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第3回 先端医療特許検討委員会 議事録

  1. 開 会 : 平成21年1月26日(月)17:00〜19:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 金澤委員長、片倉委員、北川委員、小泉委員、佐藤委員、白石委員、
    須田委員、中内委員、長岡委員、羽生田委員、林委員、本田委員、
    渡辺委員
    【参考人】 外口医政局長、南特許技監、田村審査基準室長、保倉参事官
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 先端医療分野における特許保護の現状と課題について
    (特許付与の対象とすべきか検討が必要な発明についてのプレゼンテーション、インターネットを通じた事例調査の結果報告等)
    (3) 自由討議
    (4) 閉  会

○金澤委員長 実はおいでになるはずの方がもう既に皆さんお見えになっていらっしゃいますので、時間前でありますけれども始めさせていただきます。
 第3回の会議でございます。ご多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございました。
 今日は、永井委員がご欠席ということですが、白石委員は遅れておいでになるそうであります。また、前回同様に厚労省から外口医政局長がお見えになる予定なんですが、急きょご用が入ってしまわれて1時間ぐらい遅れるという連絡が入っております。
 また、特許庁から南特許技監、前回と同じですが田村審査基準室長にもお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
 今日は、プレゼンテーションをしていただく関係もございまして、内閣府から保倉参事官にもお見えいただいております。よろしくお願いいたします。
 それでは、配布資料につきまして、事務局からご説明いたします。
○内山事務局次長 議事次第の下の方に配布資料の一覧がございます。ご覧いただきまして、資料1と資料2でございますけれども、これは議題の(1)のプレゼンテーションにかかるものでございます。資料1が片倉委員のプレゼンテーション資料でございます。資料2が渡辺委員のプレゼンテーション資料でございます。
 それから、資料3から5でございますけれども、これは議題(2)の事例調査の結果報告にかかわるものでございます。資料3がインターネットを通じた事例調査の結果でございます。資料4が特許保護を求める医療方法に関する発明の具体例ということで、内閣府の方でおまとめいただいているものでございます。資料5の方でございますけれども、これは再生医療分野における米国特許事例調査ということで、特許庁の方でおまとめいただいたものでございます。資料6が発明の種類と特許審査基準上の留意点についてです。
 最後に、参考資料がございます。装置と細胞等の組み合わせに係る特許の具体例について、これは後ほど特許庁の方からご説明がある際の資料でございます。以上です。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 今、最後のあたりでご説明がありましたように、参考資料をまずご覧いただきたいんですが、議論に入る前にこの問題を済ませておきたいんですが、前回、ご質問がございまして、この参考資料のタイトルにあるような、装置と細胞等の組み合わせに係る特許の具体例を何かあったらというお話がございましたので、お調べいただきまして、田村審査基準室長からご説明いただきます。
○田村審査基準室長 前回、片倉委員の方から物理的刺激装置と細胞との組み合わせで、システムとして特許出願している事例があるかどうかというところのお尋ねがありまして、ご回答を保留させていただいておりましたので、それについてご説明させていただきたいと思います。
 まず、1つ目のマルに書いてございますように、特許請求の範囲に装置と細胞の組み合わせが記載された特許、特許出願ではなくて、特許になったものは発見できませんでした。しかしながら、こちらに書いてございますように、装置と薬剤の組み合わせが記載された特許権というものは発見されまして、こちらに特許番号が書いてございますが、4148141号の請求項4のところでございますが、有効成分を含んだ剤を皮膚表面から生体に浸透させるに当たって超音波の振動を用いて皮膚表面から生体に浸透させる超音波経皮浸透キットというものが特許になってございます。具体的にはこの有効成分を含んだ剤というものを人の表皮につけまして、そこに超音波振動を与えることによって経皮浸透しやすくなるというようなキットでございまして、こちらの方は、生化学手段である有効成分を含んだ剤と物理手段である超音波振動を発生する措置の組み合わせからなるキットというものが特許権になっている例ということでございます。
 あと前回、佐藤委員の方から、ご質問がございました点で、少しこれにも関連するんですが、こちらの11行目あたりを見ていただきますと、検知部について生体に超音波を照射して、剤を浸透させる部位の深度を検知し、というような形で、特許請求の範囲には生体というものが書いてございますが、このように物の発明の修飾語として生体が入ってくるような場合には、特許になり得るということです。
 しかしながら、前回ご説明させていただきました方法の発明の構成要件として生体がクレームに入ってくるようなものについては、やはり人体への作用があるということで、特許できないというのが現状であるというところかと思われます。
 あとこちらの場合は、表皮に剤を塗るということでございまして、生体内というところがはっきり出ておりませんで、もう1件下に、装置とインプラントの組み合わせからなるようなシステム、そういうものが特許になっている事例といたしまして、特許番号の4175899というのがございます。
 請求項1の方には、生体に埋め込む髄内装置、これは骨折したときに骨折した骨をつなぎ合わせる部分の装置でございまして、これは骨が切断されたものをつなぎ合わせるときに、つなぎ合わせた後に、実際に骨の位置調整、長さを少し調整するためにこの髄内装置が入れ子状になって生体内に埋め込まれているわけでございまして、この入れ子状の装置を少し調節して骨の長さを決めるというようなものでございます。請求項1には生体内の髄内装置が書かれてございまして、次のページの請求項37の方を見ていただきますと、髄内装置と磁力を印加するための手段、入れ子状の髄内装置の一方だけに、この磁力に反応するような磁性体が入ってございまして、外部から磁力を当てることによって、この入れ子状になった髄内装置の長さを調節するものです。
 通常は、この髄内装置がある程度短い状態で体内に埋め込まれておりまして、それを少しずつ延ばすことによって本来の骨の長さに調節することができるような、そういう治療システム、こちらも体内に埋め込まれている髄内装置と外部の物理手段との組み合わせのシステムという形で特許権が与えられた例でございます。
 細胞の関係はまだ新しい技術ということで、特許になったものは見つかりませんでしたが、この辺を見ていただければ細胞と装置との組み合わせのシステムというものも特許になり得るのではないかと特許庁の方では判断してございますので、ご報告させていただきます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 ご質問いただきました片倉さん、佐藤さん、よろしいでしょうか。
 それでは、議題に入りたいと思います。
 今日は、お二方にプレゼンテーションをとりあえずしていただくわけですが、いずれも企業の方であります。
 お一方は、片倉委員でございますけれども、特許付与の対象とすべきかどうかという検討が必要な発明についてのプレゼンテーションでございます。
 まずは片倉委員からお願いいたします。
○片倉委員 私は、資料1に沿って特に先端医療のうちの再生医療、医療機器、特許のあり方についてということでご報告したいと思います。
 前提は、大分前回もいろいろお話がございましたけれども、以前に医療方法の特許についての議論をしていただいたときと、スタンスは基本的には変わってないということで、1ページ目にこの議論の前提として3つの条項を書かせていただいております。
 結論は、下の方に書いてあるとおりでございまして、クレームの仕方というのはあると思うんですけれども、製品、あるいは製造方法、そういう方法で物事を特定化するようなことについて議論を深めていくことがいわゆる企業の権利化という意味では望ましいのではないか。その考え方に至った経緯でございますが、やはり医療というものが広く使われるという大前提として、お医者様の行う医療行為をやはり阻害するような考え方が入ると、それは産業にとってもあまり利益になることではございませんし、2つ目に書いてございますように、そのことによって特定の施設、特定の医師でなければできない治療となったときに、患者様の方に治療の機会、均等を与えない。これは避けたいということです。
 3つ目に新たな医療が出てきたとしても、その中で使われるいろいろな機器がございますが、それが従来既にものとして市販されているものを使ったとしても新たな医療技術はいくらでも出てまいります。そこに権利を阻害しているという議論が出てくることはそもそも避けるべきではないか。
 この3つを前提に議論していきたいということで考えてございます。そういうことを前提として、次のページ以降、数枚再生医療についてお話しさせていただきます。
 私は、どちらかというと再生医療が主体でございまして、その他の医療については、ある程度概念的なお話ということでご了解いただきたいと思います。
 このシートに書いてございますのが、実際、患者様自身の細胞を用いて、それを加工して患者さんに戻す、こういった一連の再生医療のスキームを書いてございます。
 具体的には、医療機関、下の部分です。一番初めの出所は一番初めの下の部分。医療機関の中で、お医者様が患者様からある組織を取り出していただく。これを企業側は受け取りまして加工していく。最終的にその加工した最終物を病院の方にお戻しして、それを患者様に戻していただく。
 こういった一連の流れが再生医療の、特に自己細胞を使ったものについての基本的な流れということです。これは一番初めに厚生労働省の梅垣さんの方からお話があった内容とかぶってございまして、これが基本形でございます。
 この中で、技術と治療する上で考えるべき事項が幾つかございまして、一番初めに患者様から組織をいただく。自己細胞であったとしても、自己細胞を細胞のあったところに戻す場合もあれば、全く違う場所に戻す場合もございます。こういったことの切り分けですね。
 非常に難しいのは、やはり患部から細胞を取ってもそこに戻せない、そういった場合は自己細胞であっても違ったところから細胞を取らざるを得ない。そういったところに新しい発見というか発明というか、なかなか表現は難しいんですが、新しい技術も出てきます。
 それが1つです。
 実際には、それからその細胞をいただいて、企業内でいろいろな加工をしていきます。そこの中では培養のプロセスですとか、どういうものを作り上げるか、最終的な製品イメージのものの問題とか、そういったものの製造方法、それと実際に今後出てくるいろいろ技術の中で、幹細胞からいろいろな細胞を誘導する。そういう誘導の技術もございます。
 そういったものについては、前回の審査基準の改定で、ある程度自家細胞を加工して、戻すことについてある部分は認めていただいてきているわけでございますけれども、やはり審査基準としてさらに明確にすべき内容もあるのではないかというようなものの考え方を今してございます。
 それをまた患者様にお戻しするときに、これはやはり生きた細胞を使うというところの1つの特徴でもあると思うんですが、やはり非常に有効に細胞をある形で患者様に戻す、その戻し方、これも前回、慶應の岡野先生がおっしゃっていたと思うんですけれども、神経再生の場合はあるタイミングでそれを戻さなきゃ全く意味がない。そこについて、やはりある権利化の話が出ていたと思いますが、そういう移植の方法、移植のタイミング、こういったものがやはりポイントになってくるかというふうに思ってございます。
