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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部権利保護基盤の強化に関する専門調査会 [印刷用(PDF)]


第6回 権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成16年3月9日(火)16:00〜18:00
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員
中川委員、野間口委員、山田委員、吉野委員
【本部員】中山本部員
【事務局】荒井事務局長、小島事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)参考人からの意見聴取
シャープ株式会社 寺島重男知的財産権本部長
株式会社シード 西岡靖博代表取締役社長
独立行政法人日本貿易振興機構 塚本弘副理事長
(3)模倣品・海賊版対策について
論点の整理
討議
(4)閉会


○阿部会長 それでは、全員おそろいになりましたので、これから第6回の「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」を開催させていただきます。座ったまま進行させていただきます。
 本日は前回に続きまして、3人の参考人の方にお越しをいただいております。最初に御紹介をいたしますと、私の右からシャープの寺島重男さん、知的財産権本部長でいらっしゃいます。
 そのお隣が株式会社シードの西岡靖博代表取締役であります。よろしくお願いします。 その次は日本貿易振興機構の塚本弘副理事長さんであります。よろしくお願いします。 それでは、以下議事に入らせていただきますが、最初に3人の参考人の方から順に御説明をいただきまして、御意見、御質問につきましては、3人のお話を伺った後でお受けするということにさせていただきます。
 それでは、最初に10分弱で、シャープの寺島さんからよろしくお願いします。

○寺島参考人 1998年、私どもの町田が社長になりまして、そのときに会社をクリスタルクリアカンパニーと、透明性の高い会社にしようという宣言をしました。そのとき併せて2005年までに国内のブラウン管テレビ、これをすべて液晶にするということ。
 それと併せまして、日本の中でのモノづくりにこだわるという、大きくこの2つを挙げて経営を進めています。
 その中で、液晶に特化するということに、モデルとして吉永さんを使いまして、この後で出てきますが、この液晶の形のものを、外部のデザイナーを使って、初めてPRするために、かなりインパクトの高い作風のカタログをつくって進め始めました。

(PW)
 1月から三重県の亀山で液晶パネルとテレビの一体構造型の37インチの液晶パネルがつくられ始めております。後で少し出てまいりますけれども、この国内での生産を秘密を守りながらやりたいということで、かなり意識して取り組んでおります。
 最初に申し上げた製造業が生き延びるためにということで3つ大きくあります。1つは、日本での模倣品、侵害品、特に特許を含めて、それをストップさせたいということが1つ。 もう一つは、先どの三重の亀山の工場ですけれども、技術流出を阻止したいということで、工場全体をブラックボックス化して進めております。
 併せまして、海外で模倣品が液晶でいろいろ出てまいりますので、それに対する対応をしていくということが1つあります。
 さらに秘密保持の点では、定年退職者の秘密漏洩をどうするのかというのが今後の大きな問題としてあります。

(PW)
 権利保護のとらえ方としましては、大きく2つあると考えています。
 1つは、商標侵害とか意匠侵害、これは割合外から見てわかりやすいということで、対応も取りやすいわけです。
 もう一つは、特許権侵害の方で、これは裁判をしてということでなかなか侵害訴訟の権利確定まで時間がかかるということで、水際でなかなか止められないという問題があります。意匠権侵害への対応では、後で例で出てまいりますけれども、昨年改定されました関税定率法を初めて適用していただいたという例があります。

(PW)
 この資料ではシャープの中で、ここ2、3年の中で事例として発生したものを示しております。特に中国・韓国を中心に東南アジアでの模倣品が意匠と商標侵害という形で多く出ているということです。

(PW)
 これは模倣品の1つで、中国で出てまいりましたものです。国内でエアコンに液晶を付けるという新しいものを初めて出しましたが、すぐにその年に中国で液晶を付けたようなものが出てきております。
 これは複写機のトナーの例ですが、これは外見だけで見ますと、ほとんど差がありません。詳細に見ると個々で違いますので、模造品かどうかというのはその辺で判断をしています。これも発生したところは、香港とかシンガポールで出ていますと、そこまで専門家を派遣してチェックをするという状態になっています。

(PW)
 特に海外での問題として、1つは、いろんなものが出てまいりますけれども、個別に個々に当たっているとなかなか大変ということで、最終的には製造メーカーでの対応をきっちりしないといけないということが1つあります。
 もう一つは、先ほどエアコンで出てまいりましたけれども、中国でいろんな模倣品のチェックをしようとすると、なかなか1社ではやりにくく、先ほどものも、家電数社でまとまって調査をして対応したというものです。
 もう一つ、これは前のこの委員会でも議論されていますけれども、中国の輸出差止めの制度はありますが、特に供託金と対応期間の問題ですね。その辺で非常に使いにくい制度となっています。
 そういうところから、下に書いていますように、中国についてはこの辺のところを対応できないか。それと、後、侵害発生国での輸入差止めをもう少しきっちりできないかということが要望としてあります。

(PW)
 これは国内へ入ってきた例です。一番最初に見ていただいたカタログのところで、これを吉永さんが持っていたわけですけれども、この次のページに経過をちょっと書いていますが、まず真ん中のものが国内の小売店で販売されているというのがわかりまして、これについてまず意匠権で何とできないかということで、税関に最初に申し上げました関税定率法で次から入ってくるものが押さえられないかということで申請をしました。差押えの受理をしていただいて、既に国内に入ってしまったものは処理できなかったんですけれども、次から入ってくるものを押えられるような状態になりました。
 その申請をしている中で、昨年9月に新潟税関で右のものが出てまいりました。
 その経過ですけれども、先ほど申し上げましたように、4月に先ほどの真ん中のものが入ってまいりまして、それから、申立てをして関税定率法で一応認めていただいて、9月に新潟で入ってきたという状況です。
 最終的には、意匠侵害品という認定をいただいて、輸入業者の念書も持って、積み戻しという処理をしました。

(PW)
 これはちょっと違った例なんですけれども、液晶の場合は、コンピュータに入っているモニター部分で、特に光源の寿命が来ますと、これを抜いて光源を差替えられる特許を出しております。一応裁判で差止めの仮処分をいただいたんですけれども、できればこれを税関で水際で止められないかという問題があります。これは分解しないと中を見られないという状態ですので、そういう意味では非常に税関で対応するのは難しいということです。
 今、税関といろいろ御相談させてもらっていますけれども、完全に無理だとはおっしゃってはいないんですけれども、分解するには難しいですねという話になっています。
 今まで申し上げたことをちっとまとめますと、1つは、液晶の意匠関係で税関で改正された関税定率法の初モデルということで止めていただいた。その結果として、同様の類似品のようなものがすぐ止まったという状況になっています。
 2つ目の特許については、先ほど申し上げましたように、特許の中身をどう判断するかというので非常に水際で止めるのが難しいという状況にあります。
 3番目が先ほど申し上げました日本で、実は一番右側のテレビですけれども、日本の新潟税関以外にドイツでも出ていますし、中国やドイツでも同じものが出てきております。その辺を個々に海外で対応していますが、できましたらこの辺が一括で解決できれば非常にありがたいと思っております。

(PW)
 一番最後ですけれども、これも先回の委員会で話題になっているようですけれども、我々として、別にITCそのものがなんとしても必要であるということではなくて、むしろ先ほどの仮処分も含めてできるだけ早く判断していただきたいという点です。例えば特許の面で先ほどありましたモニターなどの場合には、パソコンは大体3か月くらいで商品が代わってまいりますので、押さえようとすると、次のものにモデルが変わってしまうということになってしまいます。
 それから、これは分解できないということで、そういうものが税関ではなかなか難しいという面があります。
 それと、この3つ目は、「関連製品のすべてのものが差し押さえ可能」ということなんですけれども、例えばパネルの場合はパネルのモデル番号があるんですけれども、それと、それが使われている製品番号。それは割合きっちりと、仮処分で押さえられるんですけれども、その内容はモデル番号が代わっても使っているものがあるわけです。そういうものを、製品レベルで全部押さえられないのかというのが1つの問題としてあります。そうでないと、出てくるもの一つひとつつぶさないといけないという状況にありますので、これを何とかしていただきたいなというのがあります。
 それから、このITCやアメリカの裁判制度も含めて我々が魅力があると思うのは、どちらが問題を立証しないといけないかというところです。日本の場合は権利者側が立証しないといけないという状況ですけれども、できれば問題点が明確になれば、製品を出している側が立証責任を持つようなことを強制的にやってもらえないか。そうすることによって、我々自身の権利が割合思うような形で保護されるのではないかと思っております。
 以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、後ほど御議論いただくことにしまして、次にシードの代表取締役の西岡さんにお願いいたします。よろしくお願いします。

○西岡参考人 御紹介いただきましたシードの西岡と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今日は一緒に特許を担当しております新谷という者が参っております。併せてまして、どうぞよろしくお願いいします。
 申し訳ございません。慣れませんので、座ってさせていただきます。お許しいただきます。
 それでは、まず当社のことについて、御存じない方ばかりだと思いますので、お話を申し上げたいと思います。
 私どもの会社は大正4年に大阪の都島の地でゴム製造業を創業いたしまして、以後第二次世界大戦の直後まで、ゴム製品全般をつくっておりましたが、第二次世界大戦後、ゴムが配給停止になりました段階で、事業を縮小いたしまして、お手元にありますようなこういう生ゴムを原料とした消しゴムの専業メーカーとなりました。
 勿論、当時は生ゴムばかりでございましたけれども、昭和30年代の中ごろ、当時黎明期にありました塩化ビニル樹脂というものを使いました字消しをつくり出しまして、それはプラスチック字消しと呼ばれております。こういう青い商品でございます。現在はこのプラスチック字消しが恐らく市場の98%くらいを占めていると思いますが、私どもの会社はこれを中心に1日約60万個生産をいたしております。
 この十数年来、鉛筆で文字を書くということがなくなってまいりまして、併せましてこの字消しが使われることというのも少なくなってまいりました。それに伴いまして、会社を何とかしないといけないということで、平成元年に修正テープ、皆さんのお手元に3つ入れてあると思いますが、この修正テープでございますが、これを開発いたしまして、そして世界に先駆けて発売をさせていただいております。
 資本金が4,000 万、従業員が76名、年間売上げが25億という非主要産業の極めて小さな弱小企業でございます。

