インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ
(第3回)

 
平成22年年3月3日(水)
9:59〜12:20
於:知的財産戦略推進事務局内会議室
議 事 次 第

 
1.関係者ヒアリング(アクセスコントロール回避規制の在り方について)
 (1)コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
 (2)電子情報技術産業協会(JEITA)

2.電子情報技術産業協会(JEITA)
  • プロバイダの責任の在り方について
  • アクセスコントロール回避規制の在り方について
午前9時59分 開会


○土肥座長
 それでは、予定されておられる方もほぼ全員おそろいですので、ただいまからインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ第3回の会合を開催させていただきます。本日はご多忙の中ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、前半にアクセスコントロール回避規制の在り方に関する関係者のヒアリングを行いまして、後半に残された課題について議論を進めてまいりたいと存じます。 まず、アクセスコントロール回避規制の在り方について、関係者からのヒアリングを行います。まことに恐縮ですけれども、時間も限られておりますので、説明者の方は10分という時間でございますけれども、厳守をお願いしたいと存じます。 初めに、コンピュータエンターテインメント協会の専務理事、堀口様、それからコンピュータソフトウェア著作権協会の事業統括部法務担当マネージャー、中川様をお呼びしております。それでは、説明をお願いいたします。どうぞ、それではよろしくお願いいたします。

○参考人(堀口氏)
 ご紹介いただきましたコンピュータエンターテインメント協会の堀口でございます。
 私のほうから被害実態につきましてご説明をさせていただき、この問題に一緒に取り組んでいただいておりますコンピュータソフトウェア著作権協会の中川さんのほうから、規制強化要望についてご説明を申し上げたいと思います。
 まず、パワーポイントの資料のほうですが、ご存じのとおり、ゲームソフトメーカー及びハードメーカーはアクセスコントロール技術を採用しまして、無許諾の複製を実質的に無効化する対策を行っております。ただ、この技術的制限手段を回避するマジコンやModチップ等と呼ばれる機器・製品が市場に流通しており、これが原因となってWinnyなどのP2Pファイル共有ネットワークや蔵置サーバーなどにゲームソフトのプログラムが著作権者に無許諾で大量にアップロードされております。
 この結果、多くのユーザーがこれらのプログラムをインターネットを介して入手した上で、マジコンやModチップ等のアクセスコントロール回避機器を介して無料でプレイをしておりまして、ゲームソフトメーカーは本来売れるべきゲームソフトの販売の機会損失で深刻な被害を受けております。
 最新の状況については当協会において調査中でございますが、次のページから代表的な被害実態の一例をご説明申し上げます。
 まず、被害実態の1−1、ファイル共有ソフトですが、こちらは2008年の8月10日、24時間、Winnyについてコンピュータソフトウェア著作権協会さんが調査されたものでございます。調査結果としては、ニンテンドーDSソフトの本数185万7,988本と。これでDSソフトのファイル数は約27万ファイルということでございます。1つのファイル上にDSのソフトを詰め合わせているものもあるため、ファイル名を目視にて確認して本数の算出をしております。これを市場価格に換算した場合、約59億円ということでございます。記載のとおり、当時のニンテンドーDSソフトの平均小売単価3,200円で計算をしております。
 続きまして、被害実態の1−2、こちらはShareのほうですが、こちらは2009年8月23日の24時間と。こちらもコンピュータソフトウェア著作権協会さんが調査されまして、DSソフトの本数は約90万本ということでございます。こちらにつきまして市場価格に換算した場合、約38億7,000万円ということで、こちらの平均小売単価は4,300円となっております。
 最後に、被害実態の2.違法ダウンロード数ですが、こちらは昨年の6月、海外のダウンロードサイト、10サイトを対象に任天堂さんが調査されたものでございまして、結果としまして、2億3,753万ダウンロード数ということになっております。こちらを市場価格に換算した場合は、全世界で1兆213億と、約214億ですね─という数字になります。国内では約2,648億ということでございまして、アスタリスクにありますように、小売単価は4,300円、それから国内につきましては全体の販売台数から国内比率で計算をしております。
 冒頭申し上げましたように、私どもで最新の状況について現状調査をしているところでございます。
 以上、簡単ですが、ご説明申し上げました。それでは、ACCSさん、お願いいたします。

○参考人(中川氏)
 コンピュータソフトウェア著作権協会の中川でございます。
 私のほうから、このような違法の実態にかんがみまして、アクセスコントロールに関して規制の強化というところを要望させていただければというふうに考えております。
 まず前提といたしまして、私どもの協会のほうで申し上げさせていただきますアクセスコントロールというのは、現行法では著作物には限られておりませんけれども、私どもで考えておりますのは著作権の保護期間が終了していない著作物の視聴等行為を防止すると、そういった目的のために施されたものであって、そのアクセスコントロールが機能すれば実際に見ることはできないと。つまりその複製物が無意味なものになると、そういうことをもって実質的に著作権侵害の防止に資するものと、そういうものだけを想定してお話をさせていただきます。
 まず、規制対象となる行為の拡大に関しましては、3つの点についてご要望させていただければというふうに考えております。
 まず1つ、製造の規制でございます。現時点ではマジコンとか、Modチップ、きょうマジコンは一応お持ちしましたけれども、こういうものなんですが、見ていただければわかるとおり、ニンテンドーDSのゲームのソフトと同じ形をしてございます。もしご興味があれば後でご回覧いたしますけれども、こういったものは現時点では海外で製造されて輸入されることがほとんどでございます。ですので、製造元を根絶できる状況にはございません。日本国内側から何かをするということは非常に難しい状態にはあります。しかしながら、これまで海賊版の対策等を行ってきた上では、実際には海外で製造するということと、それから水際、税関での摘発といったことを逃れるために、国内に対して部品だけを輸入するような行為ということがあって、国内で組み立てをして販売すると、そういった事象も出てきてございます。そういったことを勘案し、アクセスコントロールを回避する機器の譲渡・引き渡しを目的とした製造行為に関しましては規制を望むところでございます。
 それから、2点目といたしましては、回避をサービスとして行うような行為、公衆からの求めに応じてアクセスコントロールを回避してあげると、そういった行為に関しても規制をお願いしたいというところでございます。アクセスコントロールを回避して動作をさせるゲームソフトといいますものは、比較的簡単にインターネットからダウンロードすることができると。しかしながら、実際に回避するための機器とか、プログラムをハードウェア等に導入するに当たっては、特殊な機能を有する装置、これ自体にアクセスコントロールの機能はないんですけれども、こういったものとか、また特別な知識を要することが多くて、ゲーム機の故障などのリスクを伴うと。そういったところから、初心者の方、カジュアルにやられる方にとっては若干のハードルがあるというところでございます。ただ、特殊な装置とか、知識というものであっても店舗等で購入できるものもありますし、またインターネット等や雑誌などでそういった情報を記載しているものもございます。そんなところから、アクセスコントロールを回避してあげるよと、そういったサービスというものも発現してきているところでございます。ですので、営業として公衆からの求めに応じてアクセスコントロールを回避する行為に関しましては規制を望むところでございます。
 また、個人が行うアクセスコントロール回避に関しましても、同様に規制の強化を望むところでございます。これは、さきに申しましたとおり、違法にアップロードされたゲームというのは非常に簡単にダウンロードすることができますが、実際にアクセスコントロールがちゃんと機能しているということであれば、そういったゲームを遊ぶということはできないと。そういうことで、著作権侵害が拡大することはないはずなんですけれども、さきに報告したとおり、大量のアップロードがなされている、またダウンロード等も行われていることを勘案すると、もう既に違法に複製されたゲームソフトを動作させるためのアクセスコントロール回避と、そういったものに関してはユーザーによってかなり保有されているんではなかろうかと。したがって、ゲームメーカーからの訴訟は、販売店、いわゆる流通業者様のほうには一定程度対応可能ではあるものの、ユーザーにとっては何らの抑止効果になっていないというところがございますので、このことからアクセスコントロール機器等を使用して行う回避行為の規制というものも求めたいところでございます。ただし、これに関しましては刑事罰化までは求めるところではございません。
 それから、規制対象機器の拡大、いわゆる「のみ」要件に関しましてですが、こちらに関しても「のみ」要件を緩和して、拡大していただければというふうに考えております。と申しますのは、この機器もそうですけれども、使用実態としてはインターネット上から入手できる違法ソフトというものの起動ではあるものの、別の用途として音楽や映像の再生、また自作ソフトの起動と、そういったことができますということが反論として展開されているところでございます。しかしながら、「別の用途」というのは例外的に付加されているものだけであって、さきに申しましたアクセスコントロール回避機器等を紹介、解説した書籍、ウェブサイト、そういったものの中では、これら「別の用途」についてはほとんどのものが一切触れておりません。こういったところから考えれば、実際にそれを買う理由、使う理由というのは違法複製ソフトの起動であるというふうに考えられるところでございます。しかしながら、「別の用途」が存すること、また1つの回路に複数の機能を持たせることによって実現されているものもあるんですが、アクセスコントロールを回避するためにその他の機能をも回避することになる結果、「のみ」要件を満たさないという可能性が存在すると。そういったことを勘案し、「のみ」要件を緩和して、対象機器の拡大を要望いたします。
 また、機器単体ではアクセスコントロール回避の機能を有しませんけれども、機器にプログラム等を組み合わせることによってアクセスコントロール回避が実現されるようなものも対象となるよう、要件を拡大していただきたいというところでございます。
 また、さきに申しました3つの行為の拡大並びに現行不正競争防止法でも規制がされております譲渡・引き渡し並びにそのための展示、輸入、輸出、こういったものに関しましては、刑事罰を付与していただければというふうに考えております。かつ、関税法における水際措置対象物品にもしていただきたいというふうに考えております。
 簡単ではございますが、以上です。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまご説明ございましたけれども、この点についてご質問、ご意見等がございましたらお願いをいたします。
 北川委員、どうぞ。

○北川委員
 よろしいでしょうか。北川と申します。
 非常にわかりやすい被害実態の資料を見せていただいたんですが、実は私、熟知しているんですけれども、実は24時間の観察といいますか、調査結果なんですね。これが24時間になった理由と、これは1日なんですね。1日で59億発生しているので、これは年間だったらどうなるのかとか、いろいろな疑問がわいてくるんですが、これは非常にご苦労されて調査されているということも私は知っておりますが、これはどれぐらいのコストがかかって、年間に換算するとどれぐらいの損失額になるのかというところをちょっとご説明いただければと思います。

○参考人(中川氏)
 こちらのファイル共有ソフトの実態に関してなんですが、なぜ24時間かと申しますと、24時間で大体今、ファイル共有ソフトのネットワークにつながっているコンピュータ、ノードと呼ばれるものですが、そういったものの情報がほぼ99%収集できるというような状況がありまして、全量を把握するに当たっては大体24時間というところで、24時間で換算してございます。
 しかしながら、これを1年間にしたらどうなるのかというお話ですが、実はこれはもうファイル共有ソフトの中でどれだけ流通しているかという実態でございますので、これが1年間、ずっとこの分だけ毎日毎日ふえていくというわけではなくて、ここから、少しずつの分量ではございますけれども、一定程度増加していくといような形になってございますので、年間に換算するとというと、ちょっとどれぐらいになるかということについてはご説明できないところでございます。ですので、ある特定の期日ではございますけれども、ファイル共有ソフト、ここではWinnyとか、Shareとか記載されてございますが、そのファイル共有ソフトのネットワークの中で流通しているソフト数というふうに受け取っていただければというふうに考えます。
 また、こちらのWinnyネットワーク並びにShareのネットワークに関しまして、全数調査を行って、このうちからニンテンドーDSソフトの本数等を換算しているわけなんですが、これは実際に私どもの協会の職員が目視で確認しております。大体Winnyだと700万ぐらいのデータ、それからShareであると550万ぐらいのデータになるんですが、これを全部の中からDSソフトだけ抜き出して全部見ました。そういうことをやっております関係上、大体2カ月から3カ月ぐらい数字をつくるのにかかってございます。

○北川委員
 どうもありがとうございました。大変なご苦労をされてこの数字が出てきているということは今のお話を聞いていただければわかるかと思います。
 それから、マジコンについてですが、これは今、市場流通量は何台ほどあるとお考えですか。

○参考人(中川氏)
 具体的にどれぐらいというのは、実はまだ調査中でございまして、実際に何%ぐらいのものが数値として出ているということはないのですけれども、過去に雑誌等で出されている数字では、少ないですが─少ないかどうかわかりませんけれども、10から20%ぐらいの方が使っているというような数字が出ていたかと記憶しております。

○北川委員
 具体的な台数でいいますと。

○参考人(中川氏)
 ごめんなさい、そこまでの数字についてはちょっと私のほうでは今の段階ではちょっと記憶してございません。申しわけございません。

○北川委員
 ユーザーの10%から20%。

○参考人(中川氏)
 そうですね、ニンテンドーDSユーザーのという意味です。

○北川委員
 関連してですが、現在、先ほど流通業者という言い方をされましたが、実際にはマジコンというのはネットオークションですね、具体的に言ってしまいますとヤフーオークションで非常に大きな量が取り引きされていると。私が最後に知った2007年12月の例ですと、大体7万台ぐらい取り引きされていると。それは年間にすると相当台数が取り引きされているというふうに感じるんですが、こういったオークションサイトの中で流通しているという実態は、非常に業者が売りにくいというものを売るというのは今は当たり前とされていますので、そういったことによる被害というのはどの程度あるとお考えですか。正規といいますか、マジコンをちゃんと売っている人とそれからオークションを経由して売っている人とあると思うんですが、流通業者としてのオークションサイトということに関してはどれぐらいの被害があるとお考えでしょうか。

