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第8回 医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成16年6月30日(水)9:58〜12:14
2.場 所:知的財産戦略推進事務局 会議室
3.出席者:
【委 員】】井村会長、秋元委員、片山委員、北村委員、見城委員、野中委員、平田委員、広井委員、森下委員
【参考人】中島審議官、小野特許技監
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) 医療関連行為の特許保護の在り方について
(3) 討議
(4) 閉会


○井村会長 おはようございます。「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」に、お忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございました。第8回の会合を今から始めさせていただきます。
 上田委員がちょっと遅れるという連絡が入っておりますが、ほかは全部おそろいになりましたので、定刻のまだ2分ほど前ですけれども、始めさせていただきたいと思います。
 なお、今日は田村委員から欠席の御連絡をいただいておりますが、そのほかの委員はすべて出席でございます。
 それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。
 前回の会合では、医療関連行為の特許保護の在り方をどうするかという点について、議論をいただきました。その中で、そもそも現状でどこまで特許保護がなされているかということにつきまして、関係者間の認識が必ずしも一致していないという部分が、特に医薬についてありました。その点については、その後、鋭意整理をしていただいております。
また、医療機器・医薬の使用方法を特許の対象とする場合の懸念に対する考え方についても、もう少し具体的に踏み込んで議論すべきではないかという御意見もいただいております。
 そのほか、議論の中で幾つかの御指摘をいただいておりますので、本日はそれらすべての点を含めまして、まず事務局の方から資料を再度整理していただいたものを説明していただきます。その上で、医療関連行為の特許の保護の在り方について、今日はできるだけとりまとめの方向に向けて議論をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 それでは、まず事務局から説明をしていただきたいと思います。小島さん、お願いします。

