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デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会(第10回)
議事録

  1. 日時:平成20年11月27日(木)10:00〜12:00
  2. 場所:知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者
    【委員】 中山会長、上野委員、大谷委員、上山委員、東倉委員、苗村委員、
    中村委員、宮川委員
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、関次長、小川参事官、大路参事官
  4. 議事:
    • デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について

○中山会長 それでは、時間でございますので、ただいまから第10回デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会を開催いたします。
 本日は、ご多忙中のところお集りいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、前回ご議論いただきました本調査会の検討結果の取りまとめとしての報告書案について引き続き議論を行いたいと思います。
 まず、先日行いましたパブリックコメントの結果とともに、前回からの報告案の修正について、事務局から説明をお願いいたします。

○関事務局次長 それでは、ご説明をさせていただきます。まず、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は大きく分けて3点でございます。
 まず、資料1といたしまして報告案でございます。それから資料2といたしまして、意見募集の結果、パブリックコメントの結果でございます。これは資料2と書いた本体と、それから別添の1から6までを付してございます。この別添の1から6と申しますのは、@からBが団体、それからCからEが個人ということでございまして、かつ団体と個人それぞれ今回の報告書の柱が3点ございますので、その3つの柱ごとに整理、区分をしたものでございます。それから、資料3でございますけれども、これは本日ご欠席でございますけれども、加藤委員から提出をされた資料でございます。
 以上が本日お配りをいたしました資料でございます。
 続きまして、資料の説明に移らせていただきます。
 まず最初に、パブリックコメントの結果でございますけれども、資料2をごらんいただきたいと思います。全体の状況のみ簡潔にご報告をさせていただきたいと思います。資料2の本体の資料をごらんいただきたいと思いますけれども。募集期間、2週間強という期間で実施をいたしました。
 その結果、ご提出をいただいた意見でございますけれども、個人の方からは59人、お1人の方で複数の箇所に意見をお出しいただいた方がいらっしゃいますので、意見数としては118でございます。それから、企業・団体の方からは、数といたしましては50の団体、意見の数といたしましては169のご意見をいただいております。なお、資料2の2枚目には提出をいただいた50の法人団体、その名前につきまして五十音順に掲げてございます。
 個々の内容については個別のご紹介は控えさせていただきますけれども、先ほど申しましたように、別添の@からEということで事項別、それから団体、個人別に整理してお配りをしておるところでございます。
 続きまして、報告案の内容についてご説明をさせていただきたいと思います。なお、委員の方には資料1とは別に、一部にアンダーラインを付した資料をお配りしてございますが、これはパブリックコメントに付したバージョンと比べて変わっている部分についてアンダーラインを付したものでございます。
 それでは、資料1、報告案について、前回からの変更点ということでご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、4ページをごらんいただきたいと思います。4ページの上の部分でございますけれども、これは流通促進の中の現状等について書いた部分でございますが、コンテンツ情報の整備といたしまして、最後の1文を付加してございます。「なお、総務省では」という1文でございますけれども。これは関連してこういう取組も行っているということでここに付記をさせていただきました。
 それから、続きまして、この流通促進策の検討結果、7ページのところをごらんいただきたいと思います。7ページの検討結果のところでございますけれども、第4段落、それから第5段落に若干修正を加えさせていただいております。第4段落、「このため」という段落、それから第5段落、「また、本専門調査会での」という部分でございますけれども。ここの修文の趣旨といたしましては、趣旨を明確にして誤解、誤読を避けるという趣旨でございます。
 まず第4段落、「このため」というところでございますけれども、冒頭の1文を追加してございます。それから、この第4段落の最後に、「これらの取組を通じて、様々な権利処理が円滑に行われるような権利の集中管理体制の整備が望まれる。」という1文を追加してございます。これは、検討結果といたしまして、まずは契約を促進するということでございますので、その趣旨を冒頭にまず明記をいたしまして、そして一番最後にこれらの取組を通じてどういう体制、世界を希望するのかということを改めて付記をしたものでございます。
