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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部権利保護基盤の強化に関する専門調査会 [印刷用(PDF)]


第13回権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成17年4月14日(木)13:59〜15:58
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、吉野委員
【本部員】中山本部員、森下本部員
【参考人】安念参考人、日高参考人、馬場参考人
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)「中小・ベンチャー企業の知的財産戦略の推進方策(とりまとめ)(案)」
(3)今後取り組むべき重点課題
 
・参考人からの意見聴取
成蹊大学法科大学院 安念潤司 教授
日高東亜国際特許事務所 日高賢治 弁理士
東京理科大学専門職大学院 馬場錬成 教授
(4)討議
(5)閉会


○阿部会長 それでは、全員おそろいになりましたので、ただいまから、第13回の「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」を開催させていただきます。
 本日は御多忙中のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 座ったまま進行させていただきます。最初に本日の段取りについて、簡単に御説明をさせていただきます。
 あらかじめ事務局からも説明申し上げていると思いますが、本日はまず、これまでの2回の中小・ベンチャー企業をめぐる諸問題についての御議論を踏まえて、報告書のとりまとめ作業を事務局で行ってもらいましたので、それについて御報告をさせていただきます。 内容に関しましては、委員の皆様、8人の参考人の方々の意見を改めてお聞きするとともに、関係省庁とも調整をさせていただきました。特に委員の先生方には御協力をいただきまして、感謝を申し上げます。
 次に、2番目の議題としまして、今後取り組むべき重点課題について議論をお願いしたいと考えております。これまでの取組状況を踏まえまして、本年の推進計画2005の策定に当たり検討すべき課題につきまして、委員の皆様から御提供いただきました関心事項や重点課題を中心に、参考人の方々の意見もお伺いしながら御議論をお願いしたいと思っております。
 また、本日、中川委員、野間口委員、山田委員はやむを得ず御欠席との御連絡をいただいております。高林委員は少し早く御退席されると伺っております。本日は加えて3人の参考人の方々にお越しをいただいたております。
 最初に簡単に御報告させていただきますと、成蹊大学大学院法学研究科の安念教授です。よろしくお願いいたします。
 日高東亜国際特許事務所の日高弁理士さんであります。よろしくお願いいたします。
 東京理科大学専門職大学院の馬場教授であります。よろしくお願いいたします。
 お忙しいところ、お出でいただきまして、よろしく御議論いただければと思っております。
 それでは、第1の議題であります、中小・ベンチャー企業関係でありますが、前回の会合におきまして、パブリック・コメントを行うことにしましたので、まずはパブリック・コメントの結果について、事務局から簡単に報告していただきます。では、小島次長、お願いします。

○小島事務局次長 お手元の資料2、意見募集の結果についてをごらんください。
 資料2の1ページにございますように、前回の会合の後、2週間官邸のホームページへの掲載によってパブリック・コメントの募集を行いました。その結果、1ページの3にありますように、提出された御意見は合計28件、団体9件、個人19件でございまして、それぞれ御意見については、団体は別添1、個人は別添2のとおり意見を整理しております。
 また、主な意見の概要については、4の1、2、3ということで、1ページから2ページにわたって整理しております。
 内容については大部にわたりますので省略させていただきますが、先ほど阿部会長からお話しがありましたように、委員の方々、それから前回及び前々回の専門調査会に御出席いただいた参考人の方々から意見をいただいておりますが、それについては資料3にまとめてございます。
 各省の意見につきましては、資料4にまとめてございますけれども、いずれも内容が大部になっておりますので、時間の関係上、個々の御説明は省略させていただきます。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。ただいま事務局から紹介がありましたように、パブリック・コメントでいただいた御意見、委員・参考人の方々からの御意見も参考人にして、事務局にはとりまとめの仕事をしてもらいました。委員の皆様、関係省庁とも最終的な調整をしていただいた結果であります。
 それでは、そのとりまとめの報告書案について、事務局から説明してもらいます。小島次長、またお願いします。

○小島事務局次長 戻っていただきまして、資料1でございます。資料1「中小・ベンチャー企業の知的財産戦略の推進方策(とりまとめ)(案)」でございますが、時間の関係もございますので、報告書のページをくりながら、ポイントだけ御説明します。
 1ページは、前書きとして全体の問題意識を記載しております。
 それから、2ページ目にまいりまして、「1.産学連携の推進」でございます。産学連携の推進に当たっての基本認識を一番最初に書いてありますけれども、その後「(1)産学連携の円滑化」として、A「窓口の整備」、B「事務処理体制の強化」、C「契約の柔軟化・弾力的運用」でございます。
 3ページにまいりまして「(2)産学連携の基盤の強化」として、A「橋渡し機能の基盤の強化」B「特許情報へのアクセス機能の強化」C「秘密管理の徹底」でございます。
 4ページ目にまいりまして、「2.知的財産の保護の強化」ということで、前文に基本認識が書かれておりますけれど、その後「(1)利用者に優しい特許審査の推進」として、A「権利化の促進」、B「審査の早期化」、C「記載の平易化」でございます。
 5ページに入りまして、「(2)利用者の立場に立った制度の改善」として、A「特許制度の改善」、B「IPDLの機能強化」でございます。
 「(3)中小・ベンチャー企業に対する支援」といたしまして、「(イ)中小・ベンチャー企業の負担の軽減」。A「費用負担の軽減、手続の簡素化」、B「海外出願に対する助成」、C「先行技術調査に対する支援」でございます。
 「(ロ)中小・ベンチャー企業に対する情報提供・相談の強化」としまして、D「弁理士情報の提供」、E「中小企業の経営戦略に根ざした知財戦略の支援」、F「海外出願に対する支援」でございます。
 「(4)国内における知的財産権侵害対策の強化」といたしまして、A「知的財産の尊重の徹底」、B「『知財駆け込み寺』の整備」でございます。
 7ページに入りまして、C「知的財産の保護を強化するための制度の整備」ということでございますが、前回の会合で、ここのところにつきましては、いろいろと御議論がございました。また、関係省庁からもさまざまな意見がございましたので、種々関係者と調整を行いまして、現在Cに書かれているような形で整理をしております。
 続きまして、D「情報開示制度における営業秘密の保護の確保」でございます。
 「(5)海外における知的財産侵害対策の強化」として、A「水際対策の強化」、B「個人輸入・個人所持の禁止制度の整備」、C「海外における模倣品対策の強化」、D「関係機関の取組みの強化」、E「在外公館の取組みの強化」でございます。
 9ページに入りまして、「3.知的財産の活用の推進」ということで、最初に基本認識が書かれておりますが、その下「(1)地域における知的財産権の取扱いの改善」「(2)公共調達における知財の有効活用」ということで、「知的財産の尊重の徹底」「官公需制度の改善」「優先調達のための制度整備」でございます。
 10ページに入りまして、「(3)知財信託の活用、知財による資金調達の拡大」(4)中小・ベンチャー企業の優秀な技術の顕彰」でございます。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。資料1のとりまとめ案につきましては、事前に委員の皆様の御了解をいただいているというふうに聞いておりますが、特に何か御意見がありましたら、お願いいたしたいと思います。
 どうぞ。

○中山本部員 4ページの(1)のA「特許庁は、新しい技術概念に早く・広く権利を付与する」。早くはわかるんですけれども、広くというのは問題があります。広い権利を与えなければ特許権が容易に迂回されて意味を持たない分野あるいはケースがあるのは事実だと思います。
 逆に広い権利を与えると、イノベーションを阻害するという分野あるいはケースもあることも事実でして、一概に広くと言ってしまった方がいいかどうかというのは、問題があると思います。
 それにもっと問題なのは、その後の「権利範囲が明確となるよう審査を行う」という文章がありますが、権利を広く付与すればするほど、権利範囲は不明確になる、外縁がはっきりしなくなるんです。概括的な権利を認めるほど不明確になる。広くかつ明確にというのは、これを受け取った審査官は、具体的なケースを判断するときにどうしたらいいか。これは二律背反的なことが書いてあるのではないかと。例えば、広くではなくて的確とか、何かうまい言葉がないかなと思うんですけれども。

○阿部会長 ありがとうございました。事務局、何か。

○小島事務局次長 ここに書いた趣旨は、前回、前々回の議論の中で、山田委員始め参考人の方から、新しい技術について早く広く明確にというような御発言があったわけですが、ここに書いた趣旨は特許庁の審査姿勢に対するものでして、特許というものが発明を奨励し産業の発達に寄与するという特許制度の原点に立ってその出願に対して特許を認めてほしいという、そういった精神的なことを書いたもので、個々の言葉自体が個々の審査にどう当たるかというところまでを言っているものではございません。そういう特許制度の原点たる発明を奨励し産業の発達に寄与するということを、言わば平たく書いたということでございます。

○阿部会長 どうぞ。

○中山本部員 全体的にそうですが、特にこの部分は、だれかがこう言ったから入れてしまった、全部並べてしまったと。すると全体として何を言っているかわからぬという文章になっているのではないかと思うんですね。
 精神としたって、新しい技術であろうがなかろうが、広く付与すると必ずイノベーションに資するなどという証明はできていないのではないですか。だれかがそう言ったかもしれないけれども、そんなことわからないんです。だから、ここで政府の文書に広くと書いてしまうことは、かなり問題があるのではないかと、こういう質問です。

○小島事務局次長 それは個々の特許審査に当たっては、特許法及び特許法に基づく審査基準に従って、法律制度に従って審査するということになっておりますので、これは先ほど申しましたように、特許制度の原点に立った精神を書いたというものです。

○中山本部員 広く権利を付与することが原点なんですか。

○小島事務局次長 発明を奨励し産業の発達に寄与するということを平たく書いたということです。

○中山本部員 全然平たくないじゃないですか。つまり広い特許が必ずイノベーションに資するということはわかっているなら、勿論いいんです。しかしそうとばかりは言えない、いろんなケースがあるのではないかと言っている。

○阿部会長 今のこの点について、何か御意見は。
 どうぞ。

○竹田委員 今の点について、広い権利を付与するということになれば、多分特許請求の範囲を広く書くということになると思います。特許請求の範囲を広く書く場合に、その権利付与を認めようという方向性が1行目に出ていると思いますが、3行目の今、中山先生が指摘になった権利範囲が明確になるように審査するためには、その特許請求の範囲で書かれた権利範囲について、発明の詳細な説明で、当業者が実施できる程度に裏づけの記載がなければならないことになります。
 そうすると、権利範囲を明確にしようという審査をすればするほど、特許請求の範囲が広ければ36条の拒絶理由が生じてしまって、広い権利は維持できないということになってしまいます。その意味では、2つの言葉の間に矛盾が生じかねないという感じはいたします。

○阿部会長 ほかの方、いかがでしょうか。
 それでは、ここにつきましては、会長に一任をさせていただいて、最低という言葉はよくないかもしれませんが、最低でも、今、両委員の御発言をきちんと議事メモに残しておくようにいたします。もし、うまい訂正ができそうだったら、やらせていただくということでよろしいでしょうか。
 どうぞ。

