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第5回 知的財産による競争力強化専門調査会 議事録

  1. 開 会 : 2008年3月4日(火)10:00〜12:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 相澤会長、岡内委員、佐藤委員、関田委員、田中委員、妹尾委員、辻村委員、長岡委員、中村委員、中山委員、前田委員、三尾委員、渡部委員
    【事務局】 素川事務局長、松村事務局次長
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 知的財産人材育成総合戦略 第1期の評価について(案)
    (3) オープン・イノベーションに対応した知的戦略の在り方について(案)
    (4) 閉  会

○相澤会長 それでは、皆様おそろいでございますので、ただいまから第5回の知的財産による競争力強化専門調査会を開催させていただきます。
 本日はご多忙のところをご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 なお、本日は加藤委員と河内委員のお二人がご欠席と連絡を受けております。
 それでは、早速でございますが、最初の議題に移りたいと思います。2006年1月に本専門調査会の前身であります知的財産サイクル専門調査会において「知的財産人材育成総合戦略」が取りまとめられたところでございます。この戦略の実施状況などの評価については、本専門調査会が行うとされております。そこでその評価を本年度行わなければなりません。今回、事務局においてこの評価に係わる報告書の素案を策定いたしましたので、それを皆様にご報告し、議論をしていただければと思います。
 それでは、説明は松村事務局次長からお願いいたします。
○松村事務局次長 資料1をごらんいただきたいと思います。1枚めくっていただきまして目次でございます。1、2が要点を記しておりまして、3がいわゆる第1章と申しますか、知財専門人材に係わる評価と今後の課題、4が第2層と申しますか、知財創出・マネジメント人材に係わる評価と課題、5が国民一般、第3層に関しての評価と課題、そして研修機関に係わる問題が6という3部構成にさせていただいています。
 1枚めくっていただきまして、経緯ということでございますが、今相澤会長からご紹介がございましたとおり2006年1月に知財人材育成総合戦略が策定されました。問題としては知財人材の量が不足、質が不十分、かつこの知財分野については育成において時間がかかる。教育や研修を有機的に連携する必要がある。多種多様の人材を計画的に育成する必要があるという特性があるという問題意識の下に策定されたわけでございます。
 3ページでございます。3つの目標というのがございます。知財専門人材の量を倍増し、質を高度化する。知財創出・マネジメント人材を育成し質を高度化する。国民の知財民度を高めるということころで、その下の箱に私はさっき第1層、第2層、第3層と申し上げましたが、専門人材が企業の知財担当者、弁理士、産学連携従事者審査官など、第2層創出・マネジメント人材が研究者、技術者、企業の経営者、経営幹部、そして第3層、国民一般ということになっています。
 4ページをご覧いただきますと、さっきご紹介がありましたとおり、期間を3つの期間に分けております。さっきご覧いただきました目標を10年間に達成するということで、最初の3年間、本年度まででございますけれども、第1期におきましては@人材育成に係る基盤の整備と知財教育の実践環境の整備、A知財に関する教育研修期間等における先進的な取り組みの他機関への展開と教育・研修・研究機能の底上げということになっております。
 第2期、第3期それぞれ目標がございますけれども、第1期につきまして第1期の最終年度であります今年度、自己評価と申しますか、この委員会で評価をいただき、第2期以降、さらにどういうことをすべきかを議論を深めていただくという目的でございます。
 そうした観点で5ページでございますけれども、評価の視点ということで3つの目的が対象とする人材ごとに環境の整備状況を評価し、教育・研修機関の取り組みの展開状況を評価する。特に第1期の目標に係わる専門人材につきましては量的向上の要素も評価し、そして第2期に向けた重点戦略を提示する。そして、それを「推進計画2008」に反映させていく。これが今回ご審議いただく目的でございます。
 結果としてどういうことかというのは6ページにございまして、弁理士研修制度が充実するなど、人材育成の環境整備が進展しており、企業の知財担当者や弁理士を中心とした専門人材の数も増加している。また、知財人材育成推進協議会が創設され、研究機関間の情報交換が始まった。ただ、引き続き取り組むべき課題として、青い箱の最初の○でございますけれども、知識を習得する環境は整備されたのですが、知財を活用して競争力のある事業の創出を提案する人材育成はまだ不十分ではないか。
 大学、TLO、また中小企業においてはまだ担当する者の育成が不十分であったり、数が少ないという問題があるのではないか。また、国民一般についての啓蒙という観点もまだ広がりが十分でないのではないかということでございます。
 7ページでございます。そういったことを踏まえまして第2期に重点的に取り組む課題としては、以下のようなことが考えられるのではないかということで、第2期におきましてはさらに知財を経営戦略に組み込む企業が増えて、知財人材の活用機会が拡大することを前提といたしまして、箱の中でございますが、専門人材と知財・マネジメント人材、いわゆる第1層、第2層の相互交流的な意味合いを持たせまして、知財専門人材に経営事業に関する知見を習得させる。大企業はもちろん中小企業においても経営事業戦略に携わる人材に知財・マネジメントを習得させることが必要ではないか。
 またオープン・イノベーションという時代の要請に対応するためにも技術移転を活用した事業の活性化は必要であり、これを総合的にプロデュースする人材を育てることは必要ではないか。
 国民全体に知財マインドが広がるように各学校段階に応じた知財教育をさらに推進することが必要ではないか。以上4点を踏まえまして時代の社会ニーズに合った育成策の一層の充実を図るべきではないかということでございます。
 8ページ以下、第1層、第2層、第3層に分けて現状と課題をまとめております。簡単に説明させていただきます。
 弁理士につきましては、左下のグラフをご覧いただきますように顕著に人数が増えてきております。2000年の弁理士法改正に伴い量が増えているとともに、2007年の弁理士法改正で資質の維持・向上を図る観点から実務修習制度と継続研修制度が導入されています。
 9ページでございますけれども、企業の知財担当者、左下の棒グラフ、大体2004年度、2005年度、13〜14%程度の伸び方で増えてきておりますが、その下の1億円未満の企業につきましては平均知財担当者数は1.1人ということで、中小企業にはもちろんのことでございますけれども、まだ知財担当者数の増加が必要とされております。
 他方、知財専門職大学院、2005年度に開設されました東京医科大学、大阪工業大学などにおきましては社会人からの就学が大きな割合を占めているようでございまして、知財関連業務に配属される人間が結構目立っていることをここで示しております。
 知財検定制度が2007年に国家検定に昇格したことは箱に書いてあります。累計で35,000人の申込者があります。
 10ページです。大学・TLOの知財担当者につきましても堅調に増加を続けているということで、1機関当たり平均で5.4人ということでございますが、これは大学・TLOと専門学校などにおける知財の担当者ということで、教員は入っておりません。
 法曹人材でございますが、新司法試験における合格者の知財法を選択した人数の割合というのが出ておりまして、16%前後ということになっております。
 また弁護士知財ネットが1,000人規模で設立されておりますし、知財高裁の設立もあり、法曹界における意識も高まっているのではないかと思われます。
 12ページ、第1層、専門人材に係る課題といたしまして、産業競争力強化の観点から特許の戦略的活用、知財戦略と事業戦略との連携がますます重要視されている。こうした観点から経営事業戦略に知財戦略を組み込むことができる知財専門人材を育成するために、知財以外の周辺領域に係わる能力を強化すべきではないかということで、例えば企業の経営重要戦略をサポートする知財の保護や活用を図ることができる弁理士や弁護士の育成。会社の知財戦略を他部門に対して浸透させることができる知財戦略スタッフの育成。
 TLOにおきましても企業と共にビジネスプランの構築を行うビジネスプランナーの機能を併せ持つ人材の育成が大事ではないかということで指摘しております。
 13ページ以降、第2層でございますが、14ページでございますが、同様に産業競争力の強化を図るうえで経営系の人材が知財について学ぶ機会が少ないという指摘がございます。また、技術移転を事業創出に結びつけて価値ある知財を見出し、それを他のさまざまな経営資源と有効に結びつけて実際の事業化まで関与する総合プロデュース機能が必要だ。こういう機能を果たし得る人材は少ないという指摘もございます。
 そうした観点で下の箱の最初の○でございますが、経営事業戦略に明るい人材を知財分野に活用するために経営系の人材に対する知財教育を充実すべきではないか。総合プロデュース機能を複数の人からなるチームで達成する際に必要なリーダーを育成する必要があるのではないか。つまり総合プロデュース機能といっても1人でできるというのはなかなか短期間で難しいわけで、チームでやったらどうかということを前提にしまして、そのリーダーは少なくとも必要ではないということでございます。
 事業機会が人材を育てるという面もあることから知財・マネジメント人材の育成はその事業機会とともに拡大させていく必要があるのではないか。つまり人材育成と言っても資格制度とかそういうものがあるものは別といたしまして、事業環境が人を育てるという面があるということで、事業機会が人を育てる面からも重要であるという指摘です。
 15ページ以下は第3層、国民一般でございます。16ページをご覧いただきますと、箱の中、課題としまして知財マインドがより一層広がるよう、創造性や知財を尊重する態度を育む教育など、各学校段階においた知財教育をさらに推進すべきであるということで、例えば教育現場の現状をさらに調査することが必要ではないか。技術者など専門家による教育を充実する一方、知財を教える教員指導者の育成を強化すべきであるという記述をさせていただいております。
 17ページは研修機関、知的財産人材育成推進協議会が創設をされて、今、研修機関間の情報交換、人材育成に関する提言、関係機関の研修情報の発信が行われるようになったということでございますけれども、18ページでございますけれども、各機関の研修プログラムが量が増加している一方で、ニーズに対する整合性を各機関から調整する必要があるのではないかという指摘があるものですから、かなり連携を強化する必要があるし、また研修機能のさらなる底上げを図るべきではないかということで、研修機関間で相互に研修内容をチェックしたり、複数の研修機関の研修を系統立てて整理した上で情報発信をする。また、産業財産権、著作権などを取り混ぜた研修を充実させていくべきではないかという指摘をしております。