○参考人(中川氏)
 オークション等に関しましては、現在、弊協会等が取り組んでやっておりますインターネット知的財産権侵害品流通防止協議会というまた別の協議会がございまして、そちらのほうでの話し合いの中で、マジコンに関しては現在出品がなされないように手だてがとれるところでございます。しかしながら、実はオークションで売られるということも確かに大きな問題ではあったんですけれども、それ以上に、ごめんなさい、ページ数を振っていないのですが、規制強化要望の3ページ目のところ、「ネットショップに関する問題点」というところで記載してございますけれども、ネットショップ、ネットでの販売というものに関しましては、実は実店舗が要らないということと、それから本人確認等も余りきちんとなされていないということがあって、非常に簡単に参入ができるというところが非常に問題となっております。こういったところに対しては、メールまた警告書等の書状を送っても全く反応しない、または届かないといったような状況がございまして、そういった面から考えますと、ネットショップでの被害とか、ネットでの販売の被害というのは相当量に上がるのではなかろうかというふうに考えてございます。

○土肥座長
 中山委員、どうぞ。

○中山委員
 被害実態の1は24時間と書いてあるのですけれども、被害実態の2は6月とだけ書いてあります。これは1カ月という意味ですか、それとも1日の被害実態なのでしょうか。

○参考人(中川氏)
 すいません、こちらのほうは、被害実態2のほうは延べの数になります。2009年6月時点でという意味でございまして、大体これより2年ぐらい前からの数字になります。

○土肥座長
 2009年6月から2年前にさかのぼって、2年間のということですか。

○参考人(中川氏)
 いや、これはウェブサイトが開設されている時期からのアクセスカウンターの数をずっと追いかけて数を数えているものなので、ちょっとその前のファイル共有ソフトでの被害実態のカウントの仕方と少し異なっております。調査を開始してから2年間」という意味であり、2年間の合計数値というわけではございません。

○土肥座長
 いずれにしても2年間ということですね。

○中山委員
 始まってから2年間ということですね。

○土肥座長
 ほかに。
 森田委員、その次に宮川委員、お願いします。

○森田委員
 要望の内容について確認させていただきたいのですけれども、きょうご説明でアクセスコントロールについて問題とされているのは、複製物に対するアクセスを無効化するようなものということであって、実質的には複製権の侵害に当たるような場合を想定しているという理解でよろしいかどうか。つまり、アクセスコントロールと言うのですけれども、アクセスをコントロールするのは、用いられている技術そのものはアクセスをコントロールするわけですけれども、そこでの被害の実態によると、違法な複製物による著作権侵害を防止するという意味に限定して考えているというふうに理解してよいかということです。それと、それ以外の被害実態というのはあるのかどうかということを、まず前提として確認させていただきたいと思います。
 それから、2点目は、要望の内容にある刑事罰の付与というのは、不正競争防止法に刑事罰を付与するということが書かれていますけれども、これは著作権法ではなくて、不正競争防止法の問題としてとらえるべきだというご趣旨だと理解してよいかということが2点目です。
 それから3点目に、個人のアクセスコントロールを対象とすべきだということの実質的な意味がどこにあるかというのは、既に売られているマジコン等を使えなくするという点にあるということですが、しかし、既に売られているものは適法に入手したものなので、そうすると、それは仮に今後アクセスコントロールの回避行為が違法になると、それも使ってはいけないということになるという前提に立っておられるように思いますが、その点は適法に入手したものは今後も使ってよいということになれば、この点は前提が変わってように思います。いずれにせよ、実質的な意味というのはその点にあるということをお考えなのでしょうか。素人的に考えてみますと、仮にアクセスコントロール回避機器を販売する行為について刑事罰が付与された場合には、今後新たにそのような機器を販売することはできなくなるわけですから、個人のアクセス回避行為を対象としなくとも、ゲーム機器の仕様等を変更することによって、既に入手したマジコンは使えなくするといった方法によって、既に出回っているマジコンへの対応というのは考えられそうな気もするのですけれども、そのあたりがどういう整理になっているかということについて教えていただきたいと思います。

○参考人(中川氏)
 まず1つ目、著作権の保護に関する話ですが、これはおっしゃられるとおりで、著作物の複製物を無効化すると。実質的には複製権の侵害を防止するために付されているアクセスコントロールというものを対象として考えてございます。
 すいません、それ以外とおっしゃられますのがちょっと……

○森田委員
 質問がわかりにくくてすいません。この種の問題を議論するときに、複製権のほかに、アクセス権という支分権を与えて、それについても広く保護していくべきだという立法的な提案というのがあると思うのですけれども、アクセス権まで与えてしまうと、著作権の保護というのが無限に広がるおそれがあり、それによってどのような問題が生ずるかということについていろいろと検討しなければいけないわけです。この点で、ご要望は、現在の被害実態からみると、アクセス権を付与するということ自体は必要とされていないというふうに理解してよいかということであります。

○参考人(中川氏)
 そのご質問に関してでは、現時点では、事業者から意見等を聞いている限りではそこまでのものを求めるものではないということでございます。
 それから、2つ目が、先ほどの不正競争防止法とここに記載させていただいておりますけれども、ごめんなさい、これは別に不正競争防止法を意図しているというわけではございませんで、ちょっと文章が抜けておりまして申しわけございません。今の不正競争防止法の中で定められている行為についてという意味ですので、どの法律で刑事罰を付与するかとか、どの法律で規制をするかということについてまではこちらから求めるものではございません。ただ、さきに申しましたとおり、著作物等の視聴行為等を防止するために施されたと、そういったものであるので、もしかしたら著作権法のほうがふさわしいのではなかろうかということは考えてはございますが、そちらに関しましてはご検討をいただければというふうに考えてございます。 それから、3つ目です。ユーザーに関する規制でございますけれども、確かに物品そのものを違法なものとしてしまうということももちろん考えられることではございますけれども、実際にこういったもの、物品でございますし、1枚1枚何か付与してそういった機能をなくすようにしてくださいということをお願いしても、実効性としては非常に余り上がらないのではなかろうかというふうには考えております。そういったところから、実際にそういったことをやってはならないと、実際にそれ以外の機能もあるわけですけれども、そういった回避行為ということをやってはいけないというふうに規制することによって、過去に、それを目的にしてご購入された方に対しての抑止効果を何らか与えたいというところでございます。

○土肥座長
 どうぞ続けて。

○森田委員
 過去に購入したものを使ってはいけないというのは、具体的にはどういう形でそのことに実効性を持たせるのでしょうか。仮に使ってはいけないということになったとしても、みんなが依然として使っているとして、それをとめるというのはどういう手段が法的にあるというふうにお考えなのでしょうか。

○参考人(中川氏)
 家庭内で行われているものについては確かにご指摘のとおり見えないところではあるかもしれませんけれども、実際問題、こういったDS等のマジコンだとか、それ以外のツールもそうなんですけれども、携帯型のゲーム機器ということもありまして、よく電車等でも見かけるわけでございます。そういったところで、やはりそういった差し止めも含めてやってはならないということの啓発等を行われること、また実際に注意等が何らかの形で行われればというふうには考えてございますけれども。

○土肥座長
 宮川委員、どうぞ。

○宮川委員
 宮川です。 森田先生からの質問とかぶるようですけれども、幾つかのご提言の中で、個人が行うアクセスコントロール回避行為の規制という点を挙げられていらっしゃるんですが、業者さんというか、機器を製造したり、販売する人たちを規制するというのは今の規制の流れの中から自然に出てくると思うんですけれども、個人の方の規制というところは、かなり必要性を強く訴えないとなかなか法改正等も難しいレベルではないかと思います。その点について特に強く必要性を訴えられるとしたら、どのような点を挙げられるのか伺いたいというのが1つと、それから、水際の対策を可能にしていただきたいということで、税関の水際取締りの対象とするようにとご提言いただいているんですけれども、実態として、やはり海外製造品が多いということを考えますと、この水際対策の対象になっていないということで、国内に入ってしまった後では取り返しがつかないというか、対応ができないという、そういう重大な被害実態があるのかどうかということをもう少し伺いたいと思います。

○参考人(中川氏)
 さきのまずアクセスコントロールのユーザーの回避行為についてなんでございますけれども、こちらの資料にも少し書いてあるか……、書いていないか、すいません。こちらについては、やっぱり実際には機器そのものに関してはともあれ、もちろん海外から輸入されるものもありますが、プログラムのほうがやっぱり重要で、プログラムに関してはもうボーダーレスで、インターネットでダウンロードができるというような状況にもあります。こういったことから、事業者の方を対象に、販売店等を対象に何らか規制をかけるということだけでは、そういったインターネット上からも配布されているプログラム等に関してまで規制が及ばないと。少なくともそういったものに関してもダウンロードして使って回避することということをとめないといけないんだということが大きな点としては挙げられるところでございます。
 それから、水際措置がなされていないことによっての被害ですが、さきも申しましたとおり、現時点では日本国内ではほとんど製造がされていないような状況でございますので、ほとんどのものが、マジコン等も含めて、こちらも見ていただければわかるとおり、全部英語で、中のマニュアル等も英語で書かれているようなものでございます。ですので、そういったことを勘案すると、これまでのマジコン、その他Modチップも含めてですが、そういったものの被害というのは基本的には水際措置がなされていないことによる被害だというふうに言っていいかと思います。

○土肥座長
 では、最後に山本委員、どうぞ。

○山本委員
 技術的なこと、簡単な質問なんですが、無反応機器との関係で質問させていただきます。パワーポイントの資料の2ページ目のところで、上から2番目のパラグラフ、「本技術の著名な例としては、正規パッケージの記録媒体からのみゲームソフトが起動するよう、記録媒体及びゲーム機器に技術的制限手段を施し、無許諾複製物が起動できないようにしております」というように書いてあります。パワーポイントの資料です。その2ページ目、上から2番目のパラグラフです。これはゲームソフトに暗号化等を加えて、正規のパッケージの側にはそのキーをつけてあって、単純な複製物にはそのキーが行かないというような形にしてあるのか、ここの構造ですよね。つまり無反応機器でどうこうなるような問題なのかどうかですね。外部からの何か情報が必要な技術的制限手段なのか。ちょっとその点を教えていただけますか。

○参考人(中川氏)
 すみません、技術的なことは余り詳しくないのですが、伺っている限りでは、正規パッケージの記録媒体のほうの幾つかのポイントをチェックしてやるようなものだというふうには伺っております。ですので、それが反応する、しないということで行われているものではないというふうには伺ってございます。

○土肥座長
 よろしいですか。
 大谷委員がちょっと手を挙げておられるので。

○大谷委員
 ありがとうございます。
 質問させていただきたいのは1点ですが、この2010年元旦から、ゲームについての実態はどうかわかりませんけれども、ファイル交換ソフトで共有されている違法な著作物といったものがかなり減少してきているという報道もなされているところかと思います。ご報告いただいている被害実態は昨年以前のものですので、この1月以降の傾向というのは、ゲームのプログラムなどについてはどのような影響が生じているか、もしご存じでしたら教えてください。

○参考人(中川氏)
 申しわけございません。現時点で1月以降どのような動きをしているかということについては、こちらではまだ調査が終わっていないところでございます。しかしながら、先ほど申しましたファイルが減少しているというわけではなくて、実はノード数と言われる、つながっているコンピュータの台数が減っているだけであって、実際に流通しているファイルの数はそれほど減少していないのではないかというふうにこちらでは理解してございます。

○北川委員
 すいません、関連質問なんですけれども、私はきょうは中川さんにお答えいただく方で来られることを知らなくて、一番私がここに呼びたかったのが中川さんです。なぜかと言いますと、中川さんの所属を見ていただくと、コンピュータソフトウェア著作権協会です。それで日本のネットが信用棄損してしまったんです。これは世界最悪なんです。私はきょう資料を出していますけれども。この大きな理由がWinny、Antinnyというペアだったんですね。その総攻撃をまともに食らったのがこのコンピュータソフトウェア著作権協会さんで、AntinnyにDoS攻撃が仕掛けてあって、そのDoS攻撃が全部ここへ行ったんですね。そしてその渦中におられて、ほとんどその中心でもって切り盛りされてきた方が中川さんとその周辺におられる方々なんです。ここでぜひそれをお聞きしたいんですが、これは法的措置も含めてこのWinny、Antinnyによって失われてしまった日本のある種のネットへの信頼というものを何とか回復していかないと、日本の成長戦略というのはなかなか立て直せないような状況になっているんですが、これらの問題を本質的に解決するためには、法的措置も含めてどのような方法が、道筋が最も効果的である、あるいは有効性が高いとお考えでしょうか、現時点において。そのあたりをちょっとお聞かせ、急な質問で大変申しわけありませんが。

○参考人(中川氏)
 申しわけございません。それはそれほど深い発言ができるわけではないのですが、日本だけが今悪いわけではなくて、基本的に世界中で違法な著作物の流通というのはなされています。かつ、もう既に言語の壁もそれほどなく、ボーダーレスで著作物の違法流通というのがなされているような状況でございます。ですので、もちろん今言っていただきましたとおり、ファイル共有ソフトのWinnyとか、Shareとかというネットワークに関しましては、日本国内でしか使われていないものでございます。これについては日本国内での対処というのが絶対で、少なくとも日本国内でこの違法の流通というのを何とかしてとめなければならないということが一番大きな問題だと思いますが、インターネット全体ということになれば、もちろん国際協力、海外との連携の中でそういった侵害行為、また侵害の実態等について共有し、実際に侵害者がどこの国に逃げても対応が可能であるようにしていくという協力体制を築いていくことが重要なのではなかろうかというふうに考えております。

○北川委員
 どうもありがとうございます。
 あと1点ですが、さらにWinny事件というのがあって、1点だけです。これは実は証人が検察側とそれからWinny側と1人ずつ立ちました。Winny側は村井純さんでした。実は検察側の証人に立ったのが中川さんです。まさに今言われたように、Winnyというのは日本固有の問題なんです。日本がもう最先端なんですね、世界の。その中で起こるべくして起こった事件がWinny事件であって、そこをどう解決するかという一つの手段として検察がWinnyの作成者を、いわゆる著作権侵害のほう助として訴えたという事件がWinny事件でありまして、それのいわゆる、ほぼ唯一の検察側の証人として立たれた。その経験の上で、どうしたらこのWinny問題というのは本質的に解決の方向に向かっていくのか。同じような質問ですが、ちょっとそれについてコメントがあれば、なければもう結構です。すいません。

