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第7回 知的財産による競争力強化専門調査会 議事録

  1. 開 会 : 平成20年10月31日(金)14:00〜16:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 相澤会長、岡内委員、河内委員、関田委員、妹尾委員、田中委員、辻村委員、
    中村委員、前田委員、三尾委員、渡部委員
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 政策レビュー及び第3期基本方針の在り方について
    ・知的財産の創造について
    ・知的財産の保護(国際知財システムの構築に向けた取組の強化等)について
    (3) 閉  会

○相澤会長 若干定刻より前かもしれませんが、ただいまから知的財産による競争力強化専門委員会、本年度の第2回目になりますが、開催させていただきます。
 本日は大変お忙しい中をご出席いただきまして、ありがとうございました。
 なお、本日は加藤委員、佐藤委員、長岡委員、中山委員はご欠席との連絡をいただいております。
 これから大変ハードなスケジュールが進み、毎回検討していただくことが大変多い状況でございますので、どうぞよろしくお願い致します。
 本日は、政策レビュー及び第3期の基本方針の在り方についてご議論いただきたいと思っております。資料としては知的財産の創造の部分、それから知的財産の保護の部分を用意してありますが、時間の関係で知的財産の創造を終わって、知的財産の保護については一部ということになるかもしれませんけれども、よろしくご議論いただきたいと思います。
 それでは、本日の資料に基づきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○内山事務局次長 まず最初に、配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。
 資料1でございますけれども、これまで講じてきた施策概要及び現状ということで、これは前回も配付いたしました施策の現状等のファクツシートでございます。これはまた評価の際のデータとか背景にもなってございます。
 それから、資料2でございますけれども、施策レビュー及び第3期の知財戦略の在り方について(討議資料)ということで、これを中心にご説明をしたいと存じます。
 資料3でございます。これは3年前の第2期の重点項目の実施状況に関する評価(案)でございまして、この位置づけは今後各委員にやっていただきます各論のレビューの結果として最終的に固まるものということでございます。あくまで現時点での事務局の評価でございますので、ご参考として配付をしてございます。
 資料4でございます。これは本日ご欠席の佐藤委員からご提出の資料でございます。後ほど簡単にご紹介をさせていただきたいと存じます。
 それでは、まず、創造についてでございますけれども、資料2をごらんいただきたいと存じます。1.知的財産の創造の@大学、研究機関、企業における創造力の強化ということでございます。
 資料の構成でございますけれども、各項目ごとに(@)、施策の成果に対する評価ということがございまして、さらにその視点が幾つか、視点1とか2とかございます。その冒頭に枠囲いで評価の概要と課題を取りまとめておりまして、評価の詳細につきましてはその下に記載をするような、2ページ以降に記載をしているような形になってございます。次に6ページ目になりますけれども、(A)というところがございまして、第3期の政策目標と評価指標というのを掲げてございます。そして最後に、そのページの下のほうに、(B)ということで、今後構ずべき主な施策を取りまとめております。そういった構成になってございます。
 それではまず、@の1ページ目に戻っていただきまして、大学、研究機関、企業における創造力の強化という項目から説明させていただきたいと思います。
 まず視点1でございますが、イノベーションにつながり、かつ重要特許を獲得できるような発明の創造環境は十分整備されているかという点でございます。資料1のファクツシートも適宜ご参照いただければと存じます。図表等にございますように、我が国の研究開発投資というのは年々増加をしておりますし、世界でも我が国由来の特許登録件数というのもおおむね順調に伸びているということでございます。
 一方、資料1の1ページ目の図表4というのが右肩にございます。日米欧の重要特許の国別所有割合の例というのをご参照いただきますと、技術分野別の重要特許の獲得状況につきましては、我が国が欧米に勝る分野もございますけれども、劣っている分野もあると、こういうことでございます。
 こうした中で、重要特許を獲得できるような革新的技術を創出して迅速に発展させ、イノベーションに結びつけていく、このために総合科学技術会議におきましても革新的技術戦略をことし決定をいたしまして、大挑戦研究枠の設定や、社会ニーズに対応した革新的技術の研究開発の支援への取組が現在進めてられているところでございます。
 しかし、研究の現場におきましては、大学におきます重要特許獲得に向けた研究者の意識、またオープン・イノベーションの進展に対応して企業が大学を活用しようとする意識は乏しいというふうに考えられ、また、技術・特許情報を体系的かつ容易に入手できる環境の整備が不十分であり、研究開発戦略、知財戦略の連携が必ずしも図られていないのではないかと考えられます。
 次にページをめくっていただきまして、4ページを見ていただきますと、視点2、大学等の国際的展開を一層加速すべきではないかという点でございます。この評価につきましては、我が国の大学における外国企業等との共同研究、これを始めとする国際的な活動が低調ではないか。その要因といたしましては、必要なポリシーあるいはルール、人的・金銭的リソースなど、グローバル・サポートの機能が大学の学部あるいは産学連携組織、そういったものを含む大学事務局、TLOに不足しているのではないかということ。
 また、大学が外国出願すべき特許の着実な出願のためのサポート体制も必ずしも十分ではないということでございます。
 5ページ目に視点3、職務発明制度がございます。これにつきましては、2005年度の特許法改正がございまして、産業界からは知財の創造活動が活発になった要因の1つとして評価をされておりますが、法改正以前の職務発明の取扱い、また改正後の職務発明制度と諸外国との制度の関係につきましては引き続き評価し、必要に応じ見直していくことが適当ではないかと考えられます。
 そういった視点、それぞれの評価に基づきまして、6ページ目に第3期の政策目標と評価指標を掲げさせていただいております。まず、政策目標の1でございますけれども、独創的なシーズの創出、社会のニーズに対応した革新的技術の研究開発の促進によりまして、iPS細胞に関する研究成果のような革新的な発明の創造を加速し、着実に重要特許を獲得していくということでございます。
 評価指標といたしましては、主要分野におきます重要特許の獲得状況。また、主要分野におきます3極コア出願の数というものがあろうかと思います。
 政策目標2でございますけれども、研究開発戦略、知財戦略の連携を図る観点から、大学におきます重要特許の獲得に向けた研究者の意識、また、企業が大学を積極的に活用する意識を高めるとともに、技術・特許情報を体系的かつ容易に入手できる手段を整備するということでございます。
 評価指標としては、政府の研究開発投資の採択評価の際に知財戦略の利用がどういうふうになっているのか。あるいは特許の被引用数の集計の整備状況と利用状況。また、技術戦略マップへの特許情報の記載状況などがございます。
 次に、政策目標の3でございますけれども、グローバル化、オープン・イノベーションの進展に対応して、大学の国際的な展開を行うために必要なポリシー、ルール、人的・金銭的リソース等のグローバル・サポート機能を整備するということでございます。
 評価指標といたしましては、こうしたグローバル・サポート機能の整備状況、あるいは大学の特許のグローバル出願率、また現在ほとんどゼロでございます外国由来の研究費の全体に占める比率を1%以上にするというようなことが考えられます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、ここに掲げてございますように、重要特許獲得に向けたインセンティブの向上、7ページ目にございます効率的な情報取得環境の整備、また大学の国際知的財産活動体制の強化が考えられます。
 次に、8ページ目に、産学官連携によります知的財産の円滑な事業化という事項でございます。まず、評価でございまして、視点1、知財の目利き、事業化を総合的にプロデュースする機能を実現する観点から、大学の産学官連携組織やTLOに不足しているものは何か。その実現のため、産学官連携組織やTLOについて、統廃合を含め抜本的に見直しを行うべきではないかという視点でございます。
 評価でございますけれども、我が国の大学におきます知財活動、これは着実に活発化をしてきておりまして、資料1の2ページ目をご参照いただきますと、下の枠囲いのところに産学官連携の多様な成功事例というのをお示ししてございます。例えば産業界、社会のニーズへの対応ということでは、九州大学、産総研、これが水素材料先端科学研究センターというのを設置をいたしておりまして、産業界のニーズを踏まえて、来るべき水素社会到来に向けた基盤整備に取り組んでいることが挙げられます。
 また、創業拠点ということの整備につきましては、岡山のリサーチパークインキュベーションセンターもございます。そしてまたベンチャーという形態としては、理研初の認定ベンチャーとしてのメガオプトの設立。それから、地域・中小企業の活性化、クラスターの形成では、函館のマリンバイオクラスター形成があり、いろいろな多様な成功事例が展開をしてきているということが見てとれます。
 資料2に戻っていただきますと、8ページ目でございます。そういうような産学連携の成果の多様化の中で、他方、大学の産学連携組織、TLOに期待をされております社会ニーズを踏まえた研究テーマの設定、支援。あるいは、有用な技術の評価・選定。特許化の業務支援、さらには、企業に対する新しい事業コンセプトの提案、そういったものに係るいわば総合的な機能というのは不足しているとの指摘もございます。
 これらは、大学自体の産学連携に対する意識は必ずしも十分ではなく、産学連携組織、TLOの機能を実現するための人的・金銭的リソースが不足していることが理由であるのではないかと考えられます。
 また、共同研究・受託研究の成果のより円滑な活用のために、共同出願あるいは不実施補償の問題など、その成果の取扱いについては引き続き適正化を図っていく必要があると考えられます。