(PW)
 今日、皆さん方にお願い申し上げますのは、実はこの修正テープの件でございます。この修正テープと申しますのは、消しゴムで消せないような筆記具、例えばボールペン、万年筆とかで書きましたものを修正するために用いるものでございまして、従来使われておりました修正液を被膜化いたしまして、テープの上にそれを印刷しまして、転写をしてその上か覆いかぶすというものでございます。修正液の欠点を改良いたしまして、しかも連続してこれが使えるという非常に優れた修正道具でございます。
 勿論、特許も多く出しておりまして、ここにあります縦引きヘッドというのは、基本特許と実は世界では呼ばれております。
 このほかにここに横引きヘッドと申しまして、筆記具感覚で使いやすいようにヘッドをくるっと横に向けたものがございますが、この特許、実は世界で大きな修正テープに対しては3つ特許がございますが、この2つの特許がその3つのうちの2つだと言われています。
 この回転ヘッドと書きましたのは、左ききの人でも使いやすいようにヘッドをくるくると回転して、左でも簡単に使えるようにした特許でございます。
 私どもはこの特許3つを含めまして、21の特許を今、世界に出願して権利化しているわけでございます。

(PW)
 実はこの基本特許が公告になりましたのは平成3年でございますが、その公告の直後から非常にたくさんの攻撃を受けるに至りました。残念ながら当時の私どもの企業の力では、この攻撃に対抗することができないということでございまして、順次ライセンスをしていくに至ったわけであります。
 それと同時に、東南アジア、主に韓国、台湾・中国辺りで模倣品がたくさんつくられているという情報がありまして、日本でライセンスしている会社の力も借りまして、いろいろと調査をいたしましたけれども、弊社ではとてもそういうものに対応できないという結論に至りました。
 でも、それらの中には非常に粗悪品がたくさんまざっておりまして、このままほうっておいたら、我々の製品も寿命がなくなると判断いたしまして、海外、ドイツの大手メーカーにこの特許をライセンスいたしまして、そこのお力を借りまして、そういったものを制御したいと考えた次第でございます。
 実は東南アジアにつきましては、その考えは随分うまくまいりましたが、中国については全くできていないというのが現状でございまして、ですので、生産国としての中国国内の侵害品の排除をあきらめまして、日本、あるいは欧米で侵害品の排除、中国製品、その他の国の侵害品の排除を一生懸命やっているというのが現状でございます。
 まず、日本の侵害品排除の現状でありますけれども、最近の模倣品、侵害品の発見場所というのは、主に100 円ショップ、大型雑貨店、大型玩具店、いわゆる安売りのお店ばかりでありますけれども、ここのお店のバイヤーさんが直接海外へ出かけられて、それをお求めになるということでございまして、バイヤーさん御自身が特許のことについてよく御存じない面もあろうかと思いますけれども、主にそういうところで発見されていまして、従来の流通経路を通るようなところでは一切出ておりません。今まで私どもが行いました警告の発行件数が29件でございまして、そのうち3件はまだ話し合いを続けておりますが、26件は解決をいたしております。
 いずれも係争に発展したケースはございません。ほかに1件だけ、当時の輸入差止情報提供制度ということで、神戸税関で見つけていただいて、対処していただいております。 このように日本国内では排除の効果は挙げておりますが、侵害品というのは外国のものばかりでございまして、できますれば、税関でもう少し発見率を上げていただきますと、非常にありがたいということ。
 それから、侵害品を発見しましても、それにかかる費用が弁済金よりもずっとかかるということでございまして、大変、難儀しているというのが現状でございます。
 これは欧米の件でありますけれども、ここに写真が載っておりますのは、実は2001年、平成13年のフランクフルトの文具のメッセで、ドイツのライセンス先の大手メーカーと共同して、そこに展示されておりました侵害品をドイツの税関の方と御一緒に摘発をさせていただいたときの商品群でございます。22個摘発させていただいております。
 この摘発行為というのは、その後の侵害品の流通を縮小させるという意味では非常に効果があったと思っております。
 日本でも大きな文具メッセがございますが、日本ではなかなかうまくまいりませんで、いろいろ摘発行為をしても、それが特許を侵害しているかどうか、その場所で云々ということが難しゅうございまして、実際には文具業界ではやっておられますが、我々も一緒に回ってやるんですが、引き下げてくださいと言っても、いやだと言われればそれまでの話でございまして、それ以後、余りやっていないというのが現状でございます。
 アメリカでは、聞くところによりますと、こういう展示会場に侵害品が余り出ることはないようでございます。
 また、ヨーロッパでも米国でも一般の販売店では侵害品がたくさん出ているそうでありますが、ライセンス先が一生懸命活動をしてくれていまして、今のところはほぼ問題ない状態で推移していると聞いております。
 このように日本や米国では排除活動というのは順調に進んでおりますが、問題の中国でありますが、先ほどのフランクフルトメッセとほぼ時期を同じくいたしまして、そのフランクフルトメッセで摘発できなかった中国の非常に大きなメーカー、大体1か月に90万個から120 万個生産していると自分たちで言っているんでありますが、そのメーカーに対しまして、警告書を出しましたけれども、何の応答もしてまいっておりません。そのまま現在置いてあります。海外のライセンスをしましたところに、いろいろ頼んでみましても、いや、費用が持ちませんよということで、何もしていないというのが現状でございます。 今でもアジア諸国は勿論のことでありますが、日本や欧米諸国へ中国からの侵害品がどんどん入っている状態を見てみますと、勿論、特許がありながらそういうことをしているというのは言語道断であると思うんですが、もし知らないということであれば、やはり知らしめるための何をしてみたいと私たちは思っているんでありますけれども、何せ我々のような企業サイズでは、とてもじゃないけれども対応できないというのが現状でございまして、野放しの状態になっているというのが実情でございます。
 今までお話ししてまいりましたように、当社が侵害品対策ということではなくて、知的財産の権利を主張することをあきらめざるを得ない理由というのは、経験的に申しますと、ここに書きました4つのことでございます。
 まず、何か起こりますと、それをどこに相談に行っていいかよくわからないということでありまして、また、その相談に行ったところが確かに乗っていただけるのかどうかよくわからないということ。こんなことを言うと怒られるのかもしれませんが、ホテルにコンシェルジェという方がいらっしゃいますが、私たち外国へ行きますと、その方が頼りなんでございますが、特許とかこういう関係でも、そういう方がいらして、行ったら、わかっているものにはわかっているなりに、わからないものにはわからないものなりに、それなりの教えをいただければ大変ありがたいと思います。
 それから、権利取得についてでございますが、我々の一番大きな問題は言葉の問題でございまして、例えばフランスで侵害品のあれをするとか、イタリアでするとかいうと、我々の日本語を一遍英語に直しまして、それを外国語に直すわけでありますが、英語に直すのは、我々の特許の専門的な用語というのはわかりませんので、直していただくわけですが、まあまあ何とかなるんですが、もう一つ相手の国の言葉に翻訳しないといけません。大体20ページくらいのそういうものが往復するのに100 万くらい費用がかかります。それで時間的にも非常にかかりまして、事が始まった時点ではものが終わっているという状況でございます。
 もう一つは、市場調査の問題でありまして、特に中国などというのは、どこに、どう行っていいのかわからない。行ってみたらもうなかったりして、全然よくわからないというのが現状で、コピー商品のコピーというのがやけにいっぱいありまして、どれが本当のコピー商品かというのがよくわからないというのが現状でございます。そんなこんなで全くお手上げの状態です。
 権利行使につきましては、いろいろ大手の文具メーカーさんにお尋ねするわけでありますが、やってもできないからもうあかんでと言われまして、初めから何もしていないというのが現状でございます。
 修正テープ市場というのは、日本でこういった品物が約4,500万個1年間で売られておりまして、世界では、少なくとも見積もりましても年間で2億5,000 万個発売されております。シードが所有する特許の及ぶ範囲は、そのうち恐らく最低でも8,000 万個くらいあるであろうと思っています。ですけれども、我々が制御をしている数というのは大体5,000 万個弱でございます。もったいないと言えばもったいないんですけれども、これも我々の企業の実力のせいかともうあきらめている次第でございます。
 最近でこそいろいろなことがわかってまいりましたけれども、もう少し早い次期にこういうことがわかっていれば、その15年間で我々が手にしました特許料の収入、相当額でございますが、それをもう少し増やせたんではないかということで、欲に絡んでのことを思ったりいたしております。
 最後になりましたけれども、私どもの経験から申し上げますと、我々のような弱小企業が、自ら開発した画期的な知的財産を権利として世界に及ぼしていく。そのためには是非日本国を挙げての御支援が是非必要になりまして、その内容はここは書きましたとおりでございます。皆様方、大企業の皆様方、あるいは政府の皆さんにとりましては、そんなことができないのかと不思議にお思いなることがあると思いますけれども、弱小企業の弱味というのは実はそういうところにございますので、是非その辺を御理解いただきますように、恥じを忍んでこんな話をする申し上げる次第でございます。
 どうか我々の力でも是非利用させていただけるようなシステムを是非おつくりいただけますことをお願いいたしまして、終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○阿部会長 どうもありがとうございました。
 次にJETROの副理事長の塚本さんからお願いいたします。

○塚本参考人 それでは、JETROの模倣対策につきまして、お話しさせていただきます。
 JETROは1958年に設立されまして、昔は日本貿易振興会と言っておりましたけれども、去年の10月から独立行政法人になりまして、日本貿易振興機構と名称変更いたしました。(PW)
 基本的にできるだけ企業の方々をパックアップしたいということで、内外一体的に企業支援のネットワークを組んでおりまして、国内には東京本部のほか地方に35ありまして、全部で36ございます。
 それから、海外、例えば中国には、ここには北京と上海と書いてございますけれども、あと大連と香港に事務所がございまして、全部で4つございます。
 近々、広州と青島にも事務所を開設する予定でございます。