○参考人(中川氏)
 それが刑事事件になったことにつきましては、警察また検察のご判断でございますので、私ども権利者の団体が申し上げることでないのかもしれませんけれども、少なくともWinnyは今回無罪とされたわけでございますけれども、Winny上に流れているコンテンツのほとんどというのは違法に流通しているコンテンツでございます。その中にはもちろん、さっき申し上げておりましたAntinnyだとか、そういったマルウェア、スパイウェア、またはDoS攻撃で行うようなツール、そういったものもたくさん流れているところでございます。ですので、いろいろな観点から考えても、そういった使用方法があった際には、何らかの形で停止ができる、もしくは静止ができるような、これは別に刑事事件にするとか、つくった方を捕まえるとか、そういうお話ではなくて、実際に流れているものをどうやってとめるのか、とめることができるような何らかの手段を講じておく必要がある、もしくは講じておいていただきたかったというのが権利者側としての意見でございます。

○土肥座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、堀口様、中川様、ありがとうございました。アクセスコントロールの回避規制の問題を越えていろいろご発言、ご回答をいただきましたことをお礼申し上げます。
 それでは、続きまして、電子情報技術産業協会の常務理事、長谷川様、それから著作権専門委員会の委員長の亀井様、それから同委員会副委員長の榊原様、同じく委員の坪内様をお呼びしております。それでは恐縮ですけれども、短い時間ですが、よろしくご説明のほどをお願いいたします。

○参考人(亀井氏)
 JEITAより参りました亀井でございます。本日は意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 全体として十分ご承知のことを申し述べることになるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 お手元の資料、パワーポイント2ページでございますが、私どもの意見の概要を4点にまとめております。1.インターネット上の著作権侵害コンテンツに対する対策としては、アクセスコントロール回避規制強化が適切であるかどうかを十分にご検討いただきたいという点でございます。被害実態と法規制との関係という点でございます。
 2番目、違法なコンテンツのみを取り締まるということは非常に難しいのではないかと。とりわけ機器の規制を考えますと、事業萎縮あるいは技術革新の阻害というものとの関係がございますので、慎重にいただきたい。必要最小限かつ規制対象が明確であっていただきたいと思うわけでございます。
 3番目、アクセスコントロール回避行為規制導入というのは妥当だとは思っておりません。やはり問題とされるべきはネット上の違法コンテンツということでございます。対策の実効性という点があろうかと思います。
 4番目、仮に規制を強化されるということであれば、やはり著作物という点では利用とのバランスというものを配慮いただきたいという点でございます。
 順次話を進めてまいります。
 3ページ。事務局がご用意されました資料を拝見しまして、被害実態ということで2点挙げられているかと思います。1つ、DVDのリッピングということが指摘をされております。想定されております被害は、これは1から5にありますように、回避プログラムがネットで頒布され、それをユーザーが用いる、あるいは回避された違法コンテンツがアップロード、ダウンロードされるという点でございます。これらを現行の法に当てはめてみますと、頒布行為、これについては不競法で現在規制済みであろうと。あるいは回避行為については、これは家庭内の行為でございますので、やはり規制の実効性には大いに疑問がある。DVDに関して言いますと、続く複製行為というのは著作権法で規制対応済みであるという点がございます。北米ではコントロールを規制する法、DMCAという著作権法がございますけれども、アメリカでも権利行使をされた例はないと私どもは承知をしております。
 それから、先ほどご指摘がありましたWinny等の違法コンテンツのアップロードあるいはダウンロードについては、これまでも法改正をされていて、あとはどう実効性をとるかという点ではないかと思っております。
 解決策につきましては、これは権利行使をどう強化するかという点がまずはポイントではないかと。
 次のページでございます。
 先ほど伺いましたゲームソフトの被害でございます。想定されている被害については、繰り返しをいたしませんが、これについては最後のページに、こちらでお配りになりました資料を拝借をいたしまして、@からDまで対象となりそうなところを書いてございます。 違法コンテンツをアップロードするという行為は、これは現在、公衆送信権侵害でございますので、法的には対応済み。それから、ダウンロードについてでございますが、録音・録画についての認識が、違法の認識がありながらダウンロードするということは法改正では終わっておりますけれども、ゲームソフトについてはどうかと。これは映画の著作物の側面もあろうかと思いますので、現行法が果たして適用される余地がないのかどうかという点の検討が要るのではないかと思います。 それから、回避機器の頒布については現行法で規制済み。 それから、Cでございますが、ファームウェアの頒布ということも問題になっておりますが、これも不競法で対応されていると私どもは理解をしております。 それから、現行法上対応がないのが、問題になりますDという、ユーザーが回避をした後にプレイをするということでございますが、これはやはり実効性には大いに疑問のあるところでございます。 私どもが考えます解決策、ご提案としては、まずはマジコンの被害、先ほど伺いまして、ゲームソフトの販売機会を逸失しているということでございますが、現行法の回避規制の射程というものを十分検討していただくということと、取り締まりの強化策というものをやはり考えていただくべきだというふうに思っております。 次のページでございます。 マジコンによる被害、ゲームソフトの逸失利益についてはともかくとしまして、いわゆる機器規制ということで、一般論として考えますと、私どもは強化については慎重にお願いをしたいというところでございます。 1番目、原則適法で、例外違法という考え方でぜひお願いしたいと。規制を拡大した上で、適法な機器を例外にするというアプローチではなくて、本当に保護が必要な部分にのみ規制を広げるというアプローチをぜひお願いをしたい。 それから、事業萎縮の懸念でございます。現行法でも対象機器のみ、あるいは著作権法ですと、「専ら」ということではございますけれども、これ自体が不明確な部分を含んでいるところがございます。要件緩和によって規制が拡大されますと、法的不安定性が増すというところでございます。企業では違法とならないようにするために事前確認に必要なコストであるとか、あるいは欧米、ヨーロッパ等でも訴訟に対応するためのリスク回避というものを抱えながらビジネスをせざるを得ないという状況がございます。 対応要件の拡大によりまして、テレビ、ビデオレコーダーであるとか、パソコンといったような回避を目的としないような一般的な機器が対象に解釈されてしまうようなことがないということをお願いしたいと思います。 それから、無反応機器につきましては、規制対象とされるべきでないと考えてございます。これは特定の反応を義務づけるということになりまして、メーカーの製品設計・提供の自由度が奪われ、コスト増にもなりますし、あるいは特定の技術に固定化するという悪弊も、イノベーションに対する影響というものもあろうかと思います。 3番目、先端分野の技術開発への阻害への懸念ということでございます。回避機器に相当するものを製造するという、それ自体は実は不可避でございます。研究開発の仮定ではそういうものをつくるということがあるということをご承知おきいただきたい。 4番目、保護と利用のバランスの維持。仮に保護を強化するのであれば、やはり合法利用のための機器、サービスの提供が規制対象にならないようにする。それから利用促進の政策実現も同時にお願いをしたいと思っております。 5番目、技術中立性ということで、回避に用いられる技術が適法な用途にも用い得るということにご留意をいただきたいと。先ほどのマジコンであっても、これは著作権法上適法なコンテンツの複製あるいは再生ということに利用できる点をどう配慮するかという点があろうかと思います。 次のページでございます。 資料として出されております論点表を拝見しますと、不正競争防止法における規制強化という点が論点と見られますので、それについてとりわけ意見を述べさせていただいております。 「製造」行為への規制ということでございますが、先ほどのACCSさんのご説明におきましても、日本で今後製造される可能性ということを指摘されておりますが、現状製造行為を規制しなくてはいけない被害実態というものは明らかではないのではないかと思います。それから製造行為を仮に規制いたしますと、適法な製造というものを仮に例外だというふうに設けたとしましても、これは副作用が大きいというふうに私どもは思っております。アメリカで起きている訴訟を見ましても、これは立証責任を我々が持たなくてはいけない、あるいは訴訟リスクをどう考えるか、そういう点のコスト負担というものがふえるということでございます。 客観的要件「のみ」の拡大についてのご議論があるかと思います。主としてということになりますと、これは先ほどの繰り返しになりますが、規制範囲の外延が非常に曖昧となってまいりますので、事業としてはこれは萎縮せざるを得ない。現在は機器の汎用化というものが一般的に進んでおりますので、複合的機能を搭載するのが一般的であります。広げたときにどういう影響があるか、広汎な規制とならないにしていただきたいと。 それから、マジコンの判決、あるいは違法チューナーの判決というものもございますので、仮に現在解決しなければいけないという問題があるとすれば、これは刑事罰導入ということだと思います。仮にそうだとしますと、要件というのは刑事法制に従ったやはり厳格なものであろうと思いますが、民事で「のみ」要件を拡大するというご議論をされているということについては、これは立法事実との関係で、若干疑問であるというところでございます。 3番目、主観的要件、これはまっとうなメーカーに対しても萎縮的効果を与えないようにしていただきたいという点でございます。 4番目、回避サービスの規制、これにつきましてもデータの復元・保守、あるいは保守・修理といったことのために、社会的に認められるべき正当なビジネスもあるということにご配慮をいただきたいと思います。 7ページ目、ユーザーの回避行為、アクセスコントロール手段の回避行為規制についての意見でございます。 まず実効性という点で、これは疑問がございます。 2番目、著作物を含む情報の適法な利用への配慮をしていただくという意味ですが、これは網羅的に例外を置けるのかという点がまず1つ問題になろうかと思います。そもそも現状で法規制のない情報の利用であるとか、著作権法で許容されている著作物の利用、あるいは保護期間を満了した著作物の利用、そういった情報の適法な利用というものを妨げるということはこれは非常に大きなことであろうと。そうしますと、「原則適法プラス例外違法」というアプローチから出るのはやはり問題があるのではないかというふうに思います。仮に違法著作物においてアクセスコントロール回避を規制するといたしましても、回避してみて初めて対象が著作物かどうか、あるいは保護期間があるかないか、あるいは侵害物なのかそうではないのかということがわかる。場合によっては侵害物であるかどうかもわからないと、ユーザーにとっては認識できないという場合があるかと思うんです。これは海賊版というものと侵害複製物というものは、完全にイコールではないという点もあろうと。そうしますと、回避してみて当たるか当たらないか、半ば博打と言うと失礼ですが、非常に不安定な状況になろうかと思います。そうすると、最終的にどうなるかというと、事実上回避はしないという方向にいくと。これはもともと想定された違法な範囲だけということがもたらす弊害というものがあるのではないかというふうに懸念をされるところでございます。仮に保護されるのであれば、そういった点も含めて利用促進の政策実現というものも同時に導入をお考えいただくということであろうと思います。 なお書きで書いてありますのは、欧州等の事例を見ましても、アクセスコントロール技術というのはあくまでも技術的手段の要件として書かれているということで、暗号技術等アクセスコントロール回避自体を規制しているというわけではないのではないかという点も申し添えておきます。 3番目、適正手続というものの確保ということで、これはやはりユーザーの行為を規制するということで、場合によってはデジタルデバイドを助長してしまうのではないかという点が非常に気になるところでございます。例えば、アメリカで出ているアメリカの法制に対する意見ということを見ますと、アソシエーション・オブ・アメリカ・ユニバーシティというところは、パブリックドメインであるべき事実や情報へのアクセスが脅かされるということを言われておりますし、ライブラリーアソシエーションなんかも、図書館の機能を縮小している、あるいは非侵害的利用が妨げられている、あるいはライブラリー・オブ・コングレス、議会図書館でさえ、音楽・映像作品を保存するための回避というものが必ず要るということが言われていると。それから、ワイヤレス・アライアンスというところでは、例えば携帯電話を別ネットワークに使えるような世界を考えたときには、DMCAによって粗末なサービスで高価なコストを負担せざるを得ない状況になっていると、競争阻害要因になっているという指摘もされたりしているところでございます。 最後のなお書きのところでございますが、アメリカのそういった阻害の問題という指摘がある中で、仮にこれは著作権侵害とかかわりなくアクセスコントロール回避を導入するということになりますと、これは各国に類を見ないやはり過大な規制になろうというふうに思われるわけでございます。 最後のページは、8ページ、ついでに、ということで、ACTAについてでございます。これは事務局の資料を拝見しまして、これもかかわりがあるということでございますので、述べております。 1番目、技術的保護の回避規制のうち、とりわけアクセスコントロールの規制というものがやはり国民の知る権利等にもかかわってくるということでございますので、具体的な条文が公開されないままで交渉が進むということについて非常に懸念を覚えております。これは条文を早く公開していただいて、広く意見を聞いていただくと。 それから2番目、仮にACTA交渉において、アメリカの法規制相当の条項の導入が検討されているということであれば、これは先ほどのようなアメリカ国内で指摘されている意見であるとか、その実効性の検証であるとか、アメリカで法の枠組みの中でつくられたものを各国に広めることで同様の仕組みが実現できるのかと。アメリカでは公聴会を開いて規制の悪影響を確認するとかという手続も踏んでおりますけれども、そういうことが果たして条約の中で実現できるのかということについても検証いただく必要があろうかと思います。国によってそういう配慮がない国ができてしまうと、これは非常に大きな問題であろうと思われます。 最後にまとめますと、ACTAのことはさておき、日本で原則適法というところから仮に原則違法ということに転換されるということであれば、やはり合理的で納得性のあるご説明をいただく必要があるということで、問題はこれは、申し上げているJEITAだけではなくて、やはり国民全体にかかわるということだと思いますので、だれでもわかるように広くご説明をいただいた上でお進めいただくのがいいだろうと思います。 長くなりまして申しわけございませんでした。以上でございます。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見等ございましたら、お願いいたします。
 山本委員、どうぞ。