 それから、その下の「また、本専門調査会での」という段落でございますけれども、最後のほうで幾つか修正をしてございます。具体的には一番最後の部分でございますけれども、最後の文の出だしのところを、「今後は」というふうにしてございます。それから、その行の終わりのところでございますが、「多角的観点から」という言葉を追加してございます。ここにつきましては、ここで後ろのほうに法的対応案を幾つか書いてございますけれども、これはヒアリングで出された法的対応案を掲げておるわけでございます。ここにつきましては4つに限らず、多角的観点から適宜法的対応の検討を進めるのだということで趣旨を明確にさせていただいたものでございます。
 それから、続きまして8ページでございます。8ページの一番最後、これはヒアリングで出された法的対応案の4つ目でございますけれども、ここの内容を修正してございます。ここにつきましてはご提案のあった方のほうから不正確であるというご指摘がパブリックコメントの中でございましたので、この専門調査会で提出された資料、ヒアリングの際の資料を踏まえまして整理をして書き直したものでございます。
 以上が大きなT、流通促進策についての主な修正点でございます。
 それから続きまして、大きなU、日本版フェアユース規定の導入、権利制限の一般規定のところについての修正案を申し上げます。
 12ページをごらんいただきたいと思います。まず、12ページの上のほう、第3段落でございます。「また、ネット上の写真・動画への写り込み」という段落でございますけれども、ここの文末につきましては、「考えられないものもある」ということで断定を避ける表現にしてございます。
 それから、その下の部分でございますが、ただし、一般規定の導入に当たってはということでローマ数字で4つ指摘をしている部分の3点目でございます。3点目につきまして、1行目から2行目でございますけれども、「これまで裁判例によって違法であるとされてきた行為が当然にすべて適法になるとの誤解等に基づいて」という部分を追加してございます。これは前回のこの会議で北山先生からご発言があったことを踏まえたものでございます。
 それから、続きまして、13ページのほうをごらんいただきたいと思います。13ページの(3)一般規定の規定振りについてということでございますけれども。1つ目といたしまして3行目でございますが。「ベルヌ条約等のいわゆるスリー・ステップ・テストも踏まえ」という部分を追加してございます。これはベルヌ条約の枠内ということを再確認するために付記したものでございます。
 それから、この(3)につきましては一番最後の文、「なお、その際には、これまでの裁判例、学説等も十分に検討することが必要である」ということを前回のバージョンから追加してございます。これも前回の北山先生のご発言を踏まえた修文でございます。
 以上が大きなUの部分、一般規定についての修正点でございます。
 それから、続きまして大きなV、違法コンテンツへの対策の強化につきましての説明をいたします。 
 まず、その中の1点目、コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方についてという部分でございます。まず、15ページの(1)問題の所在という部分をごらんいただきたいと思います。それの下から3行目でございますが、「これらを回避した利用に関連するコンテンツ産業への経済的損失が拡大している」というふうに修文してございます。これはもともとこれらを回避した利用によるコンテンツ産業への経済的損失と書いてありましたのを、「よる」ではなくて「関連する」に修文したわけでございますが、この趣旨は、こういった利用行為とどこまで直接の因果関係があるのかというご指摘もございましたので、そこについて関連するという形に修文をしたものでございます。なお、同趣旨の修文は以下にもございます。
 それから、同じ15ページの下のほう、(2)のA著作権法の2つ目の○でございますが、括弧書きを付記してございます。したがって、例えば一般的なパソコン云々というこの部分でございます。この趣旨は、不正競争防止法と著作権法の記述の並びをとったということでございます。
 それから、16ページの一番上の○の括弧書きの中も今申し上げましたものと同趣旨でございます。
 それから、続きまして、16ページでございますけれども。16ページの(3)の@の部分でございますけれども。4行目のところは、違法ソフトという言葉を今回使っておりますけれども、何を違法ソフトというのかということを正確に書いたということでございます。
 それから、@の一番最後の部分、違法ソフトで遊ぶユーザーが急増しているという部分でございますけれども、ここは前回の案では被害が急増しているというふうになっておりましたのを、違法ソフトで遊ぶユーザーが急増しているというふうに修文してございます。これは冒頭関連するというところでご説明した趣旨と同趣旨でございます。
 それから、17ページの検討結果のところをごらんいただきたいと思います。検討結果のまず第3段落をごらんいただきたいと思います。「インターネットの普及を背景に」というところでございますが、これは前回の案文を書き直してございます。読ませていただきますと。「インターネットの普及を背景に、ネットを通じて簡単に違法ソフトを入手できる環境の中で、回避装置を用いて違法ソフトを楽しむ行為が一般ユーザーに急速に広まっており、正規ソフトの販売にも影響をもたらせていると考えられる。」という部分でございます。
 これは前回の案をごらんいただきますと、被害が増大しているというふうに最後結んであったわけでございますけれども、冒頭ご説明した関連するという修文と同様の趣旨から、こういったことで正規ソフトの販売にも影響をもたらしているというふうに書かせていただいております。
 それから、その次の「このため」という段落でございますけれども、ここも幾つか修文をしてございます。全体の趣旨といたしましては、文脈を整理して端的に読みやすくしたという趣旨でございます。「現行制度の実効性の検証を行い」というところでございますが、前回のバージョンでは当然行うべきであるがというふうになっていたわけでございますけれども、逆説でつながっていて読みづらいというご指摘もございましたので、そこは「行い」というふうにしてございます。全体といたしましては、行い、規制の在り方を見直し、そして違法ソフトの一般ユーザーへの蔓延を防止するための何らかの措置を講ずることが必要であるというふうに一気に読めるようにさせていただいたつもりでございます。
