)。 |
| ・ | 「特定商取引に関する法律」の適用対象となる販売業者の判断基準を明確にするため「電子商取引等に関する準則」を改定した(2006年2月)。 |
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| ○ | 模倣品海賊版に関する官民の連携強化 |
| ・ | 関係8省庁による模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議を設置した(2004年7月)。 |
| ・ | 一元的な相談窓口として「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」を経済産業省に設置した(2004年8月)。 |
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| ○ | 知的財産の戦略的活用 |
| ・ | 「知的財産情報開示指針」(2004年1月公表)に基づき、各企業により「知的財産報告書」が作成・公表された(2004年度14社、2005年度18社)。 |
| ・ | 「知的資産経営の開示ガイドライン」を公表した(2005年10月)。 |
| ・ | 知的財産権を受託可能財産とするとともに信託の担い手を拡大するため信託業法を改正した(2004年12月)。 |
| ・ | 「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」を公表した(2005年6月)。 |
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| ○ | 中小・ベンチャー企業の支援 |
| ・ | 中小企業の特許出願について民間調査事業者による先行技術調査結果を提供する制度を導入した(2004年度実績:約1,200件)。 |
| ・ | 日本経団連により、他社の知的財産権を尊重することを謳った「知的財産権に関する行動指針」が策定された(2005年7月)。 |
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| ○ | 知的財産を活用した地域振興 |
| ・ | 15都道府県において「都道府県知的財産戦略」が策定され、12県が策定中又は策定を予定している(2006年2月現在)。 |
| ・ | 地域独自の知的財産戦略を策定・実施するため、地域知的財産戦略本部が全国9ブロックで整備された(2005年)。 |
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(4)コンテンツをいかした文化創造国家への取組 |
| ○ | コンテンツビジネスの飛躍的な拡大 |
| ・ | 「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」が施行され、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関し、基本理念を定めた(2004年6月施行、一部9月施行)。 |
| ・ | 下請代金支払遅延等防止法を改正し、コンテンツ分野の下請取引を対象とした(2004年4月施行)。 |
| ・ | 信託業法を改正し、知的財産権を含めた財産権一般を受託可能財産とするとともに、信託業の担い手を株式会社一般に拡大した(2004年12月施行)。 |
| ・ | コンテンツ関連人材育成等のための組織として、映像産業振興機構(VIPO:2004年12月)やエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク(2004年5月)が設立されるなど、民間の取組が活発化した。 |
| ・ | コンテンツに関連する専門職大学院の開設や大学におけるコンテンツ関係の人材育成が進展した。 |
| ・ | 著作権法を改正し、音楽レコードの還流防止措置の導入及び書籍・雑誌への貸与権の付与を行った(2005年1月施行)。 |
| ・ | 東京国際映画祭の抜本的強化が行われ、併設のマーケット機能の充実が図られた(2004年10月、2005年10月)。 |
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| ○ | 日本ブランド戦略の推進 |
| ・ | 民間による「食文化研究推進懇談会」が、日本食文化研究や日本食文化の普及等について、提言を取りまとめた(2005年7月)。 |
| ・ | 高品質で安全な農林水産物・食品の輸出を促進するため「農林水産物等輸出促進全国協議会」が発足した(2005年4月)。 |
| ・ | 商標法を改正し、地域ブランドをより適切に保護するため、地域名と商品名からなる商標について、団体商標としてより早い段階で登録を受けることを可能とした(2006年4月施行)。 |
| ・ | 生鮮食品(畜産物)や加工食品について、JAS法に基づく品質表示基準を強化した(2004年9月施行)。 |
| ・ | 東京コレクションの時期と会場を集約し、発信力を強化した「東京発日本ファッション・ウィーク」が開催された(2005年10月)。 |
| ・ | 文化外交の推進に関する懇談会が、報告書「『文化交流の平和国家』日本の創造を」を取りまとめた(2005年7月)。 |
| ・ | 日本の伝統文化と先端技術を融合した製品やコンテンツ作りを支援する「『新日本様式』協議会」が発足した(2006年1月)。 |
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(5)人材の育成と国民意識の向上 |
| ○ | 知的財産関連人材育成の総合戦略の推進 |
| ・ | 「知的財産人材育成総合戦略」を知的創造サイクル専門調査会において決定した(2006年1月)。 |
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| ○ | 知的財産専門人材の量的・質的拡大 |
| ・ | 弁理士試験の合格者数(2005年は711人)の増加により、弁理士の数が約6,200人に増加した(2005年10月現在)。 |
| ・ | 知的財産関連業務に対応できる弁護士のネットワークとして弁護士知財ネットが発足した(2005年4月発足。2005年11月現在の会員弁護士数は1,200人以上。)。 |
| ・ | エンターテインメント業界に精通した法律家の育成などを目的としたエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークが発足した(2004年5月発足。2005年9月現在の会員弁護士数は333人。)。 |
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| ○ | 知的財産専門人材の育成機関の整備 |
| ・ | 全ての法科大学院(2004年4月に68校、2005年4月に6校設置)において知的財産法の科目が開設された。 |
| ・ | 知的財産専門職大学院が東京理科大学、大阪工業大学に設置された(2005年4月)。 |
| ・ | 知的財産法が新司法試験における新たな選択科目とされた(2006年開始予定)。 |
| ・ | 大学・大学院において、学部レベルでは232校、研究科レベルでは90校が、知的財産関連科目を開設している(2003年度)。 |
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2. | 知的財産基本法施行後3年間に制定・改正された関係法律一覧 |
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年 | 法律名 | 公布日 |
2003 | 関税定率法等の一部を改正する法律 | 2003年3月31日 |
不正競争防止法の一部を改正する法律 | 2003年5月23日 |
特許法等の一部を改正する法律 | 2003年5月23日 |
著作権法の一部を改正する法律 | 2003年6月18日 |
種苗法の一部を改正する法律 | 2003年6月18日 |
民事訴訟法等の一部を改正する法律 | 2003年7月16日 |
2004 | 関税定率法等の一部を改正する法律 | 2004年3月31日 |
破産法 | 2004年6月2日 |
特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律 | 2004年6月4日 |
コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律 | 2004年6月4日 |
著作権法の一部を改正する法律 | 2004年6月9日 |
知的財産高等裁判所設置法 | 2004年6月18日 |
裁判所法等の一部を改正する法律 | 2004年6月18日 |
信託業法 | 2004年12月3日 |
2005 | 関税定率法等の一部を改正する法律 | 2005年3月31日 |
中小企業経営革新支援法の一部を改正する法律 | 2005年4月13日 |
商標法の一部を改正する法律 | 2005年6月15日 |
種苗法の一部を改正する法律 | 2005年6月17日 |
食育基本法 | 2005年6月17日 |
不正競争防止法等の一部を改正する法律 | 2005年6月29日 |
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3. | 施行の体制 |
| 内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚及び民間有識者が参画した官民一体の知的財産戦略本部の体制は、知的財産戦略を進める上で有効に機能してきたものと考えられる。
これまでの主な活動実績は以下のとおりである。 |
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| ○ | 13回の本部会合を開催し、3回にわたり知的財産推進計画をとりまとめた。推進計画2005では、約450項目の行動計画をとりまとめた。 |
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| ○ | 4つの専門調査会、3つのワーキンググループを設け、延べ44回の会合を開催し、10本の報告書をとりまとめ、公表した。 |
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| ○ | 13回に及ぶパブリックコメントなどにより国民の意見を聴取するとともに、様々な媒体を通じ、知的財産戦略に基づく活動について国民への周知を図った。 |