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コンテンツ専門調査会

企画ワーキンググループ(第3回)議事録


1.日 時:平成18年11月27日(月)10:00〜11:30
2.場 所:霞が関東京會舘エメラルドルーム
3.出席者:【委員】牛尾会長、久保委員、角川委員、岡村委員、依田委員、村上委員、原田委員、重延委員、國領委員、久保利委員
【参考人】一瀬参考人、村上参考人
【事務局】小川事務局長、藤田次長、吉田次長
4.議 事
(1)開会
(2)コンテンツをめぐる課題ついて
(3)閉会


○牛尾座長 定刻になりましたので「コンテンツ専門調査会企画ワーキンググループ」の第3回を開催したいと思います。委員各位におかれましては、雨の中、お忙しい中時間を割いて御出席くださいましてありがとうございます。
 まず、知財事務局の事務局長で3年余り大変活躍されました荒井前局長がこのたび退任をされまして、新たに前特許庁長官の小川局長に交替されましたので、御報告いたします。小川局長、後でよろしくお願いいたします。

○小川局長 よろしくお願いいたします。

○牛尾座長 それでは、本日は、法制度・契約などコンテンツをめぐる課題を検討してまいります。
 今日は、参考人にお越しいただいておりますので御紹介を申し上げます。
 日本映画界を代表するプロデューサーで、ハリウッドでも活躍しておられる株式会社オズ代表取締役の一瀬隆重さんでございます。
 次に、アニメなどのサブカルチャーをベースにした作品が高く評価されておりますアーティストで、有限会社カイカイキキ代表の村上隆さんでございます。
 議事としましては、まず参考人の方にお話をちょうだいして、質疑を行った後、後半は、コンテンツをめぐる課題について委員会ベースで議論をしたいと思います。
 それでは、初めに一瀬参考人からよろしくお願いします。15分程度で御発言をお願いいたします。

○一瀬参考人 映画のプロデューサーをやっています、一瀬といいます。1984年からですから、22年、映画のプロデューサーをやっていまして、私が映画のプロデューサーになった時代というのは、映画のプロデューサーというのは一体どうやったらなれるのか全然わからなかった時代で、映画会社は人を採らないし、本当に日本映画界は結構どん底な感じでした。
 逆に、プロデューサーをやりたいという人もいなくて、割とすんなりプロデューサーになることができて、ただ、当時20歳代のプロデューサーというのは私一人しかいなくて、大体プロデューサーというのは現場で、最初はお弁当を買ってきたりとか掃除をする制作進行という一番底辺の仕事があって、それをまずやって、だんだんステップアップしていって、10年ぐらい経つと現場プロデューサーと呼ばれる現場を仕切る人になって、そこからまた10年ぐらい経つとプロデューサーになるみたいなことが多かったので、大体プロデューサーの方というのは40歳代、50歳代の方がほとんどだったんです。
 私も、プロデューサーになりたいと言っていろんな会社を訪ねたんですが、車の免許を持っていますかと言われて、いや、車の免許は持っていませんと言うと、それではプロデューサーになれないと言われていたんです。なぜかというと、車の免許を持っていないと現場の下積みの仕事ができないので、そういう人はプロデューサーになれない。ただ、それはどうもおかしい。それでは、アメリカで映画プロデューサーと言われる人はみんな車の免許を持っているんだろうかと思い、そんなことをしなくてもプロデューサーになれるのではないかと思って、たまたま、いろんな縁があって、本当に運命のような形で映画のプロデューサーになって、最初は日本で映画をつくっていたんですが、どうも日本の映画界というのは閉鎖的で、非常に村社会で、まず会社は儲かるけれども、個人は絶対儲からないということになっていて、個人が儲かるとものすごく憎まれるという世界で、しかも当時は東宝、東映、松竹という邦画大手三社が配給を独占していて、彼らが気に入るものしか全国区で公開できない。全国区で公開できないということは、ほとんど大きな、つまり劇場数をたくさん確保できないので、そうすると、たくさんお金をかけた映画づくりはできないという状況だったんです。
 その中で、何本か映画をつくっていたんですが、このままこれをやっていても楽しいことはないと思っていたところ、村上社長がいらっしゃいますが、たまたまフジテレビから誘われて『孔雀王』という映画で香港に行けと言われて行ってきまして、これが私にとっては物すごく楽しい経験で、なぜなら、香港の映画界の人たちというのは、みんな映画の仕事を誇りに思っていて、ただ、日本は逆に、当時、映画の仕事をやっている人というのは非常に肩身が狭いというか、親戚や恋人に映画の仕事をしていると言いますと、大体、気の毒にと言われるというような時代だったので、映画の仕事が楽しくやれる場所があるというのを知っただけでもすごくうれしかったというか、可能性を感じました。
 それで、香港で仕事をしたいと思ったんですが、どうも香港は狭いので、それでは香港にずっといて楽しいかというと、そうでもなさそうだしと思っていたところに、たまたまアメリカに行く機会があって、ロサンゼルスの映画のプロデューサーを紹介されて、私は日本で映画のプロデューサーをやっているんだけれども、こんなことで悩んでいるんだみたいな話をすると、彼は、君が言っていることはアメリカでは当たり前のことだから、アメリカに来て映画をやればいいではないかと言われたんです。
 ただ、何がそこに立ちはだかったかというと、英語が全くしゃべれない。それだけです。もし英語がしゃべれていたら、多分、別に日本で映画の仕事をしなくてもアメリカへ行ってやればいいと思ったと思うんですが、海外で、アメリカで仕事をするなんて考えもしなかったし、プロ野球とメジャーリーグのように、やはりハリウッドというのは物すごく雲の上の存在で、とてもそんなところに自分がいる場所などないと思っていたので考えもしなかったんですが、そんなふうに言われたので、では、アメリカに会社でもつくってみるかと思ったら、アメリカでは会社をすぐつくれるというのが分かって、会社だけつくってみたら、たまたまいろんな仕事が来て、最初は、当時ビデオバブルと呼ばれた時代で、ビデオマーケットに、例えば英語で低予算のアクション映画とかホラー映画とかをつくると、これがすぐ世界中に売れるんです。それで、ある程度のお金がそれで集まるので損はしないというような仕組みが、アメリカはその当時からもとっていて、そんな低予算の映画をたくさんつくりました。
 その間に、アメリカの映画づくりのシステムは日本と全然違うんです。いろいろ組合があって、スタッフがみんなその組合員なので、労働時間がきっちり決まっているとか、1分でもオーバーするとものすごいお金がチャージされるとか、撮影が終わってから12時間は俳優を休ませなければいけないとか、子役の子など、年齢によって違うんですが、4時間しか働けないとか、だから双子を用意して、1人が4時間経ったら双子のもう一人に切り替えるとか、そんな日本では考えられないようなことがいろいろあって、そんなことを学びながらつくっていたんです。
 ただ、ビデオバブルもはじけて、劇場で大々的に公開する映画以外はつくれない、ビデオも売れないという時代が来て、日本にもう一回帰ろうと思って帰ってきて、今度は、角川会長がいらっしゃいますが『リング』という作品をやらせていただいて、何も海外に売ろうなどと思ってつくったわけではなくて、最初はそんなにホラー映画のマーケットは日本になかったので、誰もノーマークだったし、余り期待されていなかった企画だと思うんですが、結果的にそれがすごく当たって、しかも、海外のことなど何も考えなくて、ドメスティックに、日本人にとって何が怖いかだけを追求した映画が実は海外にものすごく売れて、世界各国で興行収入の新記録を打ち立てたり、果てはドリームワークスという会社がリメイク権を買ってリメイクをしてアメリカ映画になったりみたいなことを経験しました。
 そこで経験したことは、そこで我々がリメイク権料として100 万ドルというお金を受け取ったんです。『リング』の制作費は1億5000 万円だったので、100 万ドルのリメイク権料というのは、ほとんどそれで制作費が賄えるので、ハリウッドはすごい太っ腹だととても感謝したんですけれども、後になって考えると、彼らはそれで劇場だけで全世界で4億ドル稼いだんです。プラス、ビデオだとかなんだとかでものすごい利益を上げているわけで、そうすると100 万ドルで売って損したと思ったわけです。
 次に何を考えたかというと、次は自分で、オンハンドで、自分がプロデューサーとして参加してリメイク版をつくるみたいなことはできないかと思って、たまたまものすごく低予算で『呪怨』というホラー映画をつくりましたら、それが日本でヒットして、これまたリメイク権が欲しいという話がアメリカから来たので、それでは、今回は自分がプロデューサーとして参加してやりたい。それで、参加するからにはきちっと当たった分の利益のあるパーセントもちゃんと受け取りたい。たまたま『呪怨』に関しては『リング』と違って、つくった会社が小さな会社だったので、リメイク権料はすごく値切られたんです。100 万ドルに比べて全然安い金額で買わせてくれという話だったんです。
 それでは、逆に、その代わり、儲かったら3分の1くださいという契約を何とか弁護士を通して押し込んで、ねじ込んだら、結果的にそれが功を奏して、全世界で2億ドルぐらい興行収入が上がり、ビデオだ何だでものすごく収入が上がったものですから、そういう形で初めてハリウッドのダイナミズムというのはこういうものだというのを経験しました。
 そんなことをやっているうちに、もともとアメリカで仕事がしたいと思っていたものですから、今年、20世紀FOXという会社からファースト・ルック・ディールを交わさないかという話がありまして、ファースト・ルック・ディールというのは、簡単に言うと、おまえが考えた映画の企画は、まず最初に自分の会社へ持ってこい。その代わり、年間、ある程度の金額を契約料として払う。ただし、彼らがパスしたら他のどこの会社とやっても構わないし、他の会社から持ち込まれた企画に関してはやっていい。
 プラス、私は、今、日本でもまだ映画をつくり続けているので、日本語の映画は勝手につくっていいという契約なので、それではそれは乗らない手もないということで契約をしまして、今、20世紀FOXに幾つかの企画を投げたり、20世紀FOXと契約をする前に既にアメリカの幾つかの会社と進めていた企画があったので、それをつくったりしているようなところです。
 とにかく、日本はプロデューサーが少なくて、なかなか私たちの下の世代のプロデューサーが育ってこないし、大体プロデューサーセミナーみたいなところへ行って話をすると、どうすればテレビ局に入れますか、どうすればテレビ局の映画部に配属されて映画をつくれるのかということを聞かれるんですけれども、つまり、インディペンデントでプロデューサーをやろうという選択肢のある人がなぜかほとんど存在しないんです。みんな会社に所属することを考える。これではいつまで経ってもプロデューサーの数は増えない、若い人はプロデューサーになってくれない。
 本当に、自分がアメリカでいろいろやって学んだことや知ったノウハウ、本当にアメリカ映画界と日本映画界は、アメリカ映画を買うという関係ではつき合いはあったと思いますが、逆に日本映画を買ってもらうとか、日本の企画を買ってもらうとか、日本人がアメリカで活躍するということをやった人がほとんどいなかったので、私がアメリカに行ったときにいろんなことを勉強しようと思っていろんな人にリサーチしたんですが、だれもほとんど知識がないという、当時は特にそういう時代だったので、自分がアメリカでの映画づくりを通して得たことというのは誰かに伝えたいと思いつつ、今、伝えるすべがないというようなことをジレンマに思ったりしているところです。
 そんなことでよろしいでしょうか。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 引き続き、村上さんにお話しいただいてから質疑に入りたいと思います。それでは、村上さんよろしくお願いします。