 資料については以上でございます。
○相澤会長 それでは、ただいまの説明に基づきましてこれから議論に移りたいと思います。ご質問、ご意見、どちらでも結構でございます。挙手をしていただいてご発言いただきたいと思います。
 関田委員。
○関田委員 JFEの関田でございます。7ページ目の第2期の重点整備枠の概要というところで、これは意見を述べさせていただきたいのですが、知財に限らず全般に私ども鉄鋼業では人材育成は大きなテーマになっております。例えばこの3つ目の○で国民全体に知財マインドに広がるようにうんぬん、こう書いてあるんですが、要するに子どもたちにどれぐらいの知財のことを教えるのか。多分マスト項目とウォント項目があるのだと思うんですけれども、そこら辺をよく考えないといけないなと思います。
 鉄鋼業から見ますと、大学を出てきたエンジニア、リサーチャーに仕事をさせているわけですが、大学への期待というのは、大学の役割というのはおそらく研究と教育と両方あると思いますが、例えば鉄鋼業ですと金属工学ですから、学部では金属工学の基礎知識、熱力学であるとか結晶学であるとか、そういうことをしっかり学んでもらって、マスターが多いんですが、大学院で問題解決能力というか、課題発掘能力というか、そこら辺を習得して企業に入ってもらわないと、専門知識もなく、問題解決能力もないと、あと何を教えてもだめなんですよね。ということで、ここは知財の話ですが、やはりベースをしっかりする教育というのがまずマストだろうと思います。
 それで企業の中で自分たちの専門の仕事をしていって、そこで知財の重要性を築いたときに、今度知財に係わる教育をした方がいいのではないか。最初から詰め込んでも身にならないのではないかなということで、これは知財に限らず全般的な人材育成の課題だとは思うんですけれども、一つ意見ということで言わせていただきました。
○相澤会長 ありがとうございまし。そのほか。
○中山委員 11ページの法曹人材の件ですが、弁理士と弁護士の増加については戦略会議のときから一貫して増大を求めてきました。法曹人材は2010年、3,000人ということで決着をしたのですが、最近、雲行きが怪しくなってきているようです。私としてはここで3,000人を維持していただきたいという感じのメッセージが入っていればなという気がいたします。
○相澤会長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○渡部委員 初等、中等教育の関係のことについてです。第1期の目的に先進的な取り組みを短期間内で展開ということが書いてありますが、実際、初等、中等教育のレベルで知財のことをやっている方は地域でたくさんおられまして、本当に一生懸命にやっておられる。そのことが15ページには若干書かれているようには見えますが、最終的に16ページの知財教育の在り方を検討するためにテキストの配布やセミナーの開催などの施策の実施の際には、このような地域で一生懸命にやって、実績を上げて、いろいろなノウハウをためている人たちの活動を踏まえたものにぜひしていただきたいということをお願いしたいと思います。以上です。
○相澤会長 どうぞ。
○三尾委員 先ほどの中山先生からお話があった件で、法曹人材の、特に弁護士の人数の件ですが、私の個人的な意見を申し上げますと、3,000人という人数はその数がどうということではないのですが、人数を増やしたからといって、増えた弁護士がそのまま知財に携わるかというと、非常に疑問だと思います。正直、年々、ここ何年か弁護士の数が増えてきております。弁護士も知財に非常に興味を持っておりまして、私も日弁連で研修等をここ何年かやってきた経験があるのですが、一時ほどは今ちょっと、やや熱が下がってきているかなという印象がございまして。これは人数如何によらず、やはり知財を目指す弁護士をたくさん育てるというためには、土壌となる知財の事件や知財全体としての分野が活況でないと、弁護士が興味を持って携わっていくということは難しいのではないかという印象を持っております。
 今回3,000人という数は少し見直そうという動きは確かに出ております。今回、新しい日弁連の会長が決まったのですが、その方もそういう方針を打ち出していらっしゃるということです。その理由としては、弁護士が既得権を保護したいというようなことではなく、かなり人数が増えたことによって質の低下があるということは否めないんです。質が低下してだれが困るかというと、よく見分けができない国民の方々が困るということになろうかと思います。ですので、人数を増やせばいいということでは必ずしもなく、人数はともかく知財全体としての、産業としての発展が第一だろう。そうすると知財を目指す弁護士は増えていくという私としての感想を持っております。
○相澤会長 ただいまのご発言、中山委員、いかがでしょうか。
○中山委員 これは別に弁護士に限らないのですが、試験で人数を増やせば質が下がるということがあちこちで言われておりますけれども、私はそれに対しては疑問に思っています。試験というのは大体ペーパーテストです。ペーパーテストで合否の判定というのは実は本当はいい加減でして、本当の能力を図ることはできない。つまり落ちている人の中にも優秀な人はいっぱいいる。受かっている中にも変な人がいっぱいいるということだろうと思います。人数を増やせば本来優秀で受かるべき多くの人が合格します。しかし中には雑魚も入ってくるということだろうと思います。
 問題は受かった後の競争だと思います。競争が熾烈であれば、普通の人間の能力は大した違いがあるわけではないので、極めて熾烈な競争があればどんどん優秀になっていく。アメリカは弁護士100万人いますが50万人ぐらいは食えません。しかし、アメリカの上の方の弁護士はものすごい。それは熾烈な競争をしているからものすごいのですね。これは弁護士がどうこうというのではなくて、競争がなければうまくいかないと思います。
 あともう一つは、今の弁護士は、主として訴訟で食っていますが、訴訟以外に弁護士の活躍する場はいっぱいあります。そういうところにあえて挑戦する必要がない。なぜかというと訴訟で食えているからです。ですから、これを言うといつもお叱りを受けるのですが、私は法曹の資格とか弁理士資格等の国家資格は運転免許証だと思っています。やってもいいというだけで、食えるという保証は全くない。そういうものではないかと私は思っています。したがって法曹人口を増やすことは非常に大事だと思っています。
 増やした後、それが知財に来るかどうか、これは今、三尾委員がおっしゃったとおり、来るかどうか分かりませんけれども、知財に人を呼び込むのは簡単です。金をかければいい。企業だって優秀な知財の専門家はいい待遇をすればいい。TLOだって今のような待遇だったら絶対に人は集まらない。ですから、金をかけるということをどう考えるか。それに尽きるのではないかと私は思っています。
○前田委員 申し上げようと思っていたことは、中山先生がおっしゃられたことと同様で、若手の方でTLOや大学知財本部に入って来ようと思っている若手の人の士気が下がらないように、やはり雇用の安定化ですね。そういうものをどこかに、人材養成の中に入れていいのかどうか分からないのですが、やはり養成した人がいたくなる場とか行きたくなる場になるように雇用の安定化というのは、どうしてもどこかに書いていただけるとありがたいかなと私は思っておりました。
 まさしく中山先生がおっしゃるように魅力ある場所でないといい人材が集まってきませんので、雇用に関することもどこかに入れていただけるとありがたいと思いました。
○相澤会長 田中委員。
○田中委員 教育といいますか、その辺も充実してきたということで、これは大変いいことだなと思います。ただ、若干懸念していることは、日本の教育というのは大体知識の詰め込みだけやるということです。それ以上の時間がないと言われてしまえばそのとおりですが、本当に社会に出たときに実務能力がついているかというと難しい。アメリカ駐在の私の部下を現地のロースクールに夜間に行かせていますが、鍛え方が全然違うのです。つまり裁判所にどういう書類を提出しなければいけないかというような社会に出たときに必要な実務能力、あるいは特許を扱う場合には書類も含めて弁理士的な立場でどういうことをハンドリングするかなどについて、徹底的にトレーニングする。だから、社会に出たときに最初からある程度の給料をきちっともらえる。
 ところが日本の場合は知識を与えるだけですから、社会に出たときに本当に給料をたくさん出していいものがとうかというと、これは全く別問題になってしまうのです。社内でもう一度実務能力等を含めてきちっと教育しなければいけない。その辺は、これからはいろいろなチャンスが出てきていますし、これからの問題だと思いますので、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
 それから、もう一つ言いたいのは、中山先生も法曹界という表現をされたので非常にいいと思うのですが、司法関係も実は契約、ライセンシングなどに対する知識を持っている方がほとんどおられない。これは極論な言い方ですが、そんなことも知らないのかと思われる部分がありまして、企業間のライセンスがどういうものをベースに成り立っているかなどについてきちっとした知識なり理解がないと、全体の裁判の進行上もどんどんおかしくなってしまうのではないかと心配です。実はそういう事例にもぶつかっておりますので、司法関係者や、弁護士にも、特許関係や、ライセンス等の契約ですとか、そういったものまできちっと教育していただいた方がいいのではないかという感じがいたします。以上です。
○相澤会長 佐藤委員。
○佐藤委員 弁理士は、先ほどの表にありましたように非常に増えまして、今7,500人ぐらいになりました。そういう意味では弁理士業界も体質が変わったと言っていいと思います。今までは弁理士よりも非弁理士が事務所の人数が多かったのですが、最近は非常に弁理士が増えてきたということでは、私はこの増員によって弁理士業界の構造が変わったという意味ではメリットが、大きな意味があったのではないかと思います。
 ただ、先ほど三尾委員が言いましたように増やしたときに必ず問題が起こるのはやはり質の低下です。我々は今回、弁理士法改正で登録前義務研修、これを入れました。これは資格制度というのは国民が資格に対する信頼があって初めて成り立つ仕事で、もし万が一、この改正のときに申し上げたのですが、一生に一度しかない発明をどうでもいい弁理士にかかわってお釈迦にされたらだれが救ってくれるんだと。やはり資格に対する信頼をいかに担保するかということが資格制度の一番重要なことではないかと思います。
 そこで登録前義務研修、それから既登録者の義務研修も今度入れた。しかし、これを維持して実際にやっていくのは我々の職務であるわけですが、現実問題としてはなかなか大変でございます。司法研修のように国が支援してくれるわけでもなくて自前でやっているわけでございます。今回、4月から新たにそういう研修を始めるわけですけれども、そういう意味では我々は非常に大きな負担を負っているということと、もう一つは資格制度である以上は品質を保証するということをきちんと担保できる仕組みを動かしていくということが重要だと思っています。