○山本委員
 3ページ目のところなんですけれども、真ん中より少し下のところで、アクセスコントロール回避行為規制のある米国でも権利行使された例はないと聞いている。と書かれておりまして、今のご説明にもいろいろありましたように、アメリカのことについて、詳しい、情報もよく持っていらっしゃるJEITAがこういうふうに書かれています。これをパッと見たときに、ほんまかいなと思いまして、昨日、手元の古い本なんですけれども、見ましたら、そういうものであっても、3件くらい出てきましたので、これは事実ではないんじゃないでしょうか。例として、今後の議論の参考にもなると思いますので、見つけました3件だけご紹介しておきますと、これは有名な事件なんですけれども、レックスマーク、第6巡回区の判決、2004年です。プリンターカートリッジにつけられたアクセスコントロールを解除したという事案ですが、アクセスコントロールに当たるということで、一審が違法だという判断で、高裁ではアクセスコントロールに当たらないということで、責任は認められなかったという事案です。これは、アクセスコントロールに対する回避行為自体の違法性が追求されている、権利行使されている事例です。
 それから、ディレクTVの事件で、2005年に、これはイリノイの北部地区連邦地方裁判所の判決です。これは個人が、雑誌なんかに、ディレクTVにかかっているアクセスコントロールをはずす方法が出ているのを見て、自分で実際にアクセスコントロールをはずしたという悪質な事例として訴えられた事案なんですけれども、ここでもアクセスコントロール回避行為自体が違法だとされている事案です。
 それから、3番目はデビットソン・アンド・アソシエイツという事件ですが、これは第8巡回区の2005年の判決です。これは、ネットワーク上でのゲームの事案なんですけれども、ユーザーが使い勝手が悪いということで、これを使い勝手のいいようにしようということでアクセスコントロールを仲間で回避したというのが違法だというふうに認定されている事例です。というふうに探せばあると思いますので、ちょっと違うんではないかと思います。

○参考人(亀井氏)
 ご質問であれば、お答えしてもよろしいですか。
 もう1つ、チェンバレン対スカイリンクという、ガレージのドアオープンナーの事件がございました。
 先生がご指摘の事件は、確かにDMCAの規制、条項を適用した事案でございますけれども、ここに書いておりますのはDVDのリッピングについて、家庭内で行われるアクセスコントロールの回避行為を問題にした訴訟はないということを申し上げておきます。つまり法規制があっても家庭内で行われる行為に対して、いかにそれを実効あるものにするかというところがアメリカでもうまくいっていないということを申し上げたいと。そのように書いてあるというふうにご理解ください。
 今、いみじくも先生がご指摘された事案の中には、果たしてそういう訴訟を許すべきかというものも評価があるものがあるのではないかと思います。レックスマークの事件も結局原告が敗訴に終わったと理解しておりますが、訴訟を受けた側はそれに対応することが必要になるわけでございますので、事業を行うものとしてまっとうなビジネスをしておりながら、そのような訴訟に巻き込まれるということについては大きなテーマということでございます。

○山本委員
 DVDリッピングの件だと言われればそうかもしれませんけれども、家庭内ということで言うと、さっき申し上げたディレクTV、これはDVDリッピングではありませんけれども、これは家庭内での行為について問題になっている事例だと思います。
 それから、レックスマークの話で、そういうものも違法だと、適法行為であっても違法だと主張されるということが起こるというのは、ありとあらゆる規制がある場合に裁判所で適法、違法という判断がどちらかになるというのは当然ある話なので、そのことで規制はよくないとかという結論にはなかなかならないのではないかと思います。

○土肥座長
 北山委員、どうぞ。

○北山委員
 質問させていただきます。6ページの各論点への意見として、1、2、3、4と4つ挙がっていますが、そのうちの2の後段の・の部分で、判例が2つ書いてありまして、その後、だとすれば要件は厳格化の方向でなされるべきであるというのが第1点です。この厳格化の方向というのは、今の「のみ」要件でも非常に厳格だと思うんですが、さらに別の要件を付加して厳格化すべきだという意見とお聞きしていいかどうかというのが第1点です。
 それから、もう1つは、民事で「のみ」要件を拡大する議論がなされていることにつき、立法事実が存在しないという、ここのところがちょっと意味がよくわからないので、今少し詳しく説明していただけたらというのが第2点目です。よろしくお願いします。

○参考人(亀井氏)
 まず、1つ目の、だとすれば、というのは、残った議論をする必要があれば、あるという点では、これは刑事罰の導入という議論ではないかと。そうすると、「のみ」を拡大するという方向のご議論をされることが刑事罰適用における議論のイシューなんでしょうかというところを申し上げているというところでございます。
 それから、民事で、「のみ」要件を拡大する議論。まさにそこの裏返しですけれども、「のみ」要件、今、不競法で「のみ」であるというところが適当かというご議論をされていると承知しておりますけれども、そのご議論、先ほども刑事罰の導入をというふうにおっしゃっている中で、「のみ」を拡大しなければいけないという、民事上、その立法事実、被害実態、そこはあるだろうかという疑問を書かせていただきました。

○北山委員
 結局、「のみ」要件を拡大した場合には、刑事罰を付加することにつき、慎重に検討すべきではないかというご意見だということでよろしゅうございますね。

○参考人(亀井氏)
 はい。

○土肥座長
 亀井様に申し上げておりますけれども、別に不競法でということを既に絞っているわけではございません。その点は、ご承知おきいただければと思います。
 それから、今、ちょうど北山委員がご質問になったところの上のところなんですけれども、要するに、1.のところの赤字で書いてある、副作用が大きすぎる、立証責任、訴訟リスク、事業萎縮、そういう問題があるんだということをおっしゃっておられるわけですけれども、これは米国との文脈の中でおっしゃったと思いますが、米国や欧州でこういう規制がなされているということで、そこでの具体的な不具合がこの3点ということでございましょうか。

○参考人(亀井氏)
 JEITAの中で議論しますと、これによって例えば製品が全く売れなくなるということではございません。何としても製品を売るために何をするか。そうするとやはり法に照らして、どの範囲なら許されるかというリスク分析をする。それが要件が広がってまいります、あるいは製造行為そのものが問題になりますと果たしてその製造がいいのかという判断をしなければいけない。つくるものがターゲットになっているかどうかという判断をしなければいけないということで、主にこの3点。事業萎縮については、その前のページで申し上げておりますけれども、規制内容によっては、こういった3点についてやはりコスト負担というんでしょうか、負担が重くなるというふうに考えているということでございます。

○土肥座長
 今のお答えは、具体の事実というよりも、そういうことが想定されるという、そういうお答えでしょうか。

○参考人(亀井氏)
 ええ、実際にアメリカでその研究開発をする、製造行為をする場合には、そこにコスト負担をしているというところがあります。日本でどうなるかというのは想定の範囲でしかないですけれども。

○土肥座長
 アメリカのコスト負担としては、大体どのくらいのものを算定されておられますか。

○参考人(亀井氏)
 デジタルに幾らという数字は持ってはおりませんが、例えば弁護士に鑑定書を書いてもらうのに1時間4万円、5万円、6万円の弁護士コストをかけなければいけないでの負担になろうかと思います。それが、総和として幾らかという数字を持っているわけではございません。

○土肥座長
 そういたしますと、そういう点でのコスト負担ということをお考えになって、例えば米国あたりで、ロビー活動をお勧めになっておられるという、そういう趣旨でしょうか。

○参考人(亀井氏)
 アメリカは既に法律ができております。その範囲でやるべきことをやるということです。そこの要件を緩和する、引き下げる、あるいは規制をはずせというようなロビーをしているわけではないと思います。私自身は知りません。

○土肥座長
 そうすると、米国のもとでもそういう一定のコストのもとに業務は適正に行われていると、そういう理解でよろしいでしょうか。

○参考人(亀井氏)
 それはそのように……はい。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 北川委員。

○北川委員
 おっしゃることは大変よくわかりまして、立証責任、訴訟リスク、事業萎縮というのは現実にこれはものすごくあると思います。しかしながら、情報通信産業の成り立ちを考えてみますと、確かにJEITAさんがやっておられるような端末、ネットワークレイヤー、プラットホームレイヤーの上にコンテンツ・アプリケーションレイヤーがあって、それが権者となって産業全体が活性化していく、活性化させなければならないというミッションがあるわけです。その中で、今、直前にお話があったように、コンテンツ・アプリケーションレイヤーさんが非常にご苦労されている。被害実態は明らかではないです。今の話を聞いて、実態ありますかと言ったら、法廷に出たら、これは実際に、ウィニー事件がそうだったんですけれども、認められないような被害実態しかわかってないんです。何となくしか。
 ところが、被害実態を明らかにしようとするだけで、200万件以上の事案について、1つ1つ目視で現実としては確認してやっているんです。そういうことがあって、初めてこういう数字が1つ出てくる。1日だけ通って、それが実態なんです。ものすごくたくさんのコストがいろいろなことにかかっていて、訴訟コストというのは最も皆さんが回避したいと思っているリスクなんです。ですから、著作権者なんかも1人1人、もし著作権侵害をしている人はわかりませんけれども、例えばP2Pですと、わかりませんけれども、わかったからといって訴訟したいわけでもないですね。
 そういった中で、このリスクを産業全体として、提言していかなければならないミッションの中で、レイヤーごとに、「いや、私はリスクを負いたくない」という意見が出てくるのは私は当然だと思いますが、その中で、それを認めた上で、確かにそのとおりだということを認めた上で、この問題を解決していくためには、その組織、プラットホームレイヤー、端末レイヤーを担うJEITAさんとしては、どういった歩み寄りの方向といいますか、打開の方向性があるとお考えでしょうか。

○参考人(亀井氏)
 難しいご質問ですけれども、直感的に思いますのは、何か法規制ができて、それに対応するコスト、後ろ向きのコストだと思うんですけれども、そういうことを社会全体を負担するという点について、それはあろうかと思います。むしろコストをかけるなら何か積極的なところでコストをかけると。端末プラットホームとおっしゃいましたが、私どもの業界の中にはもっとハイレベルまでやっているところまでありまして、そういうJEITAの立場としては、イノベーションを促進して、技術で解決するという部分があるはずだし、それにコストをかけていくほうが、前向きになるんではないのかと思う次第です。
 ちょっと非常に難しいご質問で、お答えになってないかもしれません。

○土肥座長
 それでは、平野委員、どうぞ。

○平野委員
 平野でございます。資料の7ページ目で、最後の3のデュープロセスのところの2つ目の・の判例というのはと、もうちょっと聞きたいんですけれども。どこの巡回区で、名前は何事件で、どんな感じだったのか。

○参考人(亀井氏)
 これは先ほどお話がありました、フェデラル・サーキットコートですが、私の記憶では、先ほどお話のあった、レックスマーク、プリンターの事件だと思います。 <WG終了後、「レックスマーク、プリンターの事件」ではなく、チェンバレン対スカイリンク事件であることを確認しましたので(平野委員にはご連絡済み)、この発言では事実とは異なることを述べています。>

○土肥座長
 それでは、時間の関係もございますので、山本委員で最後ということでよろしゅうございますか。
 では、山本委員。

○山本委員
 簡単な質問なんですけれども、5ページ目のところで、機器規制の強化を慎重にというところで、幾つか問題点をご指摘いただいているんですが、イメージとして、この規制のあり方として、1つのモデルは、アメリカのDMCAの規制のあり方があると思います。
 JEITAの加盟各社は、アメリカでの事業活動もいろいろなさっていて、この辺のご経験がおありだと思うんですが、ここでご指摘いただいているような問題をDMCAのもとで、こういうところが具体的に問題になったとか、そういうのがおありでしたら、ちょっとご紹介いただけますか。

○参考人(亀井氏)
 先生のご質問、先ほど土肥先生、あるいはその前にご質問いただいたものと重なる部分ではないかと思いますが、実際にそのJEITA各社が訴訟を受けたということがDMCAのもとであるわけではないと承知しております。ただ、アメリカの法の枠組みの中で与えられている、DMCAとおっしゃいましたけれども、その中では、アメリカなりの価値観でいろいろなセーフガードというか、そういうものが置かれていると思いますけれども、それが仮にそっくり日本に輸入されれば、それはアメリカと同じ環境になると言えるかもしれませんが、日本の枠組みの中で、アクセスコントロール回避機器のしかも機器規制の部分だけを例えば持ち込むということになりますと、相当それは事情が違うのではないかという気もいたします。

○土肥座長
 最後ですからね。

○山本委員
 今、質問の仕方が悪かったのかもしれませんが、ここでご指摘の件、例えば事業の萎縮の懸念とかという法的安定性が増大するであるとか、パソコン等の回避を目的としない機器が規制対象とされてしまう恐れがあるとか、そういうご指摘をいただいているんですが、そういう具体的な懸念、訴えられたとかということは別にしまして、DMCAのもとでそういう懸念を実際に持っていらっしゃるのかという、YesかNoかだけでも構わないんですけれども。

○参考人(亀井氏)
 DMCAに対して持っているかと。

○山本委員
 のもとでの事業……。

○参考人(亀井氏)
 DMCAのもとで、個々に見たときに、YesかNoかと言うと、Yes or No、そういうものもあるし、そうじゃないものもあるということだと思います。
 それから、日本のメーカーでございますので、アメリカでそれは研究開発をする人もいますし、製造販売している人もいますけれども、必ずしもそれだけではJEITAはございませんので、多くはやはりドメスティックに事業展開している点もありますので、そういう点で言ってもこれが日本へ持ってこられるとやはり問題だと申し上げて、Yes or Noで答えろと言われれば、YesでありNoでありという部分があるとしかお答えできないと思います。それぞれについてです。

