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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部知的財産による競争力強化専門調査会 [印刷用(PDF)]


第1回知的財産による競争力強化専門調査会 議事録


1.開 会:平成19年8月30日(木)14時00分〜16時00分
2.場 所:知的財産戦略推進事務局会議室
3.出席者:
【委 員】相澤会長 岡内委員 加藤委員 佐藤委員 妹尾委員 辻村委員 中村委員 中山委員 前田委員 三尾委員
【事務局】小川事務局長 松村事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)会長の選任
(3)専門調査会の運営について
(4)調査・検討課題について
(5)分野別の知財戦略の策定について
(6)今後の進め方について
(7)自由討議
(8)閉会


○小川事務局長 定刻前でございますが、委員の皆様お揃いでございますので、始めたいと思います。
 ただいまから知的財産による競争力強化専門調査会第1回会合を開催させていただきます。
 本日はご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、内閣官房の知的財産戦略推進事務局長の小川でございます。よろしくお願い申し上げます。後ほど委員の互選によりこの専門調査会の会長をお決めいただきますが、それまでの間、議事の進行を務めさせていただきます。
 この調査会の趣旨でございますが、お手元の資料1のとおりでございます。資料1の1.にございますとおり、本専門調査会では、知的財産による競争力強化に係る課題に関する調査・検討を行うことになっておりますので、よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
 それでは、今回は委員の初顔合わせの会合でもございますので、最初に、委員をお願いいたしました方々をご紹介させていただきます。
 資料2、委員名簿をご用意いただければと思います。
 皆様方の左側から、相澤益男委員でございます。
 岡内完治委員でございます。
 加藤幹之委員でございます。
 河内哲委員でございますが、本日はご欠席でございます。
 佐藤辰彦委員でございます。
 今日はご欠席でございますが、関田貴司委員。
 妹尾堅一郎委員でございます。
 今日はご欠席でございますが、田中信義委員。
 辻村英雄委員でございます。
 今日はご欠席でございますが、長岡貞男委員。
 中村恭世委員でございます。
 中山信弘委員でございます。
 前田裕子委員でございます。
 三尾美枝子委員でございます。
 今日はご欠席でございますが、渡部俊也委員。
 以上がこの専門調査会の委員の方々でございます。
 次に、会長の選任をしていただきたいと思います。
 資料1に戻っていただきますと、3.で、当専門調査会の会長は委員の互選により選出していただくこととなってございます。
 どなたかご推薦あればいただけますでしょうか。

○中山委員 私は、相澤委員にお願いしてはと思います。
 相澤先生は学識、経験は言うまでもないことでございますけれども、総合科学技術会議の方も担当しておられまして、当調査会の会長として最適ではないかと考えます。

○小川事務局長 ありがとうございます。
 今、相澤委員というご意見が出されましたが、皆様いかがでございましょうか。

(異議なし)

○小川事務局長 ありがとうございます。
 それでは、相澤委員が会長と決定いたしました。
 ここからの議事進行は、相澤会長にお願いいたします。

○相澤会長 相澤でございます。
 皆様のご推薦によりまして会長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず、本専門調査会の運営に関する事項について、資料1の一番下になりますか、6.にありますように、運営については会長が定めることになっております。
 そこで、資料3をごらんいただきたいと思いますが、本専門調査会の議事は、原則として公開とすることになっております。それから、会議終了後は発言者名を付した議事録及び配付資料を公開すること、専門調査会の審議に必要があると認めたときは参考人を招致すること、知的財産戦略本部員は本専門調査会にオブザーバーとして参加できること、その他必要な事項は会長が定めることとさせていただきたいと思っております。
 また、本専門調査会の公開手続については、資料4のとおりとさせていただきます。
 また、急な事情により私が本専門調査会に出席することができなくなった場合には、その時点で会合の議事進行をしていただく方を選び、お願いすることとしたいと思います。
 以上の点で、何かご質問等ございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、ただいまのような形で進めさせていただきたいと思います。
 それから、本調査会の調査・検討の課題についてでございます。
 この調査会で取り上げるべき当面の調査・検討の課題について、事務局から説明願います。

○松村事務局次長 恐れ入ります、資料5「知的財産による競争力強化専門調査会における当面の調査・検討課題について(案)」をごらんいただきたいと思います。
 先ほど資料1にもございましたが、本専門調査会は、知的財産による競争力の強化に係る課題に関する調査・検討を行うということでございますけれども、【参考】にございますように、推進計画2007におきまして「2007年度から、分野別の知財戦略を策定する」ということ、また、いわゆる骨太の方針─経済財政改革の基本方針2007におきまして「分野別知財戦略を平成19年中に策定する」ということが明記されておりますので、調査・検討課題の1としまして、分野別の知財戦略の策定について、また、残されました競争力強化の観点から、さまざまな課題を取りまとめまして、国際的展開を中心とした競争力強化に向けた方策について、この2つを当面の調査・検討課題としてはいかがかという案を提示させていただいております。

○相澤会長 ただいまの件につきまして、ご意見、ご質問等ございませんでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、ただいまの2点について、本専門調査会としての検討課題とさせていただきます。
 まず、この2つのうちの初めにあります分野別の知財戦略の策定について、この「分野別」の「分野」という意味を含めて、資料6に基づきまして、推進計画2007にも記載がございます科学技術基本計画の中で定められている重点推進4分野などについて、内閣府の保倉参事官からご説明いただきたいと思います。

○保倉参考人 ただいまご紹介にあずかりました、内閣府の総合科学技術会議の事務局で知財を担当しております保倉と申します。
 私から、資料6を用いまして、科学技術基本計画における重点推進4分野がどういう位置づけになっているのかということと、この重点推進4分野が具体的にどういう技術内容のものを含むのか、どういう技術開発をしているのかというところをざっとご説明させていただきたいと思います。
 もうご存じの方おられるかもしれませんけれども、おさらいの意味も含めまして、ご説明させていただきます。
 早速ですけれども、1枚めくっていただきまして、「第3期科学技術基本計画」の概要であります。
 まず、この基本計画の基本理念ですが、左上に書いてございますように、基本姿勢が2つございます。1つは、社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術。もう一つが、人材育成と競争的環境の重視−モノから人へ、機関における個人の重視−でございます。
 その基本姿勢に基づきまして、右側に書いてございます政策目標が立てられてございます。理念が3つほどございます。
 理念1は、人類の英知を生む。その理念に基づきまして、その下に目標1、目標2と書いてございますけれども、飛躍知の発見・発明、科学技術の限界の突破を目標にしております。理念2としまして、国力の源泉を創る。その具体的な目標としまして、環境と経済の両立、イノベーター日本。革新的なものを実現する。理念3としまして、健康と安全を守る。その目標としまして、生涯はつらつ生活、安全が誇るとなる国。このような目標を掲げて進めておるというのが1つ大きな方向性になっております。
 その科学技術基本計画の中で、2.科学技術の戦略的重点化というところが3期の一つの大きな特徴になってございます。
 その中身としましては、基礎研究の推進、それから、今回の重点推進4分野にかかるんですけれども、政策課題対応型研究開発における重点化というふうなところがうたわれております。当然、ご存じのように人、金というのは限られております。その資源を重点的に配分するというところが1つ大きなポイントになっております。
 その中で重点推進4分野というのが、今回、分野別でご検討いただく項目として挙げられますライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料でございます。それに準ずる推進4分野として、エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアが挙げられてございます。
 この重点推進分野ですが、推進分野との違いは、名前にありますように重要なものになるわけですけれども、先ほど申しました基本理念により寄与度が高いとか、国民の期待感が高い、それから諸外国の趨勢を見て、そのような観点からこの4つを特に重点推進ということで挙げたところでございます。
 1枚めくっていただきまして、この4つの重点推進分野がどういう経緯で出てきたかというところを簡単にご説明いたします。
 ご案内のように、1995年に科学技術基本法が制定されまして、その後、平成8年に第1期の科学技術基本計画がございます。その後、5年ごとに2期、3期と基本計画が出てきているわけですが、その1期の後、平成12年の科学技術基本計画に関する論点整理の中で、重点分野というのを挙げてございます。そのもとになるのは技術予測調査だとか米国大統領府の科学技術政策局の国家重要技術報告、そのようなものを参考にしまして、今後の知的資産の拡大、社会的効果、経済的効果、そういうところを見まして、7つの分野が2000年に出てきたわけです。
 その7つの中でさらに重点化しようということで、先ほど申しましたライフサイエンス、情報通信、環境、材料、この材料のナノテクというのもその後、出てきましたので加えて、重点4分野というふうなことで3期で取り上げられてきたというのが経緯でございます。
 続きまして、各分野の概要、具体的なものはどういうものがあるのか順番にご説明させていただきます。
 まず、ライフサイエンスですが、戦略理念が左に書いてございます。生命プログラムの再現、研究成果を創薬や新規医療技術などに実用化するための橋渡し、革新的な食料・生物生産技術の実現といったこととに向かって開発を行うことになっています。
 具体的には、下の方に若干小さな字で書いてございます。キーワードだけ簡単にご紹介しますと、ゲノム機能の解析だとかタンパク質の機能・構造解析、感染症の予防・診断・治療、SARSのワクチンの開発だとか、あとはES細胞の関係だとか難治性C型肝炎、重粒子がん治療研究、右側に参りまして創薬プロセスの加速化・効率化、遺伝子・タンパク質などの分析・計測、高品質な食料・食品の安定清算・供給技術、ウナギ云々というふうなことがあります。それから、食料・食品の安全と消費者の信頼の確保に関する研究、BSEの対策というふうなこともございます。それから、環境とも関係しますけれども、生物機能を活用した環境負荷低減技術開発、天敵による殺虫剤の低減だとか共生微生物を利用した化学肥料の低減というふうなことで、今、具体的な開発が行われているところでございます。
 1枚めくっていただきまして、次は、情報通信分野に関するものです。
 戦略的な理念としましては、継続的イノベーションを具現化するための科学技術の研究開発基盤の実現、革新的IT技術による産業の持続的な発展の実現、すべての国民がITの恩恵を実感できる社会の実現を目指しております。
 右側は時間の関係で省略させていただきますけれども、下の方を見ていただきますと、幾つかの技術が書いてございます。ネットワーク領域では、次世代ネットワーク基盤技術、フォトニックネットワーク技術、移動通信における周波数の高度利用、未利用周波数帯への無線システム移行促進、次世代バックボーン等、その他いろいろ技術が書いてございます。特徴的なものとしましては、デバイス・ディスプレイ等領域の半導体LSI超微細化等がございます。右の方へいきますと、セキュリティ及びソフトウェアの関係のもの、それからヒューマンインターフェース及びコンテンツ技術のもの、ロボット関係のもの、それからスーパーコンピュータですね、最先端・高性能汎用スーパーコンピュータ、こういうふうなところの開発が、今、進められておるところでございます。
 次は、環境関係になります。
 環境関係の戦略理念としましては、皆さんおわかりのように、まず地球温暖化に立ち向かうということが1つ。それから、我が国が環境分野で国際貢献を果たして国際協力でリーダーシップをとっていこうということ、それから、環境研究で国民の暮らしを守る、環境科学技術を政策に反映するための人材育成をやっていこうと考えております。
 これも具体的技術のところを見ていただきますと、化学物質─カドミウム、農薬等のリスク抑制技術・無害化技術とか、社会経済活動と両立した海域生態系や陸域生態階の管理・再生技術、再生品の利用促進のための試験・評価・規格化支援技術、国際3R─発生抑制、再使用、再生使用ですが、そういうものに対応した有用物質利用・有害物質管理技術。高温鉛はんだ代替技術とか。あとは地域特性に応じた未利用資源の有効利用、右の方にいきまして、大量・新規廃棄物のリサイクル技術、未来型廃棄物処理技術、安全・安心対応技術、メタン、一酸化二窒素、含ハロゲン温室効果ガス排出削減対策、あとはセルロース系バイオマスからエタノールを製造する工程における糖化、発酵技術、このようなものが今、進められているところです。
 次に、ナノテク・材料関係になります。
 戦略理念としましては、社会・産業からの要請が強く、しかも「TrueNano」や革新的材料でなければ解決が困難な課題、ナノ領域特有の現象・特性を活かし、不連続な進歩や大きな産業応用により国際競争の優位を確保する課題、それから、「TrueNano」や革新的材料によるイノベーション創出を加速し国際競争の優位を確保する推進基盤であります。
 ちなみに、TrueNanoというのは、産業競争力の強化とか大きな産業創出に結びつく可能性のあるようなナノ技術を称するものでございます。
 具体的な技術としましては、下の方をごらんいただきますと、More Than More、Beyond CMOSなどの半導体関連技術、革新的な効率のディスプレイ用偏光版、生きた細胞にも適用できるナノレベル各種イメージング技術だとか、生体医療材料・インプラント開発のための生体親和性、融合性、安定性の高い材料開発及び表面処理技術の開発とか、DDS薬物担体粒子の微細化、再生医療確立に向けた細胞適合性材料の開発、右側にいきまして、高比表面積白金や燃料改質触媒箔等の触媒技術、新型ポリイミド系及びポリエーテル系電解質膜とか、高窒素鋼セパレータ等の要素材料の開発、それから、新規ナノ物質の探索、ナノ細線等のナノデバイス計測の標準化、異種物質間の界面機能の基礎研究、量子情報処理技術、このようなところがナノテクとして開発されておるところでございます。
 以上が4分野の理念と具体的な技術でございます。
 最後のページに、細かい字の書いてある絵がかいてございますけれども、これは、どういう技術がどういう方向の効果を指向しているかという図になっております。ライフは赤、情報は黄色ということでいろいろな技術が書いてございますので、どの分野にどういう技術が入っているかというご参考にしていただければと思います。また、どういう技術がどういう効果に近いかということもわかりますので、今後、知財戦略をご検討される上でのご参考にしていただければと思います。
 ちょっと早口で申しわけございませんでしたが、私からの説明は以上です。
 資料にはもう一つ別添がついてございます。今、申し上げたところのさらに詳しい情報が載ってございますので、必要によりご参照いただければ幸いでございます。