 現実、7,500人の弁理士が今いるわけです。受かった人間の6割ぐらいまでしか弁理士になりません。なぜかというとビジネスチャンスがそれほど広がっていないということがもう一つの大きな理由です。そういう意味で我々としては今までの権利化業務以外の周辺業務を拡大するということで、今、知財ビジネスアカデミーやコンサルティング委員会が周辺業務の拡大を目指し、クライアントのニーズに対応できる人材育成をやってきているわけです。しかし、これも我々だけの資源ではできなくて、産業界なりそういう方々と交流しながらやっていくことが非常に重要だと思ってやっております。そういう意味ではぜひこれからの産業界と弁理士界が連携して、こういう分野で活躍できる人材をぜひ育てていきたいというふうに思っておりますので、この中にも活用分野なり、専門分野を拡大させるという意味では産業界と弁理士界および法曹界との連携のような仕組みを拡大していくことをうたうべきではないかと思っております。
 もう1点は、先ほど渡部委員から出ました初等、中等教育の知財問題でございます。我々弁理士会も出前授業という形で小学校、中学校に出かけて、今知財の重要性を訴えております。その中で一番大事なのは権利の問題よりもまず知財を創造するということに興味を持たせるということだろうと思っています。
 しかしながら今の中等、初等教育の中ではそういう教育が非常に少ない。またやれる人が少ないということが一番大きなことではないかと思っています。その意味ではこの辺は国として初等、中等教育で知財を創造することの喜び、楽しみ、またその重要性が分かるような教育の取り組みをもっと強化した方がいいのではないかと思います。それであって初めて知財を尊重する人材が出てき、また知財を活用する人材が出てくるのではないかと思っております。その2点を申し上げます。

○相澤会長 辻村委員。
○辻村委員 今、皆様の意見をお聞きしていまして、人材育成というのは確かに一番大切なポイントだと思います。そのときに知的財産、知的財産権、知財戦略というところにどれだけ興味を持てるかということが極めて大切なポイントではないかと思っております。
 例えばMOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)、技術と経営を結びつけると、流行と言ったら怒られますが、MOT、MOT一色になってくるわけです。これはなぜかというと、今までは、技術者とか研究者というのは企業の中でなかなか経営というところにつながっていかないというような、そういう風潮みたいなものがあったのですが、経営と技術は完全にリンクすべきで、経営と技術をリンクすることは極めて戦略的で大事なんだということが分かったら、途端にそこに人材が集まってくるんです。
 したがって、まさに今回の議論にもありましたように、知財戦略と経営戦略をいかにしてリンクするか。知財戦略がいかに大事なものかということをきちっと大学教育なりで認知させる、してもらうということは一つ大事なポイントではないかと思います。
 9ページにあります知的財産専門職大学院、初めて聞いて、取り組みとしては非常にいいと思うんですが、こういう大学院で専門的な知財の教育をするという一方で、先ほど言いました知的財産と経営戦略、事業戦略を結びつけることができるような知財戦略人材を創出するような取り組みをもう少し積極的にやられたらいいのではないかという感じがいたします。
 TLO等で前田先生がいつも待遇をよくして欲しいとおっしゃっていますが、お金の面はすごくあるんですが、知財が経営とか事業につながっていて、自分のやっていることは価値があるんだと認識してもらうことが結構大きなモチベーションになるのではないかと思っています。
○相澤会長 岡内委員。
○岡内委員 全く同感でございまして、先ほどの15ページにありますような児童・生徒・学生、これの授業でも、佐藤委員も言われていましたようにここで知識だけ得てどうするんだ。本当に興味のあることをどうやって教えるかが先ではないか。私も仕事の関係上、出前授業というものをかなりやらされるのですが、私どもの実験を目を輝かして見ている子どもたちは10歳までです。いわゆる小学校の4年生ぐらい。5年、6年生になると受験ということもありまして、役にも立たない科学実験を見ているだけ、の感じです。
 もう一つ、中学生になりますと思春期というのがありまして、これは恥ずかしいというよりカッコをつけるところが出てきてしようがないのですけれども、目を輝かしているときにこんなに面白いことがいろいろあるんだよということを教えてくれるのは小学校ではないか。だから、そこで知識もいいのですが、その知識の前にたくさん面白い学ぶことがある。それを教えるのは学校の先生であり、今読み書きそろばんだけでは終わらない時代でございますので、なぜもうちょっと小学校にいろいろな先生方を組み入れてくれないのか。それは数を増やせばという、それこそ先ほどの中山先生と同じになるのですが、数を増やしただけでいいのかということになると思いますが、やはり増えればいろいろな方々がいらっしゃいますので、それぞれの研究分野でそれぞれに専門のことを話されれば子どもたちが感激するのではないか。小学校の先生を増やすというような、ちょっとこの場の話ではないのですけれども、そういう形に進んでいっていただければなと思っております。
○妹尾委員 人材育成については、第1層、第2層、第3層という構成で当初の総合戦略が書かれたと思います。これが何年か動いた中で一体何が起こってきたのかをレビューしているわけですが、その意味ではかなりカバーされていると思います。
 第1層の専門人材については、現在4つの流れが大きいと私は見ています。第1は「流動化」ということです。これは知財部員、弁理士、特許庁の審査官等の専門職の間の交流が進展しているということです。任期付き審査官の最初の期限が来るともっと流動が始まるでしょう。また、最近は弁理士試験に合格するの内、企業人の方が特許事務所の人よりも多くなりました。今まで別々だった人たちが「知財専門職」という一つのカテゴリーでくくれるようになってきた。だから、そこをどういうふうに魅力づけして、優秀な人たちに入ってきてもらうようにするか。そこがおそらく今後の課題になるでしょう。つまり流動化を流動化だけで終わらせてはいけないと思うわけです。
 2つ目の流れは「高度化と広域化」です。特に世の中は高度化もさることながら広域化、つまり隣接分野へウイングを延ばすこと期待されている。経営、研究開発、そちらに知見を持つような知財専門家へのニーズが高まってきている、ということだと思います。
 3番目は「複合化から融合化」です。すなわち知財というのは科学技術と知財法務の複合領域だったわけですが、これに経営、すなわち事業に資するという観点が入ってきて三つの融合領域になってきています。、これが知財マネジメントということが言われるようになってきている理由です。知財マネジメントという言葉を使いだしたのは私ですが、その意味ではこれが重要になってきています。
 4番目は、意外と皆さん気がついていないのですが、知財の専門職を助ける人たちが非常に増えてきているということです。すなわち補助と補佐と支援をする人たちが増えています。特許事務所、知財部の中で弁護士におけるパラリーガルのような法的事項を調べる人々、あるいは技術調査を補佐をする人たちが徐々に増えつつある。それから、支援というのはサーチャー、インタープリター、トレンスレター、そういうような人たちです。こういうような専門の中核人材の周りに周辺人材が出てきて、この分野での分化、ディファレンシエーションと、専門職化、プロフェッショナリゼーションとが起きているということなのです。これをうまくとらまえて中核の人たちだけで良い仕事をしているわけではなくて、そういう支える人たちにとっても魅力ある職場だよ、ということをそろそろ謳ってもよいのではないかと思います。そうすると中核だけではなくて周辺にも広く優秀な人材が集まり、専門人材全体がレベルアップできるのではないか、こういうふうに思うわけです。
 第1層についてもう一つ言えば、先ほど佐藤先生がおっしゃった弁理士の方々の研修制度の充実があります。ただし、人材育成屋から見ますと、往々にして、制度ができると何となく安心してしまうところが懸念されます。本当は、その制度の中で実際に行われる研修そのものがよい研修をやっているのかどうかということがすごく問われるわけです。なので、ただ来て、みんな集まって、何時間座っていたよという話でなくて、そこで本当に鍛えられて意味のある研修をやっていただきたい。弁理士は弁護士と違って国の補助が得られない。大変ご苦労をされていると伺っていますが、中身の濃いものをきちっとおやりいただきたいと期待しております。以上が第1層についてです。
 続いて第2層ですが、これはここの中にかなり書かれているように経営関係の方に知財マネジメントを理解していただくことが推進されないといけない。もう一方で知財関係の方に経営を理解してもらわないといけない。この双方向が併記して書かれていることは非常によいと思います。
 私も、知財関係でない事業担当役員の方に知財マネジメントを理解してもらうという役員研修を長年やっています。まだまだ大企業の役員の方でも知財は重要だという認識はあるものの、ではなぜ重要か、どう重要かということについてはご理解が薄い。研修をやってみると大変な事態であるということがよく分かります。なので事業に資する知財マネジメントの啓発がまだまだ強化されなければいけない。こういう認識をしております。
 もう1つは、先ほどの法務大学院の方で知財を学ぶ人が増えているというのがありますが、逆に経営系、すなわちビジネススクールではどうかという点が問題となります。それからMOTのスクールです。先ほど辻村委員からお話がありましたが、そこで知財マネジメントはどのように教えられているかというと、ほとんどないんです。実践的な科目はほとんどないと言ってよい。これは由々しき事態です。今後、経営の中核を担っていくような方々に知財マネジメントをきちっと学ばせる科目を開発するよう促さないのかということです。第二期に入ったら、国がそういう科目開発を支援するということがあってもよいのではないかと思います。これが第2層です。
 第3層は、先ほどからのご議論のとおり、子どもたちを中心に考えていくのですが、このときに私が知財民度の向上という言葉を使いました。ここでの知財民度の概念は一言でいうと「オリジナリティの尊重」ということです。オリジナリティの尊重をやるためには、DosとDo Notsだとしました。Dosとは創意工夫の奨励。Do Notsは海賊版、模倣品を購入することをやめよう。こういうことです。
 ところが何回か前のサイクル委員会の中でしたが、総理府の統計によると海賊版を買ってもいいじゃんと答える人が50%を超えていたという大変な高い知財民度を誇る日本であることが分かったわけです。それをどうするかという手が実はまだ全然打たれていないわけです。すなわち海賊版や模倣品でも、よければいいから海外旅行の帰りに買ってこようという人たちは5割を超すというこの事態を放置していてよいのか。一般国民に対して、Do Notsについて何もやっていないじゃないか。やると言ったのは成田にポスターを張りますというだけの話だったわけです。成田でポスターを見て、そこで心を改めるような人がいるかどうか、これは疑問ですね。そこのところに手を打たなければいけない。
