首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸

第9回 知的財産による競争力強化専門調査会 議事録

  1. 開 会 : 平成20年12月19日(金)10:00〜12:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 相澤会長、岡内委員、佐藤委員、妹尾委員、田中委員、中村委員、中山委員、
    前田委員、三尾委員、渡部委員
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 政策レビュー及び第3期基本方針の在り方について
    ・知的財産の活用(知的財産の戦略的活用、国際標準化活動の強化、中小・ベンチャー企業への支援、知財を活用した地域振興について)
    ・人材の育成と国民意識の向上について
    (3) 閉  会

○相澤会長 おはようございます。
 それでは、定刻になりましたので、今年度第4回になりますが、知的財産による競争力強化専門調査会を開催させていただきます。
 年の瀬も迫って大変お忙しいところ、ご参集いただきましてまことにありがとうございます。
 なお、本日は、加藤委員、河内委員、それから関田委員、辻村委員、長岡委員はご欠席との連絡をいただいております。
 それでは、議事に先立ちまして、事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
○内山事務局次長 配付資料でございます。
 資料1は、これまで講じてきた施策の概要及び現状、いつものファクツシートでございます。
 資料2が政策レビュー、知財戦略の在り方についての討議用資料でございます。
 資料3に、第2期重点項目の実施状況に関する評価(案)。
 それから、資料4が過去の特許・標準化戦略の事例ということでございます。
 資料5は、妹尾委員の提出資料でございます。
 参考資料の1でございます。これは、11月27日に取りまとめられましたデジ・ネット専門調査会の報告書でございまして、デジタル・ネット時代の知財制度の在り方につきまして、コンテンツの流通促進方策、それから権利制限の一般規定、フェアユース規定の導入、3点目といたしまして、違法コンテンツ対策、これらに関しまして、報告書を取りまとめております。
 参考資料2でございますけれども、これは、12月15日に開催しましたコンテンツ・ブランド専門調査会の資料でございますけれども、本専門調査会と同様に、コンテンツ、それから日本ブランドの分野におきます政策レビュー等について、検討を開始したところでございます。
 以上でございます。
○相澤会長 資料はよろしいでしょうか。
 それでは、早速ですが、本日の議題であります政策レビュー及び第3期基本方針の在り方について、ご議論をいただきたいと思います。
 今回は、知的財産の戦略的活用、国際標準化活動の強化、中小・ベンチャー企業への支援、知財を活用した地域振興、人材の育成と国民意識の向上についての議論をお願いしたいと思います。
 前半は、知的財産の活用というくくりでお話しいただきまして、後半は人材の育成でお願いしたいと思います。
 2つ、きちんと時間を分けることはできませんので、順次進めたいと思います。
 それでは、まず、討議用の資料の1から4を使いまして、事務局から説明願います。
○内山事務局次長 いつものように討議用資料の2を中心にご説明させていただきたいと存じます。
 その後、参考として資料4についても、ご説明したいと存じます。
 資料2の1ページ目からでございますけれども、知的財産の活用の部分でございます。まず、企業の知財戦略の高度化につきましては、評価の概要と課題にございますように、グローバル化、あるいはオープン・イノベーションが進展する中におきまして、一部の企業におきましては、最高知財責任者(CIPO)、知財担当役員の設置、また知財報告書の作成・公表が行われておりまして、知財戦略の高度化に向けた取り組みは徐々に進んできておるところでございます。しかし、全体としては、まだ十分ではないと考えております。
 また、一方、企業が保有いたします未利用特許の割合につきましては、ここ最近、年50%付近で推移をしております。
 4ページ目をお開きください。
 4ページ目に、これに関します政策目標と評価指標でございますけれども、まず、目標につきましては、企業活動のグローバル化やオープン・イノベーションの進展に対応しまして、知財を事業活動において有効活用を図るということでございます。
 評価指標は、知財報告書の開示件数であったり、未利用特許の割合、またCIPOの設置の状況などでございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、まず、企業の知財管理の徹底と知財戦略の高度化でございます。企業におかれまして、競争環境に応じて、知財に関しますオープンな戦略、そしてクローズドな戦略を適切に組み合わせて、高度な知財戦略の構築を促進する。そのために、CIPO等の設置を奨励いたします。
 それから、CIPO等の意識向上でございますけれども、CIPOの指導の下、知財戦略策定部署、事業戦略策定部署の連携などを進めまして、企業におきます知財戦略の高度化を推奨してまいります。
 続きまして、5ページ目でございます。知財を活用した事業活動の環境整備でございます。まず、オープン・イノベーションに対応した基盤整備の状況でございますけれども、オープン・イノベーションが進展をしておりまして、知的財産の流動性が高まってきております。これまで、技術移転・特許流通の促進、あるいはライセンシー保護のためのいろいろな施策、制度整備が行われてきておりまして、一定の成果が上がっていると見られております。
 しかしながら、企業の倒産、あるいはM&Aによる特許流通の増加に伴いまして、ライセンシー保護のさらなる強化の要望、また特許原簿、あるいは商標原簿上の権利者にコンタクトできない場合がある。そういった問題が指摘をされてございます。共有特許のライセンス円滑化を図る観点からは、特許法におきます共有制度の見直しの要望なども指摘をされてございます。
 また、各企業、業種、大学に分散をして存在いたします知財を組み合わせて活用して、新たな経済価値を生み出す、こういった取り組みが十分ではないのではないかと考えられます。
 ページをめくっていただきまして、9ページ目をごらんいただきます。
 9ページ目は、知財ファイナンスに関してでございます。信託業法の改正によりまして、知財権を信託することが可能となりました。また、政策投資銀行が中心となりまして、知財担保融資の実績も積み上がってきております。また、中心企業、ベンチャー企業の資金調達の手段といたしまして、知財を活用した融資、あるいは知財信託への期待は高いわけでございます。今後も、知財を活用した融資、知財信託の成功事例、知財価値の評価実務、こういった実績を積み上げていく必要があると考えております。
 その関係で、11ページ目をお開きいただきます。
 第3期の政策目標、評価指標でございます。
 まず、オープン・イノベーションの進展に対応した基盤整備を図るという点につきましては、評価指標として、知財制度の整備の検討・実施状況について、それからイノベーション創造機構の設立、また設立後の活動状況についてでございます。
 それから、知財ファイナンスの強化につきましては、知的資産経営報告書の作成・開示などを通じまして、知財を活用した資金調達を促進していくことでございますが、評価指標といたしましては、知財信託の利用状況、あるいは知財を活用した融資の状況等でございます。
 今後講ずべき主な施策といたしまして、未登録の通常実施権の保護制度の検討がございます。特許法の改正後の通常実施権登録制度の運用状況等々につきまして、情報収集・分析を行いまして、その分析結果、また産業界のニーズを踏まえまして、必要に応じて、当然保護の導入可否の検討を行うという点でございます。
 また、権利者不明の状況におきます諸問題の検討につきましても、中長期的な課題といたしまして、商標法等の問題について調査・分析を行い、産業界のニーズを踏まえた必要な措置の有無について検討するということでございます。
 また、共有特許、特許法第73条の制度の在り方の検討につきましても、現状についての調査・分析を行い、73条等の改正の要否を検討いたします。
 また、イノベーション創造機構の創設、そして知的資産経営報告書の普及ということでございます。
 続きまして、13ページでございます。知財の公正な活用の促進でございます。オープン・イノベーションが進展をいたす中で、知財権の正当な権利行使を促進することによりまして、知財権が円滑に活用される環境を確保することが重要でございます。これまで、公正取引委員会の中に知的財産タスクフォースが設置をされました。また、パテントプール、知財の利用に関する独禁法上のガイドラインの策定もされております。
 また、ソフトウエア分野におきます権利濫用の法理の適用解釈につきまして、準則が公表されております。
 こうした施策によりまして、知財権の権利行使に関します独禁法の適用範囲についての一定の透明性・予見性の確保が図られてきているとのことでございます。
 他方、近年、米国を中心といたしまして、濫用的な権利行使の問題、いわゆるパテント・トロール問題が顕在化をしておりまして、日系企業も被害を受けているところもございます。国内におきましても、このような問題に対する意識が高まってきております。
 こうした問題への対応につきましては、これまで競争力強化専門調査会の情報通信PTの報告書、あるいは分野別知財戦略におきまして、多角的な議論の喚起と検討の視点が示されております。
 今後とも、さまざまな観点から、本問題への検討を行うことが必要であると考えられます。
 資料をめくっていただきまして、16ページでございます。
 政策目標といたしましては、特許権等の権利行使の在り方について検討・整理をして、知財の公正な活用を促進していくということでございます。評価指標といたしましては、各種ガイドラインの見直し・整備、あるいは権利行使の在り方に関する検討の状況ということでございます。
 今後、講ずべき主な施策につきましては、知財権の権利行使に対します独禁法の適用範囲の明確化、そして権利行使の在り方の検討ということでございます。
 続きまして、17ページ以降は、国際標準化活動に関してでございます。まず、産業界の意識改革の点でございますけれども、ことし3月に経団連が実施をしておりますアンケート調査、これを見ますと、企業活動におきます国際標準化の重要性がここ数年で高くなったと回答した企業が約76%でございます。このように、意識改革の成果は一定程度見られるわけでございますけれども、まだ、社内全体におけます理解、または技術分野ごとの特性に応じた意識の醸成というのは、不足をしているとの指摘がございます。
 そこで、19ページ目に政策目標といたしましては、産業界におきます国際標準化に関する意識の向上、浸透を図るということで、評価指標として、意識調査、アンケートといったものが考えられます。
 今後講ずべき主な施策としては、産業界に対する啓発活動を引き続き継続的に実施をしていくという点がございます。
 続きまして、ページをめくっていただきまして、我が国全体としての国際標準化活動の強化の点でございます。
 これまで、政府によります国際標準化に関する戦略の策定、また国際標準化に関する国などの役割を規定いたしております研究開発力強化法の制定、そして国の研究開発と標準化活動の一体的推進、さらには産業界における推進体制の整備というのが行われてまいりました。
 こうした取り組みの結果、国際標準化機関におけます議長ポスト、あるいは幹事国といった重要ポストの獲得の数、あるいは国際標準案の提案件数というのは増加傾向にございますが、まだ、欧米主要国の活動水準には及ばないという、そういう状況にございます。