 それから、ここに関連するその他の修文といたしましては、「このため」の段落の2行目の最後に、「国際的な動向にも留意する」という「国際的な動向」というのを追加してございますが。これは後で出てくるACTA等国際的な動きもあるということでございます。
 それから、その下の行、違法ソフトの一般ユーザーへの蔓延というところは、前のバージョンでは被害となっていたものをこのように修文したものでございます。
 それから、大きなVの中の2つ目の点、インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方でございますが。これにつきましては、まず20ページをごらんいただきたいと思います。20ページの(3)、それから@でございますが、この@の最後に1文つけ加えさせていただいております。「なお、経済産業省では」という文章でございますけれども、これは行政の取組ではございますけれども、こういった実証実験もあるということで付記をさせていただいたものでございます。
 それから、続きまして21ページをごらんいただきたいと思います。21ページの(5)検討結果のところでございますが、それの第2段落でございます。「確かに」という文言で始まる段落でございますけれども。まず冒頭に、違法コンテンツの削除という言葉を追加してございます。これはこういった自主的な取組でどこに成果が上がっているかということでございますが、もとのバージョンですとネットオークションのことしか書いてなかったわけでございますけれども、違法コンテンツの削除にも大きな成果を上げているであろうということでそこを付記したものでございます。
 それから、その後ろの文章、「しかし」で始まる文章でございますけれども、一番最後のところ、「その対応についても別途検討する必要があると考えられる」というふうにしてございます。これ前回のバージョンでは自主的な取組だけでは限界があるという趣旨で書いていたんでございますけれども、そこはもう一度文脈を整理いたしまして、こういったアウトサイダー的な一部の事業所については別途検討が必要だというふうに書かせていただいたものでございます。
 それから、続きまして22ページでございます。22ページの一番上の部分でございますけれども、2行目の行の最後のほうに、「国際的な動向にも留意しつつ」という文章を入れさせていただきました。これは先ほどと同じACTA等の動きがあるということを踏まえたものでございます。
 それから、この段落の一番最後の行でございますけれども、「差止請求などを受けないようにする明確な免責規定等を設けることが考えられる」ということで、ここに「等」という言葉を入れてございますが、これは免責規定だけではないと、対応の仕方としては幾つか考えられるという趣旨で「等」を付記したものでございます。
 それから、23ページからが著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応についてということでございます。ここについては特段の修文ございませんけれども、1点だけご紹介させていただきますと、一番最後、25ページでございますけれども、(5)の検討結果のところで第2段落の最初の行でございます。「したがって、著作権法上のいわゆる「間接侵害」」と、ここは「いわゆる「間接侵害」」としてございますが、これは前回のこの会議で委員からご指摘があったことを踏まえたものでございます。
 それから、最後、大きなVの4つ目の項目、国際的な制度調和等についてでございます。26ページからでございますけれども、27ページをごらんいただきたいと思います。27ページの冒頭、小さいローマ数字(A)のところで幾つか修正してございますけれども、ここは趣旨を明確にして読みやすくするということでございまして。「確立した」というのをつけ加えましたのが、ルールというからには確立しているかどうかの問題であろうということで「確立した」ということを入れてございます。
 それから、その文末につきましては断定を避けると、すべてが不明確ではないであろうということで「不明確なことがある」というふうにつけ加えてございます。
 それから、真ん中辺の(3)の@のところでございますが、@の1行目から2行目にかけまして、「民事及び商事に関する」というのを付記してございますが、これは刑事は含んでいないということを明確にしたものでございます。同様な趣旨の修正をほかにも幾つかさせていただいております。
 それから、同じく(3)のAでございますが、Aの一番最後の部分でございますが、「今後、インターネット上の海賊版対策を含めた知的財産権侵害への対処の在り方について議論が行われる」ということで、この知的財産権侵害の対処の在り方という書き方にしてございますけれども、ここは前回の案ですと法定規律の形成ということに関連して書いていたわけでございますけれども、ここにも書いてありますように、ACTAの柱は法定規律の形成だけではなくて、法執行の強化、それから国際協力の推進というふうになっておりますが、こういった海賊版対策につきましてはいろいろな側面で問題になるということで正確に書いたものでございます。
 以上、主な修正点をご紹介させていただきましたけれども、パブリックコメントの結果、それから事務局としてもう一度見直して事実関係等を確認するという中で以上のように修文の案をつくらさせていただいたということでございます。
 それから、もう一度確認までに資料3でございますけれども、資料3はこの報告案に対する意見ということで、本日ご欠席の加藤先生のほうからご提出をされたものでございます。適宜ご参照いただければというふうに思っております。
 事務局からの説明、以上でございます。