 ページをめくっていただきまして、10ページ目に視点2がございます。産学官の情報共有、人材交流等が不十分ではないかという点でございます。産学官のオープン・イノベーションの実現に当たりましては、企業、大学、国の研究機関のそれぞれの強みをいかした効率的な協議が不可欠でございますが、大学からの情報発信、それから企業からの大学へのニーズの伝達など、必要な産学の情報共有に係る環境・体制整備が不十分ではないかということでございます。
 また、産学官におきまして、人材交流を活発化する必要もございます。特に、大学から企業への人材流入が少ないことが課題ではないかというふうに考えられます。
 次に、11ページ目に視点3がございます。ベンチャーでございます。大学におきます研究成果を大学発ベンチャーの創出につなげるとともに、その成果を社会還元するための多様な支援体制、あるいはリソースが整っているかという点でございます。
 大学発ベンチャーの積極的な展開が大変期待されるところでございますが、現実には従来から指摘されております経営面での人材不足、あるいは厳しい資金調達の現状があるほか、一部非活性な大学発ベンチャーが存続している、そういった問題がございます。ベンチャーの特性であるダイナミズムを欠くというのではないかと考えられます。
 そういった評価を踏まえまして、次の12ページ目の第3期の政策目標と評価指標でございます。まず、政策目標1に、大学の産学連携組織及びTLOの抜本的機能強化、産学官の情報共有に係る環境整備などによる媒介機能を強化いたしまして、多様な形態での産学連携の成功事例を多数輩出していくという目標でございます。
 評価指標でございますけれども、特許権実施料のみにとらわれず、著作権使用料あるいは共同研究費といったようなものを含む大学の産学連携組織・TLOが関与する産学連携による全収入としていくということが1つ。大学の研究成果を活用した事業化、製品化の件数などでございます。
 それから、政策目標2でございますけれども、大学発ベンチャーの新陳代謝を促進し、これまでにない新しい製品、サービスを生み出すようなベンチャーを多数創出し、研究成果を円滑に社会還元するという目標でございます。
 評価指標といたしましては、大学発ベンチャーの設立数あるいは休眠状態の大学発ベンチャーの状況、大学発ベンチャーにおける製品化の件数。また、IPO、M&Aの対象となった大学発ベンチャーの数というようなことで。多様なベンチャーの発展ルートの検証が必要ではないかと考えております。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、産学連携組織・TLOの統廃合あるいは専門化、また、産学連携機能に係る外部機能の積極的・効果的な活用。13ページ目にございます大学、企業の情報共有に係る環境の整備。それから、大学発ベンチャーの活性化というようなことが考えられます。
 以上でございます。
○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明のありましたところまでを1つの区切りとして、これから議論をしていただきたいと思いますが。
 ご欠席の佐藤委員から意見が届いております。これを、どうでしょうか、事務局から簡単にご説明いただきましょう。
○内山事務局次長 資料4をちょっとご参照いただきます。佐藤委員のほうから5ページにわたるご意見をいただいておりますので、まず創造の分野についての意見だけ簡単に目で追っていただければと存じます。
 1ページ目の中段の魅力ある創造活動に向けた構造改革ということで、(1)イノベーションへのインセンティブを与える方策の検討を行う。(2)創造分野での我が国独自の視点を持つ。2ページ目でございます、(3)大学を支援するプロデュース活動を行う。(4)国と企業とが連携した活動を図る。2.イノベーションサイクル創出に向けた戦略の実行というところでございますけれども、(1)として、産学・国内外のイノベーションの相互活用を促進するため知的財産情報の流動化を進める。(2)産学・国内外のイノベーションを活用して市場を活性化するための人材と機能の開発を行う。
 以上でございまして、以下の部分は次の保護の分野の際にご紹介をいたします。
○相澤会長 それでは、どんな角度からでも結構でございますので、ご意見をいただければと思います。いかがでございましょう。
 どうぞ、関田委員。
○関田委員 関田でございます。私、素材産業にいる者ですけれども、前回欠席させていただいて、そのときはコメントをつけさせていただいたんですけれども。その中に、今回のこの資料で盛られています産学連携について、大学によっては産学連携というのは余り先生方の評価につながらないような大学があるやに聞いたことがございまして、それを前回コメントさせていただいたんですけれども。今回この12ページの上のほうですか、政策目標1の下の評価指標というところですよね。いろいろな意味で、例えば共同研究費なんかも評価対象にするとかいうそういうような政策というのは非常に私どもとしては賛成だなというふうな、ちょっとコメントでございますけれども、そう思っておりまして。
 やはりだんだん恐らく企業サイドも大学サイドも産学連携盛り上がってはきてると思うんですけれども、それをやはりよいしょと押してあげるような政策というのがあればもっと進むんじゃないかというふうに思います。
 以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 田中委員、どうぞ。
○田中委員 幾つかございます。大学における特許査定率は60%ぐらいで推移しております。企業全体の特許査定率の平均が50%ちょっとですので、それよりいいことは確かです。しかしながら、まだ大学においては重複研究がかなりあるというようにも見てとれます。したがってそのように考えると、今後の施策の中にも論文情報を統合した検索システムを整備していくことがありましたが、これは研究開始前に過去の研究テーマを確認するためにもちろん必要ですが、さらにそのシステムの利用をきちんと促す施策がより大事だと思います。つまり、折角のシステムが使いにくいという話もあるということなのです。よって、利用者の利便性をきちんと図る、それと同時にシステムをどんどん使うようなことを何か施策として打ち出す必要があるだろうと思います。
 海外の特許出願件数についても民間企業に比べれば少し多くなっていますので、若干ほっとしております。ただし、大学からは基本特許なり重要特許なりが出願されるのが当然一番期待されるのですから、もっと海外の特許出願を増やさなければならないと思います。そのためには、その出願・登録等の費用をどうするかが大きな問題です。
 知的財産本部、あるいはTLO等がつくられ、また様々な支援が行われてきました。しかし中には時限立法があり、ある時点以降は支援するための費用等が削減されていくものもあると思います。大学等の出願に対しては、特許庁の審査等にかかる費用を優先的に少なくしていくという考え方が打ち出されていました。しかし平成19年度にはもう打ち切られて、大学及び公的研究機関でも年間で5億円ぐらいは審査等にかかる費用が必要になるようです。これに関しては民間企業もみんなで協力して支援していく必要があると思います。
 もう1つは、海外出願支援のJSTの予算は、トータルでは20数億円ありますが、海外出願自体の部分だけをみると、おそらく5億円くらいではないかと思います。
 大学発の特許出願が増えてきたことは非常にすばらしいことなのですが、残念ながらみんな資金的に苦しくなって、売ることができるものはインテレクチュアル・ベンチャーズにでも何でも売ってしまおうという変な動きが出てきていると思います。一度組織をつくると、それを維持していこうという考えがどうしても働きます。すると、売ることができるものがあれば売ってしまおうということになるわけです。この前もお話しましたように、特に国立大学法人においては国税によって得られた成果を、今後どのような動きをするのかわからないような海外の組織に売ってしまうことは、大変大きな問題だと思いますので、国としてもきちんとした見直しをするべきであろうと思います。
 知的財産本部やTLO等をつくったときは、おそらく数年援助すればそのうち自立できるのではないかという幻想のもとにスタートしたのではないかと思います。当初、マスコミも特許というのは非常に儲かると騒いだものですから。しかし我々産業界からみますと、特許は事業をきちんとやっていくために必要な手段であって、特許が儲かるということはないと思っています。ですから、知的財産本部やTLO等が数年経てば自立できるのではないかという幻想のもとにいろいろな施策がスタートしていたとするならば、今回はきちんと見直していくことが必要だろうと思います。国全体としても、上がった成果を国の財産としてきちんと積極的にキープしていくべきだろうと思います。
 他にもありますので、続けさせて頂きます。大学等で出願された特許等について、企業は案外その中味を知らないのです。もちろん1年半たてば公開されますので、積極的にリサーチすれば内容を見ることができるわけですが、大学側がもっと宣伝し、企業側に知らしめる努力をしていくべきだと思います。他方、企業側も積極的に大学側の発明をしっかりと評価する姿勢が必要だと思います。そのような支援をこれからの施策のなかできちんとやっていく必要があると思います。
 また、大学によっては、契約している企業には出願後すぐにその内容を知らせるということもやっています。東工大の場合には、会費を払っている企業に知らせています。これはすごく大事なことだと思います。つまり、企業が見て、もし出願の内容に不十分なところがあればサジェッションして、いい権利を取得するためにクレームなどを変更して、特許として強くしていく。そのようなことも場合によったら大学・企業共同でできるわけです。もちろん、守秘義務等をきちんと課さなければいけませんが、そのようなことをきちんとやって企業とも連携していく。そして、大学発の重要な特許をきちんとした強い権利にしていくという活動も、これからはしっかりとやっていく必要があると感じております。
 以上でございます。
○相澤会長 どうぞ、前田委員。
○前田委員 田中委員がおっしゃったこととかなり近い部分もあります。何点かありますので、順を追ってお話しさせていただきたいと思います。まず始めに、企業と組んで強力な特許にするというのはとても大事なことで、本学もTLOの会員企業には公開になる前の特許をお見せするシステムをとっています。
また、大学で保有する特許は、それをライセンスすることでいくら稼ぐかだけではなくて、むしろ共同研究や受託研究相手を見つけるためのえさなのだと思います。そこで、良い技術が出ているなとか思ったときに、公知チになってしまわずちゃんと特許になっているということで、企業と組んでさらに発展をさせたり、例えば、1社独占で、もっと良いアイデアを付加させて優先権を主張してもらったりとかするための大事ツールであると考えています。さきほど、田中委員がおっしゃった方法がまさしく産学連携のきれいなモデルケースの一つではないかと思って聞いておりました。