 それからもう1つは子どもたちの創意工夫です。先ほどの委員の皆さんに議論は、私は大賛成なんですが、学校教育に頼りすぎていないかという気がします。ということは、これもサイクル委員会ときに申し上げたのですが、私が例で出したのは図画工作の時間が削減されるということです。もちろん図画工作の時間だけではなくて、実はオリジナリティというのは国語の時間にもあるし、音楽の時間にもあるわけです。そうしますと、創意工夫を奨励するというのは全科目についてやることができるということです。図画工作なんていうのは典型だと思います。
 学校ではいろいろな話があって、国語をもっと一生懸命にやれとか、算数を一生懸命やれとか、英語をやれとか、みんな言われるから要するに時間割の争奪戦になってしまいます。ですので学校教育で創意工夫を奨励してほしいということを一方で言いつつも、学校外でのクラブ活動とか、そういうものに私は期待をしたいと思います。先ほど弁理士会が出前授業をやられているとおっしゃっていますし、発明協会が発明クラブをやられている。この際、私は3,300の市町村が1,800になった現在の時点で、1,800全市町村に「知財クラブ」を作りたいと思うわけです。すなわち1市町村には必ず1つ、みんなが創意工夫をするクラブ、音楽でもいい、図画でもいい、工作でもいい、何も発明だけに限らずオリジナリティを何か訴えるような、そんなものを地元の弁理士さんも先生も企業の方も、それぞれの濃淡があるでしょうが、やれるような形を作れればよいなと思います。
 とかく子どもたちに知財教育というと知財「権」教育だとみんな思ってしまうんです。知財権教育は確かに重要ですが、そうではなくてむしろ創意工夫みたいなところから育んで、次の知財を創出する世代と尊重する世代を作っていきたい、こういうふうに思います。
 最後に1層、2層、3層共通して言えることは何かというと、これは私は繰り返し申し上げているんですが、人材育成を行う人材の育成がまだまだ不十分で、そのことは再度ですけれども強く言いたい。たしかに知識を教えるだけの人はたくさんいます。受講生を知識の貯金箱と思えば、それはそれでよいけれども、そうではないので、ぜひ人材育成人材の育成をしなければならない。これは弁理士会さんが大変力を入れてくれていまして、我々は知財教員の養成プログラムをずいぶん実践していますが、本当に考えさせる教育ができる人材を育成しなくてはいけないなと思います。以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。まだご意見があるかもしれませんが、ほかの議題もございますので。
 では、手短にお願いできれば。
○田中委員 この中で抜けているのは、「知財翻訳」という言葉です。これは2006年の「知的財産人材育成総合戦略」の時には入っていたと思いますが、今回抜けてしまったのではないかと感じます。言葉の翻訳をできる人はたくさんいますが、知的財産の権利書、その中でもクレーム等を訴訟にも耐えられるようにしっかり翻訳する力を持っている人は今非常に少ないと思います。それをぜひ付け加えておいていただければと思います。
○相澤会長 ありがとうございました。たくさんのご意見をいただきましたので、それに基づきまして、ただいまの案を修正させていただきたいと思います。伺っている範囲では対立したご意見ということではないようなので、でき得る限り入れさせていただきたいと思います。
 時期的には急いでおりまして、この内容を知財本部有識者会合で報告をしなければなりません。そのタイムスケジュールもございますので、内容については修正案を配布させていただきますが、取り扱いにつきましては会長一任とさせていただきますでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、そのような取り扱いをして、評価案をまとめさせていただきます。
 次の議題はオープン・イノベーションに対応した知財戦略の在り方についての案でございます。前回の専門調査会においてこの報告書のまとめにつきましてご議論いただきました。それに基づきましてさらに修正をしたものでございます。そこで資料2と資料3にその内容がまとめられておりますので、事務局から素案を説明させていただきます。
○松村事務局次長 資料3、資料3の別添の参考資料をご覧いただきながら説明させていただきたいと思います。資料3「オープン・イノベーションに対応した知財戦略の在り方について(案)」、1枚めくっていただきまして「はじめに」とございます。最初のパラグラフの3行目でございます。「新たな技術の開発やこれに活用した事業の創出には市場ニーズの変化を的確に捉えるだけのスピード感が要求され、イノベーションを効率的に進めていかなければ競争には勝ち残らないという状況があるという認識の下で、第2パラグラフ、「効率的でかつスピーディーなイノベーションを促進する観点から、オープン・イノベーションに向けた取り組みが注目されている。必要な技術を開発したり、これを活用した事業を推進していく上で、内部リソースを利用するばかりでなく、外部リソースをより積極的に活用して、新たな技術、新たな市場を開拓していこうとする活性化である」。
 第3パラグラフ、「当専門調査会は」、ちょっと飛ばしまして「技術、制度、市場の3つの『知財フロンティア』を開拓することを基本理念とした全体戦略、『知財フロンティアの開拓に向けて』を取りまとめ、12月の知財本部会合に報告した。これを画餅にとどまらせることなく具体化していく上でも、我が国におけるオープン・イノベーションに向けた取組の状況や必要な環境整備の在り方などにつき検討することが必要と考え、審議を行った」。
 第4パラグラフ、今後、「知財推進計画2008」の作成などを通じ、我が国の知財戦略を進めていく上で本報告書を十分に踏まえた上で検討が進められることを期待する」ということでございます。
 めくっていただきまして目次でございます。1.がオープン・イノベーションをめぐる現状。2.が現状に対応しました我が国の知財戦略の在り方ということで、(1)は企業におけるオープン・イノベーションに即した知財戦略の活用。(2)オープン・イノベーションを支える基盤の整備ということでございます。
 順次、要点案を説明させていただきます。3ページでございます。
 オープン・イノベーションをめぐる現状ということでございます。
(1)環境の変化。産業を取り巻く競争環境は一層厳しさを増しているということで、第1パラグラフ、これは参考資料の2ページでございますが、製品のライフサイクルは一段と短くなっていること。4行目でございますが、それに必要な技術開発や設備投資のコストはますます増大傾向にある。厳しい競争環境の中で新たな事業を迅速に生み出すイノベーションを実現していくためにはさまざまなリソースを適切に組み合わせることにより、いかにして研究開発や設備投資の効率を上げていくかがキーポイントになる。
 他方、情報技術の発展により有用な知識や技術へのアクセスは容易になっている。このことは情報に対するアンテナを高くし、情報技術を駆使することによって外部の知識や技術の利用可能性が増大してきていることを示している。
 最後のパラグラフ、厳しい競争環境の下、各企業はイノベーションの効率生を上げ、競争力強化につなげていくためには、外部の知識や技術を有効に活用するオープン・イノベーションの考え方の重要性がますます高まっていくものと予想される。
 ということでオープン・イノベーションと知財戦略でございます。そのようなオープン・イノベーションの考え方を取り入れる場合は、知財戦略においてもオープン・モデルの採用が必要となる。例えば研究開発の効率化を図るために他者との共同研究開発を行ったり、他者からライセンスを受けて新規事業に乗り出したり、自社利用が見込めない知財を他社に譲渡したりライセンスしたりする。さらに新たな市場の創出を目指して、仲間となる企業同士が知財を利用し合う国際標準を形成したりする。
 次のパラグラフです。しかし、全面的にオープン・モデルの知財戦略を採用したのでは競争力ある事業の展開は不可能である。オープン・イノベーションの考え方を取り入れる場合でもあっても他者との差別化を図るための独自技術については知財を獲得し、これにより他者の事業参入を阻止するための防御壁を構築するというクローズド・モデルの知財戦略の採用が必要となることは言うまでもない。
 オープン・イノベーションの考え方を採用する場合にはオープン・モデルの知財戦略とクローズド・モデルの知財戦略を高度に組み合わせて、知財の有効活用を図ることは重要であるということです。コンセンサスとして参考資料の1ページ、参照していただきたいと思います。
 4ページ、アメリカの状況でございます。オープン・イノベーションに向けた取り組みをいち早く実践しているのは米国である。すでに情報通信産業をはじめ、一般消費財産業、化学産業、製薬産業等のさまざまな業種において取り組みが広がっている。事業活動における内外の知財の戦略的な活用は各社の競争力の大きな源泉となっているということで、一般消費財メーカー、情報通信産業のある企業の例を紹介しております。
 Aオープン・イノベーションを支える基盤の充実ということで、このような企業の取り組みを支えているのがインターネットなど情報技術を活用した幅広いイノベーター層との連携、大学等の研究機関からの円滑な知財供給、企業同士の知財の倍々を仲介する活発な流通市場の存在などの米国の社会基盤である。
 ということで<幅広いイノベーター層の存在>という括弧書きのパラグラフのところですが、一番最後のセンテンス、情報技術のポテンシャルを十分に生かし、個人、ベンチャー等のさまざまなイノベーター層が活躍している。
 産学連携の充実。同じく最後のセンテンスです。米国の大学はTLOにおける共同研究や知財の取り扱いに関するマニュアルが整備され、産学連携も活発であり、大学からの知財供給も充実している。
 最後の「活発な知財流通市場の存在」、やはり最後のセンテンスです。米国の知財流通市場においては幅広い業種にわたって企業間の知財契約を多数仲介するなどの活動を行う知多財仲介事業者が多数存在し、その市場規模も大きい。
 これは5ページ、6ページの参考資料にございます。
 本文の5ページでございます。このように米国においては企業のオープン・イノベーションに向けた取り組みと、それを支える経済社会的基盤の充実との好循環が実現していると見ることができる。ただし、知財流通市場の拡大に伴い、いわゆる「パテント・トロール」と呼ばれる知財権の乱用的な行使の態様の問題が顕在化しつつあることに留意することが必要である。
 6ページでございます。こういった現状に対しまして、我が国の知財戦略の在り方をどう考えるかということでございます。
基本的考え方。我が国においては業種、企業間で差はあるものの米国に比し、あくまでも米国との比較でございますが、オープン・イノベーションに向けた取り組みは十分行われているとは言えず、知財を付加価値創造に戦略的に活用する取り組みは総じて遅れているとされている。近年、産学共同研究の増加など進展はあるものの、オープン・イノベーションが支える社会的基盤は米国に比して貧弱であり、経済社会全体がオープン・イノベーションに対する好循環が実現しているとは見られない。各企業はそれぞれの知財戦略においてクローズドモデルの戦略とオープン・モデルの戦略をどのように組み合わせるかについては、それぞれの置かれた状況に応じて判断すべき問題であるが、我が国産業もグローバル競争も激化する中で製品サイクルの短縮、研究開発投資の大型化といった状況に直面しており、オープン・イノベーションに向けた取り組みを強化することは国際競争力の強化に有効な場合が多いことを念頭に置くことは重要である。国としてもこのような取り組みを支える基盤を早急に整備していく必要があるという基本的な考え方の下に、まず企業におけるオープン・イノベーションに即した知財戦略の活用ということで、箱の中でございますが、現状と課題、これは参考資料の10ページにまず事例を、これは改善事例でございますが。