○高林委員 今の広くというのには、「新しい技術概念に」という枕詞が付いているわけですね。今ここで議論になっているのは、ある特定の権利について広く認めていくと、範囲が明確ではなくなるのではないかということだと思いますけれども、ここでの文言は、前回の議論で、新しい技術とが生まれてきているのに対して特許庁の審査が追い付いていないんだと。現在の審査基準とかでカバーできないような発明というものがあるが、しかし、早く概念を明確にしていって、広く権利を認めてもらいたいという要望があった点に答えたもので、いわばそういったポリシーを表現したものと私は理解したんです。
 ある1つの権利について、範囲もぼやっとしたものなのに広く権利を認めてしまうと、明確性を欠いているということは当然言えることなので、二律背反しているといえるかも知れません。もっとも、迅速かつ適正という場合のも二律背反みたいなことを書くこともあるわけです。したがって、ここで言う広くという趣旨が新しい技術概念に対してという言葉にかかっているのであれば、私はそんなに違和感がないんですけれども、そんなことはないんでしょうか。

○中山本部員 その点について、1つ。具体例で私が一番考えたのは、ビジネスメソッドについての特許です。非常に新しい分野の特許ですけれども、広く与えてしまって、ちょっと問題があるので最近絞るということが行われているわけです。そういうことを考えたわけで、新しい技術分野であっても広く与えた方がいいものもあれば、よくないものもあると思います。新しいからどうこうというのではないですね。一般論としても新しいものにも、両方通用するという趣旨です。

○小島事務局次長 では、もう一度、私の方からも言いますけれども、ここは個々の審査をどうするということではなくて、高林先生がおっしゃられた、こういう認識に立ってという精神なりポリシーというのを書こうとしているのであり、竹田先生、中山先生がおっしゃっていることは、それは特許法の規定、審査基準に従って、個々に審査されるんで、それは懸念に及ばないと思いますけれども、いずれにせよ取り扱いは会長に御一任をいたします。

○中山本部員 もう一つだけ済みません。個々の審査の問題を言いましたけれども、そうではなくて、ポリシーとして広い権利をということもおかしいポリシーであろうが、ここの審査であろうが、広い権利がいい場合もあれば悪い場合もあるということです。まさにポリシーとして広いものを与えろという、そういうポリシーを出すこと自体が問題ではないかと言っているんです。

○阿部会長 これは私の理解は若干違っていまして、先ほど、高林先生が言われたのに近いんですが、いずれにしても何か誤解を受けないように考えてみたいと思いますので、先ほどのようなふうなことで御一任をいただくということでよろしいでしょうか。

(「結構です」と声あり)

○阿部会長 それでは、そうさせていただきます。
 それでは、ほかの点について、何か御意見がございましたら伺います。どうぞ。

○吉野委員 このテーマ全体がある意味では、中小・ベンチャー企業にフォーカスを当てた話なんですが、かなりの部分は共通の話ですね。今議論したことも中小・ベンチャーに限らないわけですね。したがって、何かどこかに、そういうことをきちんと書いた方がいいのではないかという感じですね。ほかのところにもほとんどの場合、影響して共通のテーマは出ていますね。

○阿部会長 全体としてですね。

○小島事務局次長 おっしゃるとおりで、中小・ベンチャー企業から問題提起されて、こういう検討をしたんですけれども、制度の問題としては、中小・ベンチャーに限らず大企業でも大学でも全く共通の問題なので、そういう意識で制度論のところは整理しているつもりですけれども、表現としては付言した方がはっきりするということでしたらそういうことかとも思います。

○阿部会長 私もそういう御指摘をいただくと、同じような感想を持ちましたので、どこか冒頭にでも書けるような工夫をちょっとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では、竹田委員、どうぞ。

○竹田委員 先ほど、小島次長からも御説明がありました、7ページのCの「知的財産の保護を強化するための制度の整備」ですが、この点については私も再三事務局の方に意見も申し上げて、現在のような型になったので、ここに書かれているような指摘が中小企業の側からなされているということは事実だと思いますから、その点について、このような記載になること自体は私も異存はありません。しかし、特にこの後の損害賠償制度については、平成10年の改正で特許法の102 条の規定が整備されて、現在では権利を行使する側にとっては多様の選択が可能な状況になっておりますし、裁判所自体がここ数年の間に非常に、審理の迅速化と損害賠償額の増額という方向で対応をしてきておりますので、その裁判所の努力も評価してしかるべきだとは思います。また知財訴訟に関する問題につきましては、これもこの一連の民訴法の改正等で訴訟上の措置は一段落した段階で、いずれもこれまでの、あるいはこれからの運用を見ていくべき時点だと思います。
 ですから、そういう点を考えながら、実務の実態というものを少しいろいろな側面から調査してみようということでの趣旨として理解するならば、この記載は私も了承するんですけれども、それがすぐに法整備を更にしなければならないという方向に行くというのは、余りにも早急に過ぎると。もっと運用をしっかりやっていくという方向について、この制度の整備という表題の内容が検討されるのが望ましいと考えています。
 以上です。

○阿部会長 わかりました。どうぞ。

○中山本部員 私も全く同様に思っていまして、この損害額の算定については、荒井さんが特許庁長官だったころ、平成10年、11年の改正で法改正をしております。
 それから、その下の方も今度の司法制度改革で法改正したことです。それでもなおかつ、ここで必要に応じ法整備をするということを書く以上は、今のどこがいけないのかということをきちんと書かなければ、本当はおかしいわけです。制度を改正したのになおかつやれという以上は、何がどうおかしいのかと。どういう不都合があるのかということが、この文章ではそれが全くわからない。平成10年、11年はあるいは昨年の改正は一体何なのかということが当然問題になってくると思うんです。

○阿部会長 今の点で何か御意見ありますか。よろしいですか。
 そうしましたら、これはさっきも事務局から報告がありましたように、大分この激論か何か知りませんが、議論があってここに落ち着いていますので、私としては変更するのは少し責任が重過ぎますので、このままにさせていただいて、今のお二人の御意見をきちんと議事録に残しておくということにさせていただきたいと思います。
 多分お二人がおっしゃったことは、非常に重要な視点だと思いますが、まとめとしては、そうさせていただきたいと思います。
 下坂先生、お願いします。

○下坂委員 5ページの「特許制度の改善」なんですけれども、これは実務家としては大変ありがたいのですけれども、特許庁に審査の迅速化というのをたびたびお願いをして、特許審査迅速化法もつくっていただいたといういきさつがあるので、ここに書かれていることをやりますと審査がかなり遅れていくことが考えられます。その辺りはどのように考えればよろしいでしょうか。早く回転させるということとこれとは、整合性がちょっと難しいような気がしているのですけれども。

○阿部会長 5ページのAですか。

○下坂委員 @です。一部継続出願制度の導入、国内優先制度の優先期間、現行1年の延長、翻訳文の提出期間などがあります。それから審査の手続書類等の閲覧の無料化ですね。これらは大変実務上はありがたい制度でよろしいのですけれども、これを主張していくと、迅速化で特許庁は審査請求から何か月で処理していますというのを今一生懸命に取組んでいただいているときに、また延びることになりそうで、これらはどのように考えればいいか。

○阿部会長 事務局から。

○小島事務局次長 そういう点も含めて、幅広い観点から検討するということになっているわけですけれども、これはすべて全部延びるとのお考えですが、すべての案件がすべてこういうふうにするということではなくて、特別な案件が出てくるという、必要なものが出てくるということですし、いずれにせよここに書かれていることの多くは、審査請求期間内に行われるということでもあると思いますので、そういった点も含めて、他方迅速化の要請ということも踏まえて、どういう制度設計ができるかということを幅広い観点から今後検討していただくということでございます。

○阿部会長 どうぞ。

○久保利委員 これは時期に遅れた抗弁かもしれないんですが、6ページの「弁理士情報の提供」というところで、実は先週、弁護士が集まって知財ネットというのをつくり上げて、4月8日に設立総会で発足しました。したがって、弁理士さんだけではなくて弁護士というのも入れていただける受け皿と言いますか、そういうネットワークが完成をしたので、ここに弁理士さんと同様に弁護士というのも入れていただけないかというお願いでございます。今までは受け皿が余りなかったので、偉そうなことを言って、お前のところは何もないと言われるといけないと思ったんですが、大変立派なものができましたので、よろしくお願いしたいと思います。
 6ページの(ロ)の「弁理士情報の提供」で、弁護士も入れていただきたいということです。

○阿部会長 余り大きい変更はしたくないんですけれども、弁理士と弁護士と並べる程度でいいんでしたらば。

○久保利委員 結構です。

○阿部会長 事務局、どうですか。

○小島事務局次長 はい。

○久保利委員 事務局にお任せします。4月8日にできたてのほやほやなので、盛り込んでいただけると。

○阿部会長 それは大変いいことだと思います。わかりました。
 どうぞ。

○高林委員 今の下坂委員の御質問に関係して、事務局に聞きたいんですけれども、これから検討すべきテーマの中に、審査請求制度の廃止というのが書いてありますね。今のお話しは、審査請求期間内に継続出願だとか分割出願だとかいう手続をやっていくので、手続の遅延等とつながらないというようなお話しだったかと思うんですけれども、これは将来の議論のことかもしれませんけれども、審査請求制度をなくすと、手続の遅延についてはどうやっていこうという発想になっているんですか。

○小島事務局次長 先ほどは、今ある制度を前提に直ちに遅れるかどうかということをコメントしたんですが、次の議題になりますけれども、今後の課題として審査請求制度の廃止もありますけれども、それはその段階でそういうのも加味して、いかなる制度がベストであるかというのを検討いただくということで、先ほど申し上げたのは今の制度を前提にしたことでございます。

○竹田委員 この5ページのAが、ここに書いてある限りで検討されるというのであれば、米国のような一部継続出願制度の導入が果たしていいのかどうなのかというのは大いに問題のあるところだと思いますけれども、それを含めて幅広い観点から検討するということに異論はありませんけれども、これが将来、審査制度の廃止にまで結び付くんだと言われるのであると、そんなことを考えることは重大なことであって、そこまでこの報告書の中で含めるということを考えているのだったら、私もそれは断固として反対せざるを得ない部分があると思います。

○小島事務局次長 この3月からやっている今の検討の中においては、それはここの場の議論でも出ておりませんし、それは今、前提にしておりません。高林先生は、次の議題の検討事項のことを申されたので今コメントしたんですけれども、先ほど申しましたように、現行審査請求期間3年という審査請求制度があるということを前提に、この報告書はとりまとめられております。

○阿部会長 また御議論いただくことになりますが、下坂先生の御指摘されたようなことに下手をするとなるかもしれない。ただ、そこは注意しなければいけないと。

○下坂委員 私としては検討いただくのは大変ありがたいことで、表現としてはこのままで結構です。

○阿部会長 ほかはいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 大変な労作になっているところもあるようでございますけれども、それでは専門調査会としてはこの報告を了解したということでよろしゅうございますでしょうか。

(異議なし」と声あり)