○小島事務局次長 それでは、前回の会合の御議論を踏まえまして、改めて整理しました資料について御説明します。
 お手元に資料1から資料5−1、5−2という資料が配付してあるかと思います。最初に一番上にあります資料1「医療関連行為の特許保護の在り方についての考え方(案)」をごらんください。
 この資料は、前回の御議論を踏まえて特許保護の在り方についての考え方を案として整理したものでございますが、前回提示いたしました、タタキ台から修正した点を中心に御説明します。
 まず、資料1の左側、第1欄でございますが、ここでは前回までの会合で制度化に当たって考慮すべき要素として、全般的問題、制度的問題にわたって御議論いただきましたので、これらの御議論を念頭に改めて考慮すべき要素を10項目に整理してございます。
 特に、一番下でございますが、前回の会議で日米欧の特許保護の違いにつきまして御議論になりましたし、本日の議論の大前提ともなりますので、これは改めて資料2で整理してございます。恐縮でございますが、まず、資料2の「特許保護の現状について(医療機器)」をごらんいただきたいと思います。
 資料2でございますが、前回の会議では特許保護の現状についての議論の中で、現在の制度で医療機器・医薬それぞれについてでございますが、どこまで保護が可能かについて、関係者間で認識に若干のずれがございました。そこで事務局において再度、特許庁、関係する製薬業界と事実関係を確認し、とりまとめたものが資料2でございます。
 資料2の1ページは医療機器についての特許保護の現状を整理したものでございます。上段が「物」、つまり医療機器の構造、機能、制御プログラムについての特許保護でございまして、これは日米欧共に特許保護の対象は同様のものになっているということでございます。
 下段の「方法」につきましては、1番上「医療機器内部の制御方法」について、日本では特許保護の対象になっておりますが、日本ではそれ以外の使用方法については特許保護の対象にはなっておりません。×が付いております。
 欧州では、制御方法は同様に特許保護の対象でございますが、使用方法については×、一部薄い色で△が書いてあるかと思いますけれども、この点については、(注1)、(注2)をごらんいただきたいと思います。
 右側の欄(注1)、(注2)でございますが、ここにありますように、欧州特許庁では、医療機器の使用方法のうち、診断、特に検査に関するものの一部を特許保護の対象としております。
 (注2)に詳しく書いてございますが、診断(検査)方法の一部については、その方法を3つの段階に分けておりまして、1)、2)、3)でございますが、1)のデータ収集段階と2)の比較段階にとどまるものは必要な医療処置を決定しない中間的な結果を単に提供するのみであるとして、特許保護の対象としております。欧州につきましては、具体的には一番下の医療方法の診断方法について、特許保護の対象にするということで、一番下の診断というところに△が付いているということになっております。
 ただ、(注2)の後ろの方に書いてありますけれども、最近、1)のデータ収集段階であっても、人体からサンプルを採取する場合は、特許保護にしないという、これまでとは異なる審決が出たことにより、現在、拡大抗告部で再検討をされているということでございます。
 米国でございますが、米国では、一番下にございますように、手術、治療、診断方法にかかる医療方法全般が特許保護の対象になっておりますので、右側の(注3)にございますように、米国では医療方法全般ということで、そういう意味では医療機器の使用方法も特許保護も可能になっています。一般的には、より広い概念の医療方法として特許取得がなされております。これが1ページ目でございます。
 2ページ目に行きまして、2ページ目が医薬について、特許保護の現状を整理したものでございます。
 まず、医薬についての上段、同じく「物」の特許でございますが、物の特許では日欧では物質、それから2番目の第一医薬用途、第二医薬用途、剤型、医薬の投与形態については、特許保護の対象となっております。
 米国では、物質、剤型については特許保護の対象となりますが、その間の第一、第二医薬用途については、(注4)に注釈が付いておりますけれども、物の発明ではなくて、一番下の医療方法の発明として、特許保護がされているということでございます。
 前回、議論になりましたのが、その下の組み合わせ、ここで合剤、キット、組合せ物と書いてございまして、日米欧で基本的には特許保護の対象になるということでございますが、日本の部分については、キット、組合せ物のところについて△が付いております。
 これは、前回、特許庁と秋元委員との間で御議論がございましたように、特許庁と製薬業界との間で認識の違いがあるということでございます。右側の欄の(注1)をごらんください。(注1)に△印、即ち認識の相違のゆえんを説明しております。
 第1点は、特許庁の審査実務では、これらのキットとか組合せ物というものについて、特許対象となり得るとした運用がされているわけで、現に、特許になっている事例もあるということでございますが、審査基準には明記はされておりません。
 第2点は、特に組合せ物についても特許になっている例はあるが、製薬業界において組合せ物の用語、概念が必ずしも認識されていなかったという点でございます。
 第3点目は、その組合せ物ということで、個々の化合物を別々に組み合わせて使用する場合に、権利がどのように及ぶかについての法律的あるいは判例上の取り扱いが明確でない。どういう権利行使ができるのかということについて、法的安定性に欠けるのではないかというような懸念があったということでございます。以上、3つの点において製薬業界に懸念と言いますか、認識のずれがあったということで△となっているということが明らかになったということでございます。
 欧米については、(注3)にございますけれども、欧米においても審査基準には明記されていないという点は同様ですけれども、審査実務でこれらが特許になっている事例というのは、それぞれ皆さんの知られているところであるということでございます。
 その下の投与間隔、投与量については、日米欧において、物の発明としては、いずれも特許保護されておりません。ただ、米国については(注4)がございますけれども、一番下に、この投与量、投与間隔については物の発明でなく、医療方法の発明として特許保護されるということでございます。
 以上が医療機器・医薬についての特許保護の現状ということでございまして、その最後の3ページ目には、我が国の特許庁の医療機器・医薬に関する審査基準の関連部分の抜粋が引用してございます。説明は省略させていただきます。
 恐縮ですが、また資料1の方に戻っていただきたいと思います。
 次は、資料1の左から2段目の第2欄の「留意点」でございます。この点につきましては、医師の行為と患者に影響を及ぼすのではないかという大きな課題がございます。
 前回の会議でも、こういった懸念に対する対応の考え方をより具体的に議論すべき、あるいは、具体的に示す必要があるという御指摘もいただいておりますので、ここに掲げております9項目につきまして、これまでの議論を踏まえて、資料3として改めて整理をしているところでございます。
 恐縮ですが、A4の横書きの資料でございますが、資料3をごらんいただきたいと思います。
 資料3では「医療機器・医薬の特定の使用方法を特許の対象とする場合の懸念とそれに対する具体的な対応の考え方について(案)」ということでございます。
 まず、1ページ目の(1)でございますが、医師と患者の信頼関係への問題として、医師が特許を取得する場合に、患者に対し、インフォームドコンセント等によりその旨の情報提供を徹底する必要があるのではないか、あるいは、医師が特許を取得した場合、当該特許にかかる製品を偏重しがちとなり、患者との信頼関係を損ねることにはならないかという、医師と患者の信頼関係の問題についてでございます。
 これにつきましては、まずこの右側の欄でございますが、新しい医療機器・医薬の開発には特許の有無にかかわらず、臨床試験が必要であり、その実施に当たって重要なことは適切にインフォームドコンセントを行って患者の意思を確認することであり、また、利益相反についても十分な配慮をすることである、このために必要な取り組みを進める必要があるということで、以下にその取り組みについて書いてあります。
 まず第1点が、インフォームドコンセントの実施の推進でございまして、ここにありますように、この一番最後のところですけれども、臨床研究に関する倫理指針等が既に作成されておりますが、更にその導入に当たっては国等が中心となって特許取得にかかるインフォームドコンセントの周知徹底を図る必要もあるということを2ページの真ん中辺りに記載してございます。
 第2の問題が、利益相反の問題でございますが「利益相反のガイドラインの作成と実施の推進」という欄にございますように、本年5月の知的財産戦略推進本部会合で決定された推進計画2004において、利益相反ガイドラインの作成と実施を進めるということが決定されたということが、一番下の行に書いてありますし、また更に3ページ目におきまして、真ん中辺りでございますが、それぞれの組織の倫理審査委員会により審査の徹底の取り組みを進め、懸念されるような弊害を防止していくという必要があるということでございます。
 第2の問題「医師等の行為への影響」という点から、特許があるとライセンスや差止・損害賠償などの問題により医師等の行為に影響を与えるのではないかということにつきましては、医師等の行為への影響がないよう、法律上の扱いを明確にするということでございます。
 76年の物質特許導入のときに、調剤行為を効力除外とするというようなことを法律上明記したということの御紹介がありましたけれども、今回、使用方法の特許保護の制度化に当たっても、医師等が治療のために行う行為は、特許の対象あるいは特許の実施の対象外であるように法律上の扱いを明確にするということが必要で、その法律上の扱いを明確にすることにより医師等の行為や患者に影響を与えないようにするということでございます。
 4ページ目の第3の問題「安全性の問題」でございます。
 安全性の問題につきましては、医療機器・医薬の特定の使用方法の特許取得には、安全性の担保が必要ではないか、あるいは、特許の取得により、安全性が確認されているとの誤解につながらないかという懸念がございました。
 これにつきましては、ここにございますように、薬事承認等による安全性の担保、あるいは特許に関する適切な情報提供の推進ということを進めることによって、そういう誤解、懸念がないように適切な対応をしていく必要があるということが4ページに書かれております。
 5ページに行きまして「(4)医療コストの問題」でございます。
 医療コストの問題につきましては、特許化によって医療コストの高騰につながらないかという問題が提起されました。
 これについては、コストの問題は特許の有無だけで決まるものでもございませんし、保険診療の価格の問題でもありますが、この問題につきましては、5ページの真ん中辺りにございますが、本専門調査会でも専門家の方から先端技術の医療費に与える影響についてのケーススタディーについても御意見を伺ったわけでございますが、ここにございますように、新しい技術が患者の生活の質の向上につながる点も考慮すべきであるし、長期的な視点、あるいは介護等も含めたより広範な視点から考える必要があるのではないかということで、一概には言えないという結論であったかと思います。
 その下の「(5)独占による弊害の回避」ということでございます。
 特許取得による独占が、医療機器・医薬の安定供給を阻害し、医師の行為や患者に悪影響を及ぼすことにはならないか、そういう御懸念がございました。
 これにつきましては、右側にございますように、より広く医療機器・医薬を提供するためには、産業界が供給の役目を担うために、そのインセンティブとして、他社による模倣を防止するための、特許保護の扱いを明確にする必要があるということでございます。
 他方、こういう独占による弊害がないように、6ページでございますが、特許法の中に、公共の利益のため特に必要があるときは、経済産業大臣の通常実施権の設定の裁定により、安定供給を図ることができるという法律的な仕組みがございます。
 こういう法律的な仕組みを使って、そういう問題に対処していくことが可能ではないかということでございますが、手続が明確ではないのではないかという点につきましては、参考のところに挙げてありますけれども、特許法、それから特許法の施行規則、それに基づく運用要領で、こういった事態に対処するための公的な枠組みというものが規定されているところでございます。
 その下の「(6)制度の運用体制の充実」ということで、医療技術を的確に把握した上で特許の審査がなされるべきであるということでございまして、特許審査における基準作成、審査実務などに対する医師等による助言体制の整備、それから、先端医療に関する特許審査官等の研修等の強化ということが、ここに書かれておりますし、推進計画でも、そういった点を記述しているところでございます。
 次に7ページでございます。
 「(7)後発品参入への影響」ということで、後発品の参入を阻害することにならないかということですけれども、例えば、医薬の使用方法に特許保護を与えたとしても、その新しい特許権の効力は、既存の使用方法による医薬には及ぼさないように、法律上の扱いを明確にするということによって、影響を与えないようにする必要があるということでございます。
 「(8)特許訴訟の増加」につきましては、医師や患者に影響を与えることがないよう、医師が治療のために行う行為は特許の対象、特許権の効力の及ぶ範囲から除外するよう、法律上の扱いを明確にするということでございます。
 「(9)フォローアップ調査の実施」につきましては、76年の物質特許の導入時にもフォローアップ調査を実施しましたけれども、今回も仮に制度を導入することとなった場合には、同様の調査を実施することにしてはどうかということでございます。
 以上が、さまざまな懸念と具体的対応の考え方の整理でございます。
 それから、再び資料1に戻っていただきたいと思います。
 資料1でございますが、第3欄で「医行為等に悪影響を及ぼさないよう制度に盛り込むべき事項」ということで、前回も御紹介したわけですが、前回の議論に基づきまして、若干整理をし直しております。
 まず、上段の特許の対象でございます。特許の対象については、これまでの議論を踏まえまして、特許の対象とすべきものと、すべきでないものを整理しております。
 すべきものとしては、医療機器・医薬の特定の使用方法とし、医療機器・医薬の機能、システムや特性等に基づく、それらの作動、動作、用法などに技術的な特徴がある方法、これを特定の使用方法と呼んでおりますけれども、そういう機能・システムや特性に基づく作動、動作、用法などに技術的な特徴がある方法の発明を対象とすること。
 他方、対象とすべきでないものとしては、この場でも再三議論になりましたように、発明とならないような医師の技能や手技に属する医療方法、あるいは未完成の技術、それから人の病気の診断、治療または予防のために医師の行う行為に係る技術。
 それから、先ほど医療機器、医薬を使用する方法のうち、進歩性、新規性のない技術、そういったものは対象とすべきではないということでございます。この点については、後ほど事例を含めてもう一度詳細に御説明させていただきます。
 下段の効力の及ぶ範囲につきましては、これは前回と同様のことが書いてありますが、医師が患者に対して自由に診療ができる、すなわちライセンスを受ける必要がない、あるいは差止、損害賠償を受けることがないこと。
 一方、企業については、他社の模倣を阻止できるという点を制度的に担保すべきだということでございます。次に、只今ご説明いたしました、特許の対象と効力の及ぶ範囲の考え方を制度として考えたら、どういう形になるかというのを示したのが、横の第4欄でございます。
 ここでは、これらの諸点について法律上の扱いを明確にするということでございます。
 特許の対象につきましては、先ほども申しましたような医療機器・医薬の特定の使用方法を特許の対象とすること。そして、特許審査により、新規性、進歩性等のあるものに限定するということ。
 第2点は、人の病気の診断、治療または予防のために行う行為に係る技術は特許の対象外とすること。
 それから、効力の及ぶ範囲としては、医師等が人の病気の診断、治療または予防のために行う行為、あるいは治療のために医療機器・医薬等を生産等する行為については、特許の効力は及ばないこととする。
 医師等以外の者が、医療機器・医薬の特定の使用方法の使用に用いる医療機器・医薬を生産・販売する行為、これには特許の効力が及ぶこととしたらどうかということで、これらについて法律的な担保、法律上の扱いを明確にするということでございます。
 その他、これに関連して法律的にいろいろな部分で考え方を整理する、あるいは法律的にテクニカルに担保するところが出てくるかと思いますので、それらについては別途詳細な詰めが必要かと思います。
 資料1の一番最後の備考欄でございますが、こういった制度設計をした結果、どういうことが実現されるかということでございますが、これは先ほどの目的に対する結果でございますので、同様のことが書いてありますので、説明は省略させていただきます。
 長くなりましたけれども、続いて、今の制度設計、あるいは制度に盛り込むべき事項として御説明した点につきまして、もう少し詳しく資料4と資料5−1、5−2で御説明させていただきます。
 まず、資料4でございます。資料4が、ただいま御説明しました医療機器・医薬の特定の使用方法の概念的な整理をもう少し医行為との関係も含めて整理をしたものでございます。
 資料4の一番左側でございますけれども、最上段に「発明とならない技術」、それから「人の病気の診断、治療又は予防のために行う行為に係る技術」、それから「医療機器・医薬の特定の使用方法」と3つの区分に分けております。
 一番左の「発明とならない技術」というのは、先ほども申しましたけれども、医師の技能や手技に属する医療方法、それから具体的な技術要素が明確化されていないアイデア段階や未完成の技術、こういうものでございます。これらは当然、発明とならないものですから、特許保護の対象にもならないということであります。
 2番目の「人の病気の診断、治療又は予防のために行う行為に係る技術」は、医療機器・医薬の使用の有無に関わらず、医師等の行為に係る技術、人の行為に係る技術に技術的な特徴がある発明ということでございまして、最終的には医師等の行為に係る技術的要素か否かがポイントとなります。
 このような技術については、仮に高度なもの、あるいは新規性、進歩性があるものであっても、例えばこの例にありますように、特別な技法によるような切開方法とか、切除方法などのような、いわゆる術法については、新規性、進歩性が仮にあったとしても、特許保護の対象とはしないというのが今回の整理でございます。
 その右側の欄、医療機器・医薬の使用方法ですが、先ほど申しましたように、これは医療機器・医薬の機能やシステム、あるいは特性等に基づく作動、動作、用法などに技術的な特徴がある方法というふうに定義しておりますけれども、これについては、こういう技術的特徴があるものであって、かつ高度なもの、あるいは新規性、進歩性があるものといったものが特許保護の対象にするということが、今までの議論から出てきた考え方ではないかと思います。
 ここで○が付いているところに事例がありますけれども、後ほど資料5で個別事例について御説明させていただきます。
 それから、前回も医行為と医療関連行為との関連ということで、右側のような図を用いたかと思いますけれども、今の考え方を広義の医療関連行為、狭義の医療関連行為ということで、もう一回ポンチ絵風に整理したものが右側の図でございまして、先ほど申しましたように、技術の分類というのは、特許保護の対象に係るものですけれども、医師等の行為に係る技術、上段の部分ですが、これは対象としないということでございます。
 それから、医療機器・医薬の特定の使用方法に関するものでも、新規性、進歩性のあるものに限って○としております。
 それから、医療機器・医薬は既に特許保護の対象としているというのが特許保護の対象の全体でございます。
 それから、特許の効力の及ぶ範囲については、医師等の行為については対象としないということでございます。
 それで、医師等以外のもの、企業が使用方法の使用に用いられる医療機器・医薬を生産査、販売する行為、これは対象とするということです。
 右側の医療機器・医薬の生産、これは従来からあるものです。そういうことで従来の考え方、分類によって整理してもこういうふうに整理されるということでございます。
 資料4の2ページ目は、それを日米欧で比較したものでございまして、前回日米だけの比較表を出しておりましたので、日米欧の形に再整理したものでございまして、一番左側の欄が、今、御説明しましたもので、これの中段を見ていただくと、特許制度ということで、一番左側が、今、申しました制度案、特許の保護の対象、医療機器・医薬の特定の使用方法、新規性、進歩性のあるものに限るというもの、そして、それの効力は、その生産、販売、企業の行う生産、販売だけだということを示しております。
 アメリカの場合は、広く医療方法全般に特許がかかっていて、その全般に効力が及んでおります。ただ、医師の行う医療行為については、適用除外があるということでございます。また、下にありますように、バイオテクノロジー特許とありまして、それは例外になっております。これがアメリカの制度でございます。
 それから、欧州の制度は、先ほども特許保護の現状のところで御説明しましたけれども、一般的には医療方法、いわゆる手術、治療、診断方法は不特許ですけれども、先ほど申しました診断のために中間的な結果のみを得る一部の診断(検査)方法は特許の対象になっております。ただ、これについては効力制限の規定はないということが、欧州の制度のところに書かれております。
 この資料4の考え方の整理に基づいて、個別事例を示したものが、資料5−1と5−2でございます。
 資料5−1は、先ほどの特許保護の現状と、それから、今、提起しました使用方法についての全体をポンチ絵にしたものでございまして、破線でくくってある部分が、現在、特許保護の可能な範囲ということで、先ほども御説明しましたけれども、物については構造機能、プログラム、それから方法については、内部の制御方法ということでございます。
 それから、黄色の部分が、ただいま説明しました作動方法、動作方法ということでございまして、2ページ以降に具体事例が書かれております。
 具体事例をざっと御説明したいと思います。2ページでございます。
 一番上に注釈が書かれておりますけれども、この事例は、まず既存の特許出願の事例、日本で出願されたもの、あるいは米国で出願されたものなどを参考にしまして、事務局の方で、機器、あるいは医薬の使用方法というふうなものに書き換えたものでございます。
 したがいまして、技術的なレベルというのは、例えば1ページの米国特許、1972年出願と書いてありますが、1972年段階で、進歩性、新規性が判断されているものでございまして、技術レベルはそういうものだというふうに理解していただきたいと思います。
 それから、本文の方に下線が引いてありますけれども、これが先ほど申しましたような、医療機器・医薬の機能・システムや特性等に基づく作動、動作の用法などの技術的な特徴の部分を例示的に下線を引いております。
 第1の事例「磁気共鳴装置の作動方法」というのは、このポイントにありますが、この技術の技術的な特徴は、磁気共鳴装置により正常細胞とがん細胞の磁気共鳴信号が異なることを利用して、がん細胞領域を特定すると、そういう機能にあるということでございます。
 急いで恐縮ですが、3ページの事例2は「人工眼システムの作動方法」ということでございまして、この下の方のポイントと、右側の図を見ていただきたいと思いますけれども、この作動方法の機能的、システム的特徴は、外界の画像イメージを光信号に変換して、この光信号を眼球内の受光素子で受けて、それを電気刺激信号に変換して、これを電極を通じて網膜に伝えるというようなシステム、これに技術的特徴があるということでございます。
 4ページの事例3は、「超音波照射装置の作動方法」ということでございますが、これも同様に右側の図と、このポイントのところを見ていただきたいと思いますけれども、腫瘍の近傍に埋め込まれたキャリアというものに対して、外側のトランスデューサーという機器から第2高調波重畳法という形で、2つの高周波を発生させて、それの重畳でできる超音波を、このキャリアに照射するということで、こういう機能に技術的特徴があるということでございます。
 5ページの事例4。「電極埋込み式聴覚補助装置の作動方法」ということでございますが、これは図が複雑で説明しにくいのですが、一番下のポイントのところを見ていただくと、患者に認識される最小音と、患者が不快に感じる最大音を、この機器によって演算し、その範囲内で鼓膜、あぶみ骨の奥にある蝸牛管の電極に信号を送信する、音声信号のコントロール機能という点に特徴があるということでございます。
 6ページの動作方法の事例1でございますが、「マイクロ手術ロボットの動作方法」ということでございまして、「(ポイント)」と右側の図を見ていただきますけれども、その右側の図で人体内に入ったマイクロ手術ロボットにより撮像された映像のモニター表示に基づく体外装置のマニュピレータ信号によって、これは2つのカプセルがありますけれども、第2のカプセルの撮像信号を受けた体外装置のマニュピレータ信号によって、第1のカプセルの処置手段が動作すると、そういうシステム的、機能的なところに技術的特徴があるというのが、事例1でございます。
 7ページの事例2は、これも同様でございますけれども「定位脳手術ロボットの動作方法」ということで、右側の図、脳内に挿入された内視鏡で撮像された病変部のモニター表示に基づくマニュピレータの信号により、内視鏡内の鉗子が動作すると、そういう機能的なところに技術的特徴があるということです。
 8ページの事例3。「高周波加温用バルーンカテーテルの動作方法」でございますが、この右側の図で、右側のものが体内に入っているものですけれども、左側の体外に設置された対極板と体内にあるバルーン壁内、この網目状の電極との間で高周波を発生させることにより、バルーン内の温度を適切な温度に加温する、そういうシステムに技術的な特徴があるというのが、高周波加温用バルーンということでございます。
 9ページの事例4。「カテーテル誘導システムの動作方法」ということでございますが、X線によるモニター表示に基づく信号によって、傾斜磁場を制御することによって、このカテーテルを病変部に誘導していくというシステム、これに技術的特徴があるカテーテル誘導システムということでございます。
 以上が、医療機器の作動方法、動作方法であって、かつ進歩性、新規性のあるものの事例でございますが、10ページに参考として、特許にすべきではない「人の病気の診断、治療又は予防のために行う行為に係る技術」ということを取り上げております。
 下線部は、同様に、ここでは特許にすべきでないゆえんである医師等の行為に係る技術の技術的特徴を例示しております。
 第1は、白内障の手術方法ということで、メスを用いて眼球の表面をU字状に切開して白内障を手術する方法で、U字状に切開するというところに技術的特徴がございますので、これは特に医師の行為になるということで特許にならないということでございます。
 事例2は、鼻炎の治療方法ですけれども、リチウム金属誘導体を足と脇腹のつぼに張り付けるというところに技術的特徴がありますので、これも特許保護の対象にならないということでございます。
 11ページの事例3。「体腔内粘膜のレーザー治療方法」ということでございますが、これはレーザー治療を行う際に、皮膚の下層部にまでレーザーが透過しないように、病変部のある粘膜下に生理食塩水を注射して粘膜を隆起させる、そこに障害物を置くことによって、レーザーを透過させないという注入というところに技術的特徴がありますので、これも特許保護の対象にならないということでございます。
 事例4は「脳腫瘍の治療方法」でございますけれども、これは脳に穴を開けて、その中のバルーンに放射性液体を注入するということに技術的特徴がありますので、これも医師等の行為になりますので、これも特許保護の対象にするべきではないということでございます。
 以上が、資料5−1の医療機器の特定の使用方法でございます。長くなりましたが、最後の資料で資料5−2「医薬の特定の使用方法について(事例)」でございます。
 これは、最初に御説明した特許保護の現状で、物の発明については、第一医薬用途、第二医薬用途、それから医薬の投与形態、剤型、それから組み合わせというものがございます。
 組み合わせの「キット、組合せ物」については、どこまでできるかというのについては、見解の相違があるということで△だったわけですが、「現在、特許として保護可能な範囲」で「物の発明」としてはこのように示しております。
 それから「方法の発明」については、黄色で書かれておりますが、いずれも特許保護の対象にはなっておりません。
 特に、ここで議論になっているのは、4番目と5番目の使用方法、2つ以上の医薬を一緒に、または別々に組み合わせて使用する方法、それから投与間隔、投与量に関する医薬の使用方法、ここのところが議論の焦点でございますので、これについての事例を2ページ以下に挙げております。
 2ページでは、まず、最初の使用方法のうち、2つ以上の医薬を一緒に、または別々に組み合わせて使用する方法ということでございまして、事例1は高血圧治療のために、(I)のアンジオテンシン変換酵素阻害剤と、(II)の係蹄利尿剤を組み合わせて使用する、組み合わせるというところに技術的特徴があるという使用方法。
 事例2は、アレルギー治療のために、(I)のPAF拮抗薬と抗ヒスタミン薬を組み合わせるところに技術的特徴があるという使用方法。
 事例3は、悪心及び嘔吐の治療、予防のために、グラニセトロンとデキサメタゾンを組み合わせるというところの技術的特徴があるという使用方法。
 事例4は、過増殖性血管病の治療予防のために、ラパマイシンとヘパリンを組み合わせるというところに特徴のある使用方法ということでございます。
 3ページは、投与間隔・投与量に特徴のある使用方法ということで、事例1は、ここにありますように、過度の骨吸収を抑制するために、35mgから70mgの投与量と週1回の投与間隔というところに技術的特徴があります。
 事例2は、ホルモン依存症を治療するために、セテロレリックスを、開始投与量は1日当たり1〜60mg、維持投与量は1日当たり0.1〜10mgという投与量に特徴のある使用方法。
 事例3は、これはこの間も議論になりましたけれども、タキソール使用の12時間前、6時間前、あるいはデキサメタゾンの使用後タキソール使用前、それから、タキソールは175mgを3時間にわたりと、こういった投与間隔を含めた使用方法に特徴があるというものでございます。
 長くなりましたが、説明は以上でございます。