 我が国企業は全般的には「ものづくり精神」の基質や自社開発志向が強いとされている。業種や個々の企業で差があるものの、内部リソースを用いてイノベーションを実現しようとするクローズド・モデルの知財戦略にウエイトを置いている場合や、市場の変化のスピードに対応するよりも経営戦略の流出を懸念するため、外部との接触に当たって自らのニーズの提示を躊躇するケースも見受けられる。
 参考資料の7ページにございますように、大企業では共同研究開発が活発になっているものの、全体で見れば総研究費の社外に支出される割合は1割程度から増加しておらず、外部リソースの活用にはまだ積極的にはなっていない状態を示している。
 その箱の最後のパラグラフでございますけれども、2行目、未利用特許が5割を超えている。参考資料の8ページでございます。外への積極的なライセンスはあまり行われておらず、実際、相当程度の割合の大企業が自己の保有する知財を他者に対してライセンスした実績は1件もないとしております。
 本文の7ページでございます。これに対する具体的な取り組みとしまして、知財戦略の構築と実践ということで、企業が用いることのできる知財戦略をクローズド・モデルのものとオープン・モデルのものとに大別すると、典型的には下記のパターンが考えられるということで、そのモデルの中でもさまざまバリエーションがありえましょうし、どれか1つを選択するというものでもありません。実際にはそれぞれの企業の置かれた状況や競争環境等に応じて、これらを適切に組み合わせて高度な知財戦略をいかに構築するかという問題になります。
 ただ、企業の知財戦略を全体としてオープン・イノベーションに即したものとすることにより、知財の活用範囲は広がります。自らの独自の知財を創造し、独占的に利用するクローズド・モデルの知財戦略を採用することは必要な場面があることは言うまでもありませんけれども、これとオープン・モデルの知財戦略を臨機応変に組み合わせることにより、さまざまな知的財産の有する潜在力を総合的に発揮することは可能になります。
 イノベーションの効率化やスピードアップの観点からはオープン・モデルの知財戦略は有効なケースが多く存在します。したがいまして、各企業の知財戦略の構築に当たってはこのようなことを十分に視野に入れた対応が重要となるのではないかという指摘をしております。
 (@)はクローズド・モデルの知財戦略としまして、例えばすでに有している支配力や優位な技術力などの主導的地位の維持・強化を図るべく、自社単独で市場で優位とする新製品を開発したり、競争力ある事業を展開し続けていくための戦略と位置づけております。
 (A)のオープン・モデルの知財戦略としましては、厳しい競争環境に対応したり、投資規模などの事業リスクを軽減するべく、パラグラフの最後のセンテンスですが、社内外のリソースを最大限に活用し、収益の最大化を目指すための戦略。典型的にはこういう戦略ではないかと位置づけて、具体的には例えば最初の○でございますが、時間、資金を節約する手段とし共同研究、ライセンスの取得、M&Aなどの枠組みを選択したり、2つ目の○ですが、事業化は他社に委ね資金を回収する手段として知財を活用する。
 8ページでございますが、最初の○、自己事業に影響を及ぼさずにライセンス収入を確保する手段として知財を活用したり、新分野の事業リスクを他社と共用する手段として、例えばデファクト標準の確立のために使ったり、国際標準化、パテントプール、コモンズ的な場合を活用する。
 次の○、収益を確保できる市場を拡大させる手段として使ったり、また最後の○ですが、ライバルの開発力を低下させる手段として自ら、例えば事業化から数年で競合他社にライセンスを供与して、他社の研究開発意欲を抑制するような戦略的なことをやったりとか、いろいろな手段として使っている場合があるのではないか。一例をここでは示しているわけでございます。
 8ページのAです。そういうような柔軟な戦略対応を迫られる以上、企業の知財戦略担当部署におきましても紛争対応、自己事業の防衛など、リスク回避だけに専念するのではなく、知財を活用した事業モデルの実現を支援し、収益の拡大を図るなど、知財の価値を高めるバリューセンターへの発展を目指すことが求められる。
 また、オープン・イノベーションが米国を中心に取り入れられている背景の1つに研究開発の効率性向上の要請があります。折しも国際会計基準に対応して、ちょっと飛ばします。一層の情報開示を求められる状況となっており、従来のように特許を数多く持っているが、資産性、利益につながるか否かが不透明であるような事態を放置することは適当ではないのではないか。
 こうしたことから社内知財の評価を徹底し、その価値を最大化するような活用方策を検討するなど、事業戦略と一体となった知財戦略の構築が必要ではないかと思っています。
 9ページは以上の文章を簡単な表にしたものでございます。
 10ページ、そういった企業の取り組みを支える基盤の整備をどういうふうにしていったらいいかということでございます。まず、外部情報を利用しやすい創造環境の整備ということで、箱の中でございます。第2パラグラフです。
 我が国においてはブロードバンドの普及等により、世界最高水準の情報通信環境が実現している一方、学術・技術情報へのアクセスや研究開発のための情報の利用において知財法制上の制約が存在するなど、環境整備が十分でないというのが指摘されています。このため著作者の権利を適切に保護しつつ、イノベーションの促進のために外部情報を利用しやすい創造環境の整備をする観点から著作権をはじめとする知財法制の在り方について早急に検討に着手するとともに、特許情報の利用を促進することが必要ではないかということで、具体的取り組みとして、(ア)として学術・技術情報へのアクセスの抜本的改善。例をいろいろと並べておりますけれども、例えば図書館に存在する学術情報等へのアクセスの改善、蔵書のデジタル化、デジタル化した蔵書の図書館間や利用者との間のインターネットを通じたやり取りの方策を考えるべきではないか。
 Aは特定情報データベースの利用の円滑化ということで、11ページ以下でございますけれども、研究者が簡単に検索できるようにするとか、海外特許情報の提供。
 Bはe-learningでございます。同時中継型でない場合の著作物の送信。
 (イ)でございます。研究開発目的の情報利用の円滑化ということで、例として映像・テキスト情報の利用の円滑化。研究のための放送番組に係るやウェブ情報の複製・改変について。研究開発目的に限定した範囲でどういうような利用可能性を追求できるかという問題意識でございます。
 さらにAはネット環境の安全性確保のために、例えばウィルス解析ソフトウェアの解析、弱コンパイルを行うことがウィルス作用の分析を行うために必要になっていますが、著作権法上の問題をどうクリアできるのか、できないのか。議論がやや曖昧なところがありますが、解消しない限り研究開発に萎縮効果が働いているのではないかという問題意識。
 最後、12ページは知財の審査プロセス迅速化のための先行技術文献等の利用の円滑化ということで、コミュニティ・パテント・レビュー、諸外国ではどういうような先行技術文献の利用が制度上担保されているのかというようなことについて調査するべきではないかという指摘をしています。
 13ページでございます。大学からの知財供給の拡大ということでございます。先ほどの環境整備の中の大きなテーマとして大学からの知財供給の円滑化というのがございます。箱の中の第2パラグラフですが、TLOの整備、国立大学の法人化、大学知財本部整備事業の推進等の環境整備が進められた結果、大学はTLOの特許の出願件数やライセンス収入が確実に増加する傾向にある。大学における研究成果が知財として権利化され、それが産業界において活用される基本的な流れは整備されてきたと言える。
 参考資料の12ページから13ページにございますように、しかし大学の特許の利用率は国内平均の2分の1以下、ライセンス収入も米国の100分の1以下、またライセンス等につきましては相手方の同意を要する共同出願の比率が2分の1を超えているなどの状況を踏まえれば、我が国の大学から質が高く利用しやすい知財が十分供給されているとは言えないのではないか。その要因としましては大学、TLOの体制はいまだ十分とは言えず、将来の活用可能性を十分考慮して、戦略を持った特許取得が成されていないのではないかという指摘、また権利の取得、維持管理に必要に資金が十分でない中で大学側の特許出願件数が確保され、共同研究の相手方企業は特許関係経費を負担する共同出願に傾斜せざるを得ない状況にあるのではないかという指摘もございます。
 具体的な取り組みといたしまして、まず@として大学知財本部・TLOの機能強化と迅速な特許化可能性レビュー等の実施ということで、大学知財本部やTLOが権利取得の可能性や事業化可能性に関する評価を行うことができる体制を強化し、パテントマップの作成等を通じ、研究テーマを設定しようとする大学研究者に対して特許情報の提供を行うとともに、大学研究者が論文発表を行う前にその特許出願の可能性についてレビューを行う仕組みを導入することを促進すべきではないか。
 権利取得・維持管理費用の確保として、間接経費の増額に努めるべきではないか。
 B産学共同研究成果に関する出願形態の在り方の見直しということで、最後から2番目のセンテンスですけれども、アメリカでは大学か企業のいずか一方が特許権を保有することが一般的である中で、我が国においても、14ページの最初のパラグラフでございますが、2行目、大学知財本部やTLOの機能を一層を強化し、大学と企業との間で適正な成果の配分を前提とした権利帰属やライセンスの取り扱いに係る合意形成が追求されるべきである。その結果として、産学共同研究の成果の活用を促進する観点から権利を集約し、大学もしくは企業による単独出願とする選択肢も当然排除されるべきではない。
 例えば企業は自社事業の独自性を確保するために必要な製品技術については当該技術の単独出願とする一方、広く一般に利用させるべき基盤技術については大学による単独出願とする考え方もあり得る。
 なお、本日の共同出願の状態には文科省がかつて共同研究契約を締結する際の参考として、国立大学向けに示した共同研究契約書の様式参考例において、大学が承継した発明について出願する際に共同出願を行うことが原則とされていたことも影響を及ぼしていると見られることにかんがみ、上記のような考え方を大学やTLO、企業に周知すべきではないかという指摘をしております。
 15ページでございます。知財流通市場の活性化ということで、知財を外部で活用しようとしたら、外部から知財を取り入れようとする際には知財の価値を評価、また具体的活用方法を明らかにすることは必要ですけれども、中小企業のようにその機能を有しない場合を想定すれば知財の流動性を高めるための環境として技術シーズとニーズのマッチングを行う充実した仲介機能の存在は重要ではないか。