○阿部会長 それでは、ありがとうございました。中小・ベンチャー企業の知的財産戦略の推進方策、この資料1につきましては専門調査会のとりまとめとしまして、次回の本部会合に私から報告をさせていただくことにいたします。なお、先ほどの点を踏まえた上でということでさせていただきます。
 それでは、次に「3.今後取り組むべき重点課題」ということに移らせていただきます。推進計画2005の策定に当たり、今後取り組むべき重点課題について御議論をいただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、事務局の方で、事前に委員の皆様から関心事項、重点課題についてお伺いして、資料5に簡単にまとめていただきました。こういった点を中心に御議論をいただければと思います。
 まずは、今日は3人の参考人の方においでいただいておりますので、これからの議論の口火と言っては失礼ですが、この資料5に即した、関連したお話をしていただきたいと思います。意見交換の時間をできるだけ多く取りたいと思いますので、大変恐縮ですが、お一人5分で御説明していただければとお願いを申し上げます。なお、不十分と思われたときには意見交換の中で御発言をいただければということでよろしくお願いします。
 最初に、安念参考人からお話を伺いますが、資料6にございます。それでは、安念先生、よろしくお願いします。

○安念参考人 安念でございます。5分でございますので、1項目1分で。
 第1に、ペナルティーを強化していただきたいということでございます。なぜ有体物について10年であって、無体物については5年なのか。勿論、理論的に根本的な立場はございます。つまり、財産上の犯罪についてはすべてノン・マネタリー・ディタレンスは高過ぎるというロー・アンド・エコノミクスの知見がございます。そういうふうにお考えになっても結構です。金銭的な賠償でいくべきだという考え方であっても結構です。
 いずれにいたしましても、ペナルティーが違法な行為を抑制できないのであれば、そもそもペナルティーの意味はありませんが、抑制できるのであれば抑制できるのに十分なペナルティーは科せられるべきであります。
 第2に、時間コストの削減でございます。わかり切ったことでございますが、審査の時間をとにかく早くするように目標値を定めていただきたいということでございます。
 それから、無審査主義あるいは自動的な特許査定というのが、はちゃめちゃな考えであることは私よくわかっておりますが、すべてイノベーションというのははちゃめちゃなところをまず考えませんと話になりませんので、審査請求の廃止についても全く同じことでございます。
 同様に、世界特許制度の確立もはちゃめちゃだとおっしゃるのでしょうが、しかし方式と手続についても何とか統一にこぎつけ、あとは実体法だけだといっても、あとの実体法が95%なんですが、古いことを申せば、この前本を読んでおりましたが、戦前の海軍軍縮条約も、つくる前はとてもこんなものはできまいと思っていたというのでございますから、とにかく考えないことには話にならないと存じますので、どうぞ頭のいい方を集めて案文をおつくりいただきたいと存じます。
 海賊行為については、水際の対策が特に重要でございますが、しかし国際条約の枠組みが是非必要になってまいったと思います。フリー・トレード・アグリーメントと組み合わせろというのも私は重要な手段ではなかろうかというふうに思っておりますが、いずれにしろやらなければいけない。中国に対して強い態度に出るべきだというような意見が必ずこういうものでは出るんですが、強い態度なんか取っても向こうも強い態度に出るだけの話であって、強い態度を取り合っていけば最後は核兵器を持つ方が勝ちなのでして、そんなことをやっても何の意味もありません。利害が共通しているということの認識を深めることが大切なのでして、それをしなければいけません。
 韓国と日本、台湾は既に被害者の側に回っております。中国ももうすぐ被害者の側に回るでありましょう。そうすると、東アジアの主要産業国は大体共通の利害を持つことになりますので、なかなかよい土壌が整ってきたというふうに思います。政治の方はなかなか無責任な政治家が多いものですからあおり立てておりますけれども、小さいことのようでございますが、知財の面で共通の利害があるということを認識することは政治的にも大変大きな意味があるというふうに私は考えておりますので、是非、どなたがなさる仕事かは知りませんけれども、なさる方になさっていただきたいというふうにお願いをしておきます。
 次に、中小・ベンチャーでございますが、大変有意義な答申をまとめていただきまして、敬意を表する次第でございます。
 私は、国土の均衡ある発展なんかどうでもいいという立場の人間でございますが、しかし田舎も田舎で栄えるのならそれに越したことはない。知財の問題は東京の話、大企業の話ではないかと思われているので、なかなかオールジャパンのサポートが得にくいという雰囲気であることは否定できないと思うんです。
 地方においても、まちおこしやむらおこしの観点から知財が役に立つという局面はいくつもございます。しかし、だからといって知財が決定的であるとか、ビジネスのコアになるということはまずないことでございますので、2人とか5人とかそういう小さな雇用を生み出すような手堅い努力をサポートできるような体制を整えていただきたいと思います。
 それは、要するに地方の手堅い商売の中で知財をどう使っていくかということでございまして、知財だけの知識があってもこれは話にならない。明細書をどう書くか、それがどれだけ巧みであってもラーメンを売ることはできないのでして、もう少し幅広いコンテクストで物を考えられる人が出てきてほしいものと思います。勿論、官主導はだめでございます。当たり前の話です。
 先ほど、この紙にはありませんが、どうしてもしゃべりたくなって仕方がないということを1つだけしゃべらせていただきます。
 産学連携の話でございますが、私は、産学連携というか大学間の技術移転ということについて、産学連携というのは大学間の技術移転のことだと仮にいたしての話でございますが、数年前にその種の会社を設立いたしました。今まで日本に三十幾つかその種の機関があるそうでございますが、多分唯一配当をしている会社の支配株主でございますので、その観点から1つだけ申し上げたいと思います。
 産学連携がなかなかうまくいかない、技術移転がそんなに大きなビジネスにならないというふうにあるいはお考えかもしれませんが、それは間違っております。
 まず第一に、そもそも大きなビジネスになるはずがない。アメリカでも、せいぜいロイヤルティーの収入が全米の大学を合わせて1,000 億円のオーダーのはずでございます。あれだけ大きな国でたかだか1,000 億円なんていうのは産業と言えるものではございません。もともとそういうものでございます。
 しかし潜在的な仕事はあるんだろうと思うんです。現に、私どもの会社でもやっております。
 問題は、仕組みをつくることではございません。これは、なぜうまくいかないか。うまくいくところがあってもよさそうなのに、うまくいかないのはなぜかというと、これは商売としてやっていないからです。これは商売でございます。企業さんは大学に敬意を表するのではなくて、商売になりそうなものは買うし、そうでないものは買わない。それだけの話でございます。したがって、商売人にやっていただく必要があります。
 商売人というのはどういう意味かというと、自分のリスクで売り買いをする人間にやらせるしかないということです。公務員がやったって、それはだめです。元商売人で、今は公務員になってもだめです。要するに、その道で食っていくしかないという人間にやらせる以外になく、これ以外のいかなる方法もございません。これは答申を書くような話ではない。要するに、この商売で女房子どもを養っていく、住宅ローンを払うんだという覚悟がある人間にやらせる。それ以外のやり方はすべて失敗いたします。商売人もしばしば失敗いたしますが、公務員は常に失敗いたします。
 どうもありがとうございました。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして日高参考人お願いします。資料7を御用意していただきたいと思います。

○日高参考人 日高でございます。実は、私、4月1日に21年間勤めました特許庁を辞めまして、昨日弁理士資格を得ました。弁理士と名乗るには本当にお恥ずかしい限りですけれども、若葉マークを付けながらこれから一生懸命に頑張りたいと思っております。
 本日私から今日お話をさせていただくのは、2001年4月から2004年3月まで中国北京に3年間駐在しておりました経験から得た思いです。中国ではニセモノ問題等々いろんな知財の事件がありましたけれども、やはり一番重要なことは技術の流出の問題ではないかというふうに考えております。特に、日本企業が大量に出願をする特許出願の情報から、相当数のものが台湾、韓国、中国に流れているのではないかと言うことです。人を通じた技術流出だけではなくて、この行き過ぎた特許出願行動、行き過ぎた技術公開によって相当程度の日本の技術が流れているのではないかという気がしてなりません。
 最初にお示しした簡単なポンチ絵でございますけれども、一昨年日本企業が日本に特許出願した件数は約36万件ございます。そのうち、正確ではありませんが、大体目の子でざっくり仕分けをしていきますと、16万件は審査請求もされずそのままほったらかされる。9万件は審査請求するけれども、拒絶になると。それで大体10万件ちょっとは特許になるわけですけれども、そのうち海外でも特許になって、その権利が保護されるのはわずか3万件ぐらいしかありません。ということは、36万件のうち33万件はただ単に無料で世界中に情報が流されているということであります。
 日本企業の特許出願技術の内容をよくよく見てみますと、大体3分の1ぐらいが方法に関するものです。ということは、生産現場の中で日本企業が最も得意とするものづくりに関する、本来なら秘密にしておいて第三者に絶対見せたくないはずのとらの子の技術が特許を通じてどんどん垂れ流されているのではないかという気がしております。
 事実、3ページ目でございますけれども、昨年7月21日に日本のIPDLに外国からどれくらいのアクセス数があるのかということを調べたものです。
 ごらんのとおり、たった1日のサンプル調査でしたが、韓国から5万5,000 ページ、台湾から1万8,000ページ 、中国から1万7,000ページのアクセスがありました 。これほどの技術情報を彼らは見ており、彼らはどんどんそれを使っているということだと思います。
 そこで考えなければいけないのは、日本企業がなぜこれほどまでに大量の出願を出すのかということです。私は特許制度そのものが根幹の問題として非常にバランスを欠いている部分があるのではないかという気がします。そもそも秘密の発明に独占権を与える代わりに、その技術を公開させる、これが特許制度の根幹だと思うのですけれども、仮に特許出願せず秘密にしておいたものが第三者に先を越されて特許を取られた場合には、現行特許法では先使用権があれば何とか自分の実施は確保できますけれども、それ以外のものは第三者の支配下におかれてしまうということです。
 その支配下に置かれてしまって、自己実施すらできず、あげくに侵害だと言われるということがありますと、どうしても心配で、特に日本人の、日本企業のビヘービアからすると出さざるを得ないのではないかと思います。特許数で勝負するということもあるかもしれませんが、非常に心配になってどうしても出してしまうということがあって、この36万件という大量な出願になってくるのではないかという気がしてなりません。
 そこで4ページ目以降に、これは私の個人的なアイデアとして提案させていただいているのですが、現行の先使用権だけではなくて、先に発明をした人にはその完成が認められれば自己実施権を与えてもいいのではないか、要するに、秘密にしておいてもその後の第三者の出願の前にその発明を完成していたことが立証できれば、その人には自己実施権を与えてもいい。
 勿論、秘密の状態ですから、第三者に対して危害を加えることもないし、その後の特許出願をされる方の権利をつぶすこともない。ただ、自分だけが自己実施権を担保できる。そうすると、企業の方々は安心してその技術を実施することもできるし、自社内で秘密に管理をしておくことができる。無駄な出願行動に走らなくても済みますし、結果的にその技術が海外に無料で、ただで流れてしまうということを防止できるのではないかというふうに考えております。
 そもそも、産業政策上、一番重要なことはやはり発明を促すことであって、特許権で固めて競争させることではないのではないかという気がしています。そのバランスを取るためにも、もう少し今の先使用権の考え方を発明の原点までさかのぼって、発明者そのもの、発明そのものを何らかの形で保護し、無用な技術公開をしないで済むような制度設計が今求められているのではないかと思います。特に日本が今ものづくりで韓国、台湾、中国と激しい競争をしている中で、最も日本が得意とする工場の中での技術、ものづくりの技術、それを保護するためには秘密のままにして、絶対漏れないような仕組みも特許権の保護強化とともに大事な観点ではないかというふうに考えております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 馬場参考人、お願いします。資料8を御用意していただきますが、のどを痛めておられるということで、済みません。