 また、初めの部分のところの、「イノベーションに繋がり、かつ重要特許を獲得できるような発明」についてですが、医療行為の特許の改正を特に望んでいます。医療行為の特許は、かなりの範囲を物質で抑えることができるように、現在はなっていると思います。また、装置を主語にしていろいろ特許を書いていけばかなりの部分が、医療行為そのものが特許にならなくても権利を特許にしていくことができるようになってきたと思います。
 ただし、お金のないベンチャーや大学はいろいろなケースを考えてたくさん特許を出すというほど資金がありませんので、それぞれの物質で特許出願するという方法は資金力のたくさんある大企業がやれることであって、基本的な特許1個出して、かなりの広範囲を押さえるということが難しい現状では、資金力のない企業が不利になってしまう状況になろうかと思います。
 是非、本当に医療行為のところまで特許にするのがいいかどうかは別として、基本特許が救えるような、数少ない特許で救えるような方法に医療行為の特許改正の議論がなされていければ嬉しいというふうに思っております。
 次に、政策目標2のところで、論文と特許を融合させるというところですが、まさしくこれは大事だと思います。特に、工学系の先生は特許の大事さをかなりわかっていらっしゃいますが、医学系のところの先生はまだまだです。ですから、特に説明会などを頻繁に行い、特許マップ等、特許の検索をすることで、どこがまだまだ研究が手薄なのか、どこがもう押さえられているのかがよく判って、研究の戦略の方向づけにもなろうかと思いますので、各研究者に特許、論文の両側から見てもらえるようなふうに広報とか周知がなされるようにしていく活動がとても大事だと思います。
 本学でも7月に臨床の医学部の教授陣の前で、お時間のない先生80人ぐらいの中でさせていただきました。通常の説明会では、基礎研究の先生はいらっしゃるんですが、臨床のお医者様は忙しいのでなかなか出席できないです。教授会の議題と議題の間にはさんでいただいて、説明をさせていただきましたら、その翌日からすぐにマテリアルトランスファーアグリーメントの相談だったり、海外との技術連携、発展途上国との技術支援のお話だったり、特許相談以外にも、かなりいろいろなところのよろず相談がふえております。広報活動がとても大事だと思います。
 それから、人的交流・人材交流が不十分ではないかというところについてお話しさせていただきます。私の知り合いで、日立製作所のリチウム電池の研究者が、現在、九州大学の水素材料開発のところの特任教授で企業から出向で行っております。大学は現在、企業を定年になられた方が大学にまた再雇用されて教授になられるというケース多いです。しかし、現職の方が入ってきて、もっと活性化しようとしても、大学というのは年功でお給料が決まっているという事情がありますので、企業と比べると給与が下がってしまい、なかなか不利になるというような状況もあります。私は、先ほどのケースがすばらしいなと思ったのは、自分で新エネルギーの研究をしていた人が大学に出向で行って、例えば5年間なり何年間かを特任教授になって、基本的なところの研究に携わり、そこで得たアイデアを持って、また企業でそれを自分で使うというような、出向というような制度をうまく使えば、本人もアンハッピーになりませんし、企業もそこで得た知識がそのまま自分の企業に持って帰れるわけですから、まさしく産学連携がよく進むようになるのではないかなと思いました。だれも不幸にならない産学連携を上手に取りつけていっていただけると良いと思っています。
 大学は教員と事務職の2つしかポストがありませんで、知財本部のようなあいだのようなポストの人をどうやって雇用するかとか、いろいろな問題があろうかと思いますので、だれも不幸にならない、かつ、良い人材がいい雇用させる方法を考えていくと、人材交流が非常に進むんではないかなというふうに思いました。
 次に、A3用紙の1ページ目ですが、右下のJSTによる大学の海外特許出願件数についてです。これはJSTが大学の海外出願を支援してくださるもので、本学も半数強支援していただいています。こちらのように件数で表示されるとすごく少なくなってきているように見えると思うんですね、2006年から2007年。金額が少し下がったのかもしれませんが、実はこれはPCT出願したものが各国移行になっていったりとか、いろいろなパターンが出てきた結果だと思います。
 本学もPCTの出願はすぐ合格するのですが、各国移行へ持っていこうとすると費用がかさみますのでなかなか合格してもらえない。でも、本当に事業化になりそうなものこそ各国移行のほうにもっていってもらわなければいけないのです。
 件数で表示されて、何とか件数をかせごうとJSTの方が思われると、PCT出願のほうばかり合格して、各国移行のほうが費用がかさむ分だけ落ちてしまう可能性があります。ですから、ぜひ金額表示とかで表示していただいて、なるべくたくさんいただけるように頑張りましょうねみたいなふうな表示になるとありがたいかななんて思っています。
 本学の事情で言いますと、どこの学校もそうかもしれないですけれども、やはり各国移行にいく段階で落ちてしまうという場合が大変多い状況になっております。それをぜひお考えいただけますと幸いです。
 どうもありがとうございました。
○相澤会長 ありがとうございます。
 それでは、河内委員。
○河内委員 私も素材産業なので、化学産業の将来を考えると大学の萌芽的な基礎的研究成果についてものすごく期待しているわけです。ところが、一方、大学の知財本部あるいはTLOの体制というのは、数はふえたということですが当初行政の体制の中で予算的な支援を期待してそれなりの体制ができていったと。けれども、本当にどういう人がどのぐらいの機能を果たしているのかというのがきちんと評価されているのかどうかというところが私は非常に気になっております。
 この問題、前からずっと同じような指摘を皆さんされておられるのですが、現場の実態に則して何が課題で解決の為に何をするんだというのを、省庁縦割りじゃなくて一緒に今までどのぐらい議論されて、具体的な提案をしておられるのかという点を私は問題視をしております。
 したがって、早く体制の整備に手をつける必要があると思います。これは人の問題が絡むのでかなり時間もかかりますし、企業のOBなりを採用するというようなことから始まるとしても人の育成、体制づくりというのはかなり計画的につくらないとなかなか難しい点が多いんじゃないかなというように思います。こういう場では我々は外からの意見は言いますけれども、実際の責任あるラインとして何をすべきだということを具体的にやはり提案してほしいなという感じがしております。
 それと、企業はどちらかといえば、大学の研究成果をできるだけ自分の権利の中に早い段階から取り込もうという思いがどうしても出るんですけれども、すなわち1企業が芽の段階を押さえ込んでしまうと。ということは、それが萌芽的な研究成果であればあるほど、将来の発展性の芽を摘んでしまう可能性があるということです。そういうことに対してやはり大学は自分自身で知財戦略をある程度考え対応する力がなかったらそういうことになってしまうと思うのです。
 だから、私は最初に言いましたように、やはり大学の知財本部、TLOの機能のあり方というのをぜひ早く検討する必要があると思います。
 それから、どうしてもお金の話がやはり出てくると思うんですけれども、戦略的研究とか重点分野の研究に対して資金が出ます。今回も革新的技術戦略ということで総合科学技術会議がある資金をもって運営して管理していくと。そのときに、そういう研究の成果物としての知財を一気通貫で管理していくようなことを考えないと。研究は研究、知財は知財ということでなく研究の成果はやはり知財としてきちっと権利化することによって結実するわけですから。その予算的な処置も一気通貫で考えるような制度設計を是非していただきたいなというふうに思います。
 以上です。
○相澤会長 大変重要なご指摘がございました。
 そのほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、岡内委員。
○岡内委員 日本の中小企業、一様に新規開発が少ないということは特許の出願件数を見てもおわかりだと思います。もともとこの体質をつくったのは大手企業さんだと思っています。といいますのは、大手企業さんが新製品をつくったときに、パーツを下請けに流す、そのときに製品そのものは全くわからないような形で単純に部品だけを渡していく。これは非常にいわゆるノウハウなり、あるいは秘密保持という意味では大きな効果があったと思いますけれども、結局製作者側にしてみると何の目的か全くわからずにつくっております。それを受けたほうにしてみますと、いかに確かに正確に、いかに安く、いかに品質を高めて早く納めるか、これがすべてでございまして、こういう中では新しい新規性の考え方というのは出てこない。
 ですから、その反面、この件に関していわゆる指定工場の看板の守るということには大変に努力を注いでおりまして、例えば親会社が査察に来るなんていうことになりましたらもう本当に神経を注ぎ、努力をしております。こういったことではなかなか新しい技術が出てこない。
 だけれども、その反面、大手企業さんから例えば離れる、体制が今少しずつ壊れつつありますけれども、1社依存から外れていこうとしたときには大変な努力をしていく。本当に新しいものをつくるということは大変な努力がいるのですけれども、すでにすばらしい技術と設備を持っているわけです。それを駆使して、新しいものに挑戦したときに初めて特許なり新しい技術が生まれてくる。これから少しずつ様子が変わるのではないかとは思っています。
 私の友人なんかでも努力いたしまして一所懸命やってるんですけれども、新しい技術をどうブレークスルーしていくかというときには、大学、それからいわゆるこの産官学、これの協力が必要です。それでも中小企業の親父というのは大学の敷居がものすごく高いんです、なかなかそれをまたがない。
 それの1つのきっかけとして学会を利用するのは非常にいいのではないかと思っています。この中にも大学とは出ているのですけれども、いわゆる学会の名前が出ていない。実は私どもでは社員を学会に随分出しています。いわゆる通常の展示会というのは人がもうでき上がったものをただ参考に見るだけですけれども、学会というのはその種、これの展示会みたいなものでして、必ずしもそのすぐ芽が出て実がなるような、そんな簡単なものはないのですが、やはりこれを育てていったら大きな実になるんじゃないかというようなものも見つけられます。
 私どもでは社員を学会にただ参加させるだけではなくて論文発表もさせています。そうしますと、結構本人緊張いたします。大学と共同研究をすると、いわゆる実験のやり方、まとめ方、そういったものも教授に教わりますので、そういった意味でいうと社員教育にもなります。非常に私どもでは頼っておりまして。うまく結果が出ましたらそれが論文になり、学会発表し、機関紙に載り、ということになりますと、やった本人は大変励みにもなります。大学の先生としても自分の大学の名前あるいは先生の名前がでて、非常に励みになると同時に、もしこれが特許でも取れまして、うまくいけばそれこそ企業側としてもメリットがあり、ロイヤルティーが入ってくれば大学側もうまくいくと。