 次に、3枚目のシートに特許上の取り扱いということで、幾つかの課題を少しずつこれからお話しさせていただきます。それとなるべく論点を分かりやすくするために、私なりに事前にちょっと調べて、特許として出ている内容とか、それを少し項目として記載させていただきながらちょっとお話ししたいと思ってございます。
 これは、先ほどお話ししましたように、患者さんに戻すときに、自己細胞を加工して戻すというときに、この下に書いてございます例は、これは目の疾患で角膜がやられてしまったと。片眼だけであれば、別の眼の方から細胞をとって疾病を受けている別の眼に戻すことはできます。残念ながら両眼同じような疾病を受けている場合は、細胞がございません。こういった場合、ここに書いてございますように、実際に行われている治療法の1つでございますが、角膜の上皮の再生に自家口腔粘膜を培養して使う。こういった技術はもう既に確立されてございます。
 このように自家細胞であったとしても、その細胞を違う部位に移植する。こういったものもできてございます。
 特許的に調べますと、ここにありますように特許の第3043727号の「粘膜上皮シート」、こういう特許がございますが、これはもともと意図していた内容は、多分皮膚の上皮、これの再生を意図していたようではございますけれども、クレーム上は用途を明確に書いてございません。
 ですから、角膜で使うことについて、基本的な特許に触れるかどうかという議論はございますが、今は、この培養口腔粘膜については、これも先日の岡野先生の報告にも幾つかございましたけれども、角膜、あるいは皮膚、それと消化管内膜、いろいろな部位に口腔粘膜の上皮の培養シートは効果があるというお話は聞いておりますが、これはまたいろいろお調べいただければと思いますけれども、再生の場合の用途特許というのはどの程度出ているのかよく分かってないところかと思っています。
 発見か発明かという議論ももちろんございますが、ある適用部位でそれを明確に使えるような技術を加えた発明については用途特許を認めるべきではないかということは考えるべきと思ってございます。
 2番目以降でございますが、審査基準の改定によりある程度自己細胞を戻していく、こういったことについては、大分クリアになってきて、権利としてお認めいただくという報告は出ておりますが、今の用途特許も含め、まだ不明瞭な点もあるということです。
 それと3つ目に企業の工夫の範囲ということがございます。これは2枚戻っていただいて、黄色のシートがございますが、さっきのこの破線で切り分けをしましたけれども、企業が一番加工できるところは、工夫するべきところはこの黄色の範囲でございます。ここに企業としては特許がある。なおかつ再生の場合いろいろ取り違えの問題とかございますので、1対1対応させるためのいろいろなデリバリー上の工夫も場合によっては特許上の扱いも出てくるとは思っております。
 基本的には、この上に向かっている矢印から下に向かっている矢印の間が企業のイメージする産業の範囲でございまして、患者様から採取し患者様に戻すというところには、これも初めにお話ししましたように、アイデアが出てくる部分ではございますけれども、ここに権利が認められた場合、その産業としての有意性というのはどこに出てくるかというのは、なかなか難しいところがあるかなというように考えているところでございます。
 これが3番目、4番目に書かせていただいた内容でございます。
 細胞の取り扱いについて、今後の議論ということで、例えばiPSの場合、今のベクターの話と入れている遺伝子のところの問題から腫瘍形成ということが1つの課題になってございますが、それをどうやって低下させるか、その結果できた細胞の特許性、これははっきりするべきではないかということ。
 それとさっきお話ししたような、作り上げた構造物、あるいは細胞のけん濁液でもよろしいとは思いますが、そのような用途を限定した例について、その用途特許はどういうふうにあるべきかということ。
 それともう1つ、これも岡野先生がおっしゃっていたように、ある目的のために細胞シートを作るという、非常に分かりやすく言いますと、通常細胞を培養していくと、シート上に広がって、コンフルエントになって成育が止まる。シートにすること自身は、特許性は多分ないんでしょう。
 ただ、それを積層化して、そこの工夫である構造機能の目的を明確化したような特徴が出せたもの、こういったものについて用途、あるいは製造特許についてはどのように考えていくのか。ここら辺はもうちょっと明確にしていくべきではないかというようなことで考えたことであります。
 まとめますと再生医療に関する特許の取り扱いについては、重ねて言いますと、産業につながる特許の考え方は、審査基準の改定である程度は解消してきています。残る課題は、移植のタイミングと、これは言い方を変えますと、いわゆる処方にかかわる特許という考え方になると思います。
 ただ、ここについては、産業上はどういうふうに考えるかは、これは私個人の考え方かもしれませんけれども、あまり産業上はインパクトはないのではないかと。
 2つ目は、生体由来材料、関連発明の審査基準をより明確化していただきたい。
 こういったところでございます。
 それともう1つ、前回は、DDSとその診断機器、外部刺激を与えるような機器の話も少しさせていただきました。これもちょっと調べまして、先ほどご説明ございましたけれども、細胞と外部刺激ということでご説明ございましたけれども、もうちょっとシステム特許として広く考えたときに、いわゆるDDS材料と超音波の組み合わせ、この事例を調べたところ、ここに書いたような特許事例は、一応ございました。これは作動方法、システム特許というよりも作動方法特許してクレームされています。
 この事例というのは、作動方法特許としてしか成り立たなかったのか、システム特許として提案する手立てを考えられなかったのか、そこら辺は分かりませんけれども、方法論は権利化する方法が幾つかあれば、企業としてそれをどうやって解消するかの方法、選択肢になると思います。
 ですけれども、こういった事例に基づいて、どういう方法をとればそれが権利化できるかという分かりやすいガイドラインなり、考え方を出していただければ、こういうシステム特許なり何なりということは、より積極的に行われるようになるのではないかと考えてございます。
 それと作動原理に関する特許、ここは一番医療機器の中で、医療行為特許とのかかわりの中で論点になっていたところだと思いますが、医療機器の作動方法は審査基準の中で人間を診断する方法を記載している中で、医療機器の作動方法に該当することはここでいう、「人間を手術、治療または診断する方法」には含まれない、こういった記載がございます。
 実際に出願に当たり、幾つかのプロセスの中で、作動方法として出したものについても医療方法として特許としては不適当ということで、振り落とされている事例もあるやに伺っております。
 一方では、クレームの立て方によって、特許として成立する。これは何となく納得感がないのは、同じものであってもクレームの仕方で片方は駄目で、片方は特許ができる。国全体で考えたときに、特許を何とか収獲していくべきだと思っておりますので、できればより権利化しやすい手立てというものをもうちょっと明確にご指導いただければありがたいなというふうに考えてございます。
 最後に、測定方法の発明について、これは単純にこの星取表で見ていただければと思いますが、日本だけが測定方法の発明については認められていただいてないということもございますので、ここのものの考え方、国際協調を含め、日本だけがなぜそこまで駄目なのかということ、あるいはここら辺について見直しできないのかという検討はいただけないものかということでのご提案でございます。以上でございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 これからプレゼンテーションしていただきます渡辺さんのお話もあるんですが、両方とも企業の話ですので、後でまとめて議論していただきたいと思います。
 この片倉さんのプレゼンテーションにスペシィフィックなご質問があればと思いますが、どうでしょうか。よろしいですか。
 それでは、続けて、渡辺さんからご説明をお願いいたします。
○渡辺委員 アステラス製薬の渡辺でございます。
 今回、先端医療特許の課題といたしまして、恐らく再生医療の実用化に関しましては、特許化に至るような治療方法の特許とか、そういうものがまだ先の課題であろうということがございますので、それを考えるための1つの材料といたしまして、医薬品の使い方に焦点を絞って、特許化するに当たって、どんな問題があるのか。その経験を生かしてどう考えていったらいいのかというような観点から紹介させていただきます。
 1枚目にはこういうことをお話ししますということを示しております。
 医薬の開発に関して、かなりおさらい的なことも含めておりますので、参考にしていただけたらと思います。
 2枚目にライフサイエンスの技術というのは、科学技術の革新をもとに創薬を進展させるということでございまして、黄色で示しているのが科学技術の革新で、それに基づく青で示しているのが、薬剤の開発でございまして、こうした新たな技術が生まれるごとに、例えば有機化学、天然物化学でアスピリンが発見されたように、最近ですとゲノム創薬によって抗体医薬や癌分子標的薬というのが発見されるようになりました。その先には細胞研究等で再生医療等も同じようにつながっていくんだろうということであります。
 3ページ目に、創薬の変化ということで、質の異なる医薬へということを示しております。
 これまでの医薬というのは、殆ど低分子でございまして、低分子の中でもランダムな手法で見つかるものが以前は主体でしたけれども、最近はやはり標的に対して特異的な薬剤を取っていこうというラショナルの手法に変化しております。
 ただ低分子化合物だけではなかなか十分ではなくて、ゲノムサイエンス、あるいはテクノロジーの進歩によって高分子、細胞、臓器という新たな医薬に変化していくというような感じでございます。
 4ページ目に、その中で、使い方の重要化ということを示しております。
 対象患者は、低分子医薬では、一薬剤当たり非常に多いんですけれども、やはり細胞医薬、臓器医薬となるに従って、かなり個の医療になっていくということですが、使い方という面から言いますと、細胞医薬、臓器医薬ということでは、やはり個に応じたということで多様になっていく。従って使い方が重要であるということになってくると思います。
 一方、低分子医薬の場合でも、使い方というのは殆ど問題ないかと言いますと、やはり使い方が進歩すれば、かなり寄与できるところはあるということで、その辺に関しましては後でご説明いたします。
 5ページ目には、実用化には開発とそれを支える投資が必要ということで、革新的技術の実用化には研究開発が必須でありますし、患者さんに広く使っていただくためには、薬事法に基づく承認が必要ということで、高い品質、高い安全性、有効性があるというようなことを十分に証明した上で認めていただくということになるかと思います。
 また、よく言われておりますように、実用化には長い時間と莫大な資金が必要であると、そういった研究開発を支える投資なしにはこういった実用化というのは、困難であるということです。
 特許はそうした研究開発のインセンティブとして重要でありますし、制度がもし遅れておりますと、国際競争に不利であり、場合によっては、そういったことを保護できるようなところで開発された技術を輸入しないといけないということにもなりかねないということでございます。
 6ページ目は、医薬品の中で新たな使い方の重要性ということでまとめてみました。
 治療満足度の低い疾患というのは、例えばがんとか、あるいは中枢系の病気、かなり難しい疾患の場合にはまだまだ今の治療方法で十分満たされていないということで、治療方法を開発するニーズというのは高いものがあると言えます。
 一方、先ほど申し上げました疾患というのはかなり疾患のメカニズム等が複雑でございまして、なかなか攻め口が見つかりにくい。あるいは最近は、薬剤に対する安全性のニーズというか要求が非常に高いものがございまして、新しい医薬の開発というのはなかなか難しくなっておりまして、年々、承認される医薬品の数というのは減ってきております。