 我が国におきましては特許流通アドバイザー事業や信託業法の改正など、環境整備が進められてまいりましたけれども、第2パラグラフの下から3行目ですけれども、中小企業発の特許技術を活用した事業が成功するなどの事例が現れてきている一方、このような動きは緒に就いたばかりであるという認識で、知財流通市場は未だ萌芽段階にあるのではないか。
 今後、流通市場を活性化するためには知財の価値を事業と一体的に評価し、さまざまな経営資源を導入して事業の立ち上げに関与する機能を求められるのではないかということで、具体的取り組みの@「総合プロデュース機能」の強化ということで、知財単独での価値評価は困難であるということで、事業と一体的かつ総合的に評価されることが必要ではないかということでございまして、次の次のパラグラフです。
 知財仲介事業者には価値ある知財を見出し、多分さまざまなリソースと有効に結びつけて事業化までに関与するプロデューサーとしての能力が求められるのではないかということで、市場ニーズの把握、技術、リソースの動員力、資金調達力などさまざまな能力を指摘しておりまして、16ページでございますが、これらを総合的に備えた総合プロデュース機能を強化することは必要ではないかということでございます。
 ただ、第3パラグラフでございます。こうした資金調達力、交渉力といった多岐にわたる機能が必要とされるわけですが、すべてを1人の人間で具備することは難しく、経験者、金融関係者、弁護士など複数の者から構成されるチームを念頭においた機能が強化されるべきではないかと指摘しております。
 A知財流通市場活性化のための情報・機会提供の拡大ということで、金融制度は整備されましたが、まだ情報が十分に行き渡っていないということで、第2パラグラフ、地方公共団体、商工関係団体による優秀な特許技術を持つ地元中小企業の表彰を契機として、成果が出た事例もあるということで、そういった取り組みを一層促進すべきではないかというのが第2パラグラフです。
 またということで第3パラグラフ、最後の行でございます。広く民間事業者が手がけた知財、仲介事業の成功事例集を作成、公表すべきではないか。また「特許ビジネス市」をもっとやるべきではないかということ。
 Bは農林水産分野における知財流通の拡大のために、17ページでございますが、農林水産知的財産ネットワークの構築が必要ではないかということを指摘しております。
 最後、18ページは技術の相互利用の取り組みということで、国際標準人材の育成支援、またパテント・トロールへの対応の議論の在り方など、これは昨年の分野別戦略においてご議論をいただいたテーマでございますので、エッセンスだけをここに示しております。
 長くなりましたが以上であります。
○相澤会長 ありがとうございました。それでは、これから議論に入りたいと思いますが、これから30分間を目途とさせていただきたいと思います。そこで内容が長いので、論点の1として6ページ〜9ページにわたる範囲、論点2として10ページから最後のページの17ページまで、最後にその他関係と全体についてというような形でいきたいと思います。すでにこの内容についてはお目通しをいただいているということもあり、ご意見も伺っているということでございますので、それぞれについて本文の記載事項を修正する必要があれば、ここのところをこういうふうにという形で具体的にしていただければと思います。どなたからでも結構でございますから、ご発言をいただきたいと思います。
○田中委員 6ページです。ここでオープン・イノベーション、クローズド・イノベーションの定義の仕方について私が理解していないところもあるのですが、それはおいておきたいと思います。『現状と課題』の上から4行目の市場の変化のスピードに対応するよりも経営戦略の流出を懸念するためという部分です。この2つを対比して、市場の変化のスピードに対応するよりもという説明をつけているのですが、これは全く別の次元の話ですから必要がないのではないかと思います。
 市場の変化のスピードに対応できなかったら、その企業はつぶれるわけですから、極論を言えば市場から退場すればいいだけの話です。
 その後の経営戦略の流出を懸念するため、外部との接触に当たって自らのニーズの提示を躊躇するケースが見受けられるという部分はいいと思います。これこそまさに企業戦略の最高機密の部分です。それを相手によって、例えば大学の先生を事例にとって大変申し訳ないのですが、ベラベラしゃべられると何が起こるか分からない。ですから、そういうケースも見受けられるということであればいいのですけれども、わざわざそれを強調する必要もないのではないかと思います。
 それから、その下の方にあります、多くの特許が未利用特許として保有され、その割合は5割を超えている。この表現というのはいろいろなところで見られるわけですが、アンケートの中をみますとクロスライセンスを除くとなっています。ここでもクロスライセンス除いて未利用特許としているわけですけれども、この未利用特許をわざわざ強調する必要性がどこにあるのか。我々はライセンシングする場合にはほとんど包括ライセンス契約でやっていますので、極論を言えば100%使っていると言うこともできますし、アンケートの調査の時と比べて状況がどんどん変わりもしますから、それを強調する必要はないと思います。
 我々の企業の具体的な事例をお話ししますと、現時点で見れば、本社研究開発関係の保有している特許のうち、せいぜい数パーセントぐらいしか使われていないです。
 事業部ですと、30%から60%ぐらい。私は、60%ぐらいを超えたような事業部に対しては逆に製品実施特許しか出していないではないか、未来のために何も手当てしていないのではないかということを強く言います。そういうことを考えますと、この未利用特許が5割を超えているということは特に強調する必要もない。
 ただし、他業種のように自社事業に無関係に利用可能なものは、他社にどんどん利用させるようにしたらいいのではないかということは残してもいいとは思います。
 申し上げたいのは企業の実態とこの文章はちょっと関連性が薄くなっているなということでございます。
 もう1つは次のページになります。クローズド・イノベーションモデルとオープン・イノベーションモデルを定義されているのですが、そのクローズド・モデルの知財戦略に関する文章で「例えば」以降に知的財産についての考え方が書かれています。我々はオープン・イノベーションモデルになればなるほど大量に特許を出して自分たちの立場を強くして、発言権を高めるという、むしろこれが非常に重要なことであると考えております。これをクローズド・モデルの知財戦略だと書かれたら、ちょっと違和感を感じます。「例えば」以降につきましては両方に共通な話で、別にクローズド・モデルかどうかではなくて、企業が生き残っていくために全力を挙げてやらなければいけない基本的な考え方だと思っております。以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○田中委員 もしなければもう少しちょっとお話させてください。8ページにあります知財担当部署の役割ですが、上から4行目のところにバリューセンターへの発展とあります。初めて「バリューセンター」という言葉を聞きましたので、どういうイメージなのかというの解説をしなければ皆さん戸惑うのではないかという感じがいたします。
 その下に国際会計基準の話が出てまいります。この国際会計基準に合わせるか合わせないか。日本も国際会計基準に合わせるかという議論がされているわけですが、特別に知的財産と関連のある議論はほとんどされていないと私は理解しております。この国際会計基準の話を持ってきて、知財のハンドリング、それを放置することは適当ではないというふうに結ぶのは誤解を招くのではないでしょうか。基本的に日本は独自の会計基準、アメリカは独自の会計基準、ほとんどの国はこの国際会計基準を使っているわけですが、開発について資産計上する動きは確かにあります。しかし、知的財産についてどう扱うかという議論は今のところ取り立ててされておりませんので、これは誤解を招くのではないかと思います。以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。中村委員。
○中村委員 オープン・イノベーションのところ、クローズドとオープンということで非常に類型だって整理いただいたこと、非常に分かりやすくなったと思いますし、ありがたいと思います。先ほどご指摘がございました未利用特許のところ、ここは私どもの企業の実態という意味で補足させていただきますと、確かに自社実施でありますとか、ライセンスに活用しているもの以外はすべて未利用かというと、少し乱暴なのかなと。ここはクローズドとオープンの関係にも関係すると思うのですが、研究、クローズドしたい技術のところで特許として保有することによって暗黙的に他社に使用させない、牽制をするという効果を狙って、結果的に利用しないという特許も含まれているわけでありまして、利用する道が今のところ見えていない特許と間接的に牽制効果を持っている特許は明らかに価値として違うと思いますので、そこのところを踏まえた形にしていただければ、前後としては分析のとおりだと思いますので、そこのところを配慮いただければと思います。
 それから、これは先ほどの人材育成との多少関わりになるかもしれませんが、8ページの知財担当部署の役割のところ、まさしくこれからますます市場戦略、技術戦略と知財戦略がいかに整合したものを知財戦略として創出できるかというところで、そういう役割がますます知財担当部署に課せられているということをここで言及いただいているわけですが、そういったことを担える人材という意味で、先ほどの人材育成のところでまとめていただいたような知財人材に経営センスを持たせるという方向と、経営幹部に知財は大事だという言葉だけではなく、それが具体的に何を意味するのかという両方向でその知財を接点にした歩み寄りをすることで経営戦略と知財戦略がうまく融合する、そういったところをこちらにも少し言及いただけるとさらに今後企業に求められているものがはっきりするのではないかと思いましたので、2点補足させていただきます。
○相澤会長 長岡委員。
○長岡委員 4点だけ細かい点ですが、申し上げさせていただきます。最初に米国の状況というところですが、米国と日本のイノベーション・プロセスはどう違うかということで、若干調査をしているのですが、1つ非常に大きな違いは人の流動性です。例えば大学で非常にいい研究をしていた人が事業化を考えたときに、事業化のため、あるいはスタートアップのため、そういう人が動くことで商業化が促進されるというところが、アメリカのオープン・イノベーションを支える制度的な仕組みとして重要だと言えると思います。この点が少し書かれるといいかなというのが1点です。
 それから、4ページですが、後半の方で産学連携の充実というところで、米国ではマニュアルも確かに整備されておりますが、TLOに働いている方の人材の技能といいますか、ライセンス契約等でたくさんの経験を積んでいますし、スタートアップも起こしたことがが重要で、マニュアルに集約化されるのは少しTLOの仕事が矮小化されているという感じがしました。それが2点目です。