 落語で三方一両得、これは決していい表現ではないのですけれども、この場合は企業側もいい、担当者もいい、それこそ先ほど前田先生がおっしゃいましたように、だれも損しない、うまい機構ができるのではないか。
 どうやってこの学会のほうに中小企業の親父を呼び込むかというその導入のところを何とか切り口として入れていただければうれしいな。その評価としては、大学側でその種をどこから拾ってきたか。学会で研究者と企業が結ばれて、そこから大学に持ってくるという形になると思いますけれども。そういった追跡調査というようなことで評価をしていただければありがたいなと思っております。
○相澤会長 ありがとうございました。
 渡部委員。
○渡部委員 TLOおよび大学発ベンチャーの話ですが、TLO法のときからずっと何かしらかかわっていて思うのは、結局TLOという組織が目的でもないし、大学発ベンチャーという組織が目的でもないということを認識することがまずそもそも大事だと思います。施策がTLOとか大学発ベンチャーとうたいますと、どうしてもやはり書いているものと目的が異なってきてしまうというのが常に繰り返されてしまう。もともとこれやはり科学技術基本計画で基礎研究にお金を入れ、その大学の中から社会還元するための手段としての技術移転のためにTLOという組織を整備したと。またベンチャーというヴィークルに乗せて、非常にリスクの高い技術を産業界に還元するための手段として大学発ベンチャーという施策をやってきた。多分そういうふうな形で施策がずっと続いてきているんだと思います。
 ただし、そのそれぞれの局面でTLOに人材育成をやらそうだとかいろいろなことがありましたが、やはりまずチェックをしないといけないのは、当初の目的どおりになっているのかなっていないのかということだと思うんです。TLOだったらライセンス料でだけでなく、その奥にあるのは非常に不確実性の高い大学の研究成果の実用化に結びつくような活動ができたかどうかということをやはり見ないといけないということをまず認識をした上でこの話を組み立てていく必要があると思います。
 そういうような意味で、今の時点のTLO、あるいは大学発ベンチャーは、この中にも書いてありますけれども、かなり多様化していますので、大きなナショナルイノベーションシステムの中で果たしてもらおうとした役割とそれが違う活動であれば、それはいわゆるTLOといってTLOを支援施策に入れるという構造からは外さなくてはならない。それから、大学発ベンチャーに関しても同じだと思います。
 でないと、例えばその大学発ベンチャー関係で技術支援の関係の今までの補助金とかいろいろ出して、大学発ベンチャー千何百社で割ると、1社当たり何千万になるというようなことを言う人がいて。それは違うので、ベンチャーという組織が大事で補助金を出したわけじゃなくて、技術開発のためにやっているんであって、そっちを見ないといけないわけですね。ただし、それが機能しないような組織であれば、対象から外していくということになると思います。
 そういう意味で、この8ページの言葉なんですけれども、不足しているのは何か、その実現のため大学の産学官連携組織やTLOについて統廃合を含め抜本的に見直すべきではないかと。これはこれでもいいかもしれませんが、そういう意味では温かいというか面倒見がいいんですよね。TLOというか産学連携を政府が責任をもってなんかやって、そういう書きぶりになっている。TLOも産学連携組織もある意味施策の必要があって発生し、それを実施するのに必要な企業があれば支援すると、多分そういう考え方。統廃合まで政府がという書きぶりとはちょっと違うかもしれません、というのが1つです。
 統廃合は起こるでしょう。だけれども、それが起きた結果とは別に、政策的に必要な機能であれば支援する、機能がなければ支援しないというそういうことではないかというふうに思います。先ほどのようなコンテクストでとらえたときに、TLOと定義されたものは大事、あるいは大学発ベンチャーと定義された何百社がすべて大事ということではないということで整理をしていかないといけないのではないかという気がいたします。
 それで、ただしそのときに、支援というのもお金の問題だけじゃないことはたくさんあると思うんですね。例えば私がずっと気にしているのは、やはり大学の特許の共同出願が非常に多いこと。共同出願が多いということは特許の流動性が非常に低いわけで。技術移転施策、TLOが今まで私が予想していたより優れた機能を果たしている例でいえば、中小企業に対する効果です。技術移転ということに関していえば、中小企業に対する効果が大きかったわけですね。これはもともと日本のバイドール法は中小企業優遇ということは必ずしもなかったと思いますけれども、結果的にはそうなっている。だけれども、共同出願という特許というのは恐らく流動性が非常に低いのでそういうふうには働かないだろうと思います。
 それから、知財の調査のためのデータベースの整備やはり非常に重要なので、そういうところはむしろ大学の場合にともかく低い、低コストでいい調査ができて、いい特許ができるようなことを支援しないといけないだろう。グレースピリオドもそうです。基本的にいい特許というのが施行技術調査、海外非特許文献、そういうものを調査して、それからグレースピリオドをいかに、グレースピリオドというか優先権主張期間をいかにして上手く使うか。先ほど言われたように、企業とのチームができるのは、特許出てからチームつくるんじゃなくて、その前に企業とのチームつくるというようなことが多分一番質の高い特許をとれるやり方だと思いますので、そういうところをやはり充実させるというのが重要だろうと思います。
 それから、ちょっと長くなりますが、10ページのところでありますけれども、環境体制整備というところ、これ情報交流とかそういう話をしていまして、ばくっとした意味ではこのとおりですが、今全国的に大型の産学連携で起きている問題は、複数の企業、複数の大学、政府研究機関、そして企業も川下から川上まで、そしていろいろ複雑なプロジェクトの知財管理の問題ですね。これは産学連携の議論やっていると大学のマネージャーでそれ非常に悩んでいる方がおられて、そこら辺をどうしていくか、さらに今度外国まで、外国の産学連携は国際まで広がっていきますので。これは勉強する教材もないんですね。契約書が守秘対象になりますので、教材はないんですが、そういうことが勉強できるようなところまで何かもっていかないといけないということで、課題だと思います。
 ここに書いてある一般論はそのとおりなんですけれども、加えて今各大学で抱えている問題に取り組んでいくための施策を考えなきゃいけないということでございます。
 以上です。
○相澤会長 今、最後に言われたことをもう少し具体的に言っていただけますでしょうか。
○渡部委員 大学が管理法人になってプロジェクトをやるケースで、ほかにたくさん大学が入っていって、企業が入っていって、その企業も十数社で川下から川上までと、そこの中に原料メーカーとそれからユーザーがあってというようなところで、知財、情報共有の仕組みをつくり、そして知財の成果の取扱いをつくる、その契約書をつくるのは極めて難しい。プロジェクトが始まってから調整するのは限界がありまして、プロジェクト始まる前にそこの調整をして、それができるということに対してやはりグラントをつけてあげるというのが筋なんですけれども。なかなかそこの難しさというのがまだ認識されていないというのも1つあると思いますが。結構あちこちのプロジェクトに関係してらっしゃる知財の管理マネージャーの方はその辺ですごく苦慮されています。
 この間、ユニットという大学研究協議会のあれで、企業から見た産学連携というセッションで、大学でそういうことをやって苦労されている方、手を挙げて、知財協の方がおられたんですね。知財協の方で何とかガイドラインつくってくださいというような話をされて。知財協はそんなことできませんので、それは個別の折衝に委ねていただくしかないと言われていましたけれども。実際に苦労されているのは間違いないです。
○相澤会長 私がお伺いしたかったのは、何か整備するべき具体的なものが。
○渡部委員 整備するべきものという意味では、そういうグラントを出して決める過程の中でそこをチェックするというのは必要と思います。チェックしないで、決まってから相談されても結構難しいので、まずチェックするということが必要ではないかと思います。
 ただし、そのときにどういう仕組みでチェックすればいいかというのは、まずちょっと今実態が必ずしもよくわからないので、そこの調査から始まると。
○相澤会長 どうぞ、中村委員。
○中村委員 まず、資料4の佐藤委員からの意見につきまして、2つの点で特に賛同するところがございますので、申し上げたいと思います。
 1つは、前提のところにございました、イノベーション促進に向けた新知財政策ですが、昨年の委員会の中でもかなり取り上げられた際に、従来の知的創造サイクルの逆回しという表現があったように、目標設定をはっきりさせて、そのためにどう知財をプロデュースしていくかという視点は、最終的には適切な創造力の強化につながるという意味で、非常に重要なポイントかと思います。
 それから、あとはイノベーションのインセンティブを与える方策ということで、これも過去いろいろなところで挙げられましたけれども、やはり反イノベーション的な行為をどう抑制できるか、これなかなか仕組みとしてどう構築するかというのが難しいところかと思いますけれども、抑制と真のイノベーションの促進という両輪がないとなかなか難しいのではないかという意味で、ここのポイントも非常に重要かというふうに思います。
 さらに、次のページの知的財産情報の流動化ですが、検索も含めて特許、非特許文献の情報をいかに企業であれ大学であれ、非常に簡便的にアクセスできるかというのが、後半の発明の保護にもかかわるところかと思いますが、いかに的確にスピーディーに権利を獲得するかということのみならず、無駄なむしろ重複した研究開発に投資するというのを未然に防ぐという点でも非常に重要であると思います。
 あと最後にもう1つ、資料2の中で、職務発明の視点がございました。ここにもご指摘いただいておりますように、今後は諸外国の職務発明との整合性という部分が課題になってこようかと思います。私ども企業もR&Dを海外に持つということがふえたり、もしくは外国籍を持つ、いずれは母国に帰るかもしれない、そういった方に日本で勤務いただいたりというようなことで、国をまたがった人材の流動が増えることが予想されます。
 例えば中国の場合は、職務発明に関する企業の報奨が、国営企業に関しては明確なガイドラインございますけれども、民間に関しては推奨程度しかないという中にあって、実際に私どもの調査した範囲では、中国系の企業と外資系企業ではかなり報奨の制度に差があったり、金額的にもばらつきがあることがわかっています。さらには、特許と実用新案でどう報奨するかというのにもばらつきがああります。こういったものは短期的にはジョブホッピングを加速したり、場合によっては同じ企業グループ間の中でも国をまたがることによって整合性が保たれなくなったりということで、非常に今後悩ましい問題になってくるというふうに思いますので、ここのポイントにつきましては引き続きこういった検証をしていくべきであると考えます。