 そこで、22ページ目を見ていただきますと、政策目標といたしましては、産学官連携による国際標準化活動に関する取り組みの強化によりまして、欧米と比して、遜色のない国際標準化活動を実現するということでございます。評価指標といたしましては、国際標準化機関におけます議長、幹事等のポストの獲得状況、また国際標準提案等の数でございます。
 今後講ずべき主な施策といたしましては、これまでの国際標準化に関する各戦略の確実な実行と改定、また研究開発と標準化活動の一体的推進の拡大、海外におけます国際標準化情報の収集・提供体制の構築でございます。
 次に、国際標準人材の育成の点でございます。
 これまでいろいろな取り組みが行われてきておるところでございますけれども、大学、公的研究機関の任務として国際標準化活動が明確に位置づけられていない、そういった点から、国際標準化活動が研究者の評価に正当に反映されていない面があると考えられます。
 こうした点が、若手研究者が国際標準化活動に携わる、そういった研究者の減少の一要因になっているという指摘がございます。
 こうした観点から、本年10月に改定をされました国の研究開発評価に関する大綱的指針の中におきましては、研究者の業績の評価に当たりまして、国際標準化への寄与に関する活動にも着目して評価を行うことが明記されたところでございます。
 今後は、この方針に沿って、大学等が研究者に対する業績評価を行うということが必要だと考えられます。
 また、産業界におきましても、国際標準化に携わる人材に対する積極的な評価が期待をされるところでございます。
 次に、24ページ目の下のほうにございます次世代を担う人材の早期育成・確保の観点でございます。これまで、各種研修、セミナーの開催、あるいは標準化教育の充実が図られてまいりました。しかしながら、中国、韓国におきましては、国際標準化活動に参画する人材が質・量ともに増大傾向にあると言われております。他方、我が国におきましては、次世代を担う中堅・若手の人材が依然として不足をしていると、こういう状況でございます。
 そういった点で26ページ目に政策目標と評価指標がございます。まず、目標といたしましては、欧米に比して遜色のない国際標準化活動を実現するために必要な人材を育成・確保するということで、評価指標といたしましては、大学や公的研究機関の研究者の業績評価におきます国際標準化活動への寄与の評価状況であるとか、国際標準化活動に携わる人材の育成・確保の状況というようなところでございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、政府におきます顕彰制度の拡充、あるいは研究者の業績評価の改善などでございます。
 続きまして、アジア等諸外国との連携の強化、27ページでございます。
 これまで、国際的な発言力を確保する観点から、アジア・太平洋標準化イニシアチブの策定など、アジア・太平洋地域におきます関係諸国との連携強化を図ってきたところでございます。今後とも、同地域におきます国際標準化活動の活性化、また国際標準案の共同提案の拡大に向けた取り組みを強化することが必要であると考えられます。
 28ページ目に政策目標と評価指標がございます。まず、目標といたしましては、アジア・太平洋地域における国際標準化活動に関する諸外国との連携を一層強化するということでございます。評価指標といたしましては、アジア・太平洋地域の諸外国との国際標準案の共同提案に向けた研究開発プロジェクトの数などでございます。
 今後講ずべき主な施策といたしましても、このような共同提案の増大、国際標準化活動の活性化ということがございます。
 続きまして、29ページ、国際標準に関するルールづくりへの貢献でございます。
 標準化におきます特許権の取り扱いに関しましては、国際標準化機関におきますパテントポリシー、そのガイドラインが共通化をされまして、また国内におきましても、パテントポリシーの改定、標準化に伴うパテントプールの形成に関します独禁法上の考え方の公表、こういったことによりまして、一定の明確化が図られてきたところでございます。
 しかし、依然として、標準の策定、普及に関しまして、特許権の不当な権利行使が行われる場合がございます。オープン・イノベーションの進展に伴いまして、国際標準化の重要性が高まってきております。その円滑な普及を図る観点から、知財権の取り扱いの一層の明確化が求められておる状況でございます。
 そこで、32ページ目に政策目標と評価指標がございます。
 まず、政策目標でございますけれども、オープン・イノベーションの進展に伴い、重要性を増している標準化活動と調和をした知財システムの構築を目指し、知財権の正当な権利行使を尊重しながら、標準技術に関する知財権が円滑に利用される環境を整備するということでございます。
 評価指標といたしましては、情報提供体制の整備の状況、あるいは権利者と利用者との権利調整の在り方に関する検討状況ということでございます。
 今後講ずべき主な施策といたしまして、独禁法ガイドラインの見直しと周知の徹底、また、強制的に実施可能とする方策の検討というような点、また、国際標準に関する技術情報を審査資料として容易に利用できる環境の整備という点がございます。
 次に、中小企業・ベンチャー企業への支援についてでございます。
 まず、相談・情報提供機能の強化につきまして、中小企業における知財マインドの浸透は十分かという点でございます。
 これまで、中小企業の知財マインドを向上させるために、セミナー・説明会の開催、パンフレット、マニュアルの配付によりまして、普及・啓発を図ってまいりました。しかしながら、知財に対する認識は広まりつつあるものの、知財を獲得・管理することのメリットが十分に中小企業に伝え切れていないということから、知財戦略を企業経営に取り込むという行動にまでは十分つながっていないというふうに見られます。
 次に、35ページ目でございます。
 相談・情報提供機能は十分かという視点でございます。
 全国の商工会・商工会議所に相談取り次ぎ窓口として、知財駆け込み寺が設置をされております。しかしながら、実態を見ますと、実際に寄せられる相談は、一部の窓口に集中をしているのが現状でございますし、また、寄せられた相談を的確に処理する、そういった相談処理体制も、まだまだ改善の余地があるという状況でございます。
 また、中小企業向けの知財関連の各施策につきましては、関係機関の連携が不十分であることなどもございまして、中小企業者に十分に認知をされていない部分があるということで、周知方法についても改善の余地がございます。
 そういったことを踏まえまして、37ページ目に政策目標と評価指標でございます。
 まず、中小企業における知財マインドの浸透という点につきましては、評価指標として、出願に占める中小企業の比率、あるいは秘密保持規程等のマニュアルの策定・整備している中小企業の割合等々でございます。
 それから、相談・情報提供機能の強化につきましては、評価指標として、各支援施策の認知度、アンケート調査、あるいは利用満足度、アンケート調査というものがございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、まず、中小企業に伝わりやすい普及・啓発活動を強化していくという点、それから相談窓口の機能強化につきましては、身近な相談取り次ぎ窓口としての知財駆け込み寺を活用しながら、さらに地域力連携拠点との連携を強化するということによりまして、効果的、効率的な体制を構築していくということがございます。
 また、知財関連支援施策のユーザーフレンドリーな情報提供についても強化をしていく必要がございます。
 続きまして、負担軽減に関してでございます。
 これまでも負担軽減策、支援策に関しましては、要件の緩和、対象の拡大を行ってきておりまして、その利用実績は着実に増加をしてきております。他方、例えば審査請求料等の減免措置に関しては、要件に合致しない中小企業も多い。それから、審査手続が面倒であるということから、制度を利用しない中小企業もあるという点がございます。
 それから、中小企業におきましても、グローバル化への対応が求められております現状にあって、中小企業にとっては海外出願の費用負担だけではなくて、権利取得後の模倣品対策、こういった点も大きな課題でございます。
 減免措置、支援策を効率的かつ効果的に実施していくためには、支援策の検討段階から、知財関連施策の担当者と中小企業施策の担当者との連携が不可欠であると考えております。
 42ページ目に目標と評価指標がございます。
 中小企業のニーズに即した利便性の高い支援策を講じるという目標に対しまして、評価指標といたしましては、減免措置、支援制度の利用実績、それから利用満足度、アンケート調査でございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、特許審査請求料等の減免範囲・対象拡大の検討、また、特許審査請求料等の減免申請手続の簡便化の検討、外国事業展開支援策の拡充、支援機関間、あるいは担当者間の連携強化といったところでございます。
 続きまして、知財を活用した経営の促進の点でございます。
 資金調達の円滑化、経営革新などに関します支援のニーズは高くて、知財の側面から対応していくことが必要でございます。
 今後、知財を活用した資金調達をさらに活性化、円滑化するためには、中小企業みずからが積極的に知財に関する情報を金融機関に対して開示をしていくことが必要でございます。
 また、経営革新、販路開拓に関しましても、専門家派遣による知財を取り入れた事業戦略の策定支援、特許流通アドバイザーなどの中小企業等の事業化ニーズ、技術シーズのマッチングを図る特許流通支援などを行ってまいりました。今後とも、そういった支援人材を充実させるということと、支援の強化ということが必要だと考えています。
 ページをめくっていただきまして、こういった点に関します目標と評価指標でございます。
 中小企業の資金調達の円滑化を図るという点につきましては、評価指標といたしまして、知財担保融資の状況、知財を活用した融資の状況等がございます。
 また、政策目標の2の中小企業支援人材の育成、中小企業が知財を活用した経営を行いやすい環境を整備するという点につきましては、評価指標として、支援人材の育成状況等がございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、まず、地域密着型金融におきます知的財産の活用、それから金融検査マニュアル別冊、中小企業融資編のさらなる周知、それと必要に応じた改訂がございます。また、知的資産経営報告書の普及等々がございます。
 続きまして、知財を活用した地域の活性化の点でございます。
 2005年度に地域知的財産戦略本部を各地域ブロックごとに設置をしたところでございます。他方、かねてより、地域におきます各施策担当者レベルの連携が不十分との指摘がございますが、近年、農商工連携などの地域レベルの知財施策とその他の施策との連携、取り組みが開始をされてきておりますけれども、まだまだ連携は不十分ということでございます。
 それから、一部先進的な取り組みを行っている自治体もございますけれども、全体には広がっていないという点がございます。
 また、グローバル化が進展する中で、我が国の地名等が海外で商標登録されるといった問題も顕在化してきておりまして、対応が求められております。
 53ページ目に政策目標等がございます。
 国を初めとした組織間の連携を行う下で、知財施策と中小企業施策などの各施策の連携、そして知財を積極的に活用した地域振興を図るということでございます。
 評価指標といたしましては、地域知財戦略本部の成果目標の達成状況、あるいは地方公共団体の知財施策の取り組み状況等々がございます。
 今後講ずべき主な施策といたしましては、関係機関、各施策担当者との連携強化、地域団体商標を活用した地域振興等でございます。
 次に、人材育成、国民意識の向上の部分でございます。