 一方で、既に使われております医薬品の使い方の工夫によって治療効果が大幅に改善された実例というのはDDS(ドラック・デリバリー・システム)、併用療法とか、新たな投与方法、そういうものによっても得られております。こういった新たな使い方の開発によって医療の進歩への期待があると思われます。
 こういった医薬品での経験というのが将来再生医療が実用化されることになったときに生きてくるのではないかというふうに考えております。
 それから、次のページでは、研究開発プロセスについて示しております。
 よくご覧になっている図だと思いますが、上の方では、新薬を研究開発するときにどういったプロセスを経るかということを示しておりまして、候補化合物が選ばれますと、その動物実験等によって、安全性、有効性を確かめた上で、人に移って、人で有効性、安全性が確かめられますと、やっと承認申請をして、上市ということで、お医者さんによって使っていただけるようになる。
 こういった研究開発にかかる期間が約10年から20年、コストで言いますと100億から300億。最近では、もっとたくさんコストがかかるというふうに言われておりますが、長い時間と大きなコストがかかります。
 その下に示しておりますように、医薬の新たな使用方法でも同様に新たな使用方法が見つかった場合にも、動物実験とか、一定のプロセスを経て、開発しないといけないということで、確かに新薬を1から開発することに比べますと時間は短いし、コストは多少は低いんですけれども、それなりに大きな投資が必要であるというのが分かっていただけるかと思います。
 これが米国では、特許があって、莫大な研究開発が可能であったとしても、特許がなければそういうことは難しくなるということで、インセンティブにならないというのは分かっていただけるかと思います。
 8枚目に、新たな医薬投与法開発の事例ということで、骨粗鬆症治療薬のフォサマック錠35rの例を示しております。
 この薬は1日1回5r錠というのが既に2001年6月に承認になっておりますが、それを週1回35r、毎日投与するのを1週間に1回にしたということで、簡単に思われるかもしれませんが、これもやはり研究開発、承認申請を経て、2006年7月に承認されたものであります。
 次のページに、どんなメリットがあったのかということを示しているわけですけれども、左下の方にある用法・用量というのを見ていただくと、この薬の場合には、朝起床時に水180mlとともに飲むわけですけれども、赤字で示しておりますように、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取を避けること、ということでありまして、朝起きてからご飯を食べるまでに薬を飲んで、しばらく何もできないというようなこと、横にもなれず、ということで、かなりこれを毎日飲み続けるのは大変であるというのは分かっていただけるかと思います。
 それを反映いたしまして、右の方に示しておりますように、患者さんのアンケート結果では、89%の患者さんが1日1回よりも週1回の投与の方が便利だというふうに回答しています。
 それから、10ページ目には、安全性に関する成績を示しております。
 下のグラフを見ていただきますと、この薬は、食道とか胃、十二指腸に刺激性があるわけですけれども、グラフの一番左のバーが毎日飲んだ場合、右の2本は同じ量を週2回、あるいは週1回にしたものということで、見ていただければ分かりますように、同じ量であったとしても回数を減らすことによって、そういった副作用が減っているということです。
 11ページには、毎日投与から1週間に1回にしたというようなものでありましても、先ほど来説明いたしましたように、非臨床試験ということで、イヌにおける副作用とか、あるいは有効性の検討、それと臨床試験におきましても新薬並みに安全性を確かめるフェーズTとか、有効性を非常にたくさんの数の患者さんで確かめるフェーズV試験を行っております。
 開発のタイムラインに書いておりますように、2001年8月から第T相試験、人での試験を始め、2006年7月にようやく製造承認を得たということで、こういった新たな医薬投与法の実用化にも新薬同様の開発を要するということが分かっていただけるかと思います。
 12ページ目には、一般論ではございますけれども、特許、先取り対応ということで、重要性、必要性について示しました。
 一定期間の独占排他性の確保ということが研究開発へのインセンティブに重要でございますし、投資の回収という意味でも重要でございます。
 また、特許がないとビジネスの安定性というのが十分ではないということで、安定供給、患者さんの利益のためということになるかと思います。
 先取り対応の必要性につきまして、やはり研究の加速のためには技術の進歩への迅速な対応が必要でしょうし、将来の実用化をにらんだときに、それが必要なときになってからでは遅いということで、革新的な技術が見出された創成期からあらかじめ準備しておかないといけないのではないかということで、問題が顕在化してからの対応では遅いのではないかというふうに考えております。
 13ページ目は、特許化によって懸念があるのではないかということに関して若干示しております。
 特許化によって新たな医薬品の開発が促進されるわけですが、患者さんへの影響といたしましては、やはりよりよい治療法へのアクセス機会が増える。それから、ニーズに応じた治療法へのアクセスが可能ということになるかと思います。
 また、最近、使用促進ということで、後発品の使用が推奨されておりますけれども、後発品への影響に関しましては、特許の満了した成分・効能効果に関しましては、後発品は販売可能でありますので、また、新たな使い方によって市場が開けた、つまり、よりよい方法が見出された場合にも、やはり特許が満了いたしますと将来の後発品の使用が拡大するということになるので、この辺につきましても、むしろプラスの影響になるのではないかということを考えております。
 ここから先は、特許の話でありまして、以前の医療特許化の調査会の結果を受けて平成17年に審査基準が改定になりましたけれども、その辺について私どもとしては、新たな医薬の使い方に関してかなりうまくいくんじゃないかと期待しましたが、多少やはり問題があるということで紹介させていただきます。
 この審査基準において治療の態様に関して、新規性につきましては、少しおさらいになりますけれども、引用発明と投与間隔・投与量等の治療の態様の点で相違する場合においては、以下の例のように、医薬用途が相違すると認められる場合には新規性がある。つまり引用発明と比べて対象患者群が異なる場合とか、引用発明と適用部位が異なる場合には新規性があります。一方、下に書いてありますように、投与方法や投与量が引用発明と異なっていても、対象患者とか適用部位が異ならない発明、こういうものはよくあるわけで、先ほどのフォサマックの例でも、骨粗鬆症という患者さんには同じ薬剤として、同じ用途として与えられるわけですので、こういう場合には新規性がないということになってしまいます。
 一方、進歩性に関しましても、薬効増大とか副作用低減等の当業者によく知られた課題を解決するためには、医薬の使用の態様を好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮ということで、引用発明と比較した有利な効果が当業者の予測範囲内である場合は進歩性がないとされております。この辺がかなり厳しく運用されておりまして、優れた効果があったとしても、なかなか進歩性を認めていただきにくいというようなことがございます。
 16ページに、その辺の審査基準の問題点ということで書かせていただきましたけれども、まず1点目は、繰り返しになりますが、対象患者群とか適用範囲に相違はないけれど、投与間隔とか投与量に特徴がある発明というものが物の発明として認められると思ったけれども、必ずしもそうではない。後で少し実例を示させていただきます。
 発明の本質が治療方法にある場合には、物の発明として表現しても、特許の有効性に疑問が残るという点。
 それから、あともう1つの問題としては、併用でございまして、複数の医薬品を組み合わせることに特徴がある発明というのは、物の発明として保護できる場合もある。これは合剤といったような、一体として投与される場合には、比較的簡単に分かるわけですけれども、下に示しておりますように、一般に医薬の併用というのは、複数の化合物の共存とか同時使用というのを必ずしも前提とするものではないということで、「組合物」、「薬剤」の表現によっては、時間的、空間的に別々に使用される全て化合物を必ずしも包含する権利として認識されていることにはならず、技術的範囲が不明確で、権利の安定性を欠くということで、特に、後で例を示しますけれども、経口と注射、タイミングが違うとか、そういった場合にはなかなか本当に権利が及ぶのか分かりにくいというところであります。
 17ページ目から特許化へのニーズの事例ということで、使い方に特徴のあるものということで示させていただきました。
 ここでは、まず概念的な部分で書いておりますが、医薬の新たな投与方法ということでは投与タイミング等、時間的な要素に特徴がある投与方法、あるいは血中濃度に特徴のある投与方法、他の医薬品との併用、合剤以外の部分。それから、他の療法、先ほど片倉委員の方から言われたことと共通しておりますけれども、物理学的手法との併用、こういったものに関しては、今の審査基準では特許になりにくい。あるいはなったとしても権利の安定性というところで不安があるということであります。
 こういったことが今の時点では、iPS細胞を含む再生医療のところでも、仮に問題として見えていないとしても、潜在的には同じことが起こるんじゃないかというふうに考えております。
 その例として細胞等の採取過程に特徴があるとか、細胞の移植法に特徴があるもの。あるいは他の療法との併用。時間的要素のあるもの。こういったものに関しては、同じことが起こるのではないかということを考えております。
 18ページ目には、実際に単剤で投与されたときの医薬の投与方法に特徴がある投与方法、もしくは投与量に特徴があるもので、先ほど申し上げました審査基準が出た後の審査例、特に米国とか欧州で審査されているものとの比較ということで、9件ピックアップされました。
 見ていただければ分かるんですけれども、9件のうち殆どの件数はアメリカ、ヨーロッパでも特許になっておりますが、日本では赤字で示したところというのが、拒絶査定、もしくは審判中であるということになっております。大抵の場合は先ほどの審査基準どおりに判定されて、新規性がないということで進歩性判断まで行かないというのがメインであります。
 なお、登録になっているのは3件ございますが、脚注の方に示しておりますように、やはりこうしたものも審査では拒絶されておりまして審判で登録になっております。
 理由も下に示しておりますが、Dの場合には、公知物質の新規用途で登録ということで、投与方法に特徴があるということとは少し違うことで登録になっておりますし、Eについては進歩性なしの原査定を否定ということで、理由は分かりませんけれども特許になった。Fに関しては、対象患者の違いから新規性容認したということで、これは審査基準にも当てはまる例として登録になったということです。
 ということで、新たな審査基準でこういう投与方法に特徴があるものが、特許になると期待したわけですけれども、ここで示しましたように、日本においてはまだまだ問題があってなかなか特許にならない例が多いということが分かっていただけるかと思います。
 19ページ目に、その1例を示しておりますが、発明の内容といたしましては間歇的に投与され、投与の間隔は少なくとも6カ月である、骨粗鬆症の治療薬のある薬剤で、投与量も1から10rというふうに規定しているような薬剤で、新審査基準では化合物及び適用疾患、対象患者群や適用部位が公知例と異ならないということで拒絶され、それを回避するために剤形というのが新たに加えられたんですけれども、それも容易とされて特許にならなかったケースです。