 以上です。
○相澤会長 辻村委員。
○辻村委員 イノベーションの促進という観点からですけれども、創造とかイノベーションというのは異分野の知の結合から生まれるとよく言われております。大学と企業の、当たり前ですけれども、研究者同士の知的コミュニケーションをどうやって促進するかということが非常に大事だというふうに思います。ただ、なかなか具体的な方策が打てないんですけれども。1つは先ほど岡内委員のほうからありました学会というものの活用というのがあるんじゃないのかなというふうに実は思っています。
 実際に現在学会とかそのシンポジウムとか、その後の懇親会、今どき余りないのかもしれませんが、そういうところにどれだけの先生方、学生の方々が出席をされているんでしょうか。海外も含めてですけれども。感覚的にいうと、企業も含めてかなり参加率というのは低くなっているのではないかなというふうな気がちょっとしております。あくまでも感覚的なところでございますけれども。
 大学の先生方もある意味自由に使えるお金という言い方は悪いんですけれども、そういうところに参加するような資金的なゆとりといいますかそういうものが余りないのかなというのが1つ推測されるところでございまして。何とかそういうところへ参加できるような時間的、資金的ゆとりというものをもっと出して、まさにフェーストゥーフェースのダイレクトコミュニケーションみたいなところがイノベーションを創出するもとになるのではないかなという雰囲気が私はちょっとしております。
 大学で行っている研究というものをどう事業化に結びつけるかという、つまり死の谷とかダーウィンの海と言われているものをどう越えるか、このためには企業との共同研究なりそういうところをもっと促進するとか、知財本部、TLOのいわゆる目利き、プロデュース機能をもっと強化するというところは必要なんですけれども。そのもっと前の研究の種をどう見つけるのというところをもうちょっと具体的な施策でやらないと、いわゆる基礎研究というところが企業でも細り、大学でも細りという状況になっているんじゃないかなというふうに考えます。具体的策がなくて申しわけないんですけれども。
 よく何とかサロンというのがこのごろは開かれておりまして。ただ、これもかなり一流の研究者の先生方、少々ご年配の先生方、語弊がありますね、すみません。(笑)企業のトップが集まってサロンを開くと。ここでは確かに何らかの種、研究テーマというものを事業化に結びつけるという意味では効果があるかもしれませんけれども、本当の意味での研究の種、シーズを見つけていくというときには、本当にそういうサロンが意味があるのかなというのはちょっと疑問かなと。それを代替できるのは、さっき言った学会での活用、懇親会の活用みたいなところが実はあるんだろうというふうに思います。
 学会では研究テーマの成果を発表するわけですけれども、基本的には発表を聞いた段階ではある意味遅いという感があります。我々が必要としているのはその前段階の、いわゆる特許で言えばさっきおっしゃった出願前、出願する前の段階のアイデアなり想いというものが実は企業としても欲しいところがあるわけで。そういうところを共有できるような場というのにはどんなものがあるのかなというのが実は大事なポイントじゃないかなというふうに思います。
 それとあとは、大学、シーズとニーズのマッチングを考えた場合は、ジャストアイデアですけれども、大学の先生方のすべての専門分野の内容とか論文とか特許の出された内容とか、そういうのを網羅的に全国レベルで検索できるようなシステムがあれば非常に我々としてはありがたいんですけれども、大変虫のいい話でございますが。各大学ごとにアプローチはできるんですけれども、そういうふうなデータベースみたいなものもあれば非常に助かるかなと感じております。
 以上でございます。
○相澤会長 ありがとうございました。
 どうぞ、三尾委員。
○三尾委員 私は大学等から少し離れた立場にありますので、外から見た大学といった意味で感想を述べたいと思います。前回の専門調査会でもお話があったと思うんですが、最近大学の役割というものが変化してきていると思うんですね。昔の大学は教育ということが一番大きな目的であったということで、今でも大学の先生方もそのような意識を持ってらっしゃる方がかなりいらっしゃるんではないかと思います。それで、私がUNITT(University Technology Transfer Association 大学技術移転協議会)の産学連携実務者ネットワーキングに参加しては先生たちの質問とかをお聞きしていると感じるんですけれども、やはり大学の役割をどのように考えるべきなのかというところで、先生方の間で少し混乱があるといいますか、これでいくんだという1本の方針が先生方の中でなかなか定まりにくいんじゃないかという感想を持っています。外から見ていますので果たしてそれが現実かどうなのかというのは確実ではありませんが、どうも、例えば学生の発明をどう扱うかとか、企業とどう共同研究とかに対してどういう考えを持つか等、いろいろな場面で先生方は大学の役割として本来特許や産業に対する発展への寄与、社会に対する寄与ということが第一の目的でいいんだろうかというような迷いを持ってらっしゃるんじゃないかという気がいたします。
 ですので、そのあたりをもう少し現場の先生方に理解を求めるといいますか、ある程度の方向性を示してあげる必要があるのではないかというふうに考えます。
 そういった意味でも、大学の管轄は文部科学省になるわけで、最終的には大学の先生方の評価は文部科学省がするということになりますので、産学連携をも含めまして、大学の発展に寄与した先生として評価してあげるという評価制度というものも考えてみたらいいのではないかというふうに思います。
 そうすると、ある程度方向性をもって研究活動をし、教育活動をし、さらに発明や研究の社会への還元をすることが大学の目的であるということがわかりやすいのではないかというふうに考えます。
 それともう1点なんですけれども、私本当に単純な文系の人間ですので理系のことはよくわからないので単純な感想なんですが。基礎研究ということと産学連携をトータルでにらんだ形での発明というものが必ずしも一致しないんじゃないかということです。基礎研究というのは単に先生の学問的興味とか、長い年月をかけた地道な努力のもとに大きな研究成果が得れるものではないんだろうかという気がします。短絡的というか短期的な目標のもとに発明をしても、それほど大きな発明はでき上がらないんじゃないかと思うわけです。
 ですので、産学連携ということが大事な目的であって、それを見越した発明というのも必要なんですが、すぐに企業との連携ということではなくて、先生の興味といいますか個人的な純粋な学問的意欲から生まれる発明というのも大事にする必要があるんじゃないかなというふうに考えます。
 最後1点だけつけ加えますと。海外へのアプローチ、海外企業との共同研究というようなことなんですけれども、これは海外へ日本からアプローチする場合と、海外からアプローチがある場合と両方あるかと思うんですね。前者については、やはり海外へアプローチするためのある程度のガイドラインといいますか具体的方法を大学関係者に示してあげる必要があるんじゃないかと。よくアプローチ方法がわからないというような話をちょっと聞きましたものですから、そういうふうに感じます。後者のほうの海外からのアプローチにつきましては、大学の研究成果というものをある程度海外向けに発信してあげると。データベースという話も先ほどありましたけれども、海外に向けて大学の有する発明や研修活動に情報発信のツールを提供してあげるということも必要なのではないかなというふうに考えます。
 以上です。
○相澤会長 たくさんの疑問形つきのご意見でしたから、ここでお答えしておいたほうがよろしいかどうかちょっと迷うんですが、とりあえず時間の関係もありますので。
 妹尾委員。
○妹尾委員 最初にちょっと余談を。先ほど辻村委員がサロンを盛んにやったらいいよねというお話をされましたが、この話は、この委員会の前身のときに何度か申し上げたことがあります。テクノクラブハウス構想というのをやってはどうでしょうか、という話です。いわゆるクラブハウスは日本ではほぼ全部文系主体ですね、国際文化会館にしても銀行クラブにしてもあるいは交詢社にしても全部文系です。いわゆる理系だとか、私のように文系でも知財にかかわる人たちのクラブハウスってないんですね。これを財団でどこかでつくれないかなというのを私は数年来申し上げてきました。当時は秋葉原に置こうと思っていたんですけれども、それと同じような感じかなと、先ほど辻村委員のお話を聞いていました。
 さて、コメントに入らせていただきます。この資料の背景にある考え方をもう一度整理したほうがいいのかなと思い、ちょっと別の観点で指摘をさせていただきます。そもそも知財の創出あるいは科学技術的なイノベーションの話が一方でありますが、他方、やはり知的財産政策は産業政策だということだと思うんですね。産業政策として言えば、何が最も重要かというと、その1つは日本の産業生態系が枯渇しているということではないか。つまり、事業の新陳代謝がまるで起こってないし、先進諸国の中で最低レベルだということですよね。戦後すぐにできたベンチャーがかなりへたってきている、大木になってしまった。周りの下草であった中小企業はどうなっているんだ。次の息吹であるはずのベンチャーは生まれているのか。こういう疑問になる。
 じゃあ、事業を次々に新陳代謝させていくための事業創出促進をやらなきゃいけないね、これが産業政策の中核だったと思います。そのときに、企業内に新規事業を産んだり、企業発ベンチャーや大学発ベンチャーを出したり、中小企業の第二創業、第三創業を支援したりという流れがあったと思うんですね。
 そうすると、事業を生むためのリソースが必要だよね、となる。リソースは何に求めるかというと、大きく挙げて2つでしょう。1つは技術、テクノロジー。もう1つはコンテンツ。だから産業政策としてのこの競争力委員会とコンテンツ委員会があると、こういう理解だと思うわけですね。
 そのときに、知的財産権だけではなくて、知的財産権にもなり得るような知的財産あるいはもう少し広い知的資産が必要だと。それらを生まなきゃいけないよねと、こういう話だったんですね。
 その観点からいくと、先ほど渡部先生言われたことに私は全く同感で、要するに大学発ベンチャーとかTLOは事業創出のための手段だという見方ですね。もちろんそれだけではないですが、これらの議論を行うときに、手段が自己目的化されかねないような指標で動き始めるのはいかがなものか、ということになると思います。