○村上参考人 アーティストの村上隆です。この場には久保利先生に御招待されてきました。ちょうど「コンテンツをめぐる課題について(案)(法制度・契約、技術開発、人材育成)」とありますけれども、契約及び知的所有権の件で久保利先生にいろいろお世話になっています。
 私は、絵や彫刻をつくって、それを販売して生業にしているアーティストという職業をしていますが、現在において制作物を販売するだけではなくて、その制作物の著作権を主張し、その著作権の二次利用の費用を普通のコンテンツビジネスと同じように利用したいということで会社をつくりまして、その活動をずっと行っています。
 いろいろと、日本とアメリカ、ニューヨークを中心に活動してきました。自分が活動し始めて、本格的にニューヨークに拠点を置いてから7年が経ちますが、今、自分が立っている現場として今後将来どうしようかと考えますと、ずばりアメリカ人になって日本を捨てた方が得であるという結論が自分の中で出ています。
 それでは、どういうことでそういう結論を出したかといいますと、自分はやはり自分の知的財産であるとかキャリアを後世に残すために、今、この世に生まれてきていると思っています。例えば、アンディー・ウォーホールにしても、ピカソにしても、随分、過去の人間ですけれども、その芸術的な遺産を脈々と引き継いでいくというのがアートの本懐なんです。
 その意味で、日本はそういう未来に向かってそういうコンテンツを残していくにふさわしい母体であるかを考えると、答えはノーです。つまり、税制において、私も詳しくは知りませんが、相続税であったりとか、財団法人をつくる仕組みであったりとか、そういうことに余りにもバリアーが多過ぎて、全然アーティストにとってメリットのない国なんです。例えばアニメーションであったり、ゲームであったり、今の一瀬さんのお話ではないですけれども、こういうコンテンツをつくる能力は爆発的にある。しかし、それを守る能力はゼロ。税制においての優遇措置も全く何もない。才能があろうかなかろうが、平たく、皆同じであるという意味においては暮らしやすい国なのかもしれませんが、才能のある人間に言わせると、非常に世知辛い国である。
 例えば、私も詳しくは知りませんが、最近、目指している方向性があります。それは、ニュージーランドでハリウッドの映画をつくったピーター・ジャクソンという映画監督が『ロード・オブ・ザ・リング』という映画をつくったときに、彼らはニュージーランド政府とともに特別税制を引いてもらい、税金の控除をしてもらった。それが『ロード・オブ・ザ・リング』の大ヒットにおいて、パート3が公開された直後、ニュージーランドで大スキャンダルとして取りざたされた。しかし、その是非はともかくとして、物を、オリジナルのコンテンツをつくり出すというのはどれだけ労力と金がかかるのかということを考えると、ピーター・ジャクソンが取ったやり方というのは、私たちクリエーター側からすれば正義である。事実、突然、ニュージーランドというど田舎にハリウッドに拮抗するだけの映画産業を勃興させることに成功したんです。
 今、私は、自分の夢をかなえるべく、アニメーションを製作しています。そのアニメーション業界の人たちのお話をいろいろと聞いていると、アニメーション業界はバブルみたいなんですけれども、全然仕組みがしっかりとしていないように私には見受けられました。どういうふうなことかといいますと、内輪には優しくて、外側の人間には非常に厳しい。私のような外側の人間には非常に高いバジェットを申告してくる。
 逆に言うと、アニメーション業界の中だけだと、すごい、ただに近いような形で人間が動いている場合もある。その権利関係の話を突き詰めていくと、久保さんがお隣にいるのでせんえつなんですけれども、それでは本当のところ、どのぐらい全世界においてのマーケットで吸い上げることが可能なのか。一瀬さんのお話を聞いて、3分の1と聞いて、私はすごく頼もしく思って、後でその話を聞こうと思っているんですけれども、随分アニメーション業界はそこら辺はあいまい茫漠としていて、一瀬さんもお話ししていたように、やはり英語の、語学によるコンプレックスによって交渉事がうまくいっていないような風に見受けられました。
 自分は、一番最初にお話ししたように、アメリカにおいては非常に芸術家は優遇されておって、寄附をすれば寄附をした作品の時価の上代がある種の税金の免除額になるとか、非常に優遇措置がいろいろあるので、我々は暮らしやすいので、アメリカに基盤を少しずつずらしています。
 移転価格税制とかで非常にややこしい、法務的な、税務的なものも、少しずつですけれども、突破していきつつやっていますが、アメリカにおいて一番キーになっているのは、やはり弁護士の方々です。私たちは常に強い弁護士の先生を探して、だれが一番キーパーソンなのか。いわゆるアメリカは国を挙げてのマフィアみたいな国なので、口きき、顔きき屋が弁護士の先生になったり、もしくは本当の顔きき屋がいたりします。そういう人間たちを探し当てて、そういう人間たちと一緒にビジネスのストラクチャーを組む。私たちは、小さいマーケットであったとしても、アート業界では当たり前のこととして行っています。ニューヨークにはニューヨーク州の顔役がいますし、ロサンゼルスにもいる。フランスにもいる。そういう中で、各要人たちと交渉していくのは結構大変なことですけれども、私の経験から言わせると、そんなに難しくもなかった。日本人はガッツがないのと、肝っ玉がすごい小さいのと、加えて契約書というものに対しての嫌悪感というのが、どこから生まれたのかはわかりませんが、根深くある。
 さっき言った、アニメーションの制作会社の方たちと話を始めるに当たって、私は最近考え方を変えたんですけれども、当初、何でこんなにうちのやり方が嫌われているのかと思うと、最初に契約書を出すんです。そのときに、我々としてはアニメーション制作会社の方に有利なパーセンテージであるとか、そういうものを考えているつもりなんですけれども、契約書を出すこと自体が失礼である。私、何をもって失礼なのかが全然最初は分からなかったんですけれども、そういう商習慣だから仕方がないというのが、最近、自分が日本の国内で出した答えです。
 しかし、それが裏返って、国外との折衝において損をしているということは気がついていない。人間と人間が交渉事をして、コミュニケーションをして、少しでも軋轢があると、それは悪いことであるというインプリントが根深く残っているがゆえに、随分、損をしているのではないか。私が交渉をするときには、常に全身全霊のある種の喧嘩なんです。全知全能を使って、自分が、頭が悪くても全知全能を使って相手の虚をついたり、相手のメリットを考えてあげたり、勿論、そのメリットを考えた挙げ句、自分たちのメリットを得たり、そういう交渉事に対するある種の嫌悪感というのが、今、随分、ブレーキをかけていると思います。
 幸い、自分はそういう交渉をするに当たって強い方たちを、御縁があって、いろいろと一緒に仕事をさせていただいているお陰で、随分と有利な条件で、例えばルイ・ヴィトンとの契約もさせていただいたりしました。でも、契約の最中にどんなに険悪になったとしても、最終的にビジネスが成功すれば全員ハッピーなんです。日本国内においてもマイウェイを突き進んでそういう交渉事をやらせてもらっていますけれども、一応、私がやらせていただいた業界の方たちは、やっている最中は本当に不機嫌きわまりない、もしくは不幸きわまりない顔をなさっていますけれども、最終的に作品なり、そのプロモーションがリリースされた直後といいますか、半年後ぐらいは、みんな、やはりやってよかったということで、もう一回、あと2回、3回とリピートして一緒に仕事をしてくれるような形になっています。
 それでは、最後に人材育成に関して、せんえつですけれども、私も行っているので、お話ししたいと思います。
 こういう「GEISAI」というアートの祭典を約6年間やってきました。ずっと私の会社の私費でやってきて、最終的に6億円ぐらい赤字を出してしまって、今、1年間だけ休祭することにしたんですけれども、日本人のクリエーティブな才能というのは、日本人が考えているよりはるかに無限大の可能性があると思います。だけれども、その無限大の可能性を引きずり出すコーチングであるとか、教育のストラクチャーがやはりぬるいというのはよく感じます。
 単純な部分なんですけれども、手先が器用であったりとか、発想の柔軟性というのは、日本人はすごく、特別、才能が図抜けていると思いますが、さっき言った交渉事がうまくない。一瀬さんがおっしゃっていたように、プロデュースする人たちが異常に少ないのが日本の問題だと思います。
 芸術も、私と奈良美智というアーティスト2人が7〜8年前から海外のマーケットで随分高額な取引をされるようになりました。そのバックグラウンドを得て、若手のアーティストたちもどんどんデビューしていますけれども、最終的に10年間生き残れるアーティストが何人いるかといいますと、それは数えるほどしかいないんです。なぜいないのかということを自分の中で考えて、それはやはりコミュニケーション能力であるということをゴールに見立てて、このイベントをやっています。
 つまり、このイベントは年に2回、コミックマーケットのような形式でやってきましたが、コミックマーケットと違うのは、権利関係であるとか、自分の主張であるとか、コミュニケーションのやり方であるとか、そういうことをセミナーを開いてこと細かにアーティストの、専門学校へ行っているような頭のすごく悪いアーティストもどきに懇々と教える仕組みをずっとやってきました。
 結論としては、最近、ギブアップ寸前というか、そういう連中に幾ら言っても馬の耳に念仏だなというふうな気はしないでもないんですが、才能と資源を運用しない手はないのではないか。mixiというソーシャルネットワークとかを見ていて、そういうオタクやニートの人たちの文章を見ていると、非常に面白いんです。これも一つの資源ではないかとよく思うんですけれども、そういう資源をどうやったらうまく運用できるのか。そのプロデュースの能力。
 あと、個人において、クリエーターにおいてのプロデュースのセンスというのも磨くべく、教育していく機関があればいいのかと。つまり、私も随分うるさいんですけれども、金に対するある種の嫌悪感、金に対する汚いという意識というものと、クリエイティブなもののある種のストレートなラインを引くという何かアイデアがないかと思って、ずっとこういうイベントをやってきました。
 あと5年ぐらい、全部で10年ぐらいやって一つの結論を出したいと思って、今、頑張っていますけれども、最後に言いたいのは、やはり資源をどうやって運用するか。私は、日本の国に全然、何の期待もしていません。しかし、才能は本当に無尽蔵なんです。国ではなくて、そこに住んでいる人間たちは本当に豊かな才能を持っている。そこに何とか活路を見出せないか。本当にせんえつなんですが常に思っているので、何か私もお役に立てることがあったらお手伝いさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○牛尾座長 お二人から、大変に貴重な話を、この委員会が始まって以来、今、お二人がお話されたような問題について、日本に期待が持てるような国をつくるにはどうすればいいかということを議論しておりますが、お二人には率直に、日本の持っている問題点を本当にクリアーに問題提起されて、これからの若い人には大変に心がときめくような問題提起であったと思います。
 時間の制約はありますけれども、お二人に御質問等がございましたらお受けしたいと思いますので、お一人3分ぐらいで、いつものようにこのネームプレートを立ててください。
 それでは、久保利先生お願いします。

