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知的財産による競争力強化専門調査会
環境分野PT会合(第2回)
議事要旨

日 時 2007年10月1日(月)14:00〜16:00
場 所 知的財産戦略推進事務局会議室
出席者 関田委員(主査)、江崎委員、岡内委員、長岡委員
(事務局)松村次長、山本参事官、平岩参事官

環境分野における知的財産に係る課題及び知的財産戦略の在り方について議論。各委員の意見の概要は以下の通り。

【全般的な論点】
環境技術は基本的に独占をしてしまうと社会的に問題になる領域であり、普及させて広まってこそ地球環境に大きな意味で役立つ。環境技術を世界中にいかに普及させるか、あるいは普及させる枠組みを前提としたビジネスで日本が有利になるようなスキームをどう考えていくべきかが前提にわかりやすくあるとよい。
環境技術は補完財である。企業は他の商品を作る投資をたくさんやっていることから、自社生産とライセンス収入の合計を最大化するためにはどうしたらよいかを考えると、ライセンスをした方がいいという解が出る可能性が高い。
環境というのは好むと好まざるとにかかわらず広がらなければ意味がない。ただし、慈善事業や無償というものではない。また、日本の技術を普及させるためには、その技術を外国が受け入れてくれる仕組みや整備が必要であり、海外での知財権の取得がもっと容易にもしくは低コストになることが必要である。
環境技術だからといって特許を安くしても良いという訳ではなく、リーズナブルであるべきである。ただし、リーズナブルというのは相手が環境の認識をどれだけ持っているかによって変わってしまう。
環境としての分け方は、特許として縛っていくものといかないもの、グローバルな視点でみていくものとローカルな視点でみていくもの、有害物質を排出しない技術と排出されたものを処理する技術などいろいろある。
ブレークスルーが必要な領域では開発資金がかなり膨大になる。そういう領域でグローバルな研究開発競争をしていくことを考えたときに、どういう枠組みが必要であるかを考えるべきである。また、死の谷を超え、環境技術を普及させていくには企業やユーザにどういうインセンティブを与えるかを考えるべきである。
中小企業の技術や資本でできる領域もある。水質浄化技術など日本にある技術をいろいろな国に提供していきたい。
海外では環境基準自体が守られていないケースが非常に多くて、簡単にはビジネスにならないのが実態であると思う。このような実態を踏まえて、環境基準が保護されている分野とか国ではビジネスにつながりやすい、と前提をつけるべきである。
環境分野では大きなブレークスルーが要求されており、従来の延長だけでは必ずしもうまくいかない。従来の延長上の知財の創造だけではだめで、ブレークスルーが必要であることを創造に関して指摘した方がいい。
製造業の海外流出については、国の研究機関や大学が日本にしか特許を出さないことによりという前提が必要である。
製造業の海外流出は製造企業が海外へ行ってしまうというイメージがあるので、製造技術の海外流出などに修正した方がよい。
【我が国の環境技術の一層の向上】
新たな研究のソリューションは企業で生まれるよりも大学なり国の研究所なりから生まれる。従って、環境技術においても、先端的な研究開発、産学連携が非常に重要であり、産学連携を促進する枠組みが必要である。
海外の大学ではリエゾンオフィスが本来の機能を果たしていて、自分の大学にある技術の売り込みがうまい。
燃料電池などの新しい技術では、ライセンス政策だけでなく、安全性の評価とか知財保護とかのインフラが必要である。新技術を早く導入する制度が重要である。
【国際展開の強化】
環境マーケットの拡大に関する対応の方向では、環境技術を一律に社会的貢献として無償にするのではなく、例えばインフラ的な技術には適用するが商品に関連する技術は適用外にする等を検討すべきである。
国際展開の環境マーケットについては先端的な技術とそうでない技術とに分けて整理してみるとわかりやすくなる。
国際的枠組みづくりへの積極的関与では、グローバルスタンダードや国際標準を先取りしていくことが非常に有利となり、そういう動きが必要である。
日本の優れた技術を紹介する形ができるのがよい。工場や家庭における汚水処理にはなかなか金をかけようとしないが、日本の技術でこんなにきれいになったということを手本として見せるのがよい。地元の人に対して目で見える環境対策をしてほしい。また、環境技術の戦略的展開には人材の育成も含めてほしい。
海外に出願していない理由として、出願コストだけではなく、ローカルな技術の分野については環境基準自体がエンフォースされていない面も重要である。技術レベル、出願コストの節約だけが理由ではなく、そもそも技術への需要が十分でないことも理由である。
特許出願は踏み切らないのではなく踏み切れない。特許が取れるか取れないか、現実に役立つのか役立たないのか、やってみないと分からない。
特許の取得は是非必要である。ただし、環境技術を世界中に普及させるという前提に立つと、国内だけの特許は意味を持たず、世界で特許を取得していく必要がある。国の研究機関や大学は日本にしか特許を出していない場合が多く、外国にあまり出していない。日本の企業にだけ特許の制約が生じ、国際競争力を阻害する恐れがある。
中小企業の国際展開の促進については、基本的な考え方だけではなく、費用の補助や権利化に伴う情報提供というようなものを具体的に挙げてほしい。
同じような特許があるか、市場性があるか、先願があるかは調べるだけでも厄介である。特許庁の電子図書館では概要は分かるが、海外ということになると原文を見ることができない。それに関して人と知識の援助ができると助かる。この点を例えばという形で入れてほしい。
中小企業なりのプラスアルファの施策として、環境の海外出願に絞ってでもその敷居を低くするというのがチームの提言である。