○馬場参考人 今日は、かぜを引いた上に花粉症で声がうまく出ないので迫力も出ないんですけれども、会長のお許しをいただきましてマイクを使わせていただきます。どうぞ御了承願います。
 資料8に従って5分間の説明をしたいと思います。イノベーションははちゃめちゃが必要だということを先ほど安念参考人がおっしゃっていましたけれども、私も若干はちゃめちゃな提案だと言われるかもしれませんけれども、信念に従ってこの機会に申し上げたいと思います。
 第1点は、審査請求制度を廃止するであります。これは現行3年でございますが、47年の改正で7年になったときにも特に根拠があったわけではなく、ドイツが7年だったのでそれにならっただけでございます。それから、3年に短縮した際も、これは荒井特許庁長官時代でございますが、合理的な理由があったわけではなくて、こんなところだろうと当時の特許庁幹部のコメントを私は現に聞いておるわけでございますが、はなはだあいまいな判断で決まったと思います。
 そもそも、権利を確定しないまま3年も放置されているのは、権利の乱用につながりかねない。大企業は、自社の特許権権利の確定を遅らせることによって、結果的に中小・ベンチャーの起業を妨害していることになるわけです。
 権利範囲が不明確であると、中小・ベンチャー企業はリスクが大きくて、自ら企業を立ち上げることができない。融資でも大企業の権利化後という条件が付くことがあり、中小・ベンチャー企業は身動きが取れないということがございます。
 ただ、審査制度をいきなり廃止するのは、審査の現行状況を見ると現実的ではないので当面は、権利の有無を早期に確定するためにだれでも早期審査請求できる制度にするべきだというのが趣旨でございます。
 2番目は、特許審査の迅速化の達成数値目標を作成してもらいたい。同時に無審査制度の導入の検討も開始するということもございます。
 現在、特許庁で審査迅速化法によって迅速化に取り組んでおりますが、達成数値目標が明示されていない。これでは今後、必要な対策を検討したり講じることは困難であるという観点から、是非これの達成数値目標を示してもらいたいということでございます。
 2ページ目に入りまして、訴訟当事者を一覧によってインターネットで公開してほしいということでございます。
 特許庁にあっては、「無効審判の請求人と被請求人」を、あるいは裁判所にあっては「知財侵害訴訟及び無効審判不服裁判の原告と被告」、これは一般に公開はしております。しかし、個々に行われている問題でございまして、一覧という形ではありません。
 例えば、中小・ベンチャーをつぶす悪質な方法として、大企業が無効審判や知財訴訟を乱用する手法が現に行われております。
 私が聞いたA社の場合は、従業員4人の小さな会社でございますが、大企業から2回にわたって知財訴訟、それから4回の無効審判を起こされ、訴訟費用だけで既に数億円も費やしているということです。
 そのうち、最高裁まで行って勝訴しまして4億円強の損害賠償を得たわけでございますが、その後判決が出たにもかかわらず、その案件に対していまだに無効審判が請求され続けているという現状がございます。したがって、これは「嫌がらせ提訴」であることは間違いないと客観的に判断せざるを得ないということでございまして、こういうものを改善していく必要があると思います。
 その改善する方策の一つとして、この無効審判と知財侵害訴訟をどういう人たちがやっているかというのを一覧で出ることによって、世間やマスコミの目という監視機構が必要ではないかというのがこの提案の趣旨でございます。
 3ページに入ります。3ページには、IPDLの機能は不十分であるということです。特許庁には、審査官だけが使っている検索システムという機構があるそうでございますが、これを公開してもらいたいと思います。これを公開することによって、審査の負担を軽くする。
 特許庁と同じ「検索システム」、これは出願検索、Fターム、ワード検索などを総称しているわけですが、国民に公開することによって出願前、審査請求前に出願人自ら検索を利用することによって審査の作業を軽減できるという非常に大きなメリットがあるわけでございます。審査官は、別途高度な技術等についてはやることが多数あるそうでございますから、これは私が現役の審査官数名から聞いていることもございまして、自信を持ってこれを言っているわけでございます。
 すべての情報を特許庁審査官が握っていることになると、医学会の悪弊とした「依らしむべし、知らしむべからず」ということになるわけでございまして、是非ここを改善してもらいたい。
 下に絵がございますが、この真四角の大きい枠が特許庁の検索システムであって、IPDLはそのまたごく一部でしかない、黒く囲った部分ぐらいであると思います。この面積は大体で書いているわけですが、審査官にするとこの黒いところが少し大き過ぎる、もうちょっと小さくした方がいいという助言もございました。
 特許庁の検索システムは特別会計制度を用いて、出願人や特許権者が納めた税金によって全額処理しているものでございます。費用供出者に利用させないのはおかしいというのが私の主張でございます。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 加えまして、委員の方から若干御意見をちょうだいしております。資料9が下坂委員、資料10が久保利委員でございます。恐れ入りますが、お一人2分かせいぜい3分でお願いできればありがたいと思います。なお、竹田委員から資料11、これは昨年12月にお配りいただいたものですが、それを再配布させていただいております。
 それでは、恐れ入りますが、最初に下坂委員からお願いします。

○下坂委員 詳しくは資料9をご覧いただくことにして、3点だけ。
 まず第1は、「特許における審査請求制度の廃止」。これは先ほど竹田委員から御発言がございましたけれども、未審査のため権利範囲が不確定なまま継続することによる第三者への悪影響を回避するためにも、将来的な可能性として審査請求制度の廃止を含めた制度改善の検討を行うというものです。
 第2は、「模倣品・海賊版対策」で、税関の認定手続において当事者双方の主張を反映した解決を図るために、両当事者が対等に主張を尽くせる仕組みの構築について検討してほしいというものです。
 また、個人輸入・個人所持の取締強化は、これは先回も主張させていただいたのですが、竹田委員御提案の「模倣品・海賊版の輸入・所持禁止法」の制定に向けた検討をすべきだと考えております。
 第3は、「技術流出の防止」関連ですが、先ほど日高参考人の方からもお話がございましたように、IPDLを通じて公開された企業の技術開発に関する情報が諸外国に垂れ流しになっているという状況がございます。これらに何らかの措置を講じる必要があるという意識から、先使用制度の在り方も含めた検討を行うべきと考えております。例えば、フランスのソロー封筒制度を参考に保護制度などの検討も行ったらいいのではないかと考えております。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、久保利委員お願いします。

○久保利委員 資料10の「意見書」のとおりであります。
 1番目は、模倣品・海賊版。これは犯罪組織の資金源でありまして、これはすべての国家にとってマイナスにしか機能しないと思いますので、この不拡散条約をつくるべきだと。これについては資料11で、「模倣品・海賊版の輸入・所持禁止法」という要綱試案を竹田先生がおつくりいただいておりまして、基本的にはこういう考え方に立って十分事務局で検討していただきたいということをお願いするものであります。
 2番目は、水際の関係についてです。税関長に是非きっちりとした行動を取っていただきたいというふうに思いますが、その際に侵害認定の判断が困難な場合どうするかということについて具体的な提言を申し上げるものであります。こういう形がいいかどうかも含めて、何らかの専門的判断がなければ税関長も自信を持ってやれないと思いますので、それについて是非前向きに取り組んでいただきたいと。
 3番目は、インターネットを利用した侵害の対策ということであります。今まで我が国の立法も、プロバイダー責任制限法等々をいろいろ公示し、あるいは「特定商取引法」というものを使いいろんなことをやってまいりました。その中でも、広告規制を受けているインターネットオークションサイトというものにおける出品者の氏名等の情報は、決して匿名ではなくて堂々と顕名で開示されるべきではないかと。そういうことによって、海賊版・模倣品に対するオークションの出口というものを抑えることができるのではないかという主張でございます。
 以上、3点でございました。

○阿部会長 ありがとうございました。
 続きまして、竹田委員の資料11ですが、以前も御説明いただきましたけれども、何か追加的にございましたら。

○竹田委員 第10回の委員会の際に、この綱領の試案暫定版を提出しまして、そのときに説明しましたので内容の説明は省略しますが、最後に「検討事項」とありますけれども、これは更に具体的な条文化をするに当たっては模倣品・海賊版の定義をどうするかという問題。
 それから、注記にあります行政処分を行う行政機関としては、水際措置においては税関になるでしょうが、その後の4の、情を知って譲り受けたものの処理までを対象に考えると司法警察員等の機関も対象になり得ることで、この辺をどう規定するかという問題。
 次に、行政の処分によって没収・廃棄するということにこの提案の意味があるわけですけれども、そのような「没収・廃棄」に対する簡易な救済手続を考える必要はあるかどうかというような点です。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それから、本日は御欠席ですけれども、資料12に野間口委員から御意見をちょうだいしております。事務局から簡単に御紹介いただけますか。

○小島事務局次長 資料12、野間口委員からの重点課題についての意見でございますけれども、1ページ目のIで世界特許のシステムの構築に向けた取組みを加速化すべきであるというのが1点目。
 2点目が国際標準化活動の強化ということで、1ページ目の下の方にありますけれども、諸外国での技術標準策定に対する調査開始申立制度とか、2ページ目の2でございますが、技術標準に関する知財権の取扱いルールの整備。特に、3ページ目のBにございますけれども、独占禁止法の適用可能性の検討等々についての御意見がございます。
 ついでに、資料の一番最後に参考資料としてちょっと厚い資料をお配りしてございますが、これは知財推進計画2004の保護・活用・人材分野に関する取組状況というのを各省から御報告いただいて整理したものでございます。本日の課題に関係するところは黄色い網かけをしておりますので、分厚くて恐縮ですけれども、適宜関係のところを参照していただければと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、御議論の時間に入らせていただきます。ただいま、参考人、委員の方々から、さまざまな観点について御指摘がございました。これらを含めまして、議論の対象が多岐にわたっておりますので、資料5をごらんいただきたいと思いますが、1、2、3と3つに分けておりまして「1.保護分野」「2.模倣品・海賊版対策」「3.活用分野」「4.その他」事項と3つにパートに分けて整理をしております。3人の参考人の方々も御自由に御討論に参加していただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
 まず「1.保護分野」について御議論いただきたいと思いますが、資料5にありますように、今ありました、審査請求制度の廃止、技術流出の防止、世界特許の実現、侵害に対する刑事罰の強化、こういうような観点につきまして、御議論いただきたいと思います。是非手を挙げていただければありがたいと思います。多分、相当違った御意見があるはずです。
 どうぞ。