○久保利委員 両先生、どうもありがとうございます。私、前回、会長に、是非こういう人たちを呼んで話を聞こう。空理空論ではなくて、現実の問題を、現実に悩んでいらっしゃる、そして、それを突破した人たちからお聞きしたいということでお願いを申し上げました。お二方とも本当にお忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。
 今のお二人の話を聞いていて、やはり2つ大きな問題がある。1つは司法制度といいますか、要するに弁護士の問題。もう一つは税制の問題。この辺りを解決しないといけなくて、かつ、この2つは国策としてやり得る話だと思います。幾ら一瀬さんや村上さんが頑張っても、どういう弁護士をつくっていくかとか、どういう税制にするかというのはなかなか難しかろうと思いますが、それはこの知財戦略本部、あるいはここの専門調査会が明確なメッセージを出すことによって打ち破っていけるのではないかと思います。
 1つお聞きしたいのは、一瀬さんの『ハリウッドで勝て!』の中で、一瀬さんは弁護士出身のプロデューサーがアメリカは大変多いけれども、これはビジネスオンリーというところがあるので、いささか問題ではないかという趣旨の記述をしていらっしゃると思います。その真意といいますか、そのことと、今、村上先生がおっしゃっていた、やはりプロデューサーに法律的な素養のある人、あるいはプロデューサープラス法律家というセットがないことが日本の弱点ではないかというご指摘と併せて、お二方からコメントをいただければ大変ありがたいと思います。

○一瀬参考人 特に、プロデューサーという仕事をしていると、クリエイティブとビジネスというのは、つまり、バランスをうまく取らないといけない問題で、ただ、映画というのは、私が考えるに、もうけるということを主体に物をつくるというのはやはり邪道だ。つくりたいものをつくる。ただし、もうからなければいかぬ。それはつまり、それだけ非常にお金がかかるものなので、このバランスをどう取るかという問題だと思うんです。
 ハリウッドは、今、特にエージェンシーというものが生まれて以来、俳優さんや監督さんや脚本家のギャラが昔に比べてものすごい高騰しているので、私たちが子どものころに見た『ジョーズ』などという映画は、今、考えると、10億以下でつくられていた。ところが、今、アメリカ映画の平均制作費というのは約80億ぐらいです。これに平均P&A費、つまり、宣伝費、プリント費が大体50億ぐらいかかるので、そうすると、総額で120 〜130 億のプロジェクトを毎回やっている。これは平均値なので、つまりもっと大きな映画もたくさんありますし、勿論、もっと小さな映画もたくさんありますけれども、そんなことで、つまり、ものすごく保守化していて、各メジャーの偉い人というのは大体弁護士上がりか、エージェンシー上がりで、弁護士上がりの人というのは本当にどうしても企画の選択が安全なものに行ってしまう。
 これは、長期的に見ると、今、ハリウッドが衰退してきている原因になって、例えばパート2、パート3、パート4みたいなもの、もしくはリメイクであるとか、私もリメイクをやらせてもらっているので余り言えませんが、リメイクであるとか、いっときはスター映画であるとか、安直なものへ企画が流れた結果、お客さんが飽きて、映画館に来なくなるという、長期的につらい時代が来ている。
 ただ、かといって、それでは日本みたいに全く、さっきも村上さんがおっしゃったみたいに、映画製作で何億もお金が動くのに、契約書一通ないというのがいまだにあるということが本当に信じられないです。例えば俳優さんと契約を結ぼうとしても、契約書を結びたくないという事務所もありますし、それはつまり、我々が出す契約書にはすべての権利は買い取りますということが書いてあって、これは日本映画の常識なんですが、今まですべての権利は買い取りますということを契約書なしにやってきたわけです。それが、いざ文章になると抵抗感があるとおっしゃるんですが、ただ、今まであなたたちは、契約書は結んでいないけれども契約しているわけでしょうということを幾ら話し合っても通じない。そんなことを、とにかく疲れながらやってきて、ようやく契約書というのがだんだん存在するようになってきましたが、それでもなかなか日本の場合、海外と違うのは、すべての作業が終わってから契約書を結ぶということが大半です。90%ぐらいです。事前に幾ら契約書を投げても皆さん返事を返していただけないので、必ずものができ上がってから契約書を結ぶといったことになるという、本当にアメリカと日本はそういう意味では映画界においては極端に違うというのが大きな問題だと思っています。