 それから、6ページ〜7ページ、先ほどの田中委員がおっしゃった点ですが、未利用特許がなぜ未利用になっているかを調べてみますと、先ほど中村委員もおっしゃいましたようにブロッキングとか牽制のために使われているものも結構あるということで、その意味ではクローズド・モデル、すなわち自社の占有可能性を確保するために使われているというのも相当あるのも事実であると思います。また、非常にチャレンジングな研究をやっていて、まだマーケットが見えないといったものもあります。したがって未利用特許だから一概に非効率だというのは少し言い過ぎだと思います。未利用特許の水準自体も日米でそんなに変わらないという実態もあります。また、7ページでクロスライセンスのところ、これも田中委員がおっしゃったんですが、確かにクロスライセンスはお互いに技術を交換するということでありますので、クロスライセンスをクローズド・モデルに位置づけるのは確かにおかしいかなと思います。
 最後の点ですが、標準の話ですが、事業リスクを低減するということで位置づけるよりも新市場立ち上げ、ネットワーク外部性が非常に重要な分野でネットワーク外部性の力をフルに発揮させる、それで新しい市場を起こすというのが非常に重要で、これを重視すべきだと思います。その意味でネットワーク外部性を入れていただいたら非常に趣旨がはっきりするのではないかと私は思いました。以上であります。
○相澤会長 次に移ってよろしいでしょうか。論点2として10ページからにつきましてご意見をいただければと思います。
○渡部委員 レポート一覧のまとめの資料2を見て、グローバル化ということがスタートになっていて、オープン・イノベーションを支える基盤の整備についての施策が書いてあってという格好になっています。よく見ますと、結局そこに、先ほど10ページ〜15ページあたりに書いてある施策は全部ドメスティックな話になっているんですよね。例えば15ページの民間の特許流出事業者20社〜30社というのはこれは国内事業者のことですね。
 パルミサーノレポートとか、アメリカのあるいはIBMの戦略でこういう流れがあるとは思いますが、決して国内のことだけを考えているわけではなくて、グローバル市場に対して自分たちがどういうリソースを獲得し、そこに働きかけて自分たちにとってやりやすい市場を作るかという、そういう観点だと思います。改めて見ますと、そういう意味ではこの施策、例えば知財流出市場の活性化というのはあくまでもドメスティックな国内の話を何とかしようということが書いてあるんですが、そういう意味ではグローバルな市場形成にどのように係わっていくか。あるいは市場をどのようにして利用していくかという観点がちょっと欠けているのかな。
 これは例えば、現在日本の企業はアジア、海外にR&D拠点を持って、アジアの大学との連携をやって、日本の大学との連携をやって、いろいろな連携をやる。そこで生まれる知識、知財を、いろいろな国で自社事業に使えるという環境をどうやって作るかというのは、最終的には非常に重要だと思うんです。そういうような意味で知財流通市場はどうあるべきかを考えていくという視点で書いていただく必要があるのではないかと思います。
○相澤会長 大変重要なご指摘で、当初の予定ではそこまで力強く書かれるべきであったとは思います。今回そこのところが確かに少し薄いなと私も思います。
 そのほかにいかがでございましょうか。
 佐藤委員。
○佐藤委員 オープン・イノベーションの前提として、12ページにありますけれども、質の高い特許が迅速に付与されることがすごく重要だと思います。お互いに利用している特許がボロボロ無効になってしまうようではこのオープン・イノベーションが成り立たないで、そういう意味ではやはり質の高い特許が構築されるということについて、もっと強調されてもいいのではないか。
 問題なのは、結局、権利の予見性というか、将来この権利がどういう形になるかということが予見できる透明性の高いものであることが流通の基盤になるのではないかと思います。そういう意味では単に先行文献の利用の円滑化というレベルではなくて、権利が透明性、予見性の高いものとして構築されるという構造についても配慮すべきだということを触れられた方がいいのではないかと思います。

○相澤会長 田中委員。
○田中委員 知的財産の流動化といいますか、知的財産のマーケットにつきましては、若干違和感を感じるところがありまして、本当に欲しいのは技術そのものだと思うのです。先ほど渡部先生も言われたのですが、アメリカでは流通マーケットというのはどんどん大きくなってきていまして、基本的には弁護士等々も買うことができて、それがパテント・トロール化するという状況になっています。
 もう1つは、比較的発展途上国のお金のたくさんある企業がどんどん特許権を買い集める。海外の競合企業から攻撃されたとき、その特許権を使って反撃するということも行われています。
 日本が発展していった70年代のような時期を考えてみますと、そういう状況というのは全くなかったわけで、自分たちの研究開発で獲得した知的財産権で自分の身を守るということをやってきたのです。
 ところが今のように流通機構がどんどん発達しますと、これはいいことか悪いことか、そのような評価は度外視しまして、発展途上国等がどんどんそういう特許権を買い取る。それで海外の競合企業が攻めてきたときにはその特許権を行使するという側面、これがもう1つあります。パテント・トロール化するという問題と、それから国境をまたがった権利の移動という例がどんどん出てくる。この2つについてきちっと対応する仕組みを作っていかないと、何をやっているのか分からなくなる危惧があります。例えば大学で生まれた特許権は、日本の企業が目を向けないから海外の企業が買いに来た場合には、当然どんどん売りますよというふうになったら、日本の税金で研究開発して得た財産であるにも係わらず、海外にどんどん移転してしまうということもあり得るわけです。これは必ずしも悪いと言っているわけではなくて、そういうこともいろいろ想定しながら流通というものをきちっと考えていった方がいいだろうと思っています。
 私は知的財産の流通というより、むしろ技術そのものの流通というのをきちっとやるべきだ、知的財産はそれに付随しているものだというぐらいに考えないと、何かおかしくなるなというふうに感じております。以上です。
○相澤会長 前田委員。
○前田委員 大学知的財産の部分で13ページのところです。共同出願の比率が高いことイコール質の低い特許というわけではないと思うわけです。共同研究をしていて使っていただける企業がいる場合、1社独占で製品化してもらうための共同出願をして、いち早く世の中に出すという場合もあります。
 また、大学が本来最も重んじている研究でリサーチツールのような基本的な特許を、1社独占というのはやはりよくない考えだと思いますので、それはやはり学校が単独で持ち、世に広めるということが必要で、ケース・バイ・ケースになろうかと思います。
 1社独占にライセンスする契約の共同出願にするか、または大学でお金をかけてでも持ち続けるかの戦略をきちんとしていくべきです。大学における知財戦略、それができるような人を大学の中に配置して、先生と対等に交渉できるような体制を敷き、先生がお金をもらえるから共同出願になるわけではなくて、将来のことを考えて、どちらでいこうかということがきちんと相談できるような人材を大学の中に配置していかないといけないのではないかと強く思っています。
 日本の共同研究は、日本風のやり方でこれはこれでいいと思いますので、共同出願をするのも製品が近ければ好ましい状況だと思いますし、また、基礎的なものは大学が持つという状況に応じた上手な戦略が立てられるようにしたいと思っています。
○相澤会長 岡内委員。
○岡内委員 16ページですが、Aの真ん中辺ですが、いわゆる地方公共団体や商工関係団体による、要するに信託会社、このことが書いてございますが、大手企業へのライセンスにつなげたという事例が現れているというところを見ますと、これは何となく計画どおりうまくいっているような文章にとれるのですが、実はうまくいっていませんで、実際の費用のやり取りはほとんどない。非常に難しいところがございまして継続がない。というのは中小企業にとって種がないのです。こういう文章を入れるといかにもうまくいっていないということにもなってしまうのですが、その後に「この事例を継続させるためにも」という、文章をつなげていただくと、見る人が見るとうまくいっていないんだなということにもなってしまうのですが、このままいってこれは万々歳、うまくいっていると思われるのもちょっと困るかなと思いますので。
 私どもとしては期待をしているのですが、継続が難しい。今は銀行もボランティアでやっているという状況でございますので、そういうことも承知の上でぜひうまくいくようになってもらいたいと思っております。
○相澤会長 関田委員。
○関田委員 10ページ目ですけれど、これは前回も言ったんですが、10ページの一番下の特許情報データベースの利用の円滑化というのがあって、最先端の技術情報が膨大に蓄積されており、イノベーション創出を加速する、こう書いてあるわけであります。逆行する言い方で申し訳ないですが、アクセス権の制約みたいなもの、要するに日本と外国という対比で見たら、そこら辺がやはり、前回も気になったんですが、今回も気になるものですから、それだけ発言させていただきます。
○相澤会長 田中委員。
○田中委員 13ページのところです。細かい話をしたいのですが、タイトルが「大学からの知財供給の拡大」となっています。公的研究機関も入れて「大学等」と修正しておいた方がいいかと思います。
 それから、大学と企業との共同出願が半分を超えているという、これは良いようにとっているのか、悪いようにとっているのか、ちょっと真意がよく分からないのですが、どうも悪いようにとっているような雰囲気も感じられます。
 私どもが大学の先生と契約するときには、大学単独で発明した特許は大学、企業が単独で発明したものは企業、一緒に考えたものについては共同だという明確な線を引いておりまして、その結果として確かに2分の1を超えるようなケースというのもあるのかなと思いますけれども、共同出願がどうのこうのではなくて、もともと発明とは何ぞやというところからきちっと考えていけばはっきりするものであります。ですからそれがまずいとか、そういう論調というのはちょっとおかしいかなという感じがします。
 それと関連して13ページのBです。特許権の本来的機能は占有性にあり、共有者が存在することにより排他性が失われ、それを活用するインセンティブが失われる恐れがある。これは何を言っているのか分かりにくいと思います。大学と企業が一緒に特許を持っていて、大学から見たら排他性が失われている。つまり企業が使えるからと。大学から見れば、それを活用する、つまりそれを使って金を取るというインセンティブが失われる恐れが多い。こういうニュアンスでこれは書かれているのか。ちょっと意味がよく分かりにくいですね。もともと発明あるいは特許というものはどういうふうにハンドリングしていくのが一番いいのかということを考えれば、この文章は場合によったら必要がないのではないのかなという感じもするのですが。
 例えば大学等の特許の利用率というような統計的な数字が出てきて、だからこうしなければいけないのだという論調がすごく多いのですけれども、数字そのものはそれぞれのアンケートの問いに対応して結果が出てきております。そのアンケートがどういう条件で取られたかをきちっとチェックしていかないで、うかつにこういう数字を使いますと、皆さんをミスリードするような恐れも出てくるのではないかという感じもいたします。