(PW)
 JETROのこれまでの知財権の関係の取り組みでございますが、まず、海外の取り組みにつきまして、4つほど御紹介したいと思います。
 第1番目は現地の日本企業のネットワークづくり、最近特に中国で知財権の問題は非常に深刻になっておりまして、北京と上海では企業方々に参加していただきまして、知財問題研究グループ(IPG)を結成、運営しております。北京は66社、上海106 社、北京の場合には2000年5月からスタートしております。上海の場合には、2002年9月からスタートしておりまして、基本的には勉強会とか政府との連携とか大使館との連携とか、あるいは調査とかセミナーとか、こういう形でネットワークづくりをやっております。
 2番目が相手国政府との意見交換、これは特に中国政府、あるいは地方機関、この辺のところに知財権の問題につきまして、いろいろ意見を申し上げる機会をつくっています。ここに書いていないんですけれども、北京では今年の2月には最高人民検察院と知財権の問題で議論をさせていただきました。後でインターネットを紹介するときに、その写真をお見せしたいと思います。
 上海でも上海の工商行政管理局と意見交換をするということで、いろいろな機会に相手国政府に対して働きかけをするということをやっています。
 それから、3番目は、各企業の方々の個別相談、あるいは情報の提供ということをやっておりまして、北京の場合は、まだ年度が全部終わっていないんですけれども、今年の1月までの時点で平成15年度約480 件ほどございます。上海の場合が100 件。これらは基本的には個別の企業が問題を抱えておられる場合に、御相談に応じた件数で、北京の480 の方の中身を御説明いたしますと、直接訪問していただいたのが120 件、メールで御相談に応じたのが250 件、電話相談が110 件、こんな形で御相談に応じております。
 それから、現地でいろいろ日本の企業の方々にセミナーをやるということ。
 さらには、ニュースレターとかホームページ、こういう形で対応しております。
 それから、4番目が日本から中国に知財権のミッションということで、最近ではベアリング工業会のミッションが来られたり、あるいは電気制御機器工業会、これは3月の中旬で今後の予定なんですけれども、そういう場合に我々がアポイントの取得とか、ブリーフィング、アドバイスという形で対応をしております。
 先ほど御紹介したJETRO北京のホームページですけれども、こんな形でできるだけたくさんの方にこれを見ていただきたいということで、今、図になっているのが最高人民検察院との意見交換の様子でございまして、中身も簡単に紹介しております。

(PW)
 それから、国内ではどういうふうにやっているかということですけれども、国内も同じく4つくらいの対策がございまして、まず第1は、模倣対策のセミナーでございます。15年度の場合には東京、大阪など全国21か所でやりました。ここには模倣品の被害に遭った企業、例えばオムロンとか安川電機の方にも出ていただいて、具体的なそれぞれの会社の実例を御紹介いただくという形でやっております。

(PW)
 それから、2番目が模倣対策のマニュアルということで、今日お手元には簡単なマニュアルをお配りしております。ほかにこんな分厚いマニュアルがございまして、もし御関心の方は後ろに用意してございますので、お持ち帰りいただければと存じます。こういうマニュアルを相当、中国とか国によってタイ、ベトナム、韓国とかも含めてつくっております。
 それから、わかりやすいビデオとして中国における模倣品対策の基礎ということで、20分余りのビデオを作成、貸し出しなどをおこなっております。
 これらの資料はJETRO本部のホームページからも、ダウンロードをしていただくことも可能になっております。

(PW)
 それから、国内でもそれぞれの企業の方から御相談に応じられるようにということで、14年度の実績ですけれども、全体の相談件数が約三万件ございましたけれども、そのうちの知財関係が約270 件ございまして、これも御相談に応じているということです。
 それから、非常に一般的な問題につきまして、ホームページでQ&Aの形で情報提供もしております。

(PW)
 今後ですけれども、4つくらい更に強化していきたい点がございまして、1つは、「エンフォースメント支援の強化」ということで、特に中国の税関などに水際で対応していただくためのセミナーを開催していくということをもっと考えていこうということです。
 それから、日系企業ネットワークの拡大ということで、先ほど北京と上海の知財問題研究グループを御紹介いたしましたけれども、今度、広州に事務所ができる機会に、広東省での知財グループをつくろうと考えています。
 海賊版対策として、コンテンツの海外流通促進機構と協力して、海賊版対策を更に進めていこうということであります。
 それから、中小企業の方々を中心にした支援を強化していきたいということで、先ほども西岡社長からお話がありましたけれども、我々、まだまだ皆さんにPRが不足しているなということを感じた次第でございまして、努力してまいりたいと思います。

(PW)
 具体的にお配りしたマニュアルの中で、例えば中国で侵害があった場合にどういうふうな形で対応したらいいのかというのがマニュアルの17ページに書いてございまして、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、実際に被害があったときには、その被害を明確にしていくということで、調査会社を活用しなければならないというケースが一般的でありまして、その場合には調査会社にどのくらいの費用がかかるのかとか、その辺のことも書いてございます。また、個々に我々御相談に応じるような形でやっております。

(PW)
 先程も西岡社長がおっしゃったように、中国の中で違反があった場合の対応ですけれども、水際の方でそれをどうするのかというので、税関に対して差押さえをしていただくためのいろいろなことが必要になってまいります。この辺のところも我々、個別のケースにできるだけきちっとしたアドバイスができるようにしていきたいと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。企業の方お二人とJETROの方から御説明をいただきました。大変深刻な内容もたくさんございますが、それでは、ただいまのお3人の御説明に対して御質問、御意見をちょうだいしたいと思います。

○野間口委員 私、日本知財協に関係していたころ、恐らくJETROさんに大分お世話になったと思うんですが、北京とか上海で中国政府との連携とか、大使館との連携とかされていただいているということなんですが、欧米のJETROみたいな機関、そういうところとの横の情報交換、共有、その辺はどうなっているんでしょうか。

○塚本参考人 北京に欧米の人たちが入っておりますQBPCという団体がありまして、そこと連携をしてやっていこうということで、日本の企業の方は今11社ほどそこに入っておられます。その辺のところと連携するというのも非常に大事でございまして、数年前から日本の企業もかなり数が増えていまして、今年からQBPCに入るメンバーフィーが半分になりましたので、更に入りやすくなると思います。今まさにおっしゃったように横の連携というのは非常に大事だと思います。

○野間口委員 日本だけではなかなかプレッシャーにはならないんですけれども、連携してやるとかなりプレッシャーになるんじゃないかなという感じがするんですけれども、是非よろしくお願いしたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。

○吉野委員 感想ですけれども、JETROさんは随分幅広く、しかも世界中にオフィスをお持ちになって、知財関係も幅広くやられていて、独立行政法人になられたんだから、もっとビジネスとしてがっちりやったらいかがですかいう感想なんです。今は予算でやっているんですか。

○塚本参考人 去年の10月から独立行政法人になりまして、予算の形態が、今で補助金と委託費という形態だったんですが、今度は交付金という形になりました。そういう意味では自由度が非常に増えました。
 まさに御指摘のとおりビジネスでということで、この知財権の問題でビジネスとしてどこまでやったらいいのかというのはちょっとあれなんですけれども、一般的には個別のケースで受益者負担金という形で、個別の問題について各企業の方から少し御負担をいただいた形でやっていくことも検討しております。
 具体的には今、海外市場調査などは一部、特別の市場調査などを御依頼になった場合には、受益者負担金という形で負担を少しいただいた形でやっていくことにしております。
 知財権の方はそういうポジティブな調査ではなくて、本当にお困りになっている方なんで、具体的に北京とか上海では、それぞれの企業の方に個別的な形でできるだけ御支援しようとやっています。また、個別の問題の解決につきまして、現地で弁護士の方々とのリテインの契約もしておりまして、できるだけ個別の相談に応じるようにしております。
 御指摘の点は、実際は最後、調査会社に依頼する費用がかかるということもありますので、その辺のところをまで含めて御協力していくとなると、少し受益者負担みたいな発想も大事かと思います。大変貴重な御意見だと思います。

○吉野委員 西岡さんがおっしゃっておられますように、闘うには体力勝負みたいなところがありますね。JETROさんはいろいろなサポートまではおやりになっているんだけれども、その後のところが本当は望まれるんじゃないかという感じもしますね。

○阿部会長 ありがとうございました。

○竹田委員 シャープの寺島本部長にお聞きしたいんですが、この11ページのところで、「裁判における仮処分品の水際で差し止めの可能性」というところがありますが、特に特許権侵害品と思われる品物を積んだ貨物船が外国の港を出港、あるいは日本の港に入港するという段階で、その侵害品についての輸入、あるいは販売の差止めの仮処分が日本の裁判所で出て、一方で税関長に認定手続の申請をして、その仮処分を提出することによって、税関長が通関阻止の、具体的には廃棄、あるいは積み戻しの措置を取るというのは事例は具体的にはございますか。

○寺島参考人 まだ我々の会社では直接にはありません。これを具体的に実現させるためにどうしたらいいのかというのを御相談している状況です。当然製品で入ってきますけれども、中に入っているパネルはまた違うものを使われてしまうと、この製品モデルだからと言って止められない状態にあります。製品を分解しない限りは、そのものかどうかというのがわからない状態でありますので、そういう意味では非常にやりにくい状況にあります。
 ここに挙げているような例の場合だと、割合これは特許と申し上げても、構造物の特許なんで、何らかの手立てをすればわかるかもしれない。その辺で今、税関と御相談申し上げて、こういうものが入ってきたら、モデル名だけではなくて何か止められないかということを検討しているところです。

○竹田委員 税関長の見解しては、裁判所からの仮処分命令を提出すれば、そういう措置を取りますよということはおっしゃるんですか。

○シャープ株式会社窪田氏 そこのところまでは具体的にはまだコミットしておりません。なぜかというと、中の構造物でございますので、それを分解するとかいうのは、輸入品の経済的価値が下がってしまうということで、それまでは難しい。外観上で識別できるものは可能性がございます。

○竹田委員 そういう場合に現行法では税関長が分解して、それを開示するということはできないと思いますけれども、例えば輸入業者を税関に呼んで、そこで侵害品でないというなら、分解して開示しろというようなことは可能性はあるんでしょうか。