○井村会長 前回いろいろ出ました議論につきまして、もう一度で事務局で検討し、今日それらをとりまとめて、全体像を、今、説明してもらいました。
 この会ももう8回になりますので、そろそろとりまとめの方向に進みたいと思います。ですから、そういう点を意識して、これから議論をいただきたいと思います。どの点についてでも結構ですから、どうぞ御意見をください。
 どうぞ。

○野中委員 私は途中から参加さていただきましたけれども、確かに8回もやられたんですから、そろそろ結論を得たいという気持ちは十分よくわかります。しかし、医療は医師と患者との信頼関係に基づくものなので、それに対する悪影響についての皆さん方の、特に特許保護を進めたいという方々の悪影響というものに対する認識がまず低いと思いますので、その点に関しては、もう一回御考慮いただきたいと思います。
 もう一つ、特許には、独占と排他と、それから活用がございます。活用された場合には、皆さん方の御議論は理解ができる部分もございますけれども、独占と排他というものが、医師、患者さん部分に与える影響の認識が、私は誠に希薄であると思います。
 先ほどの資料3にあるような部分においての考え方に対しても、活用と独占と排他というものがごちゃまぜに議論されて、活用されているからいいんではないかと結論づけるのは問題があると思います。
 そして、もし公共の福祉において悪影響があれば、それが本当に適切に現場で検討される仕組みがあるのかどうか。そのことが私はわかりません。
 また、もう一つは、この問題というのはある面では医療を産業化する話でございます。
 医療を産業化するという時点で、医療に対するいわゆる悪影響という部分がでてきます。
 医療は、本来、万国共通でございますから、米国と日本と欧米が対立するというものではなくて、病気という、いわゆる医療を受ける患者さんを消費者とすれば、その方々は御自分の意思で消費者になられたわけではないんだと。その人に対して、医療行為をすることが、日米欧の競争とどう関係があるのかと、私はその辺が一番医療を担っている一員として、ここにおられる先生方も特に日本の医療のトップの中で先端として担っている方々ですから同じだと思いますけれども、そういう視点で、もう少し十分検討していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

○井村会長 特許全体を問題にして、それが医療にどういう悪影響が及ぶのかということも1つあると思うんですね。もう医療関係の特許は一切認めない、それも一つの立場ですね。
 ただ、今回の議論は、実は既に、薬もそれから機械も認めているわけです。その特定の使用法に対して特許を認めるかどうかということを議論しているわけですが、悪影響と先生がおっしゃったのは、特にどういうところですか。

○野中委員 それはむしろ皆さん方が悪影響というものがないかどうかということをもっと徹底的に言うべきであり、私たちが言うべきことではありません。この会議は悪影響に配意しつつとなっているんですから、その立証責任は私たちのだれにがあるんでしょうか。それは、むしろ進めたい皆さん方が、こういう悪影響に対して、私たちはこういう配慮をするという視点が必要だということです。

○井村会長 かなり議論してきたつもりなんですが。

○野中委員 ですから、それが独占と排他と活用という部分がごちゃごちゃになっているということを私は言っているわけですよ。活用というんだったら、これぐらい医療コストがかかる、手を貸すと。でも独占と排他のときには、本当にそうでしょうか。

○井村会長 その辺はもうちょっと議論をいただきたいと思いますが、特に日本の医療においては、医療費を企業が決めているわけではありません。だから、独占と排他によってどういう悪影響が出るかということは、一概には言えない問題ではないかと思います。

○野中委員 一概に言えないということは、御認識がないということですよ。

○井村会長 いや、そんなことはないですよ、やはり日本の医療費は、すべて国が決めている。

○野中委員 いや、医療費の話をしているわけではなくて、独占、いわゆる医薬品とか、そういうものに対して認めたことは、それはそれで私はいいと思います。
 でも、物の特許を認めたことに対しても、そこに悪影響がなかったかどうかの検証はされたんですかと私は言っているわけです。確かに30年前の話で30年間何も起きていないとおっしゃるかもしれないけれども、本当に医師と患者とか、そういう部分の中で悪影響がなかったのかどうか、その検証はどうされているんでしょうかということを言っているわけです。

○井村会長 それは事務局の方でフォローアップをしているわけですか。

○小島事務局次長 1976年の物質特許導入時については、資料3にも書かれておりますし、前々回でしたか御説明があったかと思いますけれども、医療コストへの影響というのは、フォローアップ調査をしているというのは、資料3の7ページにも書かれているところでございます。

○井村会長 それで特に問題点はなかったということですか。

○小島事務局次長 はい。

○野中委員 医療費のことだけで問題点がないと言いきるのはいかがなものかと思います。もうちょっと深く掘り下げて検証すべきじゃないですか、何も問題が起きていないから悪影響がありませんという話ではないはずです。
 新たなことを認めていくわけですから、物を認めたときに本当に悪影響がなかったのかどうか。そういう部分をもっと検証したりすることがこの議論を始める前に、必要じゃないでしょうかということを言っているわけですよ。
 確かに、独占と排他という部分と活用という部分をごちゃごちゃにしていたら、私は活用という部分は十分よくわかります。でも、独占と排他で別々でみた時に悪影響として何が想像できるかということを是非考えてくださいということです。
 先生もそうですけれども、我々も医師ですのでやはり目の前の患者さんを治したい、だからどうにかしたいという気持ちは十分わかります。でも、そのことが利益相反と言いますか、逆に言えば、従来は独占と排他に乗らなくても、いろんな部分の中で新しい技術が発明されたわけですね。
 ですから、そこをそれと違ったことにするには悪影響があるのかないのか、治療を受ける患者さんに機会を失わせるんではないか、狭めるんではないだろうかと、そういうことが一因としてありますと大変ですから、そういうことをどうぞ検討してくださいということです。