○相澤会長 ここで言っている「分野別」というのは、第3期科学技術基本計画に重点推進4分野という形で指定されているそれぞれの分野について、これから知財の戦略をいろいろと立てよう、こういうことでございます。
 それでは、ただいまの説明に基づきまして、重点推進4分野のそれぞれの知的財産をめぐる現状と課題などについて、事務局から説明願います。

○松村事務局次長 資料7をごらんいただきたいと思います。
 この資料は、本日の議題7にございます自由討議のために、たたき台として用意させていただいたものでございまして、まだまだ生煮えという段階であることをお許しいただきたいと思います。
 4分野ごとに知的財産をめぐる現状課題、それぞれについて簡単にまとめさせていただいたものでございます。
 1枚めくっていただきますと、今、ご紹介のありました重点推進4分野が具体的にどのような技術分野を対象として考えているか、さらにコンパクトに評価にまとめたものでございます。これは特許庁の特許出願状況の資料がございましたので、それを掲載させていただいております。ご確認いただきたいと思います。
 まず、ライフサイエンス分野でございます。
 この分野は「1製品1特許」とよく言われるわけでございますけれども、特許1件の価値が高いというアンケート調査結果が知的財産協会の方から出されておりますので、それを挙げさせていただいております。このことから、少数の基本特許で市場を独占できる場合が多いと言えるのではないかということでございます。
 次のページでございますけれども、ライフサイエンス分野における特許出願件数を、欧米と比較したものでございます。日本のこの分野における出願件数は、青の棒グラフでございますけれども、なかなか少ないなということが全体として言えるかと思いますが、次のページをごらんいただきますと、それでも、例えば真ん中に緑の点々で囲ってございます糖鎖工学分野におきましては、1991年から2004年まで見ますと30%弱ぐらいの出願シェアをずっとキープしているということで、後ほど検討課題の中で述べますけれども、選択と集中をすればまだまだ強みを発揮することができるのではないかということでございます。
 1−4をごらんいただきますと、この分野のもう一つの特色としてよく言われております研究開発費、特に基礎研究費の重要性を売上高比率で見たものでございまして、左が研究開発費の売上高に対する割合、右が基礎研究費の割合で、医薬品工業が突出して高いことがごらんいただけると思います。
 ただ、この基礎研究の分野の担い手であります大学とか大学発ベンチャーの我が国における役割、貢献度を7ページの1−5でごらんいただきますと、左の棒グラフでございますけれども、出願件数ベースのシェアで見ますと、我が国ではまだまだ紫の一般企業の割合、応用研究分野とでも理解したらよろしいんでしょうか、その比率が高い。アメリカでは大学またはベンチャーの比率が高いという構成になっております。
 このアメリカの事例につきまして、新薬の承認件数の最近の動向を右の表に示しておりますけれども、折れ線グラフが新薬承認件数の推移でございまして、青色のグラフがバイオベンチャー、緑色のグラフが時価総額上位15製薬企業でございますが、最近はベンチャーの方が承認件数が高いという状況になっております。
 ちなみに棒グラフの方は、水色が上位15製薬企業の研究開発費、黄色がベンチャー企業の研究開発費でございまして、少ない金額ながらも、新薬承認件数、頑張っている。日本もベンチャーまたは大学にもっと頑張ってもらわなければいけないということを示しているのではないかと思います。
 他方、日本で大きなシェアを占めている企業についてどうかを、8ページの1−6で示しております。
 これは出願件数の製薬企業ベースでの比較表でございます。紫が日米欧3極への出願ベースでの数でございまして、日本の企業は真ん中から下の方に名前が出てきますけれども、件数も、国際展開も見劣りするというような状況にございます。
 以上、簡単に述べてまいりましたライフサイエンス分野の特色を踏まえて、1−7に課題例を掲載させていただいております。
 @では、こういう特色の中で、●でございますけれども、日本の強い技術や将来期待される技術等への選択と集中等、日本の強み等を生かした取組が必要ではないかという点。
 Aでは、基礎研究費比率が大きなウエートを占めるこの分野において、大学・ベンチャー・企業の連携の取組が必要ではないか、
 さらにBでは、最後に見ていただきました海外への出願を促進して、国際展開をもっともっと図っていくべきではないか。
 この3点を課題の例として挙げさせていただいております。
 次のページは、その他の検討課題として、これは後ほど説明させていただきますが、パプコメをいたしました際に、医療保護法特許について、またリサーチツール特許についてご提案がございましたけれども、従来からさまざまな場でご議論いただいておりまして、その現時点での状況、取組方針を整理しましたのが推進計画2007でございますので、そこの文章を引用し、状況をご紹介させていただいております。
 次に、情報通信分野に参ります。
 ライフサイエンス分野の「1製品1特許」の世界の対局をなす「1製品多特許」の分野だと位置づけておりまして、それぞれの製品についていろいろな要素技術があることを一覧にした表でございます。
 そういう中で、2−2でございますけれども、やはり事業展開していく上においてはクロスライセンス、パテントプールが大きなウエートを占めてくるということで、左側では、精密機械、電気機械ではクロスライセンス比率が高くなっていることを示しております。
 他方、こうした分野におきまして国際標準をとっていくことは極めて大事だと言われておりますけれども、右側、ISO/IEC、ITUなどにおける日本の貢献度はまだまだ低いのではないかという数字を出しております。
 駆け足で恐縮ですけれども、2−3に参りまして、それでは、この情報通信分野、日本は従来、ハード面では非常に競争力を発揮してまいったと言われておりまして、左の表、デシタル製品においては日本のシェアはそれぞれ高いということでございますけれども、こうした製品に組み込まれているソフトのウエートは年々高くなってきている。つまり、ソフトウェアが非常に大事な分野であるということを、13ページの右の表では示しております。
 ソフトウェアの中においては、例えばアメリカのソフトウェア企業は、デスクトップの分野ではまだ独占的なOSを供給しているという現象もございますけれども、サーバー部門においては、オープンソースの代表例でありますLinuxのシェアが高まってきていることを2−4に示しております。
 ソースコードを公開しているという意味で、ともするとオープンソースというのはすべて権利フリーであるという概念でとらえられがちでございますけれども、この分野におきましても、実はミドルからアプリケーションの方に上がっていくに伴って、例えば、業界の専門用語ですけれども、GPLバージョン3といった問題が出てきたりして、保護と開放というか、自由活用とのバランスをいかにとることが大事かというような議論も、オープンソースの分野においてさえ出てきてございます。
 今のは新しく出てきた事例のほんの1つを紹介したわけでございますけれども、2−5.情報通信分野の課題例としまして、@「1製品多特許」という特色の中で、例えば最終製品に多数の特許が絡む状況におきまして、権利者と事業者等が納得する知的創造サイクルの好循環を促進するため、合理的な権利活用のあり方を検討すべきではないか。パテントプールなどの問題について議論をすべきではないかという点。また、国際競争力を強化するため、国際標準の策定と連動してパテントプールを設立する場合における知財の課題を検討すべきではないかというような課題。
 Aでは、今、申し上げたようなオープンソースにおける独占権の確保とオープン化のバランスをどうとっていくのかというような課題。
 ほかにもソリューションビジネスとかSaaSの問題とか、いろいろ指摘されておるところでございます。
 次に、3−1.環境分野でございます。
 日本はこれまで環境関連法を整備するとともに、省エネなど環境技術の技術開発を活発に行ってきて、国際的にも非常に高い競争力を有しているのではないか。その環境関連法の例としまして、省エネ法に基づくトップランナー方式を16ページで紹介しております。
 時間の関係でここもはしょりますが、今、申し上げました競争力がいかに高いかという点につきましては、3−2をごらんいただければ、出願件数は圧倒的に日本が高くなっているんですが、3−2の右の表をごらんいただきますと、日本国籍を有する者による日本出願件数に対するアメリカ出願件数の割合、つまり、端的に言うと、日本に出している比率とアメリカに出している比率を割算したものでございますけれども、環境は、アメリカに出願している比率が非常に低くて5.7%、ナノ、ライフ、情報通信とだんだん高くなって、全体平均2割弱のところ、環境はわずか5.7%という実態にございます。
 次のページでございます。そのように国際展開はまだまだおくれておりますが、今後、アジア諸国が経済発展をさらに実現していくのではないかという中で、環境面においては、アジア諸国自らの発展のためにもこれからどんどん整備していくことになるのではないか。結果として環境ビジネスが拡大していくことも考えられますので、こうした点などに着目して国際展開をいかに図るかという視点も大事ではないかということで、この表をお示ししております。