○土肥座長
 大変ありがとうございました。
 本日、いただいたご意見、非常に参考になりまして、今後の検討にも大いに活用させていただきたいと存じております。
 特に、例外規定の重要さ、そういったことについては、情報へのアクセスの自由も含めて十分に委員一同認識しながら検討を続けてまいりたいと思っています。
 それでは、長谷川様、亀井様、榊原様、坪内様、本日はどうもありがとうございました。
 それでは、主な論点について議論を行いたいと思います。まず、北川委員から資料が提出されておりますので、簡単に説明をお願いしたいと存じます。

○北川委員
 手短に説明させていただきたいと思います。
 これは割とこの委員会の位置づけというものは私自身がはっきりわかっていないということもありまして、現在までの討論においては、私はこうではないかということを一応ここに書かせていただいて、意見書は1、2まで出しておりますが、3、4というのがありまして、それが具体的な提案になっておりますので、もしそれが必要ないのであれば、3、4も出しませんし、3、4を出すというのであれば出したいというふうに思います。
 この委員会は、親委員会、2つありまして、トップは総理大臣であって、内閣府、日本の政権交代というキーワードのもと、発表をこの6月か7月にしなければいけないと。それで危急な課題として成長戦略の1つの重要なファクターとして情報通信産業、その中のキーとなるドメインであるコンテンツ、それからコンテンツ流通の分野です。
 そのことは、非常によく知られたことでありますし、情報通信産業は特別です。産業成長戦略をつくろうとしたら、情報通信産業なしには考えられませんし、その牽引となっているのはコンテンツ・アプリケーションレイヤーであるということが、例えば非常にわかりやすいもので、ここに事例を出しましたが、2009年の情報通信白書で明らかにされており、これは詳細にわたって白書は公開されておりますので確認することができます。
 その中で、当委員会は何をやるべきかと言いますと、私の理解では、やはり政務官の方が来られまして、政府は何をすべきか、要するにステイクホルダーいますね、国民はもちろんそうですし、ここに来られている著作権者の方々、それからコンテンツプロバイダー、コンテンツを流通させる方、これは全く別です。立場は全く別です。はっきり言えば利益は相反します。それから、インターネットサービスプロバイダーの方々、あるいは納税者としての国民、法人、企業、マーケット母体としてのユーザー、コンシューマーといった方々に対して、どういったビジョンを提示し、どういったメリットを明確に出せるかということがここのとりもなおさずこの親会があり、さらにこの委員会がある。ここは特にコンテンツの著作権侵害、ネット上における侵害ということをテーマにしておりますが、そういうことかと思います。
 ミッションとしまして、私が考えておりますのは、特に、今日、話題になっているTRM系 もそうなんですが、価格なんです。価格とユーザビリティというのはもう絶対重要でありまして、これがない限り、いろいろな法律をつくろうと何をしようと、成長戦略にはつながりません。絶対適正な価格で、これが問題です。
 ですから、今もありましたけれども、例えば、立証責任とか、損害を立証するための権利はあるんですけれども、権利はあるんです、確かに、著作権侵害公衆送信権、配信可能化権を侵害しているという法律はあるんですが、それを実施するためのコストまでかなえられて初めて法律が有効にワークするわけであって、それがない限りは、やはり実態としてはなかなか成長戦略に結びついていかない。私は、国民に対して、適正な価格でコンテンツが作成され、提供され、流通していくこと。コンテンツ産業のある種のサステナビリティ、今実際に、コンテンツクリエーターたちは、非常に大きな危機に直面していると私は思っております。
 安心できる情報通信環境の提供、これはコンテンツと直で連動しておりまして、何回も言っておりますが、P2Pが違法、コンテンツの配信で使っている帯域が全帯域の6割から、時間帯によっては8割、9割になっていることが知られています。これは、総合セキュリティ会議報告書に明示されております。
 実際には、コンテンツと言っていますが、実は、情報通信環境の提供、しかも安心できる情報通信環境がこれは棄損されているんです。こんな国は世界中にないです。
 参考2を見てください。これは、3つだけ出しましたが、まず技術基盤、情報基盤はもう最高です。これは偏差値です。こういうふうに偏差値を書く人はあまりいないと思いますが、総務省がこのように書かれております。このまま出しておりますが、63.6、もう最高レベルです。大学の偏差値をちょっと思い浮かべてもらえればわかるんですが、63.6です。
 ところが、一番下を見てください。情報通信の「安心」に関する国際ランキング、総務省は信頼できる情報に基づいて政策しておりますが、34.3、これは皆さん34.3の偏差値のあるものは思い浮かばないじゃないでしょうか。いろいろなものを思い浮かべていただいて。ですから、最低と最高が日本では同居している。しかもその中間では、利活用に関しても大体50が偏差値ですから平均です。平均以下である。
 ポテンシャルは世界で最高なのに、利活用は平均以下。情報通信の「安心」、環境の形成に関しては、最低、最悪なんです。これが日本の実態です。これはもう客観的に総務省が総力をあげて出してきたデータとなっております。
 その中で、情報通信産業の中でも、この成長戦略を考えるのであれば、成長しているところは2つしかありません。今あった端末レイヤーとネットワークレイヤーというのは、最後から1つ前のページになりますが、ほぼ横ばいです。成長しているのは、いわゆるプラットホームレイヤーと呼ばれているものと、それからコンテンツ・アプリケーションレイヤーと呼ばれているものです。内訳はその中に書いてありますが、ということなので、成長戦略を考えましょうといったときに、情報通信産業は極めて重要です。これはGDPに対する、あるいは雇用に対する、あるいは産業の活性化に対する効用というのは他の事業は圧倒的、数倍から10倍です。これもきちんとデータがありますが、ものすごい産業活性化、波及能力、波及効果というものを持っています。
 その中でも、権者はコンテンツ・アプリケーションレイヤーのものになっている。しかも、それがプラットホームというのは、ちょっと過小評価されていますが、かなりプラットホーム、特に、これからいわゆるネット家電とか、それから今言うところのいろいろなものがありますね、ゲーム機とかiフォンみたいなもの、第4世代、スマートフォンみたいなものとか全部ここに入ってきますので、ここは非常に伸びていくところです。
 そこの権者が結局コンテンツ・アプリケーションレイヤーであるというので、いわゆる成長戦略の中で、ここの持っている意義というのは、非常に正しくて、こここそがコアなんです。ここを何とかしなければ情報通信の利活用、それから情報通信の安心に関する国際ランキング、こういうものをみたときに、世界最高のポテンシャル、可能性を持っている、それに応じてビジョンはつくられているわけです。
 資材立国、コンテンツ立国、情報通信立国ジャパン、確かにポテンシャルは世界一なんです。しかしながら、実際の利活用は、平均以下である。情報通信の安心に関しては最低であるという中で、どうすればいいのかということをミッションとして当委員会は、出していくべきではないかというふうに私は思っているわけです。
 時間がちょっとかかってしまいそうなので、意見書2はちょっと遠慮しておいたほうがよろしいですか。

○土肥座長
 ぜひお聞かせいただきたいと思いますけれども。

○北川委員
 時間が。私は、与えられたのは一応5分と言われておりますので、あまり時間をとってしまうのもしのびないので、もしあれでしたらまた次回以降とか。

○土肥座長
 時間がかかりそうですか。

○北川委員
 言われた時間でやめます。

○土肥座長
 では、それでお願いします。

○北川委員
 では、3分でよろしいでしょうか。
 ものすごく重要なことが起こっていまして、2004年度に起こって、これはコンシューマー・ジェネレイテッド・メディアと私は繰り返し申し上げておりますが、コンシューマーがつくったものが、経済効果を出すということが歴史上、2004年に初めて起こったんです。そのことを電通総研が認めております。
 これも詳しく話しませんが、AIDMAというのが情報認知プロセスだったんです。要するに、AISAS認知プロセスというのが情報のエッセンスで、もし成長戦略に反映させようとすれば、それがAISASというものに変わってしまった。AISASの最後のSが重要でありまして、これがいわゆる認知媒体としてのシェアということで、下にも書いてありますが、この潮流が出てきたので、コンテンツの位置づけが全く変わってしまったんです。それまではコンテンツありきでビジネスモデルを組み立てる。コンテンツがあるから初めて広告ができる。テレビ番組ができる。新聞の枠ができるということで、いわゆる4媒体というものがあって、コンテンツありきで、全てが成り立っていたものが、コンテンツを持たない事業者こそが一般化してきて非常に成功している。Google、Apple、Amazon、楽天、Yahoo、YouTube、ニコニコ動画、全て自分でコンテンツは一切つくっておりません。そういう人たちが大成功を収めています。
 価値ある情報はどこにあるのか。例えば、日本に800万人とか1,200万人いますブロガーの中で非常に影響力の高いαブロガーたち、再重要情報資産としてのカスタマーレビュー、これは、Amazonとか楽天というのはこれがうちの情報資産です、最高のものだと明言しています。
 それから、オークションサイトにおける信頼度情報、オークションというのは今、1日で2,000万件を超える日もありますが、ものすごい量の売買が成立しております。それの信頼度情報。これもカスタマーがあの人は信頼できる、できないという情報を与えています。
 それから、マーケティング情報としての個人情報。今、DRMの話が出ていますが、DRMも個人のプロファイに応じたDRMをかける。この人にはかけるけれども、この人にはかけない。もう出すものもないです。このアーティストはこれでかける、このアーティストはかけないということが当たり前に行われ始めています。そうしますと、いわゆるシグナルデータとかメタデータと呼ばれていますが、そういう情報材が明らかに出現している。
 そのもののほうが、今まで言われたコンテンツ、著作権によって守られているものより同等、あるいはそれ以上の価値を持つというのが今の実態であります。
 これで、最後にさせてください。
 なので、結構法律はちゃんとできているんです。いろいろな法律ができています。ところが、地図をコントロールする基本プレヤーというのは、いわゆるリーガルセクション、行政セクションもそうだと思いますが、それからマーケットメカニズムがあって、これとオートノミーがある。今は、いろいろな方々のヒアリングを聞いていて、明らかになってきたと思うんですが、各事業グループたちは、それぞれの利害に基づいて話をします。それに基づいてコーポレートオートノミーが発動しています。マーケットメカニズムはそういうところで独立に発動していますし、リーガルセクションはリーガルセクションでしっかりしているというのは、これは現状です。
 ところが、この3つでは、コントロールできないんです。例えば、著作権者とそれからDRM関係のアクセスコントロール回避の話をした方がいましたが、真っ向からこれは対立しています。
 一方は、「取り締まってくれ」、「いや、とんでもない」、ということになってしまうので、それを超えた調整機関が絶対に必要だというのが、私の問題意識のスタート地点です。
 私が実際、中川さんと一緒にやっているCIFFというところは、P2Pに関して、それを絶対やりきろうねという決意を持って進めております。
 以上が大体私の意見書2までの話で、これ以上のリスクは実は存在していますが、これはちょっとまた大きな話になりますので、別の機会にということで、時間をちょうだいして、すみませんでした。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、もし必要であれば、北川委員のご意見に質問等の時間を設けたいと思いますけれども、差し迫っておりますので、続いて事務局から本日の再整理された論点というものが出ておりますので、それについてご説明をお願いいたします。

○奈良参事官
 それでは、資料4とそれから5をご覧いただきたいと思います。
 まず、資料4のほうでございます。
 特に、先生方にご議論いただきたい点につきまして、改めて整理させていただいたものでございます。時間の都合とそれから事前に先生方にはお配りしてございますので、ごく簡単にご説明させていただきます。
 