○井村会長 それは、この委員会で相当検討をしたつもりです。だから、いろんな有識者の方に来ていただいて、その辺りのことをいろいろ議論していただいたつもりです。

○野中委員 でも、私は前の議事録を見たときに、それは活用という部分でお話になっています。独占と排他の部分ではありません。

○片山委員 特許そのもののとらえ方の問題だろうと思うんです。活用と独占と排他というものが、どういう関係にあるかということだろうと思うんです。
 基本的には、特許というのは独占と排他ということがあってこそ活用される、そういう裏腹の関係にあるもので、これを切り離して議論するということは、本来特許ではあり得ないことなんです。
 つまり、独占できるという権限を与えられるから活用されるという面があるわけです。それは片方だけ、活用だけでいいではないかという、そういう議論というのは本来成り立たない議論だと思います。
 独占権を与えることによって、技術が進歩する、技術の活用がなされているということを独占を通してやろうというのが、本来の特許制度だと思います。 したがって、ここで議論していることは、勿論専門でない方々にとっては、なかなかそこは混同というふうに移るのかもしれませんが、我々は混同しているつもりは全くなくて、当然独占があるから活用されるんだと思っているわけです。
 弊害があるとすると、ここで事務局の方のレポートでまとめられていますとおり、例えばエイズ薬の問題が南アフリカで起きましたけれども、これはそういう非常に公共的に必要になるような薬があったけれども、それが何らかの事情でもって、これは特許権者が仮に個人の特許権者として、ちょっと極端な例ですけれども、エイズになった人を救うということに対しては反対であるというような信念を持っている人が仮にいたとしますね。
 そういうような場合にライセンスをしない、自分はそれはそれで結構じゃないかと思っていると、そういうような極端な事例の場合に、それはやはり困るでしょう。そこで公共の利益のための自主権という制度があるわけです。
 これは、法律的にはきちんとされております。やり方がわからないとか、そういうような話ではありません。
 まだ実例がないのは、そういうふうな事態が、これは先ほど申し上げたような事態が経済原則に反する事態ですので、実際の世の中では起こらなかったということだろうと思います。
 それは、ありがたいことに日本というのは自由競争が発達していますので、その中で企業間の競争の中で公共の利益の自主権というようなものを活用しなくてもこれまで消化されてきたということだと思うんです。
 ただし、万一の場合に備えて、そういう制度は政府側ではきちんと整っているという認識でいいだろうと思います。もう一つおっしゃった中で、それでは経済的に見て、医療費の関係でどういう影響があったか、これは極めて難しい問題だろうと思います。
 ただ、ここで御説明をいただいたそれぞれの御専門の先生方の御意見としては、それは両方ありますね。短期的な高騰を招くこともあるでしょう。しかし、いろんな目で、もう少し広い目で見たときには、1つは長期的な話。もう一つは、患者さんの生活のレベルというようなものを考えた場合には、十分それが社会的なコストとしては、そういうものが消化されているんではないでしょうかという意見が大勢だったろうと思います。
 特に、今回の事務局の案でもって弊害について十分検討されていないと、そういうことには当たらないんだと思いますけれども。

○野中委員 私は、やはり1つは特許というものの部分が、いわゆる対象者が患者さんでありますから、それは一般の消費者とは違うわけですから、そこの部分の悪影響というものは、より慎重にお考えになるべきであり、その中に独占と排他と活用という部分を十分お考えくださいというふうに言っているわけですよ。
 ですから、過去に30年間の間に問題がないからといっても、その問題はむしろ把握していないかもしれない、そのことに対してどうやって把握するような準備があるんですかということを聞いているんです。法律的に整備されているからといって、では世の中に泣いている人はいないんですかということです。むしろ、そのことに関しては、そこに風穴を開けるとか、一歩進むんであれば、より慎重にお考えになって配慮すべきではないですかということを言っているわけです。
 それが従来何もなかったからということで、それから医療費のコストの話もありますけれども、私はそんなコストの話を言っているわけではありません。それは独占と排他という部分が、その中で一時的に制限をすることです。一般的に考えれば、その後技術が活用されればそれが広がるでしょう。でもそのことと、その一歩手前と後のことを一緒に考えていていいんでしょうかということです。それは、先ほど言われたエイズの件に関しても、その人にライセンスを与える人が判断するわけではないわけですから、そんなことを考える自体がおかしいわけです。
 私とすれば、何回も言いますけれども、悪影響を及すかどうか、それは30年間なかったかもしれないけれども、これからもし進めるなら、その悪影響を排除する仕組みをお持ちなんですか、そのことを言わなければ、悪影響を配慮しつつということにはならないんじゃないでしょうかと言っているわけです。

○井村会長 それはフォローアップ体制をつくるということを言っていますけれども、それでは不十分だということですか。

○野中委員 それでは、不十分ではないでしょうか。

○井村会長 では、何をつくったらいいと思いますか。

○野中委員 ですから、むしろ私たちが提案するよりも、そのことを進める方々が、自分たちはどういうふうにするかということの御提案が必要だと言っているわけです。

○井村会長 委員からいろんな意見を出していただきたいということを申し上げているわけです。

○野中委員 それはそうです。でも、私はこの議論の中で皆さん方のお話を聞いていると、いつも活用で、デメリットな部分をやると、その部分を今まで提案されてないんです。

○井村会長 フォローアップ体制をつくるということは提案しています。

○野中委員 フォローアップ体制というものが、この中の資料3にあるようなものだけで本当にいいんでしょうかということです。私は、その辺のフォローアップ体制というだけの認識だけでは、むしろ医療に対する悪影響というものを全く認識してないのと同じだと思っています。

○井村会長 もう少し御意見をください。ほかの方。片山委員、どうぞ。

○片山委員 現状のままに維持することによる悪影響というのも当然あるわけでございます。それの悪影響が非常に、特に先端医療を考えた場合に、その悪影響が大きいんではないかと。したがって、特許制度を活用すべきなんじゃないかということが、もともとの事の発端だろうと思うわけです。
 したがって、一体ここは知恵を出し合って、どうすれば悪影響がないんだろうかという議論を我々はしてきたつもりなんですけれども、最終的にはそうすると価値判断ということになってしまうわけですけれども、必ずしも現状そのままで置いておいたらいいんだというという話ではないと思っているんです。


○井村会長 どうぞ。

○見城委員 いろいろ御説明ありがとうございました。私の以前からの質問に対しての御回答をいただいたので、大変わかりやすくなってきたと思います。
 この中で、まだ解明できてないというか、やはり不安になる要素として、日欧米のどういう状況が特許がなされているかというのは、ここの表にも出ていますか。破綻を来しているようなところはないんでしょうか。つまりアメリカはこれだけ特許を敷いていて、それによって実際には特許をつくったけれども、実際活用してみたら、やはり人が病気になって、そこにお医者様という立派な方がいらして直してあげようとしてくださる。そこへいろんなものがある。それで医療行為というのがあるわけですが、そこにある特許がアメリカの場合設定されていて、現実に実行段階で、この特許を制度としてつくって押さえたけれども、現行としては破綻しているとか、余りつくっている意味がないか、そういうことはないんでしょうか。
 それが一点です。

○井村会長 私の知っている範囲でお答えしますと、これは医療制度そのものの問題の方が大きくて、特許の問題ではないと思っています。アメリカでは御承知のように、国による保険がないわけです。だから、メディケア・メディケード以外全部民間なんです。16%ぐらいの人は何も保険を持ってない。
 だから、そういう状況がいろんな問題を起こしているのは、間違いがありません。

○見城委員 アメリカは大前提が日本のような国民皆保険ではありません。この様に最初の条件が違うという事。その違うアメリカがこれだけ特許を認めていますが、現実に医療が行われる段階で、この様な医療行為への特許の意味がないとか、批判や反省等出ていませんか。

○井村会長 どうぞ。

○小島事務局次長 1点補足説明させていただきますと、資料4の参考で日米欧の制度の比較があったと思いますが、その中で米国の制度があったと思いますが、米国の制度は医療方法全般について特許を認めるという制度ですが、この中で医師等の医療行為については、適用除外ということになっているわけです。1950年ぐらいから医療方法を無条件で特許対象にしていたわけですが、1993年に有名なパリン事件というのがございました。ここでも御紹介がありましたけれども、医師が訴えられるという事件があって、その後1996年に法改正がなされて、この医師の医療行為に対しての適用除外という制度が導入されたということで、アメリカにおいても医療方法特許、50年ぐらいの中でそういう見直しが行われたということでございます。それで、現在は医師の行う医療行為については適用除外になっているということです。

○見城委員 結局、医師が医療行為をするのは適用除外だというのも、今回の基本条件になっておりますが、アメリカの場合それでその適用除外を設けた上で、現特許法で行われているわけですが、それが医療行為に対して、どういう悪影響を及しているのか。医師が医療行為は免除されているけれども、それ以外ではどういうメリットが現実に出ているのか。結局、日本が目指そうとしているのはそこにメリットがあるからですね。

○井村会長 アメリカのまねをしようとしているわけでは決してないわけです。

○見城委員 それは確認させていただきました。アメリカに向かうのではないと。

○井村会長 それは、アメリカはもう概念的に方法すべてにかけられるわけです。だから、極めて幅広い特許も成立し得るわけですけれども、そういうことを我々は考えているわけでありません。

○見城委員 これもずっと前回からの議論でわかっております。

○小島事務局次長 今、見城委員が御指摘になった、これはアメリカでどうかというのは、この場で特許庁等からヒアリングをしたときも、その後の状況について特に問題になった事例は、報告されてないということです。

○井村会長 どうぞ。

○秋元委員 見城委員に味方するわけではないんですが、アメリカで遺伝子診断というのが非常に問題になったことがあります。それを自由にしようということで法案が出ました。でも、マジョリティーはまだそれに賛同してないから否決されています。
 だから、いろんな議論が当然あると思うんです。この場でもいろんな議論があるかと思います。ただ、現在アメリカではまだそういう状況であると。議論はあるにしても、やはりその法案は成立してないということでございます。

○井村会長 乳がんの遺伝子情報の診断についてもめているわけですね。そういう極端な例は確かにありますが、一般論で言えば、非常に日本とアメリカの医療制度の違いが大きくて、なかなか一般化して考えにくいところがあるわけです。例えば、薬の値段なんかでも、日本は厚生労働省が決めますけれども、アメリカは製薬企業が決めるわけですから、だからいい薬を出せばどんどん製薬企業は収入が入ってくる。では特許が悪いかというと、そうも言えない。