 そういうことを踏まえまして、3−4.環境分野の課題(例)として、@環境問題を解決していくために環境技術の開発・活用をさらに促進し、競争力をより強化していくにはいかなる方策が考えられるかという課題。
 Aといたしまして、日本の環境技術の優位性を発揮していくためにどうしたらいいかという観点で、環境問題への取組が各国で相違する中で、日本の優れた技術を活用して国際的に深刻になりつつある環境問題に積極的に対応していくために、各国が参加し得る国際的枠組みが必要ではないかとか、日本の環境技術を活かす国際標準を作るために、国際標準化活動を強化すべきではないかとか、アジアの諸外国に日本の知的財産が適切に保護されるよう、環境整備を諸外国に促すべきではないかといった論点が出てくるのではないかということでございます。
 最後に、ナノテクノロジー・材料分野でございます。
 総合科学技術会議でもはっきりと指摘されておりますけれども、材料分野を中心に、この分野の基礎・基盤研究は世界のトップレベルにあるのではないか。ただ、その成果を実用化につなげていく余地は、まだまだ大きいのではないかという問題提起を、そのまま科学技術会議の報告からいただいてきておりますけれども、これを強化すれば、皆様ご承知のとおり、4−2の表でございますけれども、材料技術は日本の産業競争力強化において極めて幅広い分野にわたっておりますものですから、この分野の有望なシーズを活用しまして産業応用、用途開発を積極的にやっていけば、幅広く日本の産業の強化につながるのではないかということでございます。
 とりわけ基礎研究の充実という観点で、共同研究の議論がこの分野では着目されておりまして、資料4−3でございますけれども、左の表は、共同研究の実施状況、件数ベースでナノ分野というのは近年の伸び方は非常に大きい。ただ、絶対額、絶対件数の絶対ベースで見ますと1位ではないわけですけれども、相当成果を上げてきている分野でもあることを示しております。
 4−4、そういったことを踏まえまして、検討課題の例としまして、@トップクラスの基礎研究の成果を実用化につなげるため、技術移転の促進が必要ではないか。また、用途開発を促進して、その用途に関する知財権を確保していくことが必要ではないかという観点で、ニーズとシーズのマッチング向上策のあり方、用途特許の取得の促進のためどういう施策が考えられるか。
 また、Aでございますけれども、共同研究によって生ずる知財に関する戦略の検討、例えば大学と企業の知財の権利関係のあり方などが一つの議論のポイントになるのかなということで、提示させていただいております。
 以上、駆け足で資料7をご紹介させていただきました。
 次に、先ほどちょっと触れましたが、パブコメでどういう議論が出てきているか資料8でご説明させていただきます。
 本年7月20日から8月10日まで、分野別の知財戦略の策定に関する検討課題について意見を募集いたしました。全文はこの資料の後ろの方に掲げてございますけれども、時間の関係もありますので、恐縮ですが、意見の概要ということで、出された項目だけご紹介させていただきます。
 まず、ライフサイエンス分野でございます。
 ○を中心に追っていきますけれども、医療技術関連方法発明の保護に関してのもの、また、リサーチツール特許に関するもの、基本特許の保護・活用のあり方、特に国際的な権利化を含む基本特許の保護・活用のあり方や、基本特許利用促進のためのライセンスシステムの構築。また、国際ハーモということで、審査の国際ハーモを推進すべきだというご意見。次のページでございますけれども、特許権の存続期間延長制度のあり方、食品等の新規用途発明に関する特許保護、以上がライフサイエンス分野における主なご意見でございます。
 次に、情報通信分野でございますけれども、権利保護のあり方として、デジタル化、ネットワーク化時代における著作権保護の実効性を確保すべきであるとか、パテントトロールを含めたライセンス活動など権利活用のあり方について、また、国際標準化を考慮した知的財産戦略の策定など、国際標準化問題でございます。
 環境分野でございますけれども、我が国の先進的環境技術の国際標準化ということで、国際標準化に関するご意見は、4分野横断的に結構多かったと思います。
 また、ナノの分野におきましては、独立行政法人等の成果の扱いを含む特許とノウハウの切り分け、大学や独法の特許権の利用促進、国際標準化などに取り組むべきというご意見をいただきました。
 4分野以外、横断的なものといたしましては、PCTルートの出願については、日米欧3極で互いに承認する国際認証の仕組みの導入を検討すべきであるといったご意見をいただきました。

○相澤会長 ただいま説明いただいたことにつきましては、後ほど皆様のご意見を伺わせていただきます。
 その前に、今後の調査・検討の進め方についてお諮りしたいと思います。
 そのことにつきまして、事務局から説明願います。

○松村事務局次長 資料9−1をごらんください。
 ただいま資料7と8をご説明させていただきましたが、それぞれの分野、大変奥が深くて、この際、そういった個別分野の詳細かつ専門的な調査を行っていただくために、4分野それぞれにプロジェクトチームをつくっていただいたらどうかという設置案についての資料でございます。
 4つの分野それぞれにプロジェクトチームをつくっていただくわけですけれども、3.調査・検討体制の(1)プロジェクトチームは専門調査会会長が指名する専門調査会の委員及び外部有識者により構成し、主査は、専門調査会の委員のうちから、専門調査会会長が指名する。
 (2)参考人を招致することができる。
 (3)主査は、調査・検討の結果を専門調査会に報告するものとする。
 (4)主査が欠席する場合には、専門調査会会長がPTの構成員のうちから指名する。
 (5)PTにおける議論の内容は、公開することにより、法人等または個人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれもあるため、議事録及び資料は非公開とし、代わって議事要旨を公表することとする。
 このような運営要領の案を出させていただいております。
 続きまして、PTを含めた全体の進め方について案を出させていただいておりますので、資料9−2をごらんいただきたいと思います。
 まず、2.の@をごらんください。
 8月30日、専門調査会。これは本日の会合でございますけれども、ここでの議論も踏まえまして、プロジェクトチームにおいて9月、10月にかけて詳細な議論を行っていただきまして、第2回の専門調査会を10月30日に開いていただいて、各主査からPTでの調査・検討結果のご報告をいただく。それを踏まえてご議論いただきまして、第3回、11月21日に専門調査会として、この4分野における検討結果を報告書として取りまとめていただければと思います。そして、12月あたりに開かれるでありましょう知的財産戦略本部に対しまして、この専門調査会の検討結果をご報告いただければと思います。
 先ほど議題のところでお諮りしました議題1についての審議・検討プロセスは年内で終わることにさせていただきまして、年明けからは議題2、その他の残された課題についてご議論いただければということで、1月中下旬、2月中下旬、この専門調査会でご議論いただければということでございます。
 その結果を知的財産戦略本部にご報告いただきまして、それを受けまして、知的財産戦略本部において推進計画2008の策定作業に入っていただくというような段取りを事務局としては考えております。
 資料9−3でございます。
 資料9−1でご紹介しましたプロジェクトチームにつきましては、勝手ながら、それぞれのPTの日程を組ませていただいておりますので、ごらんいただければと思います。
 簡単でございますが、資料9−1から3までご紹介させていただきました。

○相澤会長 ただいまのような形でプロジェクトチームを設置して進めていくということで、スケジュールももうきちっと定められておりますので、今日はむしろ皆様にこれをご了承いただくという形にさせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○相澤会長 それでは、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 早速で恐縮でございますが、そのプロジェクトチームについては、資料10にございますような構成でそれぞれの委員をぜひお願いしたいと思います。それから、それぞれのプロジェクトチームの主査についても、このような形でご了承いただければと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、大変ハードなスケジュールでございますけれども、よろしくお願い申し上げます。
 このような形でプロジェクトチームが構成できましたので、これからは、先ほど説明のありました内容をもとにして自由討議に入りたいと思います。
 本日は初回でもございますので、本専門調査会の検討課題について、各委員の皆様から順次ご意見を賜りたいと思います。
 恐縮でございますが、まず、今回プロジェクトチームの主査をお願いしております加藤委員よりご意見をいただければと思うんですが、よろしゅうございましょうか。