 まず、1点目のプロバイダの責任のあり方のところでございますけれども、特にご議論いただきたい点といたしまして、プロバイダによる侵害対策措置の導入という観点でございますけれども、これにつきましては、侵害対策措置の策定、それから実施を行っていなければプロバイダにも損害賠償責任が発生し得るということを明確化した上で、プロバイダと権利者間の協働を促すような仕組みを導入してはどうかという点でございます。
 2ページ目にまいりまして、その侵害対策訴訟の内容ということでございますけれども、あくまでその他の企業で実施されているということで、その企業にとって妥当であると認められるものが対象になるというふうに考えられますけれども、ご留意いただきたい点は、サービスの利用停止ということが例として挙げられておりましたけれども、これにつきまして、軽微なものを即座に停止するということではなくて、あくまで規定を整備いたしまして、最後の手段といたしまして、侵害行為を繰り返しすような悪質な利用者に対して停止を求めるということが考えられるのではないかということ。
 それから、接続プロバイダの場合についても、事前に監視が求められるということではないということについては、留意が必要かというふうに思っております。この点について、ご意見いただきたいと思っております。
 3ページにまいりまして、迅速な削除の観点でございます。
 これは、一部には時間がかかって削除される、あるいは7日間待たなければリスクがあるという問題でありますとか、それから国際的な観点から言うと、外国企業から見ると非常にわかりにくいというようなことがございますので、より規定において迅速な削除ということを明確にしたほうが望ましいということが言えないかという観点でご議論いただきたいと思っております。
 それから、4ページ目でございますけれども、発信者情報開示の観点でございますけれども、これは特に警告を発するということができないかということでございまして、例えば、IPアドレス等について、その開示に当たっての要件を緩やかにするようなことが考えられないかという点でございます。
 それから、5ページ目にまいりまして、大きな2つ目といたしまして、アクセスコントロール回避規制のあり方について、でございますけれども、特にご議論いただきたい点といたしまして、回避行為を規制する範囲についてということでございますけれども、一定の範囲で回避行為を規制するということの必要性は認められたと思いますけれども、しかしながら刑事罰の導入については慎重に検討すべきということの意見がございますので、刑事罰を導入しないということを前提として考えた場合、どのような範囲の行為を規制するかということについて、ご意見いただければというふうに思います。
 その中で、特に保護する対象といたしまして、自主的に複製権を保護するもの、あるいはアクセスコントロール回避行為全般というものを対象にしていくのかという点について、ご議論いただきたいというふうに思っております。
 また、その際の法的構成につきまして、アクセス権という広範な権利を認めることについては、慎重な検討が必要という意見がございましたけれども、アクセスそのものがなくて、アクセスコントロールを回避する行為のみを違法とするような法的構成、その際に、6ページにまいりまして、支分権とする方法、あるいはみなし侵害として回避行為を禁止する方法などが考えられますけれども、この点についてご意見いただきたいということでございます。
 また、仮に行為を規制するといった場合に、適用除外規定として、正当な著作物の利用等を阻害しないということで、どのような適用除外規定が考えられるかということについてご意見をいただければと思っております。
 それから、最後、規制対象の機器の範囲の拡大ということについてご意見をいただきたいと思っております。いわゆる「のみ」要件の拡大という観点でございます。
 特に、問題となる事例といたしまして、意図的にそのほかの機能を付して販売するケース、あるいは販売される機器そのものには回避機能はないけれども、購入後にダウンロードするようなもの、さらには「無反応機器」のようなものがあるわけで、意図的に「反応しない」ということを名目に販売しているような「無反応機器」があるわけでございますけれども、こういったものを規制の対象とする際に、どういうふうなことが考えられるのかということで、8ページにまいりまして、法的構成に目指しまして、「のみ」よりもある程度広い文言にするということ、あるいは汎用機器を除くということ、あるいは、主観的要件を付加するという方法が考えられるのではないかというふうに考えますけれども、これらについてご意見をいただきたいと思っております。
 駆け足で恐縮ですけれども、資料5のほうでは、前回もご説明いたしましたけれども、プロバイダごとに、イメージとしてどのようなことが求められるのかということでございますけれども、ここでご留意いただきたいのは、あくまでサービス内容に応じて求められるものというものが変わってくるということと、それから一般的な事前監視義務を求めるものではないということについては、ご留意いただければというふうに思っております。
 それから、2ページ目につきましては、前回いろいろな侵害対策訴訟の中で、フィンガープリントの例をご紹介いたしましたけれども、また具体的にどういうケースで、どのくらいかかっているということも付加させていただきましたので、また後ほどご覧いただきたいと思いますけれども、フィンガープリント以外にも、3ページのようないろいろなやり方があるということで、要は、申し上げたいことは、サービスに応じた適切な手段を導入していくということが望ましいのではないかという点でございます。
 それから、4ページ目でございますけれども、発信者情報の開示の点を見ますと、現在、発信者情報ということで、総務省で定めているのは、以下の5点でございますけれども、これについて、特に動画系サイトの場合、警告するためにIPアドレス、タイムスタンプというものがなければそれはできないということがございますので、これを緩和できないかという観点。それから、仮に開示しなくても、警告メールを転送するということが考えられないかということについて、ご意見をいただきたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○土肥座長
 ありがとうございました。
 それでは、本日の議論に入りたいと思っておりますけれども、ただいまの説明にございましたように、まずプロバイダ責任のあり方から入るということでございます。実は、前回、プロ責法のあり方に関して、議論いただいたんですけれども、迅速な削除と発信者情報開示については、ご意見を伺っておりません。前回、山本委員からご意見を伺っているところでございますけれども、本日、さらに何か補足するような、発信者情報の開示に関する点について、補足するようなことがございましたら、最初にお願いできればと思います。

○山本委員
 補足するようなことは今の時点ではありません。もし、ご質問等がありましたらお答えしたいと思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。それでは、ご自由にご発言いただければと思います。
 山本委員。

○山本委員
 今後の進め方について、ちょっとご質問させていただきたいと思います。次回、中間まとめの案が出てきて議論するということだと思うんですが、そこで質問ですが、この資料4のこの論点の再整理というものをブラッシュアップして、中間まとめ案をつくられる予定なんでしょうかという質問です。
 と言いますのは、大変申し訳ないですけれども、読み始めておりまして、後ろのほうは割と具体的な問題でわかりやすいんですけれども、この1ページ目のところから、私は引っかかって、何が言いたいのかはっきりよくわかりませんでした。と言いますのは、例えば最初の

○のところで、権利者から削除通知があった際に、迅速に著作権侵害コンテンツを削除したとしてもプロバイダが結果回避責任を果たしていない場合は当然損害賠償責任が発生する可能性があることが確認された。これは、過失責任の問題として、例えば権利者から通知が来なくても、その前に、プロバイダの側が知っていれば、それを削除しなかったということについて過失責任を負うというのは当然のことですし、ここでわざわざ確認するような内容でもないように思います。
 それから、その一方で、プロバイダの種類やサービスの内容に応じて、その責任の内容は異なり、一律に義務を課すことは難しいとの意見があった。これも過失責任としての結果回復の注意義務というのは、これは一律に課されていて、それに基づく具体的などういう措置をとるべきなのかというのは、個々の状況において異なるという問題だと思いますので、これも過失責任だという点から見たら、申し訳ないですけれども、当たり前のことで、あまりここで書くような内容じゃないなと思います。ここで何を議論したいのか、何を論点にしたいのか、もう少し取り上げたいテーマ、そういうものを明確にしないと、ちょっとまとめにならないのではないか。
 例えば、これは事前の監視義務があるのかとか、それをあえて課すべきなのか。そういう議論だったら、ここで書く意味があると思うんですが、過失責任の内容について、別の書き方をするのはあまり意味がないのではと思います。

○土肥座長
 ご質問ですので、お願いいたします。

○奈良参事官
 おっしゃるとおり最初の

○につきましては、これまで意見があった点につきましては整理されたということでございまして、これまでの経緯ということで触れさせていただきましたけれども、要はここで申し上げたいことは、先ほどの繰り返しになりますけれども、まず損害賠償責任が発生し得るということを明確化した上でプロバイダと権利者間の協働を促すような、それで侵害対策措置を講じるような、そういう仕組みが講じられないかということを今回ここで導入を打ち出してはどうかということでご議論いただきたいという点でございます。
 最後のまとめにつきましては、これまでの経緯等につきましては、簡潔にして、何かしたいのかということについては、できるだけわかるようにしたいと思っております。

○土肥座長
 平野委員、どうぞ。

○平野委員
 私は、山本先生と全く同意見でございまして、最初のこのパラグラフは結果回避責任を果たしてない場合は、損害賠償責任が発生する可能性。ある意味、当たり前、トートロジカルで、むしろ結果回避義務はどういう場合にあるのか。一般不法行為は単に結果回避可能性があるときにそれを怠ったら回避義務違反で、それが過失でと、こんな理論になるんですけれども、それはわかりきった話なので、そうではなくて、この文脈において、しかもその次を読みますと、プロバイダごとに当然違うということですから、接続プロバイダはどこまでの責任があるやなしや、レイヤーのもっとコンテンツに近いところはあるやなしや、というもう少し具体的なところのお話をしたほうがいいのではないかというのが1点です。まさにそのとおりです。
 2点目で、例えば間接侵害の話をおそらくしているように思えるので、間接侵害を明確化するときには、それはプロ責法でやるのがいいのか、著作権法でやるべきなのか、これは前回の資料に入っていたんですね。著作権法で例えばここまでは書いていませんでしたが、コピー屋さんだとかカラオケ屋さんとかいっぱいありますねと。間接侵害者が。こういうのを全部同じようにプロバイダというか、コンテンツに近いところのレイヤー、一緒にこの際、議論すべきという問題もあるのではないかというのが2点目です。
 3点目としまして、やはりプロ責法というのは、あらゆる権利を総括して法律化しています。ところがここで今議論しているのは著作権の問題です。ですから、それをプロ責法でやるべきだという議論をするときには当然他の名誉権、プライバシー権等々の他の権利者を保護する上でも上位レイヤーのプロバイダはこういうことをやらなければいけないとか、そういう議論をつめなければいけない。それをきちんと論点として挙げていただいて、その上で、議論して、その上で初めて結論が出てくる。こういう感じになってくると思います。
 ほかにもいろいろございますが、とりあえず私の感想です。

○土肥座長
 どこまで、最終的な結論を出していくのかという問題は当然あると思うんですけれども、我々としては一定の方向性を示すことができればいいのではないかと思います。
 ですから、しかも今おっしゃったような間接侵害のような問題、著作権、あれは別のところで議論しているわけでありますので、そちらのほうで議論していただければいいと思います。ここでは、この紙で言いますと、2つ目のところの○です。つまりプロ責法上、結果回避義務を一般的監視義務とは別に、そういうものは一切おかない、そういうものを考えるわけではなくて、現在あるプロ責法上、プロバイダの結果回避義務というもの内容として、一定の義務があるということを認め、具体的な内容に関しては、ここにあるガイドライン等、そういうソフトロー的な仕組み、具体的な判断はそちらのほうで考えるという、方向性を提案してあるんだと思います。
 だから、その方向性について、了解ができるかどうか。
 平野委員、どうぞ。

○平野委員
 そうすると、間接的にやるのか一般的にやるのか、これは一般不法行為法であります。だから、わざわざここで法律云々というのを論じる必要はないのではないか。そうすると何が必要か。これは前から申し上げておりますように、ソフトローが欠けているのではないか。すなわち一般不法行為法で言うところの結果回避義務が何かというところが曖昧なので、これをガイドライン等々つくって、もし裁判になったときには裁判官がわかりやすく、しかも行為者も行為規範としてわかりやすいものをつくるべきではないかということになっていくような気が私はしております。

○土肥座長
 ありがとうございます。
 森田委員、どうぞ。

○森田委員
 この事務局のペーパーを法律家的な目で見ると、それぞれの法概念が非常に曖昧に使われていて、そのことによって一定の方向に導こうとしているというところが基本的な問題です。特に気になりますのは、「結果回避責任」という言葉であります。不法行為上、「結果回避責任」が一般的にあるという考え方は存在しないわけです。結果回避義務という概念はありますが、結果回避義務というのは、それを基礎付けるような特定の状況があって初めて基礎付けられるものであって、そのような前提状況なくして、プロバイダにはおよそ「結果回避責任」があるということが不法行為法の考え方から出てくるかというと出てこないわけです。特定の状況の下でという場合の、特定の状況というのが何かということがここでの問題であるはずのに、そこを飛ばしてしまって、このペーパーでは、一般的にプロバイダには「結果回避責任」があって、それを果たしていない場合には、当然に損害賠償責任が発生する可能性があることが確認されたと書いてあるわけですが、これはどう考えても理屈としておかしいわけです。そのようなプロバイダの「結果回避責任」を前提として議論が次に進んでいくというところがやはり問題なわけです。
 前回から議論が出ていますように、ホスティングサービスプロバイダは情報内容に対して中立的な立場にあるときには不法行為責任を負わないのが原則であって、あくまでも権利侵害を行っているのは発信者であるわけです。しかし、それに対して、ホスティングサービスプロバイダに一定の措置を講ずるべき法的な義務が発生するとすれば、それはどういう状況の下で発生するのか。それはまたどういう措置が要請されるのかということを検討すべきなのであって、プロバイダが一律に注意喚起義務を負ったり、一律に利用停止義務を負ったりすることは不法行為法の観点から出てこないわけですが、このペーパーにはそれがあるかのように書いてある、そこが論理のごまかしだと思います。そこのごまかした部分をごまかさずに明確にした上で議論をしないと議論は一歩も先に進まないのではないかということを前回から申し上げているつもりであります。
 もう1つは、DMCA、つまりアメリカ法的な発想の下で考える場合の提案と日本法の枠組みで考える場合とは違うということを、準備会合から何度も申し上げたと思いますが、DMCAでは、厳格責任の下で、プロバイダは一定の要件を満たせば完全に免責されるとしたわけですから、それにもかかわらずプロバイダが責任を負う余地があるということを明示的に規定しないといけない、つまり、完全な免責の例外に当たる場合について規定しないとプロバイダは免責されておよそ責任を問えないということになっているわけです。これに対して日本のプロ責法では、そもそもプロバイダを免責するというような規定の構造になっていなくて、ホスティングサービスを提供している限りにおいては、プロバイダには情報の流通について事前監視義務はなく、プロ責法が定める範囲においてしか不法行為責任を負わないと規定しているだけです。しかし、単なるホスティングサービスを超えてそれ以外のことを行っている。例えば、違法行為を助長するようなことがあっても一切不法行為責任を負わないことになるかというと、それを免責するようなことはしていないわけであります。つまり、間接侵害にあたる場合についても、プロバイダを免責しているかといえば、そもそも免責はしていないわけであります。それが明確でないと言われますが、どの部分が明確でないということになるのかがよく分かりません。
 そのことに関連して、ペーパーの2ページには、プロバイダに一般的な事前監視を求めるものではないけれども、その懸念を払拭する必要があるのであれば、その旨を確認する規定を入れることが必要だと書かれています。しかし、プロ責法は何度も申し上げますように、プロバイダには一般的な事前監視義務はないことを規定した法律であって、それが法律上明確でないとしたら、プロ責法の趣旨が規定の上で十分に表されていないということで、それ自体ができ損ないの法律だと言っているようなものです。そういう前提で確認するというのは、改めて何を確認するのか、いったいどういう規定を置くのですか、ということであります。
 それから、2の「迅速な削除」についてですが、前回の権利者団体のヒアリングにおいてもその点は満足しているというご説明でしたので、なぜその点を改めて検討することが要請されるかということがよく分からないところであります。 いずれの点についても、著作権侵害対策として何かしなくてはいけないということを打ち出そうとするあまり、法律のロジックに従った基本的な検討の手順を飛ばして、一定の結論に結びつけようとするものであるために、このペーパーは読んでいて分からなってくるわけです。プロバイダが侵害対策措置を講ずることが法的な義務として基礎づけられるとすれば、それはいったいどういう場合であるのか、それは現行のプロ責法の下でもそういう責任を問う余地が本当にないのかというとそれはありうるのではないか。その点の法律論を詰めるということと、それとは別に、プロバイダの法的な義務として課されるものではないけれども、さまざまな関係するプレーヤーが協力して著作権侵害を対処していくことが重要であって、それを支援するための枠組みとしてはどういうものが考えられるのか。この2つ観点をきちっと区別した上で議論すべきではないかと思います。