○見城委員 その問題は、また時間を使ってしまって悪いと思いますけれども、私は一つの懸念として、ヨーロッパはなぜ健診するとか、そういったところのみで止まっているのかというのが、まだ依然としてそこのところは疑問です。
 2番目は、これをいろいろとよく読ませていただくと、本当にだんだん複雑で、非常にトリッキーというかわからなくなっていくんですが、これは冷静に医療行為ということをどうするかということだというところだけは外せないと思います。基本的に。そうしますと、その以前の問題で物質特許、物の特許のところで、例えばカバーできているものが、これでも先ほどの御説明で特許庁の判断と、製薬業界の判断とにずれが生じている。例えば、それが法的に不安定であるという表現がございましたが、例えば、そういう部分できちんとできることはないかと。まず段階的に、全部を一緒にここで決めてくれと言われるから進まないのであって、一つひとつクリアーにすれば、例えば、今日の御説明の中でも、1つはそういった法的に整備されているとおっしゃっている特許庁と、いやそれをそうとは解釈してなかったという製薬業界との差が生じています。例えば、ここのところがどれだけ埋まるのか、そして法的に安定するのか、これが2番目の問題。
 3番目は、患者の側なんですが、インフォームドコンセントということは、お医者様、それから医療関係の方から、とてもよく出る言葉で、大変耳障りのいい言葉なんですが、現実にここは気を付けていただきたいのは、私どもが実際に患者として行きましたときに、ばっと提示されて、三択、四択のように出されて、これの中でどれを選びますか。例えば、そういうことでも、非常に一方通行であるということがあります。患者は非常に弱い立場で、もしお医者様の機嫌を損ねたらもうこの際殺されるかもれしないと思いますので、でも本当にそういう気持ちで、御機嫌を損ねないように顔色を見ながら、A、B、C、D、どれを選んだら私は生かしてもらえるんだろうと。例えば、こういう心境で皆さんインフォームドコンセントに対応していくわけです。
 それから、今、私はお陰様で健康ですから、一生懸命考えるエネルギーがありますが、もうがんだ何だと打ちのめされて、生きる気力もないところで、はいインフォームドコンセントをしました、選んでください、あなたはフリーハンドでどれでも選べると言われて本当にそれに対応できる能力、体力かというと非常に難しいわけです。
 ですから、これもこちらの懸念に対して、資料3でインフォームドコンセントのことが大変懇切に書いてありますが、単純に言葉の中で利益相反についても十分な配慮とか、そういうことではここは通れないと。

○井村会長 インフォームドコンセントの問題は、非常に幅の広い問題であって、特許はほんの一部にすぎないわけです。

○見城委員 ただ、活用するに当たっての懸念に対してこういう答えが出ていますので、一応インフォームドコンセントと。

○井村会長 インフォームドコンセント全体に今おっしゃったような問題点があるのは、それは医師の側も十分気が付いているわけです。
 ただ、それ以上の方法が今のところなかなか見当たらない。したがって、限られた時間で患者さんに説明するということで、患者さんは選択が非常に難しいという話はよくわかると思います。
 2番目の問題は、少しだれかから答えてください。法的に整備されていたというよりも、運用的にこういうふうになっていた。条文の整備は何もなかったので、特許庁の方は運用でかなり柔軟にやっておられたけれども、それが一般にはわからなかったということではなかったかと思いますが、それでいいですか。

○小島事務局次長
 事務局の方で、前回の議論で、両者の認識のずれというのを整理させていただいた中で、特許庁の方では審査運用上、キットとか組合せ物というものを特許対象として認め、それから特許として認めたものもあるというふうな認識でおりましたけれども、ユーザーたる、あるいは審査を受ける側の産業界側では、必ずしもそれが一般的にキット、組合せ物として特許保護されるという認識はなかったと、あるいはそういう特許、個別に探せばそういうのがあったのは事実ですけれども、それが広く認識されてなかったということでございます。
 また、これによって判決とか審決とか、そういうのも出されてないので、どういう効果が実際上、キット、組合せ物にあるかというのもはっきりしないというのが実態だということです。
 資料5−2の図ですけれども、今、見城委員から指摘がありましたように、そこのところをはっきりさせたら、上の物の発明のところで、ある程度、解決できる部分があるんじゃないかという御議論だったんですが、これは2つの要素がありまして、前回の会議で片山委員からありましたように、特許制度は一般的には物の発明と方法の発明というのがあって、その発明の本旨と言いますか、技術的な発想が物から発想されたものか、あるいは方法論で発想されたものかによって、発明の保護が両方でできるということが一般的であって、考えたアイデアが方法論でできたものはその本旨に従って方法として保護するのが、適当ではないかということでございます。
 それから、前回もありましたけれども、物で保護できる範囲と、方法で保護できる範囲は、おのずから、全く一緒の場合もありますけれども、違う場合もあって、保護の範囲が違ってくるということで、通常は特許は一つの特許発明をしたときに、できるだけ権利配分をして、ほかの人が簡単に模倣できないように物でも特許を出し、それから方法でも特許を出して、その権利範囲が違うところで最大限取るということでございます。特に方法論から発想された、発明の本旨が方法論であるものについては、方法論で出した方が権利の範囲も広いということで、物で何とかこじつけてカバーできる部分も確かにあるかと思いますが、それだけでは不十分なので、やはり方法論の場合は発明の本旨に従った方法の発明も認めるべきではないかというのが、これまでの議論だったと思います。
 前回、片山委員から御説明があったのもそういったことではないかと思います。

○井村会長 それでは、今の問題は、また後で議論があれば。

○見城委員 これは特許庁の方からも伺いたいです。法的に不安定ということですので、一つひとつ明快にしていかないと、前へ進めないものですから。

○井村会長 それでは、簡単にお願いします。

○小野特許技監 資料5−2で御説明いたしますと、前回議論のありました組合せ物で、組み合せるところに特徴があるものは、ここにございますように、キット、組合せ物として許しております。これは日米欧とも全く同じ許し方をしていることが現実だということです。
 製薬協の方からの御懸念は、ここの中のところに出ている問題でありまして、ここに書いてございますように、別々に組合せて使用するという場合にも、この物の組合せ、AとBを組み合わせて使用するというふうに許したとしても、別々に利用するものがその特許の権利範囲の中に入っているかどうかわからないということでございます。
 ここの図からわかりますように、一番の問題は、我々は使用方法である、投与間隔、投与量にのみ特徴があるものは、これはもう先ほど井村先生から御指摘があったように、これは法改正をしないと許せないということです。
 この組合せ物の場合、別々に経時的に使用するものは権利範囲に入るかという点に関しては、見解の相違があるというのは事実だと思います。これは先ほどございましたように、製薬協の方は組合せ物等に関して認識がなかったということですが、我々の考え方としては、あくまでもそれぞれ特定の薬効を有するAとBが知られていても、それらを組合せること自体が新規な場合、新たな又は異なる薬効を有する組合せ物又は組成物という剤(物)という上位概念で許しております。
 そのときに、これはほかの分野でも同じですが、例えば接着剤等は組み合わせるということが新規であれば、別々に経時的に使用する場合であっても当然その特許権の権利範囲の中に入るという意味で許しているということです。この辺りはただ製薬業界ではそういう認識がなかったということでございますので、見城委員の御指摘にお答えいたしますと、やはり審査基準等は整備されていなかったということは事実でございます。そこは今後明確にしていく必要があると我々は思っております。

○井村会長 ちょっとほかの委員の方が手を挙げておられますので、広井委員、お願いします。

○広井委員 今のに関連することにもなるかと思うんですが、今回の最終的な提案が医療機器、医薬の特定の使用方法というふうになっているんですが、これの意味がまだ十分理解できていません。つまりもともと先ほどの御説明にもありますように、物か方法かという2つのカテゴリーがあるわけですが、今回の医療機器、医薬の特定の使用方法というのは、第三のカテゴリーのようなものをつくることになるのか、方法の方に大きく踏み出したということになるのか、それとも例えば資料4の御説明などを見ますと、資料4の真ん中の医療機器、医薬の特定の使用方法の下の説明のところでは、括弧の中に最終的には医療機器、医薬に化体される技術的要素、つまりこれはあくまで物に集約されると言いますか、連関を持ったというか、より物との関連性にアクセントが置かれたニュアンスがあるんですけれども、今回の案の意味が十分よくわからない。
 最終的には、そういう意味ではアメリカの方向に近いのか、ヨーロッパのものに近いのか、それとも言わば日本型とでも言うような、第三のものをつくったことになるのか。あくまで物に連関されるという意味であれば、やはりヨーロッパのような用途という形で何とか行くことはできないのか、そこら辺りをもう少し御説明いただければと思います。

○井村会長 どうぞ。

○小島事務局次長 まず、幾つかの視点があるかと思いますので、順番に御説明しますと、今までの議論の中から今回事務局で提出したのは、そういう意味ではアメリカでもなければヨーロッパのものでなく、日本独自のものだということだと思います。
 それから、資料4で、医療機器、医薬の特定の使用方法としたのは、今まで最初に議論が始まったときは、どちらかというとアメリカ的に広く医療方法全般、手術する行為も含めたものを方法特許という形で、概念されてきたというか、みんなの頭にあったので、それとは違うという意味で、まず医療機器、医薬の使用方法というものを付けたということでございます。
 それから、最終的にこの物に化体されると書いたのは、北村委員がよく産に戻るとおっしゃったことに関連するんですが、この使用方法特許を認めるにせよ、それは医療行為に関係するものではなくて、その方法特許で得られた成果は、物として生産されると、その物を生産する企業が開発しやすいように保護すると、その範囲で特許保護するという意味で、その使用方法というのは、もののさっきの動作方法とかありますけれども、そのシステム的、機能的な特徴を発明するわけですけれども、その結果最後は物に化体されるという意味だと、物の前駆段階という意味で使っております。
 したがって、アメリカ的な医療方法全般にわたる方法特許ではないという意味で、医療機器、医薬の使用方法としてとらえ、それは最後は物に成り得るという意味で、物との関連性のある部分だけに限ったということでございます。したがって、お医者さんの行為が挟まるようなところは特許対象にしないというのが、ここにまさに書いてあって、この資料4の左側の真ん中の欄で言えば、切除とか切開とか、そういうお医者さんの行為に非常に密接に関わる部分というのは、この方法論から外し、最後の機器とか医薬の使用方法に化体されるとか、そういうものをだけを取り出すという整理かと思います。

○井村会長 少し追加いたしますと、この専門調査会を始める前に、実は総合科学技術会議の中で、知的財産の専門調査会をやりました。この中にもそのとき委員を務めていただいた方がおられると思います。これは単に医療だけではなくて、すべてを含む特許の在り方について、日本の現状と問題点を指摘して、こういう点は改めないといかぬだろうということになったわけです。
 その中で指摘されたことは、やはり医療に関連しても、単に物だけではなくて、方法の特許が必要ではないか。その点が手落ちではないかということと、もう一つは医師の免責条項がはっきりしない。だからこれについては将来紛争になる可能性もあるので、そこも明確にすべきである。そういった意見がございました。それを受けて、この専門調査会が知的財産の事務局でスタートしたわけです。そういう背景があります。
 その中で、我々としては、アメリカのやり方のように、非常に幅広い特許をかけてしまうということは、かえって新しい発明の芽を抑えてしまうんじゃないかということもあるので、限定された形で方法に特許をかけていこうということが今まで議論されてきました。これは広井先生も始めにそういうことをおっしゃったと思いますが、そういう姿勢であります。

○広井委員 今の御説明はかなりよく理解できたんですが、そうするとあくまで物の方法ということになると、例えば、ヨーロッパのような、ベースはものに置きながら、医薬であれば用途というような、それに技術的には限りなく近いといいますか、そういう印象も持ちますし、そうであれば何かそういう形の、あくまで物をベースにという方が起こり得べきいろいろな弊害を考えると、望ましいようにも思うんですけれども、そこら辺りは。

