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知的財産による競争力強化専門調査会
ナノテクノロジー・材料分野プロジェクトチーム会合(第2回)
議事要旨

日 時 2007年10月3日(水)10:00〜12:00
場 所 知的財産戦略推進事務局会議室
出席者 渡部委員(主査)、河内委員、宍戸委員、中冨委員、横山委員
(事務局)松村次長、山本参事官、平岩参事官

ナノテクノロジー・材料分野プロジェクトチームにおける調査検討報告書について議論。委員から主な意見の概要は以下のとおり。

【全体】
2回のPT会合という限られた時間で報告書をまとめなければならないので、ナノテクは産学連携を中心に議論する。また、ナノバイオ分野のDDS(ドラッグデリバリーシステム)についてはライフサイエンス分野プロジェクトチームでの議論に含まれている。
【基礎研究の重要性】
True Nanoや萌芽・革新材料などに関する研究開発をサポートし、その研究開発の成果を知財的にどうサポートしていくかが重要。
最近は産業の方に視点が傾き、出口指向となっているが、一方では基礎研究が非常に重要だということが再認識されてきた。
大学において質の高い研究をしているかどうかが重要で、その成果が知財。質の高い研究テーマであるか、それが萌芽的や基礎的であることが非常に重要であり、長い目で見たときにその成果が日本の競争力を支える源泉である。
【本分野の知財上の特性】
ナノテクノロジー・材料分野の特性として実用化段階で基本特許が満了しうることがあるものの、満了するかどうかは結果論であって、最初は権利として保護することが必要。
特許取得のコストや効果を考え、最終的に投資を回収するという前提で、どの時点で知財化するのが一番適切なのかといった点や全くの基礎研究の段階のものをすべて特許化するのが得策なのかといった点について検討が必要。
カーボンナノチューブのように、今、ようやく大規模な応用が花開こうとしつつある段階であるが特許期間満了ぎりぎりに近づいているような場合を考えると、開発された直後の材料は用途もはっきりしないため、効果的な特許を書くことが難しい。そのため、ある程度用途も加味した特許を丹念に戦略的に押さえていくということも戦略論としてはあり得るのではないか。
何に使われるかわからないというような萌芽的な技術に対してどう知財化していくかというのは非常に難しい。
【大学における知財戦略】
大学の場合、ものづくりをしないため、知財をノウハウとして保持することが難しい。特許化を考えるが、基礎研究段階での確率が悪い状態で特許化するとうまくいかない。効率性の問題であり、いかに効率を上げるかという知財戦略がこの分野の特徴的な課題ではないか。
大学における特許の質の問題はあるが、質の向上のために研究と特許と成果をどのようにつなげるかについては余り議論されていない。そういう議論は非常に重要。
大学の研究成果について出口がまだ明確でないときに企業が単にその成果を抑え込むということだけで関わると大きな弊害になる。当該弊害を考慮して、大学と企業で当該成果の取り扱いに対する考え方を整理する必要がある。
素材産業というのは、電気分野や情報分野のように同じ技術を使うべくプールを設けるというのと異なり、1社で知財を独占しないと事業として成り立たない。しかし、余りにも研究初期の段階で企業が入り込み知財を独占すると、技術の展開性が制限される可能性がある。大学はこれらを踏まえた戦略を立て、どういう知財を早い段階に取ればいいかを考えることが大事。
日本の技術移転のライセンスは、技術移転契約、特許の許諾契約をした後に共同研究につながることが多い。共同研究以降の知財は発明開示時の発明と比べて質が高い。
今の大学の産学連携ポリシーなどはどこの大学も同じことが書いてあるが、もう少し各大学としての方向性を出すべき。「ナノテクを強化する」というように特定分野を強化するような大学があってもいい。
【大学の知財体制】
アメリカの大学では特許弁護士などの専門家を配置し、大学の成果を戦略的にどう扱うかということを議論する体制があると聞く。
運営費交付金というのは基幹的・安定的な収入であるが、このような安定的な資金で大学の知財に関する体制の整備をしていかないといけないのではないか。知財や産学連携に関する5年間の取組を踏まえ、今後は体制整備をいかにして安定的に行うかが重要。