○土肥座長
 ほかにご意見はございますか。
 前田委員、お願いします。

○前田委員
 プロバイダにもその実質的なサービスの内容としてはいろいろなものがあって、サービスごとに応じてやるべきことを検討していくべきだという点については、ほぼ意見の一致を見ているのではないかと思います。
 サービスの内容に見合ったやるべきことはどういうことかということを先ほど平野先生からお話がありましたソフトロー的に議論をしていき、そのやるべきことをやっていないプロバイダについては何らかの責任が発生するのは当然のことになるのではないかと私は思います。
 森田先生からは、それはボランタリーなベースで行う可能性もあるのではないかというお話かと思うのですが、これは私の誤解かもしれませんが、でも一定のやるべきことがサービス内容ごとにソフトロー的に作っていけるものであれば、やるべきことをやらなかった人には法的な損害賠償責任が発生し得るとすることは何らかおかしなことではないのではないかと思います。

○土肥座長
 ありがとうございます。では平野委員。

○平野委員
 前田委員がおっしゃるとおり、私のことをリファーしていただいたところで、例えば医療過誤の場合を考えると、医療過誤があったかないかは裁判官は、判例などを読むと医療標準というものを探しだして、それを満たしたかどうかということで結果回避義務というか注意義務違反かどうか、こういうふうに判断します。
 同じように例えばガイドラインというものをこれから策定し、多くのプロバイダさんがそれを遵守している現実があり、そのときにアウトロー的なプロバイダ、それを遵守していないという事例が出てくれば、裁判官は当然これは医療標準のようにやるべき注意義務というか、結果回避義務というのは存在している。それに違反している。だから過失責任、損害賠償あり、こういう論理になってくると思います。そういう意味でガイドライン等々を作るというのは、実質的にデファクトスタンダードになっています。しかもこれは行為規範のみならず裁判規範にもなっている。そういう意味ではこれを構築していくことが必要ではないか。こういうふうに私は考えております。

○土肥座長
 ありがとうございます。ほかにご意見は。
 山本委員。

○山本委員
 どういう措置をとるのかというのを、ここでの議論としてはガイドラインというような法律外で決めていくというやり方も既に指摘されているところです。法律上、過失責任の確認規定にはなりますが、大した費用もかからなくて簡単に侵害を排除できるようなものがあれば、そういうものを採用する義務がありますよという、過失責任の確認規定を置くというのもあり得るのではないか。
 なぜかというと、ガイドラインということになれば権利者側とプロバイダ側が合意できないと、そういうものはルールになっていかないわけです。しかし、そういう簡単に採用できるような技術ができているにもかかわらず合意がたまたまできなかったからという場合には、それでもあえて採用しなければ、プロバイダが採用しなければ過失責任を認めていい、そういう場合もあるのではないか。
 ということを考えるとガイドラインありきという前提に立つ必要はないのではないか。つまりここでの議論として、こういうガイドラインでスタンダードを出していきましょうというアプローチもあるでしょうし、一般的な抽象的、確認的な規定を入れましょうという解決策もあり得るのではないかと思います。

○土肥座長
 大谷委員、お願いします。

○大谷委員
 今の山本委員の確認規定という考え方については少し心配事があるかなと思います。確認規定ということですと、特にプロ責法の中に入れるということになりますと、その確認規定が持っている意味といったものが誤ったメッセージとして発信されてしまい、それが予想外の過剰反応を引き起こすことが懸念されます。一番恐ろしいのはネットワーク上での萎縮効果、表現に対する萎縮効果だと思います。今のプロ責法の枠組みはネット上で起こる民事上の責任全般について広く網羅的に定めている規定です。もちろん著作権侵害の問題を取り扱いつつも名誉毀損ですとか侮辱、プライバシーというように私人間の紛争に関する民事責任がすべて織り込まれている規定ですので、それについて一律に著作権侵害の侵害対策措置で想定されているようないわゆる結果回避義務として言及されているものがすべて必要となるというような誤解を与えるような確認規定の危険というものをよく検討する必要があるかなと思います。
 それからボランタリーなフレームワークというのも日本ではうまく機能してきた歴史があると思っております。昨今の報道では、1月に音楽市場での違法な著作物の比率を世界中で見ると95:5で違法なものが多いということで、大変な世の中になったなと思ったわけですが、事務局でご用意いただいた資料を見ますと、日本での違法コンテンツの状況というのは音楽市場においては適正に適法に作成されたものを上回ってしまっているという状態です。それとて放置することができない問題だと思いますが、DMCAのような厳しい規定を実際に運用している米国などと比べても、今のボランタリーなフレームワークを十分に機能させていくような仕組みを持続するということには非常に意義があるのではないかと思っております。
 そういう意味でも確認規定の副作用というところにも目を向けて、従来のフレームワークをいかに機能させていくかというところに議論の方向性を定めていくべきではないかと思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。この点、およそ2つの考え方がもう出ております。共通した認識としてはプロバイダがサービスの内容として、それでやるべきことはやるべきであるということについては異論はないのだろうと思います。問題はそのことをプロ責法上、一般的監視義務ではなく、回避義務の具体的な確認規定を置くかどうか。そういうところまで踏み込むべきかどうかというところについては、なかなかこの枠組みでは一致点が得られていないということでございますので、今、大谷委員がおっしゃったようなところの萎縮効果とか、そういう前向きな面の有無ということを今後考えていくということにいたしまして、次回に譲りたいと思います。
 残りの2点ですけれども、プロ責法上、迅速な削除と発信者情報開示の2点ですけれども、この2つの点について何かご意見はございますか。
 平野委員、どうぞ。

○平野委員
 3ページ目の迅速な削除の@のパラグラフで、例えば削除すれば完全に免責とするセーフハーバー条項はどうか。これは前にも申し上げましたが、何でもこれをやると表現の自由と違憲の問題、違憲立法の問題がございますので、やはりファーストトラックと、スクルーティナイズするようなトラックというふうに分ける等々のデュープロセス的な配慮が必要ではないかと思います。
 それから同じ考え方で、次の(1)の○のパラグラフです。2行目、例えば通知を受けてから削除するまでの間の損害賠償責任は発生し得るとなると、これはまさに大谷先生がおっしゃったチリング・イフェクトの問題、萎縮効果ですね。つまり即座に削除しないとやばいということになると、即座に削除するようにプロバイダは突き動かされるので、そうすると前回か前々回に僕が申し上げたチベット解放のコンテンツですが、表題が北京五輪反対となっていたのでIOCが削除しろと言ってきたらプロバイダは恐いから削除してしまった。ところが、それは北京五輪開催中にまさにチベット弾圧反対の画像が出ていることが重要なのであって、その時宜を逸したようなタイムリーでない、削除先にありき的なことになると、まさに表現の自由の憲法の問題になってしまうということは配慮しなければならない。
 次の(3)国際的な調和の問題について。ここは外国企業から見ればどうかということですが、やるべきなのは英語にして日本のソフトローをどんどん紹介すべきだと思います。以前、ECの指令を変えようとして意見を求められて、日本ではという話をしょうがない、英文で書き始めて、条文はいわゆるテンポラリードラフトというのがあるんですが、外務省を通っていないから最後までファイナライズしないですが、とりあえずはあります。でも、あれは難しい条文なので、英語にして説明していかないといけない。いろいろ探したけれどもなかなかない。だから、この辺はきちっと英語にして説明する義務が日本国としてあるのではないか。国際協調の点で。こういうガイドラインというものがあり、誰でも参加できます。こういう形を周知徹底して、ぜひとも削除してくれという要請があれば、ぜひとも参加してください、こういう対策がいいのではないか。なぜなら日本というのはソフトローというのが過失責任という世界では非常に重要な、そういう法体系なんだというふうに思っております。以上です。

○土肥座長
 ありがとうございました。ここの点ですが、発信者情報のところでご意見はまた伺いますけれども、迅速な削除をこのワーキングチームの中で考えて、notice & takedownのような米国型のようなものを取り上げて、それに対する対応措置をきちんとプロ責法の中に設けるというご意見はこれはなかったと思っております。事務局から出ておりますが、出ておりますが、そういう強いご意見をおっしゃった方はここではないように思っております。したがいまして、ここの点は更に議論というよりも継続的に検討するという、よくあるような話で次に入りたいと思います。
 発信者情報開示、山本先生、おそらくそういうことではないかと思いますが、いかがですか。

○山本委員
 今、迅速な削除のところであったんですが。

○土肥座長
 そうですか。どちらのご意見で。山本先生は迅速に削除すべきである、そういうお立場ですか。

○山本委員
 はい、もちろん。

○土肥座長
 はい、分かりました。山本さんから迅速な削除の立場からご意見があるということですからお願いします。

○山本委員
 私は前回のプロバイダ責任の在り方について、つまり資料6で書かせていただきましたように、資料6をご覧ください。2のプロバイダの判断リスク回避の方法で、3で折衷案を出しております。顕名発信か匿名発信かに分けて、匿名発信に関しては通知が来たら削除してしまうという案はどうかというふうに私は考えております。ですからアメリカ式ではないですが、中途半端な形で申し訳ないんですが、迅速な削除には賛成であります。
 ついでに資料4の3ページで気になるところが何点かあります。簡単に言わせていただきたいと思います。最初の

○のところで通知があった際に削除すれば完全に免責とするセーフハーバー条項を設けるうんぬんというのがあります。これは今までも出ていましたが、権利者に対する関係で免責するというのはおかしいのではないか。つまり先ほども申し上げましたように権利者からの通知がある前に侵害の事実を知っていたのだったら免責されるのはおかしい。アメリカでのDMCAでも故意過失がないことが要件になっていますので、故意過失がありながら通知があったときに初めて削除すれば免責というのはちょっとやりすぎだと思います。この考え方には反対です。
 それから、(1)の削除するまでの間の損害賠償責任は発生し得る旨の確認規定を置くというのは、この確認は必要ないのではないか。これはほとんど当たり前のとで、あえてこんなことを書くと先ほど平野委員からご指摘があったようにシュリンクイフェクトしかないだろうと思います。
 それから(2)明白な著作権侵害の場合の明確化ですが、書いてありますが、デッドコピーなど著作権侵害があったものとして客観的に容易かつ明白に認められる場合には、3条2項1号に規定する相当な理由があったものとみなす旨の規定とありますが、これはデッドコピーだからといって客観的に容易かつ明白に侵害が認められる場合では必ずしもありません。といいますのは、権利者が主張している著作物にオリジナリティがあるのかどうか。つまり権利者が自分のものだと言っているものは他人のもののコピーだったという可能性がありますので、その可能性に思い至った段階で客観的に容易かつ明白に侵害だと認定できるはずがないので、こういうのは適当ではないと思います。アプローチの仕方を変えないといけないのだろうと思います。以上です。

○土肥座長
 山本委員の折衷案というのは承知していますが、ネットで顕名主義というのはなかなか想定しにくいというのがございます。どうも失礼いたしました。
 分かりました。山本委員のご意見というのは当然承りますけれども、発信者情報の開示については何かございますか。

○平野委員
 すみません、長くなってしまうので。山本委員のご提案、資料6は非常に興味深いと思います。特に匿名訴訟というのがアメリカにはある。これについてアメリカの判例で「RIAA 対 ベライゾン」という有名な2003年、DCサーキットの判例がございます。これが面白いのは、DMCAで発信者情報開示の請求をアメリカレコード協会がしたら、ベライゾンが拒否して、裁判所は結局、拒否していいんだと判断した。ベライゾンは接続プロバイダだ。接続プロバイダはP2Pの場合の中は分からないのだから、それに対して情報開示はおかしい。これは有名なリーディングケースです。そういうことがありますというのが1つ。
 でも、それでもアメリカでは匿名訴訟という制度があるでしょう。そちらを使えばいいのではないか。こういう議論になります。
 ところが日本はそれがないわけです。ですから、そういうものを何かは考えていかないといけないのかもしれないと思います。以上です。

○土肥座長
 どうぞ。短めにお願いします。

○北川委員
 まさにボランタリーではなくて、CIFFはまさに今それをやっているのですが、これは総合セキュリティ会議で6年間話し合った後に、この会議の結論として協議会を作れという結論が出て、何をやれというイグジットアクションが出ています。それを4つ紹介します。
 1つが警告確認メールによる注記喚起活動をやれ。これが第1です。2番目に、重なる人に対してアカントの停止を行え。それが第2番目です。3番目に損害賠償請求などを行え。著作権団体等における対抗措置として。4番目に捜査、検挙、逮捕、これをやる。この4つがイグジットアクションとして、これをやるのだと。それで協議会を作れということでできたのがCIFFです。それに当たって2月22日にガイドラインができてリリースしました。そういう状態になっています。
 ガイドラインは最初の警告メールを送るところだけです。実は特にISP側から今まさにおっしゃられたことが大変問題視されています。特に電気通信事業者からは通秘に違反するぞ。裁判をやったらなかなか勝てないので、ここから先はいけない。メールアドレスだけなら勝手に送ってもらえばそれですむわけです。ところがスリーストライクで断定して何かアクションをする、例えば訴訟しようとしたときには訴訟前段階ではカンテイシもそうですが、それが誰か断定し、その情報を著作権側に対して開示しなければならないというシーンがあらわれてきます、第2段階以降は。それで今ガイドラインは警告メールはISPが勝手に送ってISPを信頼するというところにとどまっています。その結果誰に送ったかというのは著作権側には開示されないんです。どうなりましたか。ほとんど無視されるんですが、1割5分から応答がありましたよ程度のガイドラインにしかなっていない。ただ、行き先としてはこの4つのアクションに到達したいと思って、我々もスキームは作っていますが、なかなかそこから先へ進まないという状況がありますので、ここのところについては十分な議論を尽くしていただいて、実効性のある、特にP2Pソフトウェアに対する公衆送信権、送信可能化権は確実に犯しているわけです。それは確実に機能するはずです。せっかく作った法律が機能しないところが非常に重要なところで、ここのところをしっかりやらないといけない。せっかく作っていただいた法律が社会的な意義をもたらさないんです。特に事業者は困って倒れるような状況が起こってきます。以上で終わります。