○加藤委員 全般的なことでよろしゅうございますか。

○相澤会長 どうぞ。

○加藤委員 知財戦略本部では、この数年間にわたっていろいろな活動をなさってきて、すばらしい成果を出されていると思います。特に、日本の特許知財制度をさらに進めるという意味で、いろいろな制度が新たにつくられました。今やいろいろな分野で、諸外国に比しても恐らく日本が一番進んでいるのではないかと思えます。我々実務の人間から見ても、司法制度を含めて、非常に諸外国に誇れる制度になってきたのではないかと思います。これもここにいらっしゃる方々初め多くの方々のご努力の結果だと思います。
 今回、新しくこの専門調査会をスタートされるに当たって、2つの議題ということで先ほど事務局からもご紹介があったわけですけれども、過去数年間の努力でこうして制度の枠が今、できましたけれども、さらに分野別に細かい検討をすること、同時に国際的な視野で検討するという2つです。日本だけがいい制度をつくってもだめである、諸外国を含めてボトムアップして行くことが必要であり、これは我々の経済活動と同じく、知財は非常にグローバルなものであり、グローバルにやるべきであるということです。
 同時に、今回こういう検討をしていただくに当たって、特に4つの重点分野を検討するということは、1つには、今、つくった基本の仕組みをさらに発展して、新しい方向性、次の時代への方向性を考える時期に来ているとも言えるのではないかと思います。そこで、3つの点を指摘したいと思います。
 私は、富士通におりまして普段は情報通信の分野に携わっているわけでございます。ご承知のとおり、この分野は非常に技術の進歩が目覚ましい。先ほどソフトウェアがさらに重要な役割を果たすというご紹介がございまして、SaaSというお話がありました。ソフトウェアがサービスとして使われる、ソフトウェア・アズ・ア・サービス─SaaSですね。このようなことがどんどん行われていって、ソフトウェアを1つの製品として考えるのではなくて、サービスが世の中の主体になっていく。インターネット、ウェブサービスといった新たな技術が出てくる。こういう時代に知財をどうするかは、我々に課された次の大きな課題だと思っております。
 2つ目に、先ほどグローバルな活動と申し上げましたけれども、グローバルに見ても、やはり日本が置かれている立場はこれからますます変わっていく。この数年間、日本の制度をつくり上げていくに当たって、特に欧米を中心とした諸外国との関係をいろいろ見て、それに必要なものは追いつき、制度を進めてきたということがあると思いますが、これから、ものづくりの世界においてもアジア諸国の台頭はもう目覚ましいものがありますし、分野においてはかなり我々は追いつかれ、かつ追い抜かされているものがあるわけです。
 そういう中で、大きなグローバルのパラダイムシフトというのは必ず起こりつつあるし、今、我々が考えなければいけないことは、今から1年2年とか現実の問題だけではなくて、10年とか50年先を見越して、本当に日本が、いや、これは日本だけではなくて世界がどういう方向に進むべきかということを、グローバルの視点でもう一度考えないといけないのではないかと思います。
 3つ目、これは若干私見が強く入りますけれども、我々の社会におけるプレーヤーは、どんどん変わっていくといいますか、広がっていくということが言えると思います。今まで知財に携わる人間というのは、専門の研究者であったり技術者であったりということが多かったわけですけれども、これからは、すべての人類がいろいろな創造的な活動に入り込んでいく。21世紀はだれもが参加する社会になっていくのではないか。そういう見地に立ちますと、みんなが世の中をよくしていく、イノベーションを促進していくような仕組み、その中で知財というものをもう一度考え直さなければいけない時代が来るかもしれない。
 先ほどからオープンソースのお話ですとか標準化の話が出ています。これはパブリック・コメントでもそういう要請が強かったということですけれども、標準化の見地でみると、どうやってその技術をつくるか、それをどうやってみんなが使えるようにしていくかというところから、開発、発明というものがなされる訳ですね。そういう世の中の流れに応じて、かつそれに合った知財をつくっていくことが非常に重要であるということです。
 それから、特許の制度だけを見ても、今、アメリカなどを中心として、特許制度の中の、例えば、公知例を見つける活動をみんなで力を合わせてやっていこうではないか、審査官だけではなくてコミュニティーのみんなでやっていこうではないかということをおっしゃる方々もいる。これはまだまだ小さな運動でしょうけれども、ひょっとすると、将来は知財の制度自身もみんなでつくろうという時代になっていくかもしれない。
 いろいろ大風呂敷を広げるようなことを申し上げましたけれども、今、申し上げた3つの視点からだけ見ても、このすばらしい場を通じて、これからもっと大きな方向性を議論することを、ぜひお願いしたいと思います。

○相澤会長 大変重要なご指摘をいただきました。
 それでは、私からお声をかけますが、こちらから順にお願いいたします。

○岡内委員 とにかく零細企業でございまして、それがトップバッターとして申し上げるのはまことに申しわけありませんが順番ということで、申し上げます。
 委員の皆さまの業務を知らない方はほとんどいらっしゃらないと思いますけれども、私どもの共立理化学研究所、何をやっている会社かほとんどわからないと思いますので、申しわけありませんが、業務の内容だけご説明させていただきたいと思います。
 1952年の創業以来、水質の簡易分析の研究開発及び製造、販売をいたしております。簡易分析とは何ぞやということになりますと、字のごとく、だれでもどこでもできる化学分析を総称して言っております。一番知名度の高いものといたしますと、リトマス試験紙というのがございます。現実には、今はもう教育以外ではほとんど使っておりません。ただ、現場で酸性かアルカリ性か、あるいはいいか悪いかという判断の例によく使われておりまして、私どもでは現代版リトマス試験紙のようなものをつくっております。
 実は色で見る方法でございまして、色の変化及び濃度で調べたいものが水の中にどのぐらい入っているかということですが、この基本原理は、もう60年から古くなると100年前のものでございまして、原理そのものは、もう周知の事実。とても知財等入り込む余地がございません。それをどうやって知財化していくかということは大変難しくて、現実に複雑な試薬の調合、いわゆる製造特許は取らない、これはすべて公開しないという方法で、ノウハウとしてしまっております。
 ただ、目に見えるもの、商標、意匠登録、こういったことはやっておりますので、意識がないわけではございません。その点に関しては、私ども、これからも勉強していかなければならないと思っております。
 以上は自己紹介的な会社の説明ですけれども、今回もこの中で、本当の中小企業の親父といいますか、中小といいましても私どもは「小」、従業員50名足らず、売り上げは年間で7億円をやっと超えたところでございます。その現役の中小企業の親父が中小企業を代表してというか、代表まではなれませんけれども、そういった意味で意見を言わせていただければ非常にありがたいと思います。
 中小企業において特許を取る、知財を取るのは大変難しく、費用1つ、また、裁判になったときなど非常に厳しい状態でございまして、とにかく製造業の従業員の7割が中小企業に属しているといいながらも、本当の意味での基礎研究をされているところは少ないし、いわゆる資力も材料も何もございません。そういった中でぜひご協力をいただきたいのと、もう一つは、そういう人たちがあってこそ企業の裾野があるのではないか。その裾野をおろそかにしてはトップもいかないのではないかと思いますので、その点は、何かの折にちょっと言わせていただきたいと思います。
 もう一つ、私どもは分析の仕事をしておりまして、いわゆる環境問題におきましては日本の分析機器は非常に進んでおります。それが発展途上国にも行っているのですが、現実には、器械が行っているだけでだれも人がついておりません。ほとんどの供給品がビニールの袋をかぶって死んでしまっているということで、機材の開発とともに、日本の技術を世界に広めるためには人も教育していかなければならないのではないかと思っております。この2点を提案という形で、今後、討論していただければ非常にありがたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○佐藤委員 弁理士の佐藤でございます。3点ばかり申し上げたいと思います。
 1点目は、知的財産推進計画は創造、保護、活用という形の3分野で構成されていますので、3分野別に今回のこの専門調査会のテーマについてコメントさせていただこうと思います。
 まず、保護分野に関しましては3つのポイントがあると思います。やはり保護対象の拡大を図らない限り、新しい技術のイノベーションは大きく変化しないのではないかと思っています。
 それは、例えばライフサイエンスの問題に関しましても、結局、最近の受理状況を見ますと、先ほどの分野別の策定に向けての資料で、日本の医療メーカーの出願件数が少ないことが相対的に表現されていましたけれども、歴年別に見ましても、最近、医療メーカーの特許出願件数が減ってきている。これは今後とも医療メーカーの開発努力に期待したいところですけれども、やはり安全性とかいろいろな問題があって、新しい技術を生み出すという環境がなかなか難しい。そういう意味では、もっと医療分野における保護対象を拡大することが、医療産業を活性化するため、競争力を持たせるためには必要であろうと思っております。
 この保護対象は何で決まっているかというと、法律でも何でもなくて、実際は運用または審査基準で決まっております。今までは、こういう審査基準は非常に実務的な問題として、また、法律的な問題として扱われてきているんですが、実はこれは産業政策上、非常に大きな影響を与えていると私は思っております。そういう意味で、保護対象、さらにこれをサポートする上での明細書の記載要件、どこまでクレームを認めるのか、サポート要件をどこまで認めるのか、これによって保護される発明が非常に限定されます。そういう意味では、その点に関して、実務的な観点だけではなくて産業政策的に、どういうところまでならば許すのかというような見方をすべきではないかと思っています。
 もう一点は、最終的に特許になるかどうかは進歩性の問題であります。進歩性というのは、まず分野別に、基本的には考え方が違ってしかるべきだと私は考えております。そういう意味では、この保護4分野において、政策的に考えて進歩性の判断というのはどうあるべきかということを、もう一度見直してもいいのではないかと思っています。
 これが保護分野についての私のコメントでございます。
 それから、創造、活用分野でございます。
 創造、活用分野に関しましては、創造されたものが実際に産業上、市場において生かされる道筋をつなぐための仕組みが必要なのではないか。そういう意味で、今まで産学連携ということで、大学を中心として創造分野の保護強化が進められてきています。しかし、それが実際に産業界と連携して、実際に産業上利用・活用し、かつ世界にそれを発信していく、また利用していくという道筋のところの仕組み、また、それを回していくための人材については、まだ十分ではないと思っております。
 そういう意味では、これらも分野によってやはり違う話ですので、4分野別にそういう問題をしっかりとご検討いただいたらいかがかと思っています。
 最後に、今回の4分野のうち環境技術に関しまして、私、多少かかわっておりますので、この点についてコメントしたいと思います。
 環境技術というのは、確かに非常に重要なことは皆さんわかっております。発展途上国もアジアの国もみんな知っています。しかし、これは儲かる技術ではないので、どうしても後回しになってしまいます。したがって、産業環境技術の特許出願をしろと言っても、アジアにおいてその産業的基盤が育つ道筋がない限り、特許を出願しても意味がないという話になってしまいかねないと思います。
 そういう意味では、日本の環境技術を競争力を持ってアジアに出していくためには、やはり国として環境技術をアジアに移転していくだけの経済的な支援をして、産業的な道筋をつくる、それがあって初めて我が国の環境技術が特許化戦略する意味もあるし、また、実際にビジネスとして展開していく道筋も出てくるのではないかと思います。
 そういう意味で、環境技術を今後、技術移転し、日本の国際競争力のツールにするのであれば、やはり経済的な国の支援がないと、実際にはアジアにおける環境技術の移転、それによって日本の国際競争力を増すというのはちょっと難しいのではないかと思っております。