○久保利委員 ありがとうございました。

○牛尾座長 村上さん、どうぞ。

○村上参考人 日本においては久保利先生にいろいろお世話になって、弁護士の先生には恵まれているんですけれども、アメリカにおいて自分が弁護士の先生を選ぶとしたら、さっき言ったように、口きき、顔ききにいろいろ聞いていって、本当に適材適所で、例えばファッションだったらこの人、映像だったらこの人、知的所有権だったらこの人、そういうふうに分業して、弁護士の先生にお願いしています。
 それだけ選択肢が広いというのがアメリカの弁護士の実情だと思いますし、事実、何でこんなことを知らないのということを知らないような、特化された弁護士の先生は随分いらっしゃいます。しかし、私がやはり作品をつくるとき、言い方はあれですけれども、いろんな業者さんを集めて、建築でもそうですが、優秀な人間をいっぱい集めて一つの建物を建てるように、弁護士の先生もたった1人で大きな建物をつくるわけではないという考え方に準じると、そういう特化された職人的な弁護士の先生たちを数人使って一つの案件を突破するという考え方も行ってきています。
 そういうことで、ある種のビジネスライクに、ドライに関係性をつくれるというのがアメリカの業界のいいところかなと思って、さくさくとやらせてもらっていますが、日本においては、一瀬さんもおっしゃったように、契約書そのものを交わしたがらない風習があるので、そんなにニーズがないといいますか、必要がないというような状況であるとも思います。

○久保利委員 ありがとうございました。

○牛尾座長 ほかに御質問はいかがですか。
 どうぞ。國領先生、お願いします。

○國領委員 今、お話をお伺いしていて1つ気がついたといいますか、存在する法律とか制度そのものについて日本には特に御指摘がなくて、もっぱら、それを運用するカルチャーがあるか、ないかとか、人材がいるとか、いないとかという部分だったように拝聴したんですけれども、これはそういう認識でよろしいでしょうか。

○一瀬参考人 私は、そんなに法律のことは詳しくないんですが、これはどうなったのかわからないんですが、映画投資は商品ファンド法というものの適用に、多分、まだなっているんですね。これはものすごく前から商品ファンド法の適用外にしてくれと言っているんです。
 何で適用になったかという経緯をいろいろ調べると、バブルの時代に海外の映画を買い付けるみたいなファンドがはやって、随分そこで悪いことが行われたというのがいまだに残っている。ただ、この商品ファンド法というものが適用になっているので、一般投資家の方からファンドを集めるには金融庁の承認が必要なんですが、いざ、取りに行くと面倒くさいので手続きしないでくれと言われる。もう一つは、うちみたいな小さな制作プロダクションみたいなところこそファンドが必要なんですが、こういう小さな会社だと適用できません、クリアーできませんと言われる。そういう問題はあります。
 ただ、これはいろいろ抜け道があるみたいで、製作委員会方式は大丈夫だとか、いろんな抜け道があるみたいですが、そういうことを逆に金融庁の方にサジェスチョンをされて、こういう抜け道があるのでこちらでやってくれみたいなことを言われるのは非常に本末転倒だと思いますが、それがどうなったのか。そのころ、随分、その議論に私は加わったんですが、全然改善される感じがないので、これはもう話してもむだだと思ってやめてしまったので、その後、どうなったかはわかりませんが、法的なことを言うと、私はそのぐらいしか思い浮かばないです。

○村上参考人 法務的な部分は、私も詳しくは知りませんが、私のスピーチの冒頭に言ったように、殊、現代美術をやるにおいては母体として全く可能性がないので、多分、可能性がないと私が感じているということは、すべてだめなんだと思います。

○牛尾座長 久保さん、どうぞ。

○久保委員 朝早くからありがとうございます。お二人の話を聞いていて、8年前海外にキャラクターを売り込みに行っていたときの交渉などを懐かしく思い出しておりました。
 当時は、本当にこの会合で突破しなければという思いがあったので、全身全霊をかけて交渉に臨みました。例えば、頻繁にたばこを吸う相手の方がいた時には長時間にわたって会議をし、ブレークを取らず、彼のニコチンが切れるのを待つみたいなこともやっていたわけです。似たようなことを日本でやると、間違いなく大きなけんかになりますね。その後、しばらく話してもらえないみたいな状況もあるかもしれません。
 やはり、カルチャーを変えるのはすごく難しいんだと思います。コンテンツ産業は制度を何とか改善して、その後に付いてくるカルチャーがよりよい方向に変わればいいと思います。お二人の話を聞いていて一番変えなければいけない制度は、やはり税制ではないでしょうか。この後、テレビはハイビジョンをつくるためにコストアップをしていくわけですが、そのリスクをどのようにリクープしていくのかという方策については未だ明確ではありません。
 2011年の地デジの開始に向かって、リスクがプロダクションにしわ寄せされてしまうのではないかという危惧をずっと持っているわけです。その解決策の意味合いからも、時限的でも結構なんですが、やはり税制については御考慮いただきたいと思いました。
 ありがとうございます。

○牛尾座長 重延委員、どうぞ。

○重延委員 私も、税制の質問をしたいと思いまして、一瀬さんの方に、アメリカとの交渉である種の利益を取ったり、日本で利益を取った場合なんですけれども、アメリカの税制と日本の税制でお感じになっていることは何かございますか。

○牛尾座長 一応、先に質問だけ済ませてしまいますから、依田さん、どうぞ。

○依田委員 両参考人今日はどうもありがとうございます。
 音楽・映画の海外からの買いつけ、あるいは配給、国内での制作、また、国際共同制作も始めており、その経験等から、お二人がおっしゃったことは本当に骨身に染みてよく分かるんですけれども、税制という問題については内向き志向の税制のみならず、国際共同制作に対する税制の理解、あるいはスキームというのは日本にはほとんどないと思います。具体例を言いますと、日本とカナダとブラジルの3国で大きな映画をつくろうとしています。ところが、カナダ、ブラジルの国際共同制作に対するルールが日本では全く当てはまらないために、日本の不備が彼らの国際共同制作のタックスメリットを取れなくするような状況になったりするわけです。そういう意味では、国際的な相互関連性、マルチラテラルなマッチングシステムが違うという点も問題ではないかと思いますけれども、どのようにお考えになるかお聞きしたいと言うことと、先ほど一瀬参考人のお話にもありましたが、いわゆる英語ディバイドといいますか、外国語に対する日本の持つ固有の問題点があって、プロデューサーとしての力があっても、海外に行って、思ったとおりの仕事ができないというような問題点があります。そういった問題点の解決策を考えるに当たり、資料1の基本認識について言いますと、民が主体で、官は阻害要因を排除するというような表現になっていますけれども、勿論民が主体であるとしても、官ももっと積極的に関わって、国内外指向の税制、教育、人材育成に協力・支援していただきたいと考えます。お二人は御存じだと思いますけれども、アメリカにはAFIという機関がありまして、これはいわゆるアメリカ政府の教育システムというよりも、フェデラルファンドをベースに民間のファンドで成り立っている、民間でできた実地教育訓練校で、これが非常に映画業界で権威があります。AFIではメンター制度をとり実務経験者、あるいはこれから実務に携わろうとする人、そういう実業の専門家を育てることを目的にしております。その卒業生は実務のプロになり、将来的にはそれで一流の監督・プロデューサーになれるような教育施設等です。日本の場合にはまだまだ、学校と言いますと常に高等教育の大学・大学院等の専門コースの一つというようなことになりますね。
 AFIのようなアメリカの教育機関と連携し、人材育成制度を、日本にどうマッチングすべきかというようなことを考えております。そのような人材教育制度についてどう思われるかお答えいただければと思います。