 第1に、イノベーション創出に資する知財人材の育成につきましては、評価の概要と課題にございますように、知的財産人材の数はふえてきております。それから、事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の三位一体での推進が必要であり、その際に、社会ニーズを把握して、社会問題を解決するために必要な知財を獲得・活用することの留意も必要でございます。
 しかしながら、事業戦略、知財戦略の連携は不十分でございまして、その実現に必要な人材の育成・確保が不可欠な状況でございます。
 こういった観点から、知財専門人材には経営・事業に関する知見を習得させる。また、経営・事業戦略に携わる人材には、知財に関する知見を習得させるという両方からのアプローチが必要でございまして、それによりまして、企業内、産学間でこれらの人材の連携を一層推進させていくということが必要でございます。
 政策目標と評価指標は58ページ目でございまして、まず第1として知的財産専門人材の、知的財産以外の周辺領域に係る能力を強化するという点。評価指標といたしましては、知財コンサルタント・総合アドバイザーを担えるような弁理士の数等でございます。
 政策目標2といたしましては、知財戦略を取り入れた経営・事業戦略を推進して、社会ニーズに対応しながら知的財産を経済的価値の創出に結びつけられるよう、経営・事業戦略に携わる人材の知財に対する認識・知識をより一層高めるという点でございます。
 今後、講ずべき主な施策といたしましては、知的財産専門人材能力の広域化、知財マネジメント人材の充実等でございます。
 次に、グローバル化に対応した知財人材の育成の点でございます。
 知財活動につきましても、一層のグローバル展開が求められております。そういった中で、欧米とか、中国、韓国に対しましては、それなりの対応が行われてきておりますけれども、インド、ブラジル、ロシアなどの新興国につきましては、まだ専門家が少ないとの指摘がございます。
 また、企業におきましても、国際競争力のある知財人材がまだ不足しているとの指摘がございます。
 さらには、大学知財本部に関しましては、海外出願の特許戦略の策定、海外企業との交渉実務に必要な人材の不足が指摘をされてございます。
 こういった点を踏まえまして、61ページ目の政策目標でございますけれども、国際的な知的財産人材を着実に確保するということでございます。
 評価指標といたしましては、国際交流の開催状況等がございます。
 今後講ずべき主な施策も国際交流の充実、国際的な産学官連携の推進等でございます。
 最後になりましたけれども、独創性を重視した知財教育の推進でございます。
 子供のころから独創性、あるいは他人の知的財産を尊重するマインドを身につけることが重要でございます。
 しかしながら、2008年直近の特別世論調査を見ますと、模倣品・海賊版の購入を容認する者は52%存在をしておりまして、国民全体への知財マインドの浸透が不十分な状況でございます。
 そこで、政策目標と評価指標でございますけれども、まず、独創性、他人の知財を尊重する意識を子供のころから醸成をし、模倣品・海賊版、違法コンテンツに対します国民の問題意識を向上させるため、知財の創作に関する課外活動を全国の児童、生徒が受けられるような環境を整備する。また、学校教育における知財教育を充実させるという点でございます。
 評価指標は、発明クラブの活動等でございます。
 目標の2は、教員・指導者の育成、また専門家を活用した知財に関する教育・指導を充実させるという点でございます。
 評価指標は、指導員の数等でございます。
 今後講ずべき主な施策は、課外活動の充実等々でございます。
 続きまして、資料4をご参考までに説明いたします。前回、佐藤委員、あるいは妹尾委員から、特許や標準化はしっかり取ったけれども、事業としてはうまくいかなかったケース、そういったことも参考にしながら、今後議論をしていったらどうかと、こういうご指摘がございましたので、過去の特許・標準化戦略の3つの事例をここにまとめております。
 簡単にご紹介いたします。
 まず、時計、クオーツ式のウオッチでございます。クオーツ式のウオッチにつきましては、重要部品の技術につきまして、非常に日本は高いものがございまして、完成品の日本のシェアはアナログクオーツ式に限れば、7割を超えておったわけでございます。しかし、下にございますように、オープンな特許戦略、クオーツ式の時計を世界中で量産・普及することを戦略に据えまして、技術は特許化をしたわけでございますけれども、他国メーカーとのクロスライセンスを行ったということ。あるいは重要部品につきましては、外販をするということで、競合他社も同じ部品を利用可能な状況になったということから、日本企業におきましては、低価格化、コモディティー化ということによりまして、収益性が悪化をしたという事例でございます。
 次の2ページ目、第3世代の携帯電話の例でございます。
 皆様、ご案内のところかと思いますけれども、第2世代と比べまして、第3世代につきましては、我が国におきましても、IMT−2000という緩やかなデジュールスタンダードを獲得したわけでございますけれども、そういった中で、企業間でデファクトスタンダードを争う状況が出現をいたしました。
 3G市場におきましては、日本国内で先行して立ち上がったわけでございますけれども、欧州におきましては、大変巨額のインフラ投資が必要であったり、日欧でビジネスモデルが異なっていたことがございまして、なかなか他国では立ち上がらずに、日本の端末メーカーは、技術的な優位性を他国で生かせないという状況だったわけでございます。
 他方、クアルコム社などにつきましては、水平分業化を行って、戦略的な対応をしてきたところがあったわけでございます。
 続きまして、最後にDVDレコーダー等の例でございます。
 DVDレコーダー等につきましては、DVDフォーラムを形成して、日本が標準化活動をリードしてきたわけでございますけれども、1990年代以降、標準化の段階で、部品のモジュール化が進展をして、部品を組み合わせるだけで、最終製品の製造ができるということ。市場は急速に拡大したけれども、モジュール化が進展をしたということで、中国などの新規参入が相次ぎまして、市場価格は一気に低下をし、日本企業の収益性は低下をしたということでございます。
 他方、DVDの基幹部品、あるいは基幹部材につきましては、自社技術・知財を標準に刷り込んでいくということで、そこは健闘をしたということでございます。
 以上で説明を終わらせていただきます。
○相澤会長 ありがとうございました。
 ただいまから、事務局の説明に基づきまして、議論に入りたいと思います。
 資料2のページで申しますと54ページまで、ここを知的財産の活用ということで、まず議論をしていただきたいと思います。
 内容としては、知的財産の戦略的活用、国際標準化活動の強化、中小・ベンチャー企業への支援、知財を活用した地域振興が含まれております。
 ご意見がございましたらば、挙手の上、ご発言いただきたいと思います。
 いかがでございましょうか。
 どうぞ、前田委員。
○前田委員 国際標準化のところと中小企業のところについて、お話しさせていただきたいと思います。
 まず、国際標準のほうですが、この10年間、知財立国と謳い、大学で知的財産本部整備事業だけではなく、教育に関しての競争的資金が大変たくさん講じられてきました。大学で若手を育てたり、またそこでやる事業に企業の方がたくさん参画して、ブームをつくって若い方たちがそこに参入したというのは、知的財産の裾野を広げる意味で、とても役立ってきたと思います。もともと企業の知財部というのは、ベテランの方の多い場所だったのですけれども、やはりそうやって大学がかなり教育をしていくことで、若手の方が特許のほうに初めから行きたいという人材がふえ、またそこで、ベテランの方が実際の自分の経験をもとに、いろいろな話しをすることで良い連携ができてきました。そのようにして、国際標準も、大学等で競争的資金を利用して色々なプログラムが行われ、いろいろなところでブームをつくればいいのかなというふうに思っています。
 手前味噌で申しわけないのですけれども、東京医科歯科大学で知的財産の目利きの人材養成(トータル5億で5年間のプログラム)をやらせていただいて、今年が最終年なんですけれども、毎年2倍から5倍ぐらいの応募があります。弁護士の先生や大学の教授の方もたくさん応募していらっしゃって、特許庁の審査官の方も随分たくさん落ちてしまうんで忍びないんですけれども、ブームになるということで、世の中がわいてくれる。そうすると、若手の方が目を向けるので、企業の方も初めから標準のほうに行きたいという方がどんどんふえるのではないかなというふうに思います。また、単発のセミナーとかを打っても、どうしても専門の方が聞きに行くと思うので、ちゃんと1年間通して、3年や5年通しての教育プログラムにする必要があると思います。学生さんないし夜間に社会人の方がたくさん参加し、またそこでの一環としてのシンポジウムや特別講演会を打つことで、本部署の場合ですと、400人ぐらいのシンポジウムを年に1回、200人くらいの特別講演会、年四、五回させていただいているんですけれども、人を大勢集めることで、広報活動にもなりますし、専門外の人も目を向けていただけますので、ブームをつくるという意味で、競争的資金等を大学にたくさん配置するというのも一つの案じゃないかなと思います。
 また、本学は履修生のネットワークの構築ということで、メーリングリストをつくったりして、あと飲み会等をやったりしています。当然、社会人の担当の方同士のネットワークとか、業界会で当然あると思うのですけれども、それ以外、学生さんも交えたネットワークというのができていきますので、いろいろな意味での波及効果があるんじゃないかなというふうに思っています。
 次に、中小企業についてですが、本学は、文京区と組んで、中小企業対策というか、そのような感じのものをやらせていただいております。文京区の商工会議所で、知財の講義をさせていただいたり、あとは文京博覧会というのに毎年展示させていただいたりしております。なぜ文京区なのかといいますと、もちろん地元なのですけれども、あそこは医療機器の中小企業がたくさんございまして、結構組めるものがあるんじゃないかということで、お話しが来まして、そういうような形で進んでおります。
 私、東京医科歯科大に行って6年ですが、臨床の先生がたくさんいる医学系というのは、外科の先生だったり、歯医者さんだったりしますと、患者さんを見ていますので、ニーズがとてもたくさんあるのですね。大学がシーズで企業がニーズと言う言い方を良くするんですけれども、むしろ臨床を抱えている大学は、ニーズの宝庫になっています。ちょうどそういうものを組んでいただくのは中小企業の方がちょうどいいと思っています。ちょうどいいと言ったら申しわけないのですけれども、とてもフットワークの軽い中小企業さんと組むのはいいアイデアじゃないかなと思っておりますので、大学は、むしろニーズの宝庫という形の考え方もあるんじゃないかなというふうに思っています。
 以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでございましょうか。
 どうぞ。
○岡内委員 中小企業ということにかなり限られた話ですけれども、本当に今最悪の事態になってしまいました。多分、テレビ、新聞で概要はご存じだと思いますけれども、今仕事が減っているというよりも、なくなってきているというぐらい大田区以外でも中小企業は大変な状態になっております。大体、私の知っているところでも、週に3日、機械が動く。あと2日はとまっているという状況で、しばらくは堪え忍ぶことはできるとは思うんですけれども、これがいつまで続くかわからないという状態は非常に不安な状態でございます。
 そういった中で、今、知財大事だよということを言うのは、タイミング的に一番悪い時期になってしまったのですが、ただ、いつまでも続くわけではない。場合によったら、今がチャンスという方もいらっしゃるかもしれません。ただ、少なくとも、今までやってきた知的マインドというものは、前に比べると上がってきております。今すぐには目が向けられないかもしれませんけれども、このときに、次の政策をぜひ打ち上げていっていただきたい。