○中山会長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入りたいと思います。内容が多岐にわたっておりますので、3つに分けて議論を頂戴したいと思います。まず最初に、1、コンテンツの流通促進方策について議論を頂戴したいと思います。この問題につきまして何かご意見ありましたらお願いいたします。
 どうぞ、中村委員。

○中村委員 2点ばかり申し上げたい。1点目は、4ページ目の上のほうに総務省のコンテンツデータベースの事業に関する記述がありますが、私もこれに関与しています。こうした契約ベースで民間の事業あるいは取組といったものを支援するような政策というのが、それを強めていくというのがとても重要な取組だと思います。同様に、集中管理体制の強化というのも意味があるところだと考えております。
 一方で、こうした場のように、時間をかけてコンセンサスをとって法律にしていくというのは非常に大変な作業であって、しかも国会情勢でどうなっていくかわからないといった、そういったことはある種日本のデジタル産業というのがそうした時間的な余裕がない中にもありますので、ここは制度論の検討の場ではありますけれども、同時に市場とかビジネスあるいは契約のアプローチを活性化させるような実行策というのが同時に重要であるということを強調しておきたいと思います。この次の対策をどのようにステップを踏んでいくかというのが大事だということを提案したいと思います。それが1点。
 それからもう1つは、権利集約化の法案ですけれども、これは8ページの下のほうにある提案についてです。これはパブリックコメントの結果を拝読しまして私も非常に驚きました。権利者の団体ですとか関係者の方々がそれに対して反対をするというのはよくわかるのですけれども、パブコメを見ますと映画のほうで3社、それからNHKやキー局の3社も反対意見を述べておられます。この法律をつくることによって直接利益を得るはずの企業がこぞって反対をしているというのは、では一体だれが法案を望んでいるのかなというのがよくわからなくなっておりまして。また同時に、パブコメでは多くの意見が契約とか協議とかあるいはビジネスベースで大丈夫であって法的な課題はないというような意見も出てきているわけであります。
 したがって、私たちも引き続きこうした議論を続けるとしても、法的対応する需要というのが本当にどの部分でどのぐらいあるのかと、時間を議論で浪費していないかということを踏まえて、言ってみれば数字ベースで実証しながら議論をしていくことが大事ではないかなというふうに考えた次第です。
 以上です。