 TLOの人材育成だとかそういうことにずっと私もかかわってきたんですが、そのときに極端なこんな言い方をするんですね。「特許を売るは下、技術移転をするが中、事業提案できるが上」と。すなわち、TLOに入ってきたら特許販売員をやるんだみたいに勘違いしてくる人、結構若い人にも年配の方にも多いんですよ。けれども、特許を売ることが目的ではなくて、技術移転の手段として当然特許が付随するという形ですし、さらに技術移転自身が自己目的ではない。大学の技術は大学内では事業化されないから、それを事業化してくれる中小だとかベンチャーだとかいろいろなところにもって事業化してもらうわけです。それが難しいときに、自らベンチャーを創る。そして事業が起こることに意味があるということです。そこの再確認はやはりしたほうがいいなという気がしました。
 じゃあ、今度はその事業創出をどうするのかというと、2つのやり方がある。1つは従来の事業のポリッシュメント、つまりモデル磨きをやるような生産性向上に資するような事業です。もう一つは、全然モデル変えちゃおうぜというモデルチェンジをやる事業ですね、これをイノベーションと我々呼ぶわけです。この資料の議論は、そこのところへつながっていかなければならない、というのが1つ目の私の確認なんですね。
 2つ目に、資料の1ページのところの視点1に、「イノベーションにつながり、かつ重要特許を獲得できるような発明の創造環境が十分整備されているか」と書いてあります。この文章を私の専門であるコンセプトワーク的に読むとどうなるか。この文章が成り立つ条件である背後の世界観は「イノベーションも重要特許の獲得も予見できる」です。そのことが前提とされています。すると、予見できるイノベーションって何だろうなと。よくわからない。予見できないから大イノベーションなんであって、という理屈がもう一方にあるはずです。例えば、最近のノーベル賞で、クラゲの光るあれを見つけたときには、将来すごいイノベーションや重要な特許になるとは誰も考えなかったはずですよね。後からイノベーションに育て上げられたということだと思うわけです。だとすると、技術的にイノベーティブなことが社会価値向上のイノベーションにイコールでつながらないということです。ということは何を意味するか。予測不可能な、あるいは不確定性が高いような技術もきっちりやらなきゃいけないよねということなのだと思います。
 ただし、それをイノベーションに育て上げるような仕組みは何かを考えなければならない、こういう設問だろうと思うので、そこのところをもう少し整理されてもいいような気がします。
 私は、毎回ここで「テクノロジープロジェクションモデル」、つまり従来の「知的創造サイクル」だけでいいんですかということを申し上げているから、ついつい基礎技術だとか応用技術を軽く見る人間と見られてしまいがちですが、実際はそうではない。私は例えば岡山の林原みたいに、10年、20年かかったってできるかできないかわかんないような研究開発に企業が取り組んでいるということをものすごく評価しています。あれは本来大学が取り組むべきことなのです。
 だから、そういうようなものをやる根源的な基礎技術的なものは徹底的にやる。だけれども、その片方で同時に、これを「事業創造サイクル」と私は呼んでいますが、「ビジネスリフレクションタイプ」として逆回しのモデルも必要だと訴えたい。こういう事業をやりたいから技術開発をプッシュするというそういうようなものもあっていい。つまり、両輪をメリハリつけてやりましょうよという話だと思うんです。この資料の中でそれがまだちょっと整理がついていないのかなという気がいたしました。これが第2点です。
 第3点として、次に6ページにいきます。ここで、評価指標のところがどうなっているかというと、例えばiPS細胞などが例に出ています。僕も全くそうだと思います。これには反対をしない、もちろん重要なんです。けれども、主要分野における重要特許の獲得状況という指標が書いてある。ここで主要分野って何を指すのという疑問と、重要特許って何を指すのという疑問が出てくる。これ基本特許のことなの、でも基本特許以外でも事業化には重要な特許ってたくさんある。それは例えば相手との関係で決まります。なのでこれは一体なんだろうな。
 これは、何かワールドシリーズでグランドスラムを狙う、つまり、いきなりホームランだけねらう大振りみたいな感じがあるんですね。そうじゃない。確実なヒットの延長線上にホームランがあるというのは王貞治が言った言葉ですが、やはりそういうふうに確実にいろいろな分野で特許をとるということをしないいけない。何か大物ねらいだけのものだけを重要視するイメージがついてしまいかねない。そこのところはいかがかという感じがしました。
 いずれにせよ私は両輪、つまり基礎技術を起点として後から育て上げるという片方と、事業をもとにして技術開発を進めるというもう一方と、両輪をめりはりついて政策的に動かしていただければと思います。
 あと2点ほど私の専門である人材育成についてです。10ページにあります人材育成は、ここで産官学においてということで、2つ目の○のところに、人材交流を活発化する必要があると書かれています。これ全くそのとおりだと思います。ただし、創出における人材交流って何なんだろうなと考えると、通常考えられるのは研究者そのものの人材交流です。。ただし、創出において人材交流が必要なのは何も研究者だけではなくて、研究支援人材だとか、あるいは研究のプロジェクトマネジメント人材だとかというものが入ってくる。そして、やはりここで育てられ、交流されなきゃいけないと思っています。
 特に地域では研究プロジェクトマネジメントを役所の人間が1年交代ぐらいにやっている。そうすると、ほとんどプロジェクトマネジメントにならないんですよ。その都度の計算みたいな格好をつけるだけで。だから、地方の大学なんかが産学連携でやる研究プロジェクトなんかは、はっきり言って、かなりてこ入れをしなくちゃいけないなという感じがあります。すなわち、せっかく良い素材があるんだけれども、プロジェクトとして育てきれてないというのがあります。それは活用のところではなくて創出のところであるわけですね。
 それから、もう1つの人的交流として、ここでうたわれているのでなるほどと思ったのは、大学から企業への人材流入が少ないことです。これについても、研究者だけを指しているのかということがあるわけです。確かに研究者もありますが、その周辺の人材もいる。
 よく大学で企業人教育をやるわけですが、反対に、企業において大学人教育をやるというのがあってもいいと思うんですね。大学が持っている知だけではなくて、企業が持っている知というものもものすごくたくさんあって重要です。それを大学人も欲しいはずなんです。だとしたら、企業にお願いをして、企業において大学の研究者を教育するというリバースなモデルもあってもいいのではないかと思います。
 次に、NEDOのフェローについて書かれてありますが、NEDOフェローなんかを面倒見ていて非常に感じるのは、あるいはTLOの若手を見ていて感じるのは、やはりトレーニングが不足しているということです。特に市場開発関係のトレーニングが不足している。だから、ポスドクをいくら使っても市場とのつながりがまるでできない。マーケティングのいろはからまず鍛えなきゃいけないというようなところなのです。
 それから、NEDOフェローの連中が、期間が終わって今イグジットで困っています。次にどこ就職するかという先が見えない。すなわち、知的財産やりました、技術移転だとか研究を一緒にやってます、というだけでは企業はほとんど採ってくれないという状況です。なので、彼らの行く先をどういうふうにするかというのも実は課題になるだろうと。どうやって活用していくんだろうということになると思います。
 すみません、長くなったのですが、最後に一言だけ。評価指標にどなたも触れてなかったので申し上げますが、ここに書かれている評価指標がすべて定量評価のみになっています。この評価をよく読むと、先ほど懸念したように、要するにTLOだとかそういうところの件数だけで、あるいは何とかの数値だけで評価するという形になっちゃう。これでは評価がいわば手段の自己目的化を促進しかねないという懸念があります。それはやはりまずいと思います。政策があってその評価は何かという話であるはずですが、それが逆になっています。こういうことは往々にして起こるわけです。評価によって政策の性格づけが変わってくる。せっかく政策はこうですと言いながらも、評価指標を間違えると、評価自身が政策を意味づけてしまい、結果的に手段が目的化するという逆転現象がよく起こるんです。その点について、もう少し精査したほうがいいのではないかと思います。そして、定性的な評価も織り込むような形で政策目標をもう少し慎重に見ていくと良いのではないかなという気がしました。
 すみません、長くなりましたけれども、以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 田中委員、どうぞ。
○田中委員 大学そのものの役割は何かと先ほどからいろいろな議論がされております。もちろん教育は全く別にしてのことだと思いますが、研究という視点に立ったときには、最終的には人類の役に立たなければいけない、社会の役に立たなければいけないということに必ずなると思います。研究を開始してから役に立つまでのスパンが長いか短いかだけの違いだと思います。例えば、クラゲの研究もノーベル賞を受賞したわけですが、今では直接的に社会に役に立っているわけです。よって、見出されたときと、それが本当に活用されるときには時間差があると考えれば、理系の非常にベーシックな研究であっても、最終的には社会のために役に立っているわけです。
 そのように考えると、私は前回、大学における論文の細切れ的な発表と言いましたが、それと特許の関係を、内容的な意味合いできちんと連結をとっていかないとおかしなことになると思います。我々企業では、実験等でいろいろな現象が起こったとしても、ある程度解析して、何かに役に立つということが明確になるまでは、しばらく実験結果を伏せるということをよくやっています。ところが、この前もお話ししましたが、大学の場合には教育というもう1つの使命がありますので、卒業させるために春、秋の学会で論文を発表させる。このように半年間の成果を少しずつ発表していくわけです。このようなことをやっていると、後でもっと重要なことが分かったとしても細切れに論文を発表しているために強い権利にはならない。それは既に発表しているということで、特許の権利の範囲外になってしまうわけです。ですから、そこを大学がどのようにハンドリングしていくかを考えていくべきだと改めて強調したいと思います。
 もう1つはっきりしておきたいのは、知的財産の創出にはどんな人でも絡んでいるということです。ビジネスをやっている人でも誰でも知的財産の創出に絡んでいる。作業で汗水たらして本当に典型的な作業をやっている人以外は知的財産の創造にみんな関与していると私はとらえております。その中から企業として必要な権利を確保していったのが知的財産権です。では、大学の場合は何のために知的財産権を確保するのか。それは国のためであり、日本にある産業のためかもしれないわけです。企業の中では、生まれた知的財産をその企業の将来のために役立てるような形で権利化をしていくわけです。ちょっと妹尾先生が哲学的な話をされたので、私も若干そのように話しました。