○牛尾座長 最後の御発言になりますけれども、それぞれ皆さんの質問に対して御感想、あるいはコメントをお願いいたします。

○一瀬参考人 正直、税制のことは私は余りよくわかりません。ただ、お金が集まりにくい環境にあるということは事実で、御存じのように、映画界はほとんど映画業界の中のお金で動いています。これを続ける限り、どうやっても国際競争力のある映画が生まれる状況にはないと思います。
 なぜなら、日本のマーケットというのは、ある程度大きいので、アメリカに次いで世界2位で、今や結構、40億、50億、60億という興行収入を上げる映画も出てきていますので、ますます安くてもうかる映画をいかにつくるかという方向へ業界が傾いています。ですから、制作費は著しく下がっています。上がっている作品もありますが、それはものすごく大きなものをその予算でつくっている。つまり、今まで6億でつくるべきを2億でつくらされたものを、30億かけるべきを10億でつくっているだけであって、別に相対的に予算が上がっているわけではなくて、絶対値が上がっているので上がっているように見えるだけです。だから、相変わらずちゃちいので、国際競争力は生まれません。
 だから、なぜホラーだけが、今、受けているかというと、それはローバジェットでもつくれるからです。ですから、これを続けている限り、どうやっても国際競争力が生まれないし、いまだに映画のスタッフの人件費というのはものすごく安いです。一番売れている、一番優秀だと言われる撮影監督でも、恐らく月収120 万円ぐらいです。ですから、1年間フルに働いたとしても、1,440 万円しか年収がない。それでも高いと言われる。テレビ局から出資していただくことが多いんですが、テレビ局の社員の方は2,000 万円以上の年収を取ったりしているわけです。それは明らかにおかしいわけです。
 だから、今の映画のスタッフのギャラを、助手さんのギャラまで上げる必要はないですけれども、やはり優秀な人のギャラというのはもっともっと上がっていかないと、当然、映画界に人は来ない、みんな優秀なカメラマンはコマーシャルの世界とかに行ってしまうというのは、いまだに変わらないので、やはりそこを本当に変えていかないといけない。
 ちょっと税制の話と違って申し訳ないんですが、あと、もう一つは成功報酬という問題です。これは、うちはものすごく長い間、守銭奴のように言われても闘い続けてきて、今や、うちはある程度の成功報酬をいただけるようになりましたが、それでは、うち以外で成功報酬を払っているところが幾つあるのかというリサーチをこの間したところ、芸能事務所とかに主演して成功報酬をもらいましたかみたいな話をリサーチすると、ほとんどもらっていない。それは、つまりもうかっていないからではなくて、成功報酬そのものが存在しないという状況の中で、やはり監督や脚本家やプロデューサーというのはいつまで経っても金持ちにならない。金持ちにならないから、やはり映画界に人が来ないという、それは全然、日本映画界は変わっていないです。
 だから、それを打破するために、やはり業界外のお金で、もっとダイナミズムのある映画づくり、もっと予算をかけて、もっと動員を目指す映画、もっと宣伝費をかけて、逆に、今、私はよくテレビ局の弊害みたいなことを言うんですが、テレビ局以上に問題があるのはテレビ局に頼っている映画界です。映画会社がテレビ局におんぶにだっこで宣伝してもらうことに頼り切っているので、この構造が変わらないわけですから、やはりそこを変えていかないといけない。
 ただ、これに関しては、どうもそういう環境にやはりならないので、今、私は外資による日本映画づくりを目指しています。ただ、外資による日本映画づくりというのは、当然、外資がもうかるわけですから、これは日本の国がもうかるわけではなくて、外国の会社がまた日本で安く映画をつくれるから、それでは日本映画に投資して金もうけしようということが出てくるのと、また、日本は全然もうからないわけです。こんなことをしているうちに、英語をしゃべれる人がたくさん出て、ハリウッドへみんな行くと、その人たちはみんな日本で映画をつくらなくなりますから、それもまた外国だけがもうかるわけですから、別に私たちはそれでいいんですけれども、そんな時代が確実に来ると思います。
 もう一つ、人材育成のことについては、1つ、ただそういう勉強会にも出させていただいて話したことがあるんですが、やはり問題があるのは、アメリカの映画界というのは産業なので、ちゃんとしたストラクチャーがあって、金集めの方法とか、セールスの方法とか、例えば学ばなければいけない契約上のこととか、ディールのこととか、いろんなことがあるので学校というのが機能するんですが、なかなか日本においては毎回ゲリラ戦みたいなもので、一本一本違う手法で映画をつくっていかなければいけないので、監督の育成とかはできるかもしれませんが、プロデューサーの育成をするというのは非常に難しいと思います。
 だから、何か問題に直面したときにどう切り抜けるかみたいなことを、どうやって学校で教えるのかというのは本当にわからないので、こればかりは私の中でもどうやったら人が育つのかというのはわからないという感じです。

○牛尾座長 村上さん、どうぞ。

○村上参考人 それでは、人材育成の方からお話しします。
 自分の事務所では、今、7人のアーティストをマネージメントしていますが、そのうちの5人のアーティストは、既に海外で売上げをたたき出して、その5人のうちの3人は年間に、さっき言った映画のすごい監督さんの5倍の年収を上げています。これはせんえつですけれども、私が作ったストラクチャーです。
 それでは、どうやってその人材を育てたかといいますと、私は音楽産業、エイベックスとかをぼんやり見ていて売り方をまねしたつもりです。つまり、海外のアートマーケットにおいて、そういうプロデューサー主導のアートの作品、政策販売というのはまだ行われていないです。ということで、私が、ある意味、ハリウッドの映画のシステムのような形で、プロダクションで持ってアーティストの販売戦略を立てて売っているというすごい特異な存在において優位に立っています。
 でも、それでは人材育成においてはどうかというと、単純に適材適所、昨日も、ちょうど夜『スタ☆メン』という番組で天才少年少女たちをどういうふうに育成するかという番組をやっていましたけれども、全くそこで言っていたことと同じで、アメとムチで、そのムチの部分が、ここ30年ぐらい日本の教育の現場で全然なくなってしまったのではないか。それはどこに起因しているかと自分が考えたときに、自分が通っていた東京藝術大学の先生は反面教師であり、単純に業界で成功しなかった人間たちのたまり場になっている。それでは、業界で成功した人はそういう藝大とかで教鞭を取りたいのかというと、取りたくないんです。つまり、何のメリットもない。
 税制においてもそうです。私も随分、去年、税金で失敗して、随分税金を朝霞市に払いました。しかし、何のメリットもない。勿論、メリットを期待はしていませんからいいんですけれども、アメリカの場合は、ちゃんとメリットが明確なんです。そういうことで、村上さん、こういう役になりましょう。この役になると、こういうメリットがあります。それでは、そのメリットに向かって一緒に頑張りましょう。つまり、メリットとは何かというと、顔役になれる。つまり、自分がプッシュしたアーティストをそういう檜舞台に上げることは可能です。みんなそういうことでやっているので、ある種のえこひいきみたいなものがないぐらい、顔役がずらっといるわけです。その顔役同士のコンペティションになるわけで、そういう意味において、ある種のフェアウェーが引かれている。
 そういう意味で、日本においては、ずっと戦後言われてきていることだと思いますけれども、見えづらい、わかりづらい、メリットが全然見えない。公的なこういう状況になると、ですから、今日のスピーチにおいても、どうせ何も意味がないだろうと覚悟して来ていますけれども、本当に意味がなさそうにしか見えないし、事実、意味がない。私、東京藝術大学の博士号をいただいていますけれども、博士号をいただいて、日本社会でメリットがあったためしはゼロです。
 しかし、アメリカ社会において、その博士号がどれだけ有益に機能したかというのは、今の私のプレステージを見てもらえればわかると思いますが、やはり私の書いている文章、言っている言葉というのを全面的に信頼を置いてくださる。加えて、ちゃんとバックグラウンドに信頼を置くのは無自覚に置くわけではなくて、ちゃんとそのバックグラウンドも調べる機関もある。そういう意味で、私はアメリカがいいとは言いませんけれども、やはり多人種国家で、アンフェアな時代が長く続いた国だからゆえに、フェアウェーをどうやったら突き詰められるかということがやはり現場で実験されて、その成果が出ているのではないか。
 ですから、一瀬さんと同じように、日本人のクリエーター、才能があって、頭がよければ100 %日本を捨てると思います。今、そういう準備している人間たちは多いですし、私もさっき言った「GEISAI」では、はっきりと日本を捨ててくださいということしか言っていません。日本でやっていても何のメリットもないので、日本を捨てて海外で活躍しなさい。ヨーロッパは、かつての日本のような人間と人間の対決する場所です。アメリカは弁護士さんを使って、そういう弁護士を仲介にして闘う場所です。しかし、それによって自分が考え得るフェアウェーは取れるけれども、日本は本当に頭が悪いけれども、ゆえに、そういうつまらない職場に就いた人間たちの個人的な趣味で動いているので、これは全然意味がない。たまたま、そういう人たちの趣味に乗っかったとしても、将来的に金銭的なメリットもないのでやめた方がいいですというのが私の忠告だし、この「GEISAI」のスピリットだったりするので、ネガティブな言葉から言って申し訳ないんですけれども、それが現場の人間の本音です。

○牛尾座長 ありがとうございました。時間の制約がありますので、もっともっと議論があると思いますけれども、このヒアリングをここで終わりたいと思います。
 お二人の参考人、大変に率直に、しかもいろいろなお話をちょうだいして、大変に有益な会でありました。今回のヒアリングに対して何らかの効果が出るようにしまして、日本の審議会も少しは当てになると思って頂けるように努力しますので、今後とも協力をお願いしたいと思います。
 それでは、ここで参考人の方が御退席されますので、皆さん、拍手でお送りください。

(一瀬参考人、村上参考人退室)