○シャープ株式会社窪田氏 ちょっとそこまでは。

○竹田委員 現行法では無理だということですね。どうもありがとうございました。

○阿部会長 いろんな御要望が出ていますけれども、いかがでしょうか。

○高林委員 シードの西岡社長にお伺いしますが、先ほどフランクフルトの展示会においては、大量の模倣品を摘発することに成功したけれども、日本の同様の会場ではこれが無理であるというお話しでしたけれども、どういう理由でドイツと日本は違うということなのでしょうか。

○西岡参考人 法的なことについてはよくわかりませんが、フランクフルトのメッセでやりましたのは、実はヘンケルというドイツの大きな会社でございますが、ここにライセンスをしておりまして、この会社は税関の方を一緒に連れてきまして、我々と一緒に行きまして、特許をちゃんと出しまして、これがだめだ、これがだめだと。その場で引っこめろという話を広い会場を一件一件していきまして、それを税関の方が没収されたと思います。中には1社だけ言うことを聞かなかったところがございまして、これには何か後で法的なあれをなさっているんですが、これは日本の企業でございまして、我々の大事なお客さんでございましたので、実は帰りまして、是非それは引き下げてくださいとお願いに行きまして、実はもうしませんというお約束をいただいて、事が済んでおります。
 日本では実は、文具のそういう大きな見本市があるんですが、そこで文具の団体が、台湾の企業、中国の企業に対して、見つけて下げてくださいというお話をしたようですが、なかなか思うに任せないところがございまして、例えば私たちの場合ですと、1件だけそういう例があるんですけれども、これは日本の特許に引っかかりますから、あなたは出すことはできません。あなたは侵害していますよということを申し上げましたら、まず、どこが侵害しているのかという説明を求められまして、実はここだということをきちっと御説明しましたんですけれども、法的なあれも何もないから、我々はそういうことについては一切言うことを聞きませんということでしたので、後日改めて文書を提出しまして、結果としては全然引っ込められずに、そのまま展示会の3日間展示されて、商売もされていたと思います。カタログにもそれが載っておりまして、現実にはできなかったですね。

○高林委員 フランクフルトの場合は、税関の係官自体がそういう行動をしたのですか。

○西岡参考人 はい。税関の係官とヘンケル社の人と我々が一緒になりましてです。

○吉野委員 ドイツの場合には、うちのケースでも、車の販売後のサービス用の部品が東欧から結構ドイツに入ってくるんです。そのときに税関が部品の包装の袋を見て、これをすぐリアルタイムでうちのドイツの子会社に送ってくれるんです。これはお宅のですか?違いますと言うと、それで全部止めてしまうんです。ものすごく協力的です。

○山田委員 シードさんにお聞きしたいんですけれども、従業員76名ということなんですけれども、今、お聞きしていると世界的に知的財産権を守って活躍されているように見えるんですけれども、76名の中に何人くらいでそういうことをやられているんですか。あるいはどういう体制ですか。

○西岡参考人 こういう消しゴムをやってきていたんですが、消しゴムの特許などいうのは随分昔にいろいろやっておりまして、余り大して問題にならずに、中身がよくわからないというところがあって、侵害されるとかは余りございませんで、こういうものになりますと、見た目にすぐわかりまして、実は平成元年からあわてて、特許を出して攻撃がありましてから、あわてて勉強したというのが現状でございまして、やっているのは実は2人でやっておりまして、実はこの者が一人でやっております。勿論、弁理士さんがほぼ付きっきりで教えてくださる弁理士さんが一人いまして、例えば欧州の特許庁の審判などに出かけていきますときには、その弁理士さんが一緒に付いていってくれます。
 もう一人弁護士さんがいてくれまして、どちらかというと、その弁理士さんと弁護士さんです。

○山田委員 海外もその人たちがやってくれるんですか。

○西岡参考人 弁護士さんは海外には一切ノータッチで、我々があちこちから探してきて、その弁理士さんにお願いしたり、あるいは弁理士さんの御関係で向こうの弁理士さんにお願いしたりということでございます。今、アメリカ、ヨーロッパ、ドイツ、イギリスの弁理士さんは、我々がどこかでお願いしたのと、その弁理士を通じた弁理士さんでございます。

○阿部会長 まだいろいろ御質問、御意見があろうかと思いますが、今日のお三人の方は引き続きお残りをいただきまして、議論にも御発言をいただきたいと思いますので、そのときに追加質問がありましたら、また、お願いしたいと思います。
 それでは、模倣品・海賊版対策についての討議に入りたいと思います。
 前回申し上げましたように、事務局に論点の整理をお願いいたしました。精力的にやっていただきましたので、最初に小島次長から簡単に説明をしていただきたいと思います。
 お願いします。

○小島事務局次長 お手元の資料4「論点の整理」について御説明をいたします。
 この資料4では、論点を大きく5つ、外国市場対策、水際取締、国内取締、官民の体制、中小企業対策に分けまして、合計23の項目に(1)から(23)までの通し番号で整理しております。
 資料は左側の欄に論点の整理を、右側の欄に参考資料を掲げてあります。それでは、論点を順に沿って簡単に御説明いたします。
 まず、1ページでございますが、冒頭に前回御説明いたしました模倣品被害の状況と対策の必要性についての問題意識を「被害の拡大」「権利者・消費者の利益阻害」という形で整理してございます。
 その下、論点でございますが、まず1番目の課題といたしまして、我が国政府の外国市場対策の強化でございます。
 1−1の(1)では、「我が国企業の海外での対策・活動に対する政府の支援をどのように強化すべきか」ということで、マル1では、現地大使館が、侵害事実を把握し、取締当局の対応状況のフォローや当局への要請など支援活動をきめ細かに行うべきではないか。
 マル2では、先ほども出ていましたけれども、海外で中小企業等の権利行使についての相談、助言や具体的支援を強化すべきではないかという必要性を挙げております。
 また、それに関連いたしまして、右側の欄の(1)−Bでは、現地での模倣品対策として、調査、政府当局への取締り要請、訴訟提起などが必要であること。
 (2)−Aでは、中小企業の模倣品対策の実態として、海外での調査・権利行使、それから取締当局への要請、訴状提起を行うことは、費用、人材等の面で実際には難しいのが実態という旨。
 (2)−Bでは、中国政府への制度改善、取締強化に対する要望例を取り上げております。
 2ページ、(3)では侵害状況調査ということで、右側の欄の(3)マル1では、米国のスポシャル301 条の例。その下の(3)マル2では、欧州のTBRの例が書いてございますが、そうした制度のような侵害発生国における模倣品・海賊版の被害及び対策の状況を把握し、それをフィードバックする仕組みの必要性を(3)で取り上げております。
 その下「1−2.二国間の枠組みの活用」では、左下の参考欄の右側に「米・シンガポールFTA」のエンフォースメント条項の例が掲げてございますけれども、その上の論点では(4)として、FTAや投資協定を活用した二国間協議の必要性。
 (5)では、先ほども出ましたけれども、欧米と連携した侵害発生国政府への働きかけ強化の必要性。
 それから、(6)では、模倣品問題を世界の通商問題として多国間の枠組みの中で協議を進めるべきではないかということで、右側の欄、(6)に多国間の国際機関、フォーラムの例を挙げております。
 続きまして、3ページでは「II.水際での取締りの強化」の問題を取り上げてございます。
 まずII.−1として、侵害判断が困難な貨物、すなわち特許権等の侵害品についての取締りの強化の問題でございます。
 右側参考欄の一番上には、日・米・独の水際取締りにおける侵害判断と差止め制度の相違を○×表で整理しております。
 左側の論点の方に移りますが、(7)で特許権侵害品等の侵害判断・差止めを、当事者の主張に基づき専門的に、かつ簡便迅速に行われるような制度が必要ではないかということで、侵害判断・差止めを当事者の主張、それから専門的処理、簡便迅速な手続という観点から、マル1では、当事者の主張、専門性、簡便、迅速な手続という仕組みとして、どのような仕組みが実効的であるかということで、3つ掲げております。
 まず、(ア)でございますけれども、右側の欄の真ん中からちょっと下のドイツの裁判所、税関の例が書いてございますが、このように裁判所の侵害判断に基づき仮処分命令が出された場合には、税関の差止めがなされるような仕組みとするやり方。
 (イ)としては、税関による侵害認定手続、右側の例で言えば日本の税関の中での侵害認定手続の中に、当事者の主張に基づいて独立して専門的な侵害判断ができるとするやり方。
 (ウ)としましては、右側真ん中の米国ITCの制度の例にありますように、当事者の主張に基づいて専門的な侵害判断をする特別の判定機関を設けるやり方。この3つの仕組みを挙げて、どのような仕組みが実効的であるかということを整理してあります。
 それから、侵害判断の効力をどこまで及ぼすかという観点からは、マル2といたしまして、輸入貨物が侵害品と判断された場合には、当該輸入者のみならず、ドイツ製品を輸入する他の輸入者に対しても、差止めが行える仕組み、いわゆる一網打尽にする仕組みの必要性ということを挙げています。
 また、論点の(8)では、侵害判断の際の手続として、右側の参考欄、一番下にEUの手続が書いてありますけれども、こうした例にならい、侵害の立証を容易にするため、権利者による疑義貨物のサンプル取得とその解析を認める可能性を挙げております。
 また、(9)では、模倣品差止めを実効的に行うために、仮処分申請により疑義貨物の通関を一定期間停止する仕組み、これは右側の参考で言えば、ドイツの裁判所及び税関の流れの中で、税関の真ん中辺りの四角に、小さい字で疑義貨物留置の下に、「仮処分申請書を提出すれば4週間」更に留置する仕組みとありますが、こういった形で仮処分申請による疑義貨物の通関の一定期間停止とする仕組みが必要ではないということが(9)でございます。
 4ページでございますが、ここではII.−2としまして「商標権侵害品等の取締りの強化」ということで、論点の(10)から(13)では、右側の参考欄の(11)とか(12)にありますような税関でのマーク切除や部品取外しのような行為については、現状では右側の参考欄の上から3分の1くらいのところに関税定率法の基本通達(自発的処理)という抜粋が書かれていますけれども、そこにありますように、税関の運用で自発的処理として、マーク切除したもの、あるいは部品を取外したものは、没収差止めがなされないことになっております。
 したがいまして、ここではこのような脱法的な知財侵害のさまざまな手口に対する取締りの強化、あるいは税関検査の運用の強化の必要性を(10)から(13)で取り上げています。
 また、その下で、個人輸入等の取締りの強化というところでは、(14)で模倣品は社会悪であることを国民に明確にするとともに、模倣品が氾濫することを防止する観点から、個人使用目的も含め、にせブランド品の個人輸入や、国内における所持を禁止する必要性を挙げておりまして、前回の会議でも出ましたけれども、4ページの右下にございますが、(14)−D、フランスのロンゲ法の例、あるいは左下の(14)−Bのところの個人輸入の規制の実態の比較というのを掲げております。
 5ページはIII .の課題である「国内での取締りの強化」ということで、前回の会議でも御紹介がありましたけれども、右側参考欄にある(15)のインターネットオークションでの販売や、(16)の形態模倣の例にありますように、インターネットオークションや形態模倣について、(15)ではそういったものの模倣品売買の取締りの強化を、(16)(17)では、形態模倣に対する規制の強化を挙げております。
 (18)では、前回の会議でも議論がありましたけれども、ノウハウや設計図面などの海外への流出防止策についての対策を講ずる必要性ということを掲げております。
 6ページは、IV.の課題であります「官民の体制の強化」ということで、(19)のマル1では、右側に模倣品に関わります関係府省がありますけれども、そうした模倣品、海賊版対策の関係府省が一体となって取り組む体制の整備の必要性を。
 マル2では、中小企業等の相談に応じられる中央・地方・現地における総合的な窓口の必要性を挙げております。
 また、(20)では、侵害発生国と我が国政府のそれぞれ当局間の連携の具体的強化の必要性。
 (21) では、官民、民民での連携の強化を挙げています。
 V.では、「中小企業・ベンャーの支援と啓発の強化」ということで、(22)で、先ほども出ましたけれども、中小企業・ベンチャーに対する具体的な支援や啓発の必要性。
 (23)では、国民への啓発教育の必要性を取り挙げております。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、討論に移りたいと思いますが、大変恐縮ですが、時間の制約がございますので、全体を3つに分けて、御議論をいただければありがたいと思っています。
 最初はI.の外国市場対策と、今、最後に説明がありましたIV.の「官民の体制の強化」の2つにつきまして、大変恐縮ですが、10分程度でいろいろ御議論賜ればと思います。よろしくお願いします。
 論点整理ですので、対策等は絞っておりませんので、今まで御議論、御提案があったことを羅列してある部分もありますので、いろいろ御議論いただければと思います。