 一方、これはヨーロッパでは、医薬第二用途クレームで登録になっているし、1年に1回の製剤「ゾメタ」ということで、認可されております。日本ではまだ認可されておりません。
 続きまして、20ページ目には、併用の問題点ということ、その前に併用という使い方によっても医療に貢献しているということをまとめて示しております。代表例を示しております。
 最初のものはよく知られている例だと思うんですが、ペグインターフェロンとリバビリンを併用して、難治性C型肝炎に対して、半数の患者でウィルス消失ということで、これまでなかなかコントロールが難しかったC型肝炎がこういうことで難病ではなくなったというふうに思われますし、2番目の例もプロトンポンプ阻害剤と抗生剤2剤の併用によって、ピロリ菌の除菌によって、胃とか十二指腸潰瘍の再発が防止できるようになったということで、ほぼそうした潰瘍の再発がコントロールできるようになりました。
 その他の併用例におきましても、諸症状を有意に改善、生存期間を有意に延長といった効果が得られております。ただこういった併用というのは合剤の形で一遍に飲めるといったものも確かにありますけれども、殆どのものは注射剤と経口剤の併用とか、あるいはタイミングが違うとか、違う会社の薬剤同士の併用であるとか、そういったものでありまして、特許化できる場合も確かにあるとは思うんですけれども、先ほど申し上げましたような組み合わせ医薬で本当に適切に権利行使できるかかなり不明な点が高いというふうに思っております。
 21ページ目には、併用の場合の投与方法、投与量の特徴がある例として、特許化のニーズがあるものということで示させていただきました。
 前提といたしましては、インフルエンザ治療薬として、作用機序の異なる医薬Aと医薬Bの併用というのが知られている場合に、発明の内容に書いてありますように、医薬A○rを3日間投与した後、続いて、医薬Bを3日間投与する。この間も医薬Aは投与されている。
 逆の投与の仕方をすると効かないということだと思います。そういうことによるインフルエンザの治療方法ということで、投与方法、あるいはここに書いてある投与に特徴がある例でありまして、こういう場合にもやはり既にインフルエンザ薬として知られている薬剤でございますので、また併用が知られておりますので、新規性がないとして拒絶されることになるかと思います。
 それから、もう1つの例といたしまして、物理学的な方法との組み合わせ、DDS技術で治療法に特徴がある例で、特許化が今できなくてニーズとして挙げた例です。
 この例は、失明の原因となる脈絡膜新生血管生成を、化学的に閉鎖することによって治療するということで4つの段階からなります。
 まず、(a)の部分というのは、マーカーとして蛍光塗料を含む、熱により分解されるようなタイプのリポソームの中にマーカーとして蛍光染料を詰めておいて、それと同時にレーザー照射で活性化されるような組織反応性を有する薬剤を静注投与する。
 (b)のところにおきましては、眼血管のあらかじめ決められた部位を選択的にレーザーで加熱して、リポソームを壊して、先ほど申し上げた蛍光染料を局所に放出させる。
 (c)のところで、蛍光をモニターすることによって、血流が分かるわけです。(d)のところで、血流が悪い、不正常な血流が起こる場所に対して、レーザーを照射して薬剤を活性化して眼血管を吸蔵させ閉鎖して治すというようなことでありますが、こういったシステムの場合には、本質は治療方法にあるということで、日本では特許化できないということで、やはり特許化に対するニーズのある例として出させていただきました。
 最後に、まとめとして、これまでに述べてまいりましたことを上に書いてありますけれども、革新的医療技術を実用化する、一般的に使うために薬事承認による使用が必要ですけれども、それには開発投資を支える特許が必要でありますし、現状では特許化できない革新的技術、例えば生体を構成要件にするとか、方法に特徴がある場合は、保護できないということです。
 再生医療の場合には、一番最初に申し上げましたように、医薬に比べますとやはり使い方というのがより重要でありまして、生体を構成要件とする場合というのは、当然多いわけでありますので、先ほど来紹介しております医薬以上の特許化ニーズというものが想定されますので、アメリカの場合と同様の方法特許によって権利化できるようにする。この場合に恐らく医師の免責が前提になるかと思います。
 あるいは欧州型の用途特許としてカバーするような、新たな新規性基準の導入ということが考えられます。この場合には、安定な権利行使が前提となりますが、そういったことによって、今できてない部分、それから、今後再生医療で、特許化できなくて困るといった状態は避けるべきというふうに思っております。以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 先ほどと同様ですが、スペシィフィックなご質問が今あればお受けいたしますが、どうでしょうか。よろしいですか。
○北川委員 薬の開発で多剤併用するような場合の組み合わせで治療するような場合の特許で、欧州、米国では認められているけど、日本で認められてないというお話がございましたけれども、具体的に例えばアメリカの場合、この特許が成立することによってどういったインセンティブが働いているのか、お分かりになる範囲で伺いたいんですが。
○渡辺委員 全ての例を、アメリカの特許、ヨーロッパの特許と手元に調べているわけではありませんけれども、そういう併用特許があることによって、例えばアメリカの場合ですと、そういう併用による用途というのを処方箋に書くことと同時に、オレンジブックという医薬品と関係する、承認に関係する特許をリストすることができるんです。
 そうすると例えば後発品等を出す場合には、その特許を侵害してないということを証明しないと売り出すことはできないということもございますので、やはり医薬品としての承認、使い方も用途のうちでございますので、そういうものに対して、特許があることによって有効にビジネスを守るということで機能しているというふうに思っております。
 お答えになっていますでしょうか。
○金澤委員長 本田さん、どうぞ。
○本田委員 すみません、素人の質問で恐縮なんですけれども、先ほどの質問と似ているんですけれども、使い方を例えば3週1回投与を毎週投与するとか、もしくは毎週投与を3週投与にするとかした場合に、新しく特許、違う使い方をしたときに、特許の費用というのは、回り回って患者さんの医療費というところにも負担が増えているのかなと感じるんですけれども、まずそこが全然違うんだったら、それが1つ教えてほしいのと、その新しい特許を取ることによって使い方が違うことによって同じ薬剤の治療をしているんだけれども、治療費が高くなるとか、そういうことは実際あるんですか。
○渡辺委員 あまり正確にお答えできるかどうか分からないんですが、先ほど説明いたしましたように、新たな治療方法が見出されたときに、それも薬事的な承認を受けているわけです。そこには薬価というのは当然つきますので、治療が以前よりもある程度高いレベルの治療ができるということであれば、それに応じた薬価がつくということであれば、費用対効果ということの絡みでいくと思います。
 全く同じ効果でそういう特許があるために、医薬が高くなると、そういったことではないというふうに理解しておりますけれども。
○本田委員 同じお薬でも使い方が違う新しい使い方になると、値段、費用が違ってくるんですか。
○渡辺委員 それは得られる効果が飛躍的に増加するということであれば、多少やはり高い薬価になると。少し詳しく、正確には申し上げられませんけれども、そうなると思います。
 ただ、それは以前のものは薬事承認して使われるわけです。新しいものも使われて、併存するわけですので、やはりどちらを選ぶかというのは患者さんなりお医者さんの選択肢が増えるということになるかと思いますけれども。
○金澤委員長 どうもありがとうございます。
 もしよろしければ次に、まだ話題が2つ、3つございますので、それが全部済んだところで自由討論ということにさせていただきたいと思います。
 続きましては、インターネットを通じた事例調査というのを第1回目に申し上げたとおりでありますが、その結果の報告をしていただきたいと思います。
 事務局からどうぞ。
○内山事務局次長 資料3をご参照いただきたいと思います。
 1ページ目に概要がございます。先端医療分野におきます発明であって、現状我が国では特許取得ができない、提出者が今後特許対象とすべきと考える、そういう発明についての調査を実施いたしました。
 11月から12月にかけまして約3週間ということで、具体的な事例をご提出いただいた方が10件ございました。
 発明の内容の分類は、3にございますように、大きくわけて4つでございまして、これまでのプレゼンテーション等々と合わせて考えますと、この4つの分類にいろいろな事例が合わさって入っていると思います。まず、1つ目が既存物と既存物の組み合わせ。2つ目が人体への作用工程を含みます医療機器の作動方法。3つ目が、人体の作用工程を含みます生体外で行われる工程に特徴があるもの。特に、細胞等への処理方法に特徴のあるもの。4つ目が生体内で行われるプロセスに特徴があるものでございます。先ほどのご説明にございましたけれども、細胞の用途、あるいは投与時間、投与手順、投与量、移植場所に特徴がある発明、最後に機械器具の使用方法に特徴のあるということでございます。
 2ページ目以降、個別具体的に事例がございます。少し具体的な事例について見てみたいと思います。
 2ページ目の一番最初のところが、生化学手段と生化学手段との組み合わせということでございまして、例えば幹細胞移植と再生誘導因子を産み出すような細胞の同時移植、また、幹細胞移植と再生誘導因子投与を併用する方法というようなものでございます。
 それから、(2)物理手段と化学手段と組み合わせるということで、これは先ほど渡辺委員からご説明があったその事例でございます。 
 次に、人体の作用工程を含みます医療機器の作動方法の特徴のあるものでございます。一番下の@は、聴診器と聴診音の自動解析装置から構成される医療機器を胸部に押し当てることによって、喘息状態の危険性を警告する。そういったような発明でございます。
 それから、次のページを見ていただきますと、これは最適な人工股関節の大きさを求めるということで、圧力センサーが備わった機器を人工股関節インプラントに手術中に一時的に設置するということで、自動的に股関節周囲の張力の測定・解析をする。そういった機器の作動方法に関するものでございます。
 次に、大きく物の使い方の特徴に由来するような発明ということです。1番目は、人体の作用工程を含みます生体外で行われる工程に特徴がある発明で、特に、細胞等への処理方法に特徴がある発明でございます。
 がん、またはウィルス疾患の治療方法として、特定の細胞を患者から取り出しまして、それを培養して、患者に移植する。一連の流れに関する治療法です。
 それから、次は、外来遺伝子で形質転換された内皮細胞をカテーテル法で安定的に動脈壁に移植する方法です。
 2番目に、生体内で行われるプロセスに特徴のある発明で、幾つかございます。これまでも説明がございましたけれども、1つ目は、細胞の用途に特徴のある発明で、ここにございます事例は、遺伝子修飾ドナー細胞を中枢神経系に移植する工程、これを特徴とします中枢神経系の細胞の欠陥・病気または損傷細胞の治療方法ということ。
 2つ目は投与時間、投与手順、幾つかご説明が既にございますけれども、ここにございますのは、慢性腎不全の治療のための医薬の投与方法でございます。必要な期間にわたって投与と投与中止、このパターンを繰り返すということで投与する方法でございます。以下、A、B、Cがございます。
 それから、3つ目に次のページでございます。投与量に特徴のある発明ということで、先ほどもご説明ございましたけれども、薬剤を使用する際の血中濃度の条件に特徴のある発明でございます。
 (b)では新たな薬効発現用量を特定した発明ということで、ここでは慢性関節リウマチの治療方法について事例が出てきてございます。