大学で本来やるべき基礎研究の成果を質が高い知財として確保できているかについては疑問がある。出願することが目的で取ったような特許が数多くあるような印象を受ける。知財の専門家がある程度コンサルティングしながら、大学の知財の質を高めていかないと問題の解決は難しいのではないか。
産学官連携推進本部、知財本部、TLOと複数の組織があり、企業としては大学にコンタクトするのが大変。例えば、産学官連携推進本部を窓口とするなど、知財に関しては事務的にまとめるのが企業としては一番良い。
運営費交付金として当てられている国の資金をよりよい知財をつくり上げていくための組織を動かす資金として使うのは社会的に非常に価値あること。積極的に、質の高い知財を創造的につくる部署として、TLOあるいは知財本部というものを一体のものとして位置づけてファンディングもやっていく必要がある。
【大学知財本部・TLO】
TLOが事務手続代行だけを行うのであれば必要ない。そのため、TLOは、ライセンス屋では余り意味がないということになる。TLOの自立が重要かどうかは大学や企業の全体の中で考えるべき。
研究者との関係も含めてマネジメントできる能力をTLOないし大学知財本部は持つべき。
実際に技術思想を生み出すという意味で、研究者がまだ成熟していない現状においては、国際レベルで通用する知財を得るための創造的な作業をする人材として、TLOの人たちがかかわっていく必要がある。TLOが実際の社会のニーズを踏まえた上で、それを技術思想として、研究にどう結びつけていくのかという創造作業が必要である。
TLOの強化は、質の高い知財を生み出すためのキーポイント。基本的に強調すべきは論文にするような研究成果イコール知財ではないということ。基本的な研究であればあるほど、そこに技術思想を付加するかという新しい創造のプロセスがあって初めて質の高い知財が生まれる。その技術思想を作っていく主体、場合によっては研究者のパートナーかもしれないが、いずれにしても、創造的に技術思想を作っていく主体として、TLOが役割を果たさなければいけない。
TLOにも何種類かあって、大学のために働く大学の代理人としてのTLOと、地域のためのTLOなど幾つかある。本当に大学のために働いているのであれば、大学が委託契約等でサポートすればよいし、地域のためにというのであれば地域が支えれば良い。
【産学の協力体制】
リスクに対して資金を投資していくという風土が、まだ日本にはできていないのではないか。ナノテクノロジーや材料は開発に長い時間を要するため開発リスクが高い。このような分野に対して永続的に事業を立ち上げるまでの投資を続けていくバックグラウンドができていないと感じる。
大学の特許の質が向上しない原因として、産業界とのインタラクションが全く無いままに、ともかく数だというのが弊害であるとすれば、ほとんど用途等がはっきりしないままに無理やり出願してしまっていることなどが考えられる。そうだとすれば、そのときに産業界の情報などとのインタラクションをどうやって起こさせるかということを大学側の体制でやるか、あるいは企業側がその中に入っていくかして行わないと知財の質が上がらない。
【国際標準】
日本の標準化活動に対する考え方は、標準化によって恩恵を受ける産業界が主導してやってくださいというのが基本。しかし、欧米等で標準化活動の中核になっているのはどちらかというと政府や大学の先生などである。産業界も、協力すべきであるが、産業界がまとまるためには行政などの協力も必要。
発言力、すなわち最終的に決定を左右する力を増すためには、国際的なシンパを増やしていかなければいけない。例えば欧州の国々や北米などある種の局があるとすれば、やはり日本はアジアの国々と国際連携を組み上げて、アジア諸国のボーティングを日本の主張に沿った方向に持っていけるような下地づくりが必要。
現実問題として、オーストラリアやアジアの国々など各国がナノテクノロジーに対して政策的に力を入れている。各国ともに本分野に関する国際標準化活動にも人を出しており、どこかで決めた標準を使うというよりは、積極的に関与しようという機運になっている。
政府や大学等研究機関が国際標準化活動に参画するに際しては、産業界の意思をどこかでまとめ明確に伝えるべき。
以上