○土肥座長
 その点はおっしゃるとおりだと本当に思います。森田委員、この点ですか。

○森田委員
 発信者情報開示請求についてですが、まず、発信者情報開示請求というのは、裁判上、権利行使するために相手方を特定するために必要な一定の情報の開示をプロバイダに求めるというものであって、そこでいう権利行使には、発信者に対して損害賠償請求をするとか、あるいは差止めも場合によっては入ってくるわけでありますが、警告メールというのがこの開示請求の射程に入るものなのかどうか。警告というのは、今は権利行使はしないで、ただ警告だけするというわけですから、そもそも解釈論として、発信者情報開示請求の要件を満たすものなのかどうかという点が問題とあります。警告メールの問題については、発信者情報開示請求の問題というよりはむしろ、先頃、P2Pについては著作権侵害対策協議会から一定の措置が発表されましたが、プロバイダと権利者団体とが協力して、権利者には発信者情報を開示しないけれども、プロバイダから発信者に対して警告メールを送付するというような仕組みを作ることができないかという方向で対応を考えるべき問題ではないかと思います。現行法の解釈としても、警告目的というのが権利行使の正当性の要件をみたすのかというところは、必ずしもクリアできていないように思います。
 それから、裁判外における開示の位置づけですが、これは繰り返しになりますが、諸外国を見ても、裁判所のレビューの機会なくして、この種の情報をプロバイダが任意に開示してよいという法制をとっている国はなくて、日本はその意味では例外的なわけであります。前回、権利者団体から、これは不法行為責任の原則からいけば故意・重過失ではなくて故意・過失でよいのではないかという意見が述べられたわけでありますが、プロ責法はそもそもプロバイダが発信者情報を開示しないことが不法行為に当たるという考え方を前提にしたものではありません。そこで基本となっている考え方は、発信者情報は通信の秘密に当たるからプロバイダがそれを開示するためには裁判所のレビューの機会が必要であるというものです。したがって、これは非訟ではなくて訴訟であることが必要であり、また、開示の要件充足を判断する第三者機関は裁判所でなければならず、行政機関であってはならないというのが法務省の見解でもあり、それがプロ責法を立法する際の大前提となっていた考え方でありますので、その点を動かすというのは難しいだろうと思います。
 そういうことを前提に考えていきますと、(1)の「裁判外における開示」の問題は切り離した方がよいと思います。また、(2)の「裁判における開示」の問題についても、先ほどP2Pの問題についてはDMCA上のサピーナは対応していないので、これは一般法に基づく匿名訴訟の中でいけということでしたが、日本のプロ責法ではP2Pの場合の発信者情報開示請求についても対応しているわけです。したがって、DMCAの問題点は日本法では既に解決されているところでありますので、それ以外に日本で匿名訴訟を認めたうえで発信者情報の開示請求を求める必要性がそもそもないと思います。 司法的な手段をとる場合には、迅速な救済を求めたいのであれば、日本法の枠組の中では、むしろ仮処分を活用して、どんどんと権利行使をすべきであります。また、司法的な手段をとる以前の段階の警告メールの送付をのぞむのであれば、先ほど申し上げたように、これは、むしろプロバイダと権利者団体との協力体制の中でどういう工夫をすることができるかという方策を求めていった方がよいと思います。

○北川委員
 その間にワンステップあって、スリーストライクという話があります。警告メールを1回出すのは、どこの誰か知らなくてもできるのですが、3回出すときにはその紐付けぬしなければいけないですね。出した人、出した人、出した人。そこの中のところでも今、ISP側で相当揉めていますので、そこのところは回避されるようにできるのでしょうか。

○森田委員
 スリーストライクの問題については、前回申し上げましたように、スリーストライクというのはプロバイダが自主的にとる措置の問題でなくて、権利を侵害した者に対する制裁としてインターネットへのアクセス自体を禁止するものでありまして、法的には一種の刑事罰の性格を有するものでありますから、そのためのデュープロセスをどう確保するという観点からの検討が必要になります。このペーパーには、そういう観点がまったく出てきませんが、前回そのことを申し上げたわけであります。したがって、スリーストライクの問題は、ここで言う警告メールの問題とは切り離して、利用停止措置までいくとなればそのためのさまざまなデュープロセスを仕組めないと導入するのは難しいのだろうと思います。
 発信者情報開示請求というのは、スリーストライクのためではなくて、発信者に対して直接民事の訴えを提起するために、相手方を特定するのに必要な情報を収集するための手続でありまして、これは民事上の権利行使を考えているものであります。

○土肥座長
 前田委員、どうぞ。

○前田委員
 まず警告を行うということは一種の差し止め請求だと思いますので、それも権利行使の1つであり、発信者情報開示請求を行う理由にはなり得るのかなと思います。
 その点はともかくとして、今、CCIFでボランタリーな仕組みとしてプロバイダから発信者情報の開示を伴うことなく警告メールを送るという仕組みが動き始めているということで、それは非常にすばらしいことだと思います。ただ、そこに参加しないプロバイダの方々も、いわゆるアウトサイダーの方々もたくさんいらっしゃるわけです。アウトサイダーのプロバイダに対しては法的な請求権として警告メールの転送を請求する権利というものを作る必要があるのではないかと思います。

○土肥座長
 ありがとうございました。警告メールの取り扱いについて裁判外の差し止め請求というふうに考えていくのか、あるいはそうではない、そういう仕組みを森田委員はお考えなのか、そこのところはありますが、アクセスコントロール回避規制は今現在10分なものですから、すみません、5分ほどいただいて。せっかく今日、参考人の方にご意見をちょうだいしたところでございますので、すみません、15分までお忙しいところを恐縮ですけれども、アクセスコントロール回避規制の在り方について、回避行為、規制すべき回避行為の範囲と「のみ要件」の取り扱いについて、この2点ご意見を伺えればと思っております。どうぞ。

○平野委員
 私の趣旨は同じで、5ページの一番下のパラグラフにありますように、アクセス権を著作権で認めるところはちょっと広すぎるのではないかという懸念がございます。日本は公有権という言い方はしないのでしょうか。そもそも言葉が気にくわなくて、権利者はイコール著作権者という、おそらく日本ではそうなのかもしれませんが、権利者といったら公正利用権者、公有情報利用権者とかいろいろあるわけで、それのバランスをとらなければいけないと思っています。そういう意味ではあまりアクセス権というのは広すぎるのではないかという気が、非常に心配しています。ですから、そういうことのないように広すぎないような法技術を使うというのが一番重要ではないかと思います。

○土肥座長
 ほかにございますか。
 森田委員、どうぞ。

○森田委員
 5ページの下の「著作物へのアクセスそのものではなく、『アクセスコントロールを回避する行為』のみを違法とする法的構成」というのがよく分からないのですが、アクセスコントロールを回避する行為をすると著作物にアクセスしてしまうことになるのではないですか。そうすると、アクセスコントロールを回避するのが違法であるというのと、アクセスが違法というのとどこが違うのかがよく分からないので、説明していただければと思います。

○奈良参事官
 これはいわゆる暗号開示条件のようなもので、著作権者に対してそのような、いわゆる鍵をかけるような権利を認めはどうかという趣旨でございます。

○森田委員
 だれも鍵を常に外してはいけない、およそ外してはいけない鍵をかける権利を認めてしまうと、これはアクセスそのものがだめだというのと同じことになってしまいますので、鍵を外してもよい場合もある、それはどういう場合かということが問題となってくるのだと思います。その後の(3)では、著作権の権利制限に当たるような場合には適用除外とする規定を置くとされていますが、アクセスした中身に権利制限が及ぶような場合にはアクセスコントロールを回避してもよいわけですので、アクセスコントロールを回避する行為それ自体が違法であることにはならないように思います。なお、適用除外規定の事由ですが、日本版フェアユースの導入を提唱している知的財産戦略本部にあって、ここにフェアユースが入っていないのは不思議な感じがします。いずれにせよ、どういう範囲で回避行為が違法となるのかということが詰められるべきであって、この法的構成だけではそれが何を意味するのかが全然見えてこないような気がします。

○土肥座長
 山本委員。

○山本委員
 アクセス権についてお話ししたいんですが、平野委員がおっしゃったようにアクセス権という形にすると、かなり権利が広がる可能性があると思います。ただし、それに反対かどうかというと私は賛成です。例えばアクセス権として本屋で売っている本にカバーをかけてある。あれもアクセス権が及ぶという形にしたって別にかまわないのではないかと実は思っていますが、ここでは別にそういうことまで考えておりません。アクセス権というものを定める必要さえないのではないか。なぜかといいますと、ここではアクセス権コントロールを回避する行為を規制すればいいので、それの反射的な利益になるのでしょうが、アクセス権、反射的な利益として観念しておけばいいだけで、アクセス回避行為の規制以上のアクセス権を認める必要はないように思います。
 ただ今度はアクセスコントロールの回避行為の規制をどういうふうに位置づけるのか。例えばみなし侵害規定の中に入れるのが、おそらくこれを著作権法の中に入れるとしたらそんな形になると思いますが、それがいいのかどうかという問題が次にあるように思います。
 というのはアクセスコントロールを回避した行為が行われた場合に誰がそれに対して権利行使できるのか。というのはみなし侵害規定の場合には権利者を誰か分からなくなってしまうのではないか。そうするとアクセスコントロールを回避する行為を排他的に有する人を定めて、その人が権利行使できるという形にする。つまりそういう限られた意味でのアクセス権を認めるという構成はあり得るのではないかというふうに私は思います。

○土肥座長
 中山委員。

○中山委員
 私は別に支分権のようなアクセス権という物権的な権利は、支分権として構成する必要は、譲渡とかライセンス、担保権設定、そういうものが必要な場合にのみ新設する必要があると思います。単に差止、損害賠償、刑事罰だけが必要なのであれば、みなし侵害にするかどうかは別として、行為を規制すれば十分だと思います。
 仮にみなし侵害としても誰が訴える人かということが分からなくなるということは必ずしもないわけで、それは立法の仕方で何とでもなるのではないか。いずれにしろアクセス権という支分権の立法化は要らないのではないかと思っております。
 もう1つ「のみ」についてJEITAに伺いたいのですが、仮に「のみ」を広げるとした場合、特許法にあるように一定の条件+主観的要件という、こういう厳しい条件を付けたとしてもやはり問題点というのは残るのでしょうか。

○参考人(亀井氏)
 先生のご質問の、広げ方といいますか、要件の中身によるということしか今のところは申し上げられないかと思います。

○土肥座長
 特許法のような間接侵害のような規定を想定していただいて。

○参考人(亀井氏)
 例えば主観的に何かアクティブインデュースメント、積極的に侵害を助長するような行為とか、いろいろな対応があるかと思いますが、少なくとも事務局が出されているようなこと、「知りながら」という程度だとかなり広いのではないかという気がいたしております。

○土肥座長
 北山委員。

○北山委員
 お時間がありませんので結論だけ。のみ要件については、私はこの前から言っているように、これは「専ら」に見直した方がいいと思っております。それから、主観的要件を付加するかどうかですが、それは付加しなくてもいいだろう。一応思っていますが、今日出ましたように刑事罰を置いた場合にそれとのバランスをどうするかということは今少し考える必要があるかなと思います。
 ついでに、この前から山本委員の資料6が出ているのですが、山本委員の解決策として匿名訴訟制度と送達代理人制度というのが2つ挙がっています。少なくとも匿名訴訟制度というのは無理だと、結論においては。日本の民訴においては無理だ。訴えを提起された段階で裁判所はその訴状を送達しなければいけないけれども、それは送達できない。だから、そこの訴状審査の段階で不適用却下にせざるを得ないということで、これはなかなか難しい。
 送達代理人の制度もうまくいくかなと私は今のところ疑問に思っています。結論だけですが。

○土肥座長
 ありがとうございました。先ほど15分までということで皆さんの黙示のご了解をいただいたのですが、もう時間が来ております。すみません、アクセスコントロール回避規制の問題については資料でいうと6の適用除外規定をどう考えるかということが非常に重要なんだと思います。ですからアクセスコントロールを回避する規制行為自体についてその活用を考えていく。それに伴う情報へのアクセスが制限されるということについてはこの資料にあるような範囲及びそれ以上に考えていく必要も出てくるのではないかと思っているところでございます。
 それから山本委員のJohn Doeなどは、ディスカバリーなどの仕組みと一緒になっていたと思いますし、それからかセカンドライフでこれを使ってつかまえたというようなことも聞いておりますが、こういうワーキングチームの司法全体に関わるようなことになるとなかなかここに踏み込んでいくことができないものですから、その辺はご了解いただければと思っています。
 本日の議論を受けて、事務局におかれましてはまとめのようなものを出されるわけですね、次回に。

○奈良参事官
 次回は3月15日月曜日の13時からということでございます。これまでの議論を整理したいと思っております。今日、もしいただいていないご意見がございましたら事務局の方にいただければと思います。

○土肥座長
 それでは本日、機会がなくてご発言にならなかった重要な意見につきましては事務局にメール等でお寄せいただければと存じます。
 すみません、予定の時間が過ぎましたので本日の会合はここで閉会したいと存じます。WGの検討状況につきましては一度、親会であるコンテンツ強化専門調査会に報告する必要があるかと存じます。次回、コンテンツ強化専門調査会第4回会合は3月12日に開催されますけれども、同日私の都合がつかないものですから、知的財産戦略本部員でもある中山委員に3月12日の専門調査会においてご報告をお願いしたいと存じますけれども、いかがでございましょうか。
 ありがとうございます。それでは中山委員、よろしくお願いいたします。
 次回についての説明はよろしいですね。それでは3月15日の13時から本日と同じこの場所でお会いすることになります。
 それでは閉会いたします。どうもありがとうございました。参考人の皆さん、どうもありがとうございました。
午後12時20分 閉会