○妹尾委員 妹尾でございます。大きく分けて2つの話をさせていただきたいと思います。1つは、技術経営的な意味、もう一つは知財・人材育成ということです。
 まず大きな一つめの技術経営的な観点からは、今、私はこのお話を伺いながら、4つの"終焉"を思い起こしました。1つは、先ほど加藤委員のお話にありましたけれども、ものづくりだけでは成立しなくなってきた時代だと。ものづくりだけの時代が終焉し、ものづくりとサービスの連携が始まってきた、こういうことだと思います。
 先ほどお話のあったSaaS─ソフトウェア・アズ・ア・サービスだとか、あるいはiPodは実はiPodだけではなくて、iTunesとのカップリングで世界を制覇した、そういったようなことですね。すなわち、ものづくりとサービスの関係が多様化して、代替関係、補完関係、そして相乗関係へ向かってきた。この認識をしないと、ものづくりだけの競争力だとか、あるいは知財戦略ということがなかなか難しくなるのではないかと思います。これが終焉の1つ目です。
 2つ目は、恐らくオープンとクローズ、それからスタンダライゼーションとプロプラエティ、すなわち標準化だとか独自技術、さらにオープン性とクローズ性、これがそれぞれ二項対立していた時代ではなくなって、両者がスパイラルに絡み合うようになってきた。特に最近アメリカではIBMが非常にポリシーを明確に打ち出したのに加えて、つい先日、ヨーロッパが方針をウェブサイトに載せるようになった、こういう時代になってきたのです。すなわち、一連の二項対立的な議論も、もう終焉しなくてはいけないのではないかというのが2点目です。
 第3点は、実は今日の資料の中にも「ニーズとシーズのマッチング」という言葉についてです。喧嘩を売るわけではありませんが、もうそろそろそれもやめたら良いのではないかと思います。なぜならば、「ニーズとシーズのマッチング」と言うときに、我々には、ニーズもシーズも明確であるという世界観が前提にあり、マッチングというのは、その明確なもの同士を出会わせるということです。しかし、シーズははっきりしていても実はニーズがはっきりしていないというのが今の世の中ですから、むしろシーズを起点にして、あるいはそれをきっかけにして、いかにニーズを開発するか、つまり技術開発よりもむしろニーズ開発に発想を変えなければいけないのではないかと思います。
 私はよく、役員研修だとか講演会で「ニーズという言葉を何とお訳しになりますか」と聞きます。9割方は「需要」だとか「欲求」だとか「要望」と訳しますけれども、経営で言いますと、ニーズは「不足」とか「欠乏」と訳します。不足とか欠乏が目に見える時代でないときには、どうやってシーズを使ってニーズ開発をするか、ニーズを喚起するか、恐らくこういうふうに変わってくるのだと思いますので、これが恐らく従来型の「ニーズとシーズ」の議論の終焉ではないかと思うわけです。
 ところが4番目、なかなか終焉しないのが知財の問題ではないかと思うわけです。経済は"グローバル化"しているにもかかわらず、知財はいまだに"インターナショナル"ということですね。すなわちナショナルを前提にした制度の枠組みで、どうやってインター、一緒にやろうかという話になっている。経済が一方ではシームレス、ボーダレス、ナショナルレスで動いてきているときに、ここの問題をどう超えるか、この状態の終焉を始めなければならない時期なのかどうかということが、恐らく大きなご議論になるのではないかと思います。
 これが大きく分けて、まず一つめの技術経営上の問題だと思います。
 2つ目は、私、ここの会でお手伝いをしています知財・人材育成についてですが、これについては3点のことを考えました。
 1点目は、今回の分野別の競争力ということなんですが、プロジェクトチームの方には、ぜひ人材育成についても触れていただきたい。もちろんメインではないでしょうけれども、ぜひその辺で皆さんの問題提起をいただければと思います。特に分野横断的に共通なことと、分野ごとに特殊なこと、これをかなりはっきり整理していただけると大変嬉しいことです。
 2点目は、知財の分野で人材について、できれば知財の"コア人材"のみならず、"周辺隣接人材"としてどんな人が必要なのかということにもプロジェクトチームで触れていただくと、大変嬉しくと思います。
 例えば、私もナノ人材育成について、経済産業省の調査レポートをまとめたことがございまして、そのときも、例えば電子顕微鏡のオペレーターの問題だとか、あるいは技術のテクニシャンの問題等が必ず付随して出てきます。直接知財のコアではありませんが、競争力強化に際しては知財と絡んで必ず必要になる人たちなので、そういうところを指摘していただければと思います。
 同時に、ちょっとネガティブなことを申し上げるようですが、リスクを指摘する人たちのことも考えていただきたいと思います。というのは、この4分野はそれぞれ先端技術であるがゆえに、一歩間違うと非常に危険なものです。ナノテクにしてもナノのリスクが言われていますし、あるいはロボットにしても、いつロボットが爆弾持って走り回るかといったことも懸念されるわけです。あるいはライフサイエンス、1つ間違えればとんでもないことになるわけで、競争力というとついつい"イケイケ"になりますが、同時にその辺のリスクをしっかり指摘するような、あるいはそれが知財と絡むようなことを考えていただければと思います。
 3点目は、この4分野は知財的に見ると非常におもしろいなと思います。例えば、先ほど次長のご説明にあったように、ライフサイエンスは「1製品1特許」的なところがありますし、対称的に情報通信は「1製品多特許」、すなわち、特許を扱うときに単一特許の扱い方と特許群の扱い方は、当然のことながら経営戦略的には非常に違うものを必要とします。それから、ナノテクは、どちらかというとシーズドリブン(シーズ起動型)ですよね。シーズがもとになって、どうやってスポークモデルで用途開発するか、こういう話になります。環境は、むしろイシュードリブン(論点起動型)といいますか、「このような問題がある」というところから発生します。
 そういう意味で、非常に対比的な4分野でありますので、この対比的な4分野に対して、昨年度までやっていましたサイクルの考え方、先ほど佐藤委員がおっしゃったのと同じで、創造、保護・権利化、そして活用、これをマトリクスにしていただいて、それぞれどのような人材が配置されるか、この辺を少し見ていただくと、あるいは指摘ないしは指摘のリソースみたいなものを出していただくと、我々知財人材育成にかかわっている者としては大変参考になってありがたいと思います。
 最後に、時間がかかって申しわけありませんが、余談を1つ言い足します。昨年度のサイクル調査会が終わったあと、3月に韓国の特許庁に呼ばれまして、韓国がいよいよ知財人材育成に本腰を入れるので知見が欲しいということで、シンポジウム、フォーラムが開かれました。私が基調講演をやりまして、それ以外に日本の関係者が何人も行って韓国の人たちと交流しました。すると、韓国の方々が、日本がこの調査会を通じて6万人を12万人にするとした計画を、実は本気で受け取っていらっしゃるのだとわかりました。「本当に12万人を政府のお金で育成するんだ」という大変なる誤解を受けまして、私の基調講演の最初の一言は何だったかというと、「それは冗談です」とは申し上げませんでしたけれども(笑)、「我々が強くそっちの方向に行こうねという方向性の話です」と申し上げました。
 韓国を初めとして、やはり日本の知財戦略が相当注目されているのですが、これが額面どおりに受け取られて頑張ってしまわれると、我々も大変だなと思いました。
 何が言いたいかというと、今回の競争力強化専門調査会では、いわゆる分野別とかそういう話が主になりますけれども、ぜひ知財人材育成もお忘れなきようにというお願いをして、私のコメントにさせていただきたいと思います。

○辻村委員 辻村でございます。妹尾委員の話を聞いたら、もうそれ以外ないかなと思っているんですけれども、確かに人材育成は、企業においても非常に重要なポイントだと認識しております。
 特に、私はライフサイエンス分野というところで入ってはいるんですけれども、サントリーという会社は皆さんご存じのように酒の会社で、やっと飲料に展開してきて、食品工業という、ライフサイエンスの先ほどのデータから見たら、研究開発投資が医薬に比べて非常に少ない、いわゆるローテクの産業の部分だったんですけれども、そのお酒とか飲料、食品のカテゴリーにおいても、10年ぐらい前から知財の重要性がすごく認識されつつあります。
 今まで酒づくりなんていうのは「ノウハウの固まりです」というところが、先ほど岡内委員からもありましたけれども、ノウハウをどこまで開示するのかは戦略的に非常に難しい問題でして、今までは「ノウハウはノウハウだ」ということで、製法特許など出しても余り意味がないという風潮でしたけれども、昨今、やはりそれは知財化すべきであるという流れになってきているのが事実であります。
 そういうところで産学連携も実は非常に重要で、今回のテーマの1つかと思いますが、新たな知財を生み出すというところで、トランスレーショナルなリサーチといいますか、そういうものもやはりやっていかなければいかんというところがあります。これも企業に例えると、企業のR&D戦略というのが実はまさにそのとおりでありまして、従来の、いわゆるリニアモデルみたいな形で、基礎研究があって開発があって、生産があって商品として上市するという、いわゆるリニアなモデル、線型モデルはかなり古いということが十何年前から言われ始めて、やはりR&Dの戦略は経営戦略とリンクすべきであると言われています。
 知財においても産学連携において、まさにそういうところが実はあるだろうなと思います。もうちょっと出口を意識した形で大学とか研究機関とトランスレーショナルなリレーションをつくっていくということは、必要なポイントではと思っております。ただし、それはやり過ぎると、いわゆる基盤的な技術というところが枯れてくるという大きな課題も、実は見えているのではないかというのは、個人的な意見ですけれども、あります。いわゆる大学等での基礎研究という部分が本当にどれだけ今、まさに活発に行われているのだろうかというところ、どういう施策でそれをもっと活発化するかというところが一つの大きな課題かなと私はとらえております。
 あと食品の分野でいきますと、機能性食品とか特定保健食品という、いわゆる医薬ではなく、あくまでも食品ですけれども、機能をうたうような食品、機能を持っているような食品が出てきたわけでございまして、その用途特許とか効能特許というところをどう考えるのか、医薬ではないんですけれども、「効能があるよ」という、そのときの特許ですね、メカニズムと用途という点では、今のところ、メカニズムが同じであれば用途が幾つかあってもなかなか認められがたいという状況がある中で、どう考えるか。非常にマイナーな点ですけれども、そういうところも実はあると思っております。
 それから、私ども青いバラという遺伝子組み換え植物を初めて開発いたしまして、今年末ぐらいには世の中に出せるかなと思っているんですけれども、今後、遺伝子組み換えの植物というのは恐らくもっともっと出てくるだろうと思います。第1号で我々がカーネーションをやりましたけれども、もっと出てくるだろうと思います。恐らくその用途は環境の浄化でありますとか、多分、いろいろなジャンルに遺伝子組み換えの植物は適用されるだろう。そのときに、こういう遺伝子組み換え植物というものは、カルタヘナの議定書等で環境への影響をどう考慮するかという試験をかなり要求されるんですけれども、その期間が非常に長くかかっているところが、具体的事例ですが、ありまして、医薬の分野では存続期間延長ということもありますが、そのような新しい植物をつくったときに、その特許の期間をどう考えるかということは、これからどんどん出てくる課題ではあるかなと思っております。そういうふうなところも、少し検討していけたらいいかなと考えております。