 私は大学等の特許の利用率が国内平均の2分の1、40数%の国内平均に対して20%あるというのはびっくり仰天でございまして、私どもの本社の研究開発における特許の利用率はせいぜい数パーセントです。それに比べると非常に使われているなという、実は逆にびっくりしております。一般的に見たらこの数字はそんなに少ないのという受け取られ方をするのではないかなと思います。しかし、大学がベーシックな研究からスタートしているとすれば、すぐ使われないものの方が多くて当たり前なのではないかと私は考えています。以上でございます。
○相澤会長 ただいまの田中委員のご指摘、前田委員のご指摘は共に共同出願というものの位置づけが多少ミスリーディングになる可能性があるということですので、その内容を整合性あるものに。
 中山委員。
○中山委員 共有というのは特許、著作権だけではなくて、所有権の共有も同じなんですけれども、に使いにくく、解消が好ましい。使いにくいという意味は、利用ないしは実施、ライセンス、譲渡、担保権設定等々の全部の話ですが、非常に利用しにくいシステムなんです。共有になるときはもちろんあるわけですから、特許法にも民法にも共有規定はありますが、可能な限りは共有関係は避けた方が利用関係には好ましい。
 その後の問題は契約でやればいいんです。共有という物権的なシステムを使うのではなくて、契約でそれをできる。それを考えますと共有というのは積極的にいいとは思えません。
○田中委員 あとで契約を結んで単独所有的な、そういう意味ですか。
○中山委員 そうです。共同出願をして、後から出願中の権利を譲渡して単独の所有にしても同じです。出願だけがどうこうというのではなくて共有自体の話をしているんですが。
○相澤会長 長岡委員。
○長岡委員 私も今、中山先生と同じ考え方です。産学の場合と産産の場合で共有の意味が違ってくると思いますが、産学の場合でも共有で特許を持っている場合には例えばライセンスをするときに相手の承諾が必要だとか、あらゆる問題が出てくることがあって、発明者を出している組織が自動的に権利を持つという考え方でやりますと、発明の利用を阻害するということもありますの。従来日本の大学の場合はひな型契約にかなり左右されてきた。独自に契約を考える専門家はいなかったということの影響が非常にあると思いますので、最終的に権利をどういうふうに商業化するのがいいのかという観点から、ゼロから契約を考えるということを促すのが今後重要だと私は思っています。
○相澤会長 それでは時間もかなり押していますので、残りの部分といいましょうか、その他の部分、それから全体についてコメントがございましたら。
○岡内委員 このオープン・イノベーションというものに対して中小企業という言葉が出てこないのですが。中小企業、とにかくすべてに余裕がないところでございますので、オープン・イノベーションといってもあまり浸透しないかと思います。実は私どもの会社は意外とそういった意味では早くから取り組んでおりまして、非常にメリットがあるということをご紹介しながら、メリットがあるんだったら中小企業の経営者は早い決断ができますので、ちょっと卑近な例で申し訳ないんですが、私どもの状況を、ちょっとお時間をいただきたいと思っております。
 私どもの会社はただ競合がありませんものですから、これがすべての中小企業の人たちにとって参考になるかどうかわかりません。私どもは簡易分析という現場である程度の化学的判断ができるものを作っております。今では食品に入っている農薬、これは皆さんほしいと思っているんでしょうけれども、残念ながらこれは今できません。
 ただこういう要求、法律が変わる、あるいは環境が変わるということでいろいろな要求がありますが、とても社内だけでは解決できません。こういう技術を提供してくれるところはないかということを大学、TLO、知財、それから産総研さん、大手企業さん、こちらに持ちかけておりまして、正直言ってうまくいっております。カタログで見てみましたら、すでに10製品ができ上がっておりまして、これは全部カタログに載せております。どこそこの技術をいただきましたということをやりますと、今度はそれを見て、ここに持っていくと作ってくれるのではないか。あるいは自分の技術が利用できるのでないかと多くの情報もいただいてきております。
 結局、私どもとしては非常に沢山の情報をいただき、それから試作を作ったときには検証、それからうまくいかなかったときのやりとり、こういったことも全部教えていただきながら、うまくいったときには先生方に論文を書いていただいています。それから、私どもで場合によってはパテントを取らせていただいています。非常にメリットが大きいんです。今でも先ほどの農薬の話もありますけれども、いろいろな形で要望だけはたくさんあるんですが、とてもやりきれない。それを今十何項目手がけておりますが、まさにオープン、お互いにオープン、私どもの技術もフルに出し、向こうの技術も頂戴しながら進めているという状況でございます。
 ただ、気をつけていただきたいのは、何でもかんでもうまくいくかというと、やはりはっきりしたビジョンと、それからお互いの技術、どこまで公開をするかということのやりとりも必要でございますので、中小企業の人たちが今すぐこういう形でできるかというと、それはそうはいかない場合もあるかと思います。うまくいったときには非常にメリットがありますので、中小企業もぜひオープン・イノベーションというものに対して興味を持ち、実施をしていっていただきたいなと思っております。
○相澤会長 具体的に本文のどこかにそういうようなことを入れる適切な場所がございますか。
○岡内委員 そうですね。具体的なこととしてオープン・イノベーションを用いることによってうまくやっている中小企業もあると。それはどこの部分かまでは。
○相澤会長 はい、表現は検討させていただきます。
○岡内委員 よろしくお願いいたします。
○妹尾委員 この会議の前提になっているのは知財の創出、権利化、活用という例のサイクルですね。これが前提になっているんですが、オープン・イノベーションになったときにはそのサイクルは逆回りもあるぞということがあります。すなわち事業で活用することを起点にして、次に知財戦略、どういう特許だとか、ノウハウ秘匿だとかを考えて知財マネジメントを構成し、最後に足りない技術をどういうふうに創出させるかとか、アウトリソースから持ってくるかという順番の話もあるわけです。それは、我々がここで今まで前提にしたこの右まわりのサイクルではない、逆回りの左まわりのリバースサイクルになります。それが実はここの議論の背後に隠れているのだということを1点ご指摘させていただきたいと思います。
○相澤会長 大変重要なご指摘がありました。
 そのほかにございませんか。
 三尾委員。
○三尾委員 10ページのアクセスの改善のところですが、いろいろな文献にアクセスできるということは重要なんですが、さらに一方進めて情報を整理していただくというところまで実施していただけないかなと思います。例えば分野ごとにデータベース化するとか、この技術に関してどういう特許があるのか、先行技術があるかを調べるときに、例えばキーワード検索ができるとか、そういうシステムを作っていただくと主に中小企業などがユーザーの場合にライセンス契約等のオープン・イノベーションを検討するうえで、簡易に最初の露払いをすることができるのではないかというような気がいたします。
○相澤会長 長岡委員。
○長岡委員 細かい点で恐縮ですが、クローズド・モデルの定義で、要約の方ですが、知的財産権を他社の参入阻止のための防御壁として利用ということになると、かなりいろいろな意味があり得て、競争政策上問題がありそうな分野まで入ってくる可能性もあるように思えますので、「自社技術の独占的実施のために知的財産権を防御壁として使う」という方がより趣旨にかなうとのではないかと考えた次第です。
○相澤会長 たくさんのご意見をいただき、ありがとうございました。この件につきましても日程上の問題がございまして、知的財産戦略本部の会合に報告する必要がございますので、ただいまいただいたご意見をでき得る限り取り入れた形で修正をさせていただきます。
 意見の対立というところよりも、むしろ表現ぶりが適切であるように修正するということになるかと思います。それから新たに付け加えるべきということでご指摘があったものについては、それも取り入れるような形で扱わせていただきます。
 この修正案を委員の皆様に開示させていただいて、その最終的な取りまとめは会長にご一任をいただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
 それでは、修正されたものを本専門調査会の報告書として本部に報告をさせていただきます。
 それでは、ただいまのオープン・イノベーション関係については以上とさせていただきます。最後にもう1つお諮りしたいことがありますが、時間の関係でなかなか難しい状況になってまいりました。その件は「知的財産推進計画2008」の策定についてでございます。この「2008」の検討が知的財産本部の有識者本部員を中心としてこれから行われてまいります。
 この際、専門調査会の皆様からも「2008」に向けてのご意見をいただきたいと思うのですが、時間がもうほとんどございませんので、ぜひこれはご意見がございます場合には書面で事務局にお寄せいただければと思います。ただ、ここの席でぜひこれだけはということがもしございましたら簡単にご意見を述べていただいても結構でございますが。
 それでは、書面で事務局にお寄せいただきたいと思います。
 本日用意いたしましたのは、以上の内容でございます。この専門調査会は非常に精力的に動いていただきまして、これで2つの報告書をまとめることができました。この専門調査会は今回で一区切りとさせていただきたいと思います。短い期間に大変精力的にこの検討に加わっていただきましてご審議いただきました。心から感謝申し上げたいと思います。
 それでは、事務局から何かございますか。
○松村事務局次長 熱心なご審議ありがとうございました。時間が許せばいただいたご意見に事務局として考え方を申し上げたほうがよかったかもしれませんけれども、会長にご一任ということで、これから事務局として意見を踏まえて報告書を手直しして、ご発言いただいた委員の皆様及び会長にご相談をしたいと思います。
 非常に短時間でご議論をいただいて、事務局の能力の限界もあって、まだまだ本件につきましても議論が足りないところがございますので、前回、中村委員からいただいたテーマなども含めて、今回の「推進計画2008」にどう取り入れるかということも当然ですけれども、秋以降の審議にも今日いただいた、もっと議論すべテーマを考えて、またご提案させていただきたいと思っております。
○相澤会長 会長としては先ほどのようなごあいさつを申し上げましたけれども、今日いただいたご意見のうちいくつかはこの専門調査会の枠を超えているように思われます。しかし、私が関係しているところでも検討している内容でございますので、でき得る限りいろいろな形で反映できるように努力させていただきたいと思います。
 それでは、以上で今年度の専門調査会の最終回でございますが、閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
(以 上)