 一番何といっても資金でございます。ここにも出ておりますけれども、特許申請に係わる減免措置というのは、講じられてはおりますけれども、それに飛びついてみると、がっかりするぐらい制約が多い。資金の乏しい会社といっても、どこまでだかはっきりしませんし、もうそれを見ただけで、私どもも手を引いております。
 これを中小企業であれば、全部半額という大きな看板を掲げていただければ、今、現在すぐには手をつけられなくても、チャンスがあったときには、そこまで見てくれるんだったら、利用させて頂こうではないかというふうになるんじゃないかと思っております。
 ですから、もう第1番目に掲げるのは、とにかく中小企業であれば、半額にしていただきたい。はっきり中小企業という枠は決められているわけですから、資本金3億、300人以下。もし、これが違反しているということでもありましたら、多分そんなところないと思うんですけれども、これは後で取り消しなり罰則的な規定は幾らでも使えることなので、ぜひぜひこれを進めていっていただきたいと思います。
 それから、39ページにございますけれども、もう一つ、海外における費用負担、これは今現在、地方自治体でやっているんですけれども、東京と千葉と助成金額が違うんですね。金額は東京が300万、千葉が150万かな。これはやはり国の政策として上げていくとすると、地域によって補助金額の額が違うというのはおかしいのではないか。ぜひ、これも統一的に、地方の、いわゆる予算がないということであるならば、何とか国で補助をしていくという形でやっていただければと思います。
 もう一つ海外ということで、これ前にも申し上げましたけれども、何か情報提供というと、みんな知財に関するいわゆる政策の情報だけなんですが、今進めておられるということであったのですけれども、海外の情報、これは次の製品の種になるわけでございます。ぜひ早く窓口を掲げていただきたい。私どもも、常にそれを見ながら海外における進出を計画していきたいと思っております。
 ちょっと拝見しておりまして、46ページなんですけれども、地域密着型の金融の件。中小企業というのは非常に内容を第三者が理解することは難しい。要するに、内容を公開しません。大手企業でしたらば、それこそ新聞に指針なり何なり情報も全部報告されますけれども、中小企業というのは、まず親族であっても公開しない。ですから、悩んでいることも自分一人でしまっている。ただ、金融に関してだけは、資金を借りようと思えば、どうしても内容を打ち明けなきゃいけません。ここにも書いてありますように、金融も知財を見ていこうということですから、ぜひ金融をシーズ・ニーズの連絡の窓口にする、これは大変おもしろいご提案じゃないかと思っております。私ども、仲間でもシーズとニーズ、それはドッキングさせるということはなかなか難しくて、シーズを求め過ぎると何をやっているか、同業企業にわかってしまう。それ知られたくないということで、なかなかその解決、シーズの解決を表に出せないんですけれども、金融であれば、いろいろなところの話を持って来ることができる。一応、守秘義務もかなり保たれていると思いますので、これは大変おもしろい方法で、具体的に中小企業の経営者にとっては問題解決の一つの手段になるんではないかと思っております。
 もう一つ、ベンチャー企業への資金援助ということで、今エンジェル減税というのがございますよね。あれはほとんど知られていない。私自身も個人で大分バックアップしたことがあります。エンジェルというのは、何となく資本家が投資の対象にしているということに思われるかもしれませんけれども、中小企業の親父でも、あいつおもしろいことやっている、となればエンジェルになることもあります。1つの会議で40人ぐらいの仲間でしたけれども、1人の学生のアイデアに、わかった500万出そうという方が2人いらっしゃいました。でも、結局、その種がTLOに絡んでおりまして、違うところで話が進んでいて、現実にならなかったんですが、こういったときに、自分の出した金が、いわゆる所得減税をしてくれれば、本当に資金を出す人がいるんじゃないかな。
 銀行が金を出しているからベンチャーは育たない。つぶれたときの悲惨さを考えますと、まず技術だけ担保なんていうことはありません。必ず家、土地を担保に取られます。第二保証人なんて最悪、もう親族まで全部、本当に生活ができなくなってしまう。だけど、個人のエンジェルであれば、最初からそれは覚悟の上ということで、次にまた生まれ変わることができる。だから、もうちょっとエンジェルに対するアメリカまでもいかないまでも、少しフォローをしていただけると、受けるベンチャー側も助かりますし、出しているほうも気持ちよく、自分の出しているところの成長を見ながら楽しめるのではないかと思っております。
 以上です。
○相澤会長 ただいまたくさんの重要なご指摘いただきましたが、事務局からそれぞれについて、対応していただけることはありますでしょうか。
○内山事務局次長 岡内委員から、中小企業の現状を踏まえて、幾つか具体的なお話がございました。私どもも、知財本部だけでできることというのは非常に限られておりますので、それぞれの担当の部署、特許庁であったり、中小企業庁であったり、そういったところとも十分連携をとりながら、できることについては、できるだけ速やかに検討をして、対応できるように努力をしていきたいと思っております。引き続きいろいろとまた実態を教えていただければと思います。どうもありがとうございました。
○相澤会長 それでは、そのほか。どうぞ。
○佐藤委員 今の岡内委員のお話との関連でございますけれども、私も最近、地域の中小企業さんとよくお話をして、つくづく思うのは、やはり地域に非常にいい技術なりノウハウを持って、しっかりした中小企業さん、まだまだ日本はあるということを最近すごく強く感じています。ただ、その方たち本当に知財なりを生かして競争力を持つところまでいっているかというと、非常にそこがまだ十分でないというのが今の大きな課題だと思うんですね。そういう意味では、先ほどお話があった、そこで一番問題になっているのはお金と人なんですね。先ほど、岡内委員が言った金融と中小企業さんの関係って非常に密着していて、非常にコミュニケーションもいいし、また助けてもらう関係もあって、非常に情報もよく知られていると。そういう意味では、金融がもっと知財のことをしっかり理解して、それによって、実際扱っている中小企業さんにお金と人を面倒見ていくような、そういう形につくっていくともっとうまくいくんじゃないか。むしろ官製の行政の組織でいろいろなのをつくっていくよりも、むしろこちらのほうが本当は実態的に即した対応になるんじゃないかというのを私も実感として感じています。そういう意味では、この点は、今後の地域の中小企業対策をやっていく上では重要なポイントじゃないかと思います。そういう意味で、戦略本部としては、地域の中小企業さん、これとの関係を改革していくという施策をもっと表に出したほうがいいんじゃないかというふうに強く思います。
 それから、もう一点、エンジェル減税の話ですけれども、これも、やはり先ほどの中小企業さんの人と金がないという、金のほうの問題として、なかなか先ほど岡内委員が言ったように、担保を取られて、金を借りてやるというのは非常にリスクが大きくて、実際に我々の世界から見ても、1,000に1つ、2つの成功というのがほとんどなわけで、そうなったときに、やはりリスクをどこかで分散できるものがないと、なかなか新しいものをチャンレンジできないというのが現状だと思うんです。しかるには、エンジェル減税ということで、非常に何か一見よく見えるんですが、実際にはそれほど有効にきき入っていない仕組みになっていると。ここは抜本的に見直す価値のあるところじゃないかというふうに思っています。
 その2点、岡内委員の応援を兼ねて申し上げます。
○相澤会長 田中委員。
○田中委員 中小企業問題につきまして、私は専門ではないので、あまり多くのコメントは控えたいと思いますが、中小企業の中にもスキルをベースにしたいろいろな種類の企業があると思います。十把一からげに、これらの企業を中小企業という表現で議論して本当にいいのでしょうか。また、バラマキ政策が、本当にその中小企業のためにいいのですかという議論をきちんとすべきだと思いますし、知的財産を中小企業の経営にどう生かしていくかという視点できちんと議論すべきではないかとは思います。
 それはともかくとしまして、3つ、4つ言いたいことがあります。まず3ページでございます。「未利用特許がパテント・トロール等に渡る可能性やそのための防止策を検討することは、企業における知財管理として重要。」と書かれている部分でございます。「そのため、明確な戦略なく未利用特許等を流通させるべきではない、との意見もある。」と書いてあります。このような意見は私は非常に重要であると思います。特許は流通させることが目的という傾向が昨今みられますが、流通させることは絶対目的ではないと私は思います。
 しかしながら、流通させることが必要な場合もあるわけですけれども、その際は特にパテント・トロールに渡らないような形で、ものづくりの会社に対して渡るようにするとか、流通後のあり方をどのような形で契約に明文化しておくかなど、何かそのような指針のようなもの、あるいはガイドラインのようなものが場合によったら必要だと思います。パテント・トロールはだめだ、だめだと言っているだけではなくて、そのような明示的な指針やガイドブックのようなものをきちんとつくっていく必要があるのではないかと思います。
 次は、7ページと11ページになります。この前、事務局の方ともお話ししましたが、共有特許の扱いについてです。特許法第73条は、共有特許の場合には相手方の同意を得て、いろいろハンドリングするという条項でございます。今回、事務局に準備していただきました資料では、少しわかりやすい表現になっていますけれども、本質的な議論をしなければいけないポイントは何かということが、私にはまだよくわかりません。我々は、共有特許につきましては、相手の同意を得て譲渡などを行うことは、至極当然のことだと思っております。もし、大学等との産学連携において、相手の同意を得ないで共有特許の譲渡等がなされた場合には、大学が、例えばキヤノンのコンペティター等に勝手にどんどん権利移転できるということになります。これは、産学連携自身を阻害することにもつながるのではないかと思います。よって、特許法第73条の問題につきましては、根本的には何が問題なのかをもう少し明確にする必要があります。事務局に準備していただいたこの資料には、「製造装置を持たない者と製造・販売をする者等との間で特許権を共有することが多くなっているが・・・、」と記載されておりますが、これはあくまで事例でございます。多くなっているから一体何が問題なのかということは何も書かれておりません。いつもと同じように、流通されていないことや、流動性が低いことが問題だと言っております。流動性が低くなって、何が問題なのかということは全く提起しないで、特許法第73条は問題だ、問題だと言っているように思えます。これはおそらく大学等でも共有特許を所有しており、企業の同意を得なければ処分できないというようなことからもともとは端を発したのだと思います。しかし、やはり本当の問題を把握して、議論するのであれば議論するべきだと思います。