○高林委員 JETROに対する質問ともつながりますけれども、JETROの先ほどのプレゼン用資料3の1ページ左側の中国の図の方では、矢印が在外公館を経由して現地政府の方へ向かっているようですし、その部分には「制度改善、取締り、運用強化などの意見交換」と書いてありますね。ところが、2ページに行きますと、そこの部分では「日系企業の知財権侵害に対して、中央・地方政府機関との意見交換を行う」ということで、かなりトーンが低いような感じを受けます。つまり、1ページの図面の方ですと、「制度改善、取締り、運用強化などの意見交換」とありますので、意見交換が制度改善や取締りを求めるという目的ために行われるような印象であって、JETROが、かなりのことを在外公館を通じてやっているというふうに読めるわけですけれども、実際のJETROの活動と在外公館との係わり合いというのはどういうことになっているのでしょうか。

○塚本参考人 最近、外務省の方とも非常に連携して、例えばこれはJETROの知財権の関係を中心にした皆さんにお配りしている雑誌「中国経済」というものですが、そこで先ほどちょっとオムロンのケースを御紹介いたしました。そして、これはセミナーでもオムロンの方にお話しいただいたんですが、簡単に御説明しますと、オムロンが蘇州オムロン有限公司という会社があるというのを見つけられたんです。ところが、全く自分の会社の関係しているところではなくて、勝手にその会社を中国の人が作ってやっていたと。これについて、蘇州の地方政府は一応その会社の登記を受付けているんで、その会社は自分のところと非常に紛らわしいんで、やめていただきたいということで、蘇州の市の工商行政管理局に直接申し入れたら、全然いい対応をしてもらえなかったので、それでもう少し上の方に働きかけをするという必要があるというとで、JETROと総領事館と一緒になりまして、オムロンの方からいろいろ話を聞いて、総領事のお名前で江蘇省の工商行政管理局に行きました。併せて蘇州市の方にも働きかけをして、最終的にこれは改善されるようになりました。
 こういう具体的なケースも含めて対応していこうということでございまして、そのほかに先ほどちょっと御説明しました検察院とか、それぞれの関係のところにも働きかけをしています。
 最近大分向こうの政府の水際のところも、少しずつ税関の方なども改善をしておりまして、新しい法律の制度なども整っているので、そのような法律の制度そのものの整備、それから今申し上げた具体的なオムロンのようなケース、こういうものについて、大使館とか領事館のお名前というのは非常に大事でして、外務省の方とも今、現地で非常に協力的にやっておりますので、ただ、そういうことをやっているのを、中小企業の方も含めてアピールをして、どんどんいらしてくださいという点がまだまだ不足していると思います。


○阿部会長 ありがとうございました。

○山田委員 先ほどシードさんがお話になったように、中小企業が海外でやるとき、先ほど負担というふうにお話がありましたけれども、非常に困難だと思うんです。海外での模造品のこちらの摘発というのはね。入って来るというよりも、海外でつくられるものに対してどう対処するかということに対して、先ほどコンシェルジュとおっしゃいましたけれども、ああいったレベルに応じて適時相談できて、相談だけではなくて、その後支援も、本当に違反だったら支援もしていいただけるといったような組織というか、窓口と言ったらいいのか、そういった仕組みを是非つくっていただくと、そこに行けばとにかく相談ができる。また、支援をいただけるという、私も中小企業なんですけれども、是非中小企業の支援をそういう形でやっていただくとありがたいと思います。

○下坂委員 ただいまの御意見には賛成でございまして、先ほどシードさんから、御説明がございましたが、伺っておりますと、24件の特許を保護していらっしゃるということから見ましても、中小企業の中の大きい方でございまして、非常に知的財産に関する対応をよくおやりになっておられると考えております。相談にお見えになる中には、もっともっと大変な方たちもいらっしゃいます。
 前回の会合でも主要産業でない中小企業やベンチャー企業の知的財産をどのように守っていくのかというのを視野に入れるべきだという御意見がございましたように、中小企業の模倣品、海賊版対策の支援というのは、大変大切なことだと思っております。
 中小企業には海外の活動拠点もない場合が多くて、訴訟を起こします場合も、現地で調査機関や弁護士を探すのも事欠く場合もございます。
 現地の当局に申立てるにしましても、経験が少なく、効率よく事を運べるとは限りません。先ほどおっしゃいましたような言葉の問題とかいろいろございます。
 また、模倣品撲滅のために投入できる資金も潤沢いうわけにはまいりませんので、私ども弁理士も個別案件でサポートをいたしてまいっているんですけれども、模倣品から我が国の中小企業を保護するためには、政府が具体的案件をサポートしていく必要があると思います。
 同時に模倣品撲滅のためには、日本国政府が侵害発生国への制度改善や取締強化を要請することも重要で、また自由貿易協定を活用するなど、二国間交渉にも政府が本腰を入れていただきたいと考えております
 1点、論点整理の1ページのところに「在外公館日本企業支援窓口」という表がございます。在外公館、196か所ということでございますが、この中で相談件数、知的財産権保護が5件で2.8 %、アジア地域でさえ1件で2.4 %となっております。これは例えば中国などに関しても、中国の日本大使館になかなか行きにくいとか、相談しにくいとかがあるんでございましょうか。それともJETROの方が行きやすいということかがあるんでしょうか。

○塚本参考人 先ほどオムロンさんの例をお話しいたしましたが、JETROでも領事館の方でも大使館の方でも是非いらっしゃっていただきたいと思います。特にJETROの場合は、日本企業支援センターというのを上海にはつくっておりまして、先ほども北京が480 件、上海が100 件ということで、これは知財権の方の御相談の実績ですので、相当JETROの方に個別の相談というのがございます。そのときに領事館の方も、非常に今協力していただいて、具体的な働きかけもやりますので、是非先生方にもこの機会にいろいろな方々に、ご相談いただくようお話いただければ幸いです。我々JETROとしてはいつもウェルカムでございますので、是非来ていただければ対応したいと思います。

○阿部会長 さっきのお話のように、JETROさんの方から在外公館の方に御相談されるということも積極的にやっていただくと、これはどんどん増えていく可能性がありますね。これはこれまでの実績なんで、これからということだと思いますので、余りにも数が少ないということはおっしゃるとおりです。
 今日ですべて終わりではありませんので、先生で最後ということで、どうぞ。

○高林委員 二国間交渉とか多国間交渉で、中国の制度改正とか、取締りの強化を要望していくということと、JETROなどが窓口になって個々の案件、個々の企業の侵害案件について、在外公館を経由などして改善を要求していくというのとでは場面が大分違うと思います。ある特定の権利が侵害されているという場合に、在外公館のポストの高い人の名前で改善を求めたりするとやはり力があるとは思いますけれども、それを制度としてやっていこうとする場合には、何か根拠と言いますか、改善を求めることができるルールが明確でなければならないのではないでしょうか。法律家だからそういうことを考えてしまうのかもしれませんが、行政上の地位の上の人が言えば言うことを聞いてくれるというレベルの話ですと、どちらかというと小さなことであって、JETROが民間の立場としてやるだけならばよろしいのですが、国家として取り組んで、在外公館を含めて実行していくという場合には、もっと制度的な枠組みが必要なのではないかと、私は考えます。

○阿部会長 いろいろ御意見があろうかと思いますがこれで締め切るわけではありませんので、時間の関係でとりあえず次に移らせていただきたいと思いますが、IIの水際の取締りの強化について、御議論をいただきたいと思います。
 これは前回もいろんな御意見がありましたので、もうちょっと時間を取って発言をちょうだいしたいと思います。