 それから、4つ目に移植場所に特徴がある発明です。次のページをめくっていただきますと、生体適合性ゲルシート、これを患者さんの膵臓の下縁部に移植する、そういったステップを含む糖尿病の治療方法ということで、それに至る幾つかのステップは既知の発明であり、移植する場所に特徴がある発明でございます。
 最後に、機械・器具の使用方法に特徴がある発明ということで、@にございますように腹腔内の手術空間を作成する方法、それから従来は潰瘍性大腸炎の疾患の際に血液中の白血球を除去するために用いられる機器を、消化器系臓器の外科手術の際に、感染の抑制のために用いる方法、そういったものが出ております。
 簡単でございますが、以上です。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 今まで伺ったのとそう大きな違いはないようなものが幾つか出てきていたようであります。何かスペシィフィックなご質問はございますか。
○羽生田委員 今の例えば、手術器具の使用方法等に特許がつくということは、具体的にどういうことになるんですか。
 手術自体に例えば制限が加わるとか、それを使用するに当たって、費用がかかるとか、あるいは手術代に跳ね返ってくるとか、どういうふうに具体的にインセンティブが働いて、特許を取った方がどういった得があるのか、それがどこに来るのか、その辺が非常に具体的に分からないんですけれども、教えていただきたいです。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 これは、先生、私もちょっと最初誤解していたんですが、これはインターネットを通じて、現場の方々からの声なんですね。この中で、何でこんな言い方をしなくちゃいけないんだろうなというのもあるわけでありまして、ちょっと例としてよくないかもしれませんが、2ページ目の一番下のところで、@ですね、これどこが、何を言っているのかよく分からなかったんですけれどもね、押し当てるというのがポイントなんだそうです。
 ですから、そういうふうに実際はこんなことを書く必要ないことなんですね。だけれども、やはりご本人たちはこれをどうしても主張するという、そんなニュアンスがどうもあるらしくて、これは1つ1つ言っていきますと、何を言っているんだろうなというのはないわけじゃないんです。
 ですから、今先生からのご質問にピタッと答えられる人がいるかどうか、ちょっとよく分からないんですが。もし答えられれば、どうですか。
○北川委員 今の先生のご質問は、先週、委員の先生方が来られたときに、まさに私が質問しているんですね。
 その回答では、私は経済的なメリットを享受するために、何か特許化ということをお考えなんですかというふうに伺ったら、そうじゃないんだと強く先生は否定されたんです。ですから、私は余計分からなくなっているんです。だから、私は必要ないというのが結論なんですが、まさにおっしゃるように、ここの部分を特許にすることによるインセンティブが学術的に先生方の研究意欲を促進するというのが発表の先生方のご意見だったので、であれば我々のいるような産業界にとっては基本的には経済学的なアドバンテージがないと再生医療について考えるのがいいんじゃないかというふうに私は考えているんですけれども。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 どうぞ、南さん。
○南特許技監 それでは、純粋に特許法上、治療方法で特許が認められたらどうなるかということをご説明します。ここの具体的な事例とちょっと離れて仮想的にしますと、ある治療方法に特許が認められれば、当然、その治療方法を実施しようとする場合には、特許権者の方からその特許権、ライセンスを受ける必要があります。ですから当然その対価を支払う必要があるということになるかと思います。
 仮に、そのライセンスなしにそれを実施すれば、権利侵害ということになります。
 ただ、アメリカの事例、一番最初にご紹介しましたが、通常ですと医師のそういった行為には免責規定が設けられて、そのような事態は生じないというふうに考えます。
 ただ、そのようなことに対する免責規定を設けたとしても、仮にその治療方法にもっぱら使用するような器具があった場合には、その器具を製造販売している者に対しては、間接侵害という問題が生じますので、やはり特許権者からその器具を作っている者に対しては、何らかのライセンスが必要になるということになるかと思います。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 議論に入ってしまったので、ちょっと恐縮なんですが、元に戻させていただきます。
 もう1つだけプレゼンテーションをしていただき、そしてもう一度戻ってきたいと思います。
 次は、内閣府からのご報告でありまして、保倉さん、お願いします。
○保倉参事官 内閣府の保倉でございます。
 私の方からは、総合科学技術会議の知財戦略専門調査会の専門委員の皆さんに特許を求める医療方法に関する具体的な発明の例を募集いたしました。
 その結果をまとめたものを資料4に提示させていただいております。
 4名の委員の方から情報提供がございまして、今資料3のご説明がありましたけれども、それとほぼ同じようなカテゴリーに分けて、紹介させていただきたいと思います。
 資料4は、カテゴリーに分けたもの、別添でございますけれども、これは4名の方に出していただいた専門委員ごと、そのままのものを出させていただいております。
 専門委員の出されたものの全ての例をカテゴリー別の方に並べ替えて入れてございます。
 それでは、中身の方をご説明いたします。
 まず、Tの物の性質・機能に由来する発明、その中で既存物と既存物の新規な組み合わせに特徴のある発明ということで、生化学手段と生化学手段の組み合わせというものの例としまして、複数の化合物をそれぞれ特定の割合で配合することにより、効果的にがんを治療する方法、複数の化合物ということで、組み合わせということになっております。
 それから、Aはデコイで処理した@PS細胞。Bは、分化細胞と分化誘導因子産生細胞を共存させるということ。それから、Cは神経幹細胞、神経コラーゲン、神経組織胚が含まれる、この3つが含まれる成分ということで、組み合わせということの例にさせていただいております。
 次に、(2)ですが、物理手段と生化学手段との組み合わせで、物理刺激手段と生化学手段との組み合わせということで、@の例としまして、In vitroで分化誘導した細胞を物理的方法によりヒトターゲット部位に輸送、固定する方法。その方法として磁力を用いるということがございます。Aの例、次のページになりますが、電気パルスを用いるというものでございます。
 (b)としまして、物理的輸送手段と生化学手段との組み合わせということで、In vitroで分化誘導した細胞を人工構造体ラップを用いて、直接注入し、ヒトターゲット部位に輸送、固定する方法。Aは、不織布を用いるというものでございます。
 2.としまして、医療機器の作動方法に特徴のある発明というもので、@としまして、成長を規定することにより骨の組織を修復する方法で、上昇時間と下降時間の相違において一定の波形を持つ電気信号を生成することにより骨の生成と修復を刺激する方法。Aも同じく電気刺激を用いて、痛みを軽減しつつ腸の閉塞状態を取り除く方法。Bも身体の不具合に与える影響を特定化し、不具合を生じないように電気刺激を与えるという例でございます。
 次にUとしまして、使い方の特徴に由来する技術として、生体外で行われるプロセスに特徴ある発明。生体外で行われる細胞等への処理方法に特徴のある発明として、@としましてパーキンソン病患者の治療方法。これはまず細胞を取り出して、@PS細胞を作成し、それを単離・増殖させて、それをさらに分化誘導して、それで神経幹細胞のみを単離・増殖させて最終的に患者の脳に移植するというものでございます。Aも同様でございまして、最終的には患者に移植するというものでございます。B以下も同様に最終的には患者さんに戻すというものでございます。
 次の(2)ですが、これはちょっと今までの例になかったような例なのかもしれませんけれども、治療対象患者の抽出方法に関して、特徴のある発明ということで、糖尿病を合併する末梢動脈閉塞患者において、血清中TGF−β1濃度を測定し、○○ng/ml以上の高値を示す患者のみに限定することにより、他剤の無効例を選択し、これらの患者には血管新生遺伝子を所定用量・用法で投与することにより、他剤、non−responderとなる結果、QOLが低下するリスクを避け、確実に治療する方法という例が挙がってございます。
 次に、2.としまして、生体内で行われるプロセスに特徴のある発明ということで、細胞の用途に特徴のある発明としまして、NOを産生する胚性神経幹細胞を患者の胃腸管に導入するというものでございます。
 それから、(2)細胞や薬剤の使い方に特徴のある発明。時間、手順、投与量に特徴のある発明。これは今までも出てきておりますが、@は、4週おきに2回投与するとか、Aは、2週間前に遺伝子を投与するとか。Bは、○○ガウスの磁界を□□時間かけるというふうな例でございます。
 次のページを見ていただきまして、2の移植場所に特徴のある発明ということで、分化させる細胞の生体内で選択的増殖方法ということで、分化させる細胞を生体内で物理的に分離し、クローナルに増殖させるためにターゲット部位付近で固定化された生体外との連絡ポートを備えたチェンバーを設置する。チェンバーの設置場所は組織学的な知見に基づいて決められるというものでございます。Aも生体の特定部位に埋め込むというものでございます。
 最後に、(3)機械・器具の使用方法に特徴のある発明としまして、○○を内視鏡で確認しながら、腫瘍組織に正確に投与する方法。それから、Aとしまして、エコー検査によりカテーテルを患部に誘導する。Bとしまして、マイクロバブルを注入するというふうな方法の発明が例として挙がっております。以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 よろしければ、次に、再生医療分野における米国特許事例調査について、特許庁の田村さんからご説明いただいて、自由討論にしたいと思います。
○田村審査準備室長 まず、こちらの方を調査をなぜ行ったかというところでございますが、こちらは、推進事務局の方からご示唆いただきまして、特に医療方法についての保護を求められている皆様方が米国で医療方法が特許になるのに、日本ではうまく権利化できないという問題点があるので、米国で特許になるようなものについて、調査をしてほしいというお話がございまして、特許庁で作業させていただきました。
 具体的には、前回の委員会にご出席いただきました女子医大の岡野先生とか、広島大学の越智先生にアドバイザーになっていただきまして、再生医療分野の特許出願から見た技術動向調査というのを現在やっておりまして、その調査の中で、網羅的にこちらの2ページ目に書かれてございます優先権主張年が2002年から2006年のものを調べて、その中で、米国において特許登録されたものが197件ございました。
 そして、その中で、特に医療方法の表現形式の特許クレームが含まれているものというものが30件ほど抽出されまして、その30件について、方法の発明ではなくて、物のカテゴリーの発明で特許化ができるかどうかというところを調査させていただきました。まず医療方法として30件の内訳は、2ページ目の方にございますように、治療剤、または移植剤として表現可能なものというのが24件、うち用量を規定した製剤として表現可能なものが4件。次にキットとして表現可能なものが2件。そして、次に足場等の医療材料として表現可能なものが2件。医療機器として、表現可能なものが1件。あと生体外での医療材料の製造方法として表現可能なものが1件という、5つのカテゴリーのものが分類できました。この5つのカテゴリーについて主だった例をご説明をさせていただきたいと思います。