 それから、16ページになります。これは、またパテント・トロール等々の問題と絡むのですけれども、差止請求の要件についてです。これはアメリカでも、たしか差止要件につきまして、幾つかの必須の条件を満たした場合に差止請求が認められるという判決が出たわけですけれども、日本において条件等をどうするかということです。日本の市場ではパテント・トロール問題はまだあまりないと思います。ですから、パテント・トロールと大騒ぎしていますけれども、実はアメリカに対して、どのようなアクションをとっていくのかということがものすごく大事だと思います。日本でもそのような制度構築は必要だと思いますけれども、まだ少し先のことになるのではないかと思います。日本の企業は今、アメリカ等でプロパテント政策の行き過ぎでパテント・トロールが暗躍して、非常に困っているという状況でございます。パテント・トロールには、個々の企業が対処しているわけですけれども、日本国内における話ではなく、むしろアメリカに対して、どのような働きかけ、プロパテント政策の行き過ぎに対してどのような働きかけをしていくかという視点の活動をぜひよろしくお願いしたいと思います。ですから、日本における差止請求等々につきまして、早急に議論しなければいけないということとはちょっと問題のとらえ方が違うのではないかと思います。
 次は22ページの国際標準になります。これについて実は幾つか問題があります。国際標準については日本がかなり全力を挙げて努力していただきまして、ISO、ITU等々で、パテントポリシーの共通化など、非常に頑張ってやっていただいたと私は思っております。今後も引き続き、そのようないろいろな活動を徹底的にやっていっていただきたいと思います。特にITUの取り扱いルールなど、そのようなこともきちんと構築していくというような、取り扱いルールの実施ガイドラインのようなものを日本側からきちんと働きかけてやっていっていただきたいと思います。これは32ページの項目になりますけれども、ぜひ日本がリーダーシップをとって、働きかけを行っていただきたいと思います。
 国際標準を満たす製品をつくるために必須な技術の特許が成立した場合に起こる話ですが、国際標準の策定段階では標準化団体に参加しておいて、国際標準が成立しそうになると標準化団体を脱退して、自分が所有する国際標準の必須特許を勝手に権利行使するという例がたくさんあるのです。我々も権利行使されるような目に何度も遭っており、今でも交渉中のものもあります。パテントプールのようなものをつくり、必須特許の所有者は、そこに強制的に参加しなければならい、というような施策をとっていくべきだと思います。これは、裁定実施権等も絡みますので、非常に難しい問題だとは思います。しかし、国際社会の中でそのようないろいろなルールをきちんとしていかないと、いつまでもパテント・トロールの問題や、標準化に関し、ロックイン現象を起こして、特許を権利行使して金を集めるという現象はなくならないのではないかと思います。
 21ページのところで、言いたいことは、国際標準化活動に対して日本も非常に頑張って、活発になってきているということです。しかしながら、まだまだ人材等は豊富ではないということもあります。例えば、国際の場で活躍する場合には経験者が必要であり、語学や技術的な知識等もかなり要求されます。それから、当然のことながら人脈をつくる必要もあると思います。このような人材が成長するまでは、すごく時間がかかるのです。したがいまして、そのような国際の場で活躍しているベテランと、若い人たちとがペアで活動する等々、これについては標準の中で少し議論もされていますけれども、そのようないろいろな施策をとっていく必要があると思います。なおかつ、これらに必要な費用等につきましても、だんだんと増加をしておりますが、引き続き支援策を強化していくべきだろうと私は考えております。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
○相澤会長 ありがとうございました。
 中山委員。
○中山委員 田中委員との関連で7ページの共有特許の件ですが、この問題は、実は今回が初めてではなくて前から出ている問題であり、かつ全く進んでいないという問題です。この問題は余り議論する必要がない問題だと私は思っております。といいますのは、これはデファクトルール、つまり任意規定なのですね。強行規定ではないのです。強行規定でないということは、どういうことかというと、当事者で契約をしなさいということを裏から促している。契約がなければ、勝手に共有者は譲渡・ライセンスができませんよ、というだけの話なのです。仮に法律直して、共有者が勝手に譲渡・ライセンスできますよという法律をつくったって、それは強制規定ではない。したがって、契約で何とでもなる。キヤノンがもし大学と契約するときには、大学は勝手に譲渡・ライセンスできますよという契約を結ばせるに決まっているのです。したがって、ほとんど意味がない改正になります。もし、大学がそのような契約が嫌なら、大学が自分の望む契約をできるだけの力を持てば良いだけの話です。したがって、法律を変えたって、実態は全く変わらない。つまり、多くの人がデファクトルールというのを理解していないのです。法律にこう書いてあるとこうしなければいけないのじゃないかというふうに思っている。そうじはなくて、法律にこう書いているということは、逆に言えば、それが嫌なら契約を結べということを裏から促しているにすぎない。だから、この問題は議論する意味はないと思っているのですけれども、大学の関係者は、かなり誤解を持っている人が多いように思います。
○相澤会長 どうぞ。
○前田委員 私もこれ要らないと思います。一番最初からずっとそう言っています。
 中山先生がおっしゃるとおりで、本学は、もともと一緒に考えた特許は共有特許で、例えば3年とか5年、全くそれに対しての開発をしてもらえない場合は、他社へも広報活動をしますよということを文言に入れさせていただいて、年数はもちろん企業によって違ってきます。だから交渉です、全部。企業さんと組んでいて、何にも言わずによそへ持っていけるなんていうことは、不信感を生むだけなので、それは絶対にあり得ないし、私たちはこれがあって困ったことは一度もないんで、やはり私も大学の人間なんですけれども、これは特にそんなに問題視することじゃないんじゃないかなというふうに思っています。
○相澤会長 三尾委員。
○三尾委員 契約の問題が出てまいりましたので、その関連で少しお話ししたいと思うんですが、よく契約と特許法や知的財産権法の関係というのを法律相談で受けることがありまして、先ほど中山先生がおっしゃったように、任意規定かどうかというのが、必ずしも周知されていない点があると思うんですね。知的財産権法というのは、割と強行法規的なところも混在しているものですから、どこまでが契約で変えられるのかということが一般的には余り知られていないんじゃないかというふうに思います。ですので、その辺は誤解を生みやすい原因になっているかなというふうに考えます。
 それと、契約に関連してなんですけれども、今回の資料を拝見いたしますと、知的財産の活用というテーマの中に、契約によるルール化といいますか、適正な契約を推進するという項目が欠けているんじゃないかというふうに考えております。独禁法の利用やそのほかの方法ももちろん一つの方法ではあるんですけれども、まず、やはり適正な契約ルールを確立するということは必要だと思いますので、先ほどの未利用特許の関係、契約との関係も含めまして、ガイドライン等をつくっていただければいいんじゃないかなというふうに考えます。
 あとパテント・トロールの関係なんですが、田中委員がおっしゃいましたように、私も日本に関して、今すぐ、余り騒ぎ立てるのは好ましくないというふうに判断いたします。ちょっと特許権行使がなかなか進んでいないと。特許訴訟の件数が減っているという現状において、これ以上、日本でパテント・トロールに関して差止請求権の請求等、権利制限をするような話を企業さんに変な誤解を与えるということがあれば、ますます好ましくない状況が進んでいくと思いますので、パテント・トロールについては、やはりアメリカ等を主な対象としまして、適正に対応していただきたいというふうに考えます。
 あと2点ほどなんですけれども、評価の指標なんですが、評価については、10ページに価値評価実務の奨励ということで、日弁連も含めまして、価値評価の検討が進んでいるというような記載があるんですけれども、実際は、非常に難しくて、ほとんど進んで、日弁連に関しましては、ほとんど進んでいないという現状にあります。理由としましては、いろいろあるんですけれども、一番大きな理由は、知的財産権で言うもの、単体での評価が非常に難しいということだと思うんですね。やはり経営とか、取引とか、その知的財産を使った商売が幾らもうかるかという側面から翻って、知的財産権はじゃあ幾らなんだというような評価をしていかざるを得ないということが思いますので、全体の取引が把握できない状態の中で、知的財産権単体をいろいろな評価指標はありますけれども、それで評価することは現実と乖離しているという判断がなされる可能性は高いんですいね。ですので、評価を評価指標を考える際にも、どうせこの評価じゃ、本当の価値は得られないんじゃないかというふうな判断が働きますものですから、なかなか思い切った判断ができずに、評価もできないというような現状にあります。
 ですので、これは私見なんですが、本当に簡単なさらっとした評価の指標をまず確立して、その先には取引形態や商売等連携した形の評価をするという2段階の評価指標を考えたらどうかなというふうに思います。そうすると、これは簡単なものなんで、不正確であるということを認識した上で、それはそれで利用することはできるだろうし、そうじゃない、きちんとした評価ということであれば、もう本当に知的財産権を利用する段になって、幾らの価値があるかということを評価するしかないかなというふうに考えます。
 あと1点だけなんですけれども、実は日弁連と日本弁理士会さんで共同しまして、ことし中小企業向けにセミナーをやったんですね。東京と大阪で1回ずつセミナーを開始しまして、いろいろなテーマを考えながら、中小企業さんが今必要としている知的財産に関する専門家としての情報提供は何かという側面でシンポジウムをやったんですけれども、実は中小企業さんからの参加が非常に少なかったんですね。私どもとしては、一応、いろいろ考えて、中小企業さん向けに必要な情報の提供ということで考えたんですが、実は、必要とされていないといいますか、本当に中小企業さんが必要とされている情報をこちらは提供できていなかったんじゃないか。何が必要な情報なのかということを把握できていなかったんじゃないかという反省がございます。こちらとしては、全然わからないといいますか、本当に何が必要なのかというのが的確にはわからないという現状にありまして、情報を提供したいという気持ちは、非常に強く持っておるんですね。ですので、どこかで必要なものは何なのかというような情報交換といいますか、意見交換の仕組みみたいなのがありましたら、こちらもそれに合わせた形で情報提供をもちろん無料でやることを考えていますので、していきたいと思いますので、そのような機会がもし設定されていただければ、非常にありがたいというふうに思います。
○相澤会長 最後の点について、岡内委員、いかがでしょうか。
○岡内委員 そのとおりでありまして、実はこの中小企業の政策というのも大変よくできていると、これだけ気を使っているということを本当に中小企業の連中にみんな知らせたいくらいよくできていると思うんですが、残念ながら伝わっていない。それは、41ページにもあるんですけれども、知財政策担当者、中小企業の政策を理解しないままという本音はよろしいんですけれども、その伝達の方法を変えないで、結果としてだめだ、だめだ。だから、どうしたらいいだろうかというのを、もっと地方でも現地の知財に関心のある中小企業の担当者なり、あるいは経営者をちょっと集めまして、そういった人たちの中からどうしたら自分たちが興味を持つような政策にしてもらえるかというのを、もっと広く聞いてみてもいいんじゃないかと思うんです。私自身もわかりません。大田区で聞いても、どうしていいかわからないのでという声もありまして、だったら、直接興味のある人から要望を幅広く聞いたらいかがかなと思っているんですけれども。
○相澤会長 中山委員。