○中村委員 既にたくさんの貴重なコメントを出していただいておりますので、私は現在、企業の中で、企業が持続的に発展していく中で知財に期待される貢献がますます大きくなっている中で感じておりますことを3点挙げさせていただきたいと思います。
 まず、私どもを取り巻く知財の環境という意味で、大きく相手にしているものが3つに分かれるのではないかと考えております。1つは、本来の知的財産権という趣旨を正しく理解し、それを企業経営にいかにうまく活用していくか、企業間の切磋琢磨といいますか、技術の発展のために知財をうまく活用しようと考えておられる方々でございます。2つ目は、こうした知財を悪用と申しましょうか、そういった形でお金を稼ぐということであったり、そういったことを目論んでいる人々がいる。3つ目は、知財ということ自体を無視した、フリーライドといいましょうか、模倣品であったり。このように知財に対する考え方が3つに大別される人々をそれぞれ相手にしながら、日々戦っている状況であると思います。
 そういう中で、特に1番目の、本来知財をうまく活用してという中で、先ほどの資料の中でもいろいろ挙げていただいておりますが、やはり技術の国際標準化、それに伴うパテントプールの重要性は既にご指摘いただいているとおりでございますので、あえて詳細は申し上げませんけれども、こういった標準化の取組、我々の技術が標準化されるということがあって初めて知財も生きてくるわけでございますので、まさしく標準化の取組と知財の活用というのは車の両輪であると強く感じております。
 さらに、あえて申し上げるとすれば、こういった標準化によってパテントプールを行い、使い合えるようにするという環境は、あくまで事業にとっては、その事業にプレイヤーとして参画するための必要条件にすぎないわけでございまして、そこで競争に勝っていくためにはプラスアルファが要るという意味では、企業それぞれの差別化技術をもって競争に勝っていく、そういった技術開発と、それに伴う知財があって初めて必要十分条件になるのではないかと考えております。
 2つ目には、知財を悪用するという点で、私ども、今、一番典型的に苦労しているのがパテントトロールでございます。既にこれも情報通信分野の中で出ておりましたけれども、最近特に顕著な傾向といたしまして、ファブレス、いわゆるものづくりを伴わない企業もしくは個人が、特にデバイスに関する特許、知財を中心に、本来であれば、例えば半導体の特許であれば半導体メーカーに催告をするなりということが、最近は、そういったデバイスが組み込まれたセットもしくは最終の流通、こういったところに対して攻めてくるということで、内容によっては、いわば言いがかりに近いようなものも含めたかなり強引な手法でやってくる。そして最終的に、例えばアメリカなどの裁判で、企業側の裁判に対応する時間、人、もの、金、こういった過剰な負担の中で時間切れ、もしくは疲弊するために和解に持ち込むといったことで、産業界全体として、こういったパテントトロールの対策に非常に苦慮しているのではないかと考えております。
 さらには、こういったいわゆるパテントトロールを発端とするものが知財の係争にとどまらず、こういったリスクを回避したいがために、いわゆる部品材料の購買契約において、セットメーカー側がデバイスメーカーに対して、本来であればデバイスにおいての第三者特許補償でいいものを、セットに巻き込まれたときすべての特許補償をするといった、デバイス供給側にとっては今まで以上に、非常に負担を強いられるような条件を突きつけられたり、もしくはセット側としては、そういうことがなくては安心してものづくりができない、こういう非常に不安定な状況を強いられております。これはとりもなおさず、適正な競争において解決すべき大きな課題の1つであると認識しております。
 そういう意味でも、本来の知的財産の精神、公開をして業界の発展をするという意味からも反するものであると思いますので、過剰な拘束はいけないと思いますけれども、こういった本来の目的ではないような知財の悪用と申しましょうか、乱用と申しましょうか、こういったものに対する対策が非常に大きな課題であると感じております。
 今は特許を中心に申し上げましたけれども、古くから商標のブローカーでありますとか、知的財産全体にかかわるところもございます。さらに最近は、そういったものを商号─社名に使って非常に紛らわしいことをやっているようなビジネスモデルもあり、いろいろなものにまたがった課題になってきていると認識しております。
 以上申し上げました2つが、今回、挙げていただきました当面の調査・検討課題の1番の分野別のところに大きくかかわるところかと思いますけれども、後半の国際的展開を中心とした競争力強化という点で、これまでも推進計画の中で取り上げていただきました模倣対策についても、ぜひ引き続き積極的な議論と内容、拡充ということを期待しております。
 こういった模倣品の生産国、流通拠点の中心が中国というようなことがございましたけれども、本物であろうが偽物であろうが、こういったものは今の商流においては世界中ボーダレスでございますので、あっという間に世界中に流通してしまう。特にこういったものがエンドユーザーに行く市場になればなるほど、知的財産権を保護するという制度が必ずしも整備されていないという、知財面では後発の国々が多うございますので、企業としては、製造元から流通経路、最終の市場まで追いかけて行く中で大変対応に苦慮する状況が続いております。
 そういう意味で、これまであくまで中国を中心とした模倣対策、もしくはそういった政府に対する働きかけといったことを官民挙げて、IIPPF等々でもやっていただいておりますけれども、これがさらに国・地域が拡大し、その中でグローバルに日本がリーダーシップをとることで、こういった模倣品の拡散を世界中の国々がハーモナイズして止めていくという取組に発展することを大きく期待しておりますし、最終的には、このような知財を無視する人々、−これは他責ではございません−、日本の国内にもまだまだ、消費者も含めてそういうものがあると思います。最終的には、やはりそういった知的財産権を尊重する意識を学校教育の段階から含めて、法律違反ということではなくて、自発的に自分の意識の中で知的財産権を尊重する意識を醸成する教育、こういったものも最終的には出てこようかと思います。

○中山委員 中山でございます。
 各論につきましてはプロジェクトチームで議論されると思いますので、私は総論的な話だけを申し上げたいと思います。
 知的財産戦略会議の戦略大綱からもう5年間、実は最初から関係しているのはもう私1人になってしまいましたけれども、この5年間の経過を見ておりますと、民間や役所やあちこちから要望があって、それをふるいにかけて戦略計画をつくるということになるわけですけれども、強い要求がありますと、どうしてもふるいに十分にかからない、要求を羅列するという傾向にあります。最近は、以前と比べると大分絞り込みがされておりますけれども、やはりどうしても羅列的な傾向にある。余りたくさん羅列されますと、戦略というものが見えてこないわけですね。細かいものばかりが散らばっていて、一体何が大事かが見えてこない。ですから私は、この戦略計画をつくるに当たっては、中心となるような戦略を練っていただきたいと思います。
 プロジェクトチームをあと2回やるだけですから、人的にも、あるいは時間的にもすべての論点を議論しつくすことは不可能です。したがって、たくさんの論点を述べても、本当に十分に練ってあるか疑わしいものも過去あったわけです。
 この戦略計画をつくりましても、戦略本部には実施能力はありませんから、各役所におろしていくわけですけれども、そこで、例えば文化審議会だとか産業構造審議会、工業所有権審議会あるいは関税外為等審議会におろしていってやるわけですけれども、そのほぼすべてに私、関係していますけれども、やっていますと、本当にこれは考えて書いたのかなと思われるようなところが少なくないわけであります。
 実際問題、全部の問題について深く考えることはとても不可能なわけです。これは戦略本部が悪いということではなく、先ほど言いましたように、時間的にも人的にもそれだけの余裕はないからです。したがって、そういう細かいところを突つくよりは、先ほど言いました大きな方針を考えてもらいたい。
 この戦略計画の大もとは知財立国ということなのですけれども、知財立国というのは、知財が栄えればいいという話ではないのです。知財を用いて産業とか文化の発展を図ることが目的なのです。ややもいたしますとプロパテントという言葉が先行いたしまして、例えば最近、裁判所に行くと特許が無効になってしまう場合が多いとか、原告の勝訴率が非常に低い、従って「裁判所はアンチパテントでけしからん」などという軽薄な議論を巷間耳にすることがあります。何が産業、文化の発展に本当に役に立つのか、その大もとについてやるのが、この戦略本部ではないかと考えております。