○中山会長 ありがとうございました。
 それは具体的にどこを直すという話ではなくて、今後の検討課題ということで宜しいでしょうか。

○中村委員 はい。

○中山会長 わかりました。
 ほかに何かご意見ございましたら。
 コンテンツ流通促進についてはよろしいでしょうか。
 それでは、次に、2番目の権利制限の一般規定、日本版フェアユース規定の導入について議論を頂戴したいと思います。ご意見がありましたらお願いいたします。
 どうぞ、宮川委員。

○宮川委員 報告書案を拝見いたしまして、私も結論的にはこの委員会の意見を上手にまとめていただいていると思いました。個別の点では、申しわけありませんが、13ページですね、一般規定の規定振りについてという部分のところですが。一般規定の実際の規定振りについては、ベルヌ条約等のいわゆるスリー・ステップ・テストも踏まえ、「著作物の性質」、「利用の目的及び態様」など、具体的な考慮要素も掲げるべきであるという結論が出ています。その後の「なお書き」がとってつけたような印象を受けたものですから、どのような趣旨でなお書きを追加されたかということを伺ったところ、北山委員が前回の会議で指摘された問題点を踏まえてつけ加えられたものだというご説明をいただきました。
 ただ、私の考えでは、このフェアユース規定というのは今までなかった規定ですから、フェアユースの規定についての考慮要素は何かということを議論した判例は日本ではありませんし、むしろこの規定ができた後にどのようなものがフェアユースかということについてこれから裁判例が積み重なっていくというもので、どうも順序が違うのではないかという印象を強く持ちました。この追加について、北山委員がこのような規定を入れることを望まれていたのかどうかというのを伺いたかったんですが、今日はいらっしゃってないので、むしろこの場で他の委員の方のご意見を伺えたらと思っております。
 以上です。

○中山会長 それでは、その点につきましてご意見ございましたら。
 どうぞ、上野委員。

○上野委員 私の誤解かもしれませんけれども、ここで言われているのは、従来確かに日本には一般条項としてのフェアユース規定はないわけでありますけれども、るる指摘されておりますように、既に判例・学説等におきましてはフェアユース的な判断があったのではないかということでしょうかね。
 例えば、これは中山先生もご指摘になっておられますけれども、中古ゲームソフト事件における頒布権の消尽であるとか、あるいは雪月花事件であるとか、そういった裁判例におきましては、確かにフェアユースの規定を使ったわけではありませんけれども、何らかの法律構成によって権利侵害を否定するという点でフェアユース的な判断が出ているわけでありますから、そういった裁判例やこれをめぐる議論を参照することが今後の検討においては必要だという趣旨ではないかなと、そのように理解した次第でございます。

○中山会長 恐らく北山委員のご意見は、従来も裁判官というのはフェアということを考えて判決を下している、したがって、フェアユースの規定が入っても同じようなことになるのだということだろうと思います。ただ、それだけで済むのか、あるいは今までフェアユースの規定がなかったためにいろいろな判決があります。フェアユースの考えを入れる余地はないという判例もあれば、仮にフェアユースが認められるとしてもこの件は違うと述べている判例もあります。しかし結果的に正面からフェアユースとして認められたものは1件もない。そういう状況の下において、このネット時代において従来の判例の分析だけで十分なのかという、そこら辺の問題だと思います。
 その点についていかがでしょうか。
 上山委員、どうぞ。