○小島事務局次長 2つあるかと思いますが、1つは先ほど申しましたように、物の発明なのか方法の発明なのかというのは、発明したときに、発明の本旨が物に着目したものか、あるいは方法論なのかというという、発明の本旨、それを生かすということで、その発明の本旨が方法論だったら、その発明の本旨の方法論をできるだけ保護してやると、ちょっとしたものの改変で特許が侵されないということが必要ではないかというのが一点。
 2つ目は、資料5−1と5−2で、これは図示されていますが、一般的に物の発明と方法の発明とでは、概念的にカバーする範囲というのが違っていまして、これは片山委員に補足していただきたいと思いますが、特許制度において、要するに、方法の発明というのは、先ほど小野技監から、薬の方で言えば投与間隔とか投与量に関する一番最後の箱は、これは物ではできないという、こういう経時的な変化というか、時間的要素があるようなものとか、動作でも体外からスティックを動かしてそういう信号を送るというような、そういう離されたところでの動作みたいなものというのは、物では必ずしも一つのものではありませんので、物では表現しきれないものがあると、そういう方法と物の発明の本来カバーする範囲が違うという、そういう概念的な違いからどうしても物にこじ付けて、物の機能みたいなもの、あるいは用途というものに全部こじ付けることはできないということです。端的に言えばここのはみ出した部分というのはできないと、カテゴリー的にできないということです。

○広井委員 機器に関しては、私の方で多少誤解があるのかもしれないですけれども、機器というのはもともと人工物ですので、用途の新規性がある場合は何らかの形で物の新規性もあるんではないかというのが、非常に素朴なイメージとしてあるんですけれども、そこはあくまで物に着目したもので特許というものでは対応できないものなのでしょうか。

○井村会長 どうぞ。

○小野特許技監 広井委員の機器の話に関してちょっと説明させていただきます。資料5−1の例を、先ほど事務局から御説明していただいたものを補足させていただきます。事例の1でございますが、この場合、どこが欧州特許庁の運用と違うかというところを御説明いたします。事例1の場合は(1)の「RFコイルによって患者組織からのNMR信号を受信し」という記載がございます。これはある意味では人体からのデータの取得であり、先ほど資料1で事務局から御説明がありましたように、患者から直接データを取るというところは、今、欧州特許庁では争点になっている点でございます。ここは動作という意味で単に受信するということではありますが、現在の日本の運用では、人間の診断方法であるとして、特許にしておりません。
 次の事例2の(5)のところでございますが、この発明のポイントは最後にありますように、「電極を通じて網膜に伝える」というところです。ここのところは、明らかに電気信号を網膜に伝えるということは、電極が人体に何らの作用するということでございますので、今の日本の考え方では、特許にはできません。これは今回示された事務局案のような考え方で、初めて特許を付与できるものになるということでございます。
 それから、4ページ目のところも、最後の「腫瘍近辺のキャリアに照射する」というところは、方法の場合、どうしてもこうならざるを得えないというところでございます。
 同じように、事例4の最後の(4)のところで、「電極へ送信する」というところで、これは生体の耳の中に影響しているということで、現在の日本の運用では許せないのですが、こういう作動方法が仮に特許になるのであれば、新たな欧州特許庁とは違う点になります。
 同じように6ページ目、(3)の「第1カプセルの先端部に備えられた処置手段が動作する」というところは一見人が動かせるように見えますが、これはあくまでも機器の特徴をそのまま書いているということでございます。
 7ページ目のところ、これも同じように(4)の「鉗子が動作する」というところは欧州特許庁の運用ではとても許せないところでございます。
 8ページ目のところでございますが、この(1)のところで、「対極板との間で高周波発生装置により高周波を発生させ」というところは、これはどうしても人体の中で熱を出すということでございますので、これは今の医療機器内部の装置方法ではとても記載ができません。この発明は装置に特徴があるということで、厳密に言えばどうしても熱を発生されるため、人体の中に入れるという医師の行為があるかもしれませんが、医師の行為には特徴がないというように見ているということでございます。
 9ページも同じように(3)の「カテーテルが移動する」というところで、見方によれば医師が動かしているのですが、ここはむしろ機器の動作方法にポイントがあるということで、このような装置の動作を方法として書くと、どうしても医師の行為が入らざるを得ません。ただ、この事例は機器に特徴があるということでございますので、方法としてこういうものが特許になるということは欧州特許庁の運用と違うところです。
 以上が、欧州特許庁の運用との違いを、どのように方法で書いてあるかを、今回の整理をした場合の御説明になります。
 以上です。

○井村会長 ここで今までの議論があったことを少しまとめてみますと、機械だけではなくて、方法に特許がかかりますと、それによってまた新たな技術開発が起こってくるという例を、例えば北島さんなんかがちょっと言われたと思いますが、そういうことはやはり方法を認めないとできない。機械だけでは無理ということだったと思います。
 ほかの方、それでは、北村委員、どうぞ。

○北村委員 野中委員が挙げられた、原則的なものが各論的な議論とごちゃごちゃになっているんですけれども、野中先生に申し上げたいと思うのは、やはりこの特許でたくさんの医薬品が開発されて、それが患者に被害を与えた一面があるでしょうが、特許があることが今の医学、あるいは医療に弊害になったことと、メリットになったことを相殺すると、やはりこれは企業が開発し、研究者が開発するという、経済的ではありますけれども、大きなインセンティブなんですね。ここのところをなくしてしまったら、医学、医療というのは、現在より更に現代までのレベル、あるいはそれ以上に発展してきたかというと、決してそうは考えられずに、やはり最近になってどんどん新しい医療機器、しかもインテリジェントと言われる医療機器、そして新しい創薬が進んでいるということは、やはり研究者、あるいは企業への大きなインセンティブとしての特許、そして経済的裏付けというものを与えることに進んできている。そして各国が、競争的、あるいは共同的にやってきているわけで、この部分を無視して医療がもっとよくなるのかということに対しては、私もはなはだ疑問でありまして、やはり新しいインテリジェントなディバイスの開発、並びに新しい創薬ということに目を向けると、規制緩和の必要な部分はあろうかと思う。その点で各論的なものに入るならば、私はまず第一点は、具体的な事例も挙がっているんですが、今の医療機器案によりますと、やはり資料5−1ですけれども、書いてあることは作動と動作の字がひっくり返っていると、そしてその説明のところに作動によりと書いてあるところと、動作させることによりとなっておると。動作させるのはだれなのか、動作させる機械が外にあるからかという意味なのか、医師が作動せるのか、技術者が作動させるのか、事例を見ても、広井委員が言われたようにはなはだしくわかりにくいのは事実だと思うんです。
 この部分の作動、動作というものは、いわゆる物としての物質特許だけでカバーできないものがあるということは、再三特許庁からの御説明もございましたので、これは何とか一つのような形でまとめられぬのかと思う。定位脳手術も現在でも行われていますし、インテリジェントのカテーテルでももう出てきておりますし、ロボット手術もかなり行われているわけでして、アメリカ製品が多いですけれども、どのような形で入ってきているのか、それがどのような医療経済的に影響力を与えているのかもよくわからない点もございますが、電極の埋め込み型補助装置の作動方法とどこが違うのかはやはりわかりにくいんです。
 そこで、ここらの方法的なものは、新しく認めるというには賛成でして、ここは何とか1つにできないものであろうかという意見が一つです。
 薬に関しては、5−2の資料になって載っております、やはり一番気になるのは、投与間隔、投与量というところでして、既に新規の薬でなくてもよいと、既存薬でやれば、既存の薬は既に薬事法で承認されて、それなりの使用量、副作用、並びに投与方法は決めらおられるわけですね。それに対して、しかも合剤でない場合も、例えば、その5−2の3ページにありますように、事例1、事例2などは、いずれも単剤でもってそれをまたやろうと、どの時点で一体特許を取られるのか。そして、単剤のものは薬事承認されているものに対して、例えば、事例2などは、0.1 から10ミリと書いてありますけれども、100 倍の範囲で平均的な成績で、あと一人ひとりの0.1 を取るのか、10を取るのかは医者任せであると、そうなるとここの範囲は100 倍の範囲を特許を取っておるということに何らかの意味があるのか。
 それよりも、第3例なんかもそうですけれども、現在はその患者さん一人ひとりに合ったテーラーメイドの治療、副作用を減らし、効果を上げるという方向に、ゲノムの方からでもアプローチされている時代に、こういった人の平均値を取ったもので、投与方法の特許を取ってしまうということ、そしてそれも既存薬であればそれが決められている上に、どの時点で一体特許を申請するんだろうというのは、はなはだ疑問を覚えてしまうんですね。しかも、更に医学が進んで、テーラーメイドが一般医療として行われるようになったときに、こういう特許の意味というのは、むしろ時代に逆行しているんではないかとも感じてしまいますので、私はそこの使用方法の2つ以上の組合せを巧みに用いることによって、それぞれ効能の違った特殊な効果が現われると、肺がんと腎がんの効く薬、それぞれはそれぞれで使われておったけれども、2つ合わせると脳腫瘍に特異的に効くというものが出てきた場合に、用法特許として調べられて認める価値はあるのではないかと思うので、この黄色の一番外側にある点は、ちょっと難しいような気もしております。
 もう一つは、この資料3の中の3ページの利益相反ルールというところですけれども、これは各大学と文科省等々がやられるということに期待されるような形で終わっておりますけれども、これも5年も経てば、いわゆる私どもの病院は大学ではありませんのでどうするのかというような問題、更には一般的な病院で行われる可能性も、医師の中で企業の創始者が出てきたりという問題もあるので、やはり何らかの基本的なガイドラインは、文部科学省と厚生労働省が一致した見解で基本ラインが必要ではないかと考えます。後の運用の面での問題は各大学に任せられたらいいと思うんですが、今、大阪大学でも東京大学でも、いろんな大学でこういう取り組みを始めているとは思いますけれども、やはり少し微妙に違ってくる場合もあるだろうと。
 そういうことで、やはり何らかの基本的なライン、特許に関する部門で臨床試験に入る場合、医師が自分の自らの特許を持った医療行為について臨床試験に入る場合の在り方というものの基本的なラインをつくっていただけたら、全体の医学会には大変やりやすい状況になると。各大学に任せるという形で終わると、我々は我々のところでするし、情報公開をしなくてよいという大学もあろうし、情報公開をしろという大学も出てくるし、それは一つ国全体からみたガイドラインがあれば助かるんではないかと思っています。

○井村会長 最後のポイントはおっしゃるとおりで、もうちょっと書き込み、文部科学省、厚生労働省できちんとガイドラインをつくってほしい。これは基本的な線だけでいいと思うんです。アメリカでもそういう基本ラインをまずつくって、後は大学が若干それをモディファイする。それぞれ違いがありますからね。だから、そういうことは書き込んだ方がいいと思っております。
 2番目の問題については、これは秋元委員か、だれかから、ちょっと答えていただいた方が。

○秋元委員 この例を引用されて、0.1から10ミリは何ぞやというようなお話があったかと思うんですが、またいつ特許を出すのかという話もありましたが、これは非常に初期の段階で、恐らく動物実験あるいはそういうものから推定した値であって、私どもが現在、使用方法について投与間隔とか投与量、これについて特許を認めてほしいというのは、こういうような範囲ではなくて、これは私のプレゼンでもあったかと思うんですが、高度という説明がいいかどうかわかりませんけれども、単剤であっても、例えば、認可されているのとは別なところで効果が出てくると。そうであれば、それはやはり特許保護すべきではないかと。
 ただ、それはあくまでも審査基準というか、そこに進歩性とか新規性ですね。これについて、どういうふうに判断するかというところに、まさに入ってくるのではないかと。