○中山本部員 馬場さんにお伺いしたいんですけれども、審査請求制度の廃止、違う方もおっしゃっていましたけれども、こういう審査請求制度はもともとどうして入ったか御存じですね。

○馬場参考人 審査の案件が多数あって、処理が簡単にはできないというところから入っております。

○中山本部員 オランダから始まって、全部そうですね。これから、恐らく日本に限らず世界中の特許庁はその負担に耐えかねる、あっぷあっぷするという状態になると思うんですけれども、審査請求制度を廃止した場合は、審査の遅延と必ず結び付くんですけれども、それはどうお考えなんですか。

○馬場参考人 期限ですか。

○中山本部員 遅延、遅れです。

○馬場参考人 解決方法は幾らでもあると思います。抜本的な解決方法は幾らでもあると思います。

○中山本部員 どういう。

○馬場参考人 審査官を増やすとか、そういうことも1つの方法だろうと思います。

○中山本部員 審査官を簡単に倍にできれば、大体話は解決するんですけれども、世界中それができなくて審査請求制度を設けているのです。ですから審査請求制度は余り理念の問題というよりは、遅延をどうやって防ぐかという実務上の問題で導入しているんです。ですから、そういう実務上の問題が解決できるかどうかにかかっているんではないかと思うんです。両方とも、若干の理念はありますけれども、一番大きな問題は審査の時間の問題です。

○馬場参考人 そうすると、審査請求制度を取っているのは、日本など一部の国でございまして、アメリカとヨーロッパの主な国はこういう制度を取っていないということになりますと、特許の制度というのは、先生の御本にもありますように、産業振興のためにあるわけでございまして、審査が遅延するから制度の本来の姿を考えないのはおかしいと思います。
 ですから、産業振興のために諸外国との競争力を付けるために、審査請求制度を廃止した方がいいんだという意見があるならば、政府が一体となって全力を挙げてそれに取り組むということが重要であって、遅延がなされるのではないかという理由によってこれを先送りするというのは、はなはだおかしいんではないかと思います。

○阿部会長 ほかの委員の御意見もいただきたいと思います。竹田委員が先ほどおっしゃっておられましたので、どうぞ。

○竹田委員 審査請求制度は、特許出願に対し審査をする制度を前提にする以上、やはり避けられないと思います。それは審査官を増員すればできると、馬場参考人は言われましたけれども、一昨年から総合科学技術会議を始め、いろんなところが議論もし、定員法の枠を超えて、ようやくいわゆる任期付き審査官の採用等を実現できた。それが現在の状況です。
 審査請求制度をなくしてしまえば、7年から3年にするときも大変な滞貨、現在の滞貨の原因は、1つはそこにあるわけですけれども、それを更に増幅することは目に見えています。審査官を増員したらいいと言ったって、そんな簡単にできるものではないということは、もうここにいる人たちだれだってわかっていることではないかと思います。
 そのために、審査期間が現状の24か月から48か月間になろうと、どれだけになろうと、それは審査官を増員しないのが悪いというわけにもいかないことです。だから、審査制度を前提とする以上、審査請求期間というのはどうしても設けざるを得ないのが状況だと思います。
 それだったらば、今の滞貨をも一掃して、審査請求したらすぐにでも着手できるほど審査官の増員がされて、さてそのような状況の中でもっと審査請求期間を考えようというなら、そのときには考える意味はあるかもしれませんけれども、とても現実的にはそれはできない。そのために、被害を受けるはだれかと言うと、特許出願人そのもの、国民が被害を負うことになってしまうと思います。
 その点から言えば、審査制度を前提とする以上は、やはり審査請求期間のは、どうしても設けざるを得ない。では、無審査にすればいいのかと言うと、私は絶対反対です。特許権のような排他的な、独占的な、権利を付与する以上、やはりきちっとした審査がなされて、それがそういう権利として付与され、独占的な強い権利として行使が認められるような権利であるかどうかの審査はやはり必要なので、そういう意味では審査制度は必要であり、そのためには現行のような審査請求期間は廃止するわけにはいかないだろうというのが私の意見です。

○阿部会長 これは、安念参考人も下坂委員も、今の件、どうぞ。

○安念参考人 恐らく今すぐやれと言った人はだれもいないのであって、要するに、年次目標の話ですから、これからどういうふうにして滞貨を、こぶを少しずつ減らしていって、それと同時に、審査請求の期間を短くし、ゆくゆくは、すぐに審査に着手するようにしたいという話でしょう。審査請求制度は、まさに中山先生がおっしゃったように、しようがないからあるというだけの話なんですから、それはなければない方がいいというふうに思っている人も多いわけです。それなら10年がかりでも15年がかりでもいいから、段階的に短くする。あるいはなくしていくということを考えようという話だろうと思います。今すぐそれができるかと言ったら、それはできないというのはごもっともです。しかし、そのプログラムはつくっておくべきでしょう。そういう御趣旨だろうと思います。私もそう思います。

○下坂委員 私の方の提案は、検討事項として考えていただきたいということで、現状ですぐに、または3年後に審査請求をなくせという提案はいたしておりません。今、審査迅速に関して、特許庁の方にいろいろとやっていただいておりますし、これが進んでまいりますと、あと何年かで審査待ちゼロまで行くとはっきり明言していただいておりますので。また、他方では、出願も質のいいものを提出しようということで、出願人の方も数は少なくても質のいい発明を出していくという方向に動いていくと思われます。それから、調査機関というものもできてくると。
 それから、先ほどのIPDLなども、また大学などのいろんな検索システムなども進んでまいりましたら、今とは違った状況が出てくるであろうと。それらを含めて将来的に御検討いただければという提案でございます。

○阿部会長 事務局、何か。

○小島事務局次長 ちょっと参考のためにですけれども、日本企業が海外で一番出願しているアメリカでは、平均3年ぐらいで特許登録になっていて、日本の方は9年ぐらいで特許登録になっているということです。日本の薬事制度と同じで、薬事制度よりもっと倍ぐらいかかっていますけれども、日本の技術について日本の特許庁の審査、登録が、5、6年も遅れているのはいかがなものかという感じがするのが1点。
 それから、先ほど日高参考人から御説明があった、日本企業の出願行動について、技術流出、貴重な技術の垂れ流しという側面から見て、その出願行動なり、特許制度をも考えていかなければいかぬということも併せ考えると、今の審査実務上の問題から審査請求制度が必要だということをもう一度、出願行動、あるいは技術流出上の問題ということも総合的に考えて検討し直すことが必要なんではないかということだということです。

○阿部会長 いろんな御意見があるところですので、今日別に結論を出さないようにします。
 森下委員、どうぞ。

○森下本部員 現場で特許を出している方の立場から言えば、審査請求制度があっても、なくても、今は3年ですけれども、これが2年になるとほとんどどっちでもいいという状況になってくると思うんです。1年間はいずれにしろデータを追加するのに一生懸命やりますし、アメリカでも1年半〜1年9か月目ぐらいから審査に入ってきて実際に問い合わせが来るので、そういう意味から言えば2年ぐらいの範囲になれば、日米は余り変わらない状況になるのかなと。
 今、我々が一番困るのは、アメリカで先に通って日本が通らないという状況で、ただこれはアメリカに出していると、アメリカで通っているということで、日本でも何とかなるだろうということで、ある程度株式市場を含めて、特許に関しての位置づけというのが一応外から見て確認できるというようにとられています。
 問題は、日本だけ先にやっていて、日本しか出してないと、いつまで経っても特許請求済みで価値がはっきりしないというのが、一番外から見たときに困る状況なんです。これが、今は3年ですけれども、審査請求期間が2年まで行けば、実は余りアメリカと変わらなくなるので、そういう意味から行けばあと1年ぐらい短縮できるかどうかのところが恐らく実質的な議論としては意味があるのかなと思っています。
 その意味では、必ずしも廃止ではなくてもいいですけれども、この3年というのがより短くなってきて2年ぐらいになれば、かなり実務的な問題点というのは、我々の側から言えば解決がつくんではないかと思います。

○阿部会長 時間の関係もありますので、これは今日結論を出せるような簡単なことではありませんので、そのほかの技術流出の防止、世界特許、刑事罰の強化について、いかがでしょうか。御遠慮なく。
 どうぞ。

○吉野委員 1つだけ質問ですが、未請求で取り下げるというのが多いですね。その理由の明細のようなものはありますか。

○日高参考人 理由の明細ですか。

○吉野委員 どういう理由が何%、どういう理由が何%とか。

○日高参考人 理由はそれぞれ聞かないとわかりませんので、多分、この技術は市場が必要としてないとか、それではこの技術はやめたとか、そういう理由だと思います。

○吉野委員 その辺に何かかぎがあるかもしれないという感じがします。

○阿部会長 これは非常に大きいんですね。もし中身がわかると少し。

○森下本部員 会社側から言うと、とりあえず出しておくというのが結構ありますね。正直なところ。特に防衛特許的なものは、かなりそれがあります。

○下坂委員 大体48年ごろそれが増えたというのが、防衛が多いということでした。

○森下本部員 そう思います。ですから、そういう意味ではこれは2年になればそこで消えるし、3年になるとそこでかなり消えていく部分だと思います。

○阿部会長 わかりました。

○中山本部員 今の流出の問題でよろしいですか。

○阿部会長 どうぞ。

○中山本部員 日高さんにお伺いしたいんですけれども、特許法の先使用権の要件の変更は極めて大事な問題で、議論を要するんですけれども、それとは別として、こういう新しいシステムをつくらなくても、公証人を使えばできませんか。

○日高参考人 勿論できます。

○中山本部員 そうすると、組織を使って、人を使って、金を使うということをしなくても、公証人だけで十分対応できますね。

○日高参考人 公証制度が十分機能していればそれでも十分だと思っています。

○中山本部員 今の制度でよろしいわけですね。

○日高参考人 勿論その証明の手段として公証制度は一つの手段として使えると思います。

○中山本部員 その方が極めて簡略で、やりやすくて、しかも書く内容も自由で、公証人の方が一番いいような気がするんですけれども。新しい特許庁の新しいシステムをつくるよりは。

○日高参考人 最近特許庁でも、フランスに行っていろいろ調べてきました。ソロー封筒に加えて、公証制度を使ったり、あるいは執達吏という仕組みを使ったりして、社内の発明事実をさまざまな方法で立証しているようです。こうした制度利用の方が、実はソロー封筒よりも使われているようです。要するに、私もこのソロー封筒制度のようなものが立証手段として必須だと言っているわけではなく、どうしても日本人のものの考え方とか、行動様式からすると、多分きちっとこういう書類をつくって貴重に届けておいた方が多分安心感があるのではないかという感じがしますし、立証手段としていくつかの手法メニューを揃えておくことは有効ではないかと言う提案であります。