○上山委員 私はこれまでの裁判例、学説という言葉を入れることはむしろ適切だろうと思います。というのは、従来の厳しい判断を示した判例の結論が妥当であるかという問題意識が今出てきていて、それがフェアユース導入の検討につながっているという背景も考慮すれば、この報告書案の23ページ、24ページの脚注に掲げられている複数の判例が現時点において本当に正しい結論かといったことも踏まえて、今後検討することが必要であるというふうに読み込めるんだろうと思います。
 それから、学説についていうと、上野委員も書かれているように、現在の著作権法は、裁判所の判断傾向も非常に厳格であることも現実にそぐっていないのではないかといった説も主張されているところですから、そういったことを含めて検討するというふうに解釈すれば、この文言の追加は妥当ではないかと思っております。

○中山会長 法律を作るときに、従来の裁判例を検討することが必要であるというのはある意味では当たり前なのだけれども、具体的なフェアユース規定の考慮要素を掲げるときに従来の裁判例を検討しろというと、従来の肯定的な裁判例を書けと読まれてしまうのかと、あるいは今上山委員がおっしゃったように、むしろ従来の判決ではおかしいので積極的に直すべきであるというふうに読むのか。そこら辺の読み方の問題だと思いますが。

○宮川委員 委員の方々のご意見伺ってよくわかりました。中山先生がご指摘になったように、一般規定の考慮要素を考える場合にこれまでの裁判例をどのように検討しようというのか、規定振りに関する記述の中に裁判例という言葉が入っているのが非常に引っかかっていました。上野委員がご指摘になったように、これまでの裁判例では、たとえば雪月花事件では複製という概念の解釈により侵害を否定したというようなところで、既存の条項の解釈の問題の中に、その背景に一体これが侵害と言えるかどうかという考慮要素があった、どこまでを侵害とするかという精神的なものがあったんだと思うのですが。裁判例が、規定振りを考えるときの検討材料なのかという点が少々釈然としなかったものですから。
 それから、上山委員がおっしゃっているように、既存の判例をこれでは足りないんだというふうに批判的に見て規定振りを考えていくというようなそのような書き方にも見えなかったものですから、疑問点を提起させていただきました。
 あとは中山会長にお任せいたします。

○中山会長 ほかの委員の方でご意見ございましたら。
 どうぞ、中村委員。

○中村委員 私はどちらかというと規定後のことが気になっておりまして、この制度が実現して動き出しますと、司法の役割も増していくでしょうし、また事業者のほうからも訴訟コストが高まるのではないかというような懸念が表明されておりまして。したがって、裁判例、学説等も十分に検討して、それを踏まえて規定がされて、その後ですね、結局では実際にいろいろな事例も出てくるでしょうから、何がフェアなのかといったことをわかりやすくするようなガイドラインをみんなでつくるであるとか、あるいは準司法的なADRのようなものを拡充するといった法律の外側の環境整備というのが非常に重要になってくるというふうに考えます。そういった次のステップも考えておく必要があるかと思います。
 以上です。

○中山会長 ほかに何かございましたら。
 それでは、この文章につきましてはちょっと今日北山委員もご欠席ですので、委員の皆様方の趣旨を踏まえまして、また北山委員のお話も聞きまして、最終的にはお任せいただければと思いますが、よろしいでしょうか。

○宮川委員 結構です。

○中山会長 ありがとうございます。
 それでは、フェアユースにつきましてほかにご意見ございましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、3番目のネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化の問題につきましてご意見を頂戴したいと思います。14ページ以降ですけれども、何かご意見ありましたらお願いいたします。
 どうぞ、大谷委員。