 産業化をイメージした権利化を確実にやることが必要です。大学の先生の場合には、産業化をイメージした権利化が本当にできるのか。そこを明確にしていかないといけない。先ほども申し上げましたが、非常にベーシックな発見に近いような技術の場合には、なかなか産業化はすぐにイメージできないというところはありますが、工学系の先生の場合には産業化をかなりイメージしたような仕事をしておられるので、この部分を自分が研究したから将来の産業のためにこの部分についてきちんとした権利をくれという形の書き方で特許を出願していかなければならないと思います。
 他方、論文の場合には違っており、このような研究をしたらこのようなことが見つかったというような書き方になるわけです。もちろん工学系の場合には産業を意識したような書き方もありますが、特許の場合にはもっと直截的にこれはこのように役に立つ、その部分については自分の権利だと主張するわけです。
 したがって、私は、特許を書くことそのものも産学連携でうまくやっていかないと、大学といえども本当に強い権利を取れないのではないかとちょっと疑問に思っています。もちろん一緒にやらなくても大学の先生が特許とはどういうものかということをきちんと意識して勉強されれば、それはそれでいいわけです。今回の施策の中でも特許のリファーの数を1つの指標にするとあったのですが、論文を書くときも大学の先生がきちんと特許も意識して、研究プログラムを自分自身で立てていく場合に既に研究がなされていたのかどうかを調べるためにもきちんと特許を読むことです。そして、論文の中にも特許のナンバーもきちんとリファーすることをやれば、大学の先生もかなり特許自体の重要性というのに目覚めていくと思います。世界で最初にやらない限りは特許にはならないわけですし、特許は審査もありますので、論文の査読と全く同じです。論文と特許との間に、何か乖離があるような感じではなくて、きちんとブリッジしていくようなことをこれからやらないと、本当の意味で産学連携にはならないと思います。また、本当の意味で大学の知的財産活動にならないのではないかと考えております。
 もう1つは、TLOを再編するといいますか、もう一度きちんと強化していくことが必要です。技術分野によって対応の仕方が全く違いますし、産業分野によっても全く実用化のプロセスが違います。大学等が1つのTLOをつくったからといって産業界とそんなにスムーズに技術移転はできないと思います。あるいは産学連携のコーディネーションについても、私はかなり難しいのではないかと思っています。
 したがいまして、産業毎、あるいは技術分野毎など専門家集団がもっと集まって、大学を問わず、例えば産業界の方にきちんと照会をして、それで技術移転を促進させるというような考え方も必要だろうと思います。ですから各大学に知的財産本部が必要なのか、各大学にTLOが必要なのかは疑問です。産業界から経験者が欲しいといっても、産業界においてもあらゆることを知っている人はほとんどいないわけです。したがって各大学に産業界のOBがたくさんいきましたといっても、残念ながらそれがすぐ機能するとは思えない。本当に優秀な人たちを専門分野毎や、あるいは産業分野毎などといった形でうまく集約していった方がはるかにお互いに有効に機能するのではないかと感じております。ぜひそのような視点も入れて頂けるとありがたいと思います。
○相澤会長 ありがとうございました。 
 渡部委員、先ほど来大学におけるいろいろなクエスチョンが出てきているので、三尾委員のクエスチョンも含めて、何かコメントしていただけますか。
○渡部委員 ちょっともう忘れてしまって。
○相澤会長 田中委員の最後の部分のところでも。
○渡部委員 その辺結構調査していて細かい話になりますが、基本的にTLOの機能は会社の知財部の機能とは根本的に違っていたというのがまず1つありまして。会社の知財の機能をそのままTLOに入れてもうまくいかなかったという経緯があります。重要なのはマーケティングなんですよね。ライセンスというよりはマーケティングで、そのマーケティングをするときに何が大切かというと、大学の先生との関係性が最も大切で、そこがうまくいった状態で先ほどのグレースピリオドの間に企業とのチームをつくるとか、そういうプロセスが有効だと思いますので。分野ごとにしてしまうと大学との関係が弱くなるのが問題です。そこのバランスを設計するときによく考えないといけない。
 ただし、例えばメディカル分野は少し異なる専門性があります。東大のTLOでもメディカルのところはやはりちょっといじりにくいとかそういうことがあったりするので。前田さんが得意だからといって、例えば前田さんが全国の大学できるかというとそれはなかなかできないだろうという、そういうところのバランスで1個1個見ていかないといけないと思いますね。
 まず本当にそのような組織で創造的な仕事できているかどうかというところをチェックをして、レビューをしたほうがいいだろうなというふうに思います。
○田中委員 今のままでいいかというと、費用あるいは予算も非常に細分化されてきて、みんな身動きがとれないので良くないと思います。しかし、前田さんが全国の医学部の面倒をみることができるかというと、それは確かに難しいと思いますが(笑)、でも何らかの形で少し集約をして、優秀な人材をその中にきちんと置いて、もっと自由闊達に動けるようにしていったほうがいいという提案でございます。
○相澤会長 まさしくそこのところが重要な検討事項であります。次のチャンスに議論していただければと思います。
 それでは、時間もかなり過ぎてまいりましたので、2つ目の議論に移りたいと思います。知的財産の保護についてであります。時間が残り少なくなってまいりましたのでどの程度の議論ができるかわかりませんが、まず、資料1から3について、保護の部分に沿って説明をお願いいたします。
○内山事務局次長 それでは、資料2の14ページから保護の部分でございます。まず、知財の適切な保護というところで、国際知財システムの構築に向けた取組の強化というところでございます。
 視点1が、世界特許システムの構築に向けた取組を一層強化すべきという点です。グローバル化進展の中で、世界各国において発明を低コストかつ迅速に保護・活用するために、世界特許システムの構築がますます重要となってきております。これまでPPHの開始等々、一定の成果はあるわけでございますけれども、しかしながら世界的特許システムの実現に向けた道のりはまだ緒についた段階でございまして、ここにございますような今後取り組むべき課題が大変多いわけでございます。
 PPHも対象国が一部であるとか、運用面での改善が十分でないとかいうこともございます。ワークシェアリングの実効性を上げるために必要な審査基準、審査判断の質の調和もまだ議論が始まった段階だということでございます。
 次に、16ページ目に視点2になりますけれども、アジアにおける知財制度の整備、権利取得に向けた支援策の拡充が必要ではないかという視点でございます。アジア地域の知財制度運用の改善につきましては、EPAへの知財関連条項の盛り込み、人材育成支援などを行ってきたところでございますけれども、しかしながら、まだ我が国企業がアジア地域で円滑な知財活動を行うに当たって支障のない程度まで知財制度等が整備されているとはなかなか言えない状況であります。
 また、アジア地域以外において、BRICsなど経済発展が著しく、かつ我が国企業が進出を予定しているようなところがあるにもかかわらず、こういった国・地域に対する海外出願戦略が欠けているのではないか。また、知財制度の整備に向けた支援はほとんど行われていないのではないかという点がございます。
 そういった評価を踏まえながら、18ページ目に政策目標と評価指標でございます。まず、世界特許システムの構築に向けた取組の強化のところでございますけれども、世界各国での低コストかつ、迅速に質の高い特許取得を可能とする世界特許システムの構築に向けて、実質的な相互承認を実現すべく、ワークシェアリング、制度調和、国際的な情報システムの整備等について我が国がリーダーシップを発揮していこうということでございます。
 評価指標としては、PPHの利用件数とか対象国数とあわせまして、利用者の満足度アンケート調査等がございます。
 それから、2番目のアジア地域等における知財制度の整備でございますけれども、まず、政策目標1としては、アジア地域における我が国事業者の円滑な知財活動のための環境を整備するということでございます。これも我が国企業の満足度アンケート調査が評価の指標になろうかと思います。
 政策目標2は、インド、ブラジル、ロシア等々を視野に入れた国際的な知財戦略の浸透。そして、知財政策に関する支援については、そういった国・地域へも対象を拡大していくということでございます。
 評価指標につきましては、経済発展の著しい国・地域に対する我が国からの知財出願数。あるいはまた、我が国企業の満足度アンケート調査だと思います。
 今後構ずべき主な施策につきましては、ここにございますような、世界特許システムの構築につきましては、PPHのネットワーク拡大と運用改善、ワークシェアリングのための審査基準・審査判断の調和等々がございます。
 それから、アジア地域等における知財制度につきましては、人材育成等に関する支援とともに、経済成長著しい国の知財制度に関する情報提供、あるいは支援の拡大でございます。
 次に、21ページ目でございますけれども、新技術等の知財の適切な保護の点でございます。評価の視点でございますけれども、環境変化に的確に対応して、保護の対象、期間の見直しは適切に行われているかという点でございます。医療分野におきます特許保護範囲の拡大、あるいは実用新案制度の改革、地域団体商標の導入など、これまでも随時見直しを行ってきたところでございますけれども、今後とも透明性の確保に留意しながら、不断の点検・見直し、これを行っていくことが必要だということでございます。
 23ページ目のところに政策目標と評価指標ございますが、まさに今ご説明したとおりでございます。保護対象等を不断に点検し、迅速かつ適切な見直しを行うという目標のもとに、評価指標としては、保護対象等の制度運用の点検・見直しの状況。それから、その見直しに起因する出願件数、登録件数の変化ということがあろうかと思います。
 今後構ずべき主な施策につきましては、定期的かつ透明性の高い点検・改正メカニズムを定着をさせていくという点。先端医療分野の特許保護の在り方の検討等々でございます。
 それから、次、Dでございますけれども、ノウハウ等の適切な管理、技術流出の防止についてでございます。視点1でございますけれども、情報管理に対するマインド、体制の水準は十分かという点でございます。
 評価のところを見ていただきますと、これまでこれにつきましては多数のガイドライン等の作成、普及によりまして、マインド向上に努めてきております。その結果といたしまして、大企業あるいは金型産業などの一部の業界におきましては一定の成果が上がっていると考えております。しかし、全体として見た場合には大学、中小企業におけるノウハウ、技術情報の管理に対するマインド、情報管理体制はまだ改善の余地があるのではないかと考えられます。