○牛尾座長 それでは、事務局からの資料について御説明をお願いしたいと思います。

○小川局長 今回、事務局長を拝命いたしました、小川でございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。座って説明させていただきます。
 お手元の資料1をごらんいただきたいと思います。この資料では、コンテンツをめぐる課題といたしまして、法制度・契約、技術開発、人材育成という3つの大きな柱に分けまして、基本的認識、それぞれの課題について具体例を記載したものでございます。
 まず1ページ「基本認識」でございます。
 1)は、スピードある世界の変化と乖離しているのではないか。
 2)は、潜在的な能力が十分に生かされていない。
 3)は、コンテンツ市場は非常に有望で、拡大を目指すべきではないか。
 4)は、先ほど議論がありましたが、民が主体であり、官はその阻害要因を排除する。言い換えますと環境を整備していく役割ではないか。
 これらの認識を踏まえまして、新たなビジネスモデルの提案や、それを支えます制度や契約についての検討が必要ではないかということであります。
 2ページ「具体策」でございます。
 「I.法制度・契約」という分野でございます。
 「1 ビジネススキームの転換を支える著作権制度をつくる」ということで、ユーザーニーズに迅速に対応したビジネスモデル、IPマルチキャスト放送へのコンテンツ流通の促進、違法複製されたコンテンツの個人による複製の扱い、権利者不明の場合におけるコンテンツ流通、これらを掲げております。
 3ページ「2 クリエーターに適正な報酬がもたらされる仕組の下で、円滑な利用を進める」ということで、マルチユースを前提とした契約ルールづくり、放送番組のマルチユースの促進、権利の集中管理の促進、契約に関する規定の整備というものを掲げております。
 「3 一般ユーザーが著作物を楽しむ機会を充実する」ということで、知識・情報秩序の再編に対応した法制度、放送番組アーカイブの活用、コンテンツの保存・収集・利用の促進というものを掲げております。
 4ページ「II.技術開発」という分野でございます。
 「1 バランスのとれたプロテクションシステムを採用する」ということで、ユーザーに配慮したプロテクションシステムの採用について掲げております。
 「2 世界をリードするコンテンツ関連技術の開発、普及を進める」ということで、日本発のコンテンツ関連技術の促進、産学官連携による先導的技術の研究開発の促進、国際競争力を強化するための基本技術の共有化というものを掲げております。
 5ページ「III .人材育成」という分野でございます。
 「1 国際的に通用する専門人材を育成する」ということで、クリエーターの育成、先ほど来の話でありますプロデューサーの育成、エンターテイメント・ロイヤーの育成、海外一流人材養成機関等への奨学生の派遣、大学間連携の促進、人材育成に関する産学連携を掲げております。
 6ページ「2 アジア域内における在留資格及びビザの発給要件の相互緩和」。
 「3 内閣総理大臣による顕彰制度の創設」。
 「4 コンテンツ分野を支える幅広い人材の育成」を掲げております。
 説明は以上でございます。

○牛尾座長 それでは、議論に入りますが、前回欠席されていました、岡村委員から、今回の議題について、まず冒頭に御意見をお願いしたいと思います。

○岡村委員 ありがとうございます。初めての出席ということで、大変失礼いたしました。
 コンテンツ産業の振興に関しては、この調査会がこれまでの活動の中でいろいろな問題を討議して、多くの施策を提言し、その結果、関連法令の制定・整備を含めて、活動が活発になってきたことは大変喜ばしいことだと思います。
 本日、お二人の先生から大変ショッキングなお話を聞きました。基本的には文化そのものを変えなければならないというお話であったと思いますので、そういう意味では、今後この会としては、現場サイドから起こってくる変化に着目して議論を進めていかなければならないことを、痛感いたしました。
 その一環ということで、経団連が今どういうことを行おうとしているかですが、前回のペーパーで触れましたように、コンテンツポータルサイトという非常に地味な活動ではありますが、これを開設する準備を行っており、その準備が間もなく終わろうとしております。
 このコンテンツポータルサイトは、その名が示すとおり、あくまでもコンテンツを紹介する入口であり、当然のことながら、その権利処理を行おうとするところではありません。
 このポータルサイトにより、国内のみならず、外国にも日本のコンテンツが紹介され、その結果、文化交流という面から役に立つとともに、更に輸出を含めた流通が促進されることが期待できると思います。
 そして、このコンテンツポータルサイトは、ハード業界とコンテンツ業界が共に参加をする形を取っております。そういう意味でこのコンテンツポータルサイトは関係者がWin−Winの関係を築くシンボル的な事業であり、これをきっかけにして、そのハードとソフトの関係者のさらなる交流が進んで、新しいビジネスモデルが生み出されることを大変期待をしております。
 ただ、このコンテンツポータルサイトは、公的インフラの要素が大変強く、その成果が期待できるまでに相当の年数が必要だということもあります。従って関係者が継続的に努力をしていかなければならないことは当然ですが、是非とも政府の継続的な支援をお願いしたいと思います。
 ここで冒頭申し上げました、具体的な活動をこれからどうしていくのかということについて、本日は技術開発ということが議論のテーマになっていすので、少しその点についてのご提案を申し上げたいと思います。
 東芝に限らないことですが、ハードメーカーとしてはコンテンツ関連の技術開発をいろいろ行っております。例えば弊社ではインタラクティブな映像の三次元立体表示技術というものをシーズとして蓄えつつあります。これは将来的にはゲームを含めて、いろいろな分野で活用できるのではないかと考えております。
 当社に限らず、他のメーカーもいろいろな技術開発を行っておりますが、この技術シーズの段階でコンテンツの製作者とインターフェースがなかなか取れないというのが現状であります。
 これらの技術には、コンテンツを創出するためのもの、利用・流通に関するもの、更には保護に関するものと、いろいろあると思いますが、この技術シーズの段階でコンテンツ業界とメーカー側の連携が取れれば、ビジネス化が加速するのではないかと思います。
 今までどちらかというと、ある種の技術が確立してから、それをオープンにしてお話をするという進め方でしたが、技術シーズの開発段階からお互いに交流をする必要があるのではないかということをご提案したいと思います。そしてメーカーが開発している技術をコンテンツ業界の専門家に評価いただく場を、両者の協力でつくっていかなければならないと思っております。
 今、企画されております国際コンテンツカーニバルのような場で、技術展示コーナーを設置して、メーカーとコンテンツ業界の橋渡しの場、あるいは議論の場を作り、それが発展して、新たな連携とビジネス創出のきっかけになることを期待しております。
 冒頭申し上げましたように、本日のお話で、更にその感を深くしましたが、大所高所からの税制あるいは法制の在り方についての議論は、勿論進めなければなりませんが、現場レベルでどのような動きが起こせるのかということも、是非この調査会の議論の中に取り込んでいくべきではないかと、本日、痛感いたしました。
 以上でございます。ありがとうございました。

○牛尾座長 続きまして、各委員の報告の前に、事前に資料をちょうだいしております久保委員、重延委員、原田委員の順で御発言をお願いいたします。資料3です。

○久保委員 今回は御提案が1つ、御報告を2つ御用意しました。
 まず御提案ですが、経済産業省さんのホームページ等を見させていただきますと、日本が海外に向かって日本の強みである、技術的に先行している、もしくはコンテンツとして非常に優秀であるというものが幾つか出ております。モバイル、ハイブリット、ロボットなどの工業技術やアニメ、ゲーム、漫画などのコンテンツといったものですが、それらを一堂に集めて、国内外の方たちに紹介するという機会があると良いなと思います。
 来年10月には、東京モーターショーと東京国際映画祭、またコンテンツカーニバルといったものが企画されているわけですが、例えば国内外の方たちが日本の東京に興味を持たれるタイミングで、「日本の強み」についての企画展示ができたらいいのではないかと考えました。
 また、この展示については、デジタル機器を使用する上でのモラル・教育、海賊版撲滅キャンペーンなどの付帯コーナーを設け、子どもたちへのコンテンツ利用に際する教育の場、インターネット社会のモラルといったものを訴求していくことができるのではないかと思っておりますので、是非とも御検討いただければと考えます。
 報告として、以前この会でも申しました、アニメクリエーターの共通一次テストと呼ばれていますキャリアパスの試験ですが、11月に実施されました。一次筆記試験に147 名の受験者に来ていただきまして、二次試験、面接等を経て、16名の方にこの後の講座研修に参加していただきたいと思っております。
 事前認知のための時間が短く、100 名を超える受験クリエーターは難しいと思っていたのですが、学生さんや現職のアニメーターも多数参加していただいております。アニメ人材育成の第一歩としてはよかったのではないかと思っております。
 このアニメーター共通一次の問題に関しては、中国、タイで実施する予定をしておりまして、年内に詰めて、来年度に実施できればと考えております。
 最後に、コンテンツ産業の方向性に関する調査研究というのが中小企業基盤整備機構で実施されておりまして、アウトライン的報告が出てきております。私が参加させて頂いているのは、日本のアニメ制作会社に対する大規模なアンケート調査の研究についてです。私自身も知らなかったアニメ制作の実状データがいろいろと発見されまして、制作現場は思った以上に動いているという認識を得ました。
 可能ならば、このような調査をテレビ、映画、ゲーム、広告といったコンテンツ産業全域で行われると、もしかするとこのテーブルで会話されている以上の現在進行形の様子がわかるかもしれません。御検討いただければと思います。
 以上でございます。