○下坂委員 今、著作権の方でプログラム登録をしております。あの形式と似たようなものを考えれば、そんな大変なことではないのではないかという気はしております。この方法は、公証人よりは、日高参考人がおっしゃったような日本人の心理にとってはかなり安心できるものです。それから、登録番号とか、原簿も付きますので、非常によいのではないかと思います。

○中山本部員 あの登録はあれでいいんですけれども、ここでの議論と目的が全然違います。プログラムの場合は公示・対抗・推定等の機能をもちますが、こちらは先使用の証明のための何か手段の話をしているわけです。新しい組織をつくって、金を使って、そういう組織を作る必要があるのか、という話をしているのです。つまり何が一番目的のために安くて、簡単で、利用しやすいかという話ですね。

○日高参考人 私は企業の方々に、どれを選べばいいかという選択肢を広げてあげて、公証人を使う人は公証人を使って頂き、特許庁に届けたい人は、特許庁に届ければ良い。とにかく、選択肢を広げてあげればいいんではないかと私は思っております。

○中山本部員 選択肢はいいんだけれども、特許庁がやるためには、新しい組織をつくって、金を付けて、人を付けるという話になりますね。

○日高参考人 単に保管しておくだけですから、社会保険庁にように大量な人員と莫大なシステムをつくってとか、そういうことは必要ないと思っています。

○中山本部員 お役所がやると、さっきの安念教授の話にもありましたが、壮大なものをつくるんではないかと思いますね。

○下坂委員 中山先生のお話では、今でも公証人の制度を利用して、できるのではないかという意味でございますか。

○中山本部員 現にやっていますし、例えば、元判事の倉田公証人なんかは、少なくとも主張しておりますし、十分できるんではないかと。ただ、余り知られてないと言うか、むしろ中小企業なんかは使えるんだと思いますけれども、余りそれは知られてないのではないかという気はしています。
 特許庁に出すとなると、書類の様式とかいろいろあったり面倒臭いですけも、公証人なら何でもできるんですね。どんなものでも書いて、そこで日づけを確定しておいて、後で証明できると。

○阿部会長 どうぞ。

○下坂委員 いろいろな種類のものを考えていって、検討したらどうかと考えていますけれども。

○日高参考人 方法論は、具体的にケース・バイ・ケースでいろんなことを考えていけばいいと思っていますけれども、これは特許制度の根幹に関わる問題ですから、要するに、発明者にどういう権利を与えるんですかという根本的な問いかけだと自分自身で思っているわけです。
 今は、すべて特許の方に全員引きずり込むような仕組みになっています。特許権者が一番強い力を持っていて、特許の世界に来なかった人間は後の発明による特許であったとしてもその支配下におかれてしまう。だから、日本の企業はこうした恐怖心によって、将来の防衛のために出さざるを得ない状況になるわけです。だから、そこをまず変えなければいけないのではないかと思っております。
 要するに、会社としての知的財産権というのは、まず発明から生まれるわけです。研究開発が行われ、そこで新しい技術が生まれた瞬間に、その会社に無形の財産権が生まれるはずなんです。それを、どういう形で経営の中に生かすかという選択肢を広げてあげないと、今はみんな特許権、特許権となってしまい、出願せざるを得なくなる、そうすると、本来秘密にしておいた方がよいものが、全てばれてしまう。

○竹田委員 みんな特許出願するというのは、正しくないのではないですか。ノウハウとして管理している部分は非常に多いので、そのように言ってしまうと、事実を曲げることになると思います。

○日高参考人 ノウハウとして実際に実施しているものは、今でも先使用権で保護されています。ノウハウとして実施をする前の段階を私は言っているのです。ノウハウも、いろんな企業に聞きますと、研究レベルででき上がったノウハウが、実際の製造の現場で使われるまでには、やはり1年、2年かかるケースもあるんです。その間に第三者に出願をされてしまったら、その人はその特許権者の支配下に置かれてしまうわけです。ノウハウそのものも発明をした段階で保護できれば、その人がいつ実施をしようが、その後の第三者の特許権者に対して対抗要件を持つわけです。自分は実施できるという、安心感が生まれるということです。

○中山本部員 ただいまの79条の要件の話、これは非常に重要な問題で、先使用権というのは何かと言うのは、もうドイツの特許法ができるときから大議論になっているんです。これを変えることは、かなり議論を呼ぶんですけれども、大事な話であって、議論して欲しいと思います。もう一つはそのための担保の手段として特許庁に組織をつくるのがいいのか、公証人がいいのかという話と全然別なんですね。最後の方は立証の方法をどうするかという話です。
発明をしただけで先使用権を与えることには弊害もあるんです。特許発明なんて簡単にできますから、じゃんじゃん発明だけしている企業はアメリカなんかにいっぱいあるわけです。それが全部先使用権を持ってしまうとか、弊害もあるので、プラス・マイナスをよく考えていかなければいけないと思います。

○阿部会長 大変難しい御議論だと思いますが、いずれにしても、技術流出が多過ぎるんですね。ここに書いてないのもあると思いますけれども、そういうものをどうしていくかというのは、国のできることと企業がやるべきことといろいろあると思いますけれども、やはり何か考えていかないといけないことだと思います。
 どういうふうにするかというのは、難しい点が今の御議論でもあるわけです。
 時間の関係もありますので、刑事罰の強化はどうでしょうか。これも前から何回も出てきている話ですけれどもね。
 どうぞ。

○竹田委員 そういう方向でも検討してみようということについては、私は別に異論があるわけではないですけれども、どうも一般にこの知財の保護、イコール国民に対する抑止的効果、イコール刑罰の新設、刑罰の強化、こういう方向に行くのは、本当にそれでいいのか考えてみる必要があると思います。言わば、抑止的効果の裏返しは威嚇的効果でもあるわけで、そういう方向で問題を解決しようというのが、本当にいい発想なのかというのは、よく考えてみる必要があろうかと思っています。

○阿部会長 これはもうしばしば御提案が出てくることなんですね。
 どうぞ。

○久保利委員 余り神学的論争はしたくないんですけれども、結局、安念参考人もおっしゃったように、刑事罰というものに抑止的な、抑止的効果を期待しています。確かに竹田先生おっしゃるとおり、威圧的と言うか、威嚇的ということも含めての話でありまして、その期待があるのであれば、ではどうするかという話なんです。例えば、総会屋を総会場からいなくさせるために、商法改正をかつていたしました。そのときに、ペナルティーが30万円の罰金、あるいは半年以下の懲役と。このときに、確かに総会屋は激減はしました。辞めた総会屋は、それまでは何の犯罪でもなかったものが罪になるのであれば、私は犯罪者にはなりなくないと言って辞めました。しかし、もともとの暴力団で犯罪者であることは何の問題もないと。要するに、厳しい恐喝罪で問われるのか、そうでないのかというレベルで考えている人にとっては、これは徳政令の一種であると。したがって、恐喝をしても6か月で済むのであれば、この罰則ができたからといって何で総会屋を辞めなければいけないのかということで、その連中は断固として残りました。
 結局この連中がいなくなったのは、刑事罰の重罰化によります。要求罪だとか、あるいは威迫に基づく場合には、5年というのがありますよと、要求しただけで3年ですよとなった瞬間に、併合罪で1.5 倍になったらば、これはほとんど恐喝と同じだと、では辞めようということになったわけです。
 ですから、そういう意味で私はこの総会屋を取り締まるときのケースを考えてみれば、重くすればそれだけの効果はあると。ただし、その人たちが常習的犯罪者と言いますか、そういう気持ちでやっている人であるのか、ごくごく普通の市民がなってしまうような事案なのか、それによっては余り効果がない場合もあるだろうし、それでも効果があるかもしれないと。これは、ある程度刑事政策的に十分議論をし、データを集めてみなければわかりませんけれども、ただ軽いよりは重くした方が多分威嚇力は強いだろうというのはそのとおりだろうと思うので、どの程度が適切かという問題については、もう少し検討を続ける必要があるだろうと思っています。

○阿部会長 今日のところはその辺にさせていただきましょうか。
 2番の「模倣品・海賊版対策」に入らせていただきます。資料5にありますように4つあります。
 「○模倣品・海賊版不拡散条約の提唱」。
 「○専門的判断の仕組みを活用した侵害認定」。これも、今まで何回も議論になっているところです。
 「○個人輸入・個人所持の取締りの強化」。
 「○インターネットを利用した侵害の対策強化」等でございます。
 よろしくお願いいたします。
 どうぞ。

○中山本部員 2.の2番目の「○専門的判断の仕組みを活用した侵害認定」、これは今検討している(案)の中に書いてあることとどこが違うんですか。

○阿部会長 どうぞ。

○小島事務局次長 中小・ベンチャー企業の関係で今後検討するという、先ほどの報告書の中に入ったのもこの趣旨です。今回は12月のこの会合のときに、久保利委員、下坂委員始めいろいろな方から、この課題についてどうなっているかという御提起があって、今後の課題として今回この問題が委員の皆様方からの項目として挙がっているわけです。それで久保利委員、下坂委員からも、それぞれこういう案がどうかということで、その提案について御議論をしようということです。他方、先ほどの中小・ベンチャーの報告書を受けて、役所の側で検討するということをそれぞれ促すということですけれども、他方この場も下坂委員、久保利委員から御提案があったものを御議論いただくということだと思います。

○中山本部員 ちょっとよくわからないんですけれども、今のこの報告書で、これはあて名は書いてありませんけれども、多分財務省でしょうけれども。

○小島事務局次長 財務省とか、経済産業省とか。

○中山本部員 経済産業省もあるかもしれませんが、検討しろということを命じておいて、それで我々のこの委員会でもまた同じ問題を検討するという趣旨ですか。

○小島事務局次長 いろんな案を検討するということでございます。

○中山本部員 向こうにやれと言っておいたんだから、一応向こうのやっているのを見るのが普通で、同時にここで何かやって違う結論を仮に出して、意味があるのかという気がするんです。

○阿部会長 それは、先生おっしゃったようなこと、視点は大切なので、しかし、御提案がありましたから話題にしているだけで、最終的にここでパラに結論を出すということを決めているわけではありません。

○中山本部員 だから、私の意見としては、これは今のところは来年から外すべきではないかと。

○阿部会長 しかし、御提案がありましたので、御提案の趣旨をちょっと伺ってということにさせていただきます。

○久保利委員 私の意見書の2番のところですけれども、これについては、どういう方策があるのか、私としては当初、全部裁判所に行くという考え方もありますね。と理解をしていたわけですが、しかし、それを仮に原則にするにしても、現実に発生している問題というのは、なかなか簡単ではないなと。
 したがって、税関長の判断をサポートする機関というのは、どんなふうにしたら考えられるのかということで、具体的な構想を私と、あるいは日弁連の嘱託をしております三尾先生といろいろ考えて議論をしてみた。
 なかなかうまい案がそう簡単に出るわけではありませんけれども、透明性を確保しながら、どういう対象事件に絞っていくかとか、あるいはその審理の方法を合議制にするのかとか、一つひとつ考えていくと、いろんなパターンがあり得るだろうと。そうすると、現に今回のプログラムで、各担当省庁にお考えくださいというふうに言ってはありますけれども、弁護士としてももう少し踏み込んでこのポイントを分析してみる必要があるのではないかと、それを分析しているうちに、一応の構想らしきものがまとまってまいりましたので、これをたたき台としてお出しをし、もし継続して議論をここでやるというなら、それもよろしい。あるいは各省庁の方に、こういう意見が出たということを御報告いただいて、そちらで検討されるもよし、少なくともこの問題については、相当練った案をつくらないと、機能しなくなってしまうか、あるいは機能はするんだけれども、ほかと非常にがつがつぶつかるような制度になってしまうか。大変工夫を要するところではないかということで、この委員会で検討するのは決して無駄ではなかろうという気がしたわけでありまして、そういう意味でお出ししたわけです。