 次のページ、視点2でございます。不正競争防止法に基づきます規制、この実効性の問題でございます。不正競争防止法につきましては、ご案内のとおり、数次にわたる改正によりまして規制強化を図ってきております。しかし、現行の制度を見ますと、営業秘密侵害罪を営業秘密の使用・開示行為に限定するなど、抑止力としては不十分との指摘がございます。オープン・イノベーションの進展に伴いまして技術・ノウハウ管理の重要性が一層高まっておりますし、また諸外国の制度・運用状況等の比較にかんがみますと、秘密管理された技術情報の保護に係る実効的な実体法、そして手続法を整備することは喫緊の課題ではないかと考えます。
 現在、産業構造審議会におきまして、本件につきましては法的措置を含め検討中でございます。
 次のページ、視点3でございます。海外におきまして本件について十分な措置が講じられているかどうかという視点でございます。経済のグローバル化が進む中にあって、大変我が国の企業のサプライチェーンも同様にグローバル化が進んでいるわけでございますけれども、海外への技術流出リスクを大きな問題として意識しつつあるということでございます。海外における技術情報流出防止のための取組はまだまだ不十分ではないかと、こういう認識が産業界の中にはございます。
 そうした評価の中で、27ページ目に第3期の政策目標と評価指標がございます。政策目標でございますが、技術情報の戦略的な管理・活用を促進するため、第1に、中小企業、大学を始めとする技術情報保有者におきまして、ノウハウ管理に対するマインドを向上させるとともに、実効性のある情報管理体制を整備をする。それから、不正競争防止法を始めとする制度を適切に整備し、その実効性を確保する。さらに、海外における意図せざる技術情報の流出を低減させる。
 これにつきまして評価指標でございますけれども、秘密保持規定等々のマニュアルの策定・整備。こういった大学や企業へのアンケート調査などがあろうかと思います。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、中小企業に対するノウハウ管理マインドの向上、あるいは技術情報の適切な管理のための法制度の整備。海外アウトソーシングにおける技術流出防止のためのガイドラインの策定。諸外国におけます先使用権制度に関する情報提供等々があろうかと思います。
 最後の項目でございます。29ページでございますけれども、利用者ニーズに応じて進化する知財システムの構築という点でございます。評価の視点でございます。ユーザー側のニーズを踏まえた、十分に利便性の高いものと知財制度はなっているかどうかということでございます。
 これまでIPDLの機能向上であったり、特許審査の改善、そういった国内の知財制度の運用に係る行政サービスと質の向上にはいろいろと気を配ってきたところでございます。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、グローバル化あるいは情報化の進展、そして権利取得段階から紛争・訴訟段階に至るまでの知財システム全体の高コスト構造化、こういったものが前回の専門調査会でもご指摘を受けたところでございます。こうした点が問題とされる中にあって、利用者のニーズというのは国内の制度運用だけにとどまらず、知財制度の国際調和であったり、諸外国の知財制度の整備、権利の安定性の確保であったり、海外における弁理士活動、あるいは翻訳費用等を含む知財システム全体に広範囲に関わるものになってきております。
 このため、利用者のニーズを的確に反映し、知財システム全体に係るあらゆるサービスの質の向上であったり業務の効率化に向けた不断の見直しを行うことが必要であって、知財システム全体をいわば利用者指向型に進化をさせていくことが必要だろうと考えております。
 30ページ目に政策目標、評価指標ございますけれども、これはシンプルな話でございまして、ユーザー本位の知財システムの構築を図る。その目標のために、評価としては利用者の満足度アンケート調査でございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、行政サービスの改善・質の向上に向けた取組を拡大。IPDLの情報提供サービスの向上。効率的な情報取得環境の整備。出願人のニーズ、多様なニーズに応じた審査処理の実現等々、ここに書いてあるようなことがあろうかと思います。
 簡単ではございますが、以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 時間が非常に限られておりますので、本日のところは二、三の方からご意見をいただいて、残りは次の回で議論をしていただければというふうに思います。
 では、佐藤委員のこの保護に関するコメントを事務局から紹介してください。
○内山事務局次長 佐藤委員からのコメントをご紹介させていただきます。2ページの下からでございます。3ページ目を見ていただきますと、各国の特許制度の格差を是正するのに我が国が主導的役割を果たすべきだという点。あるいは、審査のワークシェアリングにより審査促進を図るという点というようなことがございます。それから、産官学のいずれのレベルでもこういった国際的な発明の保護の均質化に向けた議論を展開をするべきだという点でございます。
 それから、ビジネスリスク低減のための特許権の安定化のお話が4ページにかけてございます。5.にイノベーションの変化に対応する改革の推進ということで、継続的な制度改革・運用改善・見直しのための仕組みの構築というようなことがございます。
 そして、制度利用者の負担軽減の推進という点と、最後に制度利用者の制度設計・運用への積極的な参加というようなことがございます。
 以上です。
○相澤会長 それでは、ご発言いただければと思います。
 どうぞ、関田委員。
○関田委員 海外で、我々素材産業も海外に出始めています。その前に恐らく自動車とか家電メーカーさんとか出られていろいろご苦労されているのかと思うんですけれども。ちょうどこの24ページにノウハウというところ書いてあるんですが。私どもの場合、製造方法というものがかなり重要でありまして、これを余り特許で公開いたしますと、こうやってつくるんだよと教えているようなもんですから、ノウハウで秘匿するということをやりつつあります。ということが1つ。
 一方で海外に出ていった場合に、いろいろ我々のノウハウが流出しないようないろいろな仕組みというのはつくって、例えば技術をABCと3ランクに分けて、Aはこういう処置、Bはこういう処置、Cはこういう処置というようなことをやったりいろいろやっているんでありますが。一方で、もしそれでもすり抜けて外国においてそんなものが向こうで例えば特許にされたとして、もともとは私どもの技術ですよねと、これがどう守られるのかなというのは非常に難しい話なんですけれども。そこら辺はいろいろ不正競争防止法の改訂等いろいろねばり強くやられていると思うんですけれども。今恐らく日本の企業、ほとんどがもうグローバルで仕事をしていますので、ちょっと前というか、以前に比べると非常に、特にアジア地区での、ここで24ページ以降ご議論されているところというのは本当にやはり真剣に議論しないと、これ日本の国益に関することだろうと思いますので、不正競争防止法及び国際的な先使用権の扱いみたいなところは十分検討していただきたいなと思います。
 以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 田中委員。
○田中委員 おそらく次回までには少し検討していただけるのではないかということで問題提起をさせていただきます。今、全世界で出願される特許の件数は正味で数十万件から百万件です。ところが、各国に重複してどんどん出願されていますから、数百万件になっているのです。よって、ある意味では非常に無駄なことを全世界でやっているわけです。つまり、特許庁も重複審査をしておりますし、出願人も重複申請しなければいけないという状況に陥っており、全体的には非常に無駄なことが行われています。
 一方、世界特許にすればその無駄がなくなるという話があります。ところが、世界特許にするための一番大きい問題は、私は先行技術の国毎の偏在だと思います。日本だけに出願された発明は、海外には出願されていない。そのような件は日本語では書かれており、その件よりも後に出願された件に対して先行技術の対象には十分なり得るわけですが、アメリカの審査官がその件の内容を見ることができるかというと十分には見ることができないなど、このように先行技術が国毎に非常に偏在しているという事情があるわけです。それを世界統一特許にして、各国の審査官が審査するときに、特定の国に偏在している情報をどうやって得て、それを活用するか。言葉の壁もある中で、どのように対応する仕組みを構築していくかという非常に大きな問題があります。これが1つ目です。
 それからもう1つです。特許審査ハイウェイ等がどんどん開始されています。今までは出願後1年半たてば公開され、公開された後、競合他社等が先行技術を情報提供するという制度があったわけですが、今後は出願後1年半たって公開になる前にさらにスーパー早期審査でどんどん登録になる事例がものすごく増えてくると予想されます。今のところ通常審査では着手まで二十数カ月もかかっておりますが(笑)、そのうち11カ月になると言われているのです。11カ月ということは、公開される前に特許になるものがどんどん増えて第三者の情報提供ができなくなるということではないでしょうか。昔は異議申立制度というのがありましたが、今はそれもなくなりました。審判請求は今でももちろんできるわけですが、これは当事者系ですので、身分を明かして審判請求することになります。昔は、自分がその特許に関心を持っていることを見破られたくない場合には異議申立を利用することができました。特許庁がものすごくいろいろな努力をされ、早く審査できるようにすることは非常にいいことなのですが、逆に今度はそのような新たな問題点の発生についてもきちんと考えておかないといけないと思います。次回までにはいろいろと調査してもらえるのではないかと期待しております。
○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、今の宿題も含めて、次の回に議論を再開させていただきたいと思います。
 それでは、事務局のほうから次回の開催予定について紹介いただきたいと思います。
○内山事務局次長 それでは、次回、第3回目になりますけれども、来月、11月27日、木曜日でございます。午後2時から4時まででございます。当会議室において開催したいと思っております。議題は、本日の保護の部分についてまだ残されたご意見があれば賜りまして、それとともに、知財の権利付与の迅速化の話とか、あるいはもう1つ模倣品・海賊版対策、そういったところを議題にさせていただきたいと存じます。
○相澤会長 それでは、そのような予定でお願いいたします。
 本日の会合はこれで閉会させていただきたいと思います。
 どうも長時間にわたりまして、ありがとうございました。