○竹田委員 水際措置の問題について、若干の意見を申し上げます。
 従来関税定率法は税関長は職権で侵害か侵害でないかの認定手続を取っていたわけですけれども、改正法で今度は特許権者らも申立てをすることができることになりまして、通常はその申立てによって開始されていると聞いております。
 更にその判断を適正に行うために、権利者側の求めによって特許庁長官に意見を聞く制度を設けていたわけですが、この制度が実効性があるものかどうかということは、今後の運用に待たなければならないと思いますけれども、関税定率法による知的財産権の保護というのは、あくまで行政手続としての通関の措置で、司法手続とは関連していないわけです。
 ただ、特許権等の知的財産権はまさに私人の権利でありまして、私人間の権利義務の確定というのは、三権分立の現代国家においては、伝統的に司法権の領域の問題ですね。
 そうなると、水際措置を考える場合にも、司法的手段による輸入の差し止めと、税関における輸入禁止措置とを整合性あるものとして制度化することが必要ではないか。これを今日の整理された論点整理のペーパーによれば、3ページの(7)については、(ア)を、それと(8)と(9)と、これだけを立法化の方向で考えていくのはどうだろうかと思います。
 もう少し具体的に言いますと、権利者が自ら権利侵害の模造品が輸入されようとするのを知ったとき、あるいは税関による輸入者情報開示によってそれを知ったときに、認定手続の申立てをして、これはドイツ法にもあるように、仮処分申請をしたという申請書を提出したら税関としては疑似荷物を一定期間留置する。その間に裁判所から仮処分決定を得て提出されたときは、税関長は通関阻止の法的措置を取る。
 一度そういう措置が取られますと、あとはその開示処分決定で侵害品とされたものと、実質的に同一なものについては、一々手続を取らないでも税関長が処分できるような手続を取れば、その点は法的に制度が保障されますし、迅速な措置も可能になるのではないかと思います。
 多分、こういう言い方をしますと、必ず反論がありそうなのは、税関長は行政機関だと。行政機関が司法の私人間の仮処分決定によって拘束されるのはいかがなものかという反論があろうかと思うんですが、もともとよく考えていただきたいのは、関税定率法の輸入禁制品というのは、鉄砲、麻薬、偽造通貨というよな、言わば国家的法益の侵害品なんです。 これに対して知的差財産権というのは、私的権利の保護の問題であり、これが入ってきたのはTRIPS協定との関係もあるわけですけれども、そのことを考えますと、そういう私人間の本来の紛争の解決の問題である知的財産権の侵害品を輸入禁制品としている以上は、私人の仮処分決定によって税関長がそれに基づいて通関阻止の措置を取るのは、これは三権の分立の問題で批判されるべきことではないだろうと私は思っています。
 そういうような制度が取られれば、先ほど私がシャープの本部長にお聞きしたような点についても、解決ができると思いますし、もし、そういう制度を取ることが関税定率法の侵害品全般について及ぶようなことに問題があるとすれば、言わば知的財産権侵害品の通関措置に関する特別措置法でもいいわけですから、そういう限定をしてでもそういう制度を法制化することを御検討になったらいかがか考えております。
 以上で。

○阿部会長 ありがとうございました。中山先生。

○中山本部員 私も全く同じです。関税定率法21条が絶対的な社会悪物品と、本人がいいと言えば問題がないものと同じに、両方とも税関長の行政処分であるというところに問題があるわけですけれども、これは明治からずっと続いてきたんで、これの改定というのは難しいでしょう。竹田先生おっしゃるとおりなんですけれども、私人間の争いの判決、もしくは決定が行政庁を拘束すると言ってしまうと、これはまたうるさい問題が起きるんですけれども、恐らく決定が出れば、事実上税関長はその決定に反してまで通関させることはしないだろう。逆に国賠の問題にもなりかねませんし、事実上、それで止まる。そこで満足するか、もう一つ踏み込んで、竹田先生のように法的にも拘束するかという、問題がのこるかもしれません。

○阿部会長 わかりました。かなり近いところまで来ている。

○伊藤委員 私、特にこの問題について詳しい研究をしているわけではないものですから、むしろ詳しい方に教えていただきたいと思います。本日の論点整理3ページの左側に米国の例などが出ておりまして、輸入貨物が侵害品と判断された場合に、当該輸入者のみならず、同一製品を輸入する他の輸入者に対しても差し止めが行えるという制度の紹介がございます。ただいまの御議論との関係で、同一の輸入者が、仕様等が若干違っても、同一の侵害品と判断されるものを輸入しよういう場合には、仮処分の事実上または法律上の効力によって税関長が輸入を止められることがあるかもしれませんが、輸入者の名前が変わっている、一応別の法主体であるということになったときに、そういう仕組みでうまくいくのかどうか。そこにもう一つの別の仕組みを考えておかないといけないのか、その辺りはどうでしょうか。正当な輸入者側の利益も考えないといけないように思いますが。

○中山本部員 確かに訴訟法的に考えますと、当事者になっていない人の物を押さえてしまうというのは考えられない暴挙だと思います。民訴でいくとそうなりますけれども、行政処分ですから、先ほど言いましたように、関税定率法21条をそのままにしておくと、要するに税関長が侵害物品と認めれば止められるんです。判決とか決定の効果として税関長を拘束するという話になると難しいと思います。判決・決定を参考に税関長が、同一と判断する限り輸入を止める、ということであるならば、事実上うまくいくんじゃないかという気がするんですけれども、どうでしょうか。

○伊藤委員 仮処分は、税関長が判断するための1つの判断資料にすぎない、事実上は重要視するわけでしょうが、という仕組みであれば、おっしゃるようなことになると思うんですが、仮に法的な仕組みをつくって、仮処分があったときには、それが税関長に対する一種の拘束力を持つことにしたときには、逆に他の輸入者に対する措置の関係では、問題が生じないかというのが私の疑問なんです。

○竹田委員 私は今の議論で言えば、もう一歩踏み込んでということを考えているんですが、今の水際措置で産業界が懸念していることを本当に制度的に担保してやるためには、何かそこまでつくってやらないと、だから特別措置法でもいいから、この場合は特別だよということで、国会も承認して頂けるならば、それはそれでよろしいんじゃないか。そこまでいかないと、事実上というのでは、事実上の知財高裁も同じことですけれども、皆さん納得しないんで、その辺のところは、伊藤先生の言われる趣旨はよくわかりますけれども、何か考えられないかなと思うんです。

○中山本部員 私もそう思うんですが、ただ、事実上にしない、つまり法的に拘束するという措置をつくとなると、輸入者が違った場合の条文というのは書きにくいですね。

○竹田委員 その場合には、別に、税関長は必ず仮処分がなければやれないというのではなくて、一度仮処分がなされた場合には、その後は税関長の自分の権限で、それと類似のものだったらとんどんやっていくという、それに拘束されるというのではなしにやったらどうだろうか。

○中山本部員 そこはさっき私が言ったのと同じですね。

○久保利委員 竹田先生から大変思い切りのいいお話を承って非常に心強いと思いますが、私は、まさに事実上だったらば、今だっていろんなことを税関長というのはできるわけです。仮処分がなくたって、これは本当に権利を侵害しているという判断ができれば、相当のことができるはずだけれども、しかし、税関長に事実上のところで、さあ、やりなさいと言って、現実問題として行政がそれをやれるだろうか、やるだろうかというところから今の問題はできているんだろう。
 したがって、これに仮処分をかからしめるというのは、私は合理的な判断だと。
 問題は、そうなったときに、では証拠をどうやって集めて、仮処分へもって行って、この製品はこういう商品で、我が特許権を侵害していますということをやると、結局そこで判断する裁判所というのは、特許権侵害訴訟、あるいは仮処分事件をやっていると同じ話になるわけです。その事件に何か月もかかっているのが現状です。随分早くはなったといっても時間はかかるわけですから、そうすると、この種の事件だけは特別の仮処分でいくんですよという制度でもつくらないと、実態的には裁判官の心理としては、ごく普通の差し止めの仮処分が来たというふうに思っていると、なかなかスピーディーに、そんなに皆さん期待しているほどのスピードではいかないんじゃないか。
 したがって、仮処分説は私は賛成なんですが、何か特殊な仮処分が必要でしょう。この場合は非常にスピーディーにやって、とりあえずまず出して、それに依拠して物というものが要するに違法な存在である。特許権侵害物であるということをまず確定する仮処分になります。ある意味で言うと、特許庁への意見照会の代り位の位置付けです。今の制度でも特許庁長官が、はい、そうですよと言えばいいんだけれども、これはなかなか今の段階ではスピーディーに出てこない。その代わりに裁判官がスピーディーにやって上げましょう。そうなったらば、税関長はそれをベースにして、この物は変な物なんだ。したがって竹田先生おっしゃるとおり、別に次の仮処分が当事者がどうであろうと何であろうと、物というものはそういう存在として大体認識できた以上は、その物を輸入しようとするものは、すべてその判断でやっていいじゃないですかという方向に流れていきやすくなる。そういう点では非常に政策的な効果は期待できるんではないか。
 とにかくこういう制度を早くつくって、現実にシャープさんもどこも困っているわけですから、私は早くそういう制度を実現してあげたい。
 もしそれがうまく機能しなかったら、それを更に変えていくことは必要だと思いますけれども、何か今のままの制度では、十分実効性が上がっていない。
 ドイツの制度、米国の制度、どれと比べてみても、残念ながら今の日本の制度というのは、やや効果において劣っていると考えざるを得ないとすれば、今の竹田先生のような考え方に基づいてこういう制度ができれば私は大変すばらしいことだし、そのときには是非裁判所にも御協力をいただくという方向で考えていくべきだろうし、そのときには勇気を持って税関長にも判断をしていただきたい。それがやはり知財立国という国のありようではないかなと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。