○中山委員 三尾委員がおっしゃった知財の評価の点ですけれども、これは企業から評価基準を確立してほしいという意見は非常に強いのだけれども、三尾委員おっしゃるとおり、非常に難しいわけですね。どんな優秀な発明でも、明日もっと優秀な発明が出るかもしれませんし、どんないい映画と思われたって、ヒットしない映画もありますし、非常に難しい。恐らく知的財産を評価しなければならない場面というのはいろいろあると思いますが、恐らく一番大きなのはファイナンスだろうと思います。私ファイナンスの専門家ではなく、正確には言えないんですけれども、恐らく単体でやることは不可能といいますか、リスクが大き過ぎるわけで、多分、これからは群れといいますか、多くの特許、あるいは多くの著作権をまとめて、ポートフォリオを組んで、リスク分散をしながらファイナンスを行うという、そういう方法が良いように思います。そういう方法を調査・研究するように、どこかで書いてもらえれば、より知財を用いたファイナンスが可能になってくるんじゃないかという気がいたします。
○相澤会長 渡部委員。
○渡部委員 今の知財を用いたファイナンスのところで、信託の話がありましたけれども、これもぜひもう少し研究するといいのではないかと思うのは、自己信託ができるようになっていますが、特許権に関しては特許を使っている事業者から離してしまうと価値が失われてしまうような性格のものですが、自己信託でやるとこの問題が解決して、ファイナンス等につながりやすいんではないかというようなことがあります。もし今の件で調査をしていただけるのであれば、そういうようなことを調査をして、問題があれば使いやすくするということで、中小企業事業者等の資金調達何かにつなげられるようにしていくというのはよろしいんじゃないかなというふうに思います。
 それから、先ほどから何回か出ているパテント・トロールという言葉の問題というか、実際、日本でパテント・トロールとは何かという問題なんですが、実際に差止請求権を行使したら、それはそこの時点でいろいろなことがわかるわけでしょうけれども、その前段階の交渉段階で、どうもパテント・トロール的だというふうに言われることが多分ふえているんではないかというふうに思いまして、この間、ある会社の方が、自分のやっていた事業をやめたと。やめた事業の関係する特許についてのライセンス交渉をしていたら、あんたのところはもう実施していないので、パテント・トロールみたいなものじゃないかみたいなことを言われたとか、これはパテント・トロール問題ではないです。ただし、交渉の中で何か好ましくない言動があるような問題があるのであれば、どういう言動がよくないのかということを調査をして、事業実施していない事業者は、そういう言動をしない─しないという宣言でもすればよいわけですよね、多分。というようなことをやったほうがよいのかもしれない。何でも不都合なライセンサーをみんなパテント・トロールだと、大学もパテント・トロールじゃないかと、ちょっとそういうのはよくないということです。
 それから、第3点目ですけれども、先ほどの73条の問題というのは、73条の問題というよりは、共有特許が本当に活用されているかという、そういう問題だと思うんですね、本質的には。共有特許は単独特許よりは使いにくいはずです。産学連携で言えば、大学と企業の共有特許というのが、日本の場合は70%から80%は共有になってしまっています。これは、アメリカにはない現象で、それが非常に活用されていればよろしいんですけれども、少なくともクオリティーなんかで見ると余り高くないと。本当にこれは活用がちゃんとされているかどうかということをまず調査をするということと、それからやはり交渉能力の低い大学では、先ほどのように任意規定であっても、やはりそこの周知がされていないというようこともあるのかもしれません。特に、今後は海外との産学連携も増えるでしょう。日米でデフォルトがひっくり返っていますので、海外と共同で何かやるような場合とか、そういうような場合にも影響するので、何らかやはりガイドラインなどで、交渉をやる考え方というのを整理されるとよろしいのではないかと思います。
 それから、全体的に、今回は政策のレビューと今後ということでありますので、少し期間が長い話なんですが、やはりこれ議論している間に、先ほど岡内委員がお話になられましたけれども、大分状況が変わっていって、やはり経済情勢が非常に悪くなっているという、そういうことをやはりどこかで織り込んでいかないといけないのではないかなという気がします。これがその1年、2年の問題かどうかという判断もあって、東京大学の前経済学部長は10年間はだめだということを言って、10年暗くつらい時代が続くだろうというふうなことも言っておられますが、やはりもし10年だとすると、中長期計画には明らかに影響するわけでありまして、中小企業の資金調達、あるいは雇用の創出、そういうものが優先順位がどうしても高くなるだろうと。中小企業に限りませんが。資金調達、雇用の創出、それから収益をどうやって確保するかという、そういうような現下の経済状況に対応した優先順位の組み替えみたいなものも必要なのかなという気がいたします。
 以上でございます。
○相澤会長 次の回から、横断的な問題を検討するということにスケジュールしておりますので、その中で、ただいまご指摘のありました重要な点を取り上げたいと思います。
 どうぞ、中村委員。
○中村委員 パテント・トロールの話は、かなりの委員の皆様から意見が出ましたので、もう重複は避けますけれども、制度面で注目すべきは日本ではなく、アメリカだという点は、全くその通りだと思います。特に、私ども日系メーカーが、ものづくりを伴わない米国の権利者に催告を受ける事態が多発する状況において、アメリカ自身がこうしたケースに対して自助努力で対応する事を期待するのではなく、多くのメーカーが被害を受けている日本自らが、アメリカに対して何らかの形で働きかけを行うことで、法制度改正や、ルール強化を促し、この問題が解決されるというようにもって行くべきであると思います。
 又、資料の4で、標準化戦略の事例を紹介いただきました。特に、標準化の中で、今日お示しいただいた中でも、モジュール化によって、ものづくりが非常に容易になった点や、かかるモジュールの外販拡大傾向の二点が示されております。これは、先月の問題ともかかわりますが、標準化と共に部品のモジュール化によって、別の権利侵害問題を誘発している場合があります。例えば、模倣品業者がこうしたモジュールを入手することで、極めて簡単に高品質の模倣品を作ることができたり、権利者達が肝心のプールライセンスの仕組みを構築しても、どこで製造しているかもわからないような工場がこういうモジュールを使って、簡単に製品をつくってしまうがために、ライセンス料も回収できないというような問題が出てきております。これは、セットも生産販売し、モジュールも外販しようとしているメーカーにとっては、みずから首を絞めているようなところがあるわけです。今後は、こうしたモジュールの外販をしていく上で、顧客に対する何らかの契約上の制限〜例えば規格特許に関して権利者とライセンス契約を締結し、対価を払う必要があること注意喚起したり、模倣品の製造目的にこうしたモジュールを使わないこと、違反すれば取引をやめる等〜をすることで、顧客に対して、知的財産権の侵害行為に走らないような牽制をし、かかる問題の発生を未然に回避する努力も必要なのではないか感じております。ちょっと本題とは多少ずれるかもしれませんけれども、標準化とこのモジュール化の進化ということに裏で含まれる問題として、1点挙げさせていただきました。
 以上でございます。
○相澤会長 妹尾委員。
○妹尾委員 4ページから始めてよろしいでしょうか。
 役員研修をやっている立場、現場の立場から見ると、これは大変重要なことだと思います。4ページの企業の知財管理の徹底と知財戦略の高度化の項目で、CIPO・知財担当役員の設置を奨励するということが書かれています。これは大変良いことだと思いますが、知財担当役員の意識強化とは何を意識強化すれば良いのかということがあります。知財の活用があるよねという話だけではなくて、やはり最近重要なのは、プロイノベーションのもとにおける知財管理の意味が変わってきたということです。そういうことをまず知財役員の方々に理解していただかないといけないはずですが、ここを見る限りは、まだ管理の意識をしっかりしてねという話にとどまっているんで、ちょっとそれだと時代とずれかねないリスクがあるなという懸念があります。
 つまり、一方で知財戦略の高度化があるだけではなくて、他方で事業戦略との連携化だとか、融合化ということをきちんと意識してもらうことが、本来CIPOに必要ということです。しかし、CIPOになった方は、どうも知財管理を徹底するという管理部長さんの上になるぐらいの感じが多い。ですので、ここのところは、高度化を推奨するだけではなくて、事業戦略との連携だとか、あるいは融合だとか、そういうところに目を向けてほしいと書いてはいかがかと思います。
 特に、後で人材育成のところで私のペーパーをご紹介させていただこうと思っていますが、プロイノベーション、オープン・イノベーションの流れの中で、オープン・イノベーションが知財の公開化ということだけで理解されている側面があるので、それをちょっと懸念しております。特許の公開化という意味と、それからイノベーションのリソースの多様化という意味と、それからイノベーションプロセスの分担化という意味、つまり三つの意味があるんですね。ところが、どうも日本ではオープン・イノベーションを特許の公開化だけの話に限定して、皆さん議論しているように見える。重要なのは、今中村委員がおっしゃったように、モジュール化だとかを通じたときに、イノベーションそのもののプロセスが非常に分担されながら進んでいくという意味でのオープン化です。これが一番怖いわけですから、そこを理解するような意識向上をしていただかないといけないのではないかなと強く思います。
 それから12ページです。私が不勉強なのでよくわからないためなのかもしれませんが、イノベーション創造機構ができる点についてです。本当にこれでイノベーション創造になるのか、ちょっとよくわかりません。こういう長期リスクマネーを供給するためには、かなりしっかり考えられた上でないと難しいだろうという感想を持ちました。私はこれをよく知らないので、読むだけでは少し危うい感じがあります。
 17ページ、標準化の話に入ります。標準化そのものについて、これ全体を読んでいると文句なく、確かにすごいし、ずっと進んでいるなと思います。が、全体のトーンは、標準化は良いことだ、標準化を進めればそれで良いのだというところで終わっている点がちょっと残念な感じですね。標準化が自己目的になっているような気がするのです。標準化をすれば、必ず産業競争力がつくんでしょうか。標準をとっても、事業で負けている例は山ほど出てきていますよね、先ほどのレポートでも。ということは、標準化活動を推進するのか、標準化を活用した事業戦略活動を推進するのか、どっちなんだということだと思います。ですから、標準化人材といっても、標準をつくるための標準形成人材を言っているのか、標準活用人材を言っているのか。ですので、もちろん、ここで書かれていること自体について僕は大賛成なんですが、標準化活動ということが、単なる標準形成化活動で終わらないようにしないと、産業競争力に全くつながらない標準をつくって、事業で負けるという、またお馴染みのパターンになるということを懸念します。
 経営のほうから見たとき、標準の意味は何かというと、1つは経営の制約条件です。標準の中で事業を動かす場合はそうです。もう一つは戦略ツールです。標準を活用して、どうやって事業で勝つかということをやるわけです。この点を考えると、競争力専門調査会である以上は、私は標準化活動が自己目的化しないように政策誘導をしていただければならないと思います。
 続いて、33ページのところです。中小・ベンチャーの話で、先ほどからご議論がたくさんあって、私も大賛成です。しかし、人材育成で中小企業の方々とご一緒しているとわかるのが、やはり「中小十把一からげ論」からもう脱しても良いのではないかという気がします。すなわち、中小企業は山ほどありますけれども、例えば研究開発型中小企業と生産主体の中小企業だったら、やはり重点施策は違うはずです。また、これが流通の中小企業だったら模倣品・海賊版対策みたいなものについての政策であるでしょう。また例えばグローバルに展開しようとしている中小企業さんと超ドメスティックな方とは全然違うはずです。つまり知財の意識向上の意味が全然違うのではないかと。ですので、中小企業についての啓発だとか、こういう施策のターゲットを、やはりちゃんとクラスターに分けて、それぞれに必要なことをやるようにするべきだと思います。