 (1)の方が、治療剤または移植剤として表現可能なものということでございまして、どういう発明かということでございますが、要約の水色のところを見ていただきますと、心筋などの血管形成を促進し、心不全を予防する方法の発明でございまして、患者さんの心筋から単核細胞を採取して、特にこの単核細胞の中で、分化抗原陰性の細胞、こちらの方は、分化能が高いというものに濃縮して、それを患者さんの患部の方に戻す。そういうふうな医療方法の特許が赤い枠のところに書いてございますが、米国で特許になっているということでございまして、肌色の方の枠が右側にございますが、こちらが想定ということで、日本で特許ができるかどうかというところを書かせていただいたところでございますが、こちらはこういう分化抗原陰性の単核細胞を含むような血流量を増大させるための移植剤という、用途発明として権利化が可能ではないかというところで、ご提案をさせていただいているというところでございます。
 (2)の方のキットとして、表現可能なものというところでございますが、こちらは脊髄損傷を自然なプロセスで、自己由来組織を用いて治療する方法であって、患者自身の細胞と磁場のエネルギーでこちらを治療する方法でございまして、細胞に磁場をかけることによって、より脊髄損傷の治りをよくするということでございます。赤枠の方に米国の特許クレームが書かれてございまして、右側に(A)というところでまず生化学手段である細胞が書かれてございまして、(B)のところにそういう物理手段であります磁場が書かれており、このAとBの組み合わせによるキットというような物のカテゴリーの特許クレームというものが考えられるのではないかというふうに整理させていただいております。
 次に、(3)の方ですが、足場等の医療材料として表現可能なものということでございまして、要約に書いてございますが、虫歯等の歯の治療方法であって、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等からなり、歯にドリルであけた穴に入るサイズの足場ウエハースを用いる方法でございます。虫歯になった歯を削りまして、歯髄が露出するような形になった状態で、その穴に足場ウエハースを埋め込むというような方法の発明が米国で特許になっております。
 こちらにつきましては、デバイスという末尾でこの足場に相当するウエハースを特定して、そのウエハースを削った歯の歯髄の一部に接触するような形で用いるというような特定をして、物のカテゴリーで特許化する可能性があるということで書かせていただいております。
 次に(4)の方の医療機器として表現可能なものということでございまして、こちらは脳とか脊髄損傷部位の回復を補助する方法でございまして、その損傷部位に平行なX線ビームを照射すると、このX線ビームを照射することによりまして、組織の再生を阻害するような物質がこのX線で取り除くことが可能ということでございまして、そのX線が平行になっておりますので、その並行なX線の間の部分から組織再生の阻害剤を取り除かれた部分に細胞が移動することよって、脊髄損傷等を回復するようにする方法でございます。これにつきましては、こういう特殊なX線ビームを発生するような装置、こういう並行にX線を照射するような装置のクレームで特許化することが可能ではないかというような整理をさせていただいております。
 最後に、(5)の方でございまして、生体外での医療材料の製造方法として表現可能なものということでございまして、こちらの発明は生きている生物学的マトリックスを製造する方法の発明でございまして、そのマトリックスは患者さんの細胞を破砕することによって作るマトリックスでございまして、患者さんから取り出した後、それを破砕して、また患者さんに戻すというような工程が赤枠の米国の特許クレームとして書かれてございます。
 これにつきましては、先日もお話ししましたように、患者さんからこの細胞サンプルを取り出すとか、さらにそれを破砕した細胞を患者さんに戻すというようなお医者さんのかかわる部分がなければ、生体外の部分だけであれば、この医療材料の製造方法として特許化が可能であるということが肌色の枠の中に書かれているということでございます。以上でございます。
○金澤委員長 どうもありがとうございました。
 資料5の別添もありますので、細かいですが、ご参考にお願いいたします。
 これでプレゼンテーションは終わりなんですが、これからご自由なご発言をいただきたいと思っておりますけれども、参考のためにですが、資料6が用意してあります。ちょっと簡単に説明をお願いします。
○内山事務局次長 ごく簡単にご説明いたします。
 資料をめくっていただきまして、1ページ目でございますけれども、これまでの事例調査による発明は3つのカテゴリーに大別してそれぞれ現行の審査基準に基づく取り扱いを整理しております。
 まず、第1のカテゴリーが物の性質・機能に由来する発明で、これはさらに2つの特徴がある発明に分類できて、この既存物・既存物の組み合わせ、組み合わせ医薬という、これは特許対象だと。しかし、物理手段、あるいは生化学手段、この組み合わせはその点の取扱は不明確だということでございます。そういうご指摘がございました。
 それから、医療機器の作動方法に特徴がある発明。
 2ページ目が、第2のカテゴリーとして生体外で行われるプロセス、細胞等への処理方法に特徴がある発明ということで、枠囲いの、2番目のポツにございますように、血液透析方法といったものは、特許対象外ですが、他方、原材料としての医薬品、血液製剤等、それから医療材料、人工骨等、こういったものは、特許対象ということでございます。
 このカテゴリーの場合、一番下の※にございますように、ヒト機能細胞というのが、上記の審査基準でいうところの医薬品、医療材料に該当するかどうかと、この辺が不明確だという指摘がございます。
 3番目に、最後のカテゴリーでございますけれども、生体内で行われるプロセスに特徴がある。これはさらに3つの特徴のある発明に分類ができます。細胞の用途に特徴のある発明、これは物の用途発明として表現できるのではないかということで、特許対象であるということ。ただこの場合、細胞に特有の問題として細胞が経時変化するということで、物として表現することは難しいのではないかというご指摘がございました。
 それから、先ほどご説明がございましたような、細胞、薬剤の使い方に特徴のある発明、また、3番目に機械・器具の使用方法に特徴がある発明についての取り扱いをここにまとめさせていただいております。以上でございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 これからの議論の参考にということで、まとめております。
 以上でございますが、どうぞたくさんのご説明、プレゼンテーションがありましたけれども、どうぞどの点からでも結構です。
 では、小泉委員とそれから林委員。
○小泉委員 渡辺委員のプレゼンテーションの資料2の14ページについてご質問させていただきます。これはむしろ渡辺委員というよりも事務局ないし特許庁に対するご質問になるのかもしれません。(b)の「適用部位」という言葉の意味についてです。渡辺委員のプレゼンでは、経口投与と皮膚に塗布するのとでは「適用部位」が異なる、という例が挙げられております。一方、ただいまご説明がありました資料6の3ページの真ん中の細胞、薬剤の使い方の特徴というところのBには「移植場所に特徴のある発明」となっています。渡辺委員は、投与経路の違い、塗るのか飲むのかというようなことによって、「適用部位」が異なり、特許が成立するというふうにご理解されているのではないかとうかがいました。
 他方、資料6によると、薬が効く場所、たとえば、胃に効く薬が腸にも効くということが明らかになった場合、あるいは、移植する場所が違って始めて特許になると読めます。両者はかなりの隔たりがあるような気がいたします。適用部位という言葉は審査基準で定義されているのか、今の例でどちらが正しいのか、あるいは両方含むのか、お尋ねします。
○田村審査基準室長 渡辺委員の方が作られております、こちらがもし医薬用途発明としてのペーパーということでありますと、例えば投与経路が違うことによって、用途発明に違いが出てくるのかというようなご質問かと思われますが、それについては違いが出てこないというところが回答になろうかと思われます。
 それで、我々が適用部位と考えておりますのは、どちらかと申し上げますと、医薬品の作用部位というものが、作用メカニズムも含めてということだと思いますが、そういうところが明らかに違ってくるようなケースということでございます。例えば足に何か出来物のようなものができて、それで血液がちゃんと行かなくて、壊死していくというような症状があった場合に、それを改善するために従来の医薬品Aというものについては、例えば壊死する原因が血栓ができることによって、血流が悪くなって壊死するというふうに思われていて、それでその血栓を溶解するような形でのメカニズムで、その化合物Aというものを使っていたというのが既にあったようなケースであっても、同じ下肢が壊死していくような患者さんであっても、よく調べると、それはそういう血栓ができることが原因ではなくて、むしろ感染症でそういう下肢、足の壊死が起こっているということが発見されて、そういう感染症を治すために同じような医薬品Aを使うというようなケースであれば、作用部位が異なるというような解釈で、患者さんとしては足が壊死していくような、そういう患者さんということで、従来は同じように思われていたのに、そこが患者群として違ったものとして相違が認められるので、そこを適用部位が変わるということで、新たな医薬用途発明として権利化するというような考え方をとっております。
 渡辺委員のプレゼンですと、用途発明というよりは、多分、投与経路を変えることによって、物自体もかなり変わってございますので、結果的には、こういうものが物として違うということで、特許化される場合があるというふうに考えてはおりました。以上でございます。
○北川委員 今のご回答は、ちょっとおっしゃっていることが、作用のところが違うんですよ。最初は血管を溶かす、Aという物質が溶かすという作用があって、それがその次、炎症を抑えるという作用がそのAという物質にあったということで、特許を認めるという意味でおっしゃっているんですよね。
 それは部位の問題ではなくて、そのものの効果が違うから特許が成立しているんじゃないですか。という解釈ですよね。
 それは多分、渡辺委員がおっしゃっている部位の議論とは全然違う議論だと思うんですけれども。
○田村審査基準室長 そこは作用メカニズム的に見て、どこにその薬が効いているかというところが異なるというところを我々は適用部位の違いというふうに考えているということでございます。
○金澤委員長 なかなかよく分からないんですけれど、要するに、小泉さんのご質問については、まずは渡辺さんが答えていただいた方がよさそうですね。
○渡辺委員 確かにちょっと簡単にするために、非常に分かりにくい表現にしてしまって申しわけないと思っています。
 審査基準上は、適用部位という言葉より適用範囲と書いてあったと思いますので、この場合も、例えば引例の経口投与があって例えばそれが全身的なある感染症に対して知られていましたが、皮膚に塗布するためのという場合には、そこの特異的な部位の感染症に対してであって、やはり作用する場所が違うんだということで区別しているというような意味にとらえておりますけれども。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 林さん、どうぞ。
○林委員 実は、幾つか整理のために申し上げたいと思っていることがあるんですけれども、今の話の流れが多分この委員会のポイントになっていると思いますので、まずそこから特許庁の方にお教えいただきたいのですけれども、まず資料5で再生医療分野における米国特許事例の調査をなさって、それについて(1)から(5)までいずれも物として表現して、新規性を認めることが可能であるというご解説をいただいたわけなんですが、それは現在の審理基準のどこを読むとそのように理解できるのでしょうか。
○田村審査基準室長 用途発明に関しては、新規性の一般基準と医薬用途に関します基準がございますので、双方を合わせ見れば、こういうふうな形で特許化可能ではないかというところでございます。
 あと医療材料の製造方法につきましては、平成15年に基準改定された産業上利用できる発明という基準がございますので、そちらの方で、お医者さんのかかわる工程が入っていなければ、29条の柱書きで拒絶されることはないというところが読んでいただけるかと思われます。