○中川委員 司法の判決ないし決定と、それから税関での輸入のやり方、これをつなぐという今のお話には賛成です。ただその前提として十分裁判所が早いということが必要ですけれども、これはもう早くしていただくよう努力していただくというほかありません。
 そのつなぎ方ですが、法律の解釈としては恐らく中山先生がおっしゃったように現行法でもできるはずなんです。ただ、恐らく税関の職員のメンタリティーとして、法律に何かとっかかりがないと、やってしまって、後で自分たちが違法行政だと言われても困るということはあると思います。これは取消訴訟の対象になります。税関で輸入禁制品に当たるということを通知をして、その通知が恐らく処分性があるということで、取消訴訟の被告になり得ますので、それを考えると面倒なことには立ち入りたくないということで、何もしないということも考えられる。その辺りは税関のお考えを私は聞きたいと思うんですけれども、そういうことであれば、例えば関税定率法の中の禁制品として、あるいはそれとは別に輸入許可が出ない事例として、輸入してはならんというそういう仮処分が出ていること、あるいはそういう判決が出ていることという1条をどこかで書くのはどうでしょうか。それであれば法律にも根拠があるので、役人としては非常に気楽にできるんだと思うんです。けれども、そういう法制度を整備するというのはなかなか面倒な問題がございまして、例えば、仮処分というのはもしかしたら引っくり返るかもしれないわけです。あるいは一審判決が出たからと言って、もしかして上で引っくり返るかもしれないのに、輸入を止めてしまっていいのかという、確定判決ならそれでもいいんだと思うんですけれども、そこら辺をいろいろ考えなきゃいけないという意味では、非常に法整備をするときには、考えなければいけない問題がたくさんありまして、かなりややこしいとは思うんです。だから、法整備をしないという方向もあるかと思いますが、しないとややメンタリティーの問題で役所が動かないかなというところで、そこは税関の考え方を聞きたいなというふうに思いながら聞いておりました。

○阿部会長 ありがとうございました。税関の御意見というのは、聞くチャンスはあるんですか。

○財務省山田知的財産専門官 財務省関税局業務課の知的財産専門官の山田と申します。
 ただいまのメンタリティーの問題でございますけれども、知的財産権の侵害物品は、関税定率法21条に基づきまして、輸入禁制品となっております。これは税関職員はすべて止めるという気持ちで取り締まっております。そのための重要な資料として輸入差止申立てを出していただいているという考え方でございます。
 勿論、いろんな裁判所からの判決等がございますれば、先ほどから中山先生等がおっしゃっていますように、貴重な資料として、尊重すべき資料として扱って対応しているところでございます。
 以上です。

○阿部会長 わかりました。御意見というよりは事実関係を御発言いただいたと認識いたします。今の事実確認を含めて知恵を出していく必要がある。
 いずれにしても、お困りになっている方が余りにも多いんで、そこを大幅軽減していくというのが目的ですので、どうやって知恵を出していくということですが、下坂先生、先ほど手を挙げられていましたね。

○下坂委員 実際にやっております者から言いますと、前に7つ訴訟を起こしました。税関の方は判決がないといけないというものですから特許の事件なんですが、ローラースケートと靴が一緒になったので、一時日本にばっと入ってまいりまして、それで相手が7社か8社だったんですけれども、1つは会社に支払う力がないということで訴えなかったんです。2つ判決を取って、最初の和解をベースにして次々に判決を取って参りました。最初に出ますのに、竹田先生のお話では、早い裁判をいろいろお考えいただいて、1つ出れば全部効果が出るということになる制度をお考えかと思いますけれども、現状では非常に大変で、最初の判決に8か月くらいかかりました。それで、税関の方に持参しましたら、和解判決ではだめだと。裁判所の方は和解で十分判断材料にできるはずだと言うんですが、税関は和解判決ではだめだということで国内に入った品物を押さえていったというのがあるんです。
 その経験から言いますと、何もここで裁判所それ自体をかませなくても、それ相応の判断ができる機関があれば、そこを使わせていただければどうかというふうに考えているんです。制度としてつくっていただければと思います。
 前回のヒアリングでも、税関の迅速な対応を望む声が随分あったと思います。特許権侵害品を水際で早く止めるための仕組みというのが、そこに司法をかませなくても、それに準ずるようなものができるんじゃないか。勿論、事件によりましては、複雑で時間がかかるケースもあるとは思いますけれども、基本は迅速性、すなわち簡便にして適正、かつ迅速ということが現実の仕事では求められますので、是非そういう制度を考えていただきたいと思っております。
 経験から行きますと、物品の外観だけから特許権侵害の有無を判断することは困難な場合が多いんですが、この判断を適正に行うために、EUのように、権利者に侵害疑義物品のサンブル取得を認めていただいて、分解検査することを可能にする制度を導入すると大変大きな効果があると思います。私としては、是非ともサンプル取得を可能にする制度というものをこの際導入していただければ大変ありがたいと考えております。

○寺島参考人 先ほどのものが2つ例がありまして、関税定率法でやっていただいたものは、私どもから申請書を出したときに、第三者鑑定があればいいですよということだけで受け付けてもらいました。裁判所の仮決定ではなくて、そこは財務省の方でかなり前向きにやっていただいたんで、そういう形で行けばうまくいくのかなと思います。
 もう一つ、例として挙げました特許の方は、これは裁判所の仮処分が9か月くらいかかっています。そういう意味でそこから税関に行ってお願いすると、また時間がかかってしまいますので、竹田先生がさっきおっしゃいましたように、そこをできるだけ早くして税関との動きをうまく連携していただければ、そっちの方も対応できるのかなと思っております。

○阿部会長 ありがとうございました。別の点でも結構でございます。
 とりあえずよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、残っているのがIII.の国内での取締りと、V.の中小企業の支援と国民の啓発というところでございます。ここについて、御意見をいただければと思います。どこでも結構でございますので、よろしくお願いします。

○久保利委員 これはエピソードなんですが、つい先日私が教授を務めることになった大宮ロースクールで入学試験をやりました。そのとき知財について非常に関心を持っているという方がたくさんお見えになったんですが、その一人が実はインターネットオークションをウォッチすることが自分の人生のかなりのウェートを占めている。私は多分日本で一番オークションの偽物についての鑑定眼が鋭いのではないか。したがって、私は弁護士になりたいという話なんです。
 要するに、そういうことがわかっている人が弁護士になって、今のインターネットの取引というものが、いかに偽物商品が跋扈しているかということを知り、それを撃退し、排除していく、そういうことがないと日本の知的財産権というのは、リーガルに見てとてもやっていけない。だから、私は弁護士になりたいという論旨でありました。基本的にそういう人たちが大変増えてきていて、逆に言うと彼はインターネットの偽物オークションに怒りを持っているわけですが、逆のサイドで、それを本当に毎日売り買いをしながらそれで利益を上げたり、自分の満足度を高めたりしている人たちもたくさんいる。これが現状のようです。こうなってくると、私は2つの問題があると思います。
 1つは、インターネットオークションという問題をいかにリーガルに解決していくかという問題。
 もう一つは、国民的なコンセンサスなり、人間の生き方の問題として、そういう偽物商品を売ったり買ったりするというのが当たり前なんだということはおかしい。もし知財立国で行くんなら、日本人そのものの考え方を根本的に変えなきゃいけないのではないか。 そういうふうに考えていくと、取締りも大事だし、それに対する法的対応も大事だけれども、取締り云々の前に、考え方を変えていく。例えばフランスのロンゲ法的な考え方で、そういう偽物商品を持つことは違法なんだとするか、少なくとも恥ずかしいことなんだとか、そういう教育も含め、あるいは法的な対応も含め、その双方でやっていかないと、これは撲滅できないかなというふうに思いまして、具体的な法律条項を変えるという話とはちょっと違うかもしれませんけれども、根本的なメッセージをこの専門調査会で何か打ち出すべきではないだろうか。とてもそういう偽物がこれだけはびこっている国で、知財立国の国ですと言うのは、いささかこそばゆいかなと。根本的な国民の在り方に関わる問題ではないかと思っています。

○阿部会長 それは私は大変賛成ですが、御反対の方、おられますか。どういうメッセージを出すかというのは吟味する必要がありますけれども、これは本部の仕事ですね。

○荒井事務局長 そうですね。本当にそう思います。

○阿部会長 ありがとうございました。

○山田委員 今のお話で、どういうメッセージを出すかという話なんですけれども、要するに、国内に偽物が入ってくるというのは2つで、偽物と知って買うのと、この前、フランスの方が来られておっしゃったように、偽物と知って買うのと、偽物と知らないで買うのと、いずれにしても、買うことによって国内に入ってくるわけですね。偽物と知らないで買うのは水際で止めなきゃいけない。それは先ほどおっしゃったように迅速かつ簡便に止めなきゃいけない。
 もう一つ、偽物と知って買うというのは、さっき先生おっしゃったように、知って買っちゃいけないんだということを植え付けなきゃいけない。だけれども、これは非常にソフトをコピーするのと似ていると思うんです。やはりソフトが出てきたときには、ソフトはコピーしていいものだというので結構使ったんですけれども、だんだんとお金を払って買わないといけないんだという文化が出てきたわけです。
 それと同じように、何らかの形でそれを知らしめなきゃいけないということになると、やはり私はこの中にあるインターネットオークションとか個人輸入、あるいはカウルを外して輸入するとか、バッチを外して輸入するとか、そういったものをちゃんと偽物はだめですという摘発を見せないと、国民にはわからないと思うんです。幾ら文書とか言葉で行ってもですね。そういうものは違法ですということをきちっと見せていくというのが非常に有効じゃないかと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。

○中川委員 今の件で、法務省で今やっている「法教育研究会」があります。これは、小中レベルから憲法の問題とか、あるいは消費者問題とか、法的な感覚を磨こうという検討を今されている最中だと思いますけれども、そこで知財についてされているのかどうか、私存じ上げませんので、あるいはそこに連絡をしてちゃんとやるようにと申し入れするのもいいかもしれないと思いました。

○阿部会長 ありがとうございます。
 中小企業については、「V.中小企業・ベンチャーの支援と啓発の強化」のところにありますが、今日もいろいろ有益なお話を伺いましたが、何か追加して御発言ございますでしょうか。大学発ベンチャーなどいうのも、全くこういうことについて無力な状況ですので、既存の中小企業より更にワンランク下の無力ではないかと思いますけれども、これまた何とか育成をしていかなければいけないということですので、中小企業のいろんなお話は非常に有益でありますが、何かございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。
 私が勝手に急がせていただきましたので、全般にわたって、どこでも結構でございますので、御意見を賜ればありがたいです。