 その点が、先ほど三尾委員も言われていたような、どこに対して何をやったら良いかということがずれてしまうリスクと関連する。我々の人材育成でも必ずあります。その問題にきめ細かな政策をうつ段階に来たのではないでしょうか。例えば、岡内委員がおっしゃったファイナンスが必要だったら、そっち側に特化するなど、きめ細かさが必要だと思います。
 それから、当然関心ある方への適切なる啓発と関心のない方に関心を持ってもらう啓発とは全然違います。そこら辺への配慮が必要だということがあります。
 もう一点、前のサイクル調査会のときにも申し上げたとおり、僕は中小企業やベンチャーと大企業との間に挟まれている中堅企業、ここが手薄だと見ています。大企業はかなりがっちりやっている。中小企業は今のような施策がある。じゃあ、中堅企業はどうするのというと、実は中堅企業が一番政策的支援を必要としているのです。ここが意外と手薄ということが、我々研修やっているとわかるんですね。そこのところへ目も向けていただきたい。中小より大きく、大企業に至らない中堅企業をどうするか。ここのところを見ていただければと思います。
○相澤会長 そのほか、いかがでございましょうか。
 どうぞ。
○田中委員 32ページの標準の最後のところになります。国際標準に関する技術情報を審査資料として容易に利用できる環境の整備とあります。この技術資料とは、標準化活動の際のいわゆる技術寄書のようなものを指しているのだと思います。委員会において参加企業が、標準規格として提案する提案文書が、技術寄書と呼ばれておりますが、一般的に非公開なのです。それを公開にして、審査のときの先行技術の資料として扱うことの目的がよくわからないのです。
 欧州の特許庁からITUに対して、そういう技術寄書のようなものも先行技術として扱ったらどうかという提案等が確かになされているようですけれども、ここの32ページの最後に書かれているのは、そのことを意味しているのでしょうか。つまり、現在、技術寄書は、非公開資料として扱って、策定の議論がされているわけですけれども、それを非公開ではなく公開しなさいと言っているのかよくわからないのです。ですから、問題点を明確にして議論したほうがいいのではないかと思います。
○相澤会長 ありがとうございました。
 佐藤委員。
○佐藤委員 1点だけ、産学連携の中で、大学発の発明が市場に結びつけるというのが大きな課題になっていて、今まで、いろいろな施策を第1期、2期やってきたと。一部の大学ではうまくいっているところもあるけれども、圧倒的多数のところは僕はうまくいっていないと思っています。実際にかかわってみると、大学の中に知財本部があろうと、TLOがあろうと、実際にそれを動かしていく人材が極めて少ない。大学のシーズが産業界とどう結びついて、どこにどういうチャンネルがあって、どこにどうアプローチすれば、どういうふうにつながるかというような情報を持っている人もいなし、またはそれをコーディネートまでできる人もいない。そういうところで、意外と大学の中のままでとどまってしまって、実際に動いていないというのが、私はここ1年ぐらいかかわってみて、すごく感じているところです。そういう意味では、やはりどの大学にも押しなべて、そういうファンクションをつけるというのは、まず無理だろうというふうに最近思っています。そういう意味では、大学が必要に応じて、アウトソーシングできるようなファンクションをそこにつくって、各大学が必要に応じて、そこにかかわっていくというつくりも一ついいんじゃないかというふうに思っています。というのは、なぜかというと、そういう目利きを含めて、事業化までやっていくような人がそんなにごろごろこの日本にいるわけではないと。そうだったら、そういう人たちを集約した機構をつくって、そこを大学が必要に応じて利用していくというようなやり方のほうが、もっと現実的じゃないかというふうに最近は思っています。そういうようなアプローチをぜひ今後検討したらどうかなということを提案しておきたいと思います。
 以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、それぞれの方からご発言をいただきましたが、ここで、2つ目のくくりで、人材の育成と国民意識の向上についてという部分に移りたいと思います。
 残り時間はそれほどございませんが、どうぞいろいろな角度からご発言いただきたいと思います。
 田中委員。
○田中委員 64ページ乃至は63ページに関連することです。日本で模倣品等の購入容認率が52.4%もあるというのは、大変大きな問題だと思います。私も中国等に官民合同ハイレベルミッションで訪れまして、中国政府に対して、模倣品はけしからん、ちゃんと手を打ってくれ、対策してくれということを言っているわけです。実は模倣品は買う人がいるからはびこるのです。また、経済格差のあるところでも、はびこるわけです。ですから、日本も52%の人が容認しているということは、大変な問題でして、大きな顔をして中国政府にものを申すということははばかれるような状況になるのではないかと思います。妹尾先生に言わせれば、これは知財民度が低いという表現をされております。テレビコマーシャルでも、最近模倣品等を買わないよう宣伝しているようですけれども、次の施策でもぜひ引き続いて、きちんと国民に認知させていくことが大事だろうと思います。特に、その部分を強調してきちんとやるべきだろうと思いますので、よろしくお願いいたします。
○相澤会長 それでは、そのほかいかがでしょうか。
 妹尾委員。
○妹尾委員 まさに、知財民度を高めなければいけないというところです。64ページに子供たちのことをやろうと書いてあるところの評価指標の中に少年少女発明クラブの数みたいなのがあります。これは発明協会さんのことを中心に言われていると思いますが、それ以外の団体でも、例えば弁理士会にしても、弁護士会にしても、あるいは知財協にしても、いろいろと子供たちのためのことをやっていらっしゃるので、こういうふうに限定しなくても良いのでは、という気がします。評価指標は、いろいろな団体が頑張ってやっていることをトータルで評価して差し上げてはと思います。
 ただし、今のは「模倣品がいけないよ」というためのクラブではなくて、むしろ「創意工夫の奨励をする」というクラブであるべきです。さらに、創意工夫の奨励というのは、私は今までのように発明だけに限ったものではなくしてはと思います。すなわち、何かものづくり的な発明と限定したクラブではなくて、コンテンツ系もあるし、それこそビジネスモデルを考える子供たちもいるしといった、地域、地域の実情に合わせたものができると良いでしょう。そういう意味ではものづくり教室や創意工夫クラブなど、いろいろなタイプのものが、3,300から約1,800になった全国市町村に全部できると良いと思っています。1つの自治体に1つずつそういうような試みがあっても良いし、それは何も発明協会さんだけではなくて、いろいろな団体が協力して、いろいろな地域に合った実情を踏まえたものがあれば良いと思います。
 今度は、実は資料5としてメモを出させていただいた点です。人材育成というとき、創出人材、保護・権利化人材、活用人財など、一層、二層人材と呼ばれている人々、それから第三層の国民全般を含めています。が、重点は、いわゆる一層、二層を総合的に検討しないといけない時期ではないかと考えています。というのが、前回の終わりで、私が発言させていただいた「技術に勝って・事業に負ける」というパターンがどこまで続くのかと大変危機感を持っているからです。技術で勝つために一所懸命、総合科学技術会議を初めとして皆さんが努力をされている。しかし、たくさんの予算によってできてきた成果が事業で全部で負け、その結果海外に行ってしまう。これだと底なしのバケツみたいな形になりかねないという懸念があります。
 知財権の取得を早く・広く・強く行う啓発、それから知財のマネジメントをちゃんとやるという啓発、それから国際標準化への啓発というのはあるんですが、それらはすべて競争力を強化するためにあるわけなので、そこへつながるように焦点に合わせなくてはと思います。それが、三位一体の真の中身ではないかと最近よく感じられてきました。この戦略本部ができたときから三位一体戦略というふうに言っていますが、じゃあ、その中身は何ですかと聞くと、皆さんう0んとおっしゃる。我々人材育成をやっている者として、その中を具体化しなくちゃいけないと思っていたところ、最近、大体ですが、わかってきました。開発戦略とは製品/サービス特性のアーキテクチャに沿った急所技術の開発を言う、事業戦略とは市場の拡大と利益の確保を同時達成するビジネスモデルの設定を言う、知財戦略はプロプラ(独自技術)の秘匿と標準化・オープンを使い分ける知財マネジメントの実践。これが三位一体的に本当に組み合わさったものが必要だよということなのです。そうすると、この三位一体戦略を踏まえて、それができるような人を育成しなくちゃいけないということになるわけです。そういった人材を育成するためには、やはりここの部分の調査研究をきちんとして、その成果をもとに教育プログラムを開発して、それによって啓発を行い、人材を育成するという段階に向かいたいなと思うわけです。
 人材育成とは、縦割りではなくて、総合的なものです。前のサイクル調査会から私はビジネスプロデューサーということを盛んに申し上げて、最近は総合プロデューサーとかそういう言い方で受けとめていただけるようになりました。けれども、それをお題目ではなくて、本格的に育成する段階に来たので、ぜひそういう点を政策指針としていただけたらと思います。
 ということで、この私の提出したメモ、ぜひお読みいただければと思います。よろしくお願いします。
○相澤会長 そのほかのご意見。
 どうぞ、岡内委員。
○岡内委員 ちょっと本筋か外れてしまうんですけれども、どうしても言いたくて。
 64ページの人材育成のことなんですが、すべてに知財に関する教育、基本的には知財というのは自分の権利を主張する保護ではないか。それよりも、明日の日本を背負っていく子供たちが本当に独創的な考えを持つためには、もっと違う、理科教育なり、実験なり、そういう体験をふやす授業をしていかないと、できたものを保護するだけをしていても余り意味がないんじゃないか。
 ですから、ちょっとここから外れてしまうんですけれども、もうちょっと理科実験を多くする。ビデオ授業って私は大嫌いなんです。知っているような気になる。私どもの品物を出しても、ああ、知っている。感激がないんです、何か新しいものに接したときに。本当に知っているのかというと、当然見ただけ、20分のテレビを見ただけでは終わらないわけで、こういうのは、何とか変えていかないと、明日の科学立国日本というのはないんじゃないかなと。ますます理科教育が減っていく、予算が削られていく、先生がいない。そういう状態を何とか変えていきたいな。
 ちょっと本題とは違うんですけれども、一言だけ言わせていただきました。
○相澤会長 ただいまのご指摘は、総合科学技術会議の最も重要視している施策でございまして、学校教育だけではなく、社会全般に係わる非常に範囲の広いところであります。学校に所属している生徒、学生、その他の人たち以外に、社会人一般に対する理科教育、こういうようなことが、すべて重要になってまいります。予算絡みもありますので、余り抜本的にというところはなかなか難しいところではありますけれども、鋭意、努力しているという状況でございます。