○阿部会長 ありがとうございます。
 下坂委員、どうぞ。

○下坂委員 中山委員の御質問がよくわからなかったのですけれども。それはここで提案するのがおかしいとかいう理由を先ほどおっしゃいましたね。よその審議会に頼んでいるからということですか。

○中山本部員 そもそもこのとりまとめ(案)の文書の性質が、この問題は財務省なり経済産業省の所管だから、そこでちゃんと検討してやれということを指示している。と同時に、こちらでもまた同じことをやるというのはおかしいので、一応指示した以上は向こうにやらせて、だめならだめでまたこちらでやることがあり得るかもしれませんけれども。

○下坂委員 税関の方は、もう既にかなり進めていただいているのです。そこの参考資料にも書かれていますように、税関としては現状で弁理士なんかも2名御採用いただきまして、かなりのものをおやりいただいております。
 そこにないのが何かというのが、当事者審尋問のいろんなステップで、そういうものが1つあればいいなという主張は、前々から続けている主張でございます。
 現在の取り組みは、勿論お進めいただいて、その上で、今後事件数とかも増えてくるということも予想されますので、提案させていただきましたのが、資料9でございます。括弧1の専門的判断の仕組みを活用した侵害認定ということで、その中でも技術判定機関と行政審判機関という2つぐらいのものをご検討いただきたい。それについての提案をさせていただいておるところです。
 税関でおやりいただいていることは、進めているのだから、そこにお任せしたから、この専門調査会ではもう終わりになるということですか。

○中山本部員 いや、そうではなくて、そこに書いてある文章は、技術等を専門的に判断するための制度的仕組みについて、更に検討し、必要に応じて法整備をやれという文章になっているわけですね。今、下坂さんのおっしゃったことを、まさに検討しろということをこの文書は言っているんではないかと思います。

○小島事務局次長 混乱があるようなのでちょっと私の方から御説明いたしますけれども、先ほど中小・ベンチャーの報告書で、この水際対策の強化ということで、中山先生がおっしゃられたようなことを提言して、行政庁に検討を依頼するということが確かにあるわけですけれども、この専門調査会でも去年から何回か議論になっているので、かつそこでも、去年の今ごろもやっていまして、なかなか議論が整理できなかったところもあるので、それぞれの先生方が引き続き検討して、それぞれの案を提案して、その参考にしてほしいということでテーブルに出されているわけなんで、各省庁において検討されるときも、ここの権威ある専門調査会で出された御提案を参考にしてやってください。あるいは更に、この専門調査会で検討を継続することとするならば検討を引き続きやるということで、それはこの専門調査会が決めることですけれども、先ほどのとりまとめで各省庁に依頼したからここでやってはいけない、あるいは提案をしてはいけないということではないと思います。

○阿部会長 どうぞ。

○馬場参考人 今の問題でございますけれども、税関長の判断で、例えば、外国からの輸入を差し止めると、その理由は、例えば、特許権の侵害があるという理由によって、差し止めという強制的な執行ができるということになった場合、現にそういう事例が起きているわけでございますけれども、果たしてそういう高度な技術的な特許技術の侵害があったかどうかというのを、税関長の判断はサポート体制の中でする判断程度でいいのかという議論があると思います。そういう制度を日本が取って行って、国際的な問題になりかねないのではないかと私は思っております。
 したがって、久保利委員が御提案になっている中に、この税関長の判断をサポートする法的判断機関の創設が検討されるべきという、これはイメージとしては、日本版ITCのようなものを検討すべきではないかとおっしゃっているんだと理解しましたけれども、やはりこの高度な特許技術を税関段階で、司法判断も仰がない段階で、差し止めのような強制執行をやることが本当に妥当かどうか。客観的に見られるように日本の制度を考えた方がいいんではないかというのが、私の意見でございます。

○阿部会長 どうぞ。

○伊藤委員 ただいまの点でございますけれども、専門的判断の仕組み、あるいは専門的知見を生かした侵害認定という点では、従来からも議論しておりますし、今回のとりまとめにもあったとおりだと思います。
 ただ、今回の下坂さん、久保利さんの御提案を見ますと、単に専門的ということよりは、むしろ中立的な機関による対審的、あるいは手続保証も十分踏まえた侵害認定の手続をという、恐らくそちらの方に重点があると思うんです。
 しかし、この問題は、従来ここの場でも議論をしなかったわけではありませんし、相当司法手続での議論をしてきて、一応のとりまとめとしてああいう形になっておるわけでございまして、勿論この場で大方の委員の方が、是非またこういうことでもう一度仕切り直しをして、こういう、まさに今、馬場さんがおっしゃったような日本版ITCのようなものをもう一度考えてみたらどうかということであれば、それはそれで1つの方向だと思いますけれども、やや従来の議論の流れからすると、またここで1から仕切り直しで、こういう中立的、対審的構造を持った判定機関を最初から議論するというのは、ちょっと唐突のような感じがいたしますけれども、いかがなものでしょうか。

○阿部会長 どうぞ。

○下坂委員 この議論は、一旦締めましたか。

○久保利委員 少なくとも、伊藤先生おっしゃるとおり、ここで議論があったことはそのとおりです。しかし、結論が出ないままに何か別のテーマに移ってしまって、本当の意味の結論はここでは出ていないと。出ていないから、出した方がいいのかもしれないと。あるいは出さないで、これはペンディングのままずっと行くなら、それでもいいとは思います。基本的には、出席するメンバーがどういう方であるかによって、ときどき結論がぶれたり、いろいろあったものでございますから、私はむしろ継続して議論をしてもいいのではないかと。しかし、その必要はもう全くないと言うのであれば、それもあるでしょうし、という意味で問題提起をしたつもりでございます。

○阿部会長 どうぞ。

○中山本部員 結論が出ていなかったというのは、そのとおりですね。いろんな意見がでました。しかし、それはこの文書全部そうなんですよ。どれもこれも時間は非常に短くて、さっきの損害賠償一つを取ってもそうなんです。全く結論が出ていない。
 しかし、だからこそ、ここで全部細かく議論はできませんね。毎週のように会議がないと。だからこそ、もちはもち屋でいろんな分野でやれという指示を出している。それが戦略計画の最初のときからそうなんです。全部細かく議論していないし、できない。だから、今ここでまさに財務省等にやれと言っているわけです。

○下坂委員 だからこそ残すべきだと考えているんですけれども。結論を出していないので。

○中山本部員 その後でまた追加してもいいけれども、とりあえずこれは今まで議論をして、その結果。

○下坂委員 結果がまだないんですね。

○中山本部員 結果がないから、もっと細かく議論をしろと各専門官庁に出しているわけですね。

○阿部会長 よろしいですか。御意見が収束していないのですけれども、結論を出していないと言われると、私の責任があるんですが、中山先生がおっしゃっているのは、私はちゃんと配慮しなければいけない大きい点だと思います。
 そうでありますが、では、ここで何もやっていかぬということではないので、どんどんやっていただいていいんですけれども、少なくとも2005を通じて、この推進方策を各省にお願いすることになるわけですが、お願いしておいて、こちらでパラに同じことをやるというのは、やはりよくないことなので、ですから、私はもうちょっと中の議論をしていただきたかったのは、ここで資料9、10も含めて、こういう考え方があるんだということを是非各省の方にお伝えをして、重要参考にしていただきたいということで、お願いしたあとで、ここでパラにやるというのはよくないことだと思います。
 ただ、お願いしていて、向こうがなかなかやってくれなかったり、あるいは視点が別なことについて、交通整理ができる上でこちらでやるのは、私はやってもいいだろうと思います。そういうことで今日は時間がないので、重要な御指摘ですので、お伝えをするということで、とりあえずいかがでしょうか。それで締めはしません。これは結論を出してあれば、お願いする必要がないのではないかと、多分中山先生は言うのではないかと思いますから、そういうシチュエーションだと思います。
 その上で、何かこれについて、あえてまた中身についてプラスありましたら、どうぞ。

○久保利委員 しつこいようですけれども、要するに私は参考資料で、この2004年の計画の取組状況の13ページがありますね。一番最後についている分厚いのですが、これの13ページで、要するに前の計画で水際での取締強化と言って、財務省等が一生懸命いろいろ研究してくれているわけですね。13ページの2−1。
 この2−1の(1)というのが「専門的かつ簡便・迅速に行う制度を確立する」、以下のような云々ということで、検討して制度整備を行うと言って、財務省さんはいろいろワーキンググループをつくっておやりになったわけです。財務省の網がけになっている色が付いているところの一番最後のポツに「ワーキンググループにおいて検討され、新たな審議機関を設けることについては」云々と。「現行制度のメリットを損なうおそれがあることから、十分慎重に検討すべき問題であるとされた」という御意見をいただいているわけで、では、十分慎重にこの調査会でも検討しましょうというテーマとして、もう一遍やってもいいのではないかなというふうに私は思った次第です。
 したがって、新たな審議機関というのをどうつくっていくかというのは、この回答から、あるいはこの現状からすると、こちらへまた一部ボールが返ってきているのかなというふうに、私は理解をしたわけです。いや、まだボールは返ってきていないんだというのであれば、しばらくボールをお預けすることは一向に。

○阿部会長 その辺は事務的に整理をしてもらって。

○久保利委員 これは座長にお任せしたいと思っています。

○阿部会長 それでやはり我々としてお願いしているところが、実はその半分ぐらいしか向こうに伝わっていない、あるいは審議していただけないという場合に、残りの分をこちらでやるのは構わないと思いますから、それは事務的に整理していただいて、中山先生のような配慮もしつつ、やらせていただきます。

○久保利委員 了解しました。結構です。

○阿部会長 ほかの点はいかがでしょうか。例の不拡散条約の提唱は、これは竹田先生は去年からやっていただいているんですけれども、これはどうして動かなかったんですか。現状認識はどうなんですか。

○小島事務局次長 いろいろな形で外務省を中心に、米、EUの先進国とも意見交換をしていただいていますけれども、それぞれ各国の制度も違う、思惑も違うということで、まだ進んでいませんので、もう少し今日、久保利委員からも具体的な御提案がありましたけれども、そういうのも含めて、具体案づくりも含めて、政府部内でやっていかなければいけないというふうに思っています。