○下坂委員 4ページの論点(13)のところに、「不正競争防止法と水際規制」というのがありまして、関税定率法の方に不正競争防止法の形態模倣品というのが輸入禁制品に入っておりません。これは何か理由があって、関税定率法にわざと入れていないのか、そこが不明なんですが、これも関税定率法の方に入れていただける運用に変えていただければと考えております。

○中山本部員 私は答える立場にないんですが、立法的に関与したものですから。
 不正競争防止法違反物品は関税定率法21条に入っておりません。特許とか意匠の場合、クレームや登録があり、これが権利だとすぐに判るわけです。権利者は誰かと判るわけですけれども、不競法の場合ですと非常に難しい。周知性があるとか、模倣品も誰が差し押さえできるかというのも、いろんな判例がありまして、独占的輸入業者ができるか、販売業者はできるとか、ライセンシーはどうかとか、もろもろの問題があって、税関長には判断できません。
 したがって、判決でももらってくれば別なんですけれども、現状で税関でやれと言われてもまず無理。そういう関係で入ってなかったんです。
 もしこれを入れるとすれば、それなりの法的措置を設けないとやりにくいだろうと思います。つまり、権利がちゃんとわかっていないと、税関では処分できないんです。

○下坂委員 その点、調べて、次回もう一度。

○阿部会長 次回でなくても結構ですが、というのは、大変勝手ですけれども、今日、御発言するのをうっかり忘れていたとか、後で思い出したということもあるかもしれませんので、事務局の方にコンタクトして、事務局も多分コンタクトするんじゃないかと思いますけれども、是非御意見をいただいて、むしろ次回にはそれを踏まえて、御議論をいただけばと思います。

○吉野委員 先ほど国民への啓発とか教育という話が出ましたけれども、最近少し気になっていることは、中国の人たちをどう啓蒙するかということでして、気になっていることというのは、日本の企業が細かいことをあれこれ指摘して、中国の発展を阻害しておると。あるいは中国の二輪業界を壊滅させようとしている。非常にアンチのメッセージが知財に関するすべての中国のメッセージの中で、20〜30%あるんです。これは余りやり過ぎると、逆におかしなことになるという心配もあります。
 そういう意味では、政府間から始まって、とにかく向こうへ知財の概念みたいなものを浸透させていくのは、企業としてはいろいろな広告をやったりしてやっているんですが、これが最終的に一番難しいんじゃないか。
 したがって、民間は民間で自分のビジネスを守るために闘いますけれども、やはり国でしょうね。そしてその大きな歩みをしないとだめなんじゃないかなという感じはしますね。

○阿部会長 中国は御案内のように最近は大いに変わりつつありますけれども、ついこの間まで全くそういう意識がありませんでしたので、私の経験では、83年に行きましたときに、全くなくてアメリカ人とトラブルを起こした。何でアメリカ人は怒っているのかよくわからない。そういうのが急速に今変わってきていますけれども、おっしゃるように浸透をどこまでしているか。

○吉野委員 逆のことがはね返ってきてしまうという感じはあるんですね。

○中山本部員 吉野委員がおっしゃるとおりだと思うんです。戦前のプラーゲ事件を思い出しました。これは著作権事件ですが、プラーゲという人がドイツからやってきて、著作権者の代理人として洋楽をみんな押さえまくった。『蝶々夫人』が公演直前に止めとか、NHKから洋楽が全部消えました。プラーゲの行為は、法的には正しいんですけれども、当時日本の音楽界のものすごい反発を買ったということかあります。法的には全く正しいことを行っても、その国の反発を買うと言うことはあり得ます。
 したがって、私はこれは国レベルの問題であると同時に、アメリカ、ヨーロッパと協力してやっていかないといけないと思います。日本だけが恨まれるということではなくて、世界の流れがこうなんだという中でやってほしい。そう思います。

○阿部会長 ありがとうございます。

○塚本参考人 おっしゃるとおりだと思います。あと個々の企業の方のみならず、先ほど知財権問題研究グループのお話をいたしましたけれども、2003年にグループの名前で中国政府に対して、具体的には中国知財権関係の各行政機関と、中国の最高人民法院に、要望という形で、いろいろまとめて要望しておりまして、例えば著名商標などにつきましては、最近それが改善されて、中国の企業しか認められなかったものが外国の企業にも認められるようになりました。また、先ほどの最高人民検察院の人と話したときの内容ですけれども、彼らはスワトウ(汕頭)宣言というのをまとめておりまして、知財権の保護のため公安の人たちと検察の人たちが集まって、スワトウ(汕頭) という広東省の土地の名前なんですが、より一層知財権の侵害事件への対応を、真剣に考えようという宣言をしましたよということを言っております。基本的にはそれが末端まで、どこまで徹底しているかというのはいろいろありますけれども、上の方の方々は、WTOに加盟したことに伴って、かなり真剣になっているということはございます。

○吉野委員 理屈は大体わかるんだけれども、感情をどうケアしてあげるかということで、特に日本に対する感情ですね。欧米対してと日本に対してと違う感じなんですよ。

○阿部会長 それは何となくわかるような気がします。

○下坂委員 「関税定率基本通達」というのが4ページの21−9「自発的処理」というところにあるんですけれども、これは先ほどから模倣品撲滅とか侵害品発生を知財立国を標榜する日本では恥ずかしいとか言っておりますけれども、この通達は商標とか侵害する部分を外せば入れてよろしいよと。その外した部分は輸入を認めないということなんでしょうけれども、外した部分だけ別に輸入しましたら、それはまた侵害品ではありませんから、そうすると、中で組み立ててもいいと。
 例えばバッグだったら、ルイ・ヴィトンとあれば、織ってあれば難しいけれども、貼ってあればそれをはがして持ち込んで、それをこちらで貼ればいいというようなんで、どうもこれは方向性と合わないように思うんですが、この基本通達は税関の基本通達で実施されていることでございますね。

○財務省山田知的財産専門官 これはかなり以前からあるこかと思いますが、(11)のところに判例もございます。これは大阪地裁の57年2月26日判決という事例でございます。税関といたしましては、商標権を侵害する部分をすべて取って、取った商標権関係については全部廃棄滅却処分にする。残されたものにつきまして、全く商標権とは関係ないという状態になったときに、一度権利者の方に確認していただきまして、それでなおかつ権利が残っていないということであれば、それは通関を認めざるを得ないという考え方でございます。

○阿部会長 ありがとうございます。

○下坂委員 そうしたら、例えば(12)の意匠の場合ですが、これはもう侵害すると思って、最初から分けて輸入をする。それぞれカバーの部分と中の部分。両方ともそれぞれは非侵害品ですから、それぞれ輸入ができますね。中で組み立てるということは、理論的には可能ということになるんですが、その場合はまた裁判所に侵害で別途権利者が起こしていくということになるんでございましょうか。

○阿部会長 どなたか。

○下坂委員 ということになりますので、この基本通達は昭和57年の大阪地判ですから、ちょっと古いんじゃないかという気がしておりますので、御再考いただければありがたいというのが意見でございます。

○中山本部員 理屈としてはこうなるんです。マークを外したら、そのバッグ自体何ら侵害物品ではないんです。しかし、理屈としてはこうなるんだけれども、何となく脱法行為的なんですね。したがって、これは補足しなければならないというのは、下坂委員おっしゃるとおりです。脱法行為を何とかしたいんですけれども、一回つかまって、物品を没収された人は、次からは当初からマークを外してばらばらに輸入するでしょう。そうすると、これは最早押さえることはできません。つまり、1回おきゅうをすえられた人は、今度はばらばらに輸入して国内でマークを付ける、あるいは組み立てるだけです。そうなってしまうと、組み立てたところで押さえるしかない。結局、本当に悪いものは、押さえることができないということになります。これは別に輸入だけの話ではなく、国内でも同様のことがあり得ます。あとは脱法的な行為をどうやってうまく押さえるかという工夫だろうと思います。

○阿部会長 ありがとうございます。いずれにしても、下坂委員がおっしゃるように、釈然としないところですが、何か工夫があれば是非やっていきたいというところでございます。
 予定の時間がまいりましたので、そろそろ終わらせていただきますけれども、これまでいろんな御意見をちょうだいしましたが、専門調査会としては日程も限られておりますので、次回はできれば模倣品・海賊版対策に関する本専門調査会としてのとりまとめの検討をさせていただければと思います。事務局にはまたお願いですが、本日プレゼンテーションしていただいた中身、あるいはいろんな御意見をいただきましたことを踏まえて、リバイズ・バージョンをつくっていただくことをお願いいたします。
 併せてとりまとめ案らしいものに、できればしていただきたいと思います。
 先ほどもちょっと私が申し上げましたように、委員の皆様には時間の関係もございまして、これは十分ごらんいただいていてない方もいると思いますので、後で事務局から個別に御意見をちょうだいする機会をつくると言っておりますので、是非とりまとめ案に反映するような御発言をそのときにいただければということですが、それでいいですか。文書でいただかなくてもいいですか。

○荒井事務局長 はい。

○阿部会長 それでは、そういうことでお願いいたしたいと思います。それでよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、今後の日程について事務局、お願いします。

○小島事務局次長 資料5に「今後のスケジュールについて」という紙がございますが、次回、第7回専門調査会は4月8日木曜日、3時から5時までこの場所でお願いいたします。
 それから、第8回目は5月7日金曜日、10時から12時ということでございます。
 議論の進捗によりますけれども、第9回目、第10回目ということで、5月13日と5月18日を仮押さえしていただいておりますけれども、議論の進捗に応じて5月13日、18日のいずれか、または議論が続く場合には両方ということでお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、これで閉会にさせていただきます。次回は今、報告がありましたように、4月8日木曜日午後3時から、同じ場所で開催をいたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日はいろいろありがとうございました。特に3人の方、ありがとうございました。