○牛尾座長 続きまして、重延委員、お願いします。

○重延委員 資料3−2に私の考えることで、このワーキンググループの中で少し発言を控えていたものですから、今日まとめた形ということで、現場的な話をしたいと思います。一瀬参考人、村上参考人の流れに非常に近いので、私も驚いて意を強くしております。時間がありませんので、読む方が早いと思いましたので、そういう形で進みます。
 私の考えとして「日本が国際的に認められるためには・・」ということが重要であると思います。まず日本が魅力的な世界であるということ。新しい感覚の世界であること。才能を生み出す世界であること。そういうことが重要である。
 コンテンツと言われますけれども、私はコンテント、概念・哲学がなければならない。優れた概念・哲学から継続的に流通する国際コンテンツが生まれると思います。優れた才能は自立しているものであって、利用されるためにあるものではない。優れた才能を生み、育ってもらう環境が大切。産業はその才能を活用するという形だと思います。
 メディアはいつも最適なコンテンツを求めています。今に合う、今、当たるということです。実は最高のコンテンツが世界をリードし、継続的国際コンテンツになるのではないか。最高というのは娯楽を含めていますのでお間違いないように、最高のコンテンツに向かう高度な創造の進化を決して忘れてはならない。
 5番目に、最適コンテンツの娯楽・教養は勿論重要である。流通の推進力としても優れている。日本は、いかにしてこの最高と最適を共存させるかを考えるべきであるというのが概論です。
 「日本に国際的能力があるか・・」という考えですが、日本人には国際的に通用する能力があると思います。美的哲学、美的感覚が優れている。繊細である。独創性がある。新しい発想がある。自然との協調性があるというところは、日本人の非常に優れた才能だと思います。
 アジアにおける日本の若い感性へのあこがれはとても強いんですが、それを大切にしたい。ヨーロッパからは、日本に対する東洋観、神秘性、人間と自然の心優しさへのあこがれというものが明らかにあります。これは大切にしたい。
 アメリカからは、独自の歴史を持つ日本、繊細な心の日本、新技術を創造する日本へのあこがれというのがあります。これらを大事にしていきたいと思います。これらはかけがえのない知的財産である。
 ヨーロッパ、アメリカ、アジアからの日本的ポップ文化への好奇心。これはアニメその他を含めてです。デジタルコンテンツもそうですが、これを増幅・進化させること。これは日本の持つ先進性の象徴になる。日本人には、伝統的に高度な遊びの感覚があるということも広報し謳歌したい。この深い伝統と、遊びの発想の共生というのが本当に日本らしいと思いますので、世界にはない独創的共生であるということで、大切にしたいと思います。
 国内で充足してしまっている才能が多過ぎる。国際的に進出する希望が少ない。国際的情報収集能力がない。国際的言語を操らない。国際進出の積極性がない。スピードがない。ジャーナリズムの感覚が足りない。資金募集の能力がない。国際的配給・販売のノウハウがない。国際的広報戦略を知らない。21世紀には、これを超越する新クリエーター、新プロデューサーが必要である。一瀬さん、村上さんはこれを超え始めているという具合に本当に思います。
 最適なコンテンツというのは、ドメスティックな成功として、今後も産業的には成立し続けると思いますが、地上波放送も放送だけでなく、他事業でも展開が必要になってくるでしょう。メディアの拡散で利益構造は複雑になっていくと思いますが、最適コンテンツの多様な流通が増えるでしょう。マルチユースはもう新しいネット産業、インフラの企業に貢献できると思います。
 しかし、コンテンツ供給側の大きな利益に本当になるだろうか。つまり製作者側の利益になるだろうかという疑問はありまして、それだけ公正配分ができるだろうか心配です。ネットに登場したチープコンテンツというのが最近の話題になっていますけれども、その競合でコンテンツ制作の単価は上がらないのではないかと思います。
 ネットでは検索嗜好を優先されています。そういう形の無償のコンテンツに対して、それに対抗できるのは、むしろ最高のコンテンツではないか。そこから生まれる爆発的、永続的、国際的価値ではないかと思いますので、それが実は将来的に検索嗜好にも適応していくのではないかという具合に将来的に考えますということです。
 国際的コンテンツ流通は、現状アニメ、ゲームが動く時代で、映画は過渡期的、放送ではアニメ以外は単発的流通にとどまると思って、むしろフォーマット販売に可能性があると見ております。
 映画や放送もアメリカ、ヨーロッパへの進出方法は更に検討すべきでしょう。アジアは幾度も話されていますが、著作権問題とか違法性意識の改革を待つということで、中国の変化が期待されています。
 3番目に、国際的に成功する最高の創造を生む戦略が必要で、これは実際には建築とか文学も文学者が最近随分よい翻訳をされています。それから、美術、デザイン、ファッション、音楽、グルメには、日本の独創的作家が最高のものを生み、活躍しているのですが、映画や放送や新しいアニメやゲームで更に加速していくために、インターナショナルな選択が今こそ考えられるべきである。
 突然変異的なネット産業の誕生という感じで、無償コンテンツ、検索嗜好型コンテンツというのが生まれていますけれども、そういうユーザーの心理的変化を見つめる新しい戦略も必要で、ネットに無償の天才が生まれるのかというのは、私も非常に興味を持っています。
 戦略としては、最適だけでなく、最高のコンテンツを生む戦略も考えることが必要ではないか。優れたクリエーターが海外で堂々と主張できる環境をつくるということではないかと思います。クリエーターが海外進出を図れるようにする。優れたクリエーターの海外の研修を促進する。クリエーターの作品の海外紹介・出品の援助、海外へ国際語での広報を援助できる。今、NPO活動だけがやってくれていますが、もっとこういうところを助けてあげなくてはいけない。
 クリエーターの制作リスクの軽減。クリエーターの国際ネットワーク構築に協力する。クリエーターの成功利益還元。成功作品にはクリエーターへのレベニューシェアも導入すべき。クリエーターの制作環境を是正。
 プロデューサーの養成・顕彰については、プロデューサーが発想戦略だけではなく、実務的戦略を持てる環境と経験をつくること。プロデューサーの報酬を常識とする。プロデューサーは強い決定権を持つか、クリエーターと緊密な決定権を共有できる強いシステムを持つこと。さっき言っていましたストラクチャーですね。プロデューサーが新しい国際情報を得、国際ネットワークをつくれるディベロプメント予算が必要。法律に詳しく、経験豊富で、国際的契約・交渉に強いこと。
 成功したプロデューサーは顕彰されるべきである。適正利益配分を受けるべきである。可能性のあるプロデューサーを早期に見抜き、海外研修してもらう。プロデューサー希望者というために、ただ援助したり教育をするのは余り投資価値はないと思います。
 新市場としての国際コンベンション、その他に関しては是非やってくださいということで、ここは飛ばします。
 政策に必要なものは、とにかく解決のスピードを上げてください。著作権の新しい考え方は、2007年上半期で暫定的解決をしてほしい。著作権の考えも既に多様化している。マルチユースは当然。ただ、著作権者の新しい意志を探ること。著作権者は権利使用を無償でもよいと考えているケースがあることを含めて、急速に時代に適して改定すべき。
 全員が既成の権益だけにこだわるべきではない時代。ただし、著作権者を外して短絡的に考えないこと。多様な権益・配分・処理があることを前提に早急に解決してほしい。
 流通の権利についてですけれども、アメリカではプロデュースサイドで一括保有ということで、それも正論ですが、日本では権利譲渡の対価が適正か。ちゃんとお金を払って権利を取っているか。優越的地位の濫用になっていないかは、公正な視点で確認されていくことが必要。
 基本的には、レベニューシェアを支持します。出資者だけのレベニューシェアではなく、利益があればクリエーティブにも一部支払いがあるクリエーター向きシェアを導入したい。
 著作物の管理権の保有は、公正に協議・契約されること。放送メディアでの契約放送期間を超える管理権は、放送権、制作契約とは絶対に別途の契約であるべきという考え方を持っています。新しい流通を生むため、公的指導を要請されます。地上波放送局の各自主基準に加えて、第三者による契約モデル作成が2007年上旬内に必要ではないか。
 ファンド、キャッシュフロー、税制については、現実的な再確認が必要。流通促進のための放送ソフトの資産価値の検討が話題だが、税制はどう対応するのかという感じがいたします。
 映画製作についても、中小制作会社のための税制改革はすぐに必要である。これは1回利益を上げても、翌年にはもう困っている。毎年利益を上げなければいけないという税制ですから、お考えいただけないでしょうかということです。
 制作のキャッシュフローは、欧米では重要な価値の査定になっている。キャッシュフローというのは本当に制作会社が行っているんですけれども、例えばヨーロッパの先進国では大体納品時90%、それがもう支払われています。日本は納品後、放送が終わって1か月後という具合ですから、納品時まではほぼ100 %制作会社。欧米は90%が放送局という現状であります。
 日本では、キャッシュフローはほとんどゼロ査定になっていて、これはおかしいと思います。製作者のリスクが高い。資金を集められる製作環境の改善が望まれるということです。
 以上を挙げてお話をしました。1行1行に意味があると私は思いますので、是非御検討をいただければと思います。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 では、原田委員、お願いいたします。