○林委員 実際に企業の最先端の方が、弁理士の方も専門家もかかわってすら、現在の審査基準を読んでいて、不明だというところがこのように多々あるわけですから、それについてはぜひ今回の機会をプラスにして、明確化を図ることをお考えいただきたいと思っております。
 そうしますと、審査基準の第Zの特定分野には、生物関連発明という第2章があるわけなんですが、今のご説明では、第3章の医薬発明の方で読み込むという解説だったですね。
○田村審査基準室長 用途発明については、そちらということになります。あと@PSのような細胞自体に特許性があるかどうかの判断は、今ご指摘がありましたように、生きている対象物が特許化できるのかどうかというところは、生物関連発明の基準を参照していただくことになろうかと思います。
○林委員 そうしますと、また関連してなんですが、この審査基準の第三章の医薬発明の新規性の基準として先ほどから何回か引用されております「投与間隔・投与量等の治療の態様に関して」という現在の基準を拝見しますと、下記(a)または(b)のように医薬用途が相違すると認められる場合には、と書かれておりまして、aというのが対象患者群が違う場合、bというのが適用部位が異なる場合ということで挙げられているわけなんですが、実際は、のように、とは書かれていても、対象患者群かまたは適用部位が異ならない限り、新規性は認められないという運用がなされているんでしょうか。
○田村審査基準室長 治療の態様においてというところではそうではございますが、通常の医薬用途に特徴がある、患者群が区別できるような、そういう用途発明ということであれば、医薬用途発明として権利化が可能ということになろうかと思われます。
○林委員 今の点の取り扱いは、同じく物の発明のカテゴリーの中で、医薬の用途の新規性を見ております欧州の取り扱いと比べて、日本の方が厳しいということにはなりませんでしょうか。
○田村審査基準室長 渡辺委員の方から本日そのあたりのご説明がございましたが、第1回の委員会の方で、南特許技監の方からご説明させていただきましたように、ヨーロッパで投与方法に特徴のあるような医薬用途発明のような形で許されているものについては、現在、EPOの上級審でございます拡大審判廷の方に、その辺の判断が既に許されたものがイレギュラーに間違って許されたのか、それとも本当にそれでいいのかというところが付託されておりまして、今後のヨーロッパ、EPOの方の運用はそちらの拡大審判廷の判断を仰いだ後に確定するという形になります。ヨーロッパでは確かにその案件については現在特許があるということでございますが、将来的にそれがヨーロッパの運用、実務として定着するのかどうかというところは、まだそちらの判断を待たなければいけないという状況でございます。
○林委員 その拡大審判部の件は、多分私どものこの委員会より結論が出るのが後になると思いますので、その前に私たちは結論を出さなければいけないと思うのですが、現在の審査基準の、ただいま指摘させていただいた部分の書きぶり、または解釈をより柔軟にすることは考えられるのでしょうか。
○田村審査基準室長 そこはやはり投与方法にもっぱら特徴のあるような発明ということでございますと、結局医薬用途発明として、物のカテゴリーで許すのではなくて、むしろ特徴点は医療方法に特徴点があるようなものを、物のカテゴリーで許すということになりますので、現在の医薬用途発明の延長で特許するということは特許庁としては非常に難しいと考えてございます。そこはまた従来のやり方とは違ったやり方でそういう医療方法に特徴のあるような発明も特許しても構わないというようなご示唆をいただかないと特許庁は一歩踏み出せないというふうに考えております。
○林委員 ありがとうございます。
 まさにそこはここの場でコンセンサスを得ることで審査基準にどのように盛り込めるかというところではないかと思っております。
 審査基準のことだけ申し上げましたが、前提的な話としまして、インセンティブ論というのがずっと続いておりますので、それについてちょっとだけ意見を述べさせていただきたいと思います。
 産業政策に関することだと思うのですが、先端医療分野につきまして、これまでご発表いただいたいろいろな問題というものには特許権付与以前の実質的な課題が多々あるのではないかと思います。
 それはこの委員会に直接のテーマではないとしても、対応の必要性について、提言すべきものはしておきたいと思っています。
 具体的には、まず研究段階なんですが、前回もいろいろな研究者の方にご発言いただいたその真意というのは、大学における医工連携人材の育成とか、医工連携を含む先端医療分野の研究環境をもっと助成してほしいという思いがあらわれているのではないかと思いますし、またそこには特許取得への弁理士などの専門家のサポートが必要だということも含まれてくるのではないかと思います。
 さらに、私が常日頃思っておりますのは、研究を現実に生かす製品の製造段階への対応も重要だと思います。
 国民の医療にとって、安全な医薬品や医療機器が安定的に供給されるという体制づくりが重要である。にもかかわらず国内生産が空洞化していて、輸入に依存している現状であるというのは、皆様ご承知のことだと思います。
 欧米企業が発展途上国の工場で安く製造させた医薬品や医療機器の供給に日本は依存している状況ですので、これでは日本の当局による実質的な安全性確保も十分にできませんし、供給面では現実に2001年3月には遺伝子組換え血液凝固第[因子製剤の供給問題も起こっておりますし、2009年1月現在は骨髄移植手術に必要な骨髄液のろ過器具の供給問題のように、海外工場の製造停止によって、日本の医薬品、医療機器の供給が危機に陥るという事例が起こっておりますので、日本は食料だけでなく医療についても砂上の楼閣のような危うさを抱えているのだと思います。
 厚労省も「新医薬産業ビジョン」を打ち出していらっしゃいますが、現実に医薬業界では巨額研究開発費の確保とパイプラインの確保を目的とするということで、巨大合併が進んでいるわけでして、私としては資本は外国資本でも結構ですから、先端医療を日本国民が享受できるようにするためには、ぜひ安全性、安定性の両面から医薬品・医療機器の国内製造体制を強化して自給率を上げていただきたいと思います。
 この点を申し上げましたのは、本件、ここの委員会との関係では、日本の競争力とか内外格差の問題というのは、特許付与以前の問題ではないかという観点から申し上げさせていただきました。
 第2点目として、特許付与の話につきましては、米国同様、医療方法の特許を認めるべきという議論がございますけれども、この分野について方法の特許を認めるかどうかについて、日本と欧州は特許のカテゴリー的には方法の特許は除外しているという形を保ちつつ、実質的に保護すべき医薬品そのものは、物の発明というカテゴリーに分類して保護対象にしています。
 日本で同様の扱いとしてはプログラムなどの定義があるかと思いますが、この点における米国との違いは、発明の分類、カテゴリーの分類の仕方の違いでありまして、米国と異なる分類をする欧州や日本が遅れているということは言えないのではないかと思っております。
 基本的には私は医薬分野にかかわらず、発明のカテゴリーとか用途発明については特許法上の位置づけを再検討するべきであるとずっと考えておりますけれども、それはただ特許法全体にかかわる特許プロパーの議論になってしまいますので、今回の委員会の守備範囲としては、少し超えてしまうのではないかと思っております。以上です。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 日本や欧州が遅れているのではないというのは、大変いい表現だなと思って伺っていました。
 どうでしょうか。大変まとまったご意見を頂戴したわけですが。
 異なるご意見でも構いません。長岡さん、どうぞ。
○長岡委員 私は、前回欠席したこともありまして、質問で恐縮なんですけれども、1つは先ほどの渡辺委員の審査基準のところの議論なんですけれども、私は経済学をやっている者ですから、インセンティブという観点から見ますと、特許権は、1つはリサーチへのインセンティブをもたらすことと、それから医療分野では非常に重要だと思いますけれども、ディベロップメント、つまり臨床への投資をリカバーできるような可能性をもたらすという2つの面があって、それでそもそもリサーチを保護するのかディベロップメントを保護するのかということで、審査基準の考え方もかなり違うように私は思います。例えばこの用途発明が新規かどうかの基準ですが、そもそも新規かどうかは本来はリサーチの内容にかかると思うんですけれども、審査基準では対象患者が違うということが重要ですから、臨床試験が新たに必要かどうかという開発の側面が入っているようにも思います。効率的なインセンティブという考え方からいきますと、そもそも臨床のハードルを乗り越えさせることが重要なのか、それともリサーチあるいはアイデアのジェネレーションを保護することが重要なのかを、整理した上で考え方をまとめれば、分かりやすくなるような面もあるのではないかなというのが1つ、コメントと言いますか、質問であります。
 それから、2番目の関連した点は、先ほど特許庁の方から説明があったものに関してで、方法の発明を「もの」の用途発明として日本では保護できるということをイノベーションへの投資保護という観点からどのように評価出来るかということです。新しい医療技術のイノベーションへの大きな投資をする方は、医師ではなくて、主に機器メーカーであり、薬剤メーカーでありということになって、そういう人たちは物を作っているわけですので、従って発明を「もの」に体化するというのは非常にプラクティカルでもあるし、保護の面でも効果があるのではないかなと思うんですけれども、今後細胞治療になった場合に、臨床試験等の投資を担うのは誰になるのか、必ずしも私はよく分からないところがあります。例えば、特許庁の資料の最初の例で言いますと、移植剤を作る人が臨床試験等を担うということになるのかどうか。米国の場合で、最初の特許を誰が取っておりそれがどのようにイノベーションに活用されているかとも関係すると思うんですが、発明を「もの」として表現をすることで、発明を市場に持っていくための投資を行う人が特許権をうまくとれるような仕組みになるのかどうかについて、もし何か分かれば教えていただきたいと思います。
○金澤委員長 お分かりになる方、ご説明いただけますか。
○渡辺委員 多分、そういう方法に特徴があるものということであれば、恐らくビジネスをする方というのは、研究開発をして臨床試験をしなくてはなりませんので、必然的にそれを必要なものとしているのでありまして、そこはいいことじゃないかなと私は思います。
 ただ、発明の段階で、別の方が例えばお医者さんが発明したとしても、そのお医者さん自身がそういうビジネスをするわけではなくて、きっとそれをサポートするような事業に持っていく方にとって、それを裏打ちする意味で、そういう特許が必要になってくるというふうにとらえております。
 物か方法かという話になりますと、やはり物がそういう意味では合うのかもしれないんですが、ただ特徴が本当に方法にある場合のときに、物という形で、権利行使が本当に可能なのかどうかというところが非常に不安でありまして、それに関してもう一度専門家の方に意見を求めた方がいいと思っております。
○金澤委員長 他にどうですか。ご意見は。
○羽生田委員 非常に単純と言いますか、私もよく内容的なことは非常によく分からないんですが、今日本では特許を取れない30例を特許庁で説明をすると全て取れるということが言われたわけで、どうしてそういうことになるんでしょうか。この会議自体どうも必要ないような、今の判断ですとね。
 なぜ、日本では特許が取れない30例を検討すると、こうやれば取れるということを言っているわけですから、そのままの方法で進めるということにはいかないんでしょうか。
○金澤委員長 これはなかなか難しいですけれども、お答えいただけますか。
○佐藤委員 この特許庁さんが作った30例、物の発明といった形で表現できるとおっしゃっていますけれども、必ずしもこれは正しくないと私は思っています。