○井村会長 しかし、方法として、なぜ、投与量、投与間隔が問題になるかという辺り。

○秋元委員 それは単剤でも起こり得るということなんですね。これは今言ったように、二剤の組み合わせということで、ここの。

○井村会長 いや、単剤でも起こり得るわけですけれども、どうして必要かという辺りが、北村委員の今の質問だったと思うんです。

○秋元委員 実際には、この前も。

○北村委員 これはやはり、既に承認されている薬の場合でもあり得るとおっしゃっていたので。

○秋元委員 あるいは、その範囲内程度の使い方でという。

○北村委員 そこでもう既にある種の用量、用法は提示されたものとしてあるわけですね。それが全く違った用途になるという場合に、この事例はなっていないですね。この事例の書き方を見ますと、これは秋元委員が関係されているのかどうか知れませんけれども。

○秋元委員 これはたまたまアメリカで特許になっているという事例を持ってきたから、確かに御指摘いただいているように、実際の治療というか、お医者さんの立場で考えたら、非常におかしなことになっているのは確かだと思うんです。

○北村委員 こういうものを特許であるとしながら、あと、それを0.1使うか100倍の範囲でだれに使うのかは医者任せで、問題が起こったら特許を取った企業は知らぬ顔できるのか。非常に医者のやることと医者の技量というものと、難しさが出てくるというものだと思いますね。

○秋元委員 これはこの前、申し上げましたように、例えば、臨床であるとか、あるいは臨床に相当するような別な方法できちんと証明されたような、それで相乗効果とか予想外の効果とか副作用低減であるとか、そういうものが出てきた場合に認めてほしい。


○北村委員 それなら、そのように予想外のものとかいう明確な形での特許を申請が可能であるという形でしていただいたらよいので、投与間隔、投与量を考えれば特許になるんだという、この四角の枠の書き方では、やはり疑問を感じざるを得ないですね。

○秋元委員 これは象徴的に多分こう書いてあるんだと思うんですが、言葉足らずかもしれませんが、私自身プレゼンをさせていただいているときには、常にそういう方向でプレゼンテーションをさせていただいているということでございます。

○井村会長 極めて特殊な例というのはないですか。投与間隔を変えたことによって新しい薬効が出てきたとか。タキソールがちょっと議論になりましたね。

○秋元委員 これにつきましては、欧州の場合に、消極的ではあるけれども、新規性がないということで裁判では否定されていますけれども、この投与間隔については議論されていなくて、否定はされていないということでございます。だから、積極的に肯定したわけではないけれども、一旦特許になって否定はされていないという状況です。

○見城委員 例えば、その個体差というものが非常にあって、私たちが実際にお薬を投薬していただくときには相当、先生の裁量で、たまたまこれを一緒にやると多分効くからやってごらんなさいとか、そういうことが随分組み合わせ等もあるものですから、非常にそれを実際の特許として認めるというのは、私はどうしても特許とは何ぞやというところに戻ってしまうほど、これは意味がないのではないかと。

○秋元委員 いつも議論に出でいるかと思うんですが、お医者さんがやられる場合には、その使用する範囲が通常は厚生労働省にもう許認可を得た形のものを使います。そうではないときに、自由にいろいろ組み合わせるのは、これは自由診療としても、やはり認められています。ただ、そうであると、その自由に認めて効果が出る、出ないというのは、先ほど言われるように個体差もあるだろうし、先生のやり方もあるだろうし、いろんなやり方がありまして、それが広く国民の皆さんに伝わるのは、やはり非常に時間がかかってしまう。その先生御自身の主義に基づいてしまう。あるいは、自由裁量にも基づいてしまう。それは何回もここで議論が出たのではないかと思います。

○北村委員 しかし、現実は、例えば、ここの事例にも似ていますが、このエースインヒビターと今、盛んに使われているレセプターのブロッカーとの併用が、どのくらい効くかななどというのは世界中が臨床研究として医師が論文に発表して、ポジティブなデータが出てくれば、すぐにそれは週刊誌並みの医学誌に載って、それを採用して我が国でも日本人でも本当に効果があるのかというのは始めておるわけですけれども、この2つの組み合わせを特許を取るとなりますと、特許の承認までは論文発表をするなというような抑えが入ってきて、実際にその2つが有効であるというような場合のものは、むしろ医師が行う医療行為として論文を媒体として普及することも少なくない。今、個人とおっしゃいましたけれども、医学会と考えていただきたい。個人の先生が自分で調合をして、この人にはこんなにしてみようという1人の医者と1人の患者の対応ではなくて、医学会のレベルで考えたときに、その併用がある企業がこれとこれの併用を特許を取る、したがって、一切論文にしたり発表しては困るというのと、現在行われているように、週刊誌並みの雑誌に競うように論文が出て、それが評価され、医師が我が国ではどうかと、ここは本当にアメリカの言うとおりになるのかということにいち早く取り組むという、この姿勢を崩さないかという心配があるんですね。既存薬の併用ということまで拡大してしまいますと。

○秋元委員 お医者さんの方が発表をしないという意味ですか。

○北村委員 発表をしてくれるなという圧力がかかるんではないですか。特許を取ろうとするところは。今でもそうです。今でも学会に行きますと、特許のために詳細は申し上げられませんという報告がございまして、聴衆の中ではお前ら帰れと怒鳴る人が出てくるぐらい何の発表なんだということで、既存の薬を併用して、それまで特許をかけることによって発表を遅らせるとか。

○秋元委員 企業が圧力をかけているかどうかは私ちょっとわかりませんが。

○北村委員 それは、もう医学会の仕事であると考えてしまうんですけど。

○秋元委員 ただ、お医者さんがやること、お医者さんが発表すること自体は特許があろうとなかろうと何にも関係ないので、ただ、企業が発表するな、どうのこうのとはちょっと別の問題、現実にはそういうことあるのかもしれませんが。

○北村委員 いやいや、たくさんあります。

○森下委員 ただ、先生既存薬だと恐らくないと思うんです。だから、既存薬ならば。

○北村委員 既存薬の場合どうするのか。

○森下委員 逆に言うと、既存薬だと医者が勝手に使えますから、そうすると製薬会社の人が物を提供するしないという話がありませんので、製薬会社サイドがそれを抑えるということは実質できないですし、それは多分ケースとしてないだろうと。

○北村委員 だから、それは特許にならないんだな、そういう場合は。

○森下委員 ならないと思います。恐らく、先に発表してしまいますので。

○井村会長 例えば、アンジオテンシンレセプターのアンタゴニストを使うと糖尿病の発症が予防できるというような報告が出だしているんです。今までは血圧下げるために使っていたんです。ところが、それを使うと糖尿病のいわゆる予備軍の人が発症がうんと低くなるという報告がもしあれば、これは特許になるのではないですか、やはり用途特許に、用途を拡大するという特許になる。

○森下委員 それを製薬会社の方が最初に見つければ、多分特許にされますし、医者が現場で見つけて論文出してしまえばそれで終わりだと思います。

○野中委員 でも、それは特許があるからインセンティブが働くわけではないですね。

○井村会長 今の場合はネ。それは、医者の方が自分の興味というか関心を持ってやっていることであって、それは特許の問題ではないと思います。

○野中委員 だから、特許だけがインセンティブを働かすということではないわけです。北村先生が言われたように特許が科学を進歩させる。それは、十分よくわかります。だからこそ、私言っているのは、悪影響に対する物差しを持っておられない中で、規制緩和をすればこれができるというだけで本当に進めていいのでしょうかということを言っているだけで、私はそれを収めてくれなんて言っているわけではないし、今、会長が言われたことはむしろ、特許ではないインセンティブで、つまり医師がいろいろな観察の中で見い出したものに関して特許というものをどう考えるかということは、私は有効な部分もあると思いますけれども、そこは慎重に悪影響という物差しをもうちょっと拡大しながら、配慮してくださいということを言っているわけです。

○見城委員 薬に関しては、だからそこのところもう一度、先ほど私お願いしましたように、現特許の中でできることと、そこに秋元委員がずっと主張していらっしゃることは、やはりどの程度から入らなくて、では、それ入れるべきかどうかということは確認できる形でどうでしょうか。やっていただけないでしょうか。そうでないと、進まない。その進まないということをすごくこちらに突き付けられますと、無用な議論をしていると思われるのも大変困るんですが、現行の特許でできるといわれていること。何かがあれば、それは用途特許に入っているということが出てくるということは、そこを次までに明らかにしていただいて、それでもなおかつ秋元委員がおっしゃっている部分で、製薬業界としてのインセンティブが働かないとか、それによる私たち患者側が恩恵をこうむらないと、もっと治る薬が組み合わせで出るのにというようなことがあるんでしたら、それはもう一度明快な形で言っていただきたいと思います。

○秋元委員 資料2をごらんになられると、一覧表がもう出ておりますから、それは明快にわかるのではないかと。

○見城委員 でも、その例として。

○秋元委員 だから、その治療方法について北村委員が言われるように何でもかんでも認めるのはおかしいのではないかと。お医者さんがやることもあると。それで、私どもが言っているのは、前からプレゼンしているように、そうではなくて、表現がいいかどうかわかりませんが、高度なという形で認めてほしいと。

○見城委員 済みません。法律に関して高度なという、そういう大まかな表現は。

○秋元委員 それは、先ほど言いましたように。

○片山委員 ちょっとよろしいですか。特許法的に言いますと、今の議論すべて新規性とか進歩性の問題。要するに、何か新しいものをこの医療行為で云々しようとしているのであれば、まさに伝統的な新規性、進歩性の問題だろうと思うんです。つまり、お医者さんがそれまでやっておられているんだったら、それはもう新規性がない、その範囲であればテーラーメイドでやっておられたら、それはそれで新規性がない話になるので、それを超えたところでないと特許は取れない。

○北村委員 いや、新規性あるんです。世界初のリポートで動くわけですから。

○片山委員 先生おっしゃったのはちょっと区別して議論したいんですけれども、見城先生がおっしゃったのは、新規、進歩性の議論で恐らくはすべてこなされるんだろうと思うんです。ですから、よほど意外なもの、ある範囲を超えたものでないと特許にはならない。これは伝統的な考え方で、そのとおりだなと思います。
 北村先生がおっしゃったものについては、これは、済みません、ポイントはなんでしたか。

○北村委員 薬の方ですか。薬の方は既存薬の併用で意外な投与方法で時間の間隔というようなものを特許とする問題。

○片山委員 レポートがどんどん出るのを抑えることになるのではないかと。

○北村委員 これは時代に逆行していると思う。今はテーラーメイド、一人ひとりの患者さんについて、投与法・投与間隔を探ろうとしてやっている最中に、平均値でもって、その投与方法をベストとして特許を取るということが。

○片山委員 なるほどね。ただ、それは恐らく、先ほどの進歩性の問題で、この程度ではだめですよという、その程度の問題を実際の審査実務でどの程度の置くかという話ではないでしょうか。

○北村委員 そこはどう判断するか、最終的にはそこにかかってくるね。

○小野特許技監 はい、そこは非常に難しゅうございまして、それはむしろ、私どもが教えていただきたいところでございます。最後の投与量、投与間隔の場合ですと、個体差、事実差があるといったときに、これは日米欧でも許されているのではないかと思うのですが、我々が許すとすると今ここに出ているような動物実験のようなもので、つまり、必ずしも臨床実験にない状況で、いかに進歩性を高くしたとしても、多分この程度で審査実務上は許さざるを得ないのではないかと思います。と言いますのは、事実差があるからといって、これは国際的には全部出願されていますので、運用のハーモナイゼーションの問題があり、この分野だけ特別扱いすることはできないからです。また、アメリカの臨床データが日本で使えるかとか、いろんな複雑な問題があって、審査基準でどう対応するかというのは非常に難しいのではないかと思います。ですから、我々としては、片山委員がおっしゃったように、今の医薬の審査基準の中で運用するしかないとないといった場合に、先ほど、北村先生が言われましたように、個体差がある、事実差があると言ったときに、それが日本人だけに通用する話にするか、どうするかという辺りを審査基準でつくれるのかどうかというのは非常に難しいなというのが直感です。これはむしろ教えて頂きたく思います。もし、これを許すべきだという話になったときは、むしろ医学会なりで御指針を出していただかないと、なかなか運用上は今みたいな点が問題があると言われますように、非常に難しいなというのが直感でございます。