 今、岡内委員のご指摘は、大変重要なことがございまして、日本の国力を強化するために、人材の問題がどの分野でも出てまいります。ここで注意しなければいけないことは、特定分野の人材が必要だということが余り強調されると、例えば、知財に係わる人材が重要だということを追求してまいりますと、それぞれの分野に壁ができているような状況になりがちであります。しかし、国際状況から考えますと、そういう狭いプロだけでは、この状況を切り抜けていかれないと、明日を開いていかれないと思います。ですから、人材の問題はそういう視点を持ちながら、かつ特定の分野におけるスキルを身につけていく、こういう視点が重要かと思います。
 どうぞ。
○妹尾委員 すみません教育系の学会の会長として、一言。今、岡内委員が言われたのは、教育学あるいは学習学からみて、2つの非常に重要な点も含んでいらっしゃる。
 1つは、教育の目的というのは「みんなと同じことが言えるか」ということと「他人と違うことが言えるか」の両輪がなければならない。ところが、日本の教育は、みんなと同じことが言えるかという方を余りにも強調し過ぎた。まさにこの知財的なオリジナリティーという他人と違うことを言う能力の開発に資する教育がなされていなかった。それをご指摘いただいた。2点目は、知識教育ではなくて、体験学習だとおっしゃった。これは日本が最も今悲惨な状況です。すなわち他人と違うことを言う独創性、創意工夫の教育、それからもう一つは体験学習、この2つは重要な指摘だと解説をさせていただきました。
○相澤会長 ありがとうございました。
 どうぞ、前田委員。
○前田委員 大学の知的財産本部の中で、インターンシップに来ている学生さんというのは、大学院、何かの専門をバイオ持っていたり、何かの専門で、なおかつ知的財産のことも知りたくて、インターンシップに来ているんですね。過去に、うちでインターンシップをやられて、そのまま就職された方が2人いますし、現在、インターンシップの大学院生が2人います。1年単位、1年以上ぐらいでずっといるんですけれども、彼らは、先生の言うことの理不尽さ、新しさ、いろいろなことを学びますし、特許相談に行きます。また、企業の方が、企業の事情というのも、もちろんおっしゃいますので、そちらも聞きます。社会に出る前に、自分の専門以外でそういう話を聞くことってなかなかないんですね。あのインターンシップは、すごく役に立って、企業に行ってから恥かかないで済みますとか、あとうち、いっぱいシンポジウムをやりますので、お客さん対応、講師の対応、いろいろなところでのトラブルを全部抱えていますので、社会生活としての勉強もしていくみたいなんで、やはり大学の知財本部、OJTにすごくいいんじゃないかなというふうに思っていて、随分上手に活用をいろいろなところで、頑張っている知財本部のところで、たくさんインターンシップ引き受けて、人材養成の一環にするのもいいんじゃないのかなというふうに思っています。
○相澤会長 田中委員、先ほどお手を挙げられた。
○田中委員 まず、知的財産というものをどのようにとらえるかということです。この場で議論しているのは、知的財産権だけの話ではなくて、知的財産全般の話だと私はとらえております。ですから、この前も言いましたけれども、日本が生き残っていくために、あるいは企業が生き残っていくために、ほとんどの人が知の創造に参画しているわけであって、その中から必要なものを権利化したものが知的財産権だろうと思います。その知的財産全般にわたって議論することが知的財産立国がやるべきことと私はとらえております。
 それから、今教育のことで議論されているわけですけれども、人材に関して、日本は非常に特殊な文化国家であるということをまず頭に入れないといけないと思います。つまり、人の流動性がないということなのです。アメリカの場合には、企業と大学、あるいは官庁と間で、人の流動性が非常に高いと思います。だから産学連携等々を行うにしても、あるいは生まれた知的財産を例えばコーディネートするにしても、お互いの立場をよくわかっている人が比較的多いのです。そうはいっても、そのようにきちんとコーディネートしていくことは非常に難しい仕事だとは思います。ところが、日本の場合には、大学に入ったら大学だけ、官僚になったら官僚でずっと一生過ごす、企業に入ったら、ずっと企業に勤めるという状況です。お互いの立場を分かる人がほとんどいないのです。もちろん、中にはすぐれた人はいるとは思います。本当の意味でのコーディネートできる人がいないですねと佐藤委員がおっしゃったのですが、まさにそのとおりだと思います。よほどきちんと探さない限り、そのような人材はいないだろうと思います。だから、そのような人材を育成するためにどうすべきかという議論をするべきであると思います。そのような人材を探すという議論をしても、どうせいないのだから、探してもだめだと思います。
 それでは、企業は知的財産活動を活発にやっていますから、大学に人材を派遣してくれという話があります。しかし、大学の知的財産活動は、企業の知的財産活動と全く違うのです。ですから、前田委員はその苦労を経験されていると思うのですが、そのようなことを理解しながら、みんなで助け合って、本当にいい仕事をする、あるいはそのような人材を育てるためにどうすべきかということをみんなで議論するべきだと思います。
 もう一つは、このような話や議論をするときに、どうしても知識を与えるための機会をどんどん増やすという話に終始してしまいます。私どもの会社の知財関係部門でも今そのようなことはやっていますが、人を鍛えるということはまだ余りやっていないのです。知識をどんどん与える場はたくさん設定するので、みなさん勝手に勉強しなさい、という感じです。勉強した結果、その人の身についているかどうか、だれもチェックしておりません。場合によっては、ある人は勉強で適当に時間を使っているだけということになります。大学教育でもかなりそういう部分があると思うのです。本当に鍛えるということをやらないで、あの人はできるとか、できないとか言っていても、仕方がないだろうと思います。もちろん、小学校、中学校、高校、大学を含めた全体の教育にも絡むことだとは思います。しかしやはり、もう少し鍛えるということをこれからきちんとやっていかないと、日本を科学技術創造立国と呼ぶのが難しくなっていくという感じがいたします。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
○相澤会長 中山委員。
○中山委員 先ほど岡内委員おっしゃったことは、知的財産本部の本筋と私は離れていないと思っています。というのは、この戦略本部の前身である戦略会議の冒頭からそれは議論になっていました。知財戦略会議だから、知財制度について議論すればいいという議論と、いや、知財制度それ自体では意味がなく、創造・創作があって、初めて意味を持つのだから、創造・創作まで含めて議論すべきだという意見と両方ありまして、後者のほうが圧倒的な多数を占めて、現在に至っているわけですから、まさに岡内委員のおっしゃった創造・創作があって知財があると、この2つの関連のもとに、この戦略本部はやっていくべきだと思います。
○相澤会長 佐藤委員。
○佐藤委員 弁理士会、小学校の出前授業をやっているんですけれども、やってみて驚いたのは、非常に小学生たちが、いろいろなアイデアを出せる力があるということを改めて痛感しています。紙皿とそれからビー玉を使ってテレビを乗せる回転台をつくるというのが課題なんですけれども、出てきた結果がいろいろなバリエーションの構造が出てきたんですよ。これは、やはり持っていき方によって、僕は小学生のレベルでも新しい創意工夫の力を引き出せるチャンスはたくさんあると。ただ、それを今まで余りにもやってこなさ過ぎたんじゃないかということをその現場を見てつくづく思いました。そういう意味では、先ほど来、ここで今議論されている創造力を強化するという、またそういう人材を育てるという意味では、もっと教育の現場でそういう具体的な取り組みがもっとなされないといけないんじゃないかと思います。これは小学校の校長先生、さらにそこにいた小学校の先生ともお話ししたんですけれども、なかなかこういうことをアイデアとして、こういう授業をやることをなかなか気がついていなかったという話なんですね。だから、そういう意味では、非常に今対極的なお話なのに、現場の話をしていますけれども、そういうところの地道な具体的な場をつくるということをもっと真剣に取り組まないと、創造力ある人材を育てようと言っても、育たないんじゃないかということを一言だけ申し上げたかったわけです。
○相澤会長 それでは、妹尾委員、少し短めに。しかも、まとめの言葉として。妹尾委員のご発言を最後とさせていただきます。
○妹尾委員 3点、さっと申し上げます。
 今田中委員がおっしゃられたことに全く私は同感です。やはり知識伝授がイコール教育だと思われているという大変な誤解があるのです。この会でも何回も申し上げましたけれども、知識教育じゃなくて、一種の鍛える鍛錬が必要なんですね。その意味では「気付かせ、学ばせ、考えさせる」ということができる人材育成人材を育成しなくてはならないのです。繰り返し申し上げていますが、特許法1条から順番に教えることを一生懸命やる方はいるんですが、それを使ってどうやって事業戦略を有効にやるか、それを考えさせることができる人材がいない。ぜひ教員養成ということに注力をいただきたいなというのが1点目です。
 2点目、この討議用の資料の中に評価指標があります。今回は、評価指標が定量的に余り偏らないようにと私が以前申し上げたことを反映していただいたようですが、微妙な書き方ですね。何々の状況という書き方がされていますが、この「状況」とは定量、定性を含むことに恐らくなると思います。それの具体化はまた慎重にご議論いただければと思います。
 3点目、節々、何箇所かに「課題解決」という言葉が出てきます。これは最近、霞ヶ関での流行語のようですが、これは間違った日本語です。問題は解決できますが、課題は遂行ないしは達成するというのが本来であります。課題解決では英語に訳せません、つまり課題、タスクないしはアサインメントを解決、ソルブ、溶かしてしまう、ということは全く論理的にありえません。ということで、ぜひ、問題を解決する、ないしは課題を遂行ないしは達成する、タスクアチーブメントで統一をしていただけたらありがたいな、ということで終えたいと思います。よろしくお願いします。
○相澤会長 ありがとうございました。
 まとめていただきましたので、私からはさらに申し上げませんが、今回の議論で、人材の育成については、十分とは申せませんので、次回、この議論を続けさせていただきます。
 さらに次回は、横断的な課題を抽出し、それを議論していただくということにさせていただきたいと思います。
 それでは、そのスケジュール等については事務局から。
○内山事務局次長 次回会合でございますけれども、年が明けまして1月14日水曜日午後2時から4時までということで、場所は当会議室でございます。具体的な議論の項目でございますけれども、先ほど会長のほうからご指示がございましたように、今回の人材の部分、多少まだ残っている部分もあるかもしれませんので、それを含めまして、分野横断的な事項につきまして、総論的なご議論をお願いしたいと思っております。
 また、次回の会合におきましては、各委員から具体的な論点・要望を出していただいて、それを踏まえた上で、できればご議論していただければというふうに考えておりまして、したがいまして、創造、保護、活用、人材等の分野にとらわれない分野横断的な事項、あるいは各論の中でも、さらに議論を要する事項がもしございましたら、各委員におかれましては、できれば年末大変お忙しいところとは思いますけれども、12月25日、来週木曜の正午までに大変恐縮でございますけれども、私どもの事務局にお寄せいただければ、年末年始、私ども、一生懸命、論点を整理しましたペーパーを用意したいと考えております。別途、また事務的にご依頼を申し上げたいと存じます。
 よろしくお願いをいたします。
○相澤会長 課題を年越しされませんように、25日までによろしくお願い申し上げます。
 それでは、よいお年をお迎え下さいますように。本日の会合をこれで終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。