 例えば、具体的に申し上げますと、6ページの医療機器として表現可能なものというのがありまして、この発明は右側の米国特許の請求の範囲では、医療方法で表現されていて、右側に物で表現されています。
 右側の方で何を表現したかというと、このX線装置そのものの構造をものとして表現したということなんです。
 ところが、要約をよく見ていただくと、この発明のポイントは照射量は、照射部位から少なくとも一時的に組織再生の阻害剤を取り除く量であると、ここがポイントなんです。と私は今見ました。
 そうしますと、この発明というのは、本来ここをクレームした方法の発明でないと表現できないはずなんです。
 確かに、使っている手段そのものをクレームで書くことができるんですけれども、発明の本質がどこにあるかと言うと、むしろこれは医療の方法として、この量を見つけ出して調整したというところが発明なんです。
 従って、物の発明といった形で書けるからといって、全て方法の発明が物の発明のクレームで代替されるということではないという事をまず明確にしておくべきだと思います。
 今回のこの委員会で議論を始めたのは、物の発明といった形で表現できない発明が医療方法にはある。それがあるんだから、それをどう保護するのか、保護しないのかというのがこの議論の出発点だと思います。
 ですから、特許庁さんが言うように、物で書ける、だから問題が解決したということではないというふうに思っております。
○金澤委員長 どうぞ。
○羽生田委員 今のいろいろな説明等々、いわゆる研究室でいろいろな使用方法、あるいは手術方法等々を研究するということはずっとやってきたわけです。それがどこからスタートするかというと、臨床の場面での疑問からスタートして、それをこういう方法ではどうかとか、こういう投与方法ではどうかということをずっと疑問に思って研究室でやってきた。
 いろいろ変わってきたので、もちろん研究室だけでのそういったものの考え方というのは当然出てくるんでしょうけれども、その疑問というのはやはり患者さんにある薬を投与した、その副作用がどうだとか、ただそれをどうやったら軽減できるかということは大学病院を中心とした臨床科、あるいは大学出の医師の研究医がそういった疑問に、どうやったら解決できるかというところから、殆どスタートしているのではないかといったときに、先ほどの渡辺さんのお話の中で、それを考えて医師が特許を取るのではなくて、それを保護する企業の方が取るんだという言われ方をして、誰が特許を取るのかその辺私もよく分かりませんけれども、そういう意味からすると非常に不公平な、むしろ不公平になってくるように私は聞いていたんですけれども。
 その辺いかがなんでしょうか。
○渡辺委員 ちょっと誤解を与える表現をしてしまいまして、申しわけありませんでした。
 もし、先生がおっしゃるように、お医者さんの基礎的な研究、あるいは臨床研究によって、そういう発明であれば、もちろん発明者として、その方がなるわけでございます。
 ただ、それを本当に実用化するときには、やはり何らかのスポンサーがつかないと、臨床試験に対して投資ができないですし、かなり数をやらなければいけないので、その場合は発明者の方の許諾を得て、実施するという形になるということでございまして、発明を取るとか取らないという話ではございませんので。
○羽生田委員 そういう言い方をしたのは、いわゆる手術方法、治療方法という、患者さんに対して行う医療が特許によって、いろいろしばられてくるといいますか、いろいろ制限を受けたり、そういうことはあってはならないことであるし、今言ったような使用方法なりが広く使われるようになる方が患者さんにとっては、幸せな出来事であるわけで、それをなぜ特許で守らなければいけないのか、私はむしろ守る必要がない、使用方法とか、そういったものは守る必要はない、全ての患者さんが享受される、医師が使えるということをむしろ守るべきであるというふうに思っていますけれども。
○金澤委員長 ありがとうございます。
 私の理解は、資料1の1ページ目に、基本的な考え方、この@、A、Bというのが、先ほど片倉さんから示されたわけですが、ここは皆さん恐らくご議論ないんだろうと理解していますが、そこを出発点にしたいと思いますが。
 医師の医療行為を阻害しない。ここに今のお話は該当するのかと思います。そこはよろしくお願いしたいと思います。
 他にご意見ございますか。
○北川委員 今のは間接侵害も含めていうことですか。
○金澤委員長 もちろん。3つ全てというつもりです。
○北川委員 要するに、米国とは違うというスタンスをとるということですよね。
○金澤委員長 そういうことでご議論をいただいたわけです。ただスペシィフィックに1の問題を提起されたので、1のことを申し上げたんです。それだけです。
 他の2と3には疑問があるという方がいらっしゃったら、どうぞ声を出してください。
○長岡委員 新しい医療行為が、非常に新しい治療法を新しい機械等を使って行うことになったときに、臨床試験が必要で、特許権があることで臨床試験への投資ができるようになります。
 この場合は特許権による保護(すなわち侵害行為の排除)があるからこそ新たな医療行為が可能になるという面もあるわけですよね。ですから、そういう意味で、単純に医師の医療行為を阻害しないというだけでは必ずしも明確ではない点があると思います。治療行為が全てもう初めから存在しているわけではなくて、治療行為が発明されるというところが非常に重要なポイントかなというふうに思っております。
 それから、3番目の間接侵害についても、既得権の保護が必要だと書いてありますが、補完的に非常にいい技術が出る場合もあるわけで、それにはやはり一種の保護を与える必要性も出てくると思います。常に間接侵害が発生するようにしては駄目だというのも極端な議論ではないかと思っております。
○片倉委員 初めの治験の投資の考え方ですけれども、治験というのは、クローズドではないですね。ある程度オープンで患者さんを募る。その段階で、基本的には権利はもう殆ど保護されてないとオープンな議論ができませんので、そこはちょっと違うのではないかと。その段階で投資議論をすると、治験の中でまた新しい治療方法が出てきたとすると、それは多分次の治験という、別物になってまいりますので、それはちょっと違うのではないかと。
 それと3番目の既得権と書いてあるので、そういう議論になると思うんですが、実際、幾つか後で出てきた資料の中でも、血管壁にカテーテルで注入するとか、そういうのがございましたよね。あれが医療法として権利化されたときに、そこで使われたカテーテル全てがもう既にとっくのとうにもう市販されているものであっても、侵害されているという見なしを受けることもあり得ると。そういうものは既存の製品を持っている企業としては避けたいと、そういう話で出しているということでございます。
 用途を特定化し、新しい医療技術の中でということであれば、それは逆に物とリンクした議論で、物の取り方もあるのではないかと。
 ちょっとマイクを取ったついでにお話しさせていただきますと、この資料5に出てきているようないろいろな事例がございましたが、先ほどちょっと議論もございましたし、初めにこの資料1の初めに書かせていただいたように、方法論の工夫で権利化できるものであれば、分かりやすくなるべく物とか製造方法で権利化できるのが一番、日本の特許としては分かりやすいので、そのために資料5の事例として開示いただけるものがあれば、分かりやすいのではないかと。
 再生の場合、どちらかというと今ベンチャーさんとか医療機器メーカーさんが多いので、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、医療費の審査基準、あるいはそこから引っ張るものの中では、こういう書き方がなかなかイメージが湧かないのかもしれませんので、そこはちょっと工夫が必要なのではないかなというふうに思っています。
 ただちょっと心配なのは、渡辺さんがお話しされた安定な権利というときに、こういう考え方が本当にいいのかどうかというのは、ちょっと別議論かなと。そこら辺は継続かと思っています。以上でございます。
○金澤委員長 ありがとうございました。
 だんだん時間が、もうなくなっちゃったんですが、資料6をちょっと見ていただきたいんですけれども、今までいろいろなご意見いただきましたけれども、方法の特許にするのか、物の特許にするのかという議論を今やり始めますとちょっとこれは大変なことになる危険性もありまして、資料6の中で、一応まとめてありまして、議論をしていただく中で、これは特許の対象、これは対象外というのが書いてある部分について、まあまあそうだなとおっしゃっていただけるとしますと、ここのところがまだ明示されていないのではないかとか、ここがまだ不明確だというような点が実はここの中に3点あるんです。
 1点目は、1ページ目の上の方の枠の、「しかし」以下であります。つまり他の組み合わせ方法、物理手段と生物化学手段の組み合わせはまあまあ、恐らくいいでしょうが。「他の組み合わせ発明についての取り扱いは審査基準に明示されていない」という点があります。
 それから、もう1つは2ページ目の一番下、※のところです。「明確でないという指摘がある」ということです。
 それから、3番目が3ページ目の上の※のところでありまして、細胞、これは難しい問題なんですけれどもね、本当は、「細胞は経時変化するため」物としての表現が難しいって、ものの考え方だと思うんだけれども。
 この3点ではないかと思います。
 これは、今日はもう時間がなくなりましたから、今後またご議論をいただきますけれども、どうぞ整理のためにこの資料6をお使いいただけたらと思っています。
○林委員 今の3点で、特許庁に資料のお願いをしたいんですが、この資料6で挙がっている点につきまして、現在の審査基準の考え方の範囲内で補充が可能であるものについてはそれは具体的にどこの基準をどのように書き直せばいいかをドラフトしていただきたいということと、それからこのうちのここの委員会でコンセンサスが必要であって、ここでコンセンサスが得られれば、特許庁の方で審査基準の書き換えを考えるというものを分けて、それぞれ資料を次回にお出しいただいて、それで私どもが議論させていただければと思います。
○金澤委員長 なるほど。よろしいですか。
 うなづいてくださいましたので、ありがとうございます。
○田村審査基準室長 前提の方が、分からないようなところがございまして、例えば資料6の中で、今ご指摘のあったところなんですが、ヒト機能性細胞というもの、例えば2ページにありますが、この定義が分からないと、こちらも動けないというのと、あと3ページもそうなんですが、細胞が経時変化するためにうまく物として表現できないということでございますが、それが方法の発明だとどんなふうに表現しやすいのかという、問題意識のところをもう少し明確にしていただきたいなというふうに思います。
○金澤委員長 分かりました。
 専門の方々と事務局とが少し話し合いをしまして、ちゃんとした形でディスカッションできるようにいたしましょう。
○田村審査基準室長 この議論に続いて、そうしたらこういったものについても……
○金澤委員長 もちろんですよ。そこの3点だけというだけではないので。
 ということでございまして、まだまだ議論があろうかと思いますけれども、時間が過ぎてしまいました。
 先ほどの宿題をいただいたこともありますし、またこれで全部先端医療の関係が分かってしまったかというと必ずしもそうではないと思いますので、まだまだ各会からご意見を頂戴する機会が必要だと思っております。人選につきましては、また恐れ入りますがご一任いただきたいと思っております。
 次回の日程などについて事務局から。
○内山事務局次長 既に委員の皆様にはお伝えしておりますけれども、次回は当初ご連絡をさせていただきました2月6日ではなくて、2月16日月曜日を第4回ということで、午後4時、16時から本日と同じこの会議室で開催したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○金澤委員長 それでは、ちょっと遅れましたが、ここで閉会といたします。
 どうもありがとうございました。