○相澤会長 大変重要なご指摘をいただきました。

○前田委員 大学の知的財産本部とかTLOの立場からお話しさせていただきたいと思います。
 皆さんご存じのように、知的財産本部整備事業が今年5年目になりまして、かなりの大学で特許を取ること、先生方が論文を出す前に知的財産本部に届け出て、特許になりそうなものは特許にするというような形がきちんとでき上がってきたと思います。東京医科歯科大学も、5年前に比べて、共同研究の件数や特許出願等、かなりいろいろなものを伸ばすことができました。
 ただ、ともすると特許を管理する場所、大学の先生から見ると、届け出なければいけない管理の場所といったイメージのある部署もあろうかと思います。研究者から上がってきた論文をそのまま弁理士事務所へ持っていけば、特許にすることはできます。ただ、研究者はピークデータを、すなわち最高の値を出したいわけですから、その周辺がどうなっているかよりも、とにかく一番いい値を探したいわけです。しかし、できるだけ広い範囲を取得し、それを産業界の方に使ってもらえそうな特許に仕上げるのが大学における特許戦略だと思います。企業は、知財部と研究者の両方が協力し、戦略があって、その方針のもとに研究をしています。新しい発明が出てきたときに研究者と知財の人とやりとりをして、「実施例はもっと増えませんか」「こちらの方はどうなんでしょう」という双方の工夫で最終的に特許に仕上がるわけです。しかし、大学では、私たちが「こういう研究をしてください」と先生にお願いすることは毛頭できません。ですからお任せ状態で特許が生まれてくる。かえって大学が特許を全く持たないで企業さんに全部書いていただいていたときの方がよかったのではないかというような意見も出る状況になろうかと思います。
 こうした中、医学系に特化した知財本部として東京医科歯科大学は知財本部を立ち上げさせていただいたんですけれども、医学系のためだけにある知財本部となりますと、よろず相談的に、結構先生からいろいろな相談を受けます。特許としてはまだまだ範囲が小さく、実施例が少なく不十分なものでも、それをもとに企業の方と共同研究、寄附講座を起こしたりする場合も少なくありません。また、特許を出す前から企業を見つけていろいろ展開することで、産業界へ貢献できそうな内容になることが多々あります。
 知財本部やTLOというのはもともと工学系の方から起こりました。総合大学や大きな大学には大抵も知財本部がありますが、医学系から見ると、よろず相談所というよりも、どちらかというと「届け出なければいけない場所」という存在になっているところが多いかと思います。ぜひ医学系のところに、近くに、相談をしてやりとりをしながらいい特許に仕上げるような知的財産本部・TLO組織があったらいいのかなという感じがしています。
 ライフサイエンス分野は、共同研究の件数が減ってきているような数字が先ほど出ておりましたけれども、平成15年と17年で医科歯科大を見てみますと、共同研究も受託研究も、金額も件数も2倍以上になっています。特許を出すことで、それを広報材料にして企業に持ちかけることで共同研究等が伸びていると思われます。企業の方と一緒に考えて広い範囲の特許にすることで、大学の技術が産業界に活かされれば良いわけです。先生は、特許というよりも研究の幅が広がることの方をより望まれていますから、そこでアイデアをいただいて、また研究につなげる、そのために私たちが存在すればいいのかなという感じがしています。来年以降、知財本部事業は、ハブ機関、地域連携、国際産学連携など大きな話しが出てくると思いますが、ライフサイエンス分野は、その専門の方たち用に、よろず相談所の知財部みたいなところが各々についていると、今よりも、ライフサイエンス・医療機器などいろいろな分野が産業界にもっともっと流れるようになるのではないかと思っています。
 さらに、目利きのような役目を果たせる人がただでさえ少ないと言われている中で、ライフサイエンス分野は特に少ないのが現状です。ですから東京医科歯科大では、大学院生やポスドクの方を評価担当技術員という名称でアルバイト雇用しまして、知財の教育をして、自分の得意な専門のところの特許検索をしてもらったり、特許マップをつくったり、展示会のときに説明員をやっていただいたりしています。OJTでいろいろ仕事をしながら、その方の専門に一番近いところを手助けしていただいて、私たちも何とか回しているという状況で、ある意味教育のような形もさせていただいています。
 それに加えて、文部科学省振興調整費で、私、知財のライフサイエンス分野の目利き養成のプログラムをやらせていただいていますが、そこでも海外へのインターンシップ、また東京医科歯科大学へのインターンシップ等をやらせていただいております。昨年は、10カ月医科歯科大へインターンシップで来ていた方が気に入ってくださって、この3月から職員になられて、即戦力で活躍していただいています。このように、なるべく若手の方を人材育成して、そのまま、それこそ人がいないと言われているライフサイエンス分野の橋渡し役になっていってもらえるといいのかなと思っています。
 現状では、医学系は、部局で判断とかいろいろな形で、知的財産本部で一括管理できていなかったり、また、単なる管理するだけの部署のような形になっているところが多いものですから、何とかライセンス、橋渡しする役目のために大学に私たちのような人間がいるべきなのではないかと思っています。
 最後に、この重要4分野、各プロジェクトチームで分かれて議論していくことはとても大事なことだと思いますけれども、DDSとか再生医療等、ナノテクのところで論じているものが即、医工連携といいますか、ライフサイエンスの方につながりますので、中山先生がおっしゃったように、2回でそこまで考えるのはとても難しいと思うんですけれども、横断的なものも含まれると嬉しいかなと思っています。

○相澤会長 確かに大学、知財の支援事業が今年度で終了するということもあり、大変重要な時に来ているかと思いますので、ただいま非常に具体的な声を聞かせていただきまして、反映できるように、こういうところでもご議論いただきたいと思います。

○三尾委員 弁護士の立場から少しお話しさせていただきたいと思います。
 まず、私が特に申し上げたいのは、今回、重点推進4分野ということで分野を特定されて、この分野で頑張っていこうと決定されたという事実が非常に重要ではないかという点です。これまで知財戦略本部で推進計画を進めてこられましたけれども、中山先生がおっしゃいましたが、同計画自体はどちらかというと総花的な印象もあったかなというような感想を持っておりました。今回、総合科学技術会議で相当期間検討された結果、この分野でいこうという4分野を決めていただきまして、これにポイントを絞る、しかもそれにお金をつけていこうというところが、私としては非常に期待しているところです。
 重点4分野の具体的な技術の内容や実際の業界の業務について私は弁護士ですので素人なのですが、この4分野は私も弁護士の仕事として関与している分野でもあり、非常に成熟しているというか、活性化している分野ではないかと考えます。
 例えばライフサイエンス分野では、医薬特許の案件がありますが、一つの特許権をめぐって争われていて、この分野では1つの特許が非常に大きな価値を持っているということを実感します。
 また、情報通信分野に関しましては、同分野に特有なところでこれはパテントプールに関するものがあります。この際に対象となる「標準」について検討いたしますが、パテントプールに有利な条件で入っていけるどうかということに関しましても、この「標準」が米国等の海外の標準であり、当方がその策定に全く関与していないか、もしくは非常に関与が薄い場合は、当該標準に関するパテントプールの検討ですので立場的に非常に弱いことは否めないわけですね。ですので、標準を日本が自らとるということが情報通信分野では非常に重要であることを実感いたします。
 また、環境分野ですけれども、これも非常に象徴的なんですが、環境にとって重要である基本特許で、それがピンポイントで環境に有用な特許だったものですから、非常に有利な条件で海外にライセンスすることが可能であったということで、この分野も、環境という日本が非常に優位に立っている分野において基本特許もしくは重要な特許を持っているという強みを目の当たりにしたといいますか、特許の価値が高ければこんなにライセンスがうまくいくんだなという感想を持ったというようなこともあります。これも環境分野の特徴ではないかと思います。
 ナノテクに関しましては、大学の先生とコンタクトできる機会がありまして、特に大学を中心に研究が進んでいるというようなイメージを持っております。
以上のとおりですので、この4分野につきましては、どれも非常に重要であると私は認識しております。この重要分野に関しまして、我々やプロジェクトチームの皆様で検討し、基本的な国の方針を立て、そこにお金をかける。そして、長期的な視野を持って国の戦略として推進していければと思います。
 ただ、これは、やはりすぐに効果を出すということは無理ではないかと思うんですね。アメリカもそうだと思いますが、ある程度長いスパンを持って、お金もかけ、人もかけて、国策としてその分野を育てるというような腰を据えた取組が必要ではないかと思います。そういう形で、この戦略本部のPTを中心として施策を検討し、実行していくことできれば私は非常にいいのではないかと考える次第です。
 最後に、私が今後、注力すべきと思う観点について簡単に述べたいと思うんですけれども、まず1つは、先ほど申し上げましたように、国際標準を取ることが重要であるということです。 あと、前田先生もお話しされていたかと思いますけれども、大学と知財本部やTLOの連携、さらに産業界との連携の推進です。私の感想としては、これがあまりうまく進んでいないのではないかということです。何が問題なのかいうと、これは個人的な感想なんですけれども、大学の先生方の意識ではないかと思うんですね。私の個人的な見解なので間違っているかもしれませんけれども、大学の先生、研究者の方々は、やはり研究が第一であって、それを使って儲けようとか、産業的にどうこうというところは余り重視されていないのではないかと思うんですね。大学の先生や知財本部の方々の前でお話ししたこともあったりして、ディスカッションしたこともあるですが、やはり大学の本旨は教育であったり研究であって、それが大事である、商品化をしたり産学連携をするのはその副次的なものであるというような意識が強いように思います。これはある意味当然の意識であり、またあまり大学の先生方が利益や商品化等の点ばかり考え始めれば、いい研究や教育ができなくなるということですから、この点はバランスは難しいと思いますが、国としてできることを考えますに、教育行政の側面から何らかの施策を検討できないかというのが私の個人的な感想です。
以上、国策として重点分野を推進していただくということ、国際標準を取るように国も力を貸していただくということ、大学と産学連携については教育行政的な側面からの施策を検討していただくということが必要なのではないだろうかと思う次第です。

○相澤会長 ありがとうございました。
 重点推進4分野という形で、そのそれぞれの分野について知財戦略を考えていくわけですが、これはあくまでも科学技術基本計画における分野指定であります。しかもこれは第2期の科学技術基本計画のときに、もう設定されているようなものでありまして、科学技術の進展が非常に早いわけですね。既にこの枠組み自体が問題でもあるという側面が出てきております。
 それで、来年度の概算要求に、これからどんどん出てくるかと思いますが、総合科学技術会議として指定しております方針が、社会還元促進プロジェクトというものを形成しようと。これは社会還元を加速化するということでありまして、単純に1つの分野で仕上がるものでもないということもありますので、分野横断的なもの、あるいは分野複合的なもの、そういったものがいろいろ出てきているんですね。ですから知財の視点も、その辺は柔軟に見ていただければと思います。
 先ほど前田委員からも、例えばナノテクノロジーとメディカルといったことがありましたが、そういうことが起こっているということを、このPTでも指摘していただくことが非常に重要ではないかと思います。
 そこで、資料7の2ページですが、知財の観点から見た場合の分野が右側であって、左側の大分類が、重点推進4分野になっております。この対応をわかりやすく分類しただけでありまして、個々に見ていただくと、これは、いろいろ修正しなければいけないことも出てくるかと思いますので、こういうものをリジットに見ないで検討していただくことが重要ではないかと思います。これはPTでの検討のときに、ぜひお願いしたいと思います。
 ただいま皆様からご意見いただきましたが、欠席されている委員の方々からもご意見をいただいております。時間も限られておりますので、簡単に事務局からご紹介いただければと思います。