○井村会長 作動、動作はちょっと問題ですね。

○小島事務局次長 北村委員から御指摘のあった、資料5−1の作動方法、動作方法。ちょっとこの言葉遣いは若干ちゅうちょがあったんですが、違いを提示した方がいいと思って、こうしたわけですけれども、医療機器の使用方法ということで、機能とかシステムが、電気的あるいは機械的信号によって動くという意味では、両者は全く同じです。
 ただ、作動方法と言ったときは、スイッチ一つで自動的に動くというようなニュアンスである一方、動作方法というのは、さっきの体外装置のマニュプレーターのスティックとかハンドルとか、そういったものを通じて電気的信号あるいは機械的信号が伝わるという、若干の操作に違いがあるのではないかということを念頭に作動と動作としたものですが、機械から見ると何らかのスイッチ行為によって、その機械的、電気的信号が送られて機械がこちらの方で動くという意味では同じということです。

○井村会長 予定の時間がもう過ぎてしまったので、少しまとめをしたいと思います。
 まず、第一に野中委員から基本的なところをお出しいただいたわけですが、これについては片山委員、北村委員もおっしゃいましたように、認めないことによってどういう問題点が起こるのかということも考えないといけないと。特許というのは、やはり技術の発展を促進するものですから、そういう視点ともう一つはフォローアップ体制について、もう少し具体的な視点、こういう点をフォローアップしなさいということを書き込むということを少し考えております。
 それから、機器の問題については、確かに北村委員が指摘されたように動作と作動という、極めて微妙な言葉が使ってありますので、ここはできれば一括してやっていこうということでどうかということを考えております。
 3番目に薬の方、これが非常に悩ましいところで、私は既存の薬の組み合わせでも、全く新しい薬効が出るとか、あるいは極めて有効性が高くなる、到底一剤では考えられないようなものが出てくる、そういうものに関しては、やはり認めていいのではないだろうかというふうに考えているわけですけれども、投与量、投与間隔等になりますと、なかなか微妙なところがあるので、この辺はもう少し事務局で検討をしていただいて、どういうことであれば認められるのかということを、できるだけ合意が得られるように持っていきたいと思っております。
 大体、以上のようなまとめですけれども、余り発言していただいていない森下先生、平田先生何かございますでしょうか。あるいは、片山先生。

○北村委員 先生、もう一つ。先生もおっしゃっていただきました基本的なルールづくりのところを。

○井村会長 利益相反については、知財本部から文部科学省及び厚生労働省に要請して決めてもらう、これは大学だけではないですから。

○中島審議官 今のお話については、文科省、厚労省だけではなくて、やはり特許問題そのものに関係しますので、十分特許庁ともお話させていただいた上でというふうに思っております。

○井村会長 特許だけではないんですけれども、産学連携問題もやはり同じように利益相反を起こしてまいりましすし、大学が非公務員型になったわけですから、そういう中できちんとしたルールがないと、世の中から指弾されるようなことがあってはいけませんので、その辺はもうちょっと具体的に書き込むということにしたいと思います。
 では、森下委員。

○森下委員 是非、それはお願いしたいと思います。なかなか大学独法化というので、一応国からは言いづらいという話は聞いておりますけども、正直大学の中で議論するには人材がたくさんいらっしゃる分野ではないので、非常に難しいと思いますので、むしろ国レベルでやっていただいた方が、それはいいのではないかと思います。
 それから、全体の議論を通してなんですけれども、やはり発明の本質が何かというのは、是非忘れずに議論していただきたいなというふうに思います。前回、片山委員会からお話がありましたように、やはり発明の本質というのはある意味アイデアのところがあって、そのアイデアを具体化するのが物であり、機械であるということだと思いますので、最初のところで、まず物がありきということになると、それはやはり物を発明しようという方は余りいらっしゃらなくて、結果としてどういうふうな治療をする、患者さんを治したいかというところからやはり発明がきますので、そういう意味では発明の本質というものを踏まえた議論というのを是非お願いしたいなというふうに思います。
 以上です。

○井村会長 それは、冒頭にそういうことも書き込む必要があると思います。
 平田委員、何かございますが。

○平田委員 特にございません。

○井村会長 そうですか。ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。

○広井委員 ある意味では、今の森下委員とちょっと違う面になるかもしれませんが、一方では発明の本旨を重視するというのは、非常に重要な点だと思う反面、大きく方法に踏み出すことに対する懸念というのがあって、そういう意味では医療機器も含めて何か物の用途という、その現状の延長線上での何か対応が案として考えられないものなのかというのをちょっと考えております。

○井村会長 それは、広井委員の御意見として伺っておきたいと思います。

○見城委員 やはり、これ医療行為、話がどんどんいろいろ複雑になってきますが、基本的に医療行為に部分的ではあれ、何であれ、医療行為そのものに特許を認めるのかというところでの議論で行われていると思いますので、徐々に話の中である部分だけであるとか、特別に枠を設けるとかだんだん話が各論になってくるんですけれども、その基本をやはり外すことはできないと思いますので、常にこのことが医療行為、たとえ免責になるとしても医療行為に特許が与えられるかどうかという、これは大きな分かれ目ではないかととらえているんですが、どうでしょうか。

○井村会長 これは、先ほども申し上げましたように、方法というものに特許を与えるべきだということが、もともとこの専門調査会の発足するときの一つの理念としてあったわけです。同時に免責条項を明確にして、医療の現場に悪影響が及ばないようにするということもあったわけです。だから、それをここで議論していただいてきたわけです。先ほどから発明の本質というような話が出てましたけれども、本当はアイデアが非常に大事だということがあるわけで、そうすると物だけでなくて、方法にもかけ得るだろうと考えます。
 しかし、その方法にかけることによって医療悪影響が出ては非常に困るわけです。そうならないようにということで、特定のという言葉が使ってありますが、それに関してだけ認めましょう。それと同時に、医療現場の免責条項もきっちりと認めていきましょうと、そういうことが今までの最大公約数的な意見であったと私はとらえているわけです。

○野中委員 ただ、医行為に対しては従来は特許はそぐわないという原点があって、それをだからその次に一歩進むとなれば、なぜそぐわないかと。そのことを十分に慎重に対処しなければいけないということだろうと思います。それを進めようとするためにはどうしたらいいかというのと、なぜ進めなければいけないのかということは私は違うと思います。

○井村会長 その辺り何か答えられるのであれば。

○北村委員 産の方に返すことによって、より多くの患者さんが救われるという部分においてのみやろうというので、初めから私が申していましたように医師が免責されるのではなくて、医師のやる行為は特許にならないと。免責でなくて特許にはならないものであるという位置付けをしてくださいという形でお願いしています。免責ではない、アメリカは免責としているそうですけれども。そして、あとそれを医師が発明しようが企業が発明しようがとにかく産に戻すことによってより普遍的に発展、促進させられるもの。そして産に戻すときにはやはり経済的な裏付けをしてやらない限りできないわけです。

○野中委員 だから、そのことは十分に認識します。一歩進むんですから。

○北村委員 ですから、産に戻す部分だけでいいのではないですか。

○野中委員 だから、そこはもっと慎重に議論してくださいと私は言っているわけであって、それを否定しているわけではないです。

○見城委員 では、最終的な確認ですけど、北村先生のお話では、産に戻すということは従来の物の特許、それに用途も含まれているわけですが、物というのは用途が付かなければ意味がないわけです。ただの物になってしまう。つまり、何でそれが特許になるかといったら、こういうふうに使えるから、それは物として特許になるわけなんで、そのことと産に返すということは大きな違いがあるわけです。私、そこのところが非常に。

○北村委員 医療機械については、新しいインテリジェントな機械というものと直結する部分は多いですけれども、薬については先ほどおっしゃられたように、二剤あるいは三剤によって、今までとは全く違った効能が出てくるような場合、それを有効性を証明するには莫大な費用が投じなければならないと。そういうときに、たとえ既存の薬であっても三剤を併合するということに、何らかの分子的メカニズムが考えられて、これとこれとこれとはこういう面白いよく似た構造のところに、3つとも同じところに集まってくっ付くぞというような理論に基づいて、今ある薬はどれだとしたら、これとこれが見つかったと。この三剤を併せてみて動物実験をしてみたら、思わぬ効果が出たと。そうしたら、これを人に使えるのではないかという時点で特許を取りたいと。これは認めていいのではないかと思います。
 ただ、もう人に使われているところで、この人にはどのように使ったら一番副作用が少なくて、血中濃度がうまく維持できるかという、そういうところをこんな平均値で出すのは時代遅れだろうと私は言っているわけです。そういう三剤を併せた思わぬ効果があるというところは、また動物実験に戻されると思うんです、既存の薬でも。そして、動物実験で、これはすごい効果が出たぞとなれば、そこで特許を取らしてくれと、それはいいのではないかなと。

○見城委員 それはわかります。それは、薬の特許の中にきっちりそれが書き込まれれば、明快になるでしょうと私も最初の質問と提言で申し上げたんです。そのことと、またほかの機器の問題とまた一緒に一つの解釈として理解していこうとか進めようとするからなかなか進まないので、薬の部分はそれだということで、次までにまとめてください。

○井村会長 まだまだ、ここで議論しておりませんけれども、これから出てくるものとして再生医療が非常に進んでくると思うんです。そうすると、またそれ辺りは新しい方法特許が必要になってくるのではないか。ちょっと今日は上田委員が来られなかったので、上田先生、森下先生辺りが一番初めに議論された辺りはそれです。そういうこともあって、その基本的に方法に一定の限度で認めるべきであろうというような展開になっているわけです。
 また上田先生、森下先生辺りからその辺はまとめていただいてもいいと思いますが、シナリオによるともう今日はまとめをして、パブリック・コメントの了承を取ってくださいということでしたが、ちょっとまだそこまでいかないのではないかという気がしますので、先ほど私が座長として指摘した幾つかの点を事務局でもう一度整理していただきまして、各委員の先生方に御意見を伺うことにしたいと思っています。その上で、もう一度会って、そして最終的にパブリック・コメントにかけるということにして、一回延ばしたいと思っていますが、それまでに検討すべきこととして、先ほど挙げたこと以外に、もし何かありましたらお伺いして、今日は終わりたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○小野特許技監 資料1では、今回の大きな方向性が示されており、我々もそういうことだと思っております。ただ1点、もし制度設計をするときに、一番下の特許の効力が及ぶ範囲ということで、注のところがございますけれども、お医者さんとかは免責してほしいという要望があるので、これは検討すべき事項として当然考慮に入れることになると思いますが、恐らく間接侵害的な議論というのは、日本でも初めてですし、外国でも理論的に詰めるのは初めてであると思いますので、この辺りはいろいろ法的な課題があるというように我々認識しております。この辺は少し詰めた上で御議論を進めていただき、また事務局等とも御相談したいと思います。

○井村会長 それは、ちょっと我々もわからないところがありますから、いろいろ検討していただいて、また片山委員なんかの御意見も伺っていただいてと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。
 それでは、事務局の方から委員の方に個別にいろいろな相談をする機会があると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。そういうまとめでいいですね。
それでは、どうもありがとうございました。