○阿部会長 竹田委員に久保利委員からセコンドのような御発言がありましたので、竹田委員、大変済みませんが。だから、取り上げなければいかぬという意味ではないんですけれども、大切なことだという認識が少し深まってきているのではないかとも思います。

○竹田委員 私が提案したのは、先ほど会長が言われたように、昨年の12月の段階で、その後、提案しっぱなしで何もそれ以上の議論はなされないままに終わって、その後、今日の委員の御意見でも、久保利委員や下坂委員からもその方向で実現すべきではないかという意見が出されたことについては、私としては心強いんですけれども、そもそもこういう提案をすることになりましたのは、私も先ほどの一番最後の参考資料の中の14ページのところで、「個人輸入等の取締りを強化」というところにありまして、そこの産構審の「商標制度小委員会」では、私も委員として出席していましたし、商標法によって規制するということは制度の本質に反するというのは、私自身が述べた意見ですけれども、それだからこそ、商標法の改正等によらないで別に法律をつくる。
 ただ、それの業要件の問題が一番の問題でありますけれども、それがあるがために、結局知財法の問題としてこの問題を取り上げることは、私はできないと思っていますけれども、それだからと言って、これは放置されていいということではなくて、こういう1つの個別の法律を設けるということは、こういう模倣品・海賊版の輸入処理に対する我が国の言わば基本的姿勢も示すことにもなるし、その意味で国民を啓蒙することにもなる。
 ただ、違反に刑罰を科するということは、これは知財法の並びから言っても、結局同じことになってしまうわけだし、先ほども申し上げましたけれども、余り刑罰での抑止的効果をねらうというのは、できるだけ避けるべきではないかということで、これは未成年者飲酒禁止法や喫煙禁止法にもあることなので、行政の処分での没収という1つの抑止効果を考えながら、このような法律をつくるということに、非常に今の段階では大きな意味があるのではないかというふうに思っております。
 蛇足ですけれども、日ごろ久保利委員とは意見の対立をすることが多いんですが、今度は賛成していただけましたので、私としてもこの方向でかなり具体的な検討に入っていただければ、将来のこのような問題の処置にも資するところがあるのではないかと思っている次第です。

○阿部会長 これはその後ろの、個人輸入、個人所持の取締りの強化にも関係があるわけですね。
 両委員が意見が一致するとばたばたと行く可能性がありますので、別な御意見は。

○久保利委員 竹田先生とはそんなに差があるわけじゃないですよ。精細な議論をずっとしてきただけなので。

○阿部会長 冗談です。済みません。
 これらの件について、何か御意見ありませんか。済みません。ジョークを言い過ぎて申し訳ありません。
 特になければ、インターネットについてはいかがでしょうか。これはまた難しい問題ではあるんですけれども。
 これは久保利委員、前もおっしゃっていた件ですね。

○久保利委員 そうです。

○阿部会長 今日の参考人の方で、何かこの辺について御意見ございませんか。

○久保利委員 全体の流れとして、やはり最近いろいろ問題点が具体的に露呈をしてきたという中から、法改正、特に消費者保護というふうな観点も含めて、大分そちらの流れが出てきたのではないかなと。別にそれに悪乗りするわけでも何でもないんですけれども、その本当の問題点を認識をすると、やはりもう少し踏み込んでさまざまな侵害対策強化をしないといけないだろうということでお出ししました。まだまだ知恵を絞ればいろんなことができるんだろうと思います。

○阿部会長 インターネットについて、ほかの専門調査会で何か議論をしているのはないですか。

○小島事務局次長 ないと思います。

○阿部会長 ないですか。どうぞ。

○中山本部員 私も、これは重大な問題で、検討しなければいけない問題だと思っております。久保利さんが書かれたこれはこれで本当にこのとおりだと思うんですけれども、これ以外にも恐らくインターネットというかデジタル時代特有な知的財産との関連の問題というのは山ほどあるんですね。ですから、知的財産戦略本部として、国家戦略として打ち出すのなら、かなり広い範囲を目配りして、インターネットあるいはデジタル時代の知的財産について、いかにあるべきかということを出したらどうかと思います。
 恐らくまた、これは細かい点につきましては、各官庁に出すと思うんですけれども、大まかな戦略というのをここで議論したらどうかと思います。

○阿部会長 どうぞ。

○竹田委員 1点付け加えますが、この問題は最後の参考資料の先ほど、私が言いました14ページのところの産構審の「商標制度小委員会」で、『模倣品の個人輸入及びインターネット取引に関する事例集』を出していまして、そこではインターネットに関する取引がどういう場合に商標法違反になるかについては、かなり具体的な事例を設定して説明はしております。ただ、これは商標法という視点から見ると、かなり制約があるわけで、その意味ではインターネット取引の模倣品対策ということになれば、それなりに検討すべき問題はあるだろうとは思っています。

○阿部会長 どうぞ。

○中山本部員 おっしゃるとおりで、商標法とか著作権法というのは、そういう個々の問題がいっぱいありますけれども、もっと大きいのは例えば、通信の関係とか非常に大きな問題も絡まってくるんで、それもやはり議論しないと本当の解決にはならないのではないかと思います。そういう意味では、やはり戦略本部で大きな議論をしてほしいと思います。

○阿部会長 これは事務局で少し調査してもらって、場合によっては参考人に説明していただくことも含めて、それで現状をいろいろ知った上でどういうふうに取り組むか考えましょうか。どうですか。

○荒井事務局長 そうですね。

○阿部会長 そんなことで先生方、よろしゅうございますでしょうか。

(「結構です」と声あり)

○阿部会長 今日のところは、非常に大きなテーマでありますので、それに対応した取組みをしていくということだろうと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、最後に残っているのが、上でも残っているのもありますけれども、「世界特許の実現」は今日は余り議論をしていただかなったですが、含めていただいても結構ですが、「国際標準化活動の強化」というのが活用分野であります。これを含めて、上の「1.保護分野」「2.模倣品・海賊版対策」を含めて御意見を賜れればと思います。よろしくお願いします。

○馬場参考人 参考人でもいいですか。

○阿部会長 どうぞ。

○馬場参考人 国際標準化活動につきまして、ここ数年非常に関心を持って、いろいろ調べてきましたけれども、野間口委員の御提案になっていることはもっともなんですけれども、今、決定的に不足しているのは人材だと思うんです。国際標準化というのは第一義的には産業界、企業が取り組む問題であって、行政がそれをバックアップするという体制が重要だと思うんですね。そのためには、非常に人材が必要になってくる。そういう点で日本は決定的に不足していると思います。
 国際標準は特許、知的財産と密接不可分でございまして、かつ中小・ベンチャーのようなところが国際標準で一躍世界トップの企業になるというのは、マイクロソフトとか、あるいはインテルの例でも出ているわけでございまして、国際標準は戦略の問題でもあるわけでございます。戦略は日本あるいは日本人が最も不得手とするものでもあるという観点から、是非ここに力を入れていただきたいなと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。私も同感です。
 どうぞ。

○森下本部員 今、馬場参考人が言われているように、非常に人材がやはり大事だと思うんです。この問題に関しては、1つ思っているのは、バイオ系だけではないと思うんですけれども、東南アジアをやはりどうやって日本側に取り込んでくるかが非常に大事だと思うんです。場合によっては、東南アジアのそういった諸国から弁理士等の将来なりそうな人材を受け入れていくような国際TLOとか、そうした知財の人材を国際的に育てるような仕組みというのは、やはりつくらなければいけないのではないかと。
 中国はもう独自の道を行っていますので、今からは非常に難しいでしょうけれども、少なくとも特にバイオ系、生物資源が東南アジアは非常に多くて、それをだれが取り込むかというのは非常に世界的な課題なんですね。現状はやはりヨーロッパ系が非常に強いという現状があるんですけれども、そうしたようなところに彼らも非常に、いわゆる原産地主義というので、かなり問題認識を持っていますので、そうした諸国から受け入れていって、むしろ日本側がイニシアティブを取る形の教育センターなりをつくっていくというのが1つ必要なのではないかと。
 その中で例えば、そうしたような東南アジア等の知財のものを利用して、インキュベーション・センターというか、ある程度そうした知財そのものも彼らはものを持っているだけで、なかなかそれを実際何に使えるかというところまでやれていないので、そうしたようなインキュベーション・センター等も日本の中でつくっていって、ちょっと幅広く東南アジアをむしろ日本側へ引き込むような仕組みというのも必要なのではないかというふうに思います。
 これは大学のいわゆる製薬の化合物もそうなんですけれども、物が見つかっていますけれども、何に使えるかわからないというので、なかなか特許としても弱いという現状があるので、そうしたものも含めて受け入れて、ある程度知財としての価値を高めるような仕組みも含め中で、国際人材の育成というのをやってはどうかというふうに思います。

○阿部会長 これもいろんなところで言われてきているんですが、なかなか具体的ないい知恵が、そんなことを言ったらしかられるかもしれませんが、まだまだという感じがしますので、何とかしていかなければいけないだろうと思います。
 ほかの観点はいかがでしょうか。世界特許については、建前としては各国ともそういう方向が必要だと言っているのではないかと思いますけれども、これもなかなか動きにくいのではないかと思いますけれども。

○中山本部員 世界特許はもう100 年以上前から、それが一番いいと言われて続けているんです。原理的に反対する人はだれもいない。これは荒井さんが長官のときに、有馬委員会というのをつくって、その方向性を打ち出してくれたんですけれども、方向性はもう大体決まっていると思うんです。
 ただ、あとは具体的に例えば、審査の協力をどのくらいやるか、だんだんと具体的な積み重ねをしていく段階であって、なかなか世界特許とぽんと出してもうまくいかない。最初はその協力から始まって、相互承認とかだんだんとやっていけばいいのではないかと。結構日本の特許庁は努力をしているのではないかと思うんですね。

○阿部会長 努力はしていると思いますけれども、なかなか道が遠いということで。

○中山本部員 道は100 年ぐらいかかります。

○阿部会長 もう少し早くしましょう。

○中山本部員 これは国家の主権に関わるんですね。ですから、経済はグローバル化しているんですけれども、国家の主権というものは現実に存在して、それをなかなか超えられないところですね。

○阿部会長 ほかに全体にわたって何か是非コメントしたいというところはございますか。よろしゅうごさいますか。
 それでは、この辺で本日の専門調査会を閉会にさせていただきます。
 先ほど申しましたように、本日とりまとめをしていただきました、中小・ベンチャー企業の知的財産戦略の推進方策の報告書につきましては、先ほど申し上げましたように、次回の本部会合で報告をさせていただきます。また、今まで御議論いただいた今後取り組むべき重点課題につきましても、併せて簡単に御報告をいたします。
 それから、今後の予定でありますけれども、現時点では特段決めておりませんが、これだけ今後の課題が今日御指摘いただきましたので、今後も必要に応じて開催の機会をつくっていただきたいと思いますので、事務局、よろしくお願いします。
 では、本日は御多忙のところ、大変ありがとうございました。