○大谷委員 ありがとうございます。ちょっと非常に細かい点からで恐縮ですけれども。22ページのところ、ここに国際的な動向にも留意しつつという言葉を新たに加えられておりまして、この国際的な動向の意味するところは、海賊版の拡散、不拡散のための条約ACTAを念頭に置かれた表現であるというご説明を事務局からいただいたところです。
 ただ、この全体の文脈を見ていきますと、国際的な動向として紹介されておりますのが、この20ページからのアメリカ、EU等の動きということですし。実際に各国の法例、それから判例の動向などを見て制度上の見直しについて検討を行うというふうに読めますので。むしろここはACTAなどの国際的な条約の動向を踏まえるというように具体的に示していただいたほうがここの部分の趣旨が明らかになるのではないかと思っております。
 といいますのも、この国際的な動向の中にも、この20ページ以降でまとめていただいているとおり、かなりさまざまな動きがあるわけで。例えば動画サイト運営者の技術的な侵害防止措置の導入をもう既に先行して導入されている国というのもあるわけですので、そういったことを積極的に後押しすると、このようなふうにこの検討結果をミスリーディングしてしまうのかそういうちょっと懸念があるのではないかと思いまして、ご意見申し上げる次第です。
 あと、それとの関係で、20ページのところでアメリカの動向として紹介されているDMCAの内容なんですけれども。権利者からの削除要請があった場合に、プロバイダが自動的に削除に応じるというこの自動的なというところの意味は、これはシステマティックにというそういう意味を言われているのか、ちょっとここの趣旨を補足説明いただければと思います。
 以上です。

○中山会長 それでは、事務局のほうからお願いいたします。

○関事務局次長 まず、ご指摘の1点目は、確かに20ページの(4)というのが国際的な動向というタイトルのもとに各国の例を紹介しておりますので、そことの関係でわかりづらいと、あるいはミスリードであるということかと思いますので、ちょっとそこはまたこの場でのご意見を踏まえて少し中山先生とご相談をさせていただければと思います。もしほかにご指摘があれば承りたいと存じます。
 それから、もう1点、20ページのアメリカのほうでございますけれども、これは要するに特段の細かい確認行為等なくして削除するという趣旨で書かせていただいているものでございます。

○中山会長 では、この国際的な動向というのはACTAに限定はされてないというそういう趣旨ですか。ACTAも含めてと、それとも。

○関事務局次長 はい、ACTAも含めてということで今回。

○中山会長 では、その前の部分は、いろいろな国がいろいろなことをやっているのでそれを参照にというような趣旨なんでしょうね。

○大谷委員 最も意識されているのがACTAということなのであれば、それを例示していただくことによって各国のそれぞれの立法の内容などは参照というか検討材料にとどまるという意味合いになるかと思いますので、そこをクリアにしていただいたほうがメッセージがよく伝わるのではないかと思います。
 それから、先ほどご説明いただいた特段の調査をすることなくというような意味合いでしたら、ちょっとこの表現がいいのかどうかよくわからないのですけれども、意味合いとしては多分間違いないところだと思います。
 ありがとうございました。

○中山会長 それでは、その国際的な動向、この点につきましてはご趣旨を踏まえたような形で修文をいたしますので、お任せ願えればと思いますけれども。それでよろしいですか。
 ほかに何かございましたら。
 全体を通じてでも結構でございますので、何かございましたら。
 何かございませんでしょうか。
 では、どうぞ、上野委員。