○松村事務局次長 資料11−1から5まで、簡単に紹介させていただきます。
 まず、資料11−1、河内委員からのご意見です。
 1.をごらんいただきますと全般として、中山委員からのご指摘と同趣旨だと思いますが、推進計画2007、詳細は記載されているけれども、戦略の一貫性が見えない。一貫性ある推進計画を大きな戦略のもとでつくるべきであるというご意見。
 (2)でございますけれども、分野別推進戦略が科学技術基本計画で策定されたけれども、研究成果の知的財産化について互いの戦略を共有し、議論を行うことが重要であるということ。
 2.重点課題として、大学、公的研究機関の知財体制の強化及びそれへの支援ということで、知財本部、TLOとの一本化、一体化。例えば産学連携のコーディネーションを行う機能も含めるのがよいのではないかというご指摘がございます。
 A知財に関するノウハウ・ノレッジが継承される体制整備ということで、知財本部、例えば内部部隊としての専門職員の組織強化が必要ではないか、ノウハウ・ノレッジの確実な蓄積・継承が行われる体制が必要ではないかということが指摘されております。
 2枚目でございますけれども、前田委員からもご意見ございましたように、大学院生の知的財産意識の醸成による研究意識の向上と、担当教員とのコミュニケーションの活性化を図る場にするようなことができたらといったご指摘がございます。
 (2)でございますけれども、大学等の海外特許出願。積極的に出願して、国際的に権利を取得することが大事だということ。ただ、最後にご指摘ございますけれども、海外出願費用については、JST─科学技術振興機構により支援が行われ、支援件数が増えているけれども、制度改善を求めている声もあるというご指摘がございます。
 次に、資料11−2、JFEスチール、関田委員のご意見でございます。
 3つ目のパラグラフでございますけれども、日本の鉄鋼メーカーは、ハイグレードの商品群や品質の高さ、それらを実現する各プロセスにおける高い技術力を有して、競争力の源泉となっているということでございますけれども、下から2つ目のパラグラフ、今後、世界的に見てCO2排出抑制、環境汚染物質抑制が注目される中、次の点がその課題ではないかということで、環境にかかわる規制や枠組み等、土俵が国や地域によって共通でないこと、一方で、環境技術は多岐にわたる技術であるため、その知財権を世界的に十分確保し切れていないといった課題、こういったことが必ずしも競争力の格差につながっていない実情もあるのではないかというご指摘でございます。
 駆け足で恐縮でございますが、次に資料11−3、キャノンの田中委員のご意見でございます。
 第1パラグラフの2行目からでございますけれども、4分野の知財戦略の策定においては、我が国の国際産業競争力強化に必要な制度・ルール・仕組み等を国際的に構築する目的で、WIPOなどの国際機関のしかるべき場に我が国の案を提出し、我が国主導で国際ハーモを図るなど、国際ルール化を図るといった戦略の視点が必要ではないか。
 この文章の最後、「今回は、」というパラグラフの2行目でございますけれども、上記の点に鑑みた認識の共通化を前提として論点を絞り、議論をフォーカスさせ、かつ方向性を見極めつつ議論の展開を図れればということが大前提のご意見としてございます。
 具体的な論点として、1.パテントトロールに関して、議論の枠組みの中に商標も含めるべきであるというご意見でございます。
 2枚目でございますけれども、最初のパラグラフの2行目、特にネットで製品情報を得て未流通国でその商標権を事前に取得する輩が出てきていて、金銭収益を目的に、その商標権を盾に製造者や販売者などを攻める行動に出ている。商標権には、どこの国でもソフト特許以上に研究・開発コストをかけずに容易に取得できる簡便さがあるということで、中村委員からも商標権の話が出ましたけれども、同様の問題意識だと思います。
 2.は、ウェブサイトのバーチャル空間内での商標の無断使用に関して。これも商標でございますけれども、特に例示として挙げておられるのは、オークション、俗に言うモバオクの問題、さらにセカンドライフにおける商標の無断使用の問題を挙げておられます。
 3番目、標準にかかわる知財上の課題でございまして、まず1つ目の@は、パテントトロール問題。標準化に関与していながら標準化団体から離れて権利行使する者の存在、標準化に関与していないけれども関係する権利を保有する者の存在により企業活動が不安定化しているという問題。
 Aでは、RAND条件─リーズナブル・アンド・ノンディスクリミネトリー条件─妥当かつ非差別的条件というのもありますけれども、だれがどのようにして決めるのか、ルール化も組織化もできていないという点。
 次のページでございますけれども、B標準化技術に関する第三者特許の担保についての手当てが不十分ということでございます。
 (2)その他ということで、いろいろな点をご指摘でございますけれども、@では、初期段階から標準化推進技術に特許を組み込む仕組みの強化。Aでは、オープンソース等のような標準技術に含まれる特許について、ロイヤリティフリーとする流れについてどう受けとめるのかという点などをご指摘いただいております。
 4.は省略させていただきます。
 資料11−4、長岡委員のご意見でございます。
 4点ございますけれども、最初の点は、3行目でございますけれども、高いレベルにあるパイオニア的発明により広い権利を与えることが、先端分野で国際競争力を確保する上で非常に大事だというご指摘。
 第2に、技術分野別に特性、取得目的、研究開発投資回収の上で知財が果たす役割が異なるので、知財全般の基本原則と整合性を保ちつつ、それぞれの分野の固有課題の解決に取り組むことが大事である。
 3番目、先端分野の産学連携のあり方として、3行目でございますけれども、産学官あるいは異業種企業間のライセンス、受託研究や共同研究、スタートアップ企業や新規参入企業の資金調達、事業展開などを効果的に支援する観点からのあり方を検討すべきである。
 第4は、時間がかかっても解決に結びつく糸口をつくることが重要で、長期的観点からの検討が大事であるというご指摘。
 最後でございますけれども、資料11−5、渡部委員からのご意見でございます。
 2行目の最後から、分野別に知財戦略を議論する必要がある背景として2点挙げておられまして、第1として、科学技術政策の検証ということで、巨額の投資を国の競争力に結びつけていかなければならないけれども、現在の状況はどうなのかを十分に検証して、不十分であればこれをしっかり進める戦略を持たなければならないという点。
 2番目としましては、下から3行目のパラグラフの真ん中あたりでございますけれども、知財制度が産業発展に与える影響については、分野の影響が大きいことが実証的に明らかになっており、特許権のイノベーションへのインパクトが大きい分野では、独占的排他権を最大限活用するビジネスモデルが多く利用され、インパクトの小さい分野では、パテントプールやクロスライセンスなど知財の集合的利用が頻繁に利用されるということで、一番最後のパラグラフでございますけれども、知財戦略の各項目を注意深く見守るとともに、特定分野においてより重要な施策であるといったことについて、政策形成をしっかりやるというようなことを指摘しておられます。
 2枚目の3行目でございますけれども、その上でまず行うべきこととしては、既に策定された従来の知財戦略の各項目について、特定分野との関係が深いものや作用が異なる可能性を抽出・整理し、施策が実効を上げているかどうかをまず検証することも大事ではないかというご指摘でございます。
 最後に、2枚目の下から2つ目のパラグラフで、専門委員制度のご指摘がございます。
 現状、専門委員に任用されている大学研究者などに伺う限り、裁判所からの期待、重責を感じてかなりの負担となっている一方、それが必ずしも評価にはつながっていないということで、これについての改善策を検討すべきではないかというご指摘でございます。
 簡単でございますけれども、以上でございます。

○相澤会長 ありがとうございました。
 皆様からご意見を伺ったわけですが、残念ながら時間が押してまいりまして、これから全体討論に入ろうという予定でございましたが、今回はちょっと難しいようでございますので、ただいまいただいたご意見をそれぞれ皆様インプットしていただいて、各PTで議論していただきたいと思います。
 PTでご議論いただくときに、先ほど中山委員から大変重要なご指摘がございましたように、分野に分割して議論すると、ややもすれば細かいことに集中してしまう可能性があります。しかし、振り返っていただければ、これはあくまで知財戦略のもとで、それをさらに具体的に進めていくにはどうしたらいいか、それぞれの分野の状況をきちっとつかんで、さらに全体の戦略を構築していくべきだろうということでの今度の専門調査会でございます。ですから、あくまでもこの専門調査会のタイトルにありますように、知的財産による競争力強化、これがねらいでございますので、それが浮き出てくるような形で進めていただければと思います。
 ですから、先ほど妹尾委員からありました人材育成、これも一つの重要な柱でありますし、今回重要なのは、特許だけではないよというのが全分野に共通しているところではないかと思います。広く知財という形でとらえていただいて、どちらに行くべきなのか、その方向性を明らかにしていただければと思います。
 大変少ない回数ではございますがPTを2回開いていただいて、そのような議論をしていただき、この次の専門調査会でご報告いただいて、全体の討論をさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局から何かありますか。

○小川事務局長 活発なご議論どうもありがとうございました。今日ご欠席の委員の方のご意見、先生方のご発言を踏まえて、いろいろな準備作業をさせていただきたいと思います。回数は限られておりますけれども、事務局、大いに汗をかきまして、個別に委員の先生方、また外の方のご意見を聞いたり、資料を集めてご議論に供したいと思っております。
 今、会長からもお話がありましたように、現状をきちっと見詰めて、将来も見据えながら戦略と言えるものをつくりたいと考えておりますので、PTに参加される諸先生方、当専門調査会の先生方には引き続きよろしくご指導をお願いいたします。

○相澤会長 次回は10月30日の10時から12時、場所はこの会議室でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日はどうもありがとうございました。