○原田委員 私はこれからコンテンツの流通を促進していくためには、著作権制度を前に進めていくということが極めて大切なことであるという観点から、2点ほど申し上げたいと思います。
 1つは、著作権問題を前に進めるためには、著作者の権利がきちんと守られる。そういう安心感のある制度というものが欠かせないと思います。そういう意味で申し上げますと、前回もYouTubeを例にあげて違法コンテンツの流通に対する放送事業者の取り組みについての話をいたしましたけれども、これからデジタル放送の新しいプロテクションシステムを考えていく場合に、一方で消費者が使用しやすいということへの配慮も十分必要だと思いますが、やはりこの手のものというのは一度漏れをつくると際限なく広がっていく可能性があります。
 今のように技術が次から次へ発達していく時代では、当然いろいろな可能性が考えられる。そういう中で安心感のあるプロテクションシステムをつくっていくことは、極めて大事な課題であろうと思っています。そういう意味でコンテンツに関わるすべての権利者の皆さんが安心できる制度設計をお願いしたいというのが1点目でございます。
 もう一点は、著作権をクリアーしていく段階で、どうしても起こることですけれども、1つは権利者が見つからないケース。特に過去に放送した番組に関わっていた権利者にたどり着かないということがあり得ます。また、番組の権利者の方のほとんどが当該番組の二次展開を許諾していらっしゃる中で、ごく一部の方が拒否をされるということもございます。著作権の許諾を得る作業は、事務的には繁雑であっても進めなければいけないのですけれども、これが100 %許諾がとれないといけないとなると、なかなかそのソフトの使用ができない。あるいは許諾をとる作業や交渉に時間がかかるということは、これからのコンテンツ流通促進ということからすると、できるだけ避けるべきであろうと思います。そういう意味で一定の条件の中で、権利処理手続の責任が軽減できるような制度も検討していただく必要があるのではないかということであります。
 この資料1の2ページ、一番下の(4)のところでは、一定の条件下では権利者の差止請求権を制限するなどということが入っておりまして、これも効果があるとは思います。あわせて私どもは制度に基づく第三者機関をつくり、そこに放送事業者あるいはコンテンツ流通を行う通信事業者などが供託金を積んで、権利者からの申し出があればそういう申し出について裁定をし対応するといった機関が必要ではないかと思っております。このことをすべて放送事業者あるいは通信事業者が自らやろうとすると、さまざまな面で負担もかかる。それから、なかなか前に進まないということがあると思いますので、こういうことを検討していただけないかということを申し上げたいと思います。
 以上、2点でございます。

○牛尾座長 今日は参考人の話も込めて大変に充実していて、あと3分ぐらいしかないので、今日御発言されていない角川委員と村上委員から、もし御発言あれば、優先的にどうぞ。

○村上委員 それでは、本当に一言だけなんですが、今日、事務局の方で用意していただいた「コンテンツをめぐる課題について(案)」の中で、一応、放送事業者として発言をしておいた方がいいかなということだけ申し上げます。
 まず1つは、IPマルチキャスト放送へのコンテンツ流通のための課題として、地上デジタル放送の同時再送信というのが挙げられておりますが、改めて申し上げておきますと、2011年にデジタルへの完全移行に向けて、官民を挙げて必死に取り組んでいるところですけれども、我々の側からしますとIPマルチキャストによる同時再送信というのは、いわゆるこの地デジを何としても普及させるためにという手段の一つとして、中継局の建設が難しくて、いわゆる条件不利地域と我々は呼んでいますけれども、そういうところで地デジを効率的に転送する手段の一つということで検討が進められていると理解しております。実証実験も今年度中に動き出しますし、著作権法上の改正法案もあるということなので、これを見守っていくのが適切であると考えております。
 もう一つは、放送番組のマルチユースを促進するということがこの課題の中に入っておりますが、これについては現在ようやく我々としては契約の在り方が動き出したかなと思っております。当社でも制作会社さんとの間で契約ルールづくりを推進しておりまして、コンテンツの二次利用があらかじめ想定されている場合、覚書などをつくるということで動き出しておりますし、別のプロジェクトでもこの問題は前向きに関係者間で協議が進められておりますが、いずれにしてもこの点は基本的に民民の協議で、それを積み重ねることでこの環境整備が整っていくと思っておりますので、我々としても最大限の努力を続けていきたいと思っています。
 以上です。

○牛尾座長 角川さん、どうぞ。

○角川委員 今日お話が聞けてとてもよかった点は、国際的という言葉だと思います。2003年からこの知財の戦略会議が開かれていたわけですけれども、2006年のキーワードは国際化ということではないかと思います。
 今日のお二人のお話を聞いて、日本がまだまだ制度として未熟で、その底上げが非常に重要だと思いましたが、特に重延委員のお話にもありましたように、国際的なクリエーター、国際的なプロデューサー、国際的な弁護士、国際的な会社を育成するためにどうしたら良いかを考えていくことによって日本の制度がよくなっていくのではないかと思うのです。
 日本の制度というのは、このまま日本だけの方に顔を向けていると、どんどん特殊な国になってしまう危険性があると思います。世界標準とも言うべき知的インフラを日本につくっていくために何をすべきか、が今年のテーマであると考えていただくと、底上げが非常に具体的になって有意義ではないでしょうか。そうなれば、合作映画だとか合作コンテンツが促進されていくのではないかという感じがいたしました。その点で是非国際的な視点を大事にしていただきたいと思います。
 また、アジア等においても、日本と同じ知的インフラをつくっていくという視点で、中国等に求めていく。つまり世界に通用する知的インフラをアジアにつくっていく。これも国際的、国際化ということではないかと思いました。

○國領委員 2ページの(3)のところが直接的なのと、先ほどYouTubeの御発言があったところで、私は違法な複製を弁護する気はゼロだという前提を置いた上で、この間のマイケル・J・フォックスの病気の話なども含めて、あの世界はやはり映像を引用しながら、それをめぐってコミュニティーがつくられていくという、これは一種の文化になりつつあります。それが新しいメディア、そのCGMの世界をつくって、それが広告で産業になったりしつつあるという観点を踏まえ、やはりこの(3)みたいなことをやると言うのであれば、併せて合法的な活用の仕方という視点を是非入れていただければと思います。

○牛尾座長 まだまだ御意見があると思いますが、限られた時間が来てしまいましたので、今日はこれで終了したいと思います。
 ただ、事務局が提出したコンテンツをめぐる諸問題については、個別論としては非常にどんどん進化しておりますけれども、今日の参考人や重延さんを始め久保さんなどの話を聞いておりますと、現場から見てかなり大きく、時代の流れや日本そのもののコンテンツにおける哲学、考え方、文化というものに違和感がある。
 やはり岡村さんもそういう点に触れていらっしゃいましたが、もう一度、どこに大きく空白感があるのかというところを探知して、個別論を解決することと同時に、並行的には今、角川さんがおっしゃるように、グローバルにこういう問題を処理していくときには、やはり優秀な人が日本を捨てなさいといってしまうことは、とてもよくわかるんです。これは技術の世界でもそういうところが非常によくあって、特に20年ぐらい前にはすごく優秀なハードウェアの技術屋で、日本で成功した人がいるんです。
 ずっと我慢して、企業が強かったからハードの場合は成功したんですが、やはりソフトの場合は企業よりも個人を尊重しないと成功しない社会。日本の社会には、個人と企業の間にすごい差別があるんです。企業ならいいけれども、個人でもうけるのはけしからぬというような議論があるんです。
 こういう文化が個人との契約を拒否するということが非常にある。この辺はやはり明治以降の文化的な問題、大衆的な問題をどう乗り越えるかというのは、単なるこの審議会だけの問題ではないけれども、政治は割りと早く小泉政権発足以来、この5〜6年間で20年分ぐらい吹っ飛んで走っているわけですから、この勢いで行かないと日本は遅れてしまうだろうという実感を持っています。
 ただ、今日あったように、アメリカ型で行くのか、ヨーロッパ型で行くのかというのも、実はそろそろ我々は考えなければいけないときに来ているので、そういうことも込めて、グローバルであるということは、世界の人々と一緒に生きていく覚悟をすることなんです。個別を除けばね。日本人だけで生きられない社会になったということですね。グローバルは世界の人と一緒に生きていく覚悟をこれから30年も、50年もすることなんですね。排他的な差別感では、もう生きられない時代に日本の地位はなっている。それはグローバルの基本だと思うんです。
 それをいろんなことがあるものだから、FTAがどうのとか、そっちへ拡散していきますけれども、基本的に我々は日本という国の将来は、先端を行く限りは、やはり世界の人と一緒に生きていくことを覚悟しないといけないということが一番大事なことだと思います。特にコンテンツの世界は、そういう人間に関わる問題でありますので、そういう点は次回の1月頃に開催される会合までに事務局の方で各委員ともう一回それぞれお話をちょうだいして、そこのところの空白を基本認識で埋めれば、大分この方も進んでいくのではないかということでございます。今日は大変に充実したいい会議であったと思います。
 次の会合は来年1月ごろの開催予定しておりますが、報告書のとりまとめについて、いよいよ最終段階に入りますので、事務局が各委員を訪問して、皆さんの時間を邪魔すると思いますけれども、十分時間を取っていただいて、思ったりしたことを率直に話していただいて、それを取り入れてまいりたいと思います。
 それでは、本日はこれをもって終了させていただきます。本当にありがとうございました。