○上野委員 それでは、せっかく加藤委員からご意見が出されておりますので、これについて少しだけコメントしたいと存じます。ペーパーの2点目でありますけれども、コンテンツの技術的な制限手段の回避に関する規制につきまして、加藤委員のほうからは、現在の書きぶりが「適切ではない」というご意見が出ております。これによりますと、現在の文言が、「現行制度の実効性の検証を行い……何らかの措置を講ずることが必要である」というように、具体的な措置を講じることが必要であると断言されているように見えるので、それが少し強すぎるのではないかというようなご意見であろうと思います。
 確かに「措置を講ずることが必要である」というこの書き方は、この報告書全体の中でも少し強めの書き方にはなっているかもしれませんけれども、経緯からいたしますと、もともとは第7回の配布資料におきまして「技術的手段の回避行為に対する規制を強化すべきではないか」という文言が用いられていたように記憶しております。それが「規制を見直し」になり、さらに今回は「規制の在り方を見直し」という文言になっております。また、「措置」についても「何らかの措置」となっているのに加えて、その前に追加して「違法ソフトの……蔓延を防止するための何らかの措置」という書き方になっているようです。そうしますと、確かに具体的な措置としてあり得るのは、刑事罰であるとか、あるいは回避行為自体の規制といったものも否定されていないということにはなろうかと思いますけれども、だからといって何か特定の措置がここで明示されているわけではなく、さまざまな対応策を一般的に含むものとしてこの「何らかの措置」という文言が用いられているようにも読めます。そういうふうに解されるのであれば、加藤委員のご懸念は必ずしも当たらないのかなというふうに感じた次第でありますけれども、わたくし自身もまだ確信に至っていないところでございます。

○中山会長 その点、何か事務局からコメントございますか。

○関事務局次長 事務局としては、まさに今上野先生からおっしゃっていただいたような修正をしたわけでございます。それからあともう1点、これもご指摘いただきましたが、違法ソフトの一般ユーザーへの蔓延というところで、原案では被害というふうに書いてあったわけですけれども、そこは関連性を若干弱めて書いたということでございますので、この加藤先生からのご指摘はもう少し修文せよということのご指摘ではございますけれども、ある程度そのご趣旨は踏まえてこの修文案はできているのではないかというふうに考えておるところでございます。

○中山会長 よろしいでしょうか。
 ほかに。どうぞ、上山委員。

○上山委員 21ページ、(5)の検討結果のところですけれども、こちらの第2段落の中に、主に侵害の温床となっていると思われるのは業界団体の枠組みに属さないような一部の事業者である場合が多くという表現がありますが、私の知る限り、国内の事業者でそういったところが多いとまで言える状況にはないと思います。
 それから、私は経産省の実証実験に関与しているんですが、その途中結果を見ると、予想どおり侵害の大半、圧倒的多数は米国、中国、韓国等の特定のプロバイダに集中しているという状況があります。ここのところは、文言上は国内の事業者を念頭に置いたものではないと思いますけれども、こういった侵害の温床が主として現状海外にあるということが読み取れるような表現も検討していただいたほうがいいのかなと思うのですが。

○中山会長 もっともと思いますけれども、その点、事務局はいかがでしょうか。

○関事務局次長 それでは、ちょっと検討させていただきたいと思います。今ご指摘いただいた経産省の実証実験等のデータもまたチェックをいたしまして少し検討させていただければと思います。

○中山会長 確かにおっしゃるように、違法コンテンツだけではなくて大麻の種とかポルノとかいろいろな面で海外のものが多いということは事実だろうと思いますので、ではそこら辺も修文をさせていただきたいと思います。
 ほかに何かございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは、ご指摘いただきましたフェアユースの一番最後のところの文章と、あと国際的な動向という大谷委員のご指摘の点と、今上山委員からご指摘いただいた海外のサイトの件、この点につきましてはご趣旨を踏まえて修文をしたいと思いますけれども。それはお任せいただいてよろしいでしょうか。
 わかりました。
 それでは、必要な修正を行った上で、今回をもちましてこの報告案というものを決定いたしまして、次回の知的財産戦略本部会合に本専門調査会の報告書を提出するということにしたいと思います。
 それでは、本日の会合はこれで閉会をしたいと思います。
 本専門調査会は課題の検討を一通り終えましたので、今回で終了ということとなります。委員各位におかれましては、ご多忙中のところご尽力賜りましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。
 最後に、事務局から何か連絡等ございましたらお願いいたします。

○素川事務局長 事務局長でございます。委員の先生方、本当にご多忙のところ集中的にこの審議にご熱心に参加いただきまして、ありがとうございました。中山先生初め委員の先生方のご尽力に改めて感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

○中山会長 それでは、これで閉会させていただきます。